(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936297
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/30 20060101AFI20160609BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20160609BHJP
F28F 13/08 20060101ALI20160609BHJP
F28F 13/14 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
F28F1/30 E
F28F1/02 B
F28F13/08
F28F13/14
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-218025(P2010-218025)
(22)【出願日】2010年9月29日
(65)【公開番号】特開2012-72955(P2012-72955A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年5月22日
【審判番号】不服2014-24543(P2014-24543/J1)
【審判請求日】2014年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰高
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克弘
【合議体】
【審判長】
鳥居 稔
【審判官】
田村 嘉章
【審判官】
佐々木 正章
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−140790(JP,A)
【文献】
特開平11−201679(JP,A)
【文献】
特開平6−249591(JP,A)
【文献】
実開昭62−45580(JP,U)
【文献】
実開昭55−6701(JP,U)
【文献】
特開2009−270792(JP,A)
【文献】
特開平4−369393(JP,A)
【文献】
特開2009−115339(JP,A)
【文献】
実開昭59−70180(JP,U)
【文献】
特開2010−25477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/02
F28F 1/30
F28F 1/32
F28F 13/08
F28F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本が互いに平行に設けられ、それぞれ冷媒が内部を流れる冷媒流路を有したチューブと、
互いに隣接する前記チューブ間に設けられ、前記チューブに熱交換可能に接するフィンと、
複数本の前記チューブの一端側と他端側にそれぞれ設けられ、前記チューブを流れる前記冷媒の流路を備えるタンクと、を備えた熱交換器であって、
前記チューブから前記フィンへの熱伝導を抑制する熱伝導抑制部が、前記フィンと前記チューブとが突き合わされる部分の近傍で、かつ、前記冷媒と熱交換がなされる流体の流れ方向上流側に形成され、
前記熱伝導抑制部として、前記フィンにおいて、前記流れ方向に沿って延びるスリットが形成され、
前記スリットは、
排水性を有する開口であり、
互いに隣接する前記チューブ間における両側にのみ位置し、
前記チューブ間における両側に位置する前記スリットのいずれも、互いに隣接する前記チューブの中間部側の一辺を残し、残る三辺を切り欠き、前記チューブに近接する側の一辺を下方に突出させるよう前記フィンを折り曲げることで形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記フィンと前記チューブとが、前記熱交換器において前記冷媒と熱交換がなされる流体の流れ方向下流側で接合され、
前記熱伝導抑制部として、前記フィンと前記チューブが、前記流体の流れ方向上流側で非接合となる部分を有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記チューブにおいて、前記流体の流れ方向上流側に凹部が形成され、前記凹部は、前記フィンが前記チューブに突き合わされる位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記チューブは前記冷媒が内部を流れる前記冷媒流路を複数有し、前記チューブに凹部が形成され、前記凹部により、前記流体の流れ方向上流側に位置する前記冷媒流路の断面積が狭められていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記凹部は、前記冷媒流路に沿って間隔を空けて複数形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記凹部は、前記冷媒流路に沿って間隔を空けて複数形成され、そのピッチは、フィンピッチの略整数倍であることを特徴とする請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記凹部が前記フィンと前記チューブとの間に位置することで、当該凹部が前記フィンの一面側から他面側に連通する排水口として機能することを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システムに用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の空気調和システムのように、冷房と暖房を冷凍サイクルにより行う場合においては、一つの熱交換器を、冷房運転時と暖房運転時とで、凝縮器として用いたり蒸発器として用いることになる。
そして、室外機の熱交換器は、暖房運転を行った場合、蒸発器として機能する。寒冷時に暖房運転を行った場合、蒸発器は、例えば氷点下5℃程度まで温度が低下するため、空気中の水分が蒸発器に着霜する現象が発生する。通常、着霜は熱交換器の風上側から起こり、次第に成長して空気の流通路を閉塞することになる。すると、付着した霜を除去するために除霜運転を行わなければならない。除霜運転中は暖房運転を行えないため、その結果、暖房効率が低下してしまう。
【0003】
ところで、自動車用空気調和システム(いわゆるカー・エア・コンディショナー)用の熱交換器は、非常に高性能かつコンパクトなため、これを家庭用の空気調和システムに転用することが考えられる。しかし、その場合、自動車用空気調和システムの熱交換器は、そのコンパクト性がゆえ、チューブ、フィンのピッチが小さく、着霜すると、互いに隣接するチューブ間、フィン間が塞がりやすい。その結果、除霜運転を頻繁に行わなければならず、暖房効率の低下の影響が大きくなる。これは、自動車用空気調和システムにおいては、暖房にはエンジン冷却水の熱を利用するため、自動車用空気調和システム用の熱交換器は、低温の空気と熱交換する蒸発器としての機能を想定していないためである。
【0004】
そこで、扁平チューブの風上側における冷媒流路を閉塞したり、扁平チューブの端部に切欠きを形成したり、冷媒流路の断面積を大きくすることで、扁平チューブの風上側と風下側とで熱交換能力に差を設け、熱交換器の風上側で着霜しにくくする技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
また、互いに隣接する扁平チューブ間に設けられたフィンにおいて、風下側にのみルーバを形成し、風上側にはルーバを形成しない構成としたり、フィンを風上側に突出させることで、風上側と風下側とで熱交換能力に差を設け、熱交換器の風上側で着霜しにくくする技術も提案されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3738404号公報
【特許文献2】特開2005−127597公報
【特許文献3】特許第3942210号公報
【特許文献4】特開平6−147785公報
【特許文献5】特許第3068761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術においては、扁平チューブの風上側における冷媒流路を閉塞したり、扁平チューブの端部に切欠き加工を行うのに高い加工精度が要求され、また、切欠き加工時等に端材が出るため、その処理に手間がかかり、高コストにつながるという問題がある。
また、特許文献2に記載された技術においては、チューブ内に形成された冷媒の流路の断面積が小さいために、流路を流れる冷媒の圧力損失が大きく、各流路に流れる冷媒流量は流路断面積の影響を大きく受けることになる。このため、風上側の流路断面積を大きくすると、風下側に対して風上側を流れる冷媒流量が相対的に増えることになり、風上側の熱交換能力はそれほど低下せず、意図したような着霜防止効果が得られない可能性がある。
【0008】
特許文献3〜5に記載された技術においては、ルーバを形成していない部分においては、除霜運転をしたときに、融けた水がフィン上に残って排水されないという問題がある。すると、除霜運転後に暖房運転を再開すると、フィン上に残った水が凍結して再び着霜しやすくなってしまう。これは、フィンを風上側に突出させた場合も同様である。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、低コストで、着霜を抑制するとともに、除霜運転をしたときに融けた水の排水を確実に行うことのできる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明の熱交換器は、複数本が互いに平行に設けられ、それぞれ冷媒が内部を流れる冷媒流路を有したチューブと、互いに隣接するチューブ間に設けられ、チューブに熱交換可能に接するフィンと、複数本のチューブの一端側と他端側にそれぞれ設けられ、チューブを流れる冷媒の流路を備えるタンクと、を備えた熱交換器であって、チューブからフィンへの熱伝導を抑制する熱伝導抑制部が、フィンとチューブとが突き合わされる部分の近傍で、かつ、冷媒と熱交換がなされる流体の流れ方向上流側に形成され、熱伝導抑制部として、フィンにおいて、流れ方向に沿って延びるスリットが形成され、スリットは、
排水性を有する開口であり、互いに隣接するチューブ間における両側に
のみ位置し
、チューブ間における両側に位置するスリットのいずれも、互いに隣接するチューブの中間部側の一辺を残し、残る三辺を切り欠き、チューブに近接する側の一辺を下方に突出させるようフィンを折り曲げることで形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、フィンとチューブとが突き合わされる部分における流体の流れ方向上流側における流体の流れ方向上流側に、熱伝導抑制部を形成することで、流体の流れ方向下流側に対し、上流側におけるチューブからフィンへの熱伝導を抑えることができる。
【0010】
本発明におけるスリットは、開口を形成すれば良いが、互いに隣接するチューブの中間部側の一辺を残し、残る三辺を切り欠き、チューブに近接する側の一辺を下方に突出させるようフィンを折り曲げることで形成
されている。このようにすることで、スリットを形成するために端材が発生することもなく、排水性を高めることもできる。
また、フィンとチューブとが、熱交換器において冷媒と熱交換がなされる流体の流れ方向下流側で接合され、熱伝導抑制部として、フィンとチューブが、流体の流れ方向上流側で非接合となる部分を有する構成とすることもできる。すなわち、流れ方向上流側において、フィンとチューブをロウ付けや溶接をしない部分を有する。例えば、チューブにおいて、流体の流れ方向上流側に凹部が形成され、この凹部は、フィンがチューブに突き合わされる位置に設けられている構成とすることもできる。
このようなフィンのスリットや凹部を形成することで、フィンの流体の流れ方向上流側にルーバが形成されていなくても、除霜運転時に融けた水が、スリットやチューブの凹部を通って下方へ排水される。
このような熱伝導抑制部は、フィンやチューブの製造加工時に形成でき、特に高い精度が要求されることもなく、低コストで形成することができる。
【0011】
このような熱伝導抑制部を備えた熱交換器において、以下のようなチューブを組み合わせることも有効である。
すなわち、チューブは冷媒が内部を流れる冷媒流路を複数有し、チューブに凹部が形成され、この凹部により、流体の流れ方向上流側に位置する冷媒流路の断面積が狭められているものを用いることができる。
凹部は、チューブのタンクへの接合部分近傍に設けても良いが、冷媒流路に沿って間隔を空けて複数形成することもできる。凹部は、フィンがチューブに突き合わされる位置に設けるのが好ましい。この場合、複数の凹部のピッチは、フィンピッチの略整数倍とするのが好ましい。この場合、凹部がフィンとチューブとの間に位置することで、当該凹部がフィンの一面側から他面側に連通する排水口として機能する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流体の流れ方向に沿って延びる熱伝導抑制部を形成することで、流体の流れ方向下流側に対し、上流側におけるチューブからフィンへの熱伝導を抑えることができる。このようにして、室外機の熱交換器が暖房運転時に蒸発器として機能する場合に、フィンの流体の流れ方向上流側部分の温度の低下を抑え、着霜を抑制できる。
また、除霜運転時においては、熱伝導抑制部としてのスリットや凹部等により、霜を融かした水を下方に排水することが可能となり、排水性にも優れ、フィン上に残存した水が再着霜するのを防止できる。
このような熱伝導抑制部は、フィンやチューブの製造加工時に形成でき、特に高い精度が要求されることもなく、低コストで形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態における熱交換器の外観を示す斜視図である。
【
図2】第一の実施形態におけるフィンを示す斜視図である。
【
図4】第二の実施形態におけるフィンとチューブとの接合部分の構成を示す平面図である。
【
図5】第三の実施形態におけるフィンとチューブとの接合部分の構成を示す平面図である。
【
図6】チューブに凹部を形成した例を示す斜視図である。
【
図8】凹部によりチューブの流路を押しつぶした例を示す平面図である。
【
図9】チューブにおいて、風上側の流路の一部を押しつぶす例を示す斜視図である。
【
図10】チューブにおいて、風上側の流路の一部を押しつぶす他の例を示す斜視図である。
【
図11】チューブにおいて、風上側の流路の断面積を小さくした場合の例を示す斜視図である。
【
図12】チューブにおいて、風上側に流路を設けず、その厚さを小さくした場合の例を示す斜視図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本実施の形態における熱交換器10の全体構成を示す斜視図である。
図1に示すように、熱交換器10は、冷媒が流通する複数のチューブ21及び複数のフィン22を交互に積層してなるコア20と、チューブ21の端末が接続される一対のタンク30と、を備え、コア20に伝わる熱によって冷媒の熱交換を行うものである。
【0015】
チューブ21は、銅又は銅合金、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、押出し成形又は板状素材をロール成形して作製された中空部を有する矩形扁平断面の部材である。
【0016】
フィン22は、チューブ21と同様の材料から構成され、本実施形態ではコルゲートタイプのフィンを用いているが、これに限らず、プレートタイプのフィンを用いることができる。
【0017】
コア20は、以上のチューブ21とフィン22とが、熱交換器10の長手方向(図中、X方向)に交互に積層して配置され、その両端はサイドプレート23で封止される。サイドプレート23は、コア20の補強部材として機能し、その端部はタンク30に支持されている。
【0018】
さて、
図2に示すように、上記のような熱交換器10においては、チューブ21からフィン22への熱伝導を抑制する熱伝導抑制部40が形成されている。
本実施形態において、熱伝導抑制部40として、フィン22の表面において風上側に、スリット41、41が形成されている。各スリット41は、フィン22において、チューブ21の近傍に、チューブ21の表面に沿った方向(熱交換器10において冷媒と熱交換を行う周囲雰囲気の熱交換器10に対する流れ方向:図中Y方向)に連続して形成されている。
各スリット41は、フィン22をその厚さ方向に貫通して形成されている。ここで、各スリット41は、互いに隣接するチューブ21、21の中間部側の一辺41aを残し、残る三辺41b、41c、41dを切り欠き、
図3に示すように、そのチューブ21に近接する側の辺41cが下方に突出するよう一辺41aに沿って折り曲げることで形成することもできる。これにより、スリット41を通して水が下方に落下しやすくなる。
【0019】
また、フィン22の風下側には、両側のチューブ21を結ぶ方向(X方向)に連続するルーバ38が、熱交換器10の厚さ方向に間隔を隔てて複数形成されている。
【0020】
上述したようにして、フィン22の風上側に、チューブ21の表面に沿った方向に連続するスリット41、41を形成するようにした。これにより、フィン22においてスリット41、41の間の中央部Aへのチューブ21からの熱伝導を抑制することができる。このとき、スリット41,41は、チューブ21の表面に沿った方向に連続するため、チューブ21からフィン22の中央部Aへの熱伝導は、スリット41の両端部41e、41eを回り込まなければならず、スリット41が形成されている広い範囲で抑制できる。
このようにして、フィン22の風上側でチューブ21からの熱伝導を抑制することで、フィン22の風上側の温度の低下を抑え、着霜を抑制できる。
また、除霜運転時においては、スリット41を通して、霜を融かした水を下方に排水することが可能となり、排水性にも優れ、フィン22上に残存した水が再着霜するのを防止できる。
【0021】
なお、上記第一の実施形態において、スリット41、41間に、スリット41に直交する方向に延びるルーバ39を一本以上形成しても良い。
【0022】
[第二の実施形態]
次に、熱伝導抑制部40の他の例を示す。熱伝導抑制部40以外の熱交換器10の構成は上記第一の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態における熱伝導抑制部40として、熱交換器10の風上側において、チューブ21とフィン22とが、ロウ付けのなされていない非ロウ付け部50が形成されている。
これには、熱交換器10の組み立て工程において、チューブ21において、風上側から一定寸法の位置よりも風下側の範囲Bにロウ材を塗布して、ロウ付け処理を行う。
これにより、風上側の非ロウ付け部50においてはチューブ21とフィン22とが接合されておらず、チューブ21からフィン22への熱伝導効率が、風下側よりも低くなる。その結果、フィン22の風上側でチューブ21からの熱伝導を抑制することで、フィン22の風上側の温度の低下を抑え、着霜を抑制できる。
【0023】
[第三の実施形態]
次に、熱伝導抑制部40のさらに他の例を示す。熱伝導抑制部40以外の熱交換器10の構成は上記第一の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態における熱伝導抑制部40として、熱交換器10の風上側に、チューブ21の風上側端部21aの外周面(流れ方向上流側の外周面)を覆う熱伝導率の低い材料のコーティング層60が形成されている。このコーティング層60は、チューブ21とフィン22とがロウ付け時に接合されるのを防止でき、かつ、耐熱性を有した材料で形成するのが好ましい。
このようなコーティング層60としては、例えばセラミックス材料によるものが好適である。
【0024】
このようなコーティング層60が設けられた部分においては、コーティング層60により熱伝導が抑制され、さらに、チューブ21とフィン22とが接合されていないので、チューブ21からフィン22への熱伝導効率が、風下側よりも低くなる。その結果、フィン22の風上側でチューブ21からの熱伝導を抑制することで、フィン22の風上側の温度の低下を抑え、着霜を抑制できる。
【0025】
なお、上記第一の実施形態で示した構成と、第二または第三の実施形態で示した構成とは適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
さて、上記第一〜第三の実施形態で示した構成には、以下に示すような構成を有するチューブ21を適宜組み合わせることが可能である。
図6に示すチューブ21は、風上側端部21a側に、凹部70が形成されている。
このような凹部70は、チューブ21が連続する方向に沿って間隔をあけて複数形成することができる。このとき、凹部70の間隔は、フィン22のピッチの整数倍とするのが好ましい。そして、凹部70は、フィン22がチューブ21に突き合わされる部分に設けるようにする。
このような凹部70は、チューブ21を引き抜き材で形成する場合には、引き抜き加工後に凹部70を追加工すれば良い。また、チューブ21を、板金の曲げ加工により形成する場合には、曲げ加工前の板の状態で凹部70を形成し、その板を曲げ加工することでチューブ21を得ても良い。
【0027】
これらの凹部70を形成することで、チューブ21とフィン22との間に凹部70が介在してチューブ21とフィン22との間に非接合部が存在することになるので、フィン22の風上側でチューブ21からの熱伝導を抑制することができる。これにより、フィン22の風上側の温度低下を抑え、着霜を抑制できる。
また、付着した霜を融かすために除霜運転をした場合、融けた水は、チューブ21とフィン22との間の凹部70を通って下方に流れることができ、排水性も改善される。
さらに、このような凹部70は、加工時に高い精度が要求されることもなく、またプレス加工により形成されるため、切り欠き加工による端材も生じず、低コストで形成できる。
【0028】
また、
図7に示すように、凹部70は、チューブ21の風上側端部21aから連続して押しつぶすことで形成することも可能である。このような構成とすると、除霜運転時に融けた水は、チューブ21の風上側端部21aを伝って下方に流すことができ、排水性を高めることができる。
【0029】
なお、凹部70は、チューブ21における冷媒の流れ方向に沿って延びるように形成し、チューブ21とフィン22の複数の接触箇所に跨って設けることもできる。また、凹部70は、チューブ21とフィン22の接触箇所の全てに設ける必要は無い。
【0030】
また、凹部70は、
図8に示すように、チューブ21の風上側に位置する流路21rが形成されている部分の外周面に、流路21r内に突出するように形成しても良い。すると、この凹部70によって流路21rの断面積が狭められ、流路21r内を冷媒が流れにくくなる。
これにより、熱交換器10の風上側の熱交換効率が低下するため、フィン22の風上側の温度低下を抑え、着霜を抑制できる。
【0031】
また、
図9に示すように、チューブ21の端部21cがタンク30に挿入される部分において、チューブ21の風上側から流路21rに対応した部分までを押しつぶすことで凹部72を形成することも可能である。
【0032】
図10に示すように、チューブ21の端部21cがタンク30に挿入される部分において、チューブ21の風上側から流路21rに直交する方向に向けて押しつぶすことで凹部73を形成することも可能である。
【0033】
これらの凹部72、73を形成することで、流路21r内を冷媒が流れにくくなり、熱交換器10の風上側の熱交換効率が低下するため、フィン22の風上側の温度低下を抑え、着霜を抑制できる。
また、凹部73の場合、チューブ21を押しつぶして凹部73を形成すると、その形成時に、その周囲の部分73aが盛り上がる。この部分73aは、チューブ21をタンク30に形成された挿入孔に挿入するときにストッパとして機能させることができ、チューブ21のタンク30への挿入深さを規定することができる。
さらに、このような凹部72、73は、加工時に高い精度が要求されることもなく、また切除片等も生じないため、低コストで形成できる。
【0034】
また、
図11に示すように、チューブ21において、風上側の流路21rを、風下側の流路21uよりも断面積を狭くすることができる。
これにより、風上側の流路21rにおいては冷媒が流れにくくなり、熱交換器10の風上側の熱交換効率が低下するため、フィン22の風上側の温度低下を抑え、着霜を抑制できる。
【0035】
図12に示すように、チューブ21の風上側端部21aには冷媒の流路を形成せず、さらに、その厚さを薄くすることができる。例えば、
図12(a)の例では、チューブ21の風上側端部21aにおいては、一方の側面に、チューブ21が連続する方向に続く凹部75を形成することができる。
また、
図12(b)に示すように、チューブ21の風上側端部21aに、チューブ21が連続する方向に続くスリット76を形成しても良い。
【0036】
このようにして、チューブ21の風上側端部21aには冷媒の流路を形成しない構成とすることで、熱交換器10の風上側の温度低下を抑え、着霜を抑制できる。さらに、凹部75やスリット76を設けることで、チューブ21の風上側端部21aにおける厚さを薄くし、冷媒の流路を形成しないにもかかわらず、チューブ21の重量を抑えることができ、材料コストを低減できる。また、凹部75の場合、チューブ21とフィン22との間に凹部75の部分に隙間が形成されることになるため、この部分から除霜運転時に生じた水の排水性を高めることができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、熱交換器10の構成について説明したが、本願発明の主旨に関わる部分以外の構成については、適宜他の異なる構成とすることができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…熱交換器、20…コア、21…チューブ、21a…風上側端部(流れ方向上流側の端部)、21r…流路、22…フィン、23…サイドプレート、30…タンク、40…熱伝導抑制部、41…スリット、50…非ロウ付け部、60…コーティング層、70、72、73…凹部