【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、増幅を行わず、無傷の細胞または核も必要とせずに試験サンプル中の目的のゲノム核酸を検出する方法を提供する。一般的には、ゲノム核酸を標識されたプローブにハイブリダイズさせ、核酸ハイブリダイゼーション以外の方法によって固相支持体に固定させる。固相支持体上のハイブリダイズした複合体中の標識を検出することによってゲノム核酸を検出する。方法を使用して遺伝子異常、例えば点変異、遺伝子重複または欠失、および染色体転座を検出してもよい。また、方法を用いて疾患の診断または予後診断を行ってもよい。
【0011】
ある観点では、本発明は以下によってゲノム核酸中の標的配列を検出する方法を提供する:
a.標的配列を含有するゲノム核酸サンプルを標的配列に特異的なプローブと接触させ、ゲノム核酸および標的配列にハイブリダイズしたプローブから成る複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、プローブは検出可能な標識を含有し、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、そして、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);そして
b.標識と固相支持体の結合を検出することによってゲノム核酸中の標的配列の存在を検出する。
【0012】
別の観点では、本発明は以下によってゲノム核酸中の遺伝子異常の存在または不存在を検出する方法を提供する:
a.ゲノム核酸サンプルを遺伝子異常に特異的なプローブと接触させ、(もしゲノム核酸中に遺伝子異常が存在すれば)ゲノム核酸およびプローブから成る複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);
b.標識と固相支持体の結合を検出することによって遺伝子異常の存在を検出する。
【0013】
別の観点では、本発明は以下によってゲノム核酸中の遺伝子異常を検出する方法を提供する:
a.遺伝子異常を含有するゲノム核酸サンプルを遺伝子異常に特異的な第1のプローブと接触させ、ゲノム核酸および第1のプローブから成る第1の複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、プローブは検出可能な標識を含有し、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、そして、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);
b.ゲノム核酸サンプルを参照核酸に特異的な第2のプローブと接触させ、参照核酸および第2のプローブから成る第2の複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、第2のプローブは検出可能な標識を含有する);
c.形成された第1の複合体の量の測定を、複合体と結合した第1のプローブの検出可能な標識を検出することによって行い、形成された第2の複合体の量の測定を、複合体と結合した第2のプローブの検出可能な標識を検出することによって行う;そして、
d.第1の複合体の量と第2の複合体の量を比較する(ここで、2つの複合体の量の差異は遺伝子異常を示す)。
【0014】
上記の観点のある態様では、ゲノム核酸および参照核酸は同一サンプルを由来とする。上記の観点のある態様では、ゲノム核酸および参照核酸は異なるサンプルを由来とし、これは同一の、または異なる個体由来のものであってもよい。別の態様では、第1の複合体および第2の複合体の量を同じ固相支持体を用いて測定し、第1のプローブおよび第2のプローブの検出可能な標識は異なる。
【0015】
別の観点では、本発明は以下によってゲノム核酸中の遺伝子異常を検出する方法を提供する:
a.遺伝子異常を含有するゲノム核酸サンプルを遺伝子異常に特異的な第1のプローブと接触させ、ゲノム核酸および第1のプローブから成る第1の複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、プローブは検出可能な標識を含有し、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、そして、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);
b.ゲノム核酸サンプルを参照核酸に特異的な第2のプローブと接触させ、参照核酸および第2のプローブから成る第2の複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、第2のプローブは検出可能な標識を含有する);
c.形成された第1の複合体の量の測定を、複合体と結合した第1のプローブの検出可能な標識を検出することによって行い、形成された第2の複合体の量の測定を、複合体と結合した第2のプローブの検出可能な標識を検出することによって行う;
d.第1および第2の複合体の量の比率を求める;そして
e.得られた比率を参照サンプル由来のゲノム核酸を用いて同様に得た比率と比較する(ここで、比率の差異は遺伝子異常を示す)。
【0016】
好ましい態様では、ゲノム核酸および参照核酸はビオチンおよびアビジンの相互作用によって固相支持体に固定される。別の好ましい態様では、固相支持体はビーズである。別の好ましい態様では、第1および第2の複合体をフローサイトメトリーで測定する。
【0017】
本発明の全ての観点の好ましい態様では、遺伝子異常は点変異、染色体転座、重複または欠失である。ある態様では、本発明はHER-2遺伝子の重複を検出する方法を提供する。
【0018】
別の観点では、本発明は以下によって個体を診断する方法を提供する:
a.個体由来のゲノム核酸サンプルを疾患に特異的な核酸配列と相補的なプローブと接触させ、(もしゲノム核酸が疾患に特異的な核酸配列を含有すれば)ゲノム核酸およびプローブから成る複合体を固相支持体上に形成させる(ここで、プローブは検出可能な標識を含有し、ゲノム核酸は核酸ハイブリダイゼーション以外の方法で固相支持体に固定され、そして、ゲノム核酸の標的配列の増幅は行われていない);
b.支持体に結合した検出可能な標識の量を検出することによって固相支持体上に形成された複合体の量を測定する;そして、
c.形成された複合体の量を、同様の条件下でアッセイを行った参照サンプル由来のゲノム核酸を用いて形成された複合体の量と比較する(ここで、個体から形成された複合体の量と参照サンプルとの差異によって疾患が診断される)。
【0019】
ある態様では、疾患を有さないと推測される個体から参照サンプルを得てもよい。別の態様では、疾患を有することが知られている個体から参照サンプルを得てもよい。別の態様では、第1のサンプルを得た後に、同じ個体から参照サンプルを得てもよい。ある態様では、方法を使用して癌に罹患している疑いのある個体の腫瘍量を測定してもよい。別の態様では、方法を用いて疾患の予後診断を行ってもよい。
【0020】
ゲノム核酸は共有結合または非共有結合で固相支持体に固定してもよい。本発明の全ての観点のいくつかの態様では、ゲノム核酸は“結合対”(本明細書では特異的相互作用によって複合体を形成する2つの分子を指す)を介して固相支持体に非共有結合で固定してもよい。従って、ゲノム核酸はゲノム核酸に結合した結合対の一方のメンバーと固相支持体に結合した結合対の他方のメンバー間の相互作用によって固相支持体に捕捉してもよい。
【0021】
好ましい態様では、結合対はビオチンおよびアビジンまたはアビジンの変異体(例えばストレプトアビジンおよびNeutrAvidin
TM)である。
【0022】
他の態様では、結合対はリガンド-受容体、ホルモン-受容体、抗原-抗体であってもよい。
【0023】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、ゲノム核酸は共有結合によって固相支持体に固定してもよい。ある態様では、ゲノム核酸の固相支持体への共有結合は光活性基(例えばアジド、アジドフェナシル、4-ニトロフェニル3-ジアゾピルベート、ソラレン(psolaren)、ソラレン誘導体)によるものである。別の態様では、UV架橋によってゲノム核酸を種々の固相表面に架橋結合させてもよい。別の態様では、化学的リンカーを用いる化学結合によってゲノム核酸を固相支持体に固定させてもよい。
【0024】
別の好ましい態様では、ゲノム核酸はゲノムDNAである。別の態様では、参照核酸は染色体中のハウスキーピング遺伝子またはシングルコピー配列である。
【0025】
本発明の全ての観点のある態様では、試験サンプルまたは参照サンプル(それぞれゲノム核酸、参照核酸を含有する)を細胞、組織、体液、血漿、血清、尿、中枢神経系液(central nervous system fluid)、糞便、胆管、パラフィン包埋組織、細胞ライセート、組織ライセートなどから得る。試験核酸および参照核酸は任意の数の供与源から任意の方法で得てもよい。
【0026】
本発明の全ての観点の好ましい態様では、プローブはオリゴヌクレオチド、人工染色体、断片化人工染色体、ゲノムDNA、RNA、組換え核酸、ペプチド核酸(PNA)、 ヘアピン・オリゴヌクレオチド、または複素環オリゴマーであってもよい。ある態様では、好ましくはプローブはDNAの大型フラグメント(>20kb。コスミド、YAC、またはBACクローンを含む)である。
【0027】
本発明の全ての観点の好ましい態様では、プローブに結合した検出可能標識はフルオロフォア、ナノ粒子、同位元素、化学発光化合物、酵素、または ハプテンであってもよい。
【0028】
本発明の全ての観点の好ましい態様では、検出可能標識の検出を、標識された試薬によって行ってもよい。ある好ましい態様では、標識された試薬はプローブに結合した標識を検出する能力のある、標識された抗体であってもよい。別の態様では、標識された試薬は、プローブに結合した標識を検出する能力のある1次抗体/2次抗体対であり、1次抗体もしくは2次抗体、またはその両方が検出可能標識と結合する。
【0029】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、固相支持体に固定されたゲノム核酸、検出可能標識を含有しゲノム核酸にハイブリダイズしたプローブの複合体をフローサイトメーターで検出する。
【0030】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、まず溶液中で検出可能標識を含有するプローブとゲノム核酸をハイブリダイズさせ、その後、ハイブリダイズした複合体を固相支持体に固定させてもよい。
【0031】
本発明の全ての観点のいくつかの態様では、プローブは少なくとも50ヌクレオチド長であってもよい。他の態様では、1つまたはそれ以上のプローブは約1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、7,500、10,000、20,000、50,000、100,000、またはそれ以上のヌクレオチド長である。
【0032】
本明細書で使用する単数形(“a”、“an”、および“the”)は、特に記載がない限り複数形も含む。従って、例えば“オリゴヌクレオチド”という記述は複数のオリゴヌクレオチド分子を含み、固相支持体という記述は1つまたはそれ以上の固相支持体について記述するものであり、標識という記述は1つまたはそれ以上の標識について記述するものであり、プローブという記述は1つまたはそれ以上のプローブについて記述するものであり、“核酸”という記述は1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドについて記述するものである。
【0033】
本明細書で使用する“ゲノム核酸”という用語は、細胞中の核酸であって生物の細胞染色体(単数または複数)中に存在し、その生物の細胞の種々のタンパク質をコードする遺伝子を含有する。ゲノム核酸とは、ウィルスの情報を提供するウィルス核酸のことも指す。ゲノム核酸は通常DNAであるが、mRNAまたはいくつかのウィルスの場合のようにRNAであってもよい。好ましいタイプのゲノム核酸は真核細胞の核中に存在するものである。ゲノム核酸は2本鎖、1本鎖、部分的2本鎖、部分的1本鎖、またはヘアピン分子であってもよい。ゲノム核酸は無傷であるか、または(例えば制限エンドヌクレアーゼでの消化、または音波処理もしくは当該分野で公知の方法によるせん断力によって)断片化されてもよい。場合により、ゲノム核酸は単一の遺伝子の全部もしくは一部由来の配列もしくは複数の遺伝子由来の配列、1つもしくはそれ以上の染色体由来の配列、または細胞の全染色体由来の配列を含んでもよい。周知のように、ゲノム核酸は遺伝子コード領域、イントロン、5'および3'非翻訳領域、5'および3'隣接DNA、および構造セグメント(例えばテロメアDNAおよびセントロメアDNA、複製起源、および遺伝子間DNA)を含む。ゲノムの総核酸を示すゲノム核酸を“総ゲノム核酸”という。
【0034】
当該分野で公知のように、細胞から抽出/精製する方法によってゲノム核酸を得てもよい。ゲノム核酸の供与源となる細胞は正常細胞であってもよいし、ゲノム核酸中に1つまたはそれ以上の変異(例えば重複、欠失、転座、およびトランスバージョン)を含有する細胞であってもよい。ゲノム核酸は細胞から直接抽出してもよいし、細胞から抽出した核酸のコピーであってもよい。検出を意図する目的の標的配列の量を、ゲノム核酸中の他の核酸配列に比較して増加させるための増幅段階を行ったゲノム核酸は、ゲノム核酸の意味から除外される。
【0035】
ゲノム核酸は約10塩基、約20 塩基、約50塩基、約100塩基、約500塩基、約1,000塩基、約2,000塩基、2,500塩基、約3,000塩基、約3,500塩基、約4,000塩基、約5,000塩基、約7,500塩基、約10,000塩基、約20,000塩基、約30,000塩基、約40,000塩基、約50,000塩基、約75,000塩基、約100,000塩基、約1,000,000塩基、約2,000,000塩基、5,000,000塩基、またはそれ以上であってもよい。
【0036】
本明細書で使用する“参照核酸”という用語は、研究を行っているゲノム核酸と比較することを目的として同定することを意図される核酸を言う。参照核酸は天然または合成のDNAまたはRNAであってもよい。ある場合には、参照核酸は相対的に不変である配列、すなわちハウスキーピング遺伝子もしくは遺伝子座、または他の遺伝子、あるいは染色体中の他の配列で種々の条件(例えば健常状態または疾病状態)下で変化しないと考えられるものを含有してもよい。参照核酸は正常または野生型状態、すなわち点変異、転座、欠失、または重複が無い核酸であってもよい。他の場合には、参照核酸は点変異、転座、欠失、または重複を有する核酸配列であってもよい。場合によっては、研究を行っているゲノム核酸および参照核酸を同じサンプルから得てもよい。他の場合には、ゲノム核酸および参照核酸を異なるサンプルから得てもよい。ある場合には、ゲノム核酸と異なる供与源から参照核酸を得てもよい。ある場合には、ゲノム核酸と異なる生物から参照核酸を得てもよい。
【0037】
“標的核酸”および“標的配列”という用語は本明細書では同義に用いられ、同定しようとする核酸配列を示す。標的配列はDNAまたはRNAであってもよい。“標的配列”はゲノム核酸であってもよい。標的配列には野生型配列、点変異、欠失、または重複を含有する核酸配列、単一の遺伝子の全部もしくは一部または複数の遺伝子を由来とする配列、1つまたはそれ以上の染色体を由来とする配列、あるいは、目的とする任意の他の配列がある。標的配列は、特定の遺伝子の代替配列または対立遺伝子であってもよい。標的配列は2本鎖、1本鎖、部分的2本鎖、部分的1本鎖、またはヘアピン分子であってもよい。標的配列は約1-5 塩基、約10塩基、約20塩基、約50塩基、約100塩基、約500塩基、約1,000 塩基、約2,000塩基、2,500塩基、約3,000塩基、約4,000塩基、約5,000塩基、約7,500塩基、約10,000塩基、約20,000塩基、約30,000 塩基、約40,000塩基、約50,000塩基、約75,000塩基、約100,000塩基、約1,000,000塩基、またはそれ以上であってもよい。
【0038】
特に明記しない限り、本明細書で使用する“約”とはプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0039】
“同一性”および“同一の”という用語は配列間の同一性の程度を示す。部分的な同一性、または完全な同一性がありうる。部分的に同一である配列は、もう一方の配列と100%未満の同一性を有するものである。好ましくは部分的に同一な配列は全体の少なくとも70%または少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%または少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%または少なくとも95%である。
【0040】
サンプル中のゲノム核酸の存在を示すための検出可能標識からのシグナルの検出に関して本明細書で使用する“検出する”という用語では、方法が100%の感度および/または100%の特異度である必要はない。周知のように、“感度”とはその人がゲノム核酸配列を有する場合に試験が陽性である可能性であり、“特異度”とはその人がゲノム核酸配列を有さない場合に試験が陰性である可能性である。少なくとも50%の感度が好ましいが、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、おとび少なくとも99%の感度であれば明らかにより好ましい。少なくとも50%の特異度が好ましいが、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、および少なくとも99%の特異度であれば明らかにより好ましい。検出は偽陽性および偽陰性を伴うアッセイも包含する。偽陰性率は1%、5%、10%、15%、20%、またはそれ以上であってもよい。偽陽性率は1%、5%、10%、15%、20%、またはそれ以上であってもよい。
【0041】
遺伝子フラグメントまたは染色体フラグメントに関連する“フラグメント”とは、少なくとも約10 ヌクレオチド、少なくとも約20 ヌクレオチド、少なくとも約 25 ヌクレオチド、少なくとも約 30 ヌクレオチド、少なくとも約 40 ヌクレオチド、少なくとも約 50 ヌクレオチド、少なくとも約 100 ヌクレオチド、少なくとも約 250 ヌクレオチド、少なくとも約 500 ヌクレオチド、少なくとも約 1,000 ヌクレオチド、少なくとも約 2,000 ヌクレオチド、少なくとも約 5,000 ヌクレオチド、少なくとも約 10,000 ヌクレオチド、少なくとも約 20,000 ヌクレオチド、少なくとも約 50,000 ヌクレオチド、少なくとも約 100,000 ヌクレオチド、少なくとも約 500,000 ヌクレオチド、少なくとも約 1,000,000ヌクレオチド、またはそれ以上であるヌクレオチド残基の配列をいう。
【0042】
ある態様では、単離または精製した分子が好ましい。本明細書で使用する“単離された”、“精製された”、または“実質的に精製された”という用語は、核酸またはアミノ酸配列のいずれかの分子であって、自然環境から除去、単離、または分離され、天然では随伴している他の成分の少なくとも60%を含有しない、好ましくは75%を含有しない、そして最も好ましくは90%を含有しないものをいう。従って、単離された分子は実質的に精製された分子である。
【0043】
本明細書で使用する“試験サンプル”という用語は、本発明の方法のためのゲノム核酸を含有するサンプルまたはゲノム核酸の供与源として使用されるサンプルをいう。
【0044】
本明細書で使用する“参照サンプル”という用語は、本発明の方法のための参照核酸を含有するサンプルまたは参照核酸の供与源として使用されるサンプルをいう。
【0045】
“固相支持体”および“固相表面”という用語は本明細書では同義に用いられ、ビーズ、微粒子、マイクロスフェア、プレート(フラットであるか、またはウェルまたは浅い凹みもしくは溝から成る)、マイクロウェル表面、スライド、ガラス表面、コーティングされたガラス表面、反応容器の表面、クロマトグラフィーカラム、膜、フィルター、マイクロチップ、石英、シリカ、紙、プラスチック、ニトロセルロース、ナイロン、ポリプロピレン、ポリスチレン、または他のポリマーなどで、ゲノム核酸が固定化されるものをいう。
【0046】
本明細書で使用する“プローブ”という用語は、ゲノム核酸または参照核酸の少なくとも一部にハイブリダイズする能力のある物をいう。プローブはオリゴヌクレオチド、人工染色体、断片化人工染色体、ゲノム核酸、断片化ゲノム核酸、RNA、組換え核酸、断片化組換え核酸、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸、環状複素環オリゴマー(oligomer of cyclic heterocycles)、または核酸コンジュゲートであってもよい。
【0047】
プローブは約10 塩基、約 20 塩基、約 30 塩基、約 40 塩基、約 50 塩基、約 75 塩基、約 100 塩基、約 200 塩基、約 300 塩基、約 400 塩基、約 500 塩基、約 750 塩基、約 1,000 塩基、約 1,500 塩基、約 2,000 塩基、約 2,500 塩基、約 3,000 塩基、約 3,500 塩基、約 4,000 塩基、約 5,000 塩基、約 7,500 塩基、約 10,000 塩基、約 15,000 塩基、約 20,000 塩基、約 25,000 塩基、約 30,000 塩基、約 40,000 塩基、約 50,000 塩基、約 75,000 塩基、約 100,000 塩基、約 500, 000塩基、1,000,000 塩基、約 2,000,000 塩基、約 5,000,000塩基、またはそれ以上であってもよい。より長い、約1,000(1kb)から約5,000,000(5Mb)、またはそれ以上のヌクレオチド長のプローブを目的の核酸セグメントを含有する染色体または人工染色体から得てもよい。本発明のある態様では、プローブは好ましくは大型DNAフラグメント(>20kb、コスミド、YAC、またはBACクローンを含む)である。
【0048】
本明細書で使用する“検出可能標識”とは、プローブに結合した分子もしくは化合物または分子群もしくは化合物群をいい、ゲノム核酸または参照核酸にハイブリダイズしたプローブを同定するのに使用される。
【0049】
ある場合には、検出可能標識を直接検出してもよい。他の場合には、検出可能標識は結合対の一部であって、その後に検出してもよい。検出可能標識からのシグナルは種々の方法で検出してもよく、これは検出可能標識の性質に依存する。検出可能標識の検出法の例として、それらに限定される訳ではないが、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電磁気学的、放射化学的、もしくは化学的方法(例えば蛍光、化学蛍光、または化学発光)、または他の任意の好適な方法がある。
【0050】
本明細書で使用する“ハイブリダイゼーション”という用語は、実質的に相補的なヌクレオチド配列(核酸鎖)が対を形成し、相補的塩基対間の水素結合形成によって2本鎖またはヘテロ2本鎖を形成することをいう。これは2つの相補的ポリヌクレオチド間の特異的、すなわち非ランダム相互作用である。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち核酸間の結合強度)は核酸間の相補性の程度、使用するストリンジェンシー条件、および形成されたハイブリッドのT
mなどの因子の影響を受ける。
【0051】
本明細書でポリヌクレオチド(すなわちオリゴヌクレオチドのようなヌクレオチド配列またはゲノム核酸)に関連して使用する“相補体”、“相補的な”、または“相補性”という用語は塩基対合則(base-paring rules)に関係する。本明細書で使用する核酸配列の相補体とは、一方の配列の5’末端が他方の3’末端と対合するように核酸配列とアラインさせた場合に“アンチパラレルに結合”するオリゴヌクレオチドをいう。例えば、配列“5'-A-G-T-3'”は配列“3'-T-C-A-5'”に相補的である。通常天然の核酸には見られないある種の塩基が本発明の核酸に含まれていてもよく、それらには、例えばイノシンおよび7-デアザグアニンがある。相補性は完全である必要はない;安定な2本鎖がミスマッチ塩基対または不対合塩基を含むこともありうる。核酸技術分野の技術者は、多くの変数(例えばオリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列、イオン強度、およびミスマッチ塩基対の頻度)を経験的に考慮して、2本鎖の安定性を判定することができる。
【0052】
相補性は、“部分的”であって、核酸の塩基の一部だけが塩基対合則に従ってマッチしていてもよい。または、核酸間が“完全な”、“全ての”、または“全くの”相補性を有してもよい。
【0053】
本明細書で使用する“ストリンジェンシー”という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる温度、イオン強度、および他の化合物の存在の条件をいう。高ストリンジェンシー条件では、相補的塩基配列が高頻度で存在する核酸間でのみ、核酸の塩基対合が起こる。
【0054】
本明細書で使用する“遺伝子異常”という用語は、野生型または正常な遺伝子配列からの核酸配列の逸脱をいう。遺伝子異常は、ある生物の完全長遺伝子相補体またはその一部と、その生物の全染色体の正常な完全長遺伝子相補体との差異を反映しうる。例えば、遺伝子異常には染色体コピー数の変化(例えば異数性)もしくはその一部の変化(例えば欠失、重複、増幅);または染色体構造の変化(例えば転座、点変異)が含まれる。遺伝子異常は遺伝性、すなわち世代から世代へと伝えられるものと、非遺伝性のものがある。遺伝子異常は生物の一部の細胞に存在するか、または生物の全ての細胞に存在してもよい。
【0055】
本明細書で使用する“異数性細胞”または“異数性”という用語は、間期において少なくとも1つの染色体の数が異常である細胞をいう。
【0056】
“試験値”は、検出可能なプローブにハイブリダイズした試験サンプル由来のゲノム核酸を含有する、固相支持体上に形成された複合体の量を測定することによって得られる。ある態様では、試験サンプル由来のゲノム核酸は遺伝子異常を有すると疑われるものである。ある態様では、参照サンプル中の同じ染色体配列または遺伝子配列を検出することによって試験値を得てもよい。
【0057】
“コントロール値”は、検出可能なプローブにハイブリダイズした参照サンプル由来のゲノム核酸を含有する、固相支持体上に形成された複合体の量を測定することによって得られる。ある態様では、ハイブリダイゼーションの標的は遺伝子異常を有さないと疑われるものである。別の態様では、ハイブリダイゼーションの標的は遺伝子異常を有することが知られているものである。ある態様では、試験サンプルおよび参照サンプルは同一である。
【0058】
“参照値”とは、他の特性に関連付けられている数値をいう。一連の参照値を標準曲線として用いることができる。
【0059】
試験値またはコントロール値を複合体の“量”またはコピー数で表してもよい。複合体の量は、取りこまれた標識の検出レベル(例えば蛍光強度)に応じて一つの数値または数値の範囲であってもよい。例えば数値の範囲を用いて、形成された複合体の量と他の量(例えば腫瘍量)の間の標準曲線を作成してもよい。
【0060】
試験値またはコントロール値を、ある複合体の量と別の量との“相対量”または“比率”で表してもよい。本発明の方法のある態様では、同一の標的遺伝子を用いて2つの複合体を得てもよく、ここで第2の複合体の量は背景の値(historical value)または並行アッセイで得られる数値を示す。他の態様では、2つの異なる遺伝子(1つめは目的の遺伝子であり、2つめは変化しないと予想される遺伝子(例えばハウスキーピング遺伝子)である)を用いて2つの複合体を得る。相対量は1つの数値または数値の範囲であってもよい。例えば、数値の範囲を用いて、形成された複合体の相対量と他の量(例えば腫瘍量)の間の標準曲線を作成してもよい。
【0061】
“対立遺伝子”および“対立遺伝子多型”という用語は本明細書では同義に使用する。対立遺伝子は染色体上の所定の遺伝子座または位置を占める同じ遺伝子の、他に取り得る多くの形態または配列のうちの任意のものである。各遺伝子座について一つの対立遺伝子がそれぞれの親から別々に遺伝し、それによって各遺伝子につき2つの対立遺伝子となる。特定の遺伝子に関して同じ対立遺伝子の2コピーを有する個体はその遺伝子座においてホモ接合性であり、特定の遺伝子に関して2つの異なる対立遺伝子を有する個体はヘテロ接合性である。
【0062】
本明細書で使用する“診断する”または“診断”という用語は、疾患または障害の兆候および症状の評価によって、ある生物もしくは植物における疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の原因を同定または判定する作業または過程をいう。通常、疾患または障害の診断は、疾患を示す1つまたはそれ以上の因子および/または症状の評価に基づく。すなわち、診断は疾患または症状の存在または不存在を示す因子の存在、不在、または量に基づいて行われる。特定の疾患の診断の指標となると考えられるそれぞれの因子または症状は、特定の疾患だけに関係している必要はない;すなわち、診断の因子または症状から種々の診断が推論されることもありうる。同様に、特定の疾患を示す因子または症状が特定の疾患を有さない個体に存在している場合もありうる。
【0063】
本明細書で使用する“予後診断”という用語は、推定される臨床症状または疾患の経過および転帰の予測をいう。患者の予後診断は通常、疾患の好ましい、または好ましくない経過または転帰の指標となる疾患の因子または症状を評価することによって行われる。
【0064】
本明細書で使用する“予後の判定”というフレーズは、当業者が用いて患者における症状の経過または転帰を予測できるプロセスをいう。“予後診断”は100%の確度で症状の経過または転帰を予測する能力を意味するものではない。むしろ、当業者に理解されるように、“予後診断”という用語は一定の経過または転帰が起こる可能性が高いこと;すなわち、所定の症状を示す患者において、その症状を示さない個体に比較して、ある経過または転帰が起こる可能性が高いことをいう。予後診断は、患者が生存すると期待できる時間の長さとして表してもよい。あるいはまた、予後診断は疾患が寛解に向かう見込み、または疾患が寛解状態にあり続けると期待できる時間の長さであってもよい。予後診断は種々の方法で表される;例えば患者が1年後、5年後、10年後等に生存している可能性%として予後診断を表してもよい。あるいはまた、患者が症状または疾患の結果として生存することを期待できる平均年数で予後診断を表してもよい。患者の予後診断は、最終的な転帰に影響を与える多くの因子を用いた相対的表現(an expression of relativism)と見なしてもよい。例えば若干の症状を有する患者では、予後診断を症状が治療可能もしくは治癒可能である可能性、または疾患が寛解に向かう可能性として適宜に表してもよく、より重篤な症状を有する患者では、予後診断を特定の期間生存できる可能性として適宜に表してもよい。
【0065】
予後診断は多くの場合、1つまたはそれ以上の予後診断因子または指標を試験することによって行う。それらは、例えば特定の染色体転座の存在のようなマーカーであり、患者(または患者由来のサンプル)におけるその存在または量は所定の経過または転帰が起こる可能性を示す。当業者に理解されるように、予後指標と有害転帰との関連付けには統計学的分析も含まれうる。
【0066】
本明細書に使用する“腫瘍量”とは、個体における腫瘍の容積または質量をいう。この量は一つの部位におけるもの(例えば原発腫瘍)であってもよいし、複数部位からの総量(例えば原発腫瘍および/または転移腫瘍)であってもよい。