【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の第1の態様によると、100%未満の結晶度であって、製薬学的に許容されるフルチカゾン化合物を含む少なくとも1つの固体物質の結晶化度を増加させる方法であって、固体物質を、その固体物質が不溶性であるか又は難溶性である溶媒と接触させる工程と;その固体物質に、上記溶媒と接触したときに超音波を適用する工程とを含む方法が提供される。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「フルチカゾン化合物」は、フルチカゾン、その製薬学的に許容される塩、その製薬学的に許容される溶媒和物、その製薬学的に許容される水和物、その製薬学的に許容されるエステル、そのエステルの製薬学的に許容される塩、そのエステルの製薬学的に許容される溶媒和物、そのエステルの製薬学的に許容される水和物、そのエステルの製薬学的に許容される塩及びこれらの任意の混合物からなる群より選択される化合物を意味する。好ましくは、フルチカゾン化合物は、フルチカゾンのエステル、より好ましくは、カルボキシレート官能基がフルチカゾン17位炭素のヒドロキシル部分に共有結合している、「17−エステル」である。フルチカゾンのカルボキシレートエステルは、好ましくは、炭素原子1〜10個のカルボキシレート又はカルボン酸から誘導され、したがって、C
1−10「17−エステル」、特にフルチカゾンプロピオン酸エステル又はカルボキシレート部分内に追加の官能基を有するC
1−10「17−エステル」、より好ましくはフルチカゾンフロンカルボン酸エステルである。
【0032】
より好ましくは、少なくとも1つの固体物質はフルチカゾンプロピオン酸エステルを含む。
【0033】
本発明の第2態様において、本明細書に記載されている方法により得られる、製薬学的に許容されるフルチカゾン化合物を含む粒子が提供される。好ましくは、粒子はフルチカゾンプロピオン酸エステルを含む。また、本明細書に記載されている方法により得られる、フルチカゾンの塩、エステル、溶媒和物、前駆体又はこれらの混合物を含む粒子を有する製剤が提供される。
【0034】
好ましくは、「固体物質」は、フルチカゾン化合物を5重量%より多く、より好ましくは10〜100重量%、より好ましくは25〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、より好ましくは95〜100重量%、より好ましくは99重量%より多く含有する。
【0035】
そのような粒子及びそれらを含有する製剤は、特に、吸入可能な医薬製剤に有用である。そのような粒子及びそのような粒子を含む製剤は、従来どおりに調製された粒子と比較して驚くべきインビトロ性能を示す。この有意な性能増加は、細粒分(Fine Particle Fraction,FPF、送達用量に対する%、インピンジャー及び咽喉の全ての段階の合計として定義)の比例増加により定量化される。これらの粒子は、DPIの薬剤配合にとって優れた性能特性を有する。これらの粒子は、また、溶解速度及び肺に送達されたFPFに関して、従来の粒子と比較して驚くべきインビボ性能を示す。
【0036】
本明細書の以降では、固体物質が不溶性又は難溶性である溶媒を非溶媒と呼ぶ。本明細書で使用されるとき、非溶媒とは、固体物質が25℃で1mlあたり0.1mg未満、好ましくは25℃で1mlあたり0.05mg未満、好ましくは25℃で1mlあたり0.01mg未満の量で可溶性であるものである。
【0037】
逆に、本発明で使用されるとき、溶媒とは、固体物質が25℃で1mlあたり0.1mgより多く、好ましくは25℃で1mlあたり0.5mgより多く、好ましくは25℃で1mlあたり1mgより多く、好ましくは25℃で1mlあたり5mgより多く、好ましくは25℃で1mlあたり10mgより多くの量で可溶性であるものである。
【0038】
好ましくは、本発明において利用される固形物質は、粒状固形物質である。粒子は、好ましくは、約10μmまで、好ましくは約100nm〜約10μm、好ましくは約100nm〜約5μm、最も好ましくは約100nm〜約2μm、例えば約110nm、約250nm、約400nm、約700nm又は約1μmなどのMMADを有する。
【0039】
空気力学的直径は、試験物質が粒子として空気力学的に挙動する、単位密度あたりの球体の直径である。異なる大きさ、形状及び密度の粒子を比較するため、並びにそのような粒子が気道のどこに付着しうるかを予測するために使用される。この用語は、それ自体気道内の付着と関連することがない実際の直径を表す、等体積球相当径、光学的直径、測定直径又は幾何学的直径に対比して使用される。
【0040】
多数の方法が、呼吸粒子の分布及び(程度は低いが)吸入粒子の分布を決定するために利用可能であり、粒径を示すために、平均中央空気力学的直径(MMAD)及び幾何学的標準偏差(GSD)を計算することができる。MMADは、粒子サンプルの統計由来の数字であり、例えば、5μmのMMADは、総サンプル質量の50%が、5μm未満の空気力学的直径を有する粒子として存在し、総サンプル質量の50%が、5μmより大きい空気力学的直径を有する粒子として存在することを意味する。
【0041】
Anderson Cascade lmpactor又はNext Generation Impactor、好ましくはNext Generation Impactorのようなカスケードインパクターを使用して、エアロゾル(又は砂塵雲)の粒度分布を得ることができる。粒子が例えばガラス又はガラス繊維に付着した幾つかの段階から構成される空気サンプルを、装置から取り出す。粒子は、その大きさに応じて、特定の段階に対してインパクトする。サンプル採取前後の各段階を計量することによって、各段階の噴射速度から分離粒径を計算することができ、MMADをこれらの計算から導くことができる。この方法の限界、すなわち粒子の跳ね返り、流速の過負荷及び変動などにもかかわらず、これは、エアロゾルの空中粒度分布及びそのMMADを測定する十分に確立された技術である。
【0042】
粒径は、レーザー回折技術により測定することができる。レーザーからの光線は、空気のような透明ガスの中に懸濁されている、粒子雲の中に照射される。粒子は光線を散乱し、小さな粒子は大きな粒子に比べて光線を大きな角度で散乱する。散乱光線を、異なる角度で設置された一連の光検出器により測定することができる。これはサンプルの回折パターンとして知られている。回折パターンを、十分に立証された光散乱理論を使用して粒子の大きさを測定するために使用することができる。粒子は球状であると想定されるが、実際にはほんの少しの粒子しか球状ではない。粒子の直径は、粒子の測定体積から計算されるが、等体積球相当径の球体であると想定される。
【0043】
好ましくは、本発明において利用される固体物質は、機械的微粉化、粉砕、噴射粉砕、摩砕、急速沈殿、冷凍乾燥、凍結乾燥、超臨界溶液の急速膨張、噴霧乾燥又はこれらの混合からなる群より選択される方法によって得られる。最も好ましくは、本発明において利用される固体物質は、噴霧乾燥の方法により得られる。従来の噴霧乾燥技術を使用することができる。好ましくは、WO2004/073827に開示されているようなSAX方法は、使用されない。
【0044】
好ましくは、上記の方法の1つを適用する前に、固体物質は実質的に非晶質であり、例えば、50%未満の結晶度、より好ましくは40%未満の結晶度、より好ましくは25%未満の結晶度、より好ましくは10%未満の結晶度、より好ましくは5%未満の結晶度、例えば1%未満の結晶度である。
【0045】
本発明において利用される固体物質が機械的微粉化、粉砕、噴射粉砕、摩砕又はこれらの混合により得られる場合、これらの方法の1つの前に、固体物質は、50%より高い結晶度、例えば60%より高い結晶度、例えば75%より高い結晶度、例えば90%より高い結晶度、例えば95%より高い結晶度、例えば99%より高い結晶度のように、実質的に結晶質であることができる。4つの方法の1つ又はこれらの混合の後、固体物質は、粒子の核が実質的に結晶質であり、粒子の外層が実質的に非晶質であることができる。
【0046】
多数の技術を使用して結晶質の内容を決定することができる。例えば、PXRD(粉末X線回折)は、固体物質のX線回折パターンを見る技術である。結晶質粒子は、個別の多形体に特有の「指紋」パターンを有する。逆に、非晶質化合物は、ほとんど又は全く特徴的なパターンを示さず、単に幅広の円丘又は雑音として表れる。示差走査熱量測定(DSC)も、所定のサンプルの結晶化度のレベルと等価でありうる、明確な融点及び融解熱測定値を明らかにする。非晶質物質は、DSCプロフィールと一致しない挙動を示す。結晶質物質のDSCは、結晶質を示す鮮明な吸熱を描く。動的蒸気吸着(DVS)は、結晶質及び非晶質物質の等温線及び吸湿挙動を測定する、急速で連続した方法を提供する。DSCと共にこれを使用して、生成物の安定性を測定することができる。最後に、ラマン分析は、結晶質物質を表示することができ、実際、異なる多形体を区別することができる。非晶質物質は、同じ特徴的なパターンを有さず、そのため結晶相と区別される。本出願の目的において、示差走査熱量測定(DSC)は結晶化度の測定に好ましい方法である。DSC実験は、TA InstrumentsのDSC Q2000 V24.2 build 107を含む多数の市販の装置により実施することができ、前者は、本発明のDCSを測定する好ましい器具である。典型的には、正確な量の物質をDSC器具のサンプルパンに導入し、およそ275℃になるまで、100℃/分までの加熱傾斜に付す。融解熱の測定値としての融点吸熱及び熱流の積分は、結晶化度の定性的及び定量的なそれぞれの測定値である。特に、所定の固体物質では、DSCは、2つのサンプルの直接的な比較を提供し、一方が他方よりも結晶度が多いか又は少ないかを明確に示す。
【0047】
追加的に又は代替的に、本発明の方法を適用する前に、固体物質は、準安定結晶質物質を含むことができる。
【0048】
任意の特定の物質では、当業者は、固体物質が不溶性又は難溶性であるかを容易に決定することができる。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は気液クロマトグラフィー(GLC)は、既知の濃度の溶液に対して基準を作製し、澄んだサンプルを分析することにより、飽和したときの液体サンプル中の可溶化物質のレベルを決定することを可能にする。前者の方法は、医薬生成物のためにより典型的に使用され、一方、後者は、分析される物質が300℃までの温度で蒸発するのに十分に揮発性である場合に使用され、大部分の医薬生成物が除外される。好ましくは、水を水難溶性物質に非溶媒として使用する。フルチカゾン化合物は、わずか中程度の極性有機物質であり、その結果、水に難溶性であり、非極性アルカンに実質的に不溶性である。好ましくは、フルチカゾン化合物にとって、非溶媒は水又はヘプタンである。そのような物質の更なる非溶媒には、エーテル(例えば、メチルtert−ブチルエーテル)及び室温での可溶性に応じて、メタノール及びエタノール以外のアルコールが含まれる。
【0049】
超音波は、好ましくは、非晶質物質の少なくとも一部分が結晶質物質に変換される又は準安定物質がより安定した物質に変換されるのに必要な、適切な時間及び温度で適用される。例えば、方法は、好ましくは0.1ミリ秒より長く、より好ましくは1ミリ秒より長く、より好ましくは1分より長く、例えば1秒〜24時間、より好ましくは1分〜6時間、より好ましくは5分〜1時間の間実施される。
【0050】
好ましくは、本発明において使用される固体物質は乾燥している。このことは、好ましくは、非溶媒、水及び有機溶媒を含む溶媒を実質的に含有しないことを意味する。このことは、固体物質は実質的に水又は溶媒を含有しないことを意味する。溶媒を実質的に含有しないとは、固体物質が、5重量%未満の溶媒、より好ましくは4重量%未満、より好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%の溶媒を含有することを意味する。
【0051】
水和の水を含有する固体物質、及び分子溶媒和物は、結晶の単位格子を組み込むために必要な必須量の水又は溶媒のみを含有するので、実質的に溶媒無含有であるということができる。それ以外は、これらは実質的に水又は溶媒を含有しない。
【0052】
本発明の方法は、フルチカゾン化合物を含み、活性製薬学的成分、製薬学的賦形剤又はこれらの2つ以上の混合物を更に含む噴霧乾燥粒子の加工に、特に有用性を見出す。
【0053】
本発明の好ましい実施態様において、100%未満の結晶度であって、フルチカゾン化合物を含む少なくとも1つの固体物質の結晶化度を増加させる方法であって、
(i)溶媒中で、少なくとも1つの固体物質の溶液を形成する工程;
(ii)溶液を、急速沈殿、冷凍乾燥、凍結乾燥、超臨界溶液の急速膨張、噴霧乾燥又はこれらの混合からなる群より選択される方法に付し、溶解させた固体物質が実質的に乾燥固体物質に変換される工程;
(iii)任意に、固体物質を工程(ii)の方法の液体及び/又は気体成分から単離する工程;
(iv)工程(ii)又は工程(iii)の乾燥固体物質を非溶媒で処理する工程;
(v)工程(iv)の固体物質に、上記非溶媒と接触したときに超音波を適用する工程;及び
(vi)任意に、工程(v)で得られた固体物質を、分離及び/又は乾燥する工程
を含む方法が提供される。
【0054】
そのような方法において、工程(ii)は、好ましくは、固体物質の溶液の噴霧乾燥を含む。従来の噴霧乾燥を使用することができる。噴霧乾燥方法において、生成された固体物質は、通常、実質的に非晶質である。
【0055】
好ましくは、工程(ii)を適用する後に、工程(iii)又は(iv)に入る固体物質は実質的に非晶質であり、例えば、50%未満の結晶度、より好ましくは40%未満の結晶度、より好ましくは25%未満の結晶度、より好ましくは10%未満の結晶度、より好ましくは5%未満の結晶度、例えば1%未満の結晶度である。
【0056】
工程(iv)において、処理するという用語は、乾燥固体物質を非溶媒に暴露することを意味する。これを、工程(ii)により生成された物質を収集するのに使用されるものと同じ又は別の容器において実施することができる。好ましくは、非溶媒の量は、固体物質の量よりも多い。例えば、工程(iv)における固体物質と非溶媒の重量比は、好ましくは1:100、より好ましくは1:10、例えば、1:2、1:3、1:4、1:5などの範囲である。
【0057】
好ましくは、工程(ii)及び/又は工程(iii)により生成された固体物質は、実質的に乾燥している。これは、工程(iv)の方法に入る固体物質の好ましくは全て(100%)が、好ましくは、水及び有機溶媒を含む溶媒を実質的に含有しないことを意味する(ここで用語「溶媒を実質的に含有しない」は、上記に定義されている)。
【0058】
任意の所定の固体物質において、当業者は、負担となることなく適切な溶媒を決定することができる。特定の固体物質に適した溶媒の幾つかの例は以下の通りである。メタノール、エタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、2−プロパノールのような揮発性有機溶媒及び水のような非有機溶媒は、製薬学的に活性な成分の典型的な溶媒である。フルチカゾン化合物に好ましい溶媒は、メタノール及びアセトンである。
【0059】
好ましい賦形剤には、例えば、ラクトース及びステアリン酸が含まれうる。ラクトースは、水又はエタノール/水混合物に溶解しうる。ステアリン酸は、酢酸エチル又はエタノールに溶解しうる。
【0060】
非溶媒(例えば、工程(iv)の方法のもの)は、好ましくは、無水結晶が望ましい場合には実質的に遊離の水(すなわち、予め固体物質と結合して水和物などを形成していない水が)を含有せず、また、固体物質が実質的に可溶性である任意の溶媒も含有しない。非溶媒は、固体物質が実質的に不溶性である場合、水であることができる。
【0061】
網羅的なリストではないが、溶媒及び非溶媒の組み合わせの幾つかの例を表1に示し、好ましくはアセトンが溶媒であり、ヘプタンが非溶媒である。
【0062】
【表1】
【0063】
本発明の粒子を調製するのに適した他の非溶媒には、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン及び1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタンからなる群より選択されるヒドロフルオロアルカンが含まれる。そのような非溶媒の使用は、PMDIに使用される直接配合を促進する。別の実施態様において、ペルフルオロデカリンのような揮発性の低いフッ素化化合物を非溶媒として使用することができる。
【0064】
工程(i)の方法で形成された溶液中の固体物質(好ましくは、製薬学的に許容される物質、製薬学的に許容される賦形剤又はこれらの混合物)の濃度は、好ましくは10mg/ml〜800mg/ml、より好ましくは50mg/ml〜600mg/mlの範囲、より好ましくは100mg/ml〜400mg/mlである。
【0065】
本発明の方法の間、非溶媒の温度は、好ましくは−10℃〜+120℃の間にあり、非溶媒が液体形態のままであることが前提である。好ましくは、非溶媒の温度は、好ましくは0〜80℃、より好ましくは20℃〜60℃の間にある。
【0066】
好ましくは、上記の方法は、順次に行われ、工程(iv)及び(v)は、工程(ii)の直後(又は行われる場合は、任意の工程(iii)の直後)に実施される。「直後」とは、工程(ii)(又は行われる場合は、工程(iii))の噴霧乾燥粒子が工程(ii)を受けてから1時間以内、好ましくは工程(ii)を受けてから30分以内、好ましくは5分以内、好ましくは1分以内に工程(iv)及び(v)において加工されることを意味する。好ましくは「直」とは、任意の中間工程がないことを意味する。好ましくは、上記の方法は、連続方法である。例えば、方法は、未加工物質を連続的に供給することができ、加工物質を連続的に又は漸増的に取り出すことができる。あるいは、方法は、バッチ型方法であることができ、ここで方法は、未加工物質をバッチ様に供給し、加工物質をバッチで取り出すことができる。
【0067】
あるいは、工程(ii)及び工程(iii)を、工程(iv)の6か月前、より好ましくは3か月前、より好ましくは1か月前、より好ましくは1週間前、より好ましくは1日前のように、工程(iv)の前に実施することができる。
【0068】
工程(v)で得られた固体物質を、本明細書のこれ以降、「活性粒子」と呼ぶ場合がある。
【0069】
本発明の更なる実施態様において、100%未満の結晶度であって、フルチカゾン化合物を含む少なくとも1つの固体物質の結晶化度を増加させる方法であって、
(a)少なくとも1つの固体物質を、機械的微粉化、粉砕、噴射粉砕、摩砕又はこれらの混合に付す工程;
(b)工程(a)で得られた固体物質を非溶媒で処理する工程;
(c)工程(b)で得られた固体物質に、非溶媒と接触したときに超音波を適用する工程;及び
(d)任意に、工程(c)で得られた固体物質を、分離及び/又は乾燥する工程
を含む方法が提供される。
【0070】
工程(a)を適用した後、工程(b)に用いられる物質は、例えば50%より高い結晶度、例えば60%より高い結晶度、例えば75%より高い結晶度、例えば90%より高い結晶度、例えば95%より高い結晶度、例えば99%より高い結晶度、又は、例えば50%未満の結晶度、例えば40%未満の結晶度、例えば25%未満の結晶度、例えば10%未満の結晶度、例えば5%未満の結晶度、例えば1%未満の結晶度である。
【0071】
工程(b)において、処理するという用語は、乾燥固体物質を非溶媒に暴露することを意味する。これを、工程(a)により生成された物質を収集するのに使用されるものと同じ又は別の容器において実施することができる。好ましくは、非溶媒の量は、固体物質の量よりも多い。例えば、工程(b)における固体物質と非溶媒の重量比は、好ましくは1:100、より好ましくは1:10、例えば、1:2、1:3、1:4、1:5などの範囲である。
【0072】
工程(b)は、工程(a)の直後に実施することができ、ここで「直後」とは、上記に定義されたとおりである。あるいは、工程(a)を、工程(b)の6か月前、好ましくは3か月前、より好ましくは1か月前、より好ましくは1週間前のように、工程(b)の前に実施することができる。
【0073】
吸入により肺深部又は血流に到達する製剤において、製剤の活性剤は、非常に微細な粒子の形態、例えば10μm未満の平均中央空気力学的直径(MMAD)を有さなければならない。10μmを超えるMMADを有する粒子は、咽喉の壁に衝突する可能性があり、一般に肺に到達しないことが十分に確立されている。5〜2μmの範囲のMMADを有する粒子は、一般に呼吸細気管支に付着し、一方、3〜0.05μmの範囲のMMADを有する粒子は、肺胞に付着し、血流に吸収される可能性がある。
【0074】
理想的には、乾燥粉末製剤の活性粒子は、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、より好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下又は好ましくは1.0μm以下のMMADを有するべきである。
【0075】
重要性が高いのは、乾燥粉末剤吸入における組成である。乾燥粉末剤吸入器(DPI)において、活性粒子(1〜5μm)とラクトースのような粗担体粒子(50〜500μm)の混合物を使用して、効果的な薬剤粒子投入を得ることができる。
【0076】
噴霧乾燥粒子は、約10μmまで、好ましくは約100nm〜約10μm、好ましくは約100nm〜約5μm、最も好ましくは約100nm〜約2μm、例えば約110nm、約250nm、約400nm、約700nm又は約1μmなどのMMADを有する。
【0077】
方法の最終生成物である活性粒子も、約10μmまで、好ましくは約100nm〜約10μm、好ましくは約100nm〜約5μm、最も好ましくは約100nm〜約2μm、例えば約110nm、約250nm、約400nm、約700nm又は約1μmなどのMMADを有することができる。
【0078】
本発明の方法に使用される超音波の周波数は、好ましくは、16kHz〜1MHz、好ましくは10〜500kHz、より好ましくは10〜100kHzの範囲、例えば10、20、40、60、80若しくは100kHz又はその間の任意の周波数である。
【0079】
本発明の方法によって生成される固体物質の結晶化度を増加させることに加えて、超音波の適用は、凝集粒状物質の量を低減するために使用することもできる。この凝集低減は、好ましくは、上記に言及した工程(v)又は(c)と同時に実施される。
【0080】
超音波照射に付される、非溶媒と接触する固体物質の非晶質、部分的に非晶質又は準安定結晶質形態の種類に応じて、粒子は、より小型の形態及び/又はより安定した形態に変換されうる。例えば、活性成分はより安定した結晶質形態に変換されうるか、又は超音波照射の前に粒子が不安定な非晶質形態で存在する物質であると、より安定した非晶質形態に変換されうる。非溶媒と接触したときに粒子がどのような形態であろうとも、本明細書において概説した超音波照射が適用されたとき、粒子特性は変化し、より安定した粒子の形成をもたらし、これらをより効率的な方法で医薬又は他の用途に使用することができる。好ましくは、この方法で得られた粒子は、高度に結晶質であり安定している。
【0081】
超音波照射工程が適用されると、粒状スラリーからの結晶の単離を、濾過、遠心分離、噴霧乾燥、超臨界二酸化炭素抽出、単なる蒸発又はこのような技術の2つ以上の混合のような、任意の従来の方法により実施することができる。典型的には、結晶は従来の蒸発方法を使用して単離される。
【0082】
本発明の方法において噴霧乾燥条件及び超音波処理方式を操作することによって、発明者たちは、今、所定の特性を有する結晶又は非晶質体を提供することを可能とした。噴霧乾燥物質を非溶媒中で超音波により所定の時間及び温度で処理することによって、特定の特性を再現性をもって得ることができる。これらの特性には、粒子形態、表面自由エネルギー粒径分布、所望の多形体、並びに単離粒子の流動性に関して低減された静電気及び凝集性/接着性が含まれうる。
【0083】
本発明の方法に付される固体物質、特に粒状固体物質は、フルチカゾン化合物を含み、結晶を形成することができるか又は粒子のより安定した形態をもたらす形態の変化を受けることができる。典型的には、そのような改質粒子は、従来の薬剤送達ビヒクル又は少なくとも1個の所定の改質粒子のために特に設計されうる薬剤送達ビヒクルのような所望の状況における使用のために、より作製し易くなる物理的特性を有する。本明細書において示唆されているように、従来の噴霧乾燥により調製された初期溶液(又は本明細書に参照された他の方法技術のいずれかの初期溶液又は固体物質)には、2個以上の目的の粒子の混合物のような、1個以上の目的の粒子が含まれうる。そのような状況において、2つ以上の目的の活性成分又は少なくとも1つのプロドラッグと少なくとも1つの薬剤若しくは2つ以上の薬剤との組み合わせが、溶質として又は初期固体物質として初期溶液に存在することができ、ここで、超音波処理後の所望の最終用途に応じて、少なくとも1つの活性成分はフルチカゾン化合物である。フルチカゾン化合物に加えて、本発明の方法条件下で結晶化することができる適切な粒子は、コルチコステロイド、β2アゴニスト、抗コリン作用剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、吸入タンパク質又はペプチド、フランカルボン酸モメタゾン;ジプロピオン酸ベクロメタゾン;ブデソニド;デキサメタゾン;フルニソリド;トリアムシノロン;サルブタモール;アルブテロール;テルブタリン;サルメテロール;ビトルテロール;イプラトロピウム臭化物;オキシトロピウム臭化物;クロモグリク酸ナトリウム;ネドクロミルナトリウム;ザフィルルカスト;プランルカスト;ホルモテロール;エホルモテロール;バンブテロール;フェノテロール;クレンブテロール;プロカテロール;ブロキサテロール;(22R)−6a,9a−ジフルオロ−llb,21−ジヒドロキシ−16a,17a−プロピルメチレンジオキシ−4−プレグネン−3,20−ジオン;TA−2005;チプレダン;インスリン;インターフェロン;カルシトニン;副甲状腺ホルモン;及び顆粒球コロニー刺激因子のような、本明細書の方法により結晶質粒子に形成されうる活性成分又は薬剤を含む。
【0084】
2つ以上の固体物質が使用される場合、共結晶が形成されうる。共結晶は、2つ以上の同一ではない中性分子成分の結晶複合体として定義することができ、例えば2つ以上の同一ではない中性分子成分は、活性主成分又はその所望の前駆体、及び、非共有結合、好ましくは主に水素結合を通じて、結晶格子中で互いに結合しているゲストである。ゲストは、別の活性主成分若しくはその所望の前駆体、又は共結晶形成剤であることができる。本発明において、活性主成分又はその所望の前駆体は、フルチカゾン化合物である。
【0085】
医薬共結晶の形成には、別の製薬学的に許容される分子と、所定の活性医薬とを、結晶格子中に組み込むことを伴う。得られた多成分結晶相は、親活性医薬の固有の活性を維持し、同時に特有の生理化学的プロフィールを有する。
【0086】
本明細書で使用されるとき、用語「共結晶形成剤」は、活性主成分又はその所望の前駆体として同じ結晶構造に存在する1つ以上の追加の分子を意味し、1つ以上の追加の分子は、共結晶中の分子間相互結合作用によって、活性主成分又はその所望の前駆体と超分子シントンを形成することができる。
【0087】
一つの実施態様において、共結晶形成剤は、以下の群から選択される少なくとも1つのシントン形成部分を有する少なくとも1つの分子を含む:エーテル、チオエーテル、アルコール、カルボニル、チオール、アルデヒド、ケトン、チオケトン、硝酸エステル、リン酸エステル、チオリン酸エステル、エスエル、チオエステル、硫酸エステル、カルボン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルホンアミド、アミド、第一級アミン、第二級アミン、アンモニア、第三級アミン、イミン、チオシアネート、シアンアミド、オキシム、ニトリル、ジアゾ、有機ハロゲン化物、S含有複素環(例えば、チオフェン)、N含有複素環(例えば、ピロール、イミダゾール又はピリジン)、O含有複素環(例えば、フラン、エポキシド又はペルオキシド)及びヒドロキサム酸部分。
【0088】
更なる実施態様において、ゲストは、例えば活性主成分又はその所望の前駆体と共結晶を形成するために存在することができる。1つ以上のゲストが共結晶に含まれうることが考慮される。したがって、ゲストはそれ自体の活性を有する必要がないが、活性剤の所望の活性を過度に減じない幾つかの活性を有することができる。非活性ゲストは、有益な薬理学的活性を示したことがない、明らかに生物学的に非毒性であるか又は薬理学的に良性である、化合物であることができる。幾つかの場合において、ゲストは、活性剤と同一の活性又は相補的な活性を有することができる。ゲストは、別の活性主成分又はその所望の前駆体であることができる。例えば、幾つかのゲストは、活性主成分又はその所望の前駆体の治療効果を促進することができる。医薬製剤において、ゲストは、活性主成分又はその所望の前駆体又はそれらの塩と共結晶を形成する任意の製薬学的に許容される分子であることができる。
【0089】
ゲスト又は共結晶形成剤は、酸であることができ、両方とも中性態様であるが、シュウ酸又は適切なカルボン酸のような場合では、カフェインとの共結晶として調製されるとき、非共有相互作用(主に水素結合)により挙動することができ、例えばアミンとの反応又はプロトン交換のようなイオン塩を形成する場合では、プロトン供与体として挙動することができる。同様に、安息香酸及びコハク酸は、フルオキセチン塩酸塩と共結晶を形成する場合では、中性態様で挙動し(ホルマールプロトン交換なし)又は安息香酸ナトリウム若しくはコハク酸ナトリウムのようなイオン塩を形成するプロトン交換態様で挙動する。これらの化合物は、それ自体イオン性のゲストであることができる。中性ゲストは、好ましくは非イオン性のゲストである。イオン性ゲストは、イオン結合を有する化合物又は錯体である。ゲストは、塩化物(又は他のアニオン)と水素結合を形成する酸であることができる。イオン性ゲストは、イオン相互作用及び引力により例示されるようなイオン性を有する化合物又は錯体である。ゲストは、医薬成分と水素結合を形成する酸であることができる。例えば、酸である適切なゲストには、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、セバシン酸、アルギン酸、シクラミン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−オキソ−5−グルタル酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ニコチン酸、ピログルタミン酸及び4−アセトアミド安息香酸が含まれる(がこれらに限定されない)。本出願に提示されている溶質及び活性主成分には、その塩及び/又は溶媒和物が含まれる。共結晶は、WO2005/089375に記載されている。
【0090】
本発明により作製されうる他の粒子は、鎮痛薬、例えばコデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニル又はモルヒネ;アンギナール調合剤、例えばジルチアゼム;抗アレルギー薬、例えばクロモグリク酸、ケトチフェン又はネドクロミル;抗感染症薬、例えばセファロスポリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリン又はペンタミジン;抗ヒスタミン薬、例えばメタピリレン;抗炎症薬、例えばベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、チプレダン、トリアムシノロン、アセトニド又はフルチカゾン;鎮咳薬、例えばノスカピン;気管支拡張薬、例えばエフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、ホルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピルブテロール、レプロテロール、リミテロール、サルブタモール、 サルメテロール、テルブタリン、イソエタリン、ツロブテロール、オルシプレナリン又は(−)−4−アミノ−3,5−ジクロロ−a[[[6−[2−(2−ピリジニル)エトキシ]ヘキシル]アミノ]メチル]ベンゼンメタノール;利尿薬、例えばアミロライド;抗コリン作用薬、例えばイプラトロピウム、アトロピン又はオキシトロピウム;ホルモン、例えば コルチゾン、ヒドロコルチゾン又はプレドニゾロン; キサンチン、例えばアミノフィリン、コリンテオフィリン、リシンテオフィリン酸塩又はテオフィリン;並びに治療タンパク質及びペプチド、例えばインスリン又はグルカゴンのような吸入により有用に送達されうる任意の薬剤又は活性成分をフルチカゾン化合物と組み合わせて含む。活性成分又は薬剤を含む適切な医薬を、塩の形態で(例えば、アルカリ金属若しくはアミン塩として又は酸付加塩として)、又はエステル(例えば、低級アルカリエステル)として、又は溶媒和物(例えば水和物)として使用して、医薬の活性及び/又は安定性を最適化できることが、当業者には理解される。
【0091】
本発明の方法により得られるフルチカゾン化合物粒子の調製に特に適した医薬には、吸入治療による喘息のような呼吸障害の治療において使用される抗アレルギー薬、気管支拡張薬及び抗炎症性ステロイド、例えば、クロモグリク酸(例えば、そのナトリウム塩)、サルブタモール(例えば、その遊離塩基若しくはその硫酸塩)、サルメテロール(例えば、そのキシナホ酸塩)、テルブタリン(例えば、その硫酸塩)、レプロテロール(例えば、その塩酸塩)、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(例えば、その一水和物)、(−)−4−アミノ−3,5−ジクロロ−α−[[[6−[2−(2−ピリジニル)エトキシ]ヘキシル]アミノ]−メチル]ベンゼンメタノール、グリコピロニウム臭化物、ダロトロピウム、アクリジニウム、チオトロピウム(例えば、その臭化物塩)、テオフィリン、アロフィリン、ザフィルルカスト、モンテルカスト、カルモテロール(例えば、その塩酸塩)、ホルモテロール(例えば、そのフマル酸塩)又はインダカテロール、並びにその生理学的に許容される塩及び溶媒和物が含まれる。
【0092】
好ましい実施態様において、固体物質は、フルチカゾン化合物(例えば、そのプロピオン酸エステル)とサルメテロール(例えば、そのキシナホ酸塩)の混合物を含む。
【0093】
好ましい実施態様において、固体物質は、フルチカゾン化合物(例えば、そのプロピオン酸エステル又はフランカルボン酸エステル)とサルメテロール(例えば、そのフマル酸塩)の混合物を含む。
【0094】
ここでも、本発明の方法により作製される粒子は、本明細書において示唆されている2つ以上の活性成分の組み合わせを含有できることが、当業者には理解される。活性成分は、本明細書前記に記述された活性成分の適切な組み合わせから選択することができる。本発明の粒子はフルチカゾン化合物を含む。
【0095】
別の実施態様において、3つの成分を組み合わせることができ、コルチコステロイド、気管支拡張薬(例えば、ベータアゴニスト)及び抗コリン作用薬の組み合わせが含まれる。一例は、フルチカゾン/サルメテロール/チオトロピウム臭化物である。
【0096】
本発明の方法により得られる粒子の他の例は、クロモグリク酸ナトリウム若しくはネドクロミルでありうるクロモン又は炭水化物、例えばヘパリンを、フルチカゾン化合物と組み合わせて含むことができる。
【0097】
特に好ましい組み合わせは、フルチカゾン化合物とサルメテロールである。この好ましい実施態様において、製薬学的に許容される用量のそれぞれの用量は、約50μgのサルメテロール及び100μg、250μg又は500μgのフルチカゾン化合物を含有する。
【0098】
本発明の方法により作製される粒子は、フルチカゾン化合物を含み、吸入に適した活性成分を更に含むことができ、全身用途の薬理学的活性剤であることができる。例えば、そのような活性粒子は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)、ロイコチン又はインスリン(プロインスリンを含む)、シクロスポリン、インターロイキン、サイトカイン、抗サイトカイン及びサイトカインレセプター、ワクチン、成長ホルモン、ロイプロリド及び関連する類似体、インターフェロン、デスモプレシン、免疫グロブリン、エリトロポエチン及びカルシトニンのような、ペプチド又はポリペプチド又はタンパク質を含むことができる。
【0099】
あるいは、本発明の方法により作製されるフルチカゾン化合物を含む活性成分は、経口投与に適している場合がある。経口投与用薬剤は、上記に記述した全身用薬剤の1つでありうる。活性成分は、消化管において低い可溶性を示す物質、例えば、三ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び次硝酸ビスマスであることができる。有機化合物は、例えば、コンビナトリアル化学、ロシグリタゾン及び他の関連するグリタゾン薬、ヒドロクロロチアジド、グリセオフルビン、ラミブジン及び他のヌクレアーゼ逆転写インヒビター、シンバスタチン及び他のスタチン薬、ベザフィブレート及び他のフィブレート薬、ロラタジン、並びに他の任意の生理学的に許容される塩及びそれらの誘導体の全ての生成物を含むことができる。
【0100】
本発明の方法による加工に適した製薬学的賦形剤には、例えば、炭水化物、特にフルクトース、グルコース及びガラクトースのような単糖類;スクロース、ラクトース及びトレハロースのような非還元二糖類;ラフィノース及びメレジトースのような非還元オリゴ糖類;マルトデキストリン、デキストリン及びシクロデキストリンのような非還元デンプン由来多糖類生成物;並びにマンニトール及びキシリトールのような非還元アルジトールが含まれる。更に適した賦形剤には、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物が含まれる。上記の賦形剤のいずれかの2つ以上の混合物も考慮される。
【0101】
フルチカゾンの製薬学的に許容されるエステル誘導体は、本発明の特に好ましいフルチカゾン化合物である。前記製薬学的に許容されるエステルとして好ましいものは、直鎖又は分岐鎖低級アルカン酸エステル、例えば酢酸エステル、イソ酪酸エステル、ピバル酸エステル;低級アルコキシ低級アルカン酸エステル、例えばメトキシ酢酸エステル、3−エトキシプロピオン酸エステル;アリールカルボン酸エステル、例えば安息香酸エステル、ニコチン酸エステル;カルバミン酸及びモノ−又はジ−低級アルキルカルバミン酸エステル(カルバメート)、例えばモノ−若しくはジ−エチルカルバミン酸エステル又はN−モノ−若しくはジ−メチルカルバミン酸エステルである。最も好ましいものは、フルチカゾンのプロピオン酸エステル及びフロンカルボン酸エステルである。
【0102】
医療における使用では、本発明の化合物の塩は、非毒性の「製薬学的に許容される塩」と呼ばれる。FDAにより認証された製薬学的に許容される塩形態(International J. Pharm. 1986, 33,201 217; J. Pharm. Sci, 1977, Jan, 66 (1), p1)には、製薬学的に許容される酸性/アニオン性又は塩基性/カチオン性の塩が含まれる。
【0103】
本発明の酸性又は塩基性化合物の製薬学的に許容される塩は、当然のことながら、遊離塩基又は酸を少なくとも1つの理論量の所望の塩形成酸又は塩基と反応させるような、従来の手順により作製することができる。
【0104】
本発明の酸性化合物の製薬学的に許容される塩には、ナトリム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛及びアンモニウムのような無機カチオンとの塩、並びに有機塩基との塩が含まれる。適切な有機塩基には、NメチルDグルカミン、アルギニン、ベンザチン、ジオラミン、オーラミン、プロカイン及びトロメタミンが含まれる。
【0105】
本発明の塩基性化合物の製薬学的に許容される塩には、有機又は無機酸から誘導される塩が含まれる。適切なアニオンには、酢酸塩、アジピン酸塩、ベシル酸塩、臭化物、カンシラート、塩化物、クエン酸塩、エジシル酸塩、エストレート、フマル酸塩、グルセプト酸、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヒクレート、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、マレイン酸塩、メシレート、臭化メチル、硫酸メチル、ナプシレート、硝酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチレート、タンニン酸塩、テレフタル酸塩、トシレート及びトリトヨージドが含まれる。
【0106】
非溶媒及び溶媒は、任意に活性成分又は活性前駆体と組み合わされる特定のフルチカゾン化合物に適しているように選択されるべきであることが理解される。ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びフルチカゾンプロピオン酸エステルのようなコルチコステロイドを、ジクロロメタン又はメタノールに溶解し、ヘプタンのような非溶媒中で超音波処理することができる。サルメテロールキシナホ酸塩及びサルメテロールフマル酸塩のようなβ2−アゴニストをメタノールに溶解し、アセトン、酢酸エチル又はヘプタンのような非溶媒中で超音波処理することができる。
【0107】
サイクロン分離のような従来の分離工程に従い、乾燥粒子を非溶媒と接触させ、次に超音波照射に付して、結晶を形成するか又は本明細書前記に記載した所望のMMADの非晶質構造を焼還及び/若しくは安定化する。粒子を、使用される場合は超音波プローブの又はこの構造が用いられる場合は巻き付け超音波エネルギー変換器アセンブリーのような超音波エネルギー変換器の稼働近辺に付される。そのような装置の適切な例は、WO00/35579において確認されている。超音波エネルギーを、連続的方法又はパルス適用のように非連続的方法により適用することができる。任意の適切な超音波照射供給源を使用することができる。連続超音波フローセルのような超音波プローブを、例えば混合容器の中に挿入することができるか、超音波発信器を混合容器の中に含めることができるか、或いは混合容器を超音波浴の中に収容することができるか又は超音波変換器を混合容器の外壁に固定することができる。超音波の振幅及び周波数は、核生成及び結晶成長に影響を与える。超音波の周波数は、例えば、16kHz〜1MHz、好ましくは10〜500kHz、より好ましくは10〜100MHz、例えば、10、20、40、60、80若しくは100kHz又は30kHz〜50kHzのようなその間の任意の周波数であることができる。
【0108】
超音波照射は、所定の用途において、所望の大きさの結晶の生成に適した振幅又は出力密度で用いられる。発射面が例えば80cm
2の実験室プローブ系では、選択される振幅は、約1〜30μm 、典型的には3〜20μm 、好ましくは5〜10μm、例えば6μmであることができる。8cm
2のプローブ面及び5〜80Wの所要電力を有するプローブは、2〜15μmの振幅を使用して約0.6〜12.5W/cm
2の出力密度をもたらす。好ましくは、フローセル、例えば6リットルのフローセルに結合している変換器を含むWO03/101577に記載されているような大型の系では、用いられる変換器の出力密度は、10〜100W/L、好ましくは30〜80W/L、より好ましくは50〜75W/L、例えば60W/L〜70W/Lであることができる。本発明は、工業規模の生産に特に適している。
【0109】
超音波フローセルにおける混合成分の滞留時間は、好ましくは0.1ミリ秒より長く、より好ましくは1ミリ秒より長く、より好ましくは1分より長く、例えば1秒〜24時間、より好ましくは1分〜6時間、より好ましくは5分〜1時間であることができる。
【0110】
生成された結晶を、当該技術の従来の方法を使用して結晶を引き出すことによりバッチチャンバーから又は水性懸濁剤として収集又は採取することができる。
【0111】
本発明により生成される粒子は、実質的に結晶質であり、低減された吸湿の傾向を示し、このこと物理的及び化学的安定性を増加することに寄与する。「実質的に結晶質」とは、粒子の総重量に対して結晶粒子重量%として表される粒子の結晶化度が、90%より高く、好ましくは93%より高く、さらにより好ましくは95%より高いことを意味する。前記粒子は、特に粒子が吸入用の乾燥粉末剤として配合される場合、均質の製剤を容易に得ることを可能にする優れた分散特性も示す。粒子の結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折又はマイクロ熱量測定法のような当業者に既知の他の技術、好ましくはDSCを使用して決定することができる。
【0112】
好ましくは、フルチカゾン化合物は、50μgを超える、好ましくは80μg以上、より好ましくは100μg以上の単回治療用量を有する。
【0113】
好ましくは、本発明の活性粒子は10μm未満の体積直径を有し、より好ましくは、所定の組成物において少なくとも90重量%の活性成分粒子は、上記に記載されたレーザー回折により、好ましくはMalvern又は同等の装置を使用して、体積直径として知られている特徴的な等体積球相当径を測定して決定された10μm以下の直径を有する。考慮されるパラメーターは、粒子の大きさ独立密度を推定する質量直径に対応する、それぞれd(10)、d(50)及びd(90)と表される10%、50%及び90%の粒子の体積直径(VD)(μm)である。
【0114】
好ましくは、10重量%以下の前記粒子が、0.8μm未満の体積直径d(10)を有し、好ましくは、50重量%以下の前記粒子が、2.0μm未満の体積直径d(50)を有し、好ましくは、90重量%以下の前記粒子が、10μm以下の体積直径d(90)を有する。好ましくは、100重量%の前記粒子が、10μm以下の体積直径を有する。
【0115】
本発明の粒子の活性成分は、実質的に純粋な形態である。「実質的に純粋な形態」とは、少なくとも95%w/w、好ましくは少なくとも98%又は少なくとも99%w/wの純度を意味する。化学的な純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のような当業者に既知の方法に従って決定することができる。
【0116】
別の態様において、本発明は、本発明の粒子を含む、吸入による投与用の製剤を提供する。粒子を、1つ以上の製薬学的に許容される賦形剤、添加剤、希釈剤又は担体と一緒に、前記製剤に配合することができる。例えば、製剤は、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)により投与される、エアロゾル担体としての噴射剤中の懸濁形態で提供される。
【0117】
懸濁製剤は、界面活性剤及び湿潤剤のような追加の賦形剤を含むことができる。
【0118】
好ましい実施態様において、製剤は、乾燥吸入粉末剤の形態で、より好ましくは相互作用規則混合物の形態で、すなわち、本発明の粒子を、粗粒子からなる薬理学的に不活性で生理学的に許容される賦形剤により希釈することによって、提供される。
【0119】
有利には、吸入用の前記粉末製剤は、本発明の粒子と、生理学的に許容される賦形剤の粗粒子(本明細書以降、「担体粒子」と呼ぶ)、例えば50μmより大きい中央粒子径(MMD)、好ましくは50μm〜500μm、より好ましくは150〜400μm、さらにより好ましくは210〜355μmの中央粒子径(MMD)を有する粒子とを含むことができる。別の実施態様において、粗粒子は、90〜150μmを含むMMDを有する。MMDは、頻度分布を半分に割った粒子直径であり、エアロゾル質量の50パーセントが、大きな直径の粒子を有し、エアロゾル質量の50パーセントが、小さな直径の粒子を有する。
【0120】
好ましくは、少なくとも50重量%の担体粒子が、500μm未満の直径を有し、より好ましくは、少なくとも80重量%の担体粒子が、500μm未満の直径を有し、より好ましくは、少なくとも90重量%の担体粒子が、500μm未満の直径を有し、より好ましくは、100重量%の担体粒子が、500μm未満の直径を有する。
【0121】
生理学的に許容される賦形剤を、動物若しくは植物供給源又はこれらの組み合わせの任意の非晶質又は結晶質の生理学的に許容される薬理学的に不活性な物質から構成することができる。好ましい物質は結晶糖であり、例えば、グルコース若しくはアラビノースのような単糖類、又はマルトース、サッカロース、デキストロース若しくはラクトースのような二糖類である。マンニトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトールのようなポリアルコールを使用することもできる。最も好ましい物質は、α−ラクトース一水和物である。
【0122】
市販のラクトースの例は、Capsulac(商標)及びPharmatose(商標)である。市販のマンニトールの例は、Pearlitol(商標)である。
【0123】
製剤を、呼吸作動式鼻吸入器により投与される懸濁剤又は粉末剤の形態で提供することもできる。
【0124】
前記粉末製剤を、当該技術に既知の任意の種類のDPIを用いて吸入により投与することができる。
【0125】
DPIは、2つの基本的な種類に分けることができる:i)活性化合物の予め細分化された単回用量を投与するための単回用量吸入器;ii)予め細分化された単回用量を有するか又は多回用量に十分な活性成分の量を予め装填した多用量乾燥粉末剤吸入器(MDPI)。必要とされる吸気流速(l/分)に基づき、設計及び機械的特徴に厳密に依存して、DPIは、i)低抵抗装置(>90l/分);ii)中抵抗装置(約60l/分);iii)高抵抗装置(約30l/分)に分けられる。
【0126】
活性成分の薬理学的活性に関して、本発明の粒子を、軽度、中程度若しくは重篤な急性若しくは慢性の症状の予防及び/若しくは治療のため又は喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸疾患の予防的治療のために指示することができる。慢性閉塞性細気管支炎及び慢性気管支炎のような炎症及び粘液の存在よりもたらされる末梢気道の閉塞によって特徴付けられる他の呼吸障害も、これらの使用により利益を受ける。
【0127】
吸入による投与では、本発明の方法により生成される粒状活性成分は、好ましくは担体粒子と配合される。前記活性成分は、製剤の0.1〜90重量%、好ましくは製剤の0.25〜50重量%、より好ましくは1〜25重量%で存在する。好ましくは、担体粒子は、製剤の10〜99.9重量%、より好ましくは製剤の50〜99.75重量%、より好ましくは75〜99重量%の量で存在することができる。
【0128】
特に好ましい実施態様において、本発明により生成された粒子の活性成分は、ブデソニド、ホルモテロール、サルメテロール、ベクロメタゾン又はベタメタゾン、並びにこれらの混合物及び共結晶のいずれかと組み合わせたフルチカゾン化合物を含む(好ましくは、前記物質から実質的になる)。このリストは、前記化合物の塩、エステル、水和物及び溶媒和物も包含する。
【0129】
走査電子顕微鏡法(SEM)により、前記活性粒子が、出発物質のSEM画像と比較したとき、有意に特徴的であることを明確に観察することができる。本発明の粒子が、より均一で規則的な球状を示し、少量の微細粒子も存在する出発物質と同じように破損して不規則であるようには見えない。理論に束縛されることなく、表面形態の前記の差は、本発明の粒子の低い凝集傾向、したがって優れた分散特性の説明に寄与すると考えられる。
【0130】
本発明により生成される活性成分の粒子は、好ましくは実質的に球状である。このことは、粗面を有する粒子を排除するものではない。好ましくは、本発明により生成される粒子は、最大直径と最小直径の平均比が、1.3〜1:1、より好ましくは1.25〜1:1、より好ましくは1.2〜1.01:1、より好ましくは1.15〜1.02:1、より好ましくは1.1〜1.03:1、より好ましくは1.075〜1.05:1である。したがって、本発明の粒子は、実質的に球状であることが分かる。
【0131】
粒径と形状分析を組み合わせたSympatec QICPIC画像分析センサーのような、多数の粒径及び形状分析器具が利用可能である。この1ナノ秒未満の極めて短い暴露時間を用いる技術は、100m/秒までの速度の最速粒子の鮮明な画像も提供する分散単位の使用を可能にする。このことは、凝集した微細及び凝集性粉末の正確な分散を保証する。1μm〜20μmの粒径を測定することができる。一次測定データは、30000の一次分類に記憶され、個別の限定フォーマットにより評価することができる。予め定義された粒度分類のセットを、存在する測定仕様に容易に適合させることができる。高速データ圧縮モジュールは、1秒あたり500枚までの画像の取得を支援する。1μm以下の粒子は、前記に記載されたMalvern又はSympactec回折、好ましくはMalvernレーザー回折のようなレーザー回折技術により測定することができる。
【0132】
接着API薬剤粒子をエアロゾル化するのに必要な力が、接触面の表面エネルギーの合成に比例し、投影接触面に反比例することは、良く知られている。したがって、DPIのエアロゾル化効率を改善する大部分の一般的な手法は、接触面の表面自由エネルギーを低減すること又は粒子形状を変えて接触面を制限することである。表面積は、粒径及び形状のみにより決定されるものではなく、表面形態も表面積に寄与し、波形(すなわち、粗い)粒子は、同じ体積を占める平滑粒子よりも大きな表面積を有する。
【0133】
本発明の方法により調製される薬剤粒子は、特定の表面形態により定義することができる。粒子間力を調節して、肺への付着を向上させることができる。理想的には、接触面、したがって力は、安定した製剤をもたらし、それでも吸入時には容易な分離を可能にするために、薬剤と担体との間に十分な接着をもたらすようなレベルに調整されるべきである。微細粒子画分に対する表面波形の影響を、明確にすることができる。
【0134】
平滑表面ラクトン担体粒子は、微細粒子画分及び微粉化薬剤の分散性を増加することが示されており、一方、他の研究は、波形担体粒子が微細粒子画分を増加することを示した。これらの明らかに矛盾する結果は、表面力平衡は、表面構造だけではなく幾つかの変数によって決まるという仮定により説明することができる。
【0135】
例として記載される粒子では、表面積及び形態測定値は、表面積が粒子相互作用と高度に相関することを明らかにしている。粉末表面積の決定は、所定の圧力で粉末表面に吸着されたガスの量を測定することを含む。過去数十年間にわたって、表面を研究する新たな技術が出現してきた。
【0136】
本発明の粒子の表面積は、吸着性ガスとして窒素を使用するAccelerated Surface Area and Porosimetry Analyser(model ASAP 2000, Micromeritics, Norcross, GA)により決定した。粉末物質(0.3〜0.7g)を窒素下、45℃でおよそ24時間脱ガスして、予め吸着したガス及び蒸気をサンプルの表面から除去した。表面積は、0.07〜0.22の相対圧力(P/Po)で吸着データを使用する、マルチポイントBrunauer, Emmett and Teller(BET)法により決定した。
【0137】
好ましくは、本発明の粒子は、6〜22m
2/g、好ましくは9〜18m
2/g、より好ましくは10〜13m
2/gの範囲、より好ましくは12m
2/gの表面積を有する。
【0138】
逆ガスクロマトグラフィー(Inverse Gas Chromatography, IGC)は、固体物質の表面及び嵩特性を特徴決定するガス相技術である。ICGの原理は非常に簡単であり、従来のガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography, GC)実験の逆である。円柱カラムを、目的の固体物質、典型的には粉末、繊維又は膜で均一に充填し、保持時間及び溶出ピーク形状を、一連の十分に特徴決定された非極性及び極性ガスによって研究する。パルス又は一定濃度のガスを、固定した担体ガス流速でカラムの注入し、パルス又は濃度が先からカラムの底に溶出するのに掛かる時間を検出器により測定する。異なるガス相プローブ分子による一連のIGC測定は、広範囲の接触を可能にする。IGCを、表面エネルギーを測定するため、同様に、加工により引き起こされる表面特性の小さな変化を研究するために使用する。
【0139】
IGCを、本発明の粒子の表面エネルギーを測定するために使用した。IGCは、2セットの条件により実施することができる。有限希釈では、吸着等温線をピークプロフィールから誘導することができ、吸着エネルギー分布を計算するために使用することができる。第2に、無限希釈では、器具の検出限界に近い溶質の量を注入し、この場合、溶質−溶質相互作用は小さく、溶質−吸着剤相互作用のみが測定保持時間に影響を与える。これは、プローブ(ガス)分子と固定粉末との間の分散的と特異的の両方の相互作用を生じることができる。本発明の粒子は、本発明の好ましい方法により調製される粒子の有限及び無限希釈の両方において極めて類似し、ほぼ同一である、表面エネルギーの等エネルギー分布を有することによって特徴付けられ、一方、典型的な微粉化粒子は、有限及び無限希釈において顕著な差を示す。
【0140】
原子間力顕微鏡法(Atomic Force Microscopy, AFM)を使用して凝集−接着平衡を測定することができ、サンプルの表面にプローブチップを接触して設置する(接触モード原子間力顕微鏡法)又はサンプルの表面に非常に近接して設置する(非接触及びタッピングモード原子間力顕微鏡法)ことによって、高さを測定するように機能する。プローブチップは、チップから受ける力に比例して湾曲する弾性カンチレバーに結合している。原子間力顕微鏡はサンプルをラスター走査して、データポイントのマトリックスを生成し、それから定量的な高さ及び粗さ測定値を抽出することができる。タッピングモード原子間力顕微鏡法は、薬剤を含む多様な有機化合物の結晶及び担体粒子ラクトースの接着特性を効果的に画像化する。コロイドプローブ顕微鏡法(Colloid Probe Microscopy, CPM)は、微晶質粒子の間の粒子−粒子接着を測定するために、日常的に使用される。
【0141】
サンプルの波形及び表面形態の程度を、AFMを使用して定量化した。本発明の粒子の表面様相及び粗さ測定値を、Nanoscope IIIコントローラー、Multimode AFM及びJ型スキャナー(全て、Dl, Santa Babara, CA, USA)を使用して調査した。全てのAFM表面様相画像を、画像化が1Hzの走査速度のTESP Olympusチップ(Di, Cambridge, UK)を使用して実施される、タッピングモード操作により記録した。表面粗さ測定値を、1μm×1μm領域で分析した。結晶表面の表面特性の差を定性化するために、表面凹凸の高さの差の実効値表面粗さ測定(R
q)及び平均表面粗さ(R
a)を計算した。
【0142】
力測定の前に、サンプルの各バッチの粒子を、エポキシ樹脂接着剤(Araldite, Cambridge, UK)を使用して、予め定義されたばね定数を有する標準V字形チップレスカンチレバー(DNP-020, Dl, CA, USA)に結合した。3つのチップを各サンプルのために調製し、接着剤の薄層が乾燥する前に、全てのプローブを、光学顕微鏡(倍率50×)により検査して、結合粒子の一体性を確実にした。
【0143】
基材を、周囲条件が25℃(±1.5℃)の一定温度及び35%RH(±3%)の相対湿度で維持して特注の環境チャンバーに収納されているAFMスキャナー台に設置した。相互作用力は、フックの法則を適用し(F=−kz)、基材の変位の関数としてAFMカンチレバーのたわみを記録することによって測定した。個別の力曲線(n=1024)を、4Hzの走査速度及び40nNの圧縮荷重により10μm×10μmにおいて実施した。パラメーターを一定に保持した。
【0144】
本発明の粒子は、実質的に波形表面を有することによって特徴付けられる。好ましくは、本発明の粒子は、ナノメートル規模の表面波形を有する。好ましくは、R
q値は、10〜100nm、より好ましくは20〜90nmである。好ましくは、R
a値は、10〜100nm、より好ましくは20〜90nmである。
【0145】
AFMコロイドプローブ技術の凝集−接着平衡(CAB)手法は、凝集性及び接着性の直接的な定量化−製剤内のAPIの「力平衡]−を可能にする開発である。ミリグラム以下の材料を使用して潜在的な製剤成分の凝集/接着力相互作用を決定する、市販のスクリーニングツールである。
【0146】
CAB手法は、コロイドAFMプローブとして設置されているAPI粒子と、明確に画定されたAPIの結晶質表面と担体基材との間の相互作用力を測定する。CABプロットは、定量化された、賦形剤物質へのAPIの接着傾向に対する凝集性の特徴的測定を可能にする多数のプローブの相互作用から生成される。CAB手法の開発は、器具の検証についての問題及び相互作用表面の真接触領域を決定する必要性を含む、従来のAFMコロイドプローブ方法論に関連する多数の制限を克服した。CAB値の1は、粒子−担体接着の力が粒子−粒子凝集の力と等しいことを示す。CAB比<1は、他の変数が等しいと仮定して、薬剤がそれ自体と凝集性であるよりも担体に対して接着性があることを示し、それによって、ブレンドすると安定した規則的な混合物を形成するとを予測することができる。しかし、CAB比>1は、薬剤が担体に対して接着性があるよりも、それ自体に凝集性があることを示し、ブレンドすると薬剤の凝集塊を含有する均一性の少ない混合物を生成しうることを示唆する。>1のような高いCAB比を有する薬剤−担体の組み合わせは、大きさ、形状、粗さ及び流動性に関して担体の間に潜在的な差があるにもかかわらず、エアロゾル化によってより多くの微細粒子画分(FPF)をもたらす。<1のような低いCAB比を有する薬剤−担体の組み合わせは、担体に対する活性粒子の大きな凝集をもたらし、したがって、活性粒子は、担体に結合したままの可能性が多くなる。このことは、吸入組成物において、担体粒子に結合したままの活性粒子が肺に到達せずに、咽喉又は舌に付着しうることを意味する。好ましくは、本発明により生成される粒子は、微粉化及び粉砕を含む他の方法により調製される粒子よりもはるかに低い凝集性を有する。凝集性の測定に関連し、全ての基材が凝集性及び接着性に関して異なっているので、CAB比は、無次元値であり、比較にとってより有用な測定値である。好ましくは、本発明により生成される粒子は、担体の0.8〜1.3、より好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは1.0〜1.1のCAB比を有する。これは、薬剤のそれ自体の凝集及び薬剤と担体の接着の注意深い平衡である。
【0147】
本発明のエアロゾル製剤の化学的及び物理的安定性、並びに製薬学的許容性は、当業者に周知の技術によって決定することができる。したがって、例えば、成分の化学的安定性は、例えば生成物の長期保存後に、HPLCアッセイにより決定することができる。物理的安定性データは、例えば、漏れ試験、バルブ送達アッセイ(1作動あたりの平均ショット重量)、用量再現性アッセイ(1作動あたりの活性成分)及び噴霧分布分析のような、他の従来の分析技術によって得ることができる。
【0148】
本発明のエアロゾル製剤の粒径分布は、例えばカスケード衝撃又は「Twin Impinger」分析方法によるプレセパレーターを用いる、例えばNext Generation lmpactor(NGI)を使用する従来の技術によって測定することができる。本明細書で使用されるとき、「Twin Impinger」アッセイの参照は、英国薬局方1988年A204〜207頁、付録XVII Cにおいて定義されている“Determination of the deposition of the emitted dose in pressurised inhalations using apparatus A”を意味する。そのような方法は、HPLC移動相でプレセパレーターを充填することを含み、NGIカップのカップは、ヘキサン中の1%v/vシリコーンで被覆されて、粒子の跳ね返りを排除している。典型的には同じ製剤の4つの個別のカプセルを、所定の条件下でNGIに投入する。エアロゾル化の後、NGI装置を解体し、吸入器、カプセル及びNGIの各部品を既知の量のHPLC移動相で洗い流す。次にNGIの各部品に付着した薬剤の量を、HPLCにより決定することができる。FPD決定は、NGIの段階3〜8で収集した薬剤量を表す。FPF発射用量も決定される。微細粒子画分の率(FPF%)又は呼吸画分により決定されるエアロゾル化効率も、評価される。
【0149】
そのような技術は、エアロゾル製剤の「呼吸画分」の計算も可能にする。本明細書で使用されるとき、「呼吸画分」への参照は、上記に記載された方法を使用して、1回の作動あたり送達される活性成分の総量の率として表される、1回の作動あたりのNGIの下部チャンバーに収集された活性成分の量を意味する。本発明の製剤は、医薬の発射用量の10〜30重量%以上、好ましくは14〜26重量%、例えば約15.9重量%の呼吸画分を有することが見出されており、実施例1により例示されている(
図9に示されている)。実施例1(フルチカゾンプロピオン酸エステル)では、従来技術と比較して本発明の粒子に50〜60%のFPFの増加があった。
【0150】
本発明の粒子を含む吸入製剤に使用される噴射剤は、噴射剤として有効にするのに十分な蒸気圧を有する任意のフルオロカーボン又は水素含有クロロフルオロカーボン又はこれらの混合物を含む。好ましくは、噴射剤は、医薬の非溶媒である。適切な噴射剤には、従来の水素含有クロロフルオロカーボン、非クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン及びペルフルオロカーボンなどが含まれる。特に、噴射剤HFA134a及びHFA227又はこれらの混合物を有利に使用することができる。
【0151】
本発明の製剤を、医薬エアロゾル製剤の送達に適したキャニスターに充填することができる。キャニスターは、一般に、プラスチック又はプラスチック被覆ガラス瓶又は好ましくは金属缶、例えば任意に陽極酸化処理、ラッカー被覆及び/若しくはプラスチック被覆されうるアルミニウム缶のような、使用される噴射剤の蒸気圧に耐えることができる容器を含み、容器は、計量バルブで密閉されている。計量バルブは、作動毎に計量された量の製剤を送達するように設計され、バルブを通した噴射剤の漏れを防止するためにガスケットを組み込む。ガスケットは、例えば、低密度ポリエチレン、クロロブチル、白黒ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ブチルゴム及びネオプレンのような、任意の適切なエラストマー材料を含むことができる。
【0152】
適切なバルブは、エアロゾル産業において周知の製造者、例えば、Valois, France(例えば、DF10、DF30、DF60)、Bespak pic, UK(例えば、BK300、BK356)及び3M-Neotechnic Ltd, UK(例えば、SpraymiserW)により市販されている。
【0153】
医薬エアロゾル製造の当業者に周知の従来のバルク製造法及び機械を、充填キャニスターの商業的生産のための大規模バッチの調製に用いることができる。
【0154】
典型的には、医薬用途のために調製されるバッチでは、それぞれの充填キャニスターの重量を検査し、バッチ番号をコード化し、放出試験の前に保存のためにトレーに積み重ねる。
【0155】
各充填キャニスターを、使用前に適切なチャネリング装置に都合良く取り付けて、患者の肺又は鼻腔への医薬の投与用の定量吸入器を形成する。適切なチャネリング装置は、例えば医薬がそれを通って充填キャニスターから計量バルブを介して患者の鼻又は口に送達されうる、バルブ作動器及び円柱又は円錐様経路、例えばマウスピース作動器を含む。定量吸入器は、1回の作動又は「吸い」あたりに医薬の固定単位投与量を送達するように設計され、例えば1吸いあたり10〜5000マイクログラムの範囲の医薬である。医薬の投与を、軽度、中程度又重篤な急性又は慢性症状の治療又は予防的治療のために指示することができる。投与される正確な用量は、患者の年齢及び状態、使用される特定の粒状医薬、投与頻度、最終的には担当医の裁量に応じて決まることが理解される。医薬の組み合わせが用いられる場合、組み合わせの各成分の用量は、一般に、各成分が単独で使用される場合に用いられるものである。典型的には、投与は、1日あたり1回以上、例えば1〜8回であることができ、例として、1回あたり1、2、3又は4回の吸いである。
【0156】
適切な1日の用量は、例えば、疾患の重篤度に応じて50〜2000μmの範囲のフルチカゾンプロピオン酸エステルである。
【0157】
したがって、例えば、各バルブ作動は、25、50、125又は250μmのフルチカゾンプロピオン酸エステルを送達することができる。典型的には、定量吸入器に使用される各充填キャニスターは、医薬の100、160又は240の計量用量又は吸いを含有する。
【0158】
本明細書に記載される充填キャニスター及び定量吸入器は、本発明の更なる態様を含む。
【0159】
ここで本発明は、添付の実施例及び図面を参照して記載される。実施例及び図面は本発明の範囲をいかなる方法によっても制限すると解釈されるべきではないことが理解されるべきである。