【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0008】
(1)堤脚部の洗掘防止工法であって、前記堤脚部が設置された底質における吸出し防止フィルター効果を発揮するための粒径を有する中詰め材を、網状袋体に内包して洗掘防止ユニットを製作し、前記堤脚部を囲む底質に、前記洗掘防止ユニットの少なくとも一部を沈設させるようにして設置する堤脚部の
洗掘防止工法。
【0009】
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットを、網状袋体に、堤脚部が設置された底質における吸出し防止フィルター効果を発揮するための粒径を有する中詰め材を内包して製作する。このとき、洗掘防止ユニットを構成する網状袋体は、中詰め材が脱落せず、かつ、洗掘防止ユニット内外の水の流通を許容するメッシュ粗さのものが用いられることで、洗掘防止ユニット内外の水の適切な流通を許容し、洗掘防止ユニットの波動場での安定性を高めるものとなる。
又、洗掘防止ユニットに作用する波力が、網状袋体を介して中詰め材に作用することで減少し、洗掘防止ユニット周辺部の底質への、波力の影響も減少させることとなる。しかも、堤脚部を囲む底質に、洗掘防止ユニットの少なくとも一部を沈設させるようにして設置することで、洗掘防止ユニットはその周囲から拘束され、耐波安定性も向上するものとなる。
更に、洗掘防止ユニット内部での中詰め材の移動は許容されることから、洗掘防止ユニット自体が適切に変形して、設置環境に応じて安定した形状へと収まることとなる。又、同様の理由から、全体が固体の態様と異なり、洗掘防止ユニットにはいわゆるロッキングは生じないものである。
【0010】
(
2)上記(
1)項において、前記洗掘防止ユニットを、前記堤脚部を囲む底質の表面に載置し、該洗掘防止ユニット下方の底質に対し水を高圧噴射して底質の液状化を促し、前記洗掘防止ユニットを自重により底質へと沈設させる堤脚部の洗掘防止工法(請求項
3)。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットを、堤脚部を囲む底質の表面に載置し、洗掘防止ユニット下方の底質に対し水を高圧噴射し、底質をほぐして液状化を促し、洗掘防止ユニットを自重により底質へと沈設させることで、局所洗掘の発生が始まる部分の底質を、洗掘防止ユニットに置き換えるものである。
【0011】
(
3)上記(
2)項において、前記洗掘防止ユニットの上面が、底質の表面と同一レベル以下となるように、前記洗掘防止ユニットの全体を沈設させる堤脚部の洗掘防止工法(請求項2)。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットの上面が、底質の表面と同一レベル以下となるように、洗掘防止ユニットの全体を、堤脚部を囲む底質に沈設することで、洗掘防止領域の底質と洗掘防止ユニットとを置き換えるものである。そして、沈設された洗掘防止ユニット自体が、底質中で吸出し防止フィルター層を形成することにより、洗掘防止領域における底質の吸出しが生じ得ず、局所洗掘を防止するものとなる。
しかも、洗掘防止ユニットをその上面が底質の表面と同一レベル以下となるように沈設することで、設置される水域の水の流速や圧力の地形変化による急変点が、洗掘防止ユニットの設置によって生じることがない。又、洗掘防止ユニット内を水が移動することで、乱流、摩擦等により水流のエネルギーは失われて減速する。このため、洗掘防止ユニットと底質との境界部分において、底質が移動する外力が増大することは無く、この境界部分での局所洗掘も回避するものとなる。
【0012】
(4)上記
(2)(3)項において、前記洗掘防止ユニットを気中にて環状に構成し、該洗掘防止ユニットを、前記堤脚部を囲む底質の表面に載置する際に、前記洗掘防止ユニットの環状を維持して前記堤脚部上方から挿通し、前記堤脚部を囲む底質の表面へと載置する堤脚部の洗掘防止工法(請求項
3)。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、予め、洗掘防止ユニットを気中にて環状に構成するものである。そして、洗掘防止ユニットを、堤脚部を囲む底質の表面に載置する際に、洗掘防止ユニットの環状を維持して堤脚部上方から挿通し、堤脚部を囲む底質の表面へと載置することで、洗掘防止ユニットは、堤脚部の周囲の底質上に、平面視で円形に隙間無く載置されるものである。そして、この円形を維持したまま、堤脚部を囲む底質に、少なくとも一部を沈設させることで、堤脚部を囲む領域において、洗掘防止ユニットの円周方向に隙間無く、上記作用を奏するものとなる。
【0013】
(5)上記
(2)(3)項において、前記洗掘防止ユニットを、前記堤脚部を囲む底質の表面に載置する際に、複数の洗掘防止ユニットを、平面視で環状に隙間無く並べる堤脚部の洗掘防止工法(請求項
4)。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、複数の洗掘防止ユニットを並べることで、全体として、平面視で環状に隙間のない洗掘防止ユニット集合体を構成するものである。そして、この円形を維持したまま、堤脚部を囲む底質に、少なくとも一部を沈設させることで、堤脚部を囲む領域において、洗掘防止ユニットの円周方向に隙間無く、上記作用を奏するものとなる。又、この場合、必要に応じて、個々の洗掘防止ユニット同士を、洗掘防止ユニットを構成する網状袋体と同等の強度を有するロープ等で緩やかに連結することにより、沈設時や波動場におかれた状態で、各ユニットの飛散をより確実に防止するものとなる。
【0014】
(6)上記(1)から(5)項において、前記洗掘防止ユニットを、底質の深さ方向に複数層沈設する堤脚部の洗掘防止工法(請求項
5)。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットを、底質の深さ方向に複数層沈設することで、必要な厚みの洗掘防止ユニット層を構成するものである。又、下層の洗掘防止ユニットは、上層の洗掘防止ユニットによって拘束され、耐波安定性がより一層高まるものである。
【0015】
(7)上記(1)から(6)項において、前記洗掘防止ユニットを上方から消波構造体で覆う堤脚部の洗掘防止工法。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットを更に上方から消波構造体で覆うことで、洗掘防止ユニットの耐波安定性をより向上させるものである。
【0016】
(8)堤脚部の洗掘防止構造であって、前記堤脚部が設置された底質における吸出し防止フィルター効果を発揮するための粒径を有する中詰め材を、網状袋体に内包してなる洗掘防止ユニットが、前記堤脚部を囲む底質に、少なくとも一部が沈設するように設置されている堤脚部の
洗掘防止構造。
【0017】
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、洗掘防止ユニットを、網状袋体に、堤脚部が設置された底質における吸出し防止フィルター効果を発揮するための粒径を有する中詰め材を内包して製作される。このとき、洗掘防止ユニットを構成する網状袋体として、中詰め材が脱落せず、かつ、洗掘防止ユニット内外の水の流通を許容するメッシュ粗さのものが用いられることで、洗掘防止ユニット内外の水の適切な流通を許容し、洗掘防止ユニットの波動場での安定性を高めるものとなる。
又、洗掘防止ユニットに作用する波力が、網状袋体を介して中詰め材に作用することで減少することとなり、洗掘防止ユニット周辺部の底質への、波力の影響も減少させることとなる。しかも、堤脚部を囲む底質に、洗掘防止ユニットの少なくとも一部が沈設するように設置されることで、洗掘防止ユニットはその周囲から拘束され、耐波安定性も向上するものとなる。
更に、洗掘防止ユニット内部での中詰め材の移動は許容されることから、洗掘防止ユニット自体が適切に変形して、設置環境に応じて安定した形状へと収まることとなる。又、同様の理由から、全体が固体の態様と異なり、洗掘防止ユニットにはいわゆるロッキングは生じないものである。
【0018】
(9)上記(8)項において、前記洗掘防止ユニットの上面が、底質の表面と同一レベル以下となるように、前記洗掘防止ユニットの全体が沈設されている堤脚部の
洗掘防止構造。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、洗掘防止ユニットの上面が、底質の表面と同一レベル以下となるように、洗掘防止ユニットの全体が、堤脚部を囲む底質に沈設されていることで、洗掘防止領域の底質と洗掘防止ユニットとを置き換えるものである。そして、沈設された洗掘防止ユニット自体が、吸出し防止フィルター層を形成することにより、洗掘防止領域における底質の吸出しが生じ得ず、局所洗掘を防止するものとなる。
しかも、洗掘防止ユニットをその上面が底質の表面と同一レベル以下となるように沈設することで、設置される水域の水の流速や圧力の地形変化による急変点が、洗掘防止ユニットの設置によって生じることがない。又、洗掘防止ユニット内を水が移動することで、乱流、摩擦等により水流のエネルギーは失われて減速する。このため、洗掘防止ユニットと底質との境界部分において、底質が移動する外力が増大することは無く、この境界部分での局所洗掘も発生しないものである。
【0019】
(10)上記(7)(8)項において、前記洗掘防止ユニットは、平面視で環状に形成されている堤脚部の
洗掘防止構造。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、洗掘防止ユニットは、平面視で環状に形成され複数の洗掘防止ユニットにより、堤脚部を囲む領域において、上記作用を奏するものとなる。例えば、複数の洗掘防止ユニットを隙間無く並べることで、全体として、平面視で環状に隙間のない洗掘防止ユニット集合体を構成するものである。
【0020】
(11)上記(8)項において、前記洗掘防止ユニットを構成する網状袋体が、環状袋体である堤脚部の
洗掘防止構造。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、環状袋体の内部に、気中にて中詰め材を充填することで、洗掘防止ユニットを気中にて環状に構成することが可能なものである。この、環状の洗掘防止ユニットを、洗掘防止ユニットの環状を維持して堤脚部上方から挿通し、堤脚部を囲む底質の表面へと載置することで、洗掘防止ユニットは、堤脚部の周囲の底質上に、平面視で円形に隙間無く載置されるものである。そして、例えば、洗掘防止ユニット下方の底質に対し水を高圧噴射して、底質をほぐすことにより液状化を促し、洗掘防止ユニットを自重により底質へと沈設されるものである。
【0021】
(12)上記(8)項において、前記洗掘防止ユニットが、平面視で、環状に複数並んで形成されている堤脚部の
洗掘防止構造。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、複数の洗掘防止ユニットが並ぶことで、全体として、平面視で環状に隙間のない洗掘防止ユニット集合体が構成されるものである。又、この場合、必要に応じて、個々の洗掘防止ユニット同士を、洗掘防止ユニットを構成する網状袋体と同等の強度を有するロープ等で緩やかに連結することにより、沈設時や波動場に置かれた状態で、各ユニットの飛散をより確実に防止するものとなる。
【0022】
(13)上記(8)から(12)項において、前記洗掘防止ユニットが、底質の深さ方向に複数層沈設されている堤脚部の
洗掘防止構造。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、洗掘防止ユニットが、底質の深さ方向に複数層沈設されていることで、必要な厚みの洗掘防止ユニット層が構成されるものである。又、下層の洗掘防止ユニットは、上層の洗掘防止ユニットによって拘束され、耐波安定性がより一層高まるものである。