(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2には、太陽光または人工光源による光の波長を、植物の光合成に適した波長域に変換する技術が開示されているものの、これらの技術の効果を調査に係る開示内容においては、波長変換後の植物に照射された蛍光が、光合成に最も適した波長域から外れた波長域となっており、栽培効率が十分に向上されるものではなない。加えて、特許文献1には、吸収する光の波長が特定されておらず、太陽光とは異なり通常特定の波長の光のみが発光される人工光源にこの技術を適用することはできない。また、特許文献3には、太陽光中の紫外線を吸収することで、蛍光を放出する材料を利用する技術が開示されているが、人工光源による光には紫外線がほとんど含まれておらず、人工光源にこの技術を適用することはできない。
【0006】
さらに、特許文献4および5では半導体光源により、光合成に適した波長域を設定する技術が開示されているが、植物栽培に必要な照度を維持するためには、半導体光源への投入エネルギーが大きく、コスト高となることが問題であった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、人工光源から発せられた光を、低コストで植物の光合成に適した波長を有する光に変換して、栽培効率を向上させることができる植物育成方法および植物育成材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る植物育成
材料は、
光源
としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光
を植物に照射して植物を育成する
育成方法で使用する植物育成材料であって、
前記ナイルレッドを透明フィルム内に分散して含有し、
前記透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、
蛍光灯から発光した波長530〜570nmの光を含む光源光を、ナイルレッドを含有する透明フィルムで受光することで、植物の光合成に適した波長である波長620〜660nmの範囲内の照射光とすることができる。従って、蛍光灯およびナイルレッドを含有する透明フィルムのみを使用して、低コストで植物の光合成に適した波長を有する照射光に変換して、その照射光を植物に照射して栽培効率を向上させることができる。
また、ナイルレッドを透明フィルム内に分散して含有されるので、蛍光灯から発光する波長530〜570nmの光を含む光源光を照射する事で、その光源光を透明フィルム内に分散したナイルレッドが受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光として植物に照射することができるとともに、光源光をこの透明フィルムを通過させて植物に照射することができる。これにより、蛍光灯から発光する光源光およびナイルレッドから照射される照射光によって植物(特に葉物野菜)の栽培効率を向上させることができる。
さらに、ナイルレッドを含有する透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられているので、透明フィルムに含まれるナイルレッドが空気中の酸素に暴露されることを防止して、透明フィルムに含まれるナイルレッドの退色、透明フィルムの白濁劣化を防止して、照射光を発光するナイルレッドを含有する透明フィルムの長寿命化を図ることができる。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る植物育成
材料は、
光源としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光を植物に照射して植物を育成する育成方法で使用する植物育成材料であって、
前記ナイルレッドを透明フィルム内に分散して含有するフィルム材が透明板上に形成されてなり、
前記透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、
蛍光灯から発光した波長530〜570nmの光を含む光源光を、ナイルレッドを含有する透明フィルムで受光することで、植物の光合成に適した波長である波長620〜660nmの範囲内の照射光とすることができる。従って、蛍光灯およびナイルレッドを含有する透明フィルムのみを使用して、低コストで植物の光合成に適した波長を有する照射光に変換して、その照射光を植物に照射して栽培効率を向上させることができる。
また、フィルム材が透明板上に形成されるので、フィルム材の形状を固定することができ、フィルム材を透明板上に固定した良好な支持状態で植物の育成を図ることができる。また、透明板を使用することで、蛍光灯からの光源光およびナイルレッドを分散して含有するフィルム材からの照射光を遮ることなく植物に照射することができる。
さらに、ナイルレッドを含有する透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられているので、透明フィルムに含まれるナイルレッドが空気中の酸素に暴露されることを防止して、透明フィルムに含まれるナイルレッドの退色、透明フィルムの白濁劣化を防止して、照射光を発光するナイルレッドを含有する透明フィルムの長寿命化を図ることができる。
【0020】
本発明に係る植物育成材料の更なる特徴構成は、
前記透明フィルムが、ポリスチレンフィルム或いはポリメタクリル酸メチルフィルムである点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、
透明フィルムが、ポリスチレンフィルム或いはポリメタクリル酸メチルフィルムで構成されているので、そのような高分子材料によって変形可能な透明フィルムとして、透明フィルム
を平面状に限らず、曲面状にも変形させることができる。例えば、透明フィルムに光源光を照射する蛍光灯の形状および透明フィルムからの照射光を受ける植物の形状に適応させて透明フィルムの形状を変形させることができる。
また、本発明に係る植物育成材料の更なる特徴構成は、前記植物が、葉物野菜である点にある。
この特徴構成によれば、植物が、光合成を行なう葉物野菜とされるので、ナイルレッドを含有する透明フィルムから照射される植物の光合成に適した波長である波長620〜660nmの範囲内の光によって葉物野菜の栽培効率を向上させることができる。このような葉物野菜としては、後に説明するリーフレタス、小松菜に加え、レタス、グリーンリーフ、サンチュ、ほうれん草、春菜、サラダ菜等が含まれる。
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係る植物育成材料の製造方法は、
光源としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光を植物に照射して植物を育成する育成方法で使用する植物育成材料を製造するための植物育成材料の製造方法であって、
前記ナイルレッドをトリクロロエチレンに溶解させ、フィルム化用高分子材料を混合させて原料液を得て
、透明板を前記原料液に含浸させた後、前記トリクロロエチレンを揮発させて、
前記透明板表面に、フィルム化用高分子材料の前記透明フィルム
を形成
して、前記ナイルレッドを前記透明フィルム内に分散して含有するフィルム材が前記透明板上に形成された前記植物育成材料を製造する点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、
ナイルレッドをトリクロロエチレンに溶解させるとともに、フィルム化用高分子材料を混合させて原料液を得て、透明板を原料液に含浸させた後、前記トリクロロエチレンを揮発させるので、フィルム化用高分子材料によって構成される透明フィルム中にナイルレッドが一様に分散したフィルム材を、透明板表面に容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る植物育成材料を用いた植物育成装置について、図面に基づいて説明する。
図1に示す植物育成装置1は、光源としての蛍光灯3から波長530〜570nmの光を含む光源光4を発光し、光源光4をナイルレッドが透明フィルム内に分散して含有されているフィルム材5で受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光6とし、この照射光6を培養ケース11内の植物2に照射して、その植物2を育成するものである。そして、植物2が収容された培養ケース11の上部開口に、そのフィルム材5を有する植物育成材料Mを載置して、植物育成装置1が形成されている。
ここで、光源光4は蛍光灯3により照射される波長530〜570nmの範囲内の光で、ナイルレッドに吸収される光であって、波長620〜660nmの範囲内の光に変換される光である。一方、照射光6は、上記波長530〜570nmの範囲内の光をナイルレッドが吸収して発する光である。従って、光源光4が波長530〜570nmの全範囲の光を含んでいる必要は必ずしもなく、照射光6に関しても波長620〜660nmの全範囲内の光を含んでいる必要は必ずしもない。
【0026】
そして、植物2は培養ケース11中において、支持体10に支持された状態で収容されている。その支持体10は培養ケース11の底部を満たした培養液12に浮かべた状態で設けられている。そして、植物2は、この培養液12から育成に必要となる水分および養分を吸収するように構成されている。また、培養ケース11の側面には図示しない通気口が設けられており、植物2が光合成するために必要となる二酸化炭素が培養ケース11の内部に取り込まれるように構成されている。
【0027】
光源としての蛍光灯3は、3波長形昼白色の光源光4を発光するものであり、
図2に示すような波長分布を有する光源光4を発光する。通常、この蛍光灯3による光源光4は、波長550nm付近にピーク波長を有している。また、図示しない制御装置によって、この蛍光灯3からの光源光4の発光時期を自在に制御できるように構成されている。
一方、その光源光4を受光するフィルム材5に含有されるナイルレッドは、波長550nm付近の光を吸収して波長640nm付近の光に変換して発することを可能にする蛍光色素であり、例えば、励起光として波長553nmの光を受光した場合、蛍光として波長637nmの光を発するものである。また、光源光4は550nm付近にピーク波長を有するため、より多くの光が波長640nm付近の光に変換される。
【0028】
これにより、フィルム材5に含有されるナイルレッドが光源光4を受光すると、光源光4のピーク波長である波長550nm付近の光が吸収されるとともに、波長640nm付近の光を発する。一方、光源光4のその他の波長域の光はフィルム材5をナイルレッドに吸収されることなく通過する。従って、フィルム材5からは、光源光4から波長550nm付近の光が減少されるとともに、波長640nm付近の光が増加された光である照射光6が照射される。よって、照射光6には、植物2の光合成に適した光の波長である波長620〜660nmの光が多く含まれることとなるので、その照射光6を植物2に照射することで、植物2の栽培効率を向上させることができる。
【0029】
以下に、本願発明に係る植物育成材料M、植物育成材料Mの製造方法、植物育成方法、および、この植物育成材料Mを使用した植物育成実験の順に具体的に説明する。
〔植物育成材料〕
【0030】
植物育成材料Mは、上述のフィルム材5を透明なアクリル板7(透明板に相当)の上面に形成するとともに、このフィルム材5のアクリル板7と接触する面と反対側の空気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層8が設けられて構成されている。これにより、アクリル板7によって、フィルム材5の形状を安定させることができる。また、アクリル板7が透明であるのでフィルム材5からの照射光6を遮ることなく植物2に照射することができる。そして、酸素非透過膜層8によってフィルム材5が空気中の酸素に暴露されることを防止して、フィルム材5の酸化を防止して、フィルム材5の波長変換能を長期間維持することが可能となる。
【0031】
ここで、フィルム材5を構成する透明フィルムは高分子材料で構成されており、例えば、ポリスチレンフィルム或いはポリメタクリル酸メチルフィルムとされる。これらの透明フィルムは、光源光4およびナイルレッドの蛍光による照射光6を吸収することなく、植物2の光合成に必要となる光を減少させずに植物2に照射することができる。
また、酸素非透過膜層8の材質については、光源光4の透過性を有するものであって、例えば、酸素透過性の低いポリビニルアルコール、ナイロンなどとされる。また、この酸素非透過膜層8の材質を、透明フィルムの材質と同じポリメタクリル酸メチルとすることで、フィルム材5の上面に酸素非透過膜層8を接着させて加工することが容易となる。
〔植物育成材料の製造方法〕
【0032】
次に、植物育成材料Mの製造方法について説明する。
植物育成材料Mは、ナイルレッドをトリクロロエチレンに溶解させ、フィルム化用高分子材料としてのポリスチレンまたはポリメタクリル酸メチルを混合させてフィルム材形成用原料液(原料液に相当)を得る。そして、このフィルム材形成用原料液をさらにトリクロロエチレンで希釈して、希釈したフィルム材形成用原料液とし、アクリル板7をこの希釈したフィルム材形成用原料液に含浸させた後、トリクロロエチレンを揮発させて、アクリル板7の表面に、フィルム化用高分子材料による透明フィルム内にナイルレッドが分散して含有したフィルム材5が形成される。そして、酸素非透過膜層8としての高分子材料膜をフィルム材5の表面に加工する。このような製造方法にて植物育成材料Mを形成する。
【0033】
なお、フィルム材形成用原料液中にアクリル板7を含浸する際に、アクリル板7においてフィルム材5を形成しない面にマスク処理をすることで、アクリル板7の一方面のみにフィルム材5を形成することができる。そして、酸素非透過膜層8としての高分子材料膜をフィルム材5の表面に加工する。フィルム材5の表面への酸素非透過膜層8の加工は、例えば、ポリメタクリル酸メチルをトリクロロエチレンに溶かして、その溶液を酸素非透過膜層8の表面へ塗布することによって加工することができる。これによりアクリル板7の表面に透明フィルム内にナイルレッドが一様に分散されたフィルム材5が加工された植物育成材料Mを容易に形成することができる。
〔植物育成方法〕
【0034】
また、本発明に係る植物育成方法は、光源としての蛍光灯3から波長530〜570nmの光を含む光源光4を発光し、光源光4をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光6とし、この照射光6を植物2に照射して植物2を育成するものである。上述の
図1に示す植物育成装置1によって実施することが可能に構成されている。
【0035】
そして、植物2の発芽期、その発芽期に引き続く成長期に、照射光6を植物2に照射するものであり、例えば、植物2が葉物野菜である場合は、発芽期および成長期に照射光6を植物2に照射することで、その照射時期において光合成を促進することができるとともに、葉物野菜を大きく成長させることができる。また、これにより照射時期が限定されることとなり、照射時間が短くなるので、照射光6を発光する透明フィルムに含まれるナイルレッドの退色の進行を防止して、フィルム材5の波長変換能の長寿命化を図ることができる。従って、植物育成装置1は、図示しない制御装置によって、蛍光灯3からの光源光4の照射時期を自在に制御できるように構成されている。
【0036】
植物2を、例えば、リーフレタスや小松菜などの葉物野菜とすることで、光合成を促進することができるとともに、リーフレタスや小松菜を大きく成長させることができ、栽培効率を向上させることができる。従って、葉物野菜栽培工場などで本実施形態に係る植物育成装置1を使用することで、葉物野菜の収穫量や収穫サイクルを向上させて、生産性を向上させることができる。
〔植物育成実験〕
【0037】
次に、上述の植物育成装置1を使用して行なった実験の実験装置、実験方法および実験結果について説明する。まず、実験装置および実験方法について説明する。
実験で用いた実験装置30は、
図3に示すように、アクリル板7の上面にフィルム材5を形成した植物育成装置1と、その植物育成装置1に併設したアクリル板7にフィルム材5が形成されておらず、照射光6が発光されない比較用育成装置20とによって構成されている。そして、植物育成装置1および比較用育成装置20の実験結果を比較して植物育成装置1の植物育成効果を確認した。
なお、植物育成装置1および比較用育成装置20において、光源光4の光量を等しい条件として実験を行なうために蛍光灯3は共通として、植物育成装置1および比較用育成装置20に光源光4を照射するように構成されるとともに、さらに、培養液12が共通となるように、それぞれの培養ケース11の側面下部に連通口13を設けて構成した。なお、蛍光灯3から植物2を支持する支持体10までの距離を10cmとし、培養ケース内の培養液12の深さを4、5cmとした。
【0038】
次に、実験で使用したフィルム材5について説明する。
実験で使用したフィルム材5は、
図4に示す、条件1〜3のフィルム材形成用原料液(
図4において原料液と表示)を用いて製造した。
いずれの条件においてもナイルレッド(東京化成工業製)を10mLのトリクロロエチレン(ナカライテスク社製)に溶解させ、同時にフィルム化用高分子材料であるポリスチレン(ナカライテスク社製)またはポリメタクリル酸メチル(ナカライテスク社製)を混合した。条件1は、ナイルレッド10mgおよびポリスチレン300mgを混合したものである。条件2は、ナイルレッド10mgおよびポリメタクリル酸メチル300mgを混合したものである。条件3は、ナイルレッド100mgおよびポリメタクリル酸メチル300mgを混合したものである。
そして、それぞれのフィルム材形成用原料液について、ホーロー製バット内にてフィルム材形成用原料液1mLに対して100mLのトリクロロエチレンで希釈して、その希釈したフィルム材形成用原料液中にアクリル板7を含浸して、その後、トリクロロエチレンを揮発させることで、アクリル板7の表面に、ナイルレッドが含有したフィルム化用高分子材料のフィルム材5を形成した。
【0039】
ここで、フィルム材5中のナイルレッドの含有量が多くなる条件3のフィルム材形成用原料液でフィルム材5を製造すると、ナイルレッドによって光源光4が遮られ、フィルム材5を通過する光量が減少する傾向があり照射光6の照度を考慮して、条件1または条件2のフィルム材形成用原料液がフィルム材5が好適であると判断した。
さらに、本実施形態においては、フィルム材5が形成されるアクリル板7との接着を考慮し、アクリル板7と同じアクリル樹脂である、ポリメタクリル酸メチルを用いた条件2のフィルム材形成用原料液にてフィルム材5を形成した。
【0040】
育成対象は葉物野菜としての、リーフレタス(ハワイ2号:横浜植木社)および小松菜(楽天:タキイ種苗社)とし、植物育成装置1および比較用育成装置20のそれぞれの培養ケース11内の支持体10に、縦方向および横方向に等間隔に20個の種子を播種した。なお、それぞれの培養ケース11内の寸法は、それぞれ横20cm、縦30cmである。従って、支持体10はその培養ケース11内に収まる寸法に形成されている。
【0041】
また、培養液12は、ハイポネックス原液(ハイポネックスジャパン社製)20mLを水道水で約10Lに希釈して使用した。なお、1週間に一度、水深を確認し、蒸散分の水を水道水にて供給した。
【0042】
蛍光灯3からの光源光4の照射条件は、照射時間を12時間として、その後非照射時間12時間とし、その後に、再度照射時間を12時間とするサイクルとして実験を行なった。この植物育成実験は、植物2の発芽期およびその発芽期に引き続く成長期に、照射光6を植物2に照射する実験であり、播種から所定の日数にわたって行われた。
照度は、蛍光灯3下端から、10cm下方に位置する発泡スチロールで形成した支持体10の中央部において、植物2の育成に必要な照度である5000ルクスを確保できているかどうかの確認を、照度計(LX−1000,カスタム社製)によって計測を行った。その結果、植物育成装置1においては6310ルクスが確認され、比較用育成装置20においては7015ルクスが確認され、いずれも植物2の育成に必要な照度を確保できていることを確認した。
【0043】
次に、リーフレタスの育成実験結果について説明する。
この植物育成実験は、播種から3週間にわたって行われ、植物2としてのリーフレタスの発芽期およびその発芽期に引き続く成長期に、照射光6を植物2に照射する実験である。
この植物育成実験の期間中に、カメラにて育成状況を撮影するとともに、試験終了直後に、リーフレタスを回収し、電子天秤にて秤量し、リーフレタスの重量等を評価した。リーフレタスの実験開始後(播種後)の1週間経過時点および3週間経過時点(試験終了時点)における生育状態を示す観察写真を
図5に示す。3週間経過時点の植物育成装置1における植物2としてのリーフレタスの葉の数が、3週間経過時点の比較用育成装置20におけるリーフレタスの葉の数より多いことを観察することができる。
【0044】
図6に示す播種から3週間経過時点(試験終了時点)の生育量の評価では、植物育成装置1から収穫された1株あたりの平均重量は、比較用育成装置20のそれと比較して、約20%程度増量している。また、
図7に示した生育率の評価についても、比較用育成装置20の生育率と比較して上昇している。さらに、
図8に示すように、比較用育成装置20によるリーフレタスの収穫総重量(総重量)は、比較用育成装置20の収穫総重量に対して45%増加した。ここで、生育率とは播種数(20株)に対する3週間経過時点での生育株数の割合を示したものである。
以上の結果より、少なくとも植物2としてのリーフレタスの栽培の初期段階(播種〜3週間程度)において、植物育成装置1によってリーフレタスの栽培が促進、健全化されることがわかった。
【0045】
次に、小松菜の植物育成実験結果について説明する。
この植物育成実験は、播種から10日間にわたって行われたものであり、上述のリーフレタスの植物育成実験と同様に植物2としての小松菜の発芽期およびその発芽期に引き続く成長期に、照射光6を植物2に照射する実験である。
この植物育成実験についても、リーフレタスの実験と同様に、実験期間中にカメラにて育成状況の撮影を行い、10日間の試験終了直後に、小松菜を回収し、電子天秤にて秤量し、重量等を評価した。
【0046】
小松菜の実験開始後7日経過時点および10日経過時点(試験終了時点)の生育状況を示す観察写真を
図9に示す。また、試験終了直後の一株あたりの平均重量を
図10、総重量を
図12に示した。さらに、生育率を
図11に示した。
図9に示す観察写真および
図11に示す生育率については植物育成装置1と比較用育成装置20との実験結果において差が明確に認められないが、
図10に示す平均重量および
図12に示す総重量については、植物育成装置1の実験結果を比較用育成装置20の実験結果と比較すると、植物育成装置1の実験結果は約20%増加することが確認できた。これらの結果から、小松菜に対しても収穫量を増加できることがわかった。
〔別実施形態〕
【0047】
上記実施形態においては、アクリル板7の上面にフィルム材5を形成して植物育成材料Mを構成したが、これに限らず、アクリル板7を設けずに、フィルム材5のみを植物育成材料Mとして培養ケース11の上部開口に設けてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、フィルム材5が表面に形成される透明板をアクリル製としたが、これに限らず、透明板は植物2の生育に必要な光が通過可能な樹脂またはガラス等で構成してもよい。
【0049】
上記実施形態においては、ナイルレッドを含有する透明フィルムの材質をポリスチレンまたはポリメタクリル酸メチルとしたが、これに限らず、植物2の生育に必要な光が通過可能な樹脂またはガラス等で構成してもよい。
【0050】
上記実施形態においては、植物2として葉物野菜であるリーフレタスおよび小松菜が栽培されたが、これに限らず、植物2をワサビ菜や春菊などの葉物野菜、トマトやナスなどの果菜、ラディッシュやかぶなどの根菜としてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、植物2の発芽期および成長期に照射光6を植物2に照射したが、これに限らず、開花期に照射光6を植物2に照射してもかまわない。
また、開花後における植物2が最も成長する所定の期間において照射光6を植物2に照射してもかまわない。これにより、その照射時期において光合成を促進することができるとともに、植物2が果菜である場合は、果実を大きく成長させることができる。また、このように照射時期が限定されることで、照射時間が短くなるので、フィルム材5において照射光6を発光するナイルレッドの退色の進行を防止して、照射光6を発光するフィルム材5の長寿命化を図ることができる。