(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵となるモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、正極と、負極と、これらの間に位置するセパレータ及び電解質と、これらを収容する外装体とから構成される。そして、リチウムイオン二次電池に用いられる正極には、主な適用材料として、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO
2)やマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)が使用され、負極には、主な適用材料として、例えば黒鉛が使用される。また、リチウムイオン二次電池に用いられるセパレータには、例えば多孔質ポリオレフィンが使用され、電解質には、例えば六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)が使用され、外装体には、例えばラミネートフィルムが使用される。
【0004】
従来、正極活物質であるリチウムマンガン系複合酸化物からのマンガン溶出を抑制するために、Li
xMn
2−yMA
yO
4+z[式中、MAは、Mg、Al、Cr、Fe、CoおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、1<x≦1.2、0<y≦0.1および−0.3≦z≦0.3]で表されるリチウムマンガン系複合酸化物を正極活物質として用いた非水系二次電池が提案されている。
【0005】
また、この非水系二次電池にあっては、結晶性の高い炭素粒子に結晶性の低い炭素を被覆した炭素材料粉体の嵩高さから、負極構成材料中に占めるバインダーを多量に(10重量%以上)使用する必要があるため、炭素被覆処理がされていない黒鉛化メソカーボンマイクロビーズとの混合物を負極活物質として用いることを必須要件としている(特許文献1参照。)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のリチウムイオン二次電池について詳細に説明する。
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極とを備えたものである。
そして、本発明のリチウムイオン二次電池における正極は、正極活物質として一部がマグネシウムによって置換されたリチウムマンガン複合酸化物を含有する。また、本発明のリチウムイオン二次電池における負極は、負極活物質としての非晶質炭素で被覆された黒鉛と、カーボンブラック系導電助剤と、フッ素樹脂系結着剤とを含有する。
更に、カーボンブラック系導電助剤は、負極活物質よりも比表面積が大きい。
【0015】
このような構成とすることにより、リチウムイオン二次電池における抵抗上昇を抑制することができる。その理由は判明していないが、負極活物質として非晶質炭素で被覆された黒鉛を用いることにより、負極容量に殆ど寄与しない非晶質炭素表面にマグネシウムが捕捉(トラップ)され、黒鉛結晶層間のリチウムイオン出入りの阻害要因(リチウム抵抗膜の生成)が抑制されることによって、抵抗上昇が抑制されると推測される。更に、カーボンブラック系導電助剤が分散されるように含まれたフッ素樹脂系結着剤が、負極活物質の粒子間の少なくとも一部を被覆する程度の含有量で活物質中に存在することによって、非水電解液が浸透可能なフッ素樹脂系結着剤により形成された膜中のカーボンブラック系導電助剤が、マグネシウムを捕捉(トラップ)し、負極活物質の粒子同士の接触点に到達するマグネシウムを減らすことができ、マグネシウムの析出による抵抗上昇が抑制されると推測される。
【0016】
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池の負極におけるマグネシウムの捕捉(吸着)の様子を説明する図(a)及び(b)である。なお、
図1(a)及び(b)において、下向き矢印は電子の流れを示す。
【0017】
図1(a)に示すように、負極集電体11A上には、負極活物質11aとして非晶質炭素11αで被覆された黒鉛11βと、カーボンブラック系導電助剤11bと、フッ素系樹脂結着剤11cとを含有する負極活物質層11Bが形成されている。そして、フッ素樹脂系結着剤11cが、カーボンブラック系導電助剤11bを分散した状態で含み且つ負極活物質11aの粒子間の少なくとも一部を被覆しており、負極活物質11a同士や負極活物質11aと負極集電体11Aとを結着している。また、マグネシウムイオン(Mg
2+)は図示しない正極から溶出したものである。
【0018】
長期使用した場合でも、
図1(b)に示すように、負極容量に殆ど寄与しない非晶質炭素11αの表面やカーボンブラック系導電助剤11bにマグネシウムイオン(Mg
2+)が捕捉(トラップ)されることで、負極活物質の粒子同士の接触点に到達するマグネシウムが減少し、接触点での電子の流れが阻害され難くなるため、抵抗上昇を抑制することができると考えられる。
【0019】
一方、図示しないが、負極活物質として非晶質炭素が被覆された被覆黒鉛と被覆されていない未被覆黒鉛とを組み合わせて用いた場合は、マグネシウムが先に析出する未被覆黒鉛が先に失活し、被覆黒鉛と未被覆黒鉛とで充放電に伴う粒子の膨張収縮の仕方に差が生じ、負極活物質層内で応力の不均一化が起こり、粒子間接着の分断が起こりやすくなり、粒子間の間隔が開き、電子の流れが阻害されるため、抵抗上昇を抑制することができないと考えられる。
【0020】
また、図示しないが、カーボンブラック系導電助剤を用いない場合は、負極活物質同士の接触点のみが電子の伝導経路となるが、マグネシウムの析出の影響を受けやすく抵抗上昇につながると考えられる。
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
[リチウムイオン二次電池の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例の概略を示す斜視図である。
図3は、
図2に示したリチウムイオン二次電池のIII−III線に沿った模式的な断面図である。なお、このようなリチウムイオン二次電池は、ラミネート型二次電池と呼ばれるものである。
【0023】
図2及び
図3に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、負極端子21及び正極端子22が取り付けられた電池要素10が外装体30の内部に封入された構成を有している。そして、本実施形態においては、負極端子21及び正極端子22が、外装体30の内部から外部に向かって、同一方向に導出されている。なお、図示しないが、負極端子及び正極端子が、外装体の内部から外部に向かって、反対方向に導出されていてもよい。また、このような負極端子及び正極端子は、例えば超音波溶接や抵抗溶接などにより後述する正極集電体及び負極集電体に取り付けることができる。
【0024】
[負極端子及び正極端子]
負極端子21及び正極端子22は、例えば、アルミニウムや銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などの材料により構成されている。しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の端子として用いられている従来公知の材料を用いることができる。なお、負極端子及び正極端子は、同一材質のものを用いてもよく、異なる材質のものを用いてもよい。また、本実施形態のように、別途準備した端子を後述する負極集電体及び正極集電体に接続してもよいし、後述する各負極集電体及び各正極集電体をそれぞれ延長することによって端子を形成してもよい。
【0025】
[外装体]
外装体30は、例えば、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可撓性フィルムなどよりなるラミネート外装体を適用することが軽量化が可能であり電池エネルギー密度の向上を図るという観点から好ましい。また、ラミネート型二次電池は、放熱性にも優れるため、電気自動車などの車載用電池として好適に用いることができる。
【0026】
[電池要素]
図3に示すように、電池要素10は、負極集電体11Aの主面上にリチウムイオンを吸蔵及び放出し得る負極活物質を含有する負極活物質層11Bが形成された負極11と、非水電解質層13と、正極集電体12Aの主面上にリチウムイオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質を含有する正極活物質層12Bが形成された正極12とを複数積層した構成を有している。このようにして、負極、非水電解質層及び正極が、この順に複数積層されている。
【0027】
このとき、隣接する負極活物質層11B、非水電解質層13及び正極活物質層12Bは、1つの単電池層14を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、単電池層14が複数積層されることにより、電気的に並列接続された構成を有するものとなる。なお、単電池層の外周には、隣接する負極集電体や正極集電体の間を絶縁するための絶縁層(図示せず)が設けられていてもよい。
【0028】
[負極]
負極11は、負極集電体11Aの両方の主面上に負極活物質層11Bが形成された構造を有する。また、負極活物質層は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを含有する。更に結着剤は、後述するようにスラリーを作成する際に、活物質、導電助剤及び結着剤を混合・攪拌する工程を経るため、導電助剤は分散された状態で含まれていると考えられる。また、結着剤は負極におけるその含有率を所定の好ましい範囲とすることで、負極活物質の粒子間の少なくとも一部は被覆した状態で負極活物質同士を結着していると考えられる。
【0029】
(負極集電体)
負極集電体としては、例えば、銅、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル、チタン、これらの合金などを使用することができる。
【0030】
(負極活物質)
負極活物質としては、非晶質炭素で被覆された黒鉛を用いる。このような非晶質炭素で被覆された黒鉛の平均粒子径は、例えば、数μm〜数十μmであることが好ましい。また、このような非晶質炭素で被覆された黒鉛のBET比表面積は、例えば、10
−1〜10m
2/gであることが好ましい。
【0031】
(導電助剤)
導電助剤としては、カーボンブラック系導電助剤を用いる。このようなカーボンブラック系導電助剤のBET比表面積は、例えば、10〜10
2m
2/gであることが好ましい。このような範囲とすることにより、十分なマグネシウム捕捉(吸着)能力を発揮すると考えられる。また、導電助剤のBET比表面積は、負極活物質のBET比表面積より大きいことが好ましい。これにより、負極活物質の粒子間の接触点に、より近い位置で存在することができると考えられる。カーボンブラック系導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック若しくはサーマルブラック又はこれらの任意の組み合わせに係る混合物を用いることができる。
【0032】
(結着剤)
結着剤(バインダー)としては、フッ素樹脂系結着剤を用いる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、フッ化ビニリデンと他のフッ素系モノマーを共重合させたフッ化ビニリデン系重合体を挙げることができる。なお、本発明において、「フッ素樹脂系結着剤」とは、例えば、後述する非水電解液が浸透しうるものであれば、フッ素樹脂のみを含むものに、特に限定されるものではない。逆に、フッ素樹脂系接着材より密着性が高いアクリル樹脂系結着剤を用いた場合、非水電解液が浸透不可能な膜が形成されることによって、導電助剤が覆われてしまうため、導電助剤を負極に含有させた場合であっても、本発明に用いたカーボンブラック系導電助剤による所期のマグネシウム捕捉(吸着)作用を発現させることができない。
【0033】
[正極]
正極12は、正極集電体12Aの両方の主面上に正極活物質層12Bが形成された構造を有する。また、正極活物質層は、正極活物質と、必要に応じて添加される導電助剤と結着剤とを含有する。導電助剤や結着剤としては、従来リチウムイオン二次電池に用いることができるものを適宜選択して用いることができる。
【0034】
(正極集電体)
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル、チタン、これらの合金などを使用することができる。
【0035】
(正極活物質)
本発明に用いられる正極活物質としてのリチウムマンガン複合酸化物は、一部をマグネシウムで置換したものであり、例えばマンガンサイトの一部がマグネシウムで置換されたもの、あるいはマグネシウム及び更に別の元素で置換されたものである。例としては、LiMn
2−x−yMg
xMA
yO
4+z(MAはMn以外の少なくとも1種の遷移金属元素及び/又はLiであり、x、y及びzは0<x<2、0≦y<2、−1<z<1の関係を満たす。)や、LiMn
1−x−yMg
xMB
yO
2+z(MBはMn以外の少なくとも1種の遷移金属元素及び/又はLiであり、x、y及びzは0<x<1、0≦y<1、−0.5<z<0.5の関係を満たす。)を使用できる。中でも、スピネル構造を持つLiMn
2−x−yMg
xMA
yO
4+zを使用するとより効果があるため好ましい。あるいは、一部をマグネシウムで置換したリチウムマンガン複合酸化物粉末と、リチウムニッケル複合酸化物粉末とを、前者を50%以上となるように混合した正極活物質混合物を使用することもできる。
【0036】
[非水電解質層]
非水電解質層13としては、例えば、後述するセパレータに保持させた非水電解液や高分子ゲル電解質を用いて層構造を形成したものなどを用いることができる。非水電解液としては、具体的には、支持塩(リチウム塩)が溶解された非水溶媒を用いることができる。
【0037】
(リチウム塩)
リチウム塩としては、例えば、リチウムイミド塩や、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)、四塩化アルミニウムリチウム(LiAlCl
4)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、四フッ化ホウ素酸リチウム(LiBF
4)、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF
6)などを用いることができる。この中でも、特に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ素酸リチウム(LiBF
4)を用いることが好ましい。リチウムイミド塩としては、例えばLiN(C
kF
2k+1SO
2)(C
mF
2m+1SO
2)(k、mはそれぞれ独立して1又は2である。)を挙げることができる。これらのリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
(非水溶媒)
非水溶媒としては、例えば、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類及びこれらのフッ化誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を用いることができる。環状カーボネート類としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、これらのフッ化誘導体等を挙げることができる。また、鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、これらのフッ化誘導体等を挙げることができる。脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、これらのフッ化誘導体を挙げることができる。γ−ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトンやこのフッ化誘導体等を挙げることができる。環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等を挙げることができる。鎖状エーテル類としては、例えば、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、ジエチルエーテル、これらのフッ化誘導体等を挙げることができる。その他としては、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアルデヒド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル等を挙げることができる。これらは、1種を単独で、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂からなる微多孔膜を用いることができる。ポリフッ化ビニリデンは、非水電解質を保持した場合、高分子ゲル電解質を形成することもある。
【0040】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
次に、上述した本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法の一例について説明する。
【0041】
例えば、負極活物質としての非晶質炭素で被覆された黒鉛とカーボンブラック系導電助剤とフッ素樹脂系結着剤とを所定の配合量でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤中に分散させたスラリーを銅箔などの負極集電体に塗布し、乾燥させ、負極活物質層を形成することによって、負極を作製する。また、得られた負極は、ロールプレスなどの方法により圧縮して適当な密度に調整することができる。
【0042】
また、例えば正極活物質としてのマグネシウムで置換されたリチウムマンガン複合酸化物と導電助剤と結着剤とを所定の配合量でNMPなどの溶剤中に分散させたスラリーをホットプレート上にてドクターブレードなどを用いてアルミニウム箔などの正極集電体に塗布し、乾燥させ、正極活物質層を形成することによって、正極を作製する。また、得られた正極は、ロールプレスなどの方法により圧縮して適当な密度に調整することができる。
【0043】
次いで、正極、セパレータ及び負極を積層した後に、負極に負極端子を取り付けるとともに、正極に正極端子を取り付ける。更に、積層したものを高分子−金属複合ラミネートシートで挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状の外装体とする。
【0044】
しかる後、六フッ化リン酸リチウムなどのリチウム塩と、エチレンカーボネートなどの有機溶媒を含む非水電解液を準備し、外装体の開口部から内部に注入して、外装体の開口部を熱融着し封入する。これにより、ラミネート型二次電池が完成する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
<負極の作製>
負極活物質としての非晶質性炭素で被覆された球状天然黒鉛粉末(平均粒子径:20μm、平均アスペクト比:1.2、BET比表面積:1.2m
2/g)と、フッ素樹脂系結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、カーボンブラック系導電助剤としての第1カーボンブラック(平均粒子径:1μm、BET比表面積:64m
2/g)とを、固形分質量比で96.5:3:0.5の割合でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に入れ、攪拌させることで均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを負極集電体となる厚み15μmの銅箔上に塗布し、次いで、125℃にて10分間NMPを蒸発させることにより負極活物質層を形成し、更にプレスすることによって片面塗布した負極を作製した。乾燥後の単位面積当たりの負極活物質層の密度は0.008g/cm
2とした。
【0047】
<正極の作製>
正極活物質としてのスピネル構造を有するLi
1.1Mn
1.8Mg
0.1O
4粉末(平均粒子径:10μm)と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、導電助剤としてのカーボンブラック粉末とを、固形分質量比で92:4:4の割合でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に入れ攪拌させることで均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを正極集電体となる厚み20μmのアルミニウム箔上に塗布し、次いで、125℃にて10分間NMPを蒸発させることにより正極活物質層を形成することによって片面塗布した正極を作製した。乾燥後の単位面積当たりの正極活物質層の密度は0.025g/cm
2とした。
【0048】
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記のように作製した負極と正極とを各々5cm(幅)×6.0cm(長さ)に切り出した。このうち、一辺5cm×1cmは端子を接続するための未塗布部であって、活物質層は5cm×5cmである。幅5cm、長さ3cm、厚み0.1mmのアルミニウム製の正極端子を正極における未塗布部に長さ1cmで超音波溶接した。同様に、正極端子と同サイズのニッケル製の負極端子を負極における未塗布部に長さ1cmで超音波溶接した。6cm×6cmのポリエチレン及びポリプロピレンからなるセパレータの両面に上記負極と正極とを活物質層がセパレータを隔てて重なるように配置して電極積層体を得た。2枚の7cm×10cmのアルミニウムラミネートフィルムの長辺の一方を除いて三辺を熱融着により幅5mmにて接着して袋状のラミネート外装体を作製した。ラミネート外装体の一方の短辺より1cmの距離となるように上記電極積層体を挿入した。下記非水電解液を0.203g注液して真空含浸させた後、減圧下にて開口部を熱融着により幅5mmで封止することによって、本例のラミネート型二次電池を得た。
非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=30:70(体積比)の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を濃度が1.0mol/Lとなるように溶解させたものに対して、添加剤として環状ジスルホン酸エステルを濃度が1.5質量%となるように溶解させたものを用いた。
【0049】
(実施例2)
負極の作製に際して、第1カーボンブラックの添加量を0.5質量%から1.0質量%に変更し、負極活物質とフッ素樹脂系結着剤とカーボンブラック系導電助剤とを、固形分質量比で96:3:1の割合で割合でNMP中に入れ攪拌させることで均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0050】
(実施例3)
負極の作製に際して、第1カーボンブラックに第2カーボンブラック(平均粒子径:3μm、BET比表面積:20m
2/g)を添加し、第2カーボンブラックの添加量を2質量%とし、負極活物質とフッ素樹脂系結着剤とカーボンブラック系導電助剤とを、固形分質量比で94.5:3:2.5の割合で割合でNMP中に入れ攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0051】
(実施例4)
負極の作製に際して、第1カーボンブラックに第2カーボンブラック(平均粒子径:3μm、BET比表面積:20m
2/g)を添加し、第2カーボンブラックの添加量を4質量%とし、負極活物質とフッ素樹脂系結着剤とカーボンブラック系導電助剤とを、固形分質量比で92.5:3:4.5の割合で割合でNMP中に入れ攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0052】
(実施例5)
負極の作製に際して、第1カーボンブラックに第2カーボンブラック(平均粒子径:3μm、BET比表面積:20m
2/g)を添加し、第2カーボンブラックの添加量を8質量%とし、負極活物質とフッ素樹脂系結着剤とカーボンブラック系導電助剤とを、固形分質量比で88.5:3:8.5の割合で割合でNMP中に入れ攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0053】
(実施例6)
負極の作製に際して、第1カーボンブラックに第2カーボンブラック(平均粒子径:3μm、BET比表面積:20m
2/g)を添加し、第2カーボンブラックの添加量を2質量%とし、負極活物質とフッ素樹脂系結着剤とカーボンブラック系導電助剤とを、固形分質量比で94:3:3の割合で割合でNMP中に入れ、攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例2と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0054】
(実施例7)
負極の作製に際して、第1カーボンブラックに第2カーボンブラック(平均粒子径:3μm、BET比表面積:20m
2/g)を添加し、第2カーボンブラックの添加量を4質量%とし、負極活物質とフッ素樹脂系結着剤とカーボンブラック系導電助剤とを、固形分質量比で92:3:5の割合で割合でNMP中に入れ、攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例2と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0055】
(実施例8)
負極の作製に際して、第1カーボンブラックに第2カーボンブラック(平均粒子径:3μm、BET比表面積:20m
2/g)を添加し、第2カーボンブラックの添加量を8質量%とし、負極活物質とフッ素樹脂系結着剤とカーボンブラック系導電助剤とを、固形分質量比で88:3:9の割合で割合でNMP中に入れ、攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例2と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0056】
(実施例9)
正極の作製に際して、正極活物質としてのスピネル構造を有するLi
1.1Mn
1.8Mg
0.1O
4粉末(平均粒子径:10μm)に正極活物質としてのニッケル酸リチウム(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)粉末を添加し、ニッケル酸リチウムの添加量を20質量%とし、正極活物質と結着剤と導電助剤とを、固形分質量比で92:4:4の割合でNMP中に入れ、攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0057】
(比較例1)
負極活物質としての非晶質性炭素で被覆された球状天然黒鉛粉末(平均粒子径:20μm、平均アスペクト比:1.2、BET比表面積:1.2m
2/g)と、フッ素樹脂系結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを、固形分質量比で97:3の割合でNMP中に入れ攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0058】
(比較例2)
負極活物質としての非晶質性炭素で被覆された球状天然黒鉛粉末(平均粒子径:20μm、平均アスペクト比:1.2、BET比表面積:1.2m
2/g)と、フッ素樹脂系結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを、固形分質量比で97:3の割合でNMP中に入れ攪拌させることで、均一に分散させてスラリーを作製したこと以外は、実施例9と同様の操作を繰り返して、本例のラミネート型二次電池を得た。
【0059】
[性能評価]
上記各例のラミネート型二次電池について、出荷直後(初期)及び1000サイクル後において所定の電流値で放電させたときの電圧降下を測定することで直流抵抗値を測定し、内部抵抗上昇率を算出した。得られた結果をラミネート型二次電池の仕様の一部と共に表1及び表2に示す。ここで、「内部抵抗上昇率」とは、出荷直後(初期)の電池の直流抵抗値に対する1000サイクル後の電池の直流抵抗値の比のことである。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例8と本発明外の比較例1とを比較すると、マグネシウムで置換したリチウムマンガン複合酸化物を正極活物質として用いた正極と、非晶質炭素で被覆された黒鉛とカーボンブラック系導電助剤とフッ素樹脂系結着剤とを含有する所定の負極とを用いたリチウムイオン二次電池に比べて、カーボンブラック系導電助剤が入っていない比較例では抵抗上昇が抑制されないことが分かる。また、その中でも、実施例4や実施例7のリチウムイオン二次電池、特に、実施例7のリチウムイオン二次電池が、抵抗上昇がより抑制されることが分かる。
【0063】
また、実施例1と実施例2とを比較した場合の内部抵抗上昇率の変化割合と、実施例1と実施例3と、又は実施例2と実施例6とを比較した場合の内部抵抗上昇率の変化割合とを比較した場合、カーボンブラック系導電助剤のBET比表面積が、高い方が抵抗上昇抑制効果が優れることが分かる。抵抗上昇抑制効果という観点では、カーボンブラック系導電助剤のBET比表面積は、10〜10
2m
2/gであることが好ましいことが分かった。
【0064】
表2より、本発明の範囲に属する実施例9と実施例1とを比較すると、マグネシウムで置換したリチウムマンガン複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物とを正極活物質として用いた正極を用いたリチウムイオン二次電池は、抵抗上昇が更に抑制されることが分かる。
【0065】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0066】
例えば、上述した実施例に記載した構成は、各実施例毎に限定されるものではなく、正極活物質、負極活物質、カーボンブラック系導電助剤、フッ素樹脂系結着剤の構成の細部を変更したり、各実施例の構成を上述した各実施例以外の組み合わせにしたりすることができる。