(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るヒートシール装置1の構成を示す図である。ヒートシール装置1は、図示省略のモータにより所定の中心軸J1を中心として回転する回転部であるドラム2を備え、中心軸J1を中心とするドラム2の外周面210上には、製造途上の複数の使い捨ておむつが連続する連続シート9が保持される。また、ドラム2の周囲には、連続シート9に対してヒートシール加工を施す複数の(
図1では、3つの)加工ユニット3a,3b,3c、および、ヒートシール加工後の連続シート9を外周面210上にて切断するカッターユニット4が設けられる。ヒートシール装置1におけるドラム2の直径は、例えば、500〜1000mm(ミリメートル)である。
【0014】
ドラム2は、連続シート9を保持する複数の(
図1では4つの)保持部22を外周面210上に有し、複数の保持部22は中心軸J1を中心とする周方向に等間隔にて配置される。各保持部22は、連続シート9を把持する2つの爪部221を有し、2つの爪部221は周方向に間隔を空けて配置される。ドラム2において、各保持部22の2つの爪部221の間には中心軸J1方向に長い溝部211が形成されており、溝部211内には中心軸J1に平行に伸びるブロック状の第1シール加工部23が設けられる。中心軸J1とは反対側を向く第1シール加工部23の表面と、中心軸J1との間の距離は、ドラム2の半径とほぼ同じであり、第1シール加工部23の外側の表面は、ドラム2の外周面210の一部と捉えることができる。
【0015】
図2は、1つの第1シール加工部23を示す斜視図であり、
図3は、第1シール加工部23の分解斜視図である。第1シール加工部23は中心軸J1方向(
図2および
図3中にて符号α1を付す矢印にて示す方向)に長いベース24を有する。ベース24において
図2中の下側の部位241(以下、「下部241」という。)が
図1のドラム2の中心軸J1側に配置され、
図2中の上側の部位242(以下、「上部242」という。)がドラム2の外周面210側に配置される。以下の第1シール加工部23の説明では、ドラム2に設けられた状態の第1シール加工部23における中心軸J1側を下側と呼び、外周面210側を上側と呼ぶが、ドラム2の回転により、第1シール加工部23も中心軸J1を中心として回転するため、
図2中の下部241および上部242がそれぞれ鉛直方向の下側および上側に配置される訳ではない(後述する第2シール加工部33の説明において同様)。
【0016】
ベース24の下部241には、
図2中にて符号β1を付す矢印にて示す方向(ドラム2に設けられた状態にて周方向におよそ沿う方向であり、以下、「幅方向」という。)の両側にそれぞれ突出する2つの突出部243が設けられ、両突出部243はベース24の長手方向(すなわち、中心軸J1方向)の全体に亘って伸びる。両突出部243がドラム2の溝部211の底面に取り付けられることにより、第1シール加工部23がドラム2に固定される。
【0017】
図3に示すように、第1シール加工部23は、ベース24の長手方向に沿って伸びるブロック25、および、ブロック25とベース24の上部242との間に設けられる2つの薄板部材26(例えば、厚さ10〜500μm(マイクロメートル)の板状部材)をさらに有する。ブロック25の下部には、幅方向の両側にそれぞれ突出する2つの突出部251が設けられ、両突出部251はブロック25の長手方向の全体に亘って伸びる。各突出部251には、長手方向に沿って複数の貫通孔259が形成される。ベース24の上面240および薄板部材26にはネジ穴249および貫通孔269が形成されており、複数のボルト271をブロック25および薄板部材26の複数の貫通孔259,269に挿入してベース24の複数のネジ穴249に強固に締結(螺合)することにより、ブロック25が薄板部材26を挟んでベース24に固定される。
【0018】
第1シール加工部23では、幅方向および長手方向に平行なベース24の上面240において一部の領域のみに薄板部材26が設けられる。したがって、ブロック25に対向するベース24側の面、すなわち、上面240上の薄板部材26の表面、および、上面240のうち薄板部材26に覆われない領域を含む面が、上面240に垂直な段差261(
図2参照)を有する。
図2および
図3の第1シール加工部23では、各薄板部材26は、ベース24の長手方向および幅方向に平行な辺を有する矩形であり、幅方向において薄板部材26の幅はベース24およびブロック25の幅に等しい。したがって、段差261は幅方向に平行に、かつ、上面240の幅全体に亘って設けられる。ベース24、ブロック25および薄板部材26は所定の金属にて作製される。
【0019】
図4は、
図2の上側から下方を向いて見た場合のブロック25の一部を示す図である。
図4に示すように、ブロック25において2つの突出部251の間で上側を向く面250(以下、「加工面250」という。)には凹凸パターンが形成される。具体的には、それぞれがブロック25の長手方向に伸びる2つのパターン列253が凹凸パターンとして設けられる。2つのパターン列253は、幅方向(ドラム2に設けられた状態では周方向)に隙間を空けて配列される。以下、2つのパターン列253の間における加工面250の領域を中央部254と呼ぶ。
【0020】
各パターン列253では、加工面250から突出する複数の線状パターン要素252が配列される。詳細には、各パターン列253において中央部254側には、2つの線状パターン要素252を略V字状に配置したものが、長手方向に繰り返し配列され、幅方向の外側(すなわち、中央部254とは反対側)には、それぞれが幅方向に伸びる複数の線状パターン要素252が、長手方向に配列される。ブロック25には長手方向に伸びる貫通孔(図示省略)が形成されており、棒状のヒータが貫通孔に挿入される。ヒートシール装置1では、ヒータにより、加工面250のパターン列253が150〜200℃に加熱される。なお、ヒータは、スリップリングを介して外部の電源に電気的に接続される(後述の第2シール加工部33において同様)。
【0021】
図1の複数の加工ユニット3a〜3cは、互いに同様の構造となっており、各加工ユニット3a〜3cは、ドラム2の中心軸J1に平行な中心軸J2a,J2b,J2cを中心として回転する回転部31、回転部31を回転可能に支持する支持部320、支持部320を移動することにより回転部31とドラム2の外周面210との間の距離(すなわち、中心軸J1と中心軸J2a〜J2cとの間の距離)を変更する油圧シリンダ等のシリンダ機構321、および、シリンダ機構321を支持するユニットベース部322を備える。ヒートシール装置1では、加工ユニット3a〜3cのユニットベース部322(および、後述のカッターユニット4のユニットベース部44)は図示省略の本体ベース部に固定され、ドラム2も本体ベース部により回転可能に支持される。回転部31には、中心軸J2a〜J2cに平行に伸びるブロック状の第2シール加工部33が設けられる。
【0022】
図5は、1つの第2シール加工部33を示す斜視図である。第2シール加工部33は、ブロック25の加工面250を除き、第1シール加工部23と同じ構造であり、中心軸J2a〜J2c方向(
図5中にて符号α2を付す矢印にて示す方向)に長いベース34およびブロック35、並びに、ベース34とブロック35の間に配置される複数の(
図5では、2つの)薄板部材36を有する。ベース34において
図5中の下側の部位341(以下、「下部341」という。)が、
図1の回転部31の中心軸J2a〜J2c側に配置され、
図5中の上側の部位342が回転部31の外側に配置される。以下の第2シール加工部33の説明では、回転部31に設けられた状態の第2シール加工部33における中心軸J2a〜J2c側を下側と呼び、回転部31の外側を上側と呼ぶ。
【0023】
ベース34の下部341には、
図5中にて符号β2を付す矢印にて示す方向(以下、「幅方向」という。)の両側に突出するとともに、第2シール加工部33の長手方向(すなわち、α2方向)に伸びる突出部343が形成されており、突出部343が
図1の回転部31に取り付けられて、第2シール加工部33が回転部31に固定される。また、複数のボルト371をブロック35の複数の貫通孔359および薄板部材36の複数の貫通孔に挿入してベース34の複数のネジ穴に締結することにより、ブロック35が薄板部材36を挟んでベース34に固定される。ブロック35とベース34との間において、ベース34の上面の一部の領域のみに薄板部材36が設けられ、ブロック35に対向するベース34側の面が、当該上面に垂直な段差361を有する。段差361は幅方向に平行に、かつ、ベース34の上面の幅全体に亘って設けられる。
【0024】
ブロック35において2つの突出部351の間で上側を向く加工面350は、第2シール加工部33が回転部31に設けられた状態において、中心軸J2a〜J2cを中心とする所定の円筒面C2a,C2b,C2c(
図1中にて二点鎖線にて示す。)のおよそ一部となり、回転部31の回転により、加工面350は、ほぼ円筒面C2a,C2b,C2c上を移動する。円筒面C2a〜C2cは、ドラム2の外周面210と接している。ブロック35には長手方向に伸びる貫通孔(図示省略)が形成されており、棒状のヒータが、貫通孔に挿入されることにより、ブロック35の加工面350が加熱される。第2シール加工部33の長手方向の長さは、
図2の第1シール加工部23の長手方向の長さとほぼ等しい。なお、ブロック35の設定温度は、複数の加工ユニット3a〜3cにおいて同一であってもよく、また、相違してもよい。本実施の形態では、連続シート9の各部位に対して最初にヒートシール加工を行う加工ユニット3aのブロック35の設定温度が最も高く、最後にヒートシール加工を行う加工ユニット3cのブロック35の設定温度が最も低い。ブロック35の設定温度範囲は例えば、15〜200℃であり、一部の加工ユニットにおいてヒータが省略されてもよい。
【0025】
図1のカッターユニット4は、ドラム2の中心軸J1に平行な中心軸J3を中心として回転する回転部41、回転部41を回転可能に支持する支持部45、支持部45を移動することにより回転部41とドラム2の外周面210との間の距離(すなわち、中心軸J1と中心軸J3との間の距離)を変更するシリンダ機構43、および、シリンダ機構43を支持するユニットベース部44を備える。回転部41には、中心軸J3に平行に伸びる板状のカッター部42が設けられ、回転部41の回転により、カッター部42の先端(刃先)が、中心軸J3を中心とする所定の円筒面C3(
図1中にて二点鎖線にて示す。)上を移動する。円筒面C3の直径は、円筒面C2a〜C2cの直径と同じである。
【0026】
図1のヒートシール装置1では、各加工ユニット3a〜3cにおける円筒面C2a〜C2cの円周の長さが、ドラム2の外周面210の円周の長さの1/4となっており、既述のように、ドラム2には、中心軸J1を中心とする周方向に90度間隔にて4個の第1シール加工部23が設けられている。また、ドラム2は所定の回転数(単位時間当たりの回転数)にて中心軸J1を中心として反時計回りに連続的に回転し、加工ユニット3a〜3cの回転部31はドラム2の回転数の4倍にて中心軸J2a〜J2cを中心として時計回りに連続的に回転する。さらに、ドラム2の各第1シール加工部23が、加工ユニット3a〜3cに対向する位置(すなわち、中心軸J1と中心軸J2a〜J2cとを結ぶ面と、外周面210とが交わる位置であり、以下、「シール加工位置」という。)へと到達する際に、第2シール加工部33も当該位置へと到達するように、回転部31がドラム2の回転に同期して回転する。したがって、シール加工位置の極近傍では、第1シール加工部23の外側の端部と、第2シール加工部33の外側の端部とが、およそ同じ移動方向に同じ移動速度にて移動する。ヒートシール装置1では、各加工ユニット3a〜3cのシール加工位置における第1シール加工部23と第2シール加工部33との間のクリアランスの幅が、シリンダ機構321により調整可能である。
【0027】
また、カッターユニット4とドラム2との関係も、加工ユニット3a〜3cとドラム2との関係と同様となっている。具体的には、カッターユニット4における円筒面C3の円周の長さは、ドラム2の外周面210の円周の長さの1/4であり、回転部41はドラム2の回転数の4倍にて中心軸J3を中心として時計回りに回転する。また、ドラム2の各第1シール加工部23が、カッターユニット4に対向する位置(すなわち、中心軸J1と中心軸J3とを結ぶ面と、外周面210とが交わる位置であり、以下、「カット位置」という。)へと到達する際に、カッター部42も当該位置へと到達するように、回転部41がドラム2の回転に同期して回転する。
【0028】
図6は、ヒートシール装置1におけるヒートシール加工に係る動作の流れを示す図である。
図6では、ヒートシール加工が行われる連続シート9の1つの部位に着目した動作の流れを示している。実際には、ドラム2の回転に伴って、ステップS11〜S16の処理が対応する部位に対して並行して行われる。
【0029】
ここで、ヒートシール装置1にて処理される連続シート9は、長尺の外層シートや内層シート等の積層体(不織布シートを含む積層体)であり、おむつの脚部開口に相当する開口部が連続シート9の長尺方向に一定の間隔にて形成されている。隣接する2つの開口部間の部位には吸収コアが配置されており、当該部位が1つのおむつとなる予定のものである。実際には、長尺方向に沿う2つのエッジを重ねるようにして連続シート9は2つ折りにされている。
【0030】
ヒートシール装置1へと搬送される連続シート9は、
図1中にて符号A1を付す矢印にて示す位置近傍にて、保持部22(
図1中にて二点鎖線にて示す保持部22参照)によりドラム2の外周面210上に保持される(ステップS11)。このとき、長尺方向に関して開口部中央とおよそ同位置となる連続シート9の部位(以下、「対象部位」という。)が、保持部22の2つの爪部221間に配置される。詳細には、連続シート9の対象部位は、中心軸J1に平行に伸びる第1シール加工部23の加工面250(
図2参照)上に位置する。
【0031】
対象部位は、
図1中の最も上側の加工ユニット3aの近傍へと移動し、加工ユニット3aにより、対象部位に対してヒートシール加工が行われる(ステップS12)。具体的には、第1シール加工部23の加工面250上の2つのパターン列253(
図4参照)が、連続シート9を介して第2シール加工部33の加工面350と当接する。これにより、2つ折りの連続シート9の重なり合った部位同士が、パターン列253の各線状パターン要素252との当接部分にて熱融着し、2つのパターン列253に対応するシールパターンが対象部位に形成される。このように、連続シート9の対象部位が第1シール加工部23の加工面250と、第2シール加工部33の加工面350との間に挟まれることにより、ヒートシール加工が行われる。
【0032】
図1の加工ユニット3aにより対象部位に対してヒートシール加工が行われると、対象部位は、加工ユニット3aに隣接する加工ユニット3bの近傍へと移動し、加工ユニット3bにより、対象部位に対してヒートシール加工が行われる(ステップS13)。このとき、加工ユニット3aにより形成された対象部位上のシールパターンの位置は、第1シール加工部23の加工面250に対して固定されているため、加工ユニット3aによりヒートシール加工が行われた対象部位上の位置と同じ位置に、加工ユニット3bによりヒートシール加工がさらに行われる(後述の加工ユニット3cによるヒートシール加工において同様)。
【0033】
加工ユニット3bにより対象部位に対してヒートシール加工が行われると、対象部位は、加工ユニット3bに隣接する加工ユニット3cの近傍へと移動し、加工ユニット3cにより、対象部位に対してヒートシール加工が行われる(ステップS14)。このように、ヒートシール装置1では、対象部位に対して複数回のヒートシール加工が行われることにより、ヒートシールの強度(接合強度)が高くなる。その後、対象部位は、カッターユニット4の近傍へと移動し、カッター部42により外周面210上のカット位置にて連続シート9が切断される(ステップS15)。
【0034】
このとき、カッター部42の先端は、第1シール加工部23において2つのパターン列253の間の中央部254(
図4参照)にて受けられる。これにより、連続シート9は、一方のパターン列253によりヒートシール加工が行われた部位と、他方のパターン列253によりヒートシール加工が行われた部位との間、すなわち、一方のパターン列253により形成されたシールパターンと、他方のパターン列253により形成されたシールパターンとの間にて切断される。その後、保持部22による対象部位の保持が解除される(ステップS16)。連続シート9から分離された部位は吸引吸着により外周面210上にて保持されつつ、
図1中にて二点鎖線にて示すローラ91近傍まで移動してローラ91の外周面上に受け渡され、当該部位が(必要に応じて後続の処理が行われた後に)1つの使い捨ておむつとなる。
【0035】
既述のように、ヒートシール装置1では、ドラム2の回転に伴って、ステップS11の処理にて、連続シート9の複数の部位が保持部22により順次保持され、加工ユニット3a〜3c、並びに、カッターユニット4によるステップS12〜S15の処理が対応する部位に対して並行して行われる。これにより、連続シート9に対するヒートシール加工および切断処理を高速に行うことが可能となる。ステップS12〜S14のそれぞれの処理は、ドラム2の第1シール加工部23と加工ユニット3a〜3cの第2シール加工部33との間に製造途上の複数の使い捨ておむつを順次挟んで、複数の使い捨ておむつに対するヒートシール加工(いわゆる、サイドシール部の形成)を行うものとなっている。
【0036】
ここで、ヒートシール装置1の各シール加工部23,33において、ブロック25,35とベース24,34との間に設けられる薄板部材26,36について述べる。ヒートシール装置1では、
図6の処理の事前準備として、ヒートシール加工時に第1シール加工部23の加工面250と、第2シール加工部33の加工面350との間に作用する圧力の分布がおよそ均一となるように、薄板部材26,36の大きさ、位置および厚さが決定される。当該事前準備では、まず、各シール加工部23,33において薄板部材26,36を省略した状態にて、ヒートシール加工時に両加工面250,350間に作用する圧力の分布が圧力測定フィルムを用いて測定される。
【0037】
図7.Aないし
図7.Cは、各シール加工部23,33において薄板部材26,36を省略した状態における両加工面250,350間の圧力分布の測定結果を示す図である。
図7.Aないし
図7.Cは、シール加工位置における両加工面250,350間のクリアランスがそれぞれ90μm、0μm、(−40)μmとなるように、中心軸J1と中心軸J2a〜J2cとの間の距離を設定した場合における測定結果を示す。なお、両加工面250,350間の設定上のクリアランスが(−40)μmの場合は、実際のヒートシール加工時における両加工面250,350間のクリアランスは、ほぼ0であるが、加工面250,350同士がフィルムを介して強く衝突する。圧力測定フィルムは、一定の圧力範囲内において圧力が高い領域ほど黒色が濃くなる。
図7.Aないし
図7.Cでは、1つのパターン列253(例えば、長さ250〜300mm)の全体に相当する領域を符号Rを付す二点鎖線の矩形にて示している(後述の
図8.Aないし
図8.Cにおいて同様)。
【0038】
両加工面250,350間の設定上のクリアランスが90μmの場合には、
図7.Aの左右方向における領域Rの中央部のみにて圧力測定フィルムにパターンが形成されており、長手方向におけるシール加工部23,33の中央部において両加工面250,350間の圧力が高くなり、端部において圧力が低いことが判る。この場合、使い捨ておむつのサイドシール部において、端部の接合強度が弱くなってしまう。
【0039】
ここで、ヒートシール装置1では、常温においてシール加工位置の両加工面250,350が互いに平行となるように設定されているが、既述のようにブロック25,35は加熱されるため、熱膨張する。上記の例では、長手方向の中央部においてブロック25,35の膨張が大きくなり、長手方向および幅方向に平行な所定の基準面からの加工面250,350の高さが、長手方向の中央において他の部位よりも高くなってしまう。両加工面250,350間の設定上のクリアランスを小さくすることにより(すなわち、シール加工部23,33間にて作用する力(いわゆる、当たり)を強くすることにより)、
図7.Bおよび
図7.Cに示すように圧力が高い領域は増大するが、膨張が小さい長手方向の端部では圧力が低いままである。
【0040】
そこで、本実施の形態におけるヒートシール装置1では、
図2および
図5に示すように、例えば厚さ40〜60μmかつ長さ10〜40mmの薄板部材26,36が、ブロック25,35とベース24,34との間において長手方向の両端部に設けられる。これにより、ブロック25,35に対向するベース24,34側の面において、2つの薄板部材26の間に凹部262,362が形成される。既述のように、ブロック25,35および薄板部材26,36は、シール加工部23,33の回転方向(幅方向に相当する。)における加工面250,350の前側および後側において、長手方向に沿って配置される複数のボルト271,371によりベース24,34に対して強固に固定される。したがって、ブロック25,35が、凹部262,362に対向する中央部において撓み、常温では、長手方向における加工面250,350の中央部がベース24,34側に僅かに窪む。
図2および
図5では、凹部262,362の存在を判りやすくするため、ブロック25,35を撓ませることなく図示している(後述の
図9および
図11において同様)。一方、ブロック25,35が熱膨張した状態では、基準面からの加工面250,350の高さが、長手方向においておよそ均一となる。なお、ブロックの熱膨張による加工面の高さのばらつきは、シール加工部の設計に依存するため、必ずしも上記のように長手方向の中央部に凹部が設けられる(薄板部材が長手方向の端部に設けられる)訳ではない。
【0041】
図8.Aないし
図8.Cは、各シール加工部23,33において薄板部材26,36を設けた状態における両加工面250,350間の圧力分布の測定結果を示す図である。
図8.Aないし
図8.Cは
図7.Aないし
図7.Cに対応し、シール加工位置における両加工面250,350間のクリアランスがそれぞれ90μm、0μm、(−40)μmとなるように、中心軸J1と中心軸J2a〜J2cとの間の距離を設定した場合における測定結果を示す。
【0042】
図8.Aに示すように、薄板部材26,36を設けたヒートシール装置1では、両加工面250,350間の圧力が高い領域が長手方向の中央と両端との間に存在し、両加工面250,350間の設定上のクリアランスを小さくすることにより、
図8.Bおよび
図8.Cに示すように、パターン列253のおよそ全体において両加工面250,350間に高い圧力が作用する。したがって、薄板部材26,36を設けたヒートシール装置1では、ブロック25,35が熱膨張した状態において、シール加工位置における両加工面250,350が互いにおよそ平行になっていると捉えられる。なお、シール加工部23,33において薄板部材26,36の厚さが段階的に変更されてもよい(上記の例では、長手方向の中央に向かって厚さが段階的に薄くなる。)。また、薄板部材は幅方向の一部の範囲のみに設けられてもよい。
【0043】
以上に説明したように、ヒートシール装置1の各シール加工部23,33では、ブロック25,35とベース24,34との間において、ブロック25,35に対向するベース24,34側の面が段差261,361を有することにより、ブロック25,35が熱膨張した状態において、シール加工位置における両加工面250,350を互いにおよそ平行にすることが可能となる。これにより、加工面250,350の全体でおよそ均一な圧力にてヒートシール加工を行うことができ、使い捨ておむつのサイドシール部において接合強度を長手方向(に対応する方向)に均一にすることができる。また、第1シール加工部23と第2シール加工部33との間に作用する力を過度に大きくする必要がないため、ヒートシール装置1における各部品が短時間で消耗する(例えば、線状パターン要素252が短時間で摩耗する)ことを抑制して、部品(特に、加工面250)の長寿命化を図ることができる。
【0044】
上記ヒートシール装置1では、第1シール加工部23および第2シール加工部33の双方において、ブロック25,35とベース24,34との間に薄板部材26,36が設けられるが、一方のシール加工部にのみ薄板部材が設けられ、他方のシール加工部において薄板部材が省略されてもよい。この場合でも、熱膨張した当該一方のシール加工部において、長手方向および幅方向に平行な基準面からの加工面の高さが、長手方向において均一となる、または、当該一方のシール加工部の加工面が、当該他方のシール加工部における加工面に従った形状となる(すなわち、両加工面を合わせた際に、およそ全体で接する形状となる)ことにより、加工面の全体でおよそ均一な圧力にてヒートシール加工を行うことが可能となる(後述の
図9ないし
図12の例において同様)。ただし、均一な圧力によるヒートシール加工を容易に実現するという観点では、第1シール加工部23および第2シール加工部33の双方に薄板部材を設け、各ブロックの撓みを小さくすることが好ましい。
【0045】
図2の第1シール加工部23では、薄板部材26を設けることにより、ブロック25を撓ませるための段差261を容易に設けることが可能となるが、ブロック25を撓ませるための段差は他の手法にて設けられてもよい(第2シール加工部33において同様)。
図9は、他の例に係る第1シール加工部23aを示す斜視図であり、
図10は、第1シール加工部23aの分解斜視図である。第1シール加工部23aでは、
図2の薄板部材26に代えてブロック25のベース24側の面を下側から覆う中間プレート26aが設けられる。他の構成は
図2の第1シール加工部23と同様であり、同符号を付す。
【0046】
図10に示すように中間プレート26aは、ブロック25とベース24との間に挟まれており、ブロック25の複数の貫通孔259(およびベース24のネジ穴249)と重なる位置に、複数の貫通孔269aを有する。また、中間プレート26aのブロック25に対向する主面260aには、幅方向(β1方向)に平行に、かつ、中間プレート26aの幅全体に亘って伸びる2つの段差261aが設けられる。詳細には、長手方向(α1方向)の中央部において主面260a上に凹部262aが形成されるように、中央部から両端部に向かってベース24からの主面260aの高さが増大する段差261aが形成される。ブロック25および中間プレート26aは、第1シール加工部23aの回転方向における加工面250の前側および後側において、長手方向に沿って配置される複数のボルト271によりベース24に対して強固に固定される。これにより、ブロック25が凹部262aにおいて撓み、常温では、長手方向における加工面250の中央部がベース24側に僅かに窪む。一方、ブロック25が熱膨張した状態では、長手方向および幅方向に平行な基準面からの加工面250の高さが、長手方向においておよそ均一となる。
【0047】
以上のように、第1シール加工部23aでは、ブロック25に対向するベース24側の面が中間プレート26aの一の主面260aであり、中間プレート26aが当該主面260aに段差261aを有する。これにより、熱膨張したブロック25において基準面からの加工面250の高さを長手方向においておよそ均一にする(または、加工面250を他方のシール加工部における加工面に従った形状とする)ことができ、加工面250の全体でおよそ均一な圧力にてヒートシール加工を行うことができる。
【0048】
図11は、さらに他の例に係る第1シール加工部23bを示す斜視図であり、
図12は、第1シール加工部23bの分解斜視図である。第1シール加工部23bでは、
図2の薄板部材26が省略されるとともに、ブロック25bのベース24側の主面257に幅方向に平行に、かつ、ブロック25bの幅全体に亘って伸びる2つの段差258が設けられる。他の構成は
図2の第1シール加工部23と同様であり、同符号を付す。
【0049】
図12に示すようにブロック25bでは、長手方向の中央部から両端部に向かって加工面250からの主面257の距離(すなわち、ブロック25bの厚さ)が増大するように2つの段差258が形成され、中央部において主面257上に凹部256が形成される。ブロック25bは、第1シール加工部23bの回転方向における加工面250の前側および後側において、長手方向に沿って配置される複数のボルト271によりベース24に対して強固に固定される。これにより、ブロック25bが凹部256において撓み、常温では、長手方向における加工面250の中央部がベース24側に僅かに窪む。一方、ブロック25bが熱膨張した状態では、基準面からの加工面250の高さが、長手方向においておよそ均一となる。
【0050】
以上のように、第1シール加工部23bでは、ブロック25bとベース24との間において、ベース24に対向するブロック25b側の面が段差258を有することにより、熱膨張したブロック25bにおいて、基準面からの加工面250の高さを長手方向においておよそ均一にする(または、加工面250を他方のシール加工部における加工面に従った形状とする)ことができ、加工面250の全体でおよそ均一な圧力にてヒートシール加工を行うことができる。また、第1シール加工部23bでは部品数を削減することができる。
【0051】
図13は、他の実施の形態に係るヒートシール装置1aを示す図であり、
図13では、ヒートシール装置1aのドラム2aのみを示している。
図13のドラム2aでは、外周面210に設けられた溝部211の底面にブロック28が固定され、ドラム2aの一部がベースとしての役割を果たす。他の構成は
図1のヒートシール装置1と同様であり、同符号を付している。
【0052】
第1シール加工部29におけるブロック28は、中心軸J1方向(
図13にて紙面に垂直な方向)に長い形状であり、ブロック28の下部には、幅方向の両側にそれぞれ突出する2つの突出部281が設けられる。両突出部281はブロック28の長手方向の全体に亘って伸びる。各突出部281には、長手方向に沿って複数の貫通孔289が形成される。また、溝部211の底面には、中心軸J1方向に伸びる補助溝212が形成されており、当該底面において幅方向における補助溝212の両側の領域213(以下、「ベース基準面213」と総称する。)には、中心軸J1方向に沿って複数のネジ穴219が形成される。ブロック28とベース基準面213との間には薄板部材26が設けられ、薄板部材26には貫通孔269が形成される。薄板部材26は、ベース基準面213の一部の領域のみに設けられ、当該領域では、ボルト271がブロック28の貫通孔289および薄板部材26の貫通孔269の双方に挿入されてベース基準面213のネジ穴219に締結され、他の領域では、ボルト271がブロック28の貫通孔289のみに挿入されてベース基準面213のネジ穴219に締結される。これにより、ブロック28が薄板部材26を挟んでベース基準面213に固定される。なお、ベース基準面213は研磨されて平坦化された面である。以下、ブロック28の底面(中心軸J1側の面)において、薄板部材26を挟んでベース基準面213と対向する領域283を「ブロック基準面283」と呼ぶ。
【0053】
ブロック28において2つの突出部281の間にて上側を向く面が加工面280であり、
図2のブロック25と同様に、加工面280と、加工ユニット3a〜3cの第2シール加工部33との間にて連続シート9を挟むことによりヒートシール加工が行われる。ヒートシール装置1aでは、薄板部材26が、ブロック28とベース基準面213との間において長手方向(中心軸J1方向)の両端部に設けられる。これにより、ブロック28のブロック基準面283に対向するベース側の面において、2つの薄板部材26の間に凹部が形成される。既述のように、ブロック28および薄板部材26は、第1シール加工部29の回転方向(幅方向に相当する。)における加工面280の前側および後側において、長手方向に沿って配置される複数のボルト271によりベース基準面213に対して強固に固定される。したがって、ブロック28が、当該凹部に対向する中央部において撓み、常温では、長手方向における加工面280の中央部がベース基準面213側に僅かに窪む。一方、ブロック28が熱膨張した状態では、ベース基準面213からの加工面280の高さが、長手方向においておよそ均一となる。なお、ブロックの熱膨張による加工面の高さのばらつきは、シール加工部の設計に依存するため、必ずしも上記のように長手方向の中央部に凹部が設けられる(薄板部材が長手方向の端部に設けられる)訳ではない。
【0054】
以上に説明したように、ヒートシール装置1aの第1シール加工部29では、ブロック28とベースとの間において、ブロック基準面283に対向するベース側の面が段差を有する(ベース基準面213に対向するブロック28側の面が段差を有すると捉えることもできる。)ことにより、ブロック28が熱膨張した状態において、シール加工位置における加工面280を均一な高さにすることが可能となる。これにより、加工面280の全体でおよそ均一な圧力にてヒートシール加工を行うことができ、使い捨ておむつのサイドシール部において接合強度を長手方向(に対応する方向)に均一にすることができる。なお、ヒートシール装置1aの第2シール加工部において、第1シール加工部29と同様に、回転部31の一部がベースとしての役割を果たしてもよい。
【0055】
ヒートシール装置1aでは、
図9の中間プレート26aが設けられてもよく、さらに、
図11のブロック25bのように、ブロック28のベース側の主面に段差が形成されてもよい。以上のように、ヒートシール装置1aでは、ブロック28において加工面280とは反対側にて複数の貫通孔289が開口するブロック基準面283と、ベースにおいて複数のネジ穴219が形成されるベース基準面213との間において、ブロック基準面283に対向するベース側の面が段差を有する、または、ベース基準面213に対向するブロック28側の面が段差を有することにより、加工面280の全体でおよそ均一な圧力にてヒートシール加工を行うことが容易に実現される。なお、
図1のヒートシール装置1では、ベース24,34の上面の全体がベース基準面であり、ブロック25,35の下面の全体がブロック基準面であると捉えることができ、ヒートシール装置1aと同様に、ブロック25,35とベース24,34との間において、ブロック基準面に対向するベース24,34側の面が段差を有する、または、ベース基準面に対向するブロック25,35側の面が段差を有する。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、
図14に示すように、ベース24の上面240において、幅方向(β1方向)の片側のみに薄板部材26が設けられてもよく、
図15に示すように、ベース24の上面240に段差248が設けられてもよい(
図13のヒートシール装置1aにおいて同様)。
【0057】
上記実施の形態では、ドラム2の第1シール加工部23にヒートシール加工用の凹凸パターンが設けられることにより、複数の加工ユニット3a〜3cによるヒートシール加工を同一シールパターン上に施すことが容易に可能となるが、1つの加工ユニットのみが設けられる場合等、ヒートシール装置の設計によっては、第2シール加工部、または、第1シール加工部および第2シール加工部の双方に凹凸パターンが設けられてもよい。すなわち、ヒートシール装置では、第1シール加工部および第2シール加工部の少なくとも一方に、ヒートシール加工用の凹凸パターンが設けられることにより、連続シート9に対して所定のシールパターンによるヒートシールが可能となる。
【0058】
上記実施の形態では、両加工面250,350間に作用する圧力の分布を圧力測定フィルムを用いて測定することにより、段差261,261a,258の好ましい位置および高さが決定されるが、段差の位置および高さは他の手法にて決定されてもよい。例えば、ヒートシール装置1,1aにてヒートシール加工が行われた使い捨ておむつにおいて、シールパターンが形成された部位を長手方向の複数の位置にて長手方向に垂直な方向に切断することにより、測定用の複数の部材が作製される。そして、引張試験機を用いて各部材の接合強度を測定することにより、長手方向における接合強度の分布を取得して段差の好ましい位置および高さが決定される。
【0059】
加工面250における線状パターン要素252の配列は、使い捨ておむつの設計に応じて適宜変更されてよい。また、凹凸パターンに曲線状のパターン要素が含まれてもよい。さらに、凹凸パターンが省略され、平坦な加工面同士が連続シート9を挟んで当接してもよい。
【0060】
ヒートシール装置1,1aは、使い捨ておむつにおけるサイドシール部以外のヒートシール加工や、パンツタイプの使い捨ておむつ以外の他の使い捨て吸収性物品の製造に用いられてもよい。また、ヒートシール装置1,1aでは、製造途上の複数の使い捨ておむつが連続シート9としてドラム2と、加工ユニット3a〜3cの回転部31との間に送り込まれるが、分離された吸収性物品が、ヒートシール装置1,1aにおける処理の対象物とされてもよい。
【0061】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。