(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータ用ロータおよびモータ用ステータを備えたモータ部と、前記モータ用ロータで延在するモータ軸に固定されたブレーキ用ロータ、および前記モータ軸の周りに配置された筒状のブレーキ用ステータを備え、前記モータ部に対してモータ軸線方向の反出力側に配置されたブレーキと、を有するブレーキ付きモータにおいて、
前記モータ部の反出力側端面と前記ブレーキ用ステータの出力側端面との間に挟まれた環状端板部、および前記モータ軸の外径寸法より大なる内径寸法をもって前記環状端板部の内周縁から反出力側に垂直に突出して前記ブレーキ用ステータの内周面に接する筒部を備えたブレーキ位置決め板を有し、
前記環状端板部の出力側端面には、フェルト状あるいは多孔性の潤滑油吸着部材が取り付けられていることを特徴とするブレーキ付きモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブレーキ付きモータでブレーキの動作時にモータ軸に負荷が適正に加わるように、筒状のブレーキ用ステータとモータ軸とにおいて相互の軸線方向を平行に配置する必要がある。しかしながら、特許文献1には、モータ軸とブレーキとの間の位置決め構造等については記載されていない。また、特許文献1に記載のブレーキ付きモータでは、ブラケットの反出力側端部に形成されている端板部がブレーキ用ステータを位置決めしているようにみえるが、ブラケットを利用した構成では、ブラケットとモータ部の周りを囲むモータケースとの取り付け精度が低いと、ブレーキ用ステータが傾く等の問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、モータ軸に対してブレーキを適正に配置することのできるブレーキ付きモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、モータ用ロータおよびモータ用ステータを備えたモータ部と、前記モータ用ロータで延在するモータ軸に固定されたブレーキ用ロータ、および前記モータ軸の周りに配置された筒状のブレーキ用ステータを備え、前記モータ部に対してモータ軸線方向の反出力側に配置されたブレーキと、を有するブレーキ付きモータにおいて、前記モータ部の反出力側端面と前記ブレーキ用ステータの出力側端面との間に挟まれた環状端板部、および前記モータ軸の外径寸法より大なる内径寸法をもって前記環状端板部の内周縁から反出力側に突出して前記ブレーキ用ステータの内周面に接する筒部を備えたブレーキ位置決め板を有
し、前記環状端板部の出力側端面には、フェルト状あるいは多孔性の潤滑油吸着部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、モータ部とブレーキ用ステータとの間にブレーキ位置決め板が配置されており、かかるブレーキ位置決め板は、モータ部の反出力側端面とブレーキ用ステータの出力側端面との間に挟まれた環状端板部と、環状端板部の内周縁から反出力側に垂直に突出してブレーキ用ステータの内周面に接する筒部とを備えている。このため、ブレーキ位置決め板はモータ部を基準に位置決めされ、ブレーキ用ステータは、ブレーキ位置決め板を介してモータ部に位置決めされる。その結果、ブレーキ用ステータは、ブレーキ位置決め板の環状端板部によってモータ部の反出力側端面に対する垂直度が規定され、ブレーキ位置決め板の筒部によってモータ部やモータ軸との同軸度が規定される。従って、モータ軸に固定されたブレーキ用ロータと、モータ部の周りに配置された筒状のブレーキ用ステータとの相対的な位置精度が高い等、モータ軸やモータ部に対してブレーキを適正に配置することができる。
また、ブレーキ位置決め板の環状端板部の出力側端面には、フェルト状あるいは多孔性の潤滑油吸着部材が取り付けられているため、モータ部の軸受等に潤滑油が使用されている場合でも、潤滑油がブレーキ側に侵入しにくい。それ故、ブレーキが潤滑油によって適正に作動しなくなるという事態が発生しにくい。
【0009】
本発明において、前記モータ軸を反出力側で支持する反出力側ラジアル軸受は、前記モータ部に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、反出力側ラジアル軸受も含めてモータ部を組み立てた時点で、モータ軸の位置や姿勢が定まっているので、モータ部を組み立てた後、モータ部の反出力側にブレーキを固定する方法でブレーキ付きモータを組み立てることができ、モータ軸に対してブレーキを適正に配置することができる。
【0010】
本発明において、前記モータ部は、前記モータ用ステータと前記ブレーキとの間で、前記反出力側ラジアル軸受を保持する軸受ホルダを有し、前記モータ部の前記反出力側端面は、前記軸受ホルダの反出力側端面からなることが好ましい。かかる構成によれば、ブレーキ位置決め板は軸受ホルダを基準に適正に配置されるので、モータ軸に対してブレーキを適正に配置することができる。
【0012】
本発明において、前記環状端板部の前記出力側端面には、内周縁から径方向外側に離間した位置に前記潤滑油吸着部材が収容される凹部が形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、潤滑油吸着部材に吸着されていた潤滑油がブレーキの内周側を通ってクブレーキ内に侵入するという事態を防止することができる。
【0013】
本発明において、前記環状端板部の反出力側端面のうち、内周縁から径方向外側に離間した外周側環状領域は、該外周側環状領域より内側の内周側環状領域より反出力側に位置して前記ブレーキ用ステータの前記出力側端面に面接触していることが好ましい。かかる構成によれば、環状端板部の反出力側端面のうち、外周側環状領域のみを精度よく構成すればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、モータ部とブレーキ用ステータとの間にブレーキ位置決め板が配置されており、かかるブレーキ位置決め板は、モータ部の反出力側端面とブレーキ用ステータの出力側端面との間に挟まれた環状端板部と、環状端板部の内周縁から反出力側に垂直に突出してブレーキ用ステータの内周面に接する筒部とを備えている。このため、ブレーキ位置決め板はモータ部を基準に位置決めされ、ブレーキ用ステータは、ブレーキ位置決め板を介してモータ部に位置決めされる。その結果、ブレーキ用ステータは、ブレーキ位置決め板の環状端板部によってモータ部の反出力側端面に対する垂直度が規定され、ブレーキ位置決め板の筒部によってモータ部やモータ軸との同軸度が規定される。従って、モータ軸に固定されたブレーキ用ロータと、モータ部の周りに配置された筒状のブレーキ用ステータとの相対的な位置精度が高い等、モータ軸やモータ部に対してブレーキを適正に配置することができるので、ブレーキが適正に作動する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したブレーキ付きモータの一例を説明する。なお、以下の説明では、モータ軸線L方向を指示する際、モータ軸が突出している側を出力側L1とし、モータ軸が突出している側とは反対側を反出力側L2とする。また、図面において、ボルト101、103、107が重なる位置に表されているが、ボルト101、103、107は周方向で異なる位置に配置されている。
【0017】
(モータの全体構成)
図1は、本発明を適用したモータの断面図であり、
図2は、本発明を適用したモータの要部を拡大して示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、本例のブレーキ付きモータ1は、モータ軸20の軸線方向(モータ軸線L方向)の一方側(出力側L1)から他方側(反出力側L2)に向かって、モータ部2、ブレーキ4、およびエンコーダ6がこの順に配列されており、モータ部2、ブレーキ4、およびエンコーダ6は、ハウジング8により周りが囲まれている。本形態において、ハウジング8は、モータ部2の周りを囲む円筒状のモータケース81、ブレーキ4の周りを囲む円筒状のブレーキケース82(筒状ケース部材)、およびエンコーダケース83を備えている。
【0019】
(モータ部2の構成)
モータ部2は、モータ軸20の周りにロータマグネット24が固着されたモータ用ロータ25と、モータ用ロータ25の周りを囲む円筒状のモータ用ステータ21とを備えており、モータ用ステータ21の周りはモータケース81によって囲まれている。本形態において、モータケース81は、鉄系金属等の磁性材料からなる。モータ軸20は、長さ方向の全体が鉄系金属等の磁性材料からなり、ロータマグネット24のバックヨークとして機能する。
【0020】
モータ用ステータ21は、積層コアからなるステータコア211と、ステータコア211の複数の突極の各々にインシュレータ213を介して巻回されたコイル212とを有しており、ステータコア211は、モータケース81の内側に焼嵌め等の方法により固定されている。
【0021】
モータケース81の出力側L1の端部には、アルミニウムダイカスト等からなるフレーム26が取り付けられており、モータケース81の出力側L1の開口部はフレーム26によって塞がれている。フレーム26は、モータケース81の出力側L1の端部に溶接やネジ止め等により固定された円筒部261と、円筒部261の出力側L1の端部に形成された端板部262とを備えている。端板部262の中央にはモータ軸20の出力側L1の端部を突出させる開口部264が形成されており、開口部264は、端板部262から反出力側L2に突出した筒部263により形成されている。筒部263には、モータ軸20を出力側L1で支持するラジアル軸受27が保持されており、フレーム26は、ハウジング8の一部として用いられているとともに、軸受ホルダとしても用いられている。本形態において、ラジアル軸受27は、内輪271、ボール272および外輪273を備えたベアリングからなり、内輪271がモータ軸20の外周面に嵌められ、外輪273が筒部263に嵌められている。フレーム26には、開口部264のうち、外輪273およびボール272が配置されている部分に出力側L1で重なる環状の突部265が形成されており、かかる突部265を利用して、ラジアル軸受27に与圧を印加する与圧バネ(図示せず)が組付けられている。また、突部265は、異物が出力側L1からラジアル軸受27を通って内部に侵入することを防止する機能も担っている。
【0022】
図2に示すように、モータ部2は、反出力側L2の端部に軸受ホルダ28を有しており、軸受ホルダ28の端板部280の反出力側端面281によって、モータ部2の反出力側端面が構成されている。軸受ホルダ28の外周部分は、後述するブレーキ位置決め板3の外周部分とともに、モータケース81の反出力側L2の端部とブレーキケース82の出力側L1の端部との間に挟まれている。本形態において、軸受ホルダ28は、鉄系金属等の磁性材料からなる。
【0023】
軸受ホルダ28において、端板部280は、ブレーキ位置決め板3、およびモータケース81の端板部810に重なっており、端板部280の中央に形成された開口部の縁から出力側L1に向けて円筒部283が突出している。本形態において、端板部280は、ブレーキ位置決め板3とともに、ボルト101によってモータケース81の端板部810に固定されている。円筒部283には、モータ軸20を反出力側L2で支持するラジアル軸受29が保持されている。ラジアル軸受29は、内輪291、ボール292および外輪293を備えたベアリングからなり、内輪291がモータ軸20の外周面に嵌められ、外輪293が円筒部283に嵌められている。
【0024】
このようにして、モータ軸20は、出力側L1のラジアル軸受27および反出力側L2のラジアル軸受29によって回転可能に支持されている。なお、出力側L1のラジアル軸受27において、内輪271は、モータ軸20の外周面において出力側L1を向く段部に当接し(
図1参照)、反出力側L2のラジアル軸受29において、内輪291は、モータ軸20の外周面において反出力側L2を向く段部に当接している。
【0025】
(ブレーキ位置決め板3およびブレーキ4の構成)
本形態においては、モータ部2の反出力側端面(軸受ホルダ28の反出力側端面281)にブレーキ位置決め板3が重ねて配置されており、かかるブレーキ位置決め板3の反出力側L2にブレーキ4が配置されている。本形態において、ブレーキ4は、ボルト107によってモータ部2に固定されている。
【0026】
ブレーキ位置決め板3およびブレーキ4は、周りが円筒状のブレーキケース82によって囲まれており、ブレーキケース82は、後述する仕切り板5をボルト103で軸受ホルダ28およびモータケース81に止めた際、モータケース81との間に軸受ホルダ28およびブレーキ位置決め板3の外周部分を挟んだ状態でモータケース81に連結されている。本形態において、ブレーキケース82は、アルミニウム等の非磁性の金属製であり、ブレーキ位置決め板3は、鉄系金属等の磁性材料からなる。
【0027】
ブレーキ4に用いたブレーキ用ステータ40は、以下に説明するように、円筒状であり、ブレーキ位置決め板3は、モータ部2の反出力側端面(軸受ホルダ28の反出力側端面281)とブレーキ用ステータ40の出力側端面401との間に挟まれた環状端板部31と、モータ軸20の外径寸法より大なる内径寸法をもって環状端板部31の内周縁から反出力側L2に垂直に突出してブレーキ用ステータ40の内周面402に接する筒部32とを備えている。
【0028】
本形態において、ブレーキ4は電磁式ブレーキであり、モータ軸20に固定された円環状の摩擦板45(ブレーキ用ロータ)と、摩擦板45に出力側L1で対向する円環状のアーマチュア46と、摩擦板45に反出力側L2で対向する円環状のプレート47と、アーマチュア46に出力側L1で対向する位置でモータ軸20の周りに配置された円筒状のブレーキ用ステータ40とを備えている。本形態において、摩擦板45は、モータ軸20の周りに固定された連結部材48を介してモータ軸20に固定されている。
【0029】
モータ軸20は、モータ部2に位置する部分からブレーキ用ステータ40で囲まれた部分までが大径部201になっているのに対して、連結部材48が固定されている部分は、大径部201より細い中径部202になっている。また、モータ軸20において、中径部202より先端側は、中径部202より細い小径部203になっている。ここで、大径部201は断面円形であるのに対して、中径部202の外周面には、平坦面が2個所に形成されている。連結部材48の内形は四角形であり、側方から止められたネジ(図示せず)によって、中径部202と連結部材48とが連結されている。また、連結部材48の外形は四角形であり、摩擦板45の内形は四角形である。このため、モータ軸20に対して大きな制動力が加わっても、連結部材48や摩擦板45が空周りすることがないようになっている。なお、プレート47は、ブレーキ用ステータ40にブシュ49を介してボルト105により固定されている。また、中径部202と連結部材48とを連結するにあたっては、ネジとともに、キーを利用してもよい。
【0030】
モータ軸20において、大径部201は、モータ部2に位置する部分が第1大径部201aになっており、ブレーキ用ステータ40で囲まれた部分は、第1大径部201aより小径の第2大径部201bになっている。また、モータ軸20において、モータ部2に位置する第1大径部201aと、ブレーキ用ステータ40で囲まれた第2大径部201bとの間は、第1大径部201aや第2大径部201bより小径であるが、中径部202より大径の第3大径部201cになっている。第3大径部201cは、出力側L1から反出力側L2に向けて多段に縮径しており、第3大径部201cの段部と第2大径部201bとの間に止め輪290が保持されている。
【0031】
ブレーキ4において、ブレーキ用ステータ40は、円筒状のヨーク404と、ヨーク404に巻回されたコイル403とを備えており、コイル403に通電してブレーキ用ステータ40を励磁させたとき、電磁石として機能する。ブレーキ用ステータ40には、アーマチュア46を摩擦板45に向けて付勢するコイルバネからなるトルク・スプリング(図示せず)が内蔵されている。このため、ブレーキ用ステータ40のコイル403に通電しない非通電時(非励磁時)においては、トルク・スプリングによって摩擦板45がアーマチュア46とプレート47との間に挟まれる結果、その摩擦力によってモータ軸20に負荷が印加される。これに対して、ブレーキ用ステータ40のコイル403に通電する通電時(励磁時)においては、アーマチュア46がトルク・スプリングに抗してブレーキ用ステータ40に吸引される結果、アーマチュア46と摩擦板45との間に隙間が発生し、摩擦板45はフリーになる。
【0032】
かかる構成のブレーキ4では、モータ軸20に固定された摩擦板45と、プレート47、アーマチュア46およびブレーキ用ステータ40とが平行に対向配置されている必要があり、それ故、本形態では、ブレーキ位置決め板3を介してモータ部2にブレーキ用ステータ40を固定する。より具体的には、ブレーキ位置決め板3において、環状端板部31は、モータ部2の反出力側端面(軸受ホルダ28の反出力側端面281)とブレーキ用ステータ40の出力側端面401との間に挟まれており、かかる環状端板部31によって、ブレーキ用ステータ40は、モータ部2に対して高い垂直度をもって配置されている。また、ブレーキ位置決め板3において、筒部32は、ブレーキ用ステータ40の内周面402に接しており、かかる筒部32によって、ブレーキ用ステータ40は、モータ部2およびモータ軸20に対して高い同軸度をもって配置されている。従って、モータ軸20に対してブレーキ4を適正に配置することができる。それ故、ブレーキ4では、モータ軸20に固定された摩擦板45(ブレーキ用ロータ)と、モータ部2の周りに配置された筒状のブレーキ用ステータ40との相対的な位置精度が高い。
【0033】
本形態では、ブレーキ位置決め板3の環状端板部31の出力側端面311のうち、軸受ホルダ28の端板部280と重なる全面が軸受ホルダ28の端板部280と面接触している。これに対して、ブレーキ位置決め板3の環状端板部31の反出力側端面312のうち、内周縁から径方向外側に離間した外周側環状領域313は、外周側環状領域313より内側の内周側環状領域314より反出力側L2に位置しており、環状端板部31の外周側環状領域313のみがブレーキ用ステータ40の出力側端面401と接する基準面になっている。このため、内周側環状領域314は、外周側環状領域313より出力側L1に凹んだ環状の凹部になっており、ブレーキ用ステータ40の出力側端面401とは接していない。従って、環状端板部31の反出力側端面312のうち、基準面となる外周側環状領域313については、研磨等の二次加工により、筒部32と精度よく直角にしておけば、内周側環状領域314の形状精度が低い場合でも、ブレーキ用ステータ40をモータ軸20に対して平行に配置することができる。なお、軸受ホルダ28やモータケース81の部品精度が低い場合には、環状端板部31の形状精度を高めても、ブレーキ用ステータ40とモータ軸20とを平行に配置することができない場合があり、このような場合には、軸受ホルダ28とブレーキ位置決め板3との間にスペーサを挟んだ構成や、環状端板部31にレース加工等の二次加工を施した構成が採用される。
【0034】
本形態では、環状端板部31の出力側端面311にフェルト状あるいは多孔性の潤滑油吸着部材9が取り付けられており、潤滑油吸着部材9は、環状端板部31の出力側端面311のうち、内周縁から径方向外側に離間した位置に設けられている。本形態では、環状端板部31の出力側端面311には、内周縁から径方向外側に離間した位置に環状の凹部316が形成されており、かかる凹部316の内部に潤滑油吸着部材9が取り付けられている。ここで、潤滑油吸着部材9は、凹部316の深さ寸法と等しい厚さ寸法、あるいは凹部316の深さ寸法より薄い厚さ寸法であり、潤滑油吸着部材9は凹部316から突出していない。本形態において、凹部316の外周側部分は、周方向の全体にわたって軸受ホルダ28の端板部280に一部が重なっており、潤滑油吸着部材9の外周側部分は、周方向の全体にわたって端板部280と凹部316とによって挟まれている。また、凹部316の内周側部分は、周方向の全体にわたって端板部280から出力側L1に向けて露出しており、隙間を介してラジアル軸受29に対して反出力側L2で対向している。なお、潤滑油吸着部材9としては、凹部316の深さ寸法より大の厚さ寸法を有するものを用いてもよい。
【0035】
(仕切り板5およびエンコーダ6の構成)
ブレーキ4に対して反出力側L2には仕切り板5がボルト103によって固定されており、仕切り板5は、外周部分でブレーキケース82と連結し、ブレーキケース82の反出力側L2の開口部を塞いだ状態にある。また、ブレーキ付きモータ1の反出力側L2では、仕切り板5の反出力側L2の面で覆うようにカップ状のエンコーダケース83が設けられており、エンコーダケース83はボルト109によって仕切り板5に固定されている。本形態では、仕切り板5とエンコーダケース83とによって囲まれた空間830を利用して、以下に説明するエンコーダ6が構成されている。
【0036】
まず、仕切り板5には、モータ軸20が貫通する開孔部51が形成されており、モータ軸20の反出力側L2の端部は、仕切り板5の開孔部51を貫通して空間830の内部まで突出している。ここで、モータ軸20の外周面のうち、開孔部51内に位置する部分は、段部204を挟んで、外径寸法が切り換わる段付きの軸部になっている。すなわち、モータ軸20の外周面のうち、中径部202と小径部203との間に位置する段部204は開孔部51内に位置する。また、開孔部51の内周面は、モータ軸20の外径寸法に連動して内径寸法が切り換わる段付きの孔になっており、中径部202に径方向外側で重なる大径部51aと、小径部203に径方向外側で重なる小径部51bと、大径部51aと小径部203との間に位置する段部51cとを備えている。このため、モータ軸20の外周面と開孔部51の内周面との隙間は、途中で屈曲したラビリンス構造になっている。
【0037】
本形態において、エンコーダ6は磁気式のエンコーダである。このため、モータ軸20の反出力側L2の軸端部には円盤状のマグネットホルダ61がバックヨークとして固定されており、かかるマグネットホルダ61の反出力側L2の面に、N極とS極とが1極ずつ着磁されたエンコーダマグネット68(永久磁石)が保持されている。本形態において、マグネットホルダ61は、モータ軸20の軸端部と連結される部分が大径の円盤部になっており、エンコーダマグネット68が保持されている部分は、大径の円盤部より小径の円盤部になっている。このため、ブレーキ4からの磁界がエンコーダ6に影響を及ぼしにくい。
【0038】
仕切り板5の反出力側L2の端面には、マグネットホルダ61およびエンコーダマグネット68の周りを囲むようにプレス成形された基板保持板65がボルト108によって固定されている。基板保持板65において、エンコーダマグネット68と対向する部分には基板66がボルト106により固定されており、かかる基板66において、エンコーダマグネット68と対向する位置にMR素子等の磁気センサ67が搭載されている。本形態において、基板保持板65は磁性材料からなる。
【0039】
かかる構成の磁気式のエンコーダ6を設けた際、外部からの磁束がエンコーダ6に漏れてくると、誤検出を行う場合がある。そこで、本形態では、エンコーダケース83については鉄系金属等の磁性板を加工したものが用いられており、外部からの磁束がエンコーダ6に漏れてくるのを防止してある。
【0040】
また、本形態では、仕切り板5としては鉄系金属等の磁性板を加工したものが用いられており、ブレーキ4やモータ部2からの磁束がエンコーダ6に漏れてくるのを防止してある。また、本形態では、モータ部2とブレーキ4との間に設けたブレーキ位置決め板3についても、鉄系金属等の磁性板を加工したものが用いられており、ブレーキ4やモータ部2からの磁束がエンコーダ6に漏れてくるのを防止してある。
【0041】
但し、ブレーキケース82についてはアルミニウム等の非磁性材料を用い、全体の磁気抵抗を高めることにより、ブレーキ4やモータ部2からの磁束がブレーキケース82を介してエンコーダ6に漏れてくるのを防止してある。
【0042】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のブレーキ付きモータ1においては、モータ部2の反出力側L2の端面(軸受ホルダ28の反出力側端面281)とブレーキ用ステータ40の出力側端面401との間にブレーキ位置決め板3が配置されており、かかるブレーキ位置決め板3は、モータ部2の反出力側L2の端面とブレーキ用ステータ40の出力側端面401との間に挟まれた環状端板部31と、環状端板部31の内周縁から反出力側L2に垂直に突出してブレーキ用ステータ40の内周面402に接する筒部32とを備えている。このため、ブレーキ位置決め板3はモータ部2を基準に位置決めされ、ブレーキ用ステータ40は、ブレーキ位置決め板3を介してモータ部2に位置決めされる。その結果、ブレーキ用ステータ40は、ブレーキ位置決め板3の環状端板部31によってモータ部2の反出力側L2の端面に対する垂直度が規定され、ブレーキ位置決め板3の筒部32によってモータ部2やモータ軸20との同軸度が規定される。従って、モータ軸20に対してブレーキ4を適正に配置することができる。それ故、ブレーキ4では、モータ軸20に固定される摩擦板45(ブレーキ用ロータ)と、モータ部2の周りに配置された筒状のブレーキ用ステータ40との相対的な位置精度が高いので、摩擦板45は、プレート47およびアーマチュア46と平行に対向している。従って、ブレーキ4の作動時、摩擦板45がプレート47およびアーマチュア46に対して傾いた姿勢で接する等の不具合が発生しないので、制動特性に優れているとともに、局部的な摩耗が発生しない等、ブレーキ4が適正に作動することになる。
【0043】
また、モータ軸20を反出力側L2で支持するラジアル軸受29(反出力側ラジアル軸受)は、モータ部2に配置されているため、ラジアル軸受29も含めてモータ部2を組み立てた時点で、モータ軸20の位置や姿勢が既に定まっている。このため、モータ部2を組み立てた後、モータ部2の反出力側L2にブレーキ4を固定するという方法を採用でき、モータ軸20に対してブレーキ4を適正に配置することができる。
【0044】
また、モータ部2は、モータ用ステータ21とブレーキ用ステータ40との間でラジアル軸受29を保持する軸受ホルダ28を有しており、モータ部2の反出力側L2の端面は、軸受ホルダ28の反出力側端面281からなる。このため、ブレーキ位置決め板3は軸受ホルダ28を基準に適正に配置されるので、モータ軸20に対してブレーキ4を適正に配置することができる。
【0045】
また、ブレーキ位置決め板3の反出力側端面312のうち、内周縁から径方向外側に離間した外周側環状領域313は、内周側環状領域314より反出力側L2に位置してブレーキ用ステータ40の出力側端面401に面接触している。このため、環状端板部31の反出力側端面312のうち、外周側環状領域313のみを精度よく構成すればよい。
【0046】
また、環状端板部31の出力側端面311には潤滑油吸着部材9が取り付けられているため、モータ部2のラジアル軸受29等に潤滑油が使用されている場合でも、潤滑油がブレーキ4側に侵入しにくい。それ故、ブレーキ4が潤滑油によって適正に作動しなくなるという事態が発生しにくい。また、環状端板部31の出力側端面311には、内周縁から径方向外側に離間した位置に潤滑油吸着部材9が収容される凹部316が形成されているため、潤滑油吸着部材9に吸着されていた潤滑油がブレーキ4の内周側を通ってブレーキ4内に侵入するという事態を防止することができる。
【0047】
また、本形態のブレーキ付きモータ1では、ブレーキ4とエンコーダ6との間に、ブレーキケース82(筒状ケース部材)の反出力側L2の開口を塞ぐように磁性材料からなる仕切り板5が設けられている。このため、ブレーキ4からエンコーダ6の側に磁束が漏れるのを低く抑えることができる。また、ブレーキケース82は、非磁性であるため、全体としての磁気抵抗が高い。このため、ブレーキ4からエンコーダ6の側にブレーキケース82を介して磁束が漏れるのを低く抑えることができる。従って、電磁式のブレーキ4から磁気式のエンコーダ6への漏れ磁束の影響を効果的に低減することができる。また、本形態では、電磁式のブレーキ4から磁気式のエンコーダ6への漏れ磁束の影響を効果的に低減することができるため、モータ軸20については、ブレーキ4やエンコーダ6が設けられている部分も含めて、長さ方向の全体を鉄系金属等の磁性材料によって一体に構成した場合でも、モータ軸20を介して電磁式のブレーキ4から磁気式のエンコーダ6に漏れ磁束の影響が及びにくい。それ故、モータ軸20については、ブレーキ4やエンコーダ6が設けられている部分を非磁性材料で構成し、かかる非磁性部分をモータ部2に位置する磁性材料部分と接合する必要がないので、モータ軸20を安価に製造することができる。
【0048】
また、モータ部2とブレーキ4との間には、磁性材料からなるブレーキ位置決め板3が挟まれているため、モータ部2からエンコーダ6の側に磁束が漏れるのを低く抑えることができる。また、モータ部2からブレーキ4の側に磁束が漏れるのを低く抑えることができる。なお、前記の構成でエンコーダ6への漏れ磁束の影響を十分に低減することができる場合には、ブレーキ位置決め板3については非磁性であってもよい。
【0049】
さらに、本形態では、モータ軸20の外周面のうち、仕切り板5の開孔部51内に位置する部分は、段部204を挟んで外径寸法が切り換わる段付きの軸部になっており、開孔部51の内周面は、モータ軸20の外径寸法に連動して内径寸法が切り換わる段付きの孔になっている。このため、モータ軸20の外周面と仕切り板5の開孔部51の内周面との隙間は、屈曲したラビリンス構造となるので、ブレーキ4やモータ部2で発生した磁性粉等がエンコーダ6に侵入することを防止することができる。
【0050】
また、仕切り板5の反出力側L2の端面には基板保持板65が固定され、エンコーダ6の磁気センサ67は、基板保持板65に保持された基板66に搭載されている。このようにして、磁気センサ67が仕切り板5に保持されている構成とすれば、磁気センサ67を簡素な構成で設置することができる。