(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内周部の前記平行な方向の最大厚みは、当該位置決め部材の内周面と前記外周面との中間位置における当該位置決め部材の前記平行な方向の厚みよりも大きい、請求項1に記載の位置決め部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の磁気発生部を自転車の車輪に取り付ける際には、車輪(特に、ハブおよびスポーク)の形状・寸法に応じたハブ嵌合部品を用いる必要がある。言い換えると、特許文献1のハブ嵌合部品は、異なる形状・寸法を有する複数の車輪に共用することができない。そのため、異なる形状・寸法を有する車輪ごとにハブ嵌合部品を製造する必要があり、回転速度検出センサの製造コストが高くなる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、異なる形状・寸法を有する複数の車輪に共用できる位置決め部材およびそれを備えた回転検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の位置決め部材は、
突出部を含むハブを有する車輪と同軸状に設けられるべき対象物の位置決めを行うために、対象物とハブとに挟まれるようにかつ対象物およびハブと同軸状に設けられる中空形状の位置決め部材であって、
軟質の高分子材料を含んで弾性変形可能に構成され、断面円形の貫通孔を有する内周部、貫通孔と同軸状に設けられる外周面を有する外周部、および内周部と外周部とを連結する中間部を備え、当該位置決め部材の軸方向に対して平行な方向において、内周部の剛性は中間部の剛性よりも高
く、内周部は対象物の位置決め基準として用いられ、対象物の位置決めを行うとき、内周部がハブの突出部の外周面で支持されることによって対象物が車輪と同軸状に位置決めされることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の位置決め部材は、請求項1に記載の位置決め部材において、内周部の上記平行な方向の最大厚みは、当該位置決め部材の内周面と外周面との中間位置における当該位置決め部材の上記平行な方向の厚みよりも大きいことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の位置決め部材は、請求項2に記載の位置決め部材において、内周面と外周面との間に設けられる一対の側面を有し、内周面と外周面との中間位置の厚みが内周部の最大厚みよりも小さくなるように、一対の側面のうちの少なくとも一方は貫通孔と同軸状に設けられる環状の凹部を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の回転検出装置は、
突出部を含むハブを有する車輪の回転を検出する回転検出装置であって、磁気を発生する磁気発生ユニットと、磁気発生ユニットによって発生される磁気を検出する磁気検出ユニットと、
軟質の高分子材料を含んで弾性変形可能に構成されかつ磁気発生ユニットとハブとに挟まれることによって磁気発生ユニットの位置決めを行う位置決め部材とを備え、位置決め部材は、断面円形の貫通孔を有する内周部、貫通孔と同軸状に設けられる外周面を有する外周部、および内周部と外周部とを連結する中間部を含み、磁気発生ユニットは、位置決め部材の外周面と同軸状に配置されかつ外周面に支持される支持面を有し、位置決め部材の軸方向に対して平行な方向において、位置決め部材の内周部の剛性は中間部の剛性よりも高
く、位置決め部材の内周部は磁気発生ユニットの位置決め基準として用いられ、磁気発生ユニットの位置決めを行うとき、位置決め部材の内周部がハブの突出部の外周面で支持されることによって磁気発生ユニットが車輪と同軸状に位置決めされることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の位置決め部材は、対象物およびハブに挟まれることによって、対象物の位置決めを行う。ここで、たとえば、車輪のハブが、スポークが取り付けられる環状部および環状部からハブの軸方向に向かって突出するテーパー形状の突出部を有し、その突出部の最大直径が位置決め部材の貫通孔の直径(より具体的には、貫通孔のハブ側の端部の直径)よりも大きくかつ突出部の最小直径が貫通孔の直径(貫通孔のハブ側の端部の直径)よりも小さい場合には、突出部の外周面で位置決め部材の内周部を支持することによって、位置決め部材を容易にハブ(車輪)と同軸状に配置できる。したがって、たとえば、予め位置決め部材と対象物とを同軸状に組み合わせ、位置決め部材の内周部をハブの突出部の外周面で支持することによって、対象物を容易に車輪と同軸状に配置できる。
【0012】
請求項1に記載の位置決め部材は弾性変形可能に構成されるので、対象物とハブとで位置決め部材を挟む際に、車輪(特にハブおよびスポーク)の形状・寸法に応じて位置決め部材を変形させることができる。また、位置決め部材の内周部の剛性は中間部の剛性よりも高いので、中間部が変形することを許容しつつ、内周部が大きく変形することを防止できる。これにより、ハブによって位置決め部材を安定して支持しつつ、車輪の形状・寸法に応じて位置決め部材を適切に変形させることができる。したがって、請求項1に記載の位置決め部材は、異なる形状・寸法を有する複数の車輪に共用できる。なお、請求項1に記載の位置決め部材では、外周面は貫通孔(内周面)と同軸状に設けられる。そのため、ハブの突出部によって位置決め部材の内周部が径方向に押された場合、位置決め部材は、内周面および外周面が同軸状に位置するように変形する。言い換えると、位置決め部材は、位置決め部材において発生する弾性力が周方向において均一になるように変形する。したがって、位置決め部材の外周面において対象物を支持することによって、位置決め部材の内周部がハブの突出部で径方向に押された場合でも、対象物を容易に車輪(ハブ)と同軸状に配置できる。
【0013】
請求項2に記載の位置決め部材では、内周部の最大厚みを、内周面と外周面との中間位置の厚みよりも大きくすることによって、内周部の剛性を容易に高くすることができる。
【0014】
請求項3に記載の位置決め部材では、少なくとも一方の側面に凹部を形成することによって、内周部に対して中間部の剛性を容易に低くできる。これにより、位置決め部材を容易に変形させることができ、対象物の位置決めが容易になる。
【0015】
請求項4に記載の回転検出装置では、請求項1に記載の位置決め部材と同様の構成を有する位置決め部材によって磁気発生ユニットの位置決めを行うことができるので、形状・寸法が異なる複数の車輪に対しても、磁気発生ユニットを容易かつ適切に位置決めできる。具体的には、磁気発生ユニットは、その中央部に、位置決め部材の外周面と同軸状に設けられる支持面を有する。この場合、位置決め部材の外周面と磁気発生ユニットの支持面とが密着するように外周面によって支持面を支持することによって、磁気発生ユニットを容易に車輪と同軸状に配置することができる。以上により、請求項4に記載の回転検出装置は、形状・寸法が異なる複数の車輪に共用できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、異なる形状・寸法を有する複数の車輪に共用できる位置決め部材およびそれを備えた回転検出装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。以下においては、この発明に係る位置決め部材10を備えた回転検出装置12を自転車14に取り付ける場合について説明する。この発明の実施形態の左右、前後、上下とは、自転車14のサドル40に運転者がハンドル30に向かって着座した状態を基準とした左右、前後、上下を意味する。
【0019】
図1は、この発明の一実施形態の回転検出装置12が取り付けられた自転車14を示す左側面図である。なお、
図1においては、図面が煩雑になることを避けるために、回転検出装置12を簡略化して示している。
【0020】
図1を参照して、自転車14は、前後方向に延びるフレーム16を有する。フレーム16は、ヘッドチューブ18、ダウンチューブ20、サドルチューブ22、一対のチェーンステイ24(
図1では左側のチェーンステイ24のみ図示)、および一対のサドルステイ26(
図1では左側のサドルステイ26のみ図示)を含む。
【0021】
ヘッドチューブ18には、ハンドルステム28が回転可能に挿入される。ハンドルステム28の上端部にハンドル30が設けられる。ハンドル30には、自転車14の走行速度を表示する表示装置31が設けられる。表示装置31は、たとえばCPUおよびメモリを含み、回転検出装置12の後述する磁気検出ユニット94から与えられる信号に基づいて自転車14の走行速度を算出する。ハンドルステム28の下端部にフロントフォーク32が設けられる。フロントフォーク32は、一対のレッグ部32a(
図1では左側のレッグ部32aのみ図示)を有する。一対のレッグ部32aの下端部に、車軸34を介して前輪36が回転可能に支持される。
【0022】
サドルチューブ22には、サドルパイプ38が挿入される。サドルパイプ38の上端部には、サドル40が設けられる。一対のチェーンステイ24の後端部に、車軸42を介して後輪44が回転可能に支持される。
【0023】
前輪36と後輪44との間においてフレーム16に支持されるように、後輪44を駆動するための駆動機構46が設けられる。駆動機構46は、クランク46aおよび一対のペダル46b(
図1では左側のペダル46bのみ図示)を含む。
【0024】
図2は、前輪36の中心部および回転検出装置12を左斜め前方から見た斜視図であり、
図3は、前輪36の中心部および回転検出装置12を右斜め前方から見た斜視図である。
図4は、
図3のA−A線断面図であり、
図5は、前輪36と回転検出装置12との関係を示す断面図解図である。
図1〜
図5を参照して、前輪36は、ハブ48(
図2〜
図5参照)、リム50(
図1参照)、およびハブ48とリム50とを連結する複数のスポーク52を含む。車軸34は、ハブ48に挿入される。
図2〜
図5を参照して、この実施形態ではハブ48は左右対称形状を有し、本体部54、一対の外輪部56(
図2〜
図5においてはそれぞれ1つの外輪部56のみ図示)、および一対のフランジ部58(
図2〜
図5においてはそれぞれ1つのフランジ部58のみ図示)を含む。
【0025】
本体部54は、円筒形状を有しかつ位置決め部材10の厚み方向(自転車14の幅方向)に延びる。一対の外輪部56は、円筒形状を有しかつ本体部54の両端部に設けられる。外輪部56は、本体部54よりも大きい直径を有する。各フランジ部58は、外輪部56の一端部に設けられる。一対のフランジ部58にそれぞれ、複数のスポーク52が接続される。
【0026】
図5を参照して、各フランジ部58は、外輪部56から外輪部56の径方向に延びる円環状の環状部58a、および環状部58aの内周部から自転車14の幅方向における外側に向かって突出する突出部58bを含む。突出部58bは、ハブ48の軸方向に対して垂直な断面において円形状を有する。より具体的には、突出部58bは、環状部58aから離れるにつれて直径が小さくなるように、中空テーパー形状(中空円錐台形状)を有する。環状部58aおよび突出部58bは、車軸34と同軸状に設けられる。
【0027】
図3〜
図5を参照して、環状部58aに複数のスポーク52が取り付けられる。この実施形態では、環状部58aに取り付けられる複数のスポーク52のうちの半数のスポーク52は、環状部58aから一方側(自転車14の幅方向における外側)に向かって延びた後、リム50(
図1参照)に向かって延び、他の半数のスポーク52は、環状部58aから他方側(自転車14の幅方向における内側)に向かって延びた後、リム50(
図1参照)に向かって延びる。この実施形態では、環状部58aから一方側に向かって延びる複数のスポーク52と環状部58aから他方側に向かって延びる複数のスポーク52とが、環状部58aの周方向において交互に設けられる。なお、
図2〜
図5においては、一方(この実施形態では左側)のフランジ部58(環状部58a)に取り付けられる複数のスポーク52のみを図示しているが、他方(この実施形態では右側)のフランジ部58(環状部58a)にも同様に複数のスポーク52が取り付けられる。
【0028】
図5を参照して、車軸34の一端部(左端部)は、フロントフォーク32の一方のレッグ部32aに支持され、車軸34の他端部(右端部)は、他方のレッグ部32a(図示せず)に支持される。
【0029】
なお、前輪36としては公知の種々の車輪を用いることができる。また、後輪44としては公知の種々の車輪を用いることができるので詳細な説明は省略するが、後輪44は、たとえば、前輪36と同様にハブ、リム、およびスポークを有する。
【0030】
車軸34の一端部に、円筒状の内輪部材60および締結部材62が嵌められる。内輪部材60は、その一部が外輪部56内に位置するように車軸34に取り付けられる。内輪部材60および締結部材62は、たとえば、車軸34に螺合される。締結部材62としては、たとえば、ナットが用いられる。この実施形態では、締結部材62を締め付けることによって、内輪部材60の位置が固定される。外輪部56と内輪部材60とに支持されるように、複数のボール64が設けられる。図示は省略するが、車軸34の他端部にも同様に、内輪部材60、締結部材62および複数のボール64が設けられる。この実施形態では、外輪部56、内輪部材60および複数のボール64が軸受として機能する。これにより、ハブ48が回転可能に車軸34に支持される。すなわち、前輪36が回転可能に車軸34に支持される。
【0031】
図2〜
図5を参照して、前輪36と同軸状に、位置決め部材10および磁気発生ユニット66が設けられる。この実施形態では、磁気発生ユニット66が対象物に相当する。
【0032】
図6は、位置決め部材10を示す図であり、(a)は左側面図であり、(b)は断面図であり、(c)は右側面図である。
【0033】
図5および
図6を参照して、位置決め部材10は弾性材料を含み、弾性変形可能に構成される。位置決め部材10としては、たとえば、JIS K 6253に準拠した測定で硬度が80度以下の軟質の高分子材料(たとえば、弾性ゴム)を用いることができる。
【0034】
位置決め部材10は、中空略円板形状を有し、内周面68、外周面70、第1側面72および第2側面74を有する。この実施形態では、位置決め部材10の軸方向C(
図6(b)参照)に対して垂直な断面において内周面68が円形状を有するように、位置決め部材10の中央部に断面円形の貫通孔69が形成される。外周面70は、貫通孔69(内周面68)と同軸状に設けられる。この実施形態では、外周面70は、位置決め部材10の軸方向Cに対して垂直な断面において円形状を有する。
【0035】
第1側面72は位置決め部材10の左側面であり、第2側面74は位置決め部材10の右側面である。第1側面72は、円環状の開放面72a、円筒状の案内面72bおよび円環状の係止面72cを含む。開放面72a、案内面72bおよび係止面72cは、貫通孔69(内周面68)と同軸状に設けられる。係止面72cは開放面72aよりも第2側面74側に設けられる。案内面72bは、位置決め部材10の軸方向Cに対して平行に延びて開放面72aの外縁と係止面72cの内縁とを連結する。位置決め部材10の径方向において、案内面72bは外周面70よりも内側に設けられる。
【0036】
第2側面74は、貫通孔69(内周面68)と同軸状に設けられる環状の凹部74aを含む。凹部74aは、第1側面72側に向かって凹むように、位置決め部材10の中心を通りかつ開放面72aに対して垂直な断面(
図6(b)参照)において略円弧状に湾曲する。
【0037】
図6(b)を参照して、位置決め部材10の軸方向Cに対して平行な方向において、内周部10aの剛性は、外周部10bの剛性よりも高く、中間部10cの剛性よりも高い。この実施形態では、内周部10aの最大厚み(位置決め部材10の軸方向Cに対して平行な方向の最大厚み)t1は、内周面68と外周面70との中間位置における位置決め部材10の厚み(位置決め部材10の軸方向Cに対して平行な方向の厚み)t2よりも大きい。
【0038】
なお、この実施形態においては、位置決め部材10を、その径方向における寸法が等しくなるように同心状に3分割した場合に、内周面68を含む部分(最も内側の部分)を内周部10aとし、外周面70を含む部分(最も外側の部分)を外周部10bとし、内周部10aと外周部10bとを連結する部分(内周部10aと外周部10bとの間の部分)を中間部10cと定義する。
【0039】
図7は、磁気発生ユニット66を示す左側面図であり、
図8は、磁気発生ユニット66を示す右側面図である。
【0040】
図5、
図7および
図8を参照して、磁気発生ユニット66は、円環状の磁石76(
図5および
図7参照)と、円環状のヨーク78(
図5および
図8参照)と、磁石76およびヨーク78を保持する中空状の保持部材80とを含む。
図7を参照して、磁石76においては、複数のN極および複数のS極が周方向において交互に配置される。
図5を参照して、ヨーク78は、磁石76の一方の側面(この実施形態では右側面)を覆うように設けられる。保持部材80は、たとえば樹脂材料からなる。この実施形態では、インサート成形によって磁石76およびヨーク78が保持部材80に保持される。
【0041】
図5、
図7および
図8を参照して、保持部材80は、中空略円板状の本体部82および本体部82から径方向に延びる複数(この実施形態では3つ)の取付部84を有する。磁石76およびヨーク78は、本体部82に保持される。
【0042】
図5および
図8を参照して、本体部82は、その中央部に、円筒状の支持面86、円環状の係止面88および円筒状の案内面90を有する。支持面86、係止面88および案内面90は、磁石76と同軸状に設けられる。係止面88は、本体部82の軸方向に対して垂直に延びて支持面86と案内面90とを連結する。
図7および
図8を参照して、各取付部84は、複数(この実施形態では5つ)の貫通孔84aを有する。なお、磁気発生ユニット66としては、公知の自転車に用いられている公知のサイクルコンピュータ(回転速度検出装置)の磁気発生ユニットを用いることができる。したがって、磁気発生ユニット66の詳細な説明は省略する。
【0043】
図2〜
図5を参照して、複数(この実施形態では3つ)のバンド92によって保持部材80(磁気発生ユニット66)が前輪36に取り付けられる。これにより、磁気発生ユニット66は前輪36と一体的に回転する。この実施形態では、バンド92を取付部84の任意の2つの貫通孔84aに通しつつ、バンド92によって取付部84を2本のスポーク52に固定する。
【0044】
図9は、磁気発生ユニット66を前輪36に取り付ける際の位置決め部材10の状態を示す断面図解図であり、(a)は前輪36に磁気発生ユニット66を取り付ける前の位置決め部材10の状態を示し、(b)は前輪36に磁気発生ユニット66が固定される前の位置決め部材10の状態を示し、(c)は前輪36に磁気発生ユニット66が固定されているときの位置決め部材10の状態を示す。
【0045】
図9(a)を参照して、この実施形態では、位置決め部材10の貫通孔69(内周面68)の直径d1は、ハブ48の突出部58bの最大直径d2よりも小さく、突出部58bの最小直径d3よりも大きい。磁気発生ユニット66を前輪36に取り付ける際には、まず、保持部材80(磁気発生ユニット66)の中央部に位置決め部材10を取り付ける。具体的には、位置決め部材10の開放面72aが自転車14の外側に向かって保持部材80から露出しかつ位置決め部材10の案内面72bが保持部材80の案内面90の内側に位置するように、保持部材80に位置決め部材10を嵌め込む。このように保持部材80に位置決め部材10を嵌め込むことによって、保持部材80の案内面90と位置決め部材10の案内面72bとが密着しかつ保持部材80の支持面86と位置決め部材10の外周面70とが密着する。これにより、案内面90が案内面72bに支持されるとともに、支持面86が外周面70に支持される。
【0046】
次に、
図9(b)を参照して、位置決め部材10の貫通孔69にハブ48の突出部58bを嵌め込む。このとき、位置決め部材10および磁気発生ユニット66が突出部58bと同軸状に配置されるように、突出部58bの外周面によって位置決め部材10の内周部10aを支持する。
【0047】
最後に、
図9(c)を参照して、複数のバンド92(
図5参照)を締め付けることによって、磁気発生ユニット66(保持部材80)をスポーク52側に押し込む。具体的には、保持部材80が複数のスポーク52(この実施形態では、環状部58aに取り付けられる複数のスポーク52のうちの半数のスポーク52)に接触するように、バンド92(
図5参照)を締め付ける。これにより、磁気発生ユニット66が前輪36に取り付けられる。
【0048】
なお、この実施形態では、磁気発生ユニット66がスポーク52側に押し込まれた場合には、位置決め部材10の係止面72cが保持部材80の係止面88に押されて、外周部10bがスポーク52側に押し込まれる。ここで、内周部10aは突出部58bに支持されかつ内周部10aの剛性は中間部10cの剛性よりも高い。この場合、外周部10bがスポーク52側に押し込まれても、中間部10cが変形することによって、内周部10aが大きく変形することを防止しつつ、保持部材80をスポーク52側に移動させることができる。これにより、磁気発生ユニット66を所定の位置(この実施形態では、保持部材80がスポーク52に接触する位置)に容易に配置できる。
【0049】
また、上述のように、貫通孔69(内周面68)の直径d1は突出部58bの最大直径d2よりも小さいので、保持部材80をスポーク52側に押し込むことによって内周部10aが突出部58bの外周面で径方向に押される。ここで、保持部材80の支持面86および案内面90、位置決め部材10の内周面68、外周面70および案内面72b、ならびにハブ48の突出部58bの外周面は断面円形状を有する。さらに、支持面86および案内面90は同軸状に設けられ、内周面68、外周面70および案内面72bは同軸状に設けられる。そのため、内周部10aが突出部58bの外周面によって径方向に押された場合、位置決め部材10は、内周面68(貫通孔69)、外周面70、および案内面72bが同軸状に位置するように変形する。言い換えると、位置決め部材10は、位置決め部材10において発生する弾性力が周方向において略均一になるように変形する。これにより、磁気発生ユニット66(磁石76)を容易にハブ48と同軸状に配置できる。
【0050】
図2および
図5を参照して、フロントフォーク32のレッグ部32aの下端部に磁気検出ユニット94が取り付けられる。磁気検出ユニット94は、磁気検出部96および磁気検出部96を保持する板状の保持部材98を含む。この実施形態では、位置決め部材10、磁気発生ユニット66および磁気検出ユニット94を含んで回転検出装置12が構成される。
【0051】
磁気検出部96は、たとえばホールIC(図示せず:hall IC)を含み、図示しない電線を介して表示装置31(
図1参照)に電気的に接続される。磁気検出部96は、磁気発生ユニット66の磁石76(
図5参照)が発生する磁気を検出し、検出信号を表示装置31(
図1参照)に与える。
【0052】
図5を参照して、保持部材98は、締結部材100によってレッグ部32aに固定される。この実施形態では、締結部材100としてナットが用いられる。なお、磁気検出ユニット94としては、公知の自転車に用いられている公知のサイクルコンピュータ(回転速度検出装置)の磁気検出ユニットを用いることができる。したがって、磁気検出ユニット94の詳細な説明は省略する。
【0053】
以下、位置決め部材10の作用効果を説明する。
位置決め部材10は、磁気発生ユニット66(保持部材80)およびハブ48に挟まれることによって、磁気発生ユニット66の位置決めを行う。この実施形態では、ハブ48の突出部58bの外周面で位置決め部材10の内周部10aを支持することによって、位置決め部材10を容易にハブ48(前輪36)と同軸状に配置できる。このため、予め位置決め部材10と磁気発生ユニット66とを同軸状に組み合わせ、位置決め部材10の内周部10aをハブ48の突出部58bの外周面で支持することによって、磁気発生ユニット66を容易に前輪36と同軸状に配置できる。
【0054】
位置決め部材10は弾性変形可能に構成されるので、磁気発生ユニット66とハブ48とで位置決め部材10を挟む際に、前輪36(特にハブ48およびスポーク52)の形状・寸法に応じて位置決め部材10を変形させることができる。また、位置決め部材10の内周部10aの剛性は中間部10cの剛性よりも高いので、中間部10cが変形することを許容しつつ、内周部10aが大きく変形することを防止できる。これにより、ハブ48によって位置決め部材10を安定して支持しつつ、前輪36の形状・寸法に応じて位置決め部材10を適切に変形させることができる。したがって、位置決め部材10は、異なる形状・寸法を有する複数の車輪に共用できる。また、位置決め部材10を用いることによって、異なる形状・寸法を有する複数の車輪に対して磁気発生ユニット66を適切に位置決めできる。これにより、回転検出装置12は、異なる形状・寸法を有する複数の車輪に共用できる。
【0055】
図10は、前輪36とは異なる形状・寸法を有する前輪36aに取り付けられた位置決め部材10および磁気発生ユニット66を示す図である。前輪36が前輪36aと異なる点は、ハブ48の代わりにハブ102が用いられている点、および複数のスポーク52の代わりに複数のスポーク104が用いられている点である。ハブ102がハブ48と異なるのは、環状部58aよりも大きい直径を有する環状部106a、および突出部58bよりも大きい直径を有する突出部106bを有する点である。前輪36aにおいては、環状部106aに取り付けられる全てのスポーク104が、環状部106aから内側(自転車の幅方向における内側)に向かって延びた後、リム50(
図1参照)に向かって延びる。
【0056】
図10を参照して、前輪36aに磁気発生ユニット66を取り付ける場合にも、突出部106bの外周面で位置決め部材10の内周部10aを支持しかつ位置決め部材10を変形させることによって、磁気発生ユニット66を容易かつ適切に位置決めできる。このように、位置決め部材10においては、内周部10aを位置決め基準として用いることによって、前輪36とは異なる形状・寸法(特に、ハブおよびスポークの形状・寸法)を有する前輪36aにおいても、磁気発生ユニット66を容易かつ適切に位置決めできる。
【0057】
位置決め部材10では、外周面70は貫通孔69(内周面68)と同軸状に設けられる。そのため、ハブ48(ハブ102)の突出部58b(突出部106b)によって位置決め部材10の内周部10aが径方向に押された場合、位置決め部材10は、内周面68および外周面70が同軸状に位置するように変形する。言い換えると、位置決め部材10は、位置決め部材10において発生する弾性力が周方向において均一になるように変形する。したがって、位置決め部材10の外周面70において磁気発生ユニット66を支持することによって、位置決め部材10の内周部10aがハブ48(ハブ102)の突出部58b(突出部106b)で径方向に押された場合でも、磁気発生ユニット66を容易にハブ48(ハブ102)と同軸状に配置できる。すなわち、磁気発生ユニット66を容易に前輪36(前輪36a)と同軸状に配置できる。
【0058】
回転検出装置12においては、磁気発生ユニット66(保持部材80)は、その中央部に、外周面70と同軸状に設けられる支持面86を有する。そして、外周面70と支持面86とが密着するように外周面70によって支持面86が支持される。位置決め部材10の外周面70と磁気発生ユニット66の支持面86とが密着することによって、位置決め部材10の径方向への拡がりは支持面86によって規制される。このため、位置決め部材10の貫通孔69にハブ48(ハブ102)の突出部58b(突出部106b)を嵌めることによって内周部10aを径方向に拡げた場合には、位置決め部材10において弾性力が発生する。このとき、上述したように位置決め部材10は、位置決め部材10において発生する弾性力が周方向において略均一になるように変形する。これにより、磁気発生ユニット66(保持部材80)を容易かつ適切にハブ48(ハブ102)と同軸状に配置できる。このように、回転検出装置12においては、位置決め部材10において発生する弾性力を用いて磁気発生ユニット66を容易かつ適切に位置決めできる。
【0059】
位置決め部材10では、内周部10aの最大厚みt1を、内周面68と外周面70との中間位置の厚みt2よりも大きくすることによって、内周部10aの剛性を容易に高くすることができる。
【0060】
位置決め部材10では、第2側面74に凹部74aを形成することによって、内周部10aに対して中間部10cの剛性を容易に低くできる。これにより、位置決め部材10を容易に変形させることができ、磁気発生ユニット66の位置決めが容易になる。
【0061】
上述の実施形態では、外周面70および案内面72bがともに対象物としての磁気発生ユニット66(保持部材80)に接触しているが、外周面70および案内面72bのうちの一方のみが対象物に接触していてもよい。なお、案内面72bが対象物に接触する場合には、案内面72bは、対象物を支持するための外周面としても機能する。
【0062】
上述の実施形態では、断面略円弧状に湾曲する凹部74aが第2側面74に設けられる場合について説明したが、位置決め部材の第2側面に設けられる凹部の形状は上述の例に限定されない。たとえば、
図11(a)に示す位置決め部材108のように、第2側面110に断面略矩形状の凹部110aが設けられてもよく、
図11(b)に示す位置決め部材112のように、第2側面114に断面略V字状の凹部114aが設けられてもよく、
図11(c)に示す位置決め部材116のように、位置決め部材116自体の厚みが略均一になるように、第2側面118に凹部118aが設けられてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、位置決め部材10の軸方向Cに対して平行な方向において、内周面68の一端(左端)の位置と案内面72bの一端(左端)の位置とが略等しくなるように位置決め部材10が構成されているが、内周面と案内面との位置関係は上述の例に限定されない。たとえば、
図11(d),(e)に示す位置決め部材120,122のように、内周面68a,68bの一端(左端)が案内面72bの一端(左端)よりも外側(左側)に位置するように、位置決め部材120,122の内周縁部の厚みをさらに大きくしてもよい。また、たとえば、
図11(f)に示す位置決め部材124のように、案内面72dの一端(左端)が内周面68の一端(左端)よりも外側(左側)に位置するように位置決め部材124の厚みを調整してもよい。
【0064】
上述の実施形態では、位置決め部材が弾性材料によって構成される場合について説明したが、位置決め部材が弾性材料に加えて他の材料をさらに含んでもよい。たとえば、位置決め部材の内周縁または内周部に円筒状の金属部材を設けてもよい。この場合、金属部材によって位置決め部材の内周部の剛性を容易に向上させることができる。
【0065】
上述の実施形態では、回転検出装置12をフロントフォーク32および前輪36に設ける場合について説明したが、位置決め部材をサドルステイ26(またはチェーンステイ24)および後輪44に設けてもよい。
【0066】
上述の実施形態では、位置決め部材10を用いて磁気発生ユニット66の位置決めを行う場合について説明したが、この発明に係る位置決め部材によって位置決めされる対象物は磁気発生ユニットに限定されず、位置決め部材を他の対象物の位置決めのために用いてもよい。