特許第5936436号(P5936436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭サナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000003
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000004
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000005
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000006
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000007
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000008
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000009
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000010
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000011
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000012
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000013
  • 特許5936436-粉体塗装方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936436
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】粉体塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/06 20060101AFI20160609BHJP
   B05B 5/08 20060101ALI20160609BHJP
   F16D 65/092 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
   B05D1/06 K
   B05B5/08 F
   !F16D65/092 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-106899(P2012-106899)
(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2013-233501(P2013-233501A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】海住 晴久
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−028297(JP,A)
【文献】 特開昭59−130567(JP,A)
【文献】 特開2002−292312(JP,A)
【文献】 特開平09−038527(JP,A)
【文献】 特開平06−320067(JP,A)
【文献】 特開2012−250155(JP,A)
【文献】 特表2004−514547(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/74107(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0237887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
B05B 5/00− 5/16
F16D 65/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のバックプレートにパッド部が接合されているブレーキパッドにおける、パッド部の接合面を除くバックプレートの外面と、パッド部の摩擦面を除く外周側面とを、静電式塗装ガンから吐出された粉体塗料により塗装するブレーキパッドの粉体塗装方法において、塗装ブース内に、ブレーキパッドのパッド部を下に向けて載置する載置面を設け、この載置面に載置したブレーキパッドの側方位置に、パッド部の側面に対して空間を空けて堰止め部を設け、前記載置面の上方に静電式塗装ガンを設置し、静電式塗装ガンから吐出される粉体塗料を、ブレーキパッドと堰止め部との間に形成される空間内に流入させ、この空間内に流入した粉体塗料をバックプレート及びパッド部に付着させ、前記塗装ブース内を通過する搬送コンベアのベルト面に凹所を形成し、この凹所の底面を前記載置面とし、凹所の対向壁を前記堰止め部とすることを特徴とするブレーキパッドの粉体塗装方法。
【請求項2】
金属製のバックプレートにパッド部が接合されているブレーキパッドにおける、パッド部の接合面を除くバックプレートの外面と、パッド部の摩擦面を除く外周側面とを、静電式塗装ガンから吐出された粉体塗料により塗装するブレーキパッドの粉体塗装方法において、塗装ブース内に、ブレーキパッドのパッド部を下に向けて載置する載置面を設け、この載置面に載置したブレーキパッドの側方位置に、パッド部の側面に対して空間を空けて堰止め部を設け、前記載置面の上方に静電式塗装ガンを設置し、静電式塗装ガンから吐出される粉体塗料を、ブレーキパッドと堰止め部との間に形成される空間内に流入させ、この空間内に流入した粉体塗料をバックプレート及びパッド部に付着させ、前記塗装ブース内を通過する搬送コンベアを備え、この搬送コンベアのベルト面を前記載置面とし、この載置面の側方の搬送コンベアのベルト面に、前記堰止め部を形成する凸部を設けたことを特徴とするブレーキパッドの粉体塗装方法。
【請求項3】
金属製のバックプレートにパッド部が接合されているブレーキパッドにおける、パッド部の接合面を除くバックプレートの外面と、パッド部の摩擦面を除く外周側面とを、静電式塗装ガンから吐出された粉体塗料により塗装するブレーキパッドの粉体塗装方法において、塗装ブース内に、ブレーキパッドのパッド部を下に向けて載置する載置面を設け、この載置面に載置したブレーキパッドの側方位置に、パッド部の側面に対して空間を空けて堰止め部を設け、前記載置面の上方に静電式塗装ガンを設置し、静電式塗装ガンから吐出される粉体塗料を、ブレーキパッドと堰止め部との間に形成される空間内に流入させ、この空間内に流入した粉体塗料をバックプレート及びパッド部に付着させ、前記塗装ブース内を通過する搬送台車を備え、この搬送台車の台車面を前記載置面とし、この載置面の側方の搬送台車の台車面に、前記堰止め部を形成する凸部を設けたことを特徴とするブレーキパッドの粉体塗装方法。
【請求項4】
前記パッド部が、絶縁性材料からなる請求項1〜のいずれかに記載のブレーキパッドの粉体塗装方法。
【請求項5】
前記静電式塗装ガンを、載置面に載置したブレーキパッドの上方に対向するように設置し、静電式塗装ガンの吐出パターンがブレーキパッドに直接当たらないようにした請求項1〜のいずれかに記載のブレーキパッドの粉体塗装方法。
【請求項6】
前記静電式塗装ガンが、摩擦帯電式塗装ガンである請求項1〜のいずれかに記載のブレーキパッドの粉体塗装方法。
【請求項7】
前記ブレーキパッドに粉体塗料を付着させる前に、ブレーキパッドの少なくともパッド部に、水を噴霧又は浸漬しておくことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のブレーキパッドの粉体塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製のバックプレート(裏金)に、摩擦部材であるパッド部を接着したブレーキパッドを、粉体塗料により塗装する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体塗装は、有機溶剤を含まず、被塗装物に付着しなかったオーバースプレー粉を回収して再使用することができるので、環境にやさしい塗装として、近年多くの製品に採用されている。
【0003】
当初はガードレール、フェンスなどの道路資材から始まり、冷蔵庫、エアコンの室外機等、家庭内で使用する製品にも多く採用されている。
【0004】
最近は、自動車のボディーの他、ワイパー、コイルスプリング等の自動車部品の塗装にも粉体塗装が使用され、ブレーキパッドの塗装にも粉体塗装が使用されるようになっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−125522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブレーキパッドは、金属製のバックプレート(裏金)に、摩擦部材であるパッド部を接着したものであるが、防錆、防食の観点から、従来は、金属製のバックプレートの外面だけを塗装することが多い。
【0007】
ところが、ブレーキパッドは、アルミホイールの隙間から見える部品であるため、最近では、意匠性の観点から、バックプレートだけではなく、バックプレートに接着されたパッド部の外面も、摩擦面を除いて塗装されるようになっている。
【0008】
ところで、摩擦部材であるパッド部は、基材繊維、充填材、摩擦調整剤、樹脂結合剤等の成形材料を押し固めて形成されている。
【0009】
パッド部の基材繊維には、アラミド繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、トリアセテート繊維などの有機繊維、チタン酸カリウム繊維、ロックウール繊維、あるいはスチール繊維、ステンレス繊維などの金属繊維を、単独又は複数を組み合わせて使用している。
【0010】
また、充填材としては、例えば、硫酸バリュウム、炭酸マグネシュウム、硫酸鉛のアルカリ土類金属の硫酸塩や、シリカ、マイカ、炭酸塩、タルク、グラファイト、二硫化モリブデンの固体潤滑剤、タイヤゴム粉末などの有機粉粒体、銅合金、アルミニュウム、亜鉛などの金属粉や、金属片、黒鉛粉などの無機粉粒体の摩擦調整剤が使用されている。
【0011】
また、樹脂結合剤としては、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂などが使用されている。
【0012】
ところで、ブレーキパッドのパッド部は、摩耗部品であるため、パッド部の材料中に金属材料が含まれていると、金属粉の飛散が環境ホルモンの問題となるため、パッド部の成形材料から金属材料が徐々に除かれ、パッド部が絶縁性になりつつある。
【0013】
パッド部の成形材料中に金属材料を含んでいる場合には、パッド部も導電性を有するため、バックプレートと一緒にパッド部をアースすることにより、バックプレートとパッド部を、静電粉体塗装することが可能である。
【0014】
しかしながら、パッド部が絶縁性になってくると、静電気による粉体塗料の付着力が弱く、静電式塗装ガンから粉体塗料を吹き付けた場合に、粉体塗料が一旦パッド部に付着しても、パッド部に付着した粉体塗料が静電式塗装ガンの吐出エアーによって吹き飛ばされてしまう。
【0015】
特に、摩擦帯電式塗装ガンの場合には、強い搬送エアーによって摩擦帯電を行うために、粉体塗料と共に吐出されるエアーも強く、この吐出エアーによりパッド部に付着した粉体塗料が吹き飛ばされ易い。
【0016】
また、ブレーキパッドの塗装を行う場合、塗装する面は、パッド部の接合面を除いたバックプレートの外面と、摩擦面を除いたパッド部の外周側面であるから、通常、塗装を行わないパッド部の摩擦面を下にしてブレーキパッドを搬送ベルトや台車に載置して塗装ブースを通過させている。
【0017】
ところが、バックプレートとパッド部の大きさを比較した場合、バックプレートの方がパッド部よりも一回り大きいため、パッド部を下にして搬送ベルトや台車に載置した場合、パッド部の外周側面がバックプレートの外周側面よりも内側に凹んだ状態になる。
【0018】
この状態で、ブレーキパッドに向けて静電式塗装ガンから粉体塗料を吹き付けた場合、粉体塗料のほとんどがパッド部の上方に位置する金属製のバックプレートに集中し、下方に位置するパッド部の外周側面へは粉体塗料が回り込み難い。
【0019】
このため、パッド部の外周側面に向かって粉体塗料を直接吹き付けるようにすると、パッド部はバックプレートの内側に凹んでいるため、この凹みによって吹き付けられた粉体塗料の流速がさらに加速され、却って粉体塗料が吹き飛ばされてパッド部の外周側面に付着する粉体塗料の量が少なくなる。
【0020】
特に、パッド部が絶縁性の場合には、静電気力による付着力も弱いので、パッド部の外周側面に粉体塗料を十分に付着させることが困難であった。
【0021】
そこで、この発明は、パッド部が絶縁性の場合でも、パッド部の外周側面に粉体塗料を十分に付着させることができる、ブレーキパッドの塗装方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記の課題を解決するために、この発明は、金属製のバックプレートにパッド部が接合されているブレーキパッドにおける、パッド部の接合面を除くバックプレートの外面と、パッド部の摩擦面を除く外周側面とを、静電式塗装ガンから吐出された粉体塗料により塗装するブレーキパッドの粉体塗装方法において、塗装ブース内に、ブレーキパッドのパッド部を下に向けて載置する載置面を設け、この載置面に載置したブレーキパッドの側方位置に、パッド部の側面に対して空間を空けて堰止め部を設け、前記載置面の上方に静電式塗装ガンを設置し、静電式塗装ガンから吐出される粉体塗料を、ブレーキパッドと堰止め部との間に形成される空間内に流入させ、この空間内に流入した粉体塗料をバックプレート及びパッド部に付着させるようにしたものである。
【0023】
塗装ブース内を通過する搬送コンベアにブレーキパッドを載置して塗装を行う場合、搬送コンベアのベルト面に凹所を形成し、この凹所の底面を前記載置面とし、凹所の対向壁を前記堰止め部として塗装を行うことができる。
【0024】
また、搬送コンベアのベルト面を前記載置面とし、この載置面の側方の搬送コンベアのベルト面に、前記堰止め部を形成する凸部を設けてもよい。
【0025】
また、塗装ブース内を通過する搬送台車にブレーキパッドを載置して塗装を行う場合、搬送台車の台車面を前記載置面とし、この載置面の側方の搬送台車の台車面に、前記堰止め部を形成する凸部を設けるようにしてもよい。
【0026】
前記パッド部は、導電性でも、絶縁性でもよい。
【0027】
前記静電式塗装ガンは、載置面に載置したブレーキパッドの上方に対向するように設置し、静電式塗装ガンの吐出パターンがブレーキパッドに直接当たらないようにしることが望ましい。
【0028】
前記静電式塗装ガンとしては、摩擦帯電式塗装ガン、コロナガンを使用することができる。
【0029】
前記ブレーキパッドに粉体塗料を付着させる前に、ブレーキパッドの少なくともパッド部に、水を噴霧又は浸漬しておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、上記のように、静電式塗装ガンから吐出される粉体塗料を、ブレーキパッドと堰止め部との間に形成される空間内に流入させ、この空間内に流入した粉体塗料をバックプレート及びパッド部に付着させるので、パッド部が絶縁性の場合も、粉体塗料を安定的に付着させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】この発明の粉体塗装方法の被塗装物であるブレーキパッドをバックプレート側から見た斜視図である。
図2】この発明の粉体塗装方法の被塗装物であるブレーキパッドをパッド部側から見た斜視図である。
図3】この発明の粉体塗装方法の被塗装物であるブレーキパッドをバックプレート側から平面図である。
図4】この発明の粉体塗装方法の被塗装物であるブレーキパッドをパッド部側から平面図である。
図5】この発明の塗装方法の塗装ラインを示す概略図である。
図6】この発明の第1の実施形態を示す部分斜視図である。
図7】この発明の第1の実施形態を示す部分側面図である。
図8】この発明の第2の実施形態を示す部分側面図である。
図9】この発明の第3の実施形態を示す側面図である。
図10】この発明の第4の実施形態を示す側面図である。
図11】この発明の第5の実施形態を示す側面図である。
図12】粉体塗料を吹き付ける前に、ブレーキパッドの側面に霧状の水滴を噴霧する方法を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明に係る粉体塗装方法の被塗装物であるブレーキパッド1は、図1乃至図4に示すように、金属製のバックプレート2に摩擦部材であるパッド部3を接合したものである。
【0033】
被塗装物であるブレーキパッド1の塗装面は、パッド部3の接合面を除く金属製のバックプレート2の外面と、パッド部3の摩擦面を除いた外周側面である。
【0034】
図5は、ブレーキパッド1の塗装ラインを示しており、ブレーキパッド1は、塗装ブース4内で塗装した後、移載コンベア5によって焼付け乾燥炉に導かれる。
【0035】
塗装ブース4には、搬送コンベア6が設置され、搬送コンベア6の上方に静電式塗装ガン7が設置されている。
【0036】
塗装ブース4の底面には、オーバースプレー粉を回収する回収ダクト8が設置されている。搬送コンベア6の塗装ブース4の出口側の下面には、搬送コンベア6に付着したオーバースプレー粉を清掃するエアーブロー装置9が設置されている。
【0037】
この発明の第1の実施形態では、図6及び図7に示すように、塗装ブース4を通過する搬送コンベア6のベルト面に、塗装を行わないパッド部3の摩擦面が下に、金属製のバックプレート2が上になるように載置して塗装を行っている。
【0038】
そして、第1の実施形態では、搬送コンベア6のベルト面に、搬送コンベア6の走行方向に沿って凹所を形成し、この凹所の底面を、ブレーキパッド1を載置する載置面にしている。
【0039】
凹所の幅は、ブレーキパッド1を凹所10の底面に載置した状態で、ブレーキパッド1の外側面と凹所10の対向壁12との間に、上方から粉体塗料11が流入するように、ブレーキパッド1の外側面の幅よりも広く形成し、凹所10の対向壁12を、凹所10内に流入した粉体塗料11が凹所10から流れ出ないようにする堰止め部として機能させている。
【0040】
第1の実施形態では、静電式塗装ガン7として摩擦帯電式塗装ガンを使用し、複数本の吐出チューブ14を、搬送コンベア6のベルト面の凹所10の上方位置で対向するように設置している。摩擦帯電式塗装ガンは、搬送エアーによって摩擦帯電させるために、吐出チューブ14から粉体塗料11と共に搬送エアーが勢いよく吐出される。第1の実施形態のように、吐出チューブを対向するように設置すると、搬送コンベア6のベルト面の凹所10の上方位置で、吐出された粉体塗料11が互いにぶつかり合って搬送エアーの勢いが弱められ、粉体塗料11が均一に分散して、霧化状態でベルト面の凹所10に流入し、凹所10の対向壁12が堰止め部となり、ベルトに形成した凹所10内に霧化状態の粉体塗料11が充満する。
【0041】
凹所10内に充満する霧化状態の粉体塗料11は、搬送エアーによる吹き飛ばしもなく、金属製のバックプレート2の外表面と、パッド部3の外周側面に付着する。パッド部3が絶縁性の材料で形成されていても、搬送エアーによる粉体塗料11の吹き飛ばしがないため、十分な膜厚で粉体塗料11が付着する。
【0042】
図1図4に示すブレーキパッド1は、4輪用のものであり、塗装面の規格基準膜厚は、図1図4のA(A1、A2)のバックプレート2の外表面で15〜40μm、B(B1〜B4)のパッド部3の外周側面で15〜40μm、C(C1、C2)のバックプレート2の外周側面で10〜40μmである。
【0043】
図6及び図7に示す実施形態において、コンベアスピードを3.5m/min、吐出量55g/minで塗装を行ったところ、パッド部3の材質が導電性の場合(試料No.1〜5)も、絶縁性の場合(試料No.6〜10)も、表1に示す通り、何れの測定点においても規格基準膜厚を十分に満足していた。表1中に示す膜厚は、4個のブレーキパッド1を測定した平均膜厚であり、その単位はμmである。なお、測定点A1、A2、B1〜B4、C1、C2は、図1図4に黒丸で示している。
試料No.6〜10のパッド部の絶縁抵抗値は1011Ωである。
【0044】

【表1】
【0045】
次に、図8は、この発明の第2の実施形態を示している。
第1の実施形態では、搬送コンベア6のベルト面に凹所10を設け、この凹所10内にブレーキパッド1を載置し、凹所10内に搬送エアーの勢いを弱めた粉体塗料11を流入させ、ブレーキパッド1に粉体塗料11を付着させるようにしたが、第2の実施形態では、搬送コンベア6のベルト面は、平坦面に形成し、この平坦面に向けて静電式塗装ガン7から粉体塗料11を吹き付け、ベルト面で跳ね返った粉体塗料11をブレーキパッド1に付着させるようにしている。
【0046】
そして、この第2の実施形態では、ベルト面で跳ね返った粉体塗料11がブレーキパッド1の側方へ流れ出さないように、ブレーキパッド1の載置面のベルト面に、堰止め部を形成する凸部15を設けている。
【0047】
この第2の実施形態では、静電式塗装ガン7として、コロナガンを使用している。コロナガンは、2ガンが対向するように、搬送コンベア6の搬送方向に千鳥状に複数組設置している。
【0048】
次に、図9は、この発明の第3の実施形態を示している。
この第3の実施形態は、被塗装物であるブレーキパッド1を搬送台車16に載置して、塗装ブース1内を通過させるようにしている。
【0049】
搬送台車16のブレーキパッド1の載置面には、加熱成形された物温が120〜130℃のブレーキパッド1を塗装ブース1内に直接搬入できるように、常温から150℃までの耐熱性を有する樹脂製の載置板17が設置されている。載置板17を形成する樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトンを使用することができる。
【0050】
ブレーキパッド1を載置した載置板17の上面には、さらに、ブレーキパッド1の側方には、それぞれ所定の隙間を空けて2枚の仕切り板18、19が上下に積層設置されている。
【0051】
2枚の仕切り板18、19の厚みは、載置板17に載置したブレーキパッド1の少なくともパッド部3が、仕切り板18、19の厚み内に収まるようにしている。
【0052】
仕切り板18、19の材質は、載置板17と同じ樹脂によって形成することができる。
【0053】
載置板17の上面に設置した仕切り板18、19の端面20、21は、ブレーキパッド1の側方で対向し、この対向する端面20、21が、端面20、21間に流入する粉体塗料11の堰止め部として機能する。
【0054】
上記仕切り板18、19の左右の長さを変更することにより、対向する端面20、21間の距離を、ブレーキパッド1の大きさに合せて変えることができる。
【0055】
上記搬送台車16の載置板17との接着、載置板17と仕切り板18、19との接着には、例えば、両面テープを使用することができる。
【0056】
この第3の実施形態では、静電式塗装ガン7として対向する2本の摩擦帯電式塗装ガンを使用している。
【0057】
摩擦帯電式塗装ガンは、粉体塗料と共に搬送エアーも勢いよく吐出するため、粉体塗料11が勢いよくブレーキパッド1に当たらないように、摩擦帯電式塗装ガンの吐出口には、反射板22を設置している。反射板22で反射して、搬送エアーの勢いが弱められた粉体塗料11は、対向する仕切り板18、19の間の空間に流入し、ブレーキパッド1に付着する。
【0058】
図9に示す第3の実施形態では、オーバースプレー粉の飛散防止と塗着効率を向上させるために、塗装ブース1の内部に、インナーブース23を設置している。インナーブース23内のオーバースプレー粉は、下面の回収ダクト24によって回収され、再利用される。
【0059】
図9に示す第3の実施形態で使用する載置板17、仕切り板18、19の材質は、耐熱性の絶縁樹脂であるポリエーテルエーテルケトンを使用したが、塩化ビニル、ナイロン、4弗化エチレンを使用することもできる。
【0060】
次に、図10の第4の実施形態は、図9に示す第3の実施形態の仕切り板19を外側にずらすことによって、対向する仕切り板18、19の間の空間に、粉体塗料11を流入し易くしたものである。
【0061】
また、図11の第5の実施形態は、図9に示す第3の実施形態の仕切り板18の端面20を傾斜させることにより、対向する仕切り板18、19の間の空間に流入した粉体塗料11の漏れ出しを少なくしたものである。
【0062】
ところで、パッド部3の成形の際には、ブレーキパッド1の物温は、150℃位になっているが、塗装時のブレーキパッド1の物温は、成形工程から塗装工程までの距離や時間によって、変化する。
【0063】
この発明の塗装方法によると、パッド部3が、導電性の場合も、絶縁性の場合も、十分な膜厚で粉体塗料11を付着させることができるが、絶縁性のパッド部3の場合、粉体塗料11の付着効率をさらに良好にするために、静電式塗装ガン7からブレーキパッド1に粉体塗料11を吹き付ける前に、絶縁性のパッド部3の表面に、水分を付着させて導電性を付与してもよい。水分の付着方法は、図12に示すように、絶縁性のパッド部3の側面に霧状の水滴を発生させるノズル25を設置し、このノズル13から30〜100μmの水滴を噴霧する方法の他、絶縁性のパッド部3を水中に浸漬する方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ブレーキパッド
2 バックプレート
3 パッド部
4 塗装ブース
5 移載コンベア
6 搬送コンベア
7 静電式塗装ガン
8 回収ダクト
9 エアーブロー装置
10 凹所
11 粉体塗料
12 対向壁
13 ノズル
14 吐出チューブ
15 凸部
16 搬送台車
17 載置板
18、19 仕切り板
20、21 端面
22 反射板
23 インナーブース
24 回収ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12