(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態により製造されるゴルフクラブヘッド2の斜視図である。ヘッド2は、ウッド型ヘッドである。ヘッド2は、中空ヘッドである。
図2は、このヘッド2の分解斜視図である。ヘッド2は、フェース4、クラウン6、ソール8及びホーゼル10を有する。ホーゼル10は、シャフト孔12を有する。図示されないが、フェース4にフェースラインが形成されている。
【0018】
好ましいヘッドのタイプは、ウッド型、ユーティリティ型及びハイブリッド型である。これらのヘッドは、通常、中空部を有する。本実施形態は、中空部を有するヘッドに適する。もちろん、アイアン型、パター型などのヘッドにも、本発明は適用されうる。
【0019】
図2が示すように、ヘッド2は、複数のヘッド部品Phを接合することにより製造されている。後述されるように、本実施形態では、この接合は、溶接である。溶接と他の接合(接着等)とが混在していてもよい。
【0020】
ヘッド2を構成する複数のヘッド部品Phは、フェース部材f1、クラウン部材c1、ソール部材s1及びホーゼル部材h1である。
【0021】
ヘッド部品Phの材質は限定されない。好ましい材質として、金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)及びそれらの組み合わせが例示される。より好ましい材質は、金属である。この金属として、チタン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びそれらの組み合わせが例示される。ヘッド部品Phを構成する各部材の製造方法は限定されず、鍛造、鋳造、プレス、NC加工及びこれらの組み合わせが例示される。本実施形態では、全てのヘッド部品Phの材質は、チタン合金である。
【0022】
ヘッド2は、溶接接合部wd1を有する。溶接接合部wd1は、ヘッド部品Ph同士の境界部に位置する。
【0023】
フェース部材f1は、フェース4の少なくとも一部を構成している。本実施形態では、フェース部材f1は、フェース4の全体を構成している。
【0024】
クラウン部材c1は、クラウン6の少なくとも一部を構成している。本実施形態では、クラウン部材c1は、クラウン6の大部分を構成している。
【0025】
ソール部材s1は、ソール8の少なくとも一部を構成している。本実施形態では、ソール部材s1は、ソール8の全体を構成している。
【0026】
ホーゼル部材h1は、ホーゼル10の少なくとも一部を構成している。本実施形態では、ホーゼル部材h1は、ホーゼル10の一部を構成している。ホーゼル部材h1は、シャフト孔12の全体を構成している。ホーゼル部材h1は、パイプ状部14を有する。このパイプ状部14の内周面が、シャフト孔12である。ホーゼル部材h1は、外方延在部16を有する。この外方延在部16は、略傘状である。この外方延在部16は、クラウン6の一部を構成する。
【0027】
図3は、ソール部材s1の斜視図である。ソール部材s1の内面には、リブrb1と、重量部材wt1とが配置されている。リブrb1は、ソール部材s1とは別個に成形されている。リブrb1は、ソール部材s1の内面に接合されている。この接合は溶接である。重量部材wt1は、ソール部材s1とは別個に成形されている。重量部材wt1は、ソール部材s1の内面に接合されている。この接合は溶接である。
【0028】
フェース部材f1は、圧延材をプレス加工することにより成形されている。ソール部材s1は、圧延材をプレス加工することにより成形されている。ソール部材s1は、圧延材をプレス加工することにより成形されている。クラウン部材c1は、圧延材をプレス加工することにより成形されている。クラウン部材c1は、圧延材をプレス加工することにより成形されている。ホーゼル部材h1は、切削加工により成形されている。この切削加工はNC加工(CNC加工)である。各部材の製法は限定されない。
【0029】
これら複数のヘッド部品Phは、互いに溶接可能な材質である。これらのヘッド部品Phが溶接されることで、ヘッド2が製造される。図示されないが、ヘッド2は、中空部を有する。シャフト孔12は、この中空部とヘッド外部との間を連通している。換言すれば、ヘッド2は、この中空部とヘッド外部との間を連通する連通孔Th1を有している。本実施形態では、シャフト孔12が連通孔Th1である。
【0030】
ソール部材s1の内面には、凹部及び/又は凸部が設けられている。
図3が示すように、本実施形態のソール部材s1の内面には、凸部p1及び凹部r1が設けられている。ソール部材s1には、複数の凸部p1が設けられている。ソール部材s1には、多数の凸部p1が設けられている。ソール部材s1自体によって形成された凸部p1の他、重量部材wt1及びリブrb1も凸部p1を形成している。すなわち、重量部材wt1が凸部p1を形成している。リブrb1は凸部p1を形成している。
【0031】
図示されないが、フェース部材f1の内面にも、凹部r1及び凸部p1が設けられている。
【0032】
図4は、ヘッド2の製造に用いられるガイドコアgc1の斜視図である。
図5は、ガイドコアgc1の底面図である。ガイドコアgc1は、フェース部材当接部f2と、クラウン部材当接部c2と、ソール部材当接部s2と、ホーゼル部材当接部h2とを有する。ホーゼル部材当接部h2は、ホーゼル部材挿通孔h3を有する。
【0033】
ガイドコアgc1は、中実である。ガイドコアgc1の外面形状は、ヘッド2の中空部の形状に実質的に等しい。ガイドコアgc1の外面形状は、ヘッド2の内面の形状に実質的に等しい。
【0034】
なお、ガイドコアgc1が中空部を有していてもよい。この場合、下記ステップCでの除去が容易とされうる。
【0035】
上述したように、ヘッド部品Phの少なくとも1つは、その内面側に凹部r1及び/又は凸部p1を有している。一方、ガイドコアgc1は、少なくとも1つの凸部p2及び/又は少なくとも1つの凹部r2を有する。本実施形態のガイドコアgc1は、複数の凸部凹部r2を有する(
図5参照)。
【0036】
ヘッド部品Phの凹部r1は、ガイドコアgc1の凸部p2に対応している。ヘッド部品Phの凸部p1は、ガイドコアgc1の凹部r2に対応している。
【0037】
[ヘッド製造方法]
このヘッド2の製造方法は、次のステップAからCを含む。
(A)複数のヘッド部品Phを作製するステップ。
(B)ガイドコアgc1に少なくとも2つの上記のヘッド部品Phを当接させながら、ヘッド部品Ph同士を溶接するステップ。
(C)ガイドコアgc1を除去するステップ。
【0038】
ステップAに関し、好ましくは、ヘッド部品Phの少なくとも一つが、プレス加工により作製されている。プレス加工の加工温度は限定されない。プレス加工は、冷間プレスでもよいし、温間プレスでもよいし、熱間プレスでもよい。冷間プレスは、加熱を伴わないプレス加工である。プレス加工以外のヘッド部品Phの製法として、鍛造、鋳造、ダイカスト及び削りだし(切削加工)が例示される。
【0039】
ステップBでは、好ましくは、全てのヘッド部品Phをガイドコアgc1に当接させる。ヘッド部品Phのそれぞれは、ガイドコアgc1の対応する位置に配置される。ヘッド部品Phへの当接により、ヘッド部品Phのそれぞれが位置決めされる。ヘッド部品Phへの当接により、ヘッド部品Ph同士の相対的な位置決めがなされる。この位置決めにより、ヘッド部品Ph相互間の角度が精度よく設定される。この位置決め効果により、ヘッド部品Ph相互間の位置関係が精度よく設定される。ヘッド部品Phとガイドコアgc1との当接面は立体的な曲面であるから、当接による位置決め効果は高い。
【0040】
ステップBでは、クラウン部材c1がクラウン部材当接部c2に当接される。この当接は面接触である。ステップBでは、ソール部材s1がソール部材当接部s2に当接される。この当接は面接触である。ステップBでは、フェース部材f1がフェース部材当接部f2に当接される。この当接は面接触である。ステップBでは、ホーゼル部材h1がホーゼル部材当接部h2に当接される。この当接は面接触である。これらの面接触により高い位置決め効果が奏されうる。ステップBでは、ホーゼル部材h1(のパイプ状部14)がホーゼル部材挿通孔h3に挿入される。この挿入により、高い位置決め効果が奏されうる。
【0041】
ステップBでは、ヘッド部品Phとガイドコアgc1との当接を維持する当接維持機構が用いられ得る。すなわち、好ましくは、ステップBでは、当接維持機構によってヘッド部品Phとガイドコアgc1との当接が維持される。この当接維持機構として、接着、外部治具及び係合機構が例示される。係合機構の一例については後述される。
【0042】
好ましくは、ステップBにおいて、少なくとも2以上のヘッド部品Phをガイドコアgc1に当接させた状態で、ヘッドスペックが測定される。好ましくは、ステップBにおいて、上記ヘッドスペックの測定値に基づいて、ヘッド部品Phの位置及び/又は姿勢が調整される。
【0043】
好ましくは、ステップBにおいて、少なくとも2以上のヘッド部品Phをガイドコアgc1に当接させた状態で、上記当接維持機構によりこれらのヘッド部品Phを固定しつつ、ヘッドスペックが測定される。好ましくは、上記当接維持機構によりヘッド部品Phを固定しつつ、ヘッド部品Phの位置及び/又は姿勢が調整される。
【0044】
接着の一例では、接着剤が用いられる。好ましい接着剤は、瞬間接着剤である。瞬間接着剤の一例は、シアノアクリレート系接着剤である。この接着剤は、シアノアクリレートを主成分とする。この接着剤は、空気中等に存在する水分に反応して硬化する。この硬化により接着が達成される。瞬間接着剤の利用により、ステップBの作業時間が短縮されうる。
【0045】
上記ステップBにおいて、上記ガイドコアgc1と上記ヘッド部品Phとを接着する接着剤が、溶接による熱によって破壊されてもよい。この場合、ステップCにおけるガイドコアgc1の残留が抑制される。よって、ステップCにおける除去がより一層容易となる。
【0046】
ステップBにおいて、ヘッド部品Phの凹部r1は、対応する凸部p2に当接される。この凹部r1と凸部p2との当接は、上記位置決め効果を高める。ステップBにおいて、ヘッド部品Phの凸部p1は、対応する凹部r2に当接される。この凸部p1と凹部r2との当接は、上記位置決め効果を高める。
【0047】
好ましくは、上記ステップBの当接は、面接触である。好ましくは、凸部p1と凹部r2との当接は、面接触である。好ましくは、凸部p2と凹部r1との当接は、面接触である。面接触により、上記位置決め効果が高まる。
【0048】
当接維持機構としての外部治具は、例えば、ステップBにおける当接状態を維持するためにヘッド部品Phを外側からガイドコアgc1に押圧する。この外部治具は、金型のような構造であってもよい。ただし外部治具は、溶接作業を許容するスペースを有する。外部治具は、溶接作業を許容するスペースを確保しつつ、ヘッド部品Phとガイドコアgc1との当接を維持しうる。
【0049】
上記当接維持機構の他の例として、ガイドコアgc1とヘッド部品Phとを連結する連結手段が例示される。この連結手段として、例えば、ガイドコアgc1とヘッド部品Phとを連結するネジが例示される。この場合、例えば、ヘッド部品Phが貫通孔を有し、ガイドコアgc1が雌ネジ孔を有する。この場合、雄ネジが、上記貫通孔に挿通されつつ、上記雌ネジ孔にネジ止めされる。このネジ止めによって、ヘッド部品Phとガイドコアgc1とが連結される。
【0050】
ステップBの当接において、1又は2以上の凸部p1が、対応する凹部r2に係合(接触)している。この凹凸係合は、上記位置決め効果を高める。ステップBの当接において、1又は2以上の凹部r1が、対応する凸部p2に係合(接触)している。この凹凸係合は、上記位置決め効果を高める。
【0051】
上述の通り、ソール部材s1のリブrb1は凸部p1を構成している(
図3参照)。ステップBにおいて、リブrb1を構成する凸部p1は、対応する溝状の凹部r26(
図5参照)と係合している。この凹凸係合は、上記位置決め効果を高める。リブrb1は、打球音の改善にも寄与している。リブrb1は、打球音の改善と位置決め効果の向上との両方に寄与している。
【0052】
本実施形態では、ヘッド部品Phのうちの少なくとも1つがその内面にリブrb1を有し、ガイドコアgc1が、そのリブrb1に対応する凹部r26を有する。上記位置決め効果を高める観点から、好ましくは、ステップBにおいて、このリブrb1と凹部r26とを係合させながら、溶接がなされる。
【0053】
上述の通り、ソール部材s1の重量部材wt1は凸部p1を構成している(
図3参照)。ステップBにおいて、重量部材wt1を構成する凸部p1は、対応する凹部r2(
図4に示されるr21)と係合している。この凹凸係合は、上記位置決め効果を高める。重量部材wt1は、重心位置を設定自由度を高めている。重量部材wt1は、重心位置の設計と位置決め効果との両方に寄与している。
【0054】
図示されないが、フェース部材f1の内面は、その中央部に厚肉部を有する。この厚肉部も、上述した凸部p1に該当する。この厚肉部に対応して、フェース部材当接部f2の中央部には凹部r22が設けられている(
図4参照)。ステップBにおいて、この凹部r22と、上記厚肉部である凸部p1(図示されず)とが係合している。この凹凸係合は、上記位置決め効果を高める。
【0055】
図示されないが、フェース部材f1の内面は、延在部を有する。この延在部は、フェース部材f1の中央部から周辺部へと延びている。この延在部はリブ状である。この延在部も、上述した凸部p1に該当する。この延在部に対応して、フェース部材当接部f2には凹部r23が設けられている(
図4参照)。ステップBにおいて、この凹部r23と、上記延在部である凸部p1とが係合している。この凹凸係合は、上記位置決め効果を高める。
【0056】
上述の通り、ステップBでは、ホーゼル部材h1(のパイプ状部14)がホーゼル部材挿通孔h3に挿入される。パイプ状部14は円筒形である。パイプ状部14の外径はホーゼル部材挿通孔h3の内径に実質的に等しい。断面円形の部材14の外径と孔h3の内径とを一致させるのは容易である。この挿入による位置決めは、精度に優れる。この挿入は、上記位置決め効果を高める。
【0057】
ステップBでは、溶接がなされる。溶接の種類として、ガス溶接、アーク溶接及びレーザー溶接が例示される。アーク溶接として、TIG溶接及びプラズマ溶接が例示される。レーザー溶接に用いられるレーザーとして、YAGレーザー及びCO
2レーザーが例示される。
【0058】
好ましくは、ステップBにおける溶接は、局所的溶接と全体的溶接とを含む。局所的溶接の典型例は点溶接である。点溶接の方法として、スポット溶接が挙げられる。好ましくは、局所的溶接の後に全体的溶接がなされる。局所的溶接の後にヘッドスペックの測定がなされてもよい。このヘッドスペックの測定結果に基づいてヘッドスペックが修正された後に、全体的溶接がなされてもよい。このヘッドスペックとして、ロフト角、ライ角及びフェース角が例示される。ロフト角として、オリジナルロフト角及びリアルロフト角が例示される。
【0059】
ステップCでは、ガイドコアgc1が除去される。上述の通り、ヘッド2は、連通孔Th1を有する。この連通孔Th1を利用して、ガイドコアgc1が除去される。
【0060】
ステップCでは、ガイドコアgc1は、連通孔Th1を通過しうる形態とされる。この形態として、流動体及び破砕体が例示される。破砕体は、例えば、振動等の物理的刺激によって得られうる。流動体は、例えば、融解及び溶解によって得られうる。後述するように、より好ましくは、ガイドコアgc1の材質は水溶性を有する。この場合、連通孔Th1から水を注入し、ガイドコアgc1を溶解させる。そして、ガイドコアgc1の水溶液を連通孔Th1から外部に取り出す。
【0061】
連通孔Th1として、シャフト孔12以外の孔が用いられても良い。本実施形態では、連通孔Th1がシャフト孔12であるため、他の孔を設ける必要がない。また、組み立てられたゴルフクラブにおいては、シャフトによってシャフト孔12が閉塞される。よって、連通孔Th1を閉塞する部材を別途用意する必要がない。連通孔Th1は、ガイドコアgc1を流出させやすい位置に設けておき、流出の後に、この連通孔Th1をバッジ等の閉塞部材又は溶接等で埋めても良い。この観点から、連通孔Th1は、例えば、ソール部材s11に設けられても良い。
【0062】
ガイドコアgc1が占めていた部分は、ガイドコアgc1の除去により、空洞となる。この空洞が、ヘッド2の中空部の少なくとも一部となる。
【0063】
図6(a)及び
図6(b)は、上記当接維持機構としての上記係合機構の一例を示す。
図6(a)及び(b)の実施形態では、上記ソール部材s1に代えて、ソール部材s11が用いられている。このソール部材s11は、連結部ks1を有する。更に、
図6(a)及び(b)の実施形態では、上記クラウン部材c1に代えて、クラウン部材c11が用いられている。このクラウン部材c11は、連結部kc1を有する。
【0064】
図示されないが、ソール部材s11は、複数の連結部ks1を有している。図示されないが、クラウン部材c11は、複数の連結部kc1を有している。連結部が設けられた他は、
図6(a)及び(b)の実施形態は、
図2の実施形態と同じである。
【0065】
この
図6(a)及び(b)の実施形態では、上記ステップBにおいて、上記連結部同士が連結される。本実施形態では、この連結はネジ止めにより達成されている。この連結は、ボルトb1とナットn1とのネジ結合により達成されている。複数の連結部ks1と複数の連結部kc1とが、それぞれ、ネジ結合により連結される。
【0066】
クラウン部材c11は、プレス加工により形成されている。クラウン部材c11には、スプリングバックが生じている。このスプリングバックに起因して、クラウン部材c11とガイドコアgc1との当接面積が小さくなっている(
図6(a)参照)。
【0067】
ソール部材s11は、プレス加工により形成されている。ソール部材s11には、スプリングバックが生じている。このスプリングバックに起因して、ソール部材s11とガイドコアgc1との当接面積が小さくなっている(
図6(a)参照)。
【0068】
連結部kc1と連結部ks1との連結により、スプリングバックが減少するような変形が起こる(
図6(b)参照)。この連結により、ガイドコアgc1とヘッド部品Phとの接触面積が増大している。この接触面積の増大は、上記位置決め効果を高める。
【0069】
このように、複数のヘッド部品Phのうちの少なくとも1つにスプリングバックが生じていることがある。この場合、好ましくは、上記ステップBにおける当接において、ヘッド部品Phが、スプリングバックを減少させるように変形される。
【0070】
このように、上記ステップBの当接において上記当接維持機構が用いられ、この当接維持機構により、スプリングバックが減少するようにヘッド部品Phが変形しているのが好ましい。
【0071】
連結部kc1及び連結部ks1は、完成されたヘッド2には存在しない。本実施形態の製造方法は、次のステップDを更に含む。
(D)ステップBにおける上記溶接の後に、上記連結部kc1及び連結部ks1を除去するステップ。
【0072】
この除去は、例えば切除によってなされうる。このステップDが、上記ステップBにおいてなされてもよい。好ましい除去の一例は、ステップBでの溶接における加熱を利用して、連結部が除去される。この場合、連結部の除去と溶接とが同時になされうるので、高い生産性が実現しうる。
【0073】
図7は、変形例のガイドコアgc2の斜視図である。
図8は、このガイドコアgc2の底面図である。このガイドコアgc2は、上記ヘッド2の作製に用いられる。
【0074】
ガイドコアgc2は、ヘッド2の中空部の形状に対して欠落した欠落部Ms1を有している。この欠落部Ms1の有無を除き、ガイドコアgc2は、ガイドコアgc1と同じである。
【0075】
欠落部Ms1は、溶接接合部wd1の少なくとも一部に沿って設けられている。本実施形態では、欠落部Ms1は、溶接接合部wd1の全体に沿って設けられている。この欠落部Ms1の存在より、上記ステップBにおいて、溶接接合部wd1とガイドコアgc2との接触が回避されている。よって、溶接の熱がガイドコアgc2に伝達されにくい。溶接接合部wd1により、ガイドコアgc2の加熱が抑制される。よって、ガイドコアgc2の材質の選択自由度が向上しうる。したがって例えば、耐熱性よりも水溶性を優先し、より水溶性の高いガイドコアgc2を選択することができる。
【0076】
図9は、ガイドコアgc2が用いられたステップBの様子を示している。
図9が示すように、欠落部Ms1の存在により、溶接接合部wd1と欠落部Ms1との間に空間sp1が存在している。この空間sp1により、ガイドコアgc2と溶接接合部wd1との接触が回避されている。なお、溶接接合部wd1とは、溶接ビード及び溶接により溶けた部分を意味する。ガイドコアgc1の加熱を抑制する観点から、ガイドコアgc2と溶接接合部wd1との間の最短距離は、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、7mm以上が更に好ましい。ヘッド部品Phとガイドコアgc2との接触面積を過度に低下させない観点から、ガイドコアgc2と溶接接合部wd1との間の最短距離は、15mm以下が好ましく、13mm以下がより好ましく、11mm以下が更に好ましい。
【0077】
[ガイドコア]
ガイドコアの製造方法として、金型を用いた成形及び削り出しが例示される。ガイドコアは、例えば、鋳造用中子を製造しうる中子型を用いて成形することができる。金型を用いた成形では、圧力及び/又は熱が加えられても良い。好ましくは、ヘッド内面の三次元データの少なくとも一部と、ガイドコア外面の三次元データの少なくとも一部とを一致させて、ガイドコアが製造される。この三次元データの共通化により、上記位置決め効果が高まる。
【0078】
金型を用いた成形の場合、この金型は、好ましくは、NC加工により作製される。好ましくは、この金型のNC加工に、ヘッド内面の三次元データが用いられる。ヘッド内面の三次元データを用いることにより、ヘッド内面の三次元データと、ガイドコア外面の三次元データとが精度よく一致しうる。よって、ガイドコアの形状が精度よく作製されうる。この高い精度は、上記位置決め効果を高める。なお、NCとは、Numerical Controlの略である。
【0079】
削り出しの場合、ガイドコアは、好ましくは、NC加工により切削される。好ましくは、この切削加工に、ヘッド内面の三次元データが用いられる。ヘッド内面の三次元データを用いることにより、ヘッド内面の三次元データと、ガイドコア外面の三次元データとが一致する。よって、ガイドコアの形状が精度よく作製されうる。なお、NCとは、Numerical Controlの略である。
【0080】
[ガイドコアの材質]
ガイドコアの材質は限定されない。例えば、射出成形又は鋳造の中子に用いられ得る材質が、ガイドコアにも用いられ得る。好ましくは、ガイドコアの材質は、水溶性材料である。
【0081】
ガイドコアの基材として、金属、樹脂、セラミック、ワックス、金属粉とバインダーとの混合物、カルシア質材料、鋳物砂、無機塩、水溶性高分子、砂糖、食塩、氷、水溶性粉末材料等が挙げられる。水溶性粉末材料として、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム又はこれらの混合物が例示される。セラミックとして、窒化ホウ素及び酸化マグネシウムが例示される。これらの水溶性粉末材料及びセラミックは、耐熱性を有する。炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム又はこれらの混合物は水溶性をも有する。
【0082】
ステップCを考慮すると、ガイドコア除去性が高いのが好ましい。ガイドコア除去性の観点から、ガイドコアの材質は、好ましくは水溶性、溶剤溶解性又は溶融性を有し、より好ましくは水溶性を有する。
【0083】
ガイドコアの基材は樹脂であってもよい。上記樹脂として、合成樹脂が挙げられる。この合成樹脂として、ポリエチレン、パラフィン等が例示される。ガイドコア除去性の観点から、樹脂は、好ましくは、溶剤に溶ける。より好ましい樹脂は、水溶性樹脂である。この水溶性樹脂として、ポリビニルアルコール系樹脂、ヒドロキシプロピルセルロース系樹脂、アルキルセルロース系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂及びポリビニルホルマール系樹脂が例示される。耐熱性及び強度の観点から、このポリビニルアルコール系樹脂は、オキシアルキレン基を含有しているのが好ましい。耐熱性及び強度の観点から、このポリビニルアルコール系樹脂に無機フィラーが配合された組成物がより好ましい。この無機フィラーとして、タルク、雲母、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、シリカ粒子、酸化アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニア、アルミノシリケート、マイカ、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、カオリン、ゼオライト、鉄、チタン、ニッケル、銅、マグネシウム、錫、鉛、亜鉛、金属塩、架橋シリコン樹脂及びウィスカー状炭酸カルシウムが例示される。
【0084】
ガイドコアの基材は金属であってもよい。この金属として、低融点金属が挙げられる。この低融点金属として、錫、鉛、ビスマス及びこれらを用いた合金が挙げられる。他の低融点金属として、Zn−Al−Cu合金、Zn−Al−Mg合金、Zn−Sn−Mg合金及びZn−Sn−Cu合金が挙げられる。ガイドコア除去性の観点からは、低融点金属の溶融温度は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。低融点金属を用いることで、ガイドコア除去性が高まる。
【0085】
なお、溶接の熱を考慮すると、ガイドコアの基材は高い耐熱性を有するのが好ましい。但し、溶接での加熱は局所的な加熱であるため、ガイドコアの温度は溶接の加熱温度ほど高くはならない。また特にレーザー溶接では、ガイドコアの加熱が少ない。耐熱性がそれほど高くない材質であっても、ガイドコアに用いることは可能である。
【0086】
ガイドコアの好ましい基材の一例は、上記カルシア質材料である。このカルシア質材料として、カルシア、カルシア−マグネシア及びカルシア−ジルコニアが挙げられる。カルシアはCaOである。マグネシアはMgOである。ジルコニアはZrO
2である。カルシア質材料は、水溶性である。水溶性を高める観点から、カルシア質物質は、80重量%以上のカルシアを含有しているのが好ましい。
【0087】
好ましいガイドコアの基材の他の一例は、塩である。この塩として、炭酸ナトリウム、塩化カリウム及び塩化ナトリウム及びこれらの組み合わせが例示される。これらの材質は、水溶性を有しうる。
【0088】
好ましいガイドコアの基材の他の一例は、アルミナ砂と粘結材とを含む。この粘結材として、リン酸三カリウム及び/又はアルミン酸ナトリウムが挙げられる。これらの材質は、水溶性を有しうる。
【0089】
好ましいガイドコアの基材の他の一例は、メタ珪酸ソーダ、二珪酸ソーダ及びこれらの混合物である。また、塩化ナトリウム、塩化カリウム又はこれらの混合物も、ガイドコアの材質となりうる。更には、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸バリウム及びこれらの混合物も、ガイドコアの材質となりうる。これらは水溶性を有する。またこれらは、溶融成形することができる。
【0090】
上記鋳物砂として、天然砂及び合成砂が挙げられる。代表的な鋳物砂は、珪砂である。一般的な鋳物砂は、SiO
2を主成分とする。一般的な鋳物砂は、50質量%以上の珪酸(SiO
2)を含む。一般的な鋳物砂は、珪酸(SiO
2)の他、アルミナ(Al
2O
3)及び酸化鉄(Fe
2O
3)を含む。耐熱性の観点から、好ましい鋳物砂の一例は、ムライト系人工砂である。
【0091】
好ましいガイドコアの基材の他の一例は、バインダが添加された鋳物砂である。一般的なバインダとして、粘土、ベントナイト及びセメントが例示される。
【0092】
バインダとして、無機バインダ及び有機バインダが挙げられる。無機バインダとして、無機塩が例示される。有機バインダとして、樹脂が例示される。このバインダの樹脂として、フェノール樹脂及びフラン樹脂が例示される。無機バインダとして、炭酸ナトリウム、硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムが例示される。硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムとが併用されてもよい。硫酸マグネシウムが用いられた場合、良好な水溶性が達成されうる。他の無機バインダとして、塩化ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム及びこれらの混合物が挙げられる。これらの無機バインダが用いられた場合、水溶性を有するガイドコアが実現しうる。好ましい無機バインダは、水溶性無機塩バインダである。
【0093】
耐熱性の観点から、上記バインダーに、フィラー(充?剤)が添加されてもよい。フィラーとして、カオリナイト、デッカイト、ハロイサイト、ボールクレー、焼成カオリン、硫酸バリウム、塩化ナトリウム等が例示される。好ましいフィラーとして、珪砂(珪粉)、アルミナ、チタン酸カリウム、炭化珪素、珪酸ジルコン、繊維状チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄及び酸化マグネシウムが挙げられる。
【0094】
好ましいガイドコアの基材の他の一例は、バインダが添加された鋳物砂であり、鋳物砂粒子の表面が水溶性無機塩バインダで被覆されている。この場合、水溶性を有するガイドコアが実現しうる。好ましい水溶性無機塩バインダとして、水溶性無機塩に無機フィラーが添加されたものが例示される。この無機フィラーの添加により、耐熱性及び水溶性に優れたガイドコアが得られうる。前述したフィラーの他に、この無機フィラーとして、珪砂(珪粉)、アルミナ、チタン酸カリウム、炭化珪素、珪酸ジルコン、繊維状チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄及び酸化マグネシウムから選択される1種以上が挙げられる。
【0095】
上記水溶性無機塩として、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン及びカルシウムイオンから選択されるカチオンと、SO
42−、CO
32−、HCO
32−及びB
4O
7−から選択されるアニオンとの組み合わせからなる水溶性無機塩の1種以上が例示される。水溶性の観点から、水溶性無機塩として、硫酸マグネシウム(MgSO
4)が好ましい。水溶性の観点から、硫酸マグネシウム(MgSO
4)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、四ホウ酸ナトリウム(Na
2B
4O
7)及び硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)から選択される1種以上も好ましい。耐熱性及び強度の観点から、鋳物砂100重量部に対して、上記無機塩バインダが0.8〜10重量部であり、上記無機フィラーが0.2〜10重量部とされるのが好ましい。他の好ましいガイドコアの材質として、上記水溶性無機塩バインダの水溶液と鋳物砂とを混練して得られた混練物が挙げられる。
【0096】
好ましい水溶性無機塩の一例は、50〜98重量%の硫酸マグネシウムと、2〜50重量%の無機塩Xとを含む。この無機塩Xは、炭酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選択される1種以上である。この水溶性無機塩が用いられた場合、耐熱性及び水溶性が向上しうる。
【0097】
従来の溶接では、ヘッド部品Phを順次溶接していた。例えば、フェース部材f1とソール部材s1と治具で固定して溶接し、溶接体Aを得た。次に、この溶接体Aとホーゼル部材h1とを治具で固定して溶接し、溶接体Bを得た。次に、この溶接体Bとクラウン部材c1とを溶接し、溶接完成品を得た。これらの工程は、手間と労力とを要する。本実施形態では、全ての部材をガイドコアgc1に固定し、これら全てを溶接することも可能である。本実施形態により、ヘッドの製造工程が簡略化されうる。本実施形態では、上記位置決め効果に加えて、製造工程の簡略化が達成されうる。
【0098】
上記実施形態では、全てのヘッド部品Phがガイドコアgc1に当接された。ステップBで全てのヘッド部品Phがガイドコアgc1に当接されなくてもよい。例えば、ガイドコアgc1への当接は、2つのヘッド部品Phのみであってもよい。例えば、以下のステップによってヘッド2が製造されても良い。
(ステップ1)上記ステップBにおいて、ガイドコアgc1にソール部材s1及びフェース部材f1を当接させ、両者が溶接された溶接体Xを得る。
(ステップ2)上記溶接体Xから、ガイドコアgc1が除去される。
(ステップ3)ガイドコアgc1が除去された上記溶接体Xに、ホーゼル部材h1及びクラウン部材c1が溶接される。
【0099】
この場合も、ステップ1において、ソール部材s1とフェース部材f1との間において上記位置決め効果が奏される。またこの場合、ガイドコアgc1の除去(ステップC)が容易となる。一方、位置決め効果をより一層高める観点からは、ステップBにおいて、全てのヘッド部品Phをガイドコアgc1に当接させるのが好ましい。
【実施例】
【0100】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0101】
[実施例]
前述したヘッド2と同じ構造のヘッドを作製した。クラウン部材は、圧延材をプレス加工して得た。フェース部材は、鍛造により製造された。ソール部材は、圧延材をプレス加工して得た。リブ及び重量部材を別途作製し、ソール部材の内面に溶接した。ホーゼル部材は、純チタンをNC加工して得た。
【0102】
図4に示されるガイドコアが作製された。ガイドコアの材料として、鋳物砂とバインダとを用いた。鋳物砂として、ムライト系人工砂を用いた。バインダとして、硫酸マグネシウムを用いた。これら鋳物砂及びバインダを混練した。ムライト系人工砂の配合比は97.5重量%とされ、バインダの配合比が2.5重量%とされた。ガイドコア用金型に、混練された材料を押し込んだ。この金型を150℃で30分間加熱して、水溶性を有するガイドコアを得た。ガイドコア用金型の成形面のデータは、ヘッドの内面のデータと同じとされた。
【0103】
次に、全てのヘッド部品をガイドコアに当接させた。外部治具を用いて、クラウン部材、フェース部材及びソール部材がガイドコアに沿うように固定された。この固定された状態で、溶接がなされた。貯水部を有する超音波洗浄機に水を入れ、この水の中に、溶接後のヘッドを付けた。超音波洗浄機を作動させ、ガイドコアを水によって溶解した。この溶解水をシャフト孔から排出して、実施例のヘッドを得た。
【0104】
[比較例]
実施例と同じ複数のヘッド部品を用いて、実施例と同じヘッドを作製した。フェース部材とソール部材とを治具で固定し、点溶接及び本溶接を行って、部材Aを得た。この部材Aとホーゼル部材とを治具で固定し、点溶接及び本溶接を行って、部材Bを得た。この部材Bとクラウン部材とを治具で固定し、点溶接及び本溶接を行って、比較例のヘッドを得た。
【0105】
5つの上記実施例及び5つの上記比較例が作製された。各ヘッドについて、リアルロフト角、ライ角及びフェース角のそれぞれが測定された。これらの各スペックについて、バラツキが評価された。バラツキとは、最大値と最小値との差である。
【0106】
実施例では、リアルロフト角のバラツキが1.0度であり、ライ角のバラツキが1.0度であり、フェース角のバラツキが2.0度であった。
【0107】
比較例では、リアルロフト角のバラツキが3.0度であり、ライ角のバラツキが3.0度であり、フェース角のバラツキが5.0度であった。
【0108】
このように、実施例は比較例よりも優れている。本発明の優位性は明らかである。