特許第5936455号(P5936455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936455
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】可搬式エンジン作業機
(51)【国際特許分類】
   F02B 63/00 20060101AFI20160609BHJP
   F02B 63/04 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   F02B63/00 B
   F02B63/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-133745(P2012-133745)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256903(P2013-256903A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 克明
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−068604(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3089170(JP,U)
【文献】 特開2009−156119(JP,A)
【文献】 特開2008−202457(JP,A)
【文献】 特開2003−214174(JP,A)
【文献】 特開2010−242717(JP,A)
【文献】 特開2003−254080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 63/00、04
F02B 77/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部に、作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納するとともに、前記ケーシングの天板の端部にロープ掛金具を備えた可搬式エンジン作業機において、前記天板の端部に、底板と、該底板の両側からそれぞれ立ち上がった一対の側板を有し、ケーシング端面側が開口した凹部を形成し、該凹部における一方の側板の開口側上部に、対向する他方の側板に向かって突出し、かつ、上方に向かって傾斜した棒状部材からなるロープ掛金具を固着したことを特徴とする可搬式エンジン作業機。
【請求項2】
ケーシングの内部に、作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納するとともに、前記ケーシングの天板の端部にロープ掛金具を備えた可搬式エンジン作業機において、前記天板の端部に、底板と、該底板の両側からそれぞれ立ち上がった一対の側板を有し、ケーシング端面側が開口した凹部を形成し、該凹部における一方の側板の開口側上部に、対向する他方の側板に向かって突出する板状部材からなるロープ掛金具を固着し、前記板状部材の上面先端部にロープ連結用の突起部を形成するとともに、前記板状部材の下面に先端側が上方に傾斜した傾斜面を形成したことを特徴とする可搬式エンジン作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式エンジン作業機に関し、詳しくは、輸送時にトラックの荷台にロープにて固定するためのロープ掛金具を備えた可搬式エンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングの内部に、発電機やコンプレッサ、油圧ユニット、ポンプなどの作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納した可搬式のエンジン作業機は、エンジン作業機をクレーンで吊り上げる際に用いる吊り上げ用金具をケーシングの天板中央部に設けるとともに、エンジン作業機をロープでトラックの荷台に固定する際に用いるロープ掛け金具をケーシングの天板端部に設けている。また、エンジン作業機の盗難を防止するため、所定の運搬時以外は、吊り上げ用金具及びロープ掛け金具に、ロープなどの吊り上げ具が係合しないようにするための盗難防止構造を設けている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−214174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吊り上げ用金具及びロープ掛け金具の両方に盗難防止構造を設けると、運搬時の作業性が低下することがあるだけでなく、エンジン作業機の製造コストの上昇を招くという問題がある。また、ロープ掛け金具に架け渡した固定用ロープが運搬中の揺れによってケーシングの上部に接触するとケーシングの外面が傷付くことがあった。
【0005】
そこで本発明は、ロープなどの吊り上げ具をロープ掛け金具に係合させることができず、また、運搬中の揺れによってロープ掛け金具に架け渡した固定用ロープがケーシングの上面に接触することを防止できる構造のロープ掛け金具を備えた可搬式エンジン作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の可搬式エンジン作業機における第1の構成は、ケーシングの内部に、作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納するとともに、前記ケーシングの天板の端部にロープ掛金具を備えた可搬式エンジン作業機において、前記天板の端部に、底板と、該底板の両側からそれぞれ立ち上がった一対の側板を有し、ケーシング端面側が開口した凹部を形成し、該凹部における一方の側板の開口側上部に、対向する他方の側板に向かって突出し、かつ、上方に向かって傾斜した棒状部材からなるロープ掛金具を固着したことを特徴としている。
【0007】
本発明の可搬式エンジン作業機における第2の構成は、ケーシングの内部に、作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納するとともに、前記ケーシングの天板の端部にロープ掛金具を備えた可搬式エンジン作業機において、前記天板の端部に、底板と、該底板の両側からそれぞれ立ち上がった一対の側板を有し、ケーシング端面側が開口した凹部を形成し、該凹部における一方の側板の開口側上部に、対向する他方の側板に向かって突出する板状部材からなるロープ掛金具を固着し、前記板状部材の上面先端部にロープ連結用の突起部を形成するとともに、前記板状部材の下面に先端側が上方に傾斜した傾斜面を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の可搬式エンジン作業機の第1の構成によれば、トラックの荷台などに固定する際の下方からの固定用ロープはロープ掛金具に掛けられるが、上方からの吊り上げ具はロープ掛金具に掛けることができない。また、凹部の開口側上部にロープ掛金具を設けているので、運搬中の揺れによってロープ掛け金具に架け渡した固定用ロープがケーシングの上面に接触することを防止できる。
【0010】
本発明の可搬式エンジン作業機の第2の構成によれば、板状部材の上面先端部に設けた突起部に下方からの固定用ロープは掛けられるが、板状部材の下面が上方に傾斜した傾斜面となっているので、上方からの吊り上げ具はロープ掛金具に掛けることができない。また、板状部材の上面に突起部を設けているので、運搬中の揺れによってロープ掛け金具に架け渡したロープがケーシングの上面に接触することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1形態例を示す可搬式エンジン作業機の正面図である。
図2】同じく可搬式エンジン作業機の平面図である。
図3】同じく可搬式エンジン作業機の要部正面図である。
図4】同じく可搬式エンジン作業機の要部平面図である。
図5】同じく輸送時の可搬式エンジン作業機の説明図である。
図6】同じく輸送時の可搬式エンジン作業機の要部説明図である。
図7】本発明の第2形態例を示す可搬式エンジン作業機の要部斜視図である。
図8参考例を示す可搬式エンジン作業機の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図6は、本発明の可搬式エンジン作業機の第1形態例を示している。この可搬式エンジン作業機11は、防音構造を有するケーシング12の内部に、図示しない発電機やコンプレッサ、油圧ユニット、ポンプなどの作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納したもので、ケーシング12の天板12aの幅方向中央部には、ケーシング前後方向にわたる凹溝部13が形成されている。この凹溝部13は、底板13aと該底板13aの両側からそれぞれ立ち上がった一対の側板13b,13cとにより形成され、天板12aの端面側は、ケーシング外方に開口した状態となっている。
【0014】
前記凹溝部13におけるエンジン作業機11の重心位置に対応した部分には、運搬時に可搬式エンジン作業機11をクレーンで吊り上げる際の吊り上げ具を掛けるための吊り上げ用金具14が設けられ、凹溝部13の両開口端には、可搬式エンジン作業機11を固定用ロープ15でトラックの荷台などに固定する際に使用するロープ掛金具16,16がそれぞれ設けられている。
【0015】
なお、両ロープ掛金具16,16は、凹溝部13の両端開口の近傍に点対称の状態で設けられているので、以下の説明では、ケーシング12の正面側に設けられているロープ掛金具についてのみ説明し、背面側に設けられているロープ掛金具についての説明は省略する。
【0016】
ロープ掛金具16は、適当な太さ及び長さを有する棒状部材を直角に折曲して取付部16aとロープ掛け部16bとを形成したもので、該ロープ掛け部16bが前記凹溝部13における一方の側板13bから対向する他方の側板13cに向かって突出し、かつ、上方に向かって傾斜するとともに、先端16c側が僅かに内側に向かって傾斜した状態になるように、前記取付部16aが側板13bの開口側上部に固着されている。このとき、ロープ掛け部16bの先端16cを含むロープ掛金具16は、ケーシング12の上面や側面から突出しない範囲で、凹溝部13の開口端に近い位置で、凹溝部13内のできるだけ上部に位置するように、側板13bへの取付部16aの取付位置及びロープ掛け部16bの傾斜角度がそれぞれ設定される。また、ロープ掛け部16bの先端16cと他方の側板13cとの間には、固定用ロープ15や係合具などが通過可能な隙間が形成されている。
【0017】
このように形成したロープ掛金具16は、図5及び図6に示すように、エンジン作業機11をトラックの荷台17に載置して運搬する際など、荷台17に設けられている止め金具18とロープ掛金具16のロープ掛け部16bとを連結する固定用ロープ15によって荷台17に固定される。固定用ロープ15をロープ掛け部16bに連結する際、ロープ掛け部16bの先端16cと側板13cとの間に隙間を形成しているので、固定用ロープ15の端部に設けられた輪15aや連結具15bとロープ掛け部16bとの連結を容易に行うことができる。
【0018】
また、ロープ掛け部16bが凹溝部13の上部に位置するようにロープ掛金具16を設けているので、ロープ掛け部16bに固定用ロープ15を連結して固定用ロープ15を張った状態では、図6の実線で示すように、凹溝部13の底板13aにおける開口端と固定用ロープ15とが非接触状態になり、トラックでエンジン作業機11を運搬する際に固定用ロープ15やエンジン作業機11が揺れた場合でも、固定用ロープ15とケーシング12とが接触することはなく、ケーシング12の外面が傷付いてエンジン作業機11の外観を損ねたり、固定用ロープ15が傷付いたりすることを防止できる。
【0019】
一方、ロープ掛金具16を利用してエンジン作業機11を吊り上げようとする際には、図6の想像線で示すように、上方からロープ掛け部16bに吊上用ロープ19を掛けても、ロープ掛け部16bが基部から先端に向かって上方に傾斜していることから、吊上用ロープ19を上方に引上げた際に傾斜によってロープ掛け部16bから外れ、ロープ掛金具16を利用してエンジン作業機11を吊り上げることはできず、エンジン作業機11の盗難を防止することができる。
【0020】
図7は、本発明のエンジン作業機におけるロープ掛金具の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示したエンジン作業機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
本形態例に示すロープ掛金具21は、適当な厚さを有する板状部材を所定の形状に形成したものであって、凹溝部13における一方の側板13bの開口側上部に固着される取付基部21aと、該取付基部21aの下半部から対向する他方の側板13cに向かって突出した突出部21bと、該突出部21bの上面先端部から上方に突出したロープ連結用の突起部21cとを有するとともに、前記突出部21bの下面に、先端側が上方に向かって傾斜した傾斜面21dを形成している。また、前記第1形態例と同様に、突起部21cの上端を含むロープ掛金具21は、ケーシング12の上面や側面から突出しない範囲で、凹溝部13の開口端に近い位置で、突起部21cと取付基部21aとの間の凹状部の底面21eが凹溝部13内のできるだけ上部に位置するように設けられ、ロープ掛金具21の先端と他方の側板13cとの間には、固定用ロープ15などが通過可能な隙間が形成されている。
【0022】
このように形成したロープ掛金具21においても、突起部21cに固定用ロープを掛けることにより、前記同様に、固定用ロープとケーシング12との接触を防止した状態でエンジン作業機をトラックの荷台などに容易かつ確実に固定することができる。また、突出部21bの下面に、先端側が上方に向かって傾斜した傾斜面21dを形成しているので、ロープ掛金具21に吊上用ロープなどを掛けても外れてしまい、吊上用ロープなどでエンジン作業機を吊り上げることを防止できる。
【0023】
図8は、参考例を示している。本形態例に示すロープ掛金具22は、第2形態例で示したロープ掛金具21と同様に、適当な厚さを有する板状部材を所定の形状に形成したものであって、凹溝部13における底板13aの上面幅方向中央部に、板面を側板13b,13cに平行な方向に向けた状態で固着される取付基部22aと、該取付基部22aの上面開口側端部から上方に突出したロープ連結用の突起部22bとを有している。このロープ掛金具22も、ケーシング12の上面や側面から突出しない範囲で、凹溝部13の開口端に近い位置で、突起部22bが突出する取付基部22aの上面が凹溝部13内のできるだけ上部に位置するように設けられている。
【0024】
このように形成したロープ掛金具22においても、突起部22bに固定用ロープを掛けることにより、前記第1,第2形態例と同様に、固定用ロープとケーシング12との接触を防止した状態でエンジン作業機をトラックの荷台などに容易かつ確実に固定することができる。また、本形態例のロープ掛金具22は、取付基部22aの下面全体を底板13aの上面に固着しているため、ロープ掛金具22に吊上用ロープなどを掛けることができず、吊上用ロープなどでエンジン作業機を吊り上げることはできない。
【0025】
参考例に示すロープ掛金具22は、板状部材を側板13b,13cに平行に配置することによって固定用ロープに対する剛性を高めることができるが、板状部材の板面を側板13b,13cに直交する方向に向けて配置することも可能であり、複数の板状部材を側板13b,13cに平行に配置することもできる。
【0026】
なお、各形態例では、ロープ掛け金具を設ける凹部を、吊り上げ用金具を設けた凹溝部に連続して形成しているが、凹溝部とは別に、ケーシング上面及び側面が開口した形状の凹部を天板の端縁部に形成してロープ掛け金具を設けるようにしてもよく、天板の複数箇所に凹部及びロープ掛け金具を設けることもできる。なお、吊り金具は、周知の構造のものを用いることができるので、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0027】
11…可搬式エンジン作業機、12…ケーシング、12a…天板、13…凹溝部、13a…底板、13b,13c…側板、14…吊り上げ用金具、15…固定用ロープ、15a…輪、15b…連結具、16…ロープ掛金具、16a…取付部、16b…ロープ掛け部、16c…先端、17…荷台、18…止め金具、19…吊上用ロープ、21…ロープ掛金具、21a…取付基部、21b…突出部、21c…突起部、21d…傾斜面、21e…底面、22…ロープ掛金具、22a…取付基部、22b…突起部
図1
図2
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