(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フォトダイオード、及び該フォトダイオードに一端が接続されたトランジスタを各々含むM×N個(Mは2以上の整数、Nは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成る受光部と、
各列毎に配設され、対応する列の前記画素に含まれる前記トランジスタの他端に接続されたN本の読出用配線と、
前記N本の読出用配線のそれぞれを経て入力される電荷の量に応じた電圧値を生成するN個の積分回路を含み、該N個の積分回路から出力された電圧値を順次に出力する信号出力部と、
前記N本の読出用配線に含まれるK本(Kは1以上N以下の整数)の読出用配線の電位を、対応するK個の前記積分回路の入力電位とは別の電位に切り替える電位変更手段と、
前記信号出力部における電圧値の出力動作、及び前記電位変更手段における電位の切り替え動作を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記M×N個の画素において発生した電荷の量に応じた電圧値が前記信号出力部から順次に出力される読み出し期間が経過した後、次の読み出し期間が開始されるまでの間に含まれる所定の期間において、前記トランジスタを非接続状態として前記フォトダイオードに電荷を蓄積させるとともに、前記K本の読出用配線の電位を前記別の電位に切り替えることを特徴とする、固体撮像装置。
前記電位変更手段は、前記K本の読出用配線と前記K個の積分回路との間に設けられたK個のスイッチを含み、該K個のスイッチが、前記K本の読出用配線それぞれを、前記別の電位を供給するための配線及び前記K個の積分回路の何れか一方に選択的に接続することを特徴とする、請求項1または2に記載の固体撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明による固体撮像装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
本実施形態に係る固体撮像装置は、例えば医療用X線撮像システムに用いられ、特に歯科医療におけるパノラマ撮影、セファロ撮影、CT撮影といった撮像モードによって、被検者の顎部のX線像を撮像するシステムに用いられる。このため、本実施形態の固体撮像装置は、大面積のガラス基板上に多結晶シリコンが堆積されて成る薄膜トランジスタや、アモルファスシリコンが堆積されて成るフォトダイオードを備えており、単結晶シリコンウェハから作製される従来の固体撮像装置と比較して、格段に広い受光面積を有する。
図1〜
図3は、本実施形態における固体撮像装置10の構成を示す図である。
図1は固体撮像装置10を示す平面図であり、
図2は固体撮像装置10の一部を拡大した平面図である。さらに、
図3は、
図2のI−I線に沿った断面を示す側断面図である。なお、
図1〜
図3には、理解を容易にするためXYZ直交座標系を併せて示している。
【0016】
図1に示されるように、固体撮像装置10は、ガラス基板12と、ガラス基板12の主面上に作製された受光部20及び垂直シフトレジスタ部30とを備えている。垂直シフトレジスタ部30は、受光部20の側辺に沿って配置されている。また、固体撮像装置10は、ガラス基板12の外部に配置された信号出力部40を更に備えている。信号出力部40は、例えば受光部20と電気的に接続された複数のC−MOS型ICチップ41によって構成される。信号出力部40は、受光部20のN列それぞれに設けられたN個の積分回路を含んでおり、これらN個の積分回路は、第1列ないし第N列の画素から出力される電荷の量に応じた電圧値を生成する。信号出力部40は、各積分回路から出力された電圧値を保持し、その保持した電圧値を逐次的に出力する。
【0017】
なお、受光部20及び垂直シフトレジスタ部30は、それぞれ別個のガラス基板12上に設けられてもよい。また、信号出力部40は、受光部20及び垂直シフトレジスタ部30と並んでガラス基板12上に設けられてもよい。
【0018】
受光部20は、M×N個の画素がM行N列に2次元配列されることにより構成されている。
図2に示される画素P
m,nは、第m行第n列に位置する画素である。ここで、mは1以上M以下の整数であり、nは1以上N以下の整数である。M,Nは2以上の整数である。なお、
図2において、列方向はX軸方向と一致し、行方向はY軸方向と一致する。受光部20に含まれる複数の画素P
1,1〜P
M,Nそれぞれは、読出用スイッチとしてのトランジスタ21、及びフォトダイオード22を備えている。トランジスタ21の一方の電流端子は、フォトダイオード22に接続されている。また、トランジスタ21の他方の電流端子は、対応する読出用配線(例えば画素P
m,nの場合、第n列読出用配線R
n)に接続されている。トランジスタ21の制御端子は、対応する行選択用配線(例えば画素P
m,nの場合、第m行選択用配線Q
m)に接続されている。
【0019】
図3に示されるように、ガラス基板12上の全面には、多結晶シリコン膜14が設けられている。トランジスタ21、フォトダイオード22、および第n列読出用配線R
nは、この多結晶シリコン膜14の表面に形成されている。トランジスタ21、フォトダイオード22、及び第n列読出用配線R
nは絶縁層16によって覆われており、絶縁層16の上にはシンチレータ18がガラス基板12の全面を覆うように設けられている。シンチレータ18は、入射したX線に応じてシンチレーション光を発生してX線像を光像へと変換し、この光像を受光部20へ出力する。第n列読出用配線R
nは、金属からなる。
【0020】
フォトダイオード22は、入射光強度に応じた量の電荷を発生し、その発生した電荷を接合容量部に蓄積する。フォトダイオード22は、n型半導体層22a、i型半導体層22b、及びp型半導体層22cを有するPIN型フォトダイオードである。n型半導体層22aは、n型多結晶シリコンからなる半導体層である。i型半導体層22bは、i型(アンドープ)アモルファスシリコンからなる半導体層でありn型半導体層22a上に設けられている。このように、i型半導体層22bがアモルファスシリコンによって形成されることにより、i型半導体層22bを厚くすることができ、フォトダイオード22の光電変換効率を高めて固体撮像装置10の感度を向上させることができる。p型半導体層22cは、p型アモルファスシリコンからなる半導体層でありi型半導体層22b上に設けられている。
【0021】
トランジスタ21は、好適には電界効果トランジスタ(FET)によって構成されるが、バイポーラトランジスタによって構成されてもよい。トランジスタ21がFETである場合、以下の説明において制御端子はゲートを、電流端子はソースまたはドレインをそれぞれ意味する。
図3に示されるトランジスタ21はFETの構成を有しており、多結晶シリコンからなる領域を含む。一例としては、トランジスタ21は、それぞれ多結晶シリコンからなるチャネル領域21a、ソース領域21b、及びドレイン領域21cを有する。ソース領域21bは、チャネル領域21aの一方の側面に沿って形成されている。ドレイン領域21cは、チャネル領域21aの他方の側面に沿って形成されている。また、チャネル領域21a上にはゲート電極21eが設けられており、ゲート電極21eとチャネル領域21aとの間にはゲート絶縁膜21dが介在している。
【0022】
トランジスタ21のチャネル領域21a、ソース領域21b、及びドレイン領域21cを構成する多結晶シリコンは、低温多結晶シリコン(Low Temperature Polycrystalline Silicon;LTPS)であると尚よい。低温多結晶シリコンは100〜600℃といった比較的低温のプロセス温度下において堆積される多結晶シリコンである。このような低温下においては、例えば無アルカリガラスといったガラス基板12を支持基板として利用可能であることから、上記各領域21a、21b及び21cの構成材料を低温多結晶シリコンとすることによって、単結晶シリコンウェハと較べて広い面積を有するガラス基板12を支持基板として用い、そのガラス基板12上に大面積の受光部20を作製することが可能となる。
【0023】
一実施例では、ガラス基板12の材料として、例えば0.3mm〜1.2mmといった厚さを有する板状の(サブストレート用の)無アルカリガラスが用いられる。無アルカリガラスは、アルカリ分を殆ど含まず、膨張率が低く且つ耐熱性が高く、安定した特性を有している。また、低温多結晶シリコンにおける電子移動度は10〜600cm
2/Vsであり、アモルファスシリコンにおける電子移動度(0.3〜1.0cm
2/Vs)より大きいので、トランジスタ21の領域21a、21b及び21cを低温多結晶シリコンによって形成することにより、トランジスタ21のオン抵抗を低減することが可能となる。
【0024】
図3に示されるような画素P
m,nは、例えば次のような工程によって作製される。まず、ガラス基板12上にアモルファスシリコン膜を形成する。成膜方法としては、例えばプラズマCVDが好適である。次に、レーザビーム(例えばエキシマレーザビーム)をアモルファスシリコン膜の全体に順次照射することにより、アモルファスシリコン膜の全面を多結晶シリコン化する(エキシマレーザアニール)。こうして、多結晶シリコン膜14が形成される。続いて、多結晶シリコン膜14の一部の領域上に、ゲート絶縁膜21dとしてのSiO
2膜を形成したのち、その上にゲート電極21eを形成する。続いて、ソース領域21b及びドレイン領域21cとなるべき各領域にイオンを注入する。その後、多結晶シリコン膜14のパターニングを実施し、露光およびエッチングを繰り返し実施して、他の電極やコンタクトホール等を形成する。また、多結晶シリコン膜14における画素P
m,nとなるべき領域にイオンを注入してn型としたのち、その上に、i型およびp型のアモルファスシリコン層(すなわちi型半導体層22b及びp型半導体層22c)を順に積層してPIN型フォトダイオード22を形成する。その後、絶縁層16となるパシベーション膜を形成する。
【0025】
続いて、固体撮像装置10の回路構成について詳細に説明する。
図4は、固体撮像装置10の内部構成を示す図である。前述したように、受光部20は、M×N個の画素P
1,1〜P
M,NがM行N列に2次元配列されて成る。第m行のN個の画素P
m,1〜P
m,Nは、第m行選択用配線Q
mを介して垂直シフトレジスタ部30に接続されている。なお、
図4において、垂直シフトレジスタ部30は制御部6に含まれている。
【0026】
信号出力部40は、各列毎に設けられたN個の積分回路42及びN個の保持回路44を有している。積分回路42及び保持回路44は、各列毎に互いに直列に接続されている。N個の積分回路42は互いに共通の構成を有している。また、N個の保持回路44は互いに共通の構成を有している。
【0027】
また、本実施形態では、N個の電位変更用スイッチ50が各列毎に設けられている。各電位変更用スイッチ50は、本実施形態における電位変更手段を構成し、読出用配線R
1〜R
Nのうち当該電位変更用スイッチ50に対応する読出用配線の電位を、積分回路42の入力電位とは別の電位Vdrに切り替える。電位Vdrは、例えば蓄積期間における各画素P
1,1〜P
M,Nのフォトダイオード22の電極電位と同等(同一または近い値)の定電位に設定される。
【0028】
N個の電位変更用スイッチ50のそれぞれは、読出用配線R
1〜R
Nのうち当該列に設けられた読出用配線と、当該列の積分回路42との間に設けられている。各電位変更用スイッチ50は、読出用配線R
1〜R
Nを、電位Vdrを供給するための配線52、及び当該列の積分回路42の何れか一方に選択的に接続する。
【0029】
一実施例では、第n列読出用配線R
nは当該列の電位変更用スイッチ50の入力端に接続されている。電位変更用スイッチ50は2つの出力端を有しており、一方の出力端は当該列の積分回路42に接続されており、他方の出力端は配線52に接続されている。電位変更用スイッチ50の接続状態を制御するために各電位変更用スイッチ50が有する制御端子は、N個の電位変更用スイッチ50に対して共通に設けられた一本の電位変更配線54を介して制御部6に接続されている。制御部6は、電位変更用スイッチ50の切替動作を指示するための電位変更制御信号DLSを、電位変更配線54を介してN個の電位変更用スイッチ50それぞれに提供する。
【0030】
なお、このようなN個の電位変更用スイッチ50は、ガラス基板12上において受光部20と並んで形成されてもよく、或いは、ガラス基板12とは別に用意された単結晶シリコン基板上に形成されてもよい。N個の電位変更用スイッチ50を単結晶シリコン基板上に形成することにより、単結晶シリコンからなるチャネル領域、ドレイン領域、及びソース領域によって高速な動作を実現することができる。また、多結晶シリコンやアモルファスシリコンのプロセスルールに縛られることなく、設計の自由度や集積度を高めることが可能となる。
【0031】
N個の積分回路42それぞれは、電位変更用スイッチ50に接続された入力端を有し、読出用配線R
1〜R
Nから電位変更用スイッチ50を介して入力端に入力された電荷を蓄積し、その蓄積電荷量に応じた電圧値を出力端からN個の保持回路44それぞれへ出力する。N個の積分回路42それぞれは、N個の積分回路42に対して共通に設けられたリセット用配線46を介して制御部6に接続されている。N個の保持回路44それぞれは、積分回路42の出力端に接続された入力端を有し、この入力端に入力される電圧値を保持し、その保持した電圧値を出力端から電圧出力用配線48へ出力する。N個の保持回路44それぞれは、N個の保持回路44に対して共通に設けられた保持用配線45を介して制御部6に接続されている。また、N個の保持回路44それぞれは、第1列選択用配線U
1〜第N列選択用配線U
Nそれぞれを介して制御部6の水平シフトレジスタ部61に接続されている。
【0032】
制御部6の垂直シフトレジスタ部30は、第m行選択制御信号VS
mを、第m行選択用配線Q
mを介して第m行のN個の画素P
m,1〜P
m,Nそれぞれに提供する。垂直シフトレジスタ部30において、行選択制御信号VS
1〜VS
Mは順次に有意値とされる。また、制御部6の水平シフトレジスタ部61は、列選択制御信号HS
1〜HS
Nを、列選択用配線U
1〜U
Nを介してN個の保持回路44それぞれに提供する。列選択制御信号HS
1〜HS
Nも順次に有意値とされる。また、制御部6は、リセット制御信号REを、リセット用配線46を介してN個の積分回路42それぞれに提供するとともに、保持制御信号Hdを、保持用配線45を介してN個の保持回路44それぞれに提供する。
【0033】
図5は、固体撮像装置10の画素P
m,n、積分回路42、及び保持回路44それぞれの回路構成の一例を示す図である。ここでは、M×N個の画素P
1,1〜P
M,Nを代表して画素P
m,nの回路図を示している。
【0034】
図5に示されるように、画素P
m,nのフォトダイオード22のアノード端子は接地され、カソード端子は、トランジスタ21を介して読出用配線R
nに接続されている。画素P
m,nのトランジスタ21には、垂直シフトレジスタ部30から第m行選択用配線Q
mを介して第m行選択制御信号VS
mが提供される。第m行選択制御信号VS
mは、第m行のN個の画素P
m,1〜P
m,Nそれぞれに含まれるトランジスタ21の開閉動作を指示する。例えば、第m行選択制御信号VS
mが非有意値(例えばローレベル)であるときに、トランジスタ21が非導通状態となる。このとき、フォトダイオード22において発生した電荷は、列読出用配線R
nへ出力されることなくフォトダイオード22の接合容量部に蓄積される。一方、第m行選択制御信号VS
mが有意値(例えばハイレベル)であるときに、トランジスタ21が接続状態となる。このとき、フォトダイオード22の接合容量部に蓄積されていた電荷が、トランジスタ21を経て読出用配線R
nへ出力される。読出用配線R
nは、電位変更用スイッチ50を介して積分回路42に接続され、この電荷は積分回路42へ送られる。
【0035】
積分回路42は、アンプ42a、容量素子42b、及び放電用スイッチ42cを含む。容量素子42b及び放電用スイッチ42cは、互いに並列に接続され、且つアンプ42aの入力端子と出力端子との間に接続されている。アンプ42aの入力端子は読出用配線R
nに接続されている。放電用スイッチ42cには、制御部6からリセット用配線46を介してリセット制御信号REが提供される。
【0036】
リセット制御信号REは、N個の積分回路42それぞれの放電用スイッチ42cの開閉動作を指示する。例えば、リセット制御信号REが非有意値(例えばハイレベル)であるときに、放電用スイッチ42cが閉じて、容量素子42bが放電され、積分回路42の出力電圧値が初期化される。また、リセット制御信号REが有意値(例えばローレベル)であるときに、放電用スイッチ42cが開いて、積分回路42に入力された電荷が容量素子42bに蓄積され、その蓄積電荷量に応じた電圧値が積分回路42から出力される。
【0037】
保持回路44は、入力用スイッチ44a、出力用スイッチ44b及び容量素子44cを含む。容量素子44cの一端は接地されている。容量素子44cの他端は、入力用スイッチ44aを介して積分回路42の出力端に接続され、且つ、出力用スイッチ44bを介して電圧出力用配線48と接続されている。入力用スイッチ44aには、制御部6から保持用配線45を介して保持制御信号Hdが与えられる。保持制御信号Hdは、N個の保持回路44それぞれの入力用スイッチ44aの開閉動作を指示する。保持回路44の出力用スイッチ44bには、制御部6から第n列選択用配線U
nを通った第n列選択制御信号HS
nが与えられる。選択制御信号HS
nは、保持回路44の出力用スイッチ44bの開閉動作を指示する。
【0038】
例えば、保持制御信号Hdがハイレベルからローレベルに転じると、入力用スイッチ44aが閉状態から開状態に転じて、そのときに保持回路44に入力されている電圧値が容量素子44cに保持される。また、第n列選択制御信号HS
nがローレベルからハイレベルに転じると、出力用スイッチ44bが閉じて、容量素子44cに保持されている電圧値が電圧出力用配線48へ出力される。
【0039】
続いて、比較例として電位変更手段(電位変更用スイッチ50)を備えない固体撮像装置の動作とその問題点を説明し、その後、本実施形態に係る固体撮像装置10の動作とその効果について説明する。
【0040】
図6は、比較例に係る固体撮像装置の動作を説明するタイミングチャートである。
図6は、上から順に、(a)リセット制御信号RE、(b)第1行選択制御信号VS
1、(c)第2行選択制御信号VS
2、(d)第M行選択制御信号VS
M、(e)保持制御信号Hd、(f)第1列選択制御信号HS
1〜第N列選択制御信号HS
N、(g)第1行の画素P
1,1〜P
1,NのノードA及びノードB(
図5を参照)の電位、(h)第2行の画素P
2,1〜P
2,NのノードA及びノードBの電位、(i)第M行の画素P
M,1〜P
M,NのノードA及びノードBの電位をそれぞれ示している。なお、
図6(g)〜(i)における破線は
図5におけるノードAの電位を示しており、実線はノードB(すなわちフォトダイオード22の電極電位)を示している。
【0041】
この比較例では、時刻t
10から時刻t
11までの期間、制御部6がリセット制御信号REをハイレベルとする。これにより、N個の積分回路42それぞれにおいて、放電用スイッチ42cが閉状態となり、容量素子42bが放電される。
【0043】
時刻t
11より後の時刻t
12から時刻t
13までの期間、制御部6が第1行選択制御信号VS
1をハイレベルとする。これにより、第1行の画素P
1,1〜P
1,Nにおいてトランジスタ21が接続状態となり、画素P
1,1〜P
1,Nそれぞれのフォトダイオード22において蓄積された電荷が読出用配線R
1〜R
Nを通って積分回路42に出力され、容量素子42bに蓄積される。積分回路42からは、容量素子42bに蓄積された電荷量に応じた大きさの電圧値が出力される。なお、時刻t
13ののち、第1行の画素P
1,1〜P
1,Nそれぞれのトランジスタ21は非接続状態とされる。
【0044】
そして、時刻t
13より後の時刻t
14から時刻t
15までの期間、制御部6が保持制御信号Hdをハイレベルとし、これにより、N個の保持回路44のそれぞれにおいて入力用スイッチ44aが接続状態となり、積分回路42から出力された電圧値が容量素子44cによって保持される。
【0045】
続いて、時刻t
15より後の時刻t
16から時刻t
17までの期間、制御部6が第1列選択制御信号HS
1〜第N列選択制御信号HS
Nを順次ハイレベルとする。これにより、N個の保持回路44の出力用スイッチ44bが順次閉状態となり、容量素子44cに保持されていた電圧値が逐次的に電圧出力用配線48へ出力される。なお、本実施形態では、時刻t
16から時刻t
17より後の時刻t
18までの間、制御部6がリセット制御信号REをハイレベルとし、積分回路42の容量素子42bが放電される。
【0046】
続いて、時刻t
18より後の時刻t
19から時刻t
20までの期間、制御部6が第2行選択制御信号VS
2をハイレベルとする。これにより、第2行の画素P
2,1〜P
2,Nにおいてトランジスタ21が接続状態となり、画素P
2,1〜P
2,Nそれぞれのフォトダイオード22において蓄積された電荷が読出用配線R
1〜R
Nを通って積分回路42に出力され、容量素子42bに蓄積される。以降、第1行の場合と同様の動作によって、容量素子42bに蓄積された電荷量に応じた大きさの電圧値がN個の保持回路44から逐次的に電圧出力用配線48へ出力される。そして、第3行ないし第M行の画素に蓄積された電荷についても、第1行と同様の動作によって電圧値に変換され、逐次的に電圧出力用配線48へ出力される。こうして、受光部20からの1フレーム分の画像データの読み出しが完了する。
【0048】
上記動作の後、固体撮像装置は、所定時間にわたって動作を停止し、各画素P
1,1〜P
M,Nのフォトダイオード22に対し十分な量の光を入射させて電荷を蓄積させる。この蓄積期間の長さは任意に設定されるが、例えば0秒以上10秒以下である。蓄積期間ののち、固体撮像装置は、上述した読み出し動作を再び繰り返す。なお、上述した読み出し方式はいわゆるローリングシャッター方式であるため、各フォトダイオード22における厳密な電荷蓄積時間は、当該画素P
1,1〜P
M,Nのトランジスタ21が非接続状態となった瞬間から始まり、次の読み出し期間において当該画素P
1,1〜P
M,Nのトランジスタ21が再び接続状態となるまでの時間(すなわちフレームレートの逆数)となる。
【0049】
ここで、上述した固体撮像装置が有する問題点を説明する。
図7は、この問題点を説明するための図であり、一つの画素P
m,nのトランジスタ21及びフォトダイオード22と、積分回路42と、第n列読出用配線R
nと、第m行選択用配線Q
mとが示されている。
【0050】
図7に示されるように、第n列読出用配線R
n上のノードAは積分回路42のアンプ42aの入力端子に接続されており、ノードAの電位は常に一定(アンプ固有の入力電位)となる(
図6(g)〜(i)の破線)。一方、フォトダイオード22の電極上のノードBは、トランジスタ21が接続状態になるとノードAと短絡するので、ノードAと同電位となる(
図6(g)〜(i)の実線、例えば時刻t
12〜t
13)。このとき、フォトダイオード22に蓄積されていた電荷が第n列読出用配線R
nを介して積分回路42へ読み出され、フォトダイオード22はリセットされる。また、このとき、トランジスタ21の制御端子と各電流端子との間に存在する寄生容量PCによって、制御端子と各電流端子との間に電荷が蓄積される。
【0051】
その後、トランジスタ21を非接続状態とするために、トランジスタ21の制御端子に印加される電圧が低下する。これにより、制御端子に印加される電圧の低下幅(オン電圧とオフ電圧との差)に応じた量の電荷ΔQがフォトダイオード22へ流れ込む。そして、電荷ΔQの電荷量に応じた電位差がフォトダイオード22の両端に生じるので、ノードBの電位はその電位差の分だけ低下することとなる。なお、ノードBの電位変動ΔVbは、フォトダイオード22の容量Cpd、制御端子のオン電圧とオフ電圧との差ΔVg、及びトランジスタ21の寄生容量PCを用いて以下の式(1)のように表される。
ΔVb=ΔQ/Cpd=ΔVg・PC/Cpd ・・・(1)
【0052】
特に、アモルファスシリコンまたは低温多結晶シリコンからなる領域を含むトランジスタにおいては、PC及びΔVgが単結晶シリコンからなるトランジスタと比較して大きいので、ノードBにおける電位変動ΔVbは顕著に大きくなる。また、アモルファスシリコンまたは低温多結晶シリコンからなる領域を含むトランジスタのオフ抵抗は、単結晶シリコンからなるトランジスタのオフ抵抗より小さいので、電流端子間のリークの大きさが無視できない大きさとなる。先に述べたノードBの電位変動ΔVbによってトランジスタの電流端子間には電位差が生じているので、トランジスタ21のリークにより、時間の経過とともにノードBの電位はノードAの電位に近づく(上昇する)。なお、
図6(g)〜(i)の実線はこのようなノードBの電位の変化を示しており、フォトダイオード22における入射光による電荷の蓄積は考慮していない。すなわち、
図6(g)〜(i)の実線は、フォトダイオード22のオフセット成分を表している。
【0053】
このように、トランジスタ21の寄生容量の大きさやオフ抵抗が有限であること起因して、フォトダイオード22のオフセット成分(ノードBの電位)が時間的に変動するという問題が生じる。このようにフォトダイオード22のオフセット成分が時間的に変動すると、フォトダイオード22から出力される電荷量が蓄積期間の設定値の長短によって変動してしまうので、各画素P
1,1〜P
M,Nにおける入射光の検出精度を低下させる要因となる。
【0054】
このような問題を解決するために、本実施形態の固体撮像装置10は、電位変更手段(電位変更用スイッチ50)を備えている。
図8は、本実施形態に係る固体撮像装置10の動作を説明するタイミングチャートであって、上から順に、(a)リセット制御信号RE、(b)第1行選択制御信号VS
1、(c)第2行選択制御信号VS
2、(d)第M行選択制御信号VS
M、(e)保持制御信号Hd、(f)第1列選択制御信号HS
1〜第N列選択制御信号HS
N、(g)電位変更制御信号DLS、(h)第1行の画素P
1,1〜P
1,NのノードA及びノードBの電位、(i)第2行の画素P
2,1〜P
2,NのノードA及びノードBの電位、(j)第M行の画素P
M,1〜P
M,NのノードA及びノードBの電位をそれぞれ示している。
【0055】
図6及び
図8に示した各チャートで異なる点は、電位変更制御信号DLSに関するチャートの有無、およびフォトダイオード22の電極電位の波形である。本実施形態の固体撮像装置10では、蓄積期間に含まれる時刻t
21からt
22までの期間、電位変更用スイッチ50の接続状態が切り替わる。これにより、ノードAの電位が電位Vdrと等しくなる。この電位Vdrは、蓄積期間における各画素P
1,1〜P
M,Nのフォトダイオード22の電極電位と同等の定電位(すなわち、上記電位変動ΔVbを考慮した電位)に設定されているので、時刻t
21からt
22までの期間、トランジスタ21の電流端子間に生じる電位差が小さく抑えられる。その結果、トランジスタ21の電流端子間のリークが抑制され、フォトダイオード22におけるオフセット成分の時間的な変動を低減することができる。従って、この固体撮像装置10によれば、フォトダイオード22から出力される電荷量を蓄積期間の長さによらず安定させることができ、各画素P
1,1〜P
M,Nにおける入射光の検出精度を向上させることができる。
【0056】
本実施形態の固体撮像装置10によるこのような効果は、読み出し期間と比べて蓄積期間が十分に長いときに顕著となる。
図6において、蓄積期間が長いほどフォトダイオード22の電極電位の変動が大きくなるからである。
【0057】
また、本実施形態においては、トランジスタ21のチャネル領域21a、ソース領域21b、及びドレイン領域21cが、多結晶シリコンからなる。近年、例えば医療用途(歯科のX線撮影など)に用いられる2次元フラットパネルイメージセンサといった固体撮像素子には、より広い受光面が求められている。しかし、従前の固体撮像素子のように単結晶シリコンウェハ上に受光部を作製したのでは、最大のものでも直径12インチという単結晶シリコンウェハの大きさに起因して、固体撮像素子の受光面の広さが制限されてしまう。これに対し、例えばガラス基板といった絶縁基板上に多結晶シリコンを成膜し、この多結晶シリコンの表面にフォトダイオードや他のトランジスタ等の電子部品を形成することにより、単結晶シリコンウェハを用いて形成される従来の固体撮像素子と比較して受光面を格段に広くすることが可能となる。
【0058】
また、トランジスタ21のこれらの領域21a〜21cが、多結晶シリコンからなる場合、単結晶シリコンからなるトランジスタと比較して、制御端子と電流端子との間の寄生容量が大きくなってしまう。しかしながら、本実施形態の固体撮像装置10によれば、上述した優れた効果によって、寄生容量の増大による影響を効果的に抑制することができる。
【0059】
なお、本実施形態において、トランジスタ21のチャネル領域21a、ソース領域21b、及びドレイン領域21cは、アモルファスシリコンからなってもよく、多結晶シリコン及びアモルファスシリコンの双方からなってもよい。この場合においても、上述した本実施形態の固体撮像装置10による効果を好適に得ることができる。
【0060】
但し、フレームレートが速い場合、アモルファスシリコンからなるトランジスタ21では、非接続状態とした際に過渡的に電荷がトラップされてしまうという問題がある(いわゆるメモリ効果)。アモルファスシリコンは非晶質であるため、FETのチャネルに電荷をトラップする準位の密度が高くなるからである。これに対し、多結晶シリコン(特に、低温多結晶シリコン)はトラップ準位の密度が低いので、トランジスタ21を多結晶シリコンによって構成することにより、このようなメモリ効果の発生を抑えることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、電位変更手段が、N本の読出用配線R
1〜R
NとN個の積分回路42との間に設けられたN個の電位変更用スイッチ50を含み、該N個の電位変更用スイッチ50が、N本の読出用配線R
1〜R
Nそれぞれを、別の電位Vdrを供給するための配線52及びN個の積分回路42の何れか一方に選択的に接続する。電位変更手段がこのような構成を有することによって、読出用配線R
1〜R
Nの電位を、積分回路42の入力電位とは別の電位Vdrに好適に切り替えることができる。
【0063】
図9及び
図10は、上記実施形態に係る固体撮像装置10の第1変形例を示す図である。
図9は、本変形例における固体撮像装置10Aの内部構成を示す図である。
図10は、この固体撮像装置10Aにおける画素P
m,n、積分回路42A、及び保持回路44とそれらの周辺回路の構成を示している。
【0064】
本変形例に係る固体撮像装置10Aと上記実施形態との相違点は、電位変更手段及び積分回路の構成である。本変形例に係る固体撮像装置10Aは、電位変更手段として、
図4に示されたN個の電位変更用スイッチ50に代えて、スイッチ56及び配線58を有する。スイッチ56は、入力端56a(第1の入力端)、入力端56b(第2の入力端)、及び出力端56cを有しており、入力端56a及び56bの何れかと出力端56cとを相互に選択的に接続する。入力端56a及び56bの何れを出力端56cに接続するかの選択は、制御部6から提供される電位変更制御信号DLSによって行われる。具体的には、スイッチ56の接続状態を制御するためにスイッチ56が有する制御端子は、スイッチ56に接続された電位変更配線60を介して制御部6に接続されている。制御部6は、スイッチ56の切替動作を指示するための電位変更制御信号DLSを、電位変更配線60を介してスイッチ56に提供する。
【0065】
また、
図10に示されるように、本変形例の積分回路42Aは、
図5に示されたアンプ42aに代えて、差動アンプ(差動増幅器)42dを有する。差動アンプ42dの二つの入力端のうち一方は、当該列の読出用配線R
1〜R
Nが接続されている。スイッチ56の出力端56cは、差動アンプ42dの二つの入力端のうち、読出用配線R
1〜R
Nが接続された入力端とは異なる入力端に配線58を介して接続されている。スイッチ56の一方の入力端56aには、フォトダイオード22の電荷を読み出す際にフォトダイオード22をリセットするための電位Vdr1が印加される。スイッチ56の他方の入力端56bには、電位Vdr1とは別の電位Vdr2が印加される。電位Vdr2は、上記実施形態における電位Vdrに相当し、例えば蓄積期間における各画素P
1,1〜P
M,Nのフォトダイオード22の電極電位と同等(同一または近い値)の定電位に設定される。
【0066】
このように、本変形例においては電位変更手段がスイッチ56及び配線58によって構成されており、差動アンプ42dの他方の入力端に入力される電位(リファレンス電位)を切り替えることによって、読出用配線R
1〜R
Nの電位を、積分回路42Aの一方の入力端の電位とは別の電位Vdr2に切り替える。電位変更手段はこのような構成を有してもよく、本変形例の固体撮像装置10Aは、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
図11は、上記実施形態に係る固体撮像装置10の第2変形例として、固体撮像装置の動作を説明するタイミングチャートである。
図11は、上から順に、(a)リセット制御信号RE、(b)第1行選択制御信号VS
1、(c)第2行選択制御信号VS
2、(d)第M行選択制御信号VS
M、(e)保持制御信号Hd、(f)第1列選択制御信号HS
1〜第N列選択制御信号HS
N、(g)電位変更制御信号DLS、(h)第1行の画素P
1,1〜P
1,NのノードA及びノードBの電位、(i)第2行の画素P
2,1〜P
2,NのノードA及びノードBの電位、(j)第M行の画素P
M,1〜P
M,NのノードA及びノードBの電位をそれぞれ示している。
【0069】
図8に示された上記実施形態に係るタイミングチャートと、
図11に示された本変形例に係るタイミングチャートとで異なる点は、電位変更制御信号DLSがオン状態となるタイミング、及びフォトダイオード22の電極電位の波形である。本変形例においては、行選択制御信号VS
1〜VS
Mがハイレベルの期間に電位変更制御信号DLSをローレベルとし、それ以外の期間では変更制御信号DLSをハイレベルとする制御を行う。本変形例の固体撮像装置では、蓄積期間に含まれる時刻t
21からt
22までの期間に加えて、保持制御信号Hdがハイレベルとなる時刻t
14からリセット制御信号REがローレベルとなる時刻t
18までの間(すなわち、制御部6が保持制御信号Hdをハイレベルとする時刻t
14から時刻t
15までの期間、及び容量素子44cに保持されていた電圧値が逐次的に電圧出力用配線48へ出力される時刻t
16から時刻t
17までの期間を含み、且つ、制御部6が行選択制御信号VS
1〜VS
Mのいずれかをハイレベルとする期間を含まない期間)、電位変更用スイッチ50(または
図10に示されたスイッチ56)の接続状態が切り替わる。これにより、ノードAの電位が電位Vdr(またはVdr2)と等しくなる。これにより、時刻t
14から時刻t
18までの期間においてもトランジスタ21の電流端子間のリークが抑制され、フォトダイオード22におけるオフセット成分の時間的な変動を更に低減することができる。従って、この変形例によれば、各画素P
1,1〜P
M,Nにおける入射光の検出精度を更に向上させることができる。
【0071】
図12は、上記実施形態に係る固体撮像装置10の第3変形例として、固体撮像装置の動作を説明するタイミングチャートである。
図12は、上から順に、(a)リセット制御信号RE、(b)第1行選択制御信号VS
1、(c)第2行選択制御信号VS
2、(d)第M行選択制御信号VS
M、(e)保持制御信号Hd、(f)第1列選択制御信号HS
1〜第N列選択制御信号HS
N、(g)電位変更制御信号DLS、(h)第1行の画素P
1,1〜P
1,NのノードA及びノードBの電位、(i)第2行の画素P
2,1〜P
2,NのノードA及びノードBの電位、(j)第M行の画素P
M,1〜P
M,NのノードA及びノードBの電位をそれぞれ示している。
【0072】
図8に示された上記実施形態に係るタイミングチャートと、
図12に示された本変形例に係るタイミングチャートとで異なる点は、行選択制御信号VS
1〜VS
Mがハイレベルとなるタイミングである。本変形例の固体撮像装置では、上記実施形態において行選択制御信号VS
1〜VS
Mがハイレベルとなる時刻t
12〜t
13、時刻t
19〜t
20等に加えて、リセット制御信号REがハイレベルとなっている期間内(時刻t
16〜t
18等)においても、行選択制御信号VS
1〜VS
Mがハイレベルとなる期間を設ける。
【0073】
このように、積分回路42の容量素子42bの放電動作と並行して行選択制御信号VS
1〜VS
Mがハイレベルとなることによって、次の効果を得ることができる。すなわち、時刻t
12〜t
13の間にフォトダイオード22から出力されずに残存していた電荷を、トランジスタ21及び読出用配線R
1〜R
Nを通って積分回路42に出力し、容量素子42bに蓄えられてた電荷と共に放電することができる。従って、フォトダイオード22に蓄積された電荷が次フレームのデータに重畳する、いわゆる遅延効果による影響を効果的に低減することができる。
【0074】
なお、本変形例のような行選択制御信号VS
1〜VS
Mの動作は、上記第2変形例に適用されることも可能である。但し、その場合、行選択制御信号VS
1〜VS
Mがハイレベルである期間(すなわちトランジスタ21が接続状態となっている期間)を除く期間に電位変更用スイッチ50の切替動作を行うことが好ましい。
【0075】
本発明による固体撮像装置は、上述した実施形態及び各変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態及び各変形例ではガラス基板上に多結晶シリコンやアモルファスシリコンが成膜されて成る固体撮像装置に本発明を適用した例を示したが、本発明は、このような構成に限られず、例えば単結晶シリコン基板上に作製される固体撮像素子に対しても適用可能である。
【0076】
また、上述した実施形態及び各変形例では各画素が有するトランジスタ21としてFETを例示したが、トランジスタ21はバイポーラトランジスタであってもよい。その場合、制御端子はベースを、電流端子はコレクタまたはエミッタを意味する。また、上記実施形態では、M×N個の画素を有する受光部に対し、電位変更手段が、N本の読出用配線の電位を、N個の積分回路の入力電位とは別の電位に切り替える構成としているが、このような構成に限らず、一般には、電位変更手段は、Kを1以上N以下の整数として、N本の読出用配線に含まれるK本の読出用配線の電位を、対応するK個の積分回路の入力電位とは別の電位に切り替える構成であれば良い。
【0077】
上記実施形態による固体撮像装置では、フォトダイオード、及び該フォトダイオードに一端が接続されたトランジスタを各々含むM×N個(Mは2以上の整数、Nは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成る受光部と、各列毎に配設され、対応する列の画素に含まれるトランジスタの他端に接続されたN本の読出用配線と、N本の読出用配線のそれぞれを経て入力される電荷の量に応じた電圧値を生成するN個の積分回路を含み、該N個の積分回路から出力された電圧値を順次に出力する信号出力部と、N本の読出用配線に含まれるK本(Kは1以上N以下の整数)の読出用配線の電位を、対応するK個の積分回路の入力電位とは別の電位に切り替える電位変更手段と、信号出力部における電圧値の出力動作、及び電位変更手段における電位の切り替え動作を制御する制御部とを備え、制御部は、M×N個の画素において発生した電荷の量に応じた電圧値が信号出力部から順次に出力される読み出し期間が経過した後、次の読み出し期間が開始されるまでの間に含まれる所定の期間、K本の読出用配線の電位を別の電位に切り替える構成としている。
【0078】
また、固体撮像装置は、トランジスタが、多結晶シリコン及びアモルファスシリコンのうち少なくとも一方からなる領域を含む構成としてもよい。トランジスタがこれらの材料からなる領域を含む場合、単結晶シリコンからなるトランジスタと比較して寄生容量が大きくなる。上記固体撮像装置は、このような場合に特に好適である。
【0079】
また、固体撮像装置は、電位変更手段が、K本の読出用配線とK個の積分回路との間に設けられたK個のスイッチを含み、該K個のスイッチが、K本の読出用配線それぞれを、別の電位を供給するための配線及びK個の積分回路の何れか一方に選択的に接続する構成としてもよい。電位変更手段がこのような構成を有することによって、読出用配線の電位を、積分回路の入力電位とは別の電位に好適に切り替えることができる。この場合、K個のスイッチは、単結晶シリコンからなる領域を含んでもよい。
【0080】
また、固体撮像装置は、K個の積分回路のそれぞれが、差動増幅器及び該差動増幅器の一方の入力端と出力端との間に接続された容量素子を含み、電位変更手段が、第1及び第2の入力端と出力端とを有し第1及び第2の入力端の何れかと出力端とを選択的に接続するスイッチを含み、出力端が、差動増幅器の他方の入力端に接続されており、第1の入力端には入力電位に相当する電位が印加され、第2の入力端には別の電位が印加される構成としてもよい。電位変更手段がこのような構成を有することによって、読出用配線の電位を、積分回路の入力電位とは別の電位に好適に切り替えることができる。
【0081】
なお、上記固体撮像装置において、電位変更手段は、K=Nとして、N本の読出用配線の電位を、N個の積分回路の入力電位とは別の電位に切り替える構成としても良い。すなわち、固体撮像装置は、フォトダイオード、及び該フォトダイオードに一端が接続されたトランジスタを各々含むM×N個(Mは2以上の整数、Nは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成る受光部と、各列毎に配設され、対応する列の画素に含まれるトランジスタの他端に接続されたN本の読出用配線と、N本の読出用配線のそれぞれを経て入力される電荷の量に応じた電圧値を生成するN個の積分回路を含み、該N個の積分回路から出力された電圧値を順次に出力する信号出力部と、N本の読出用配線の電位を、N個の積分回路の入力電位とは別の電位に切り替える電位変更手段と、信号出力部における電圧値の出力動作、及び電位変更手段における電位の切り替え動作を制御する制御部とを備え、制御部は、M×N個の画素において発生した電荷の量に応じた電圧値が信号出力部から順次に出力される読み出し期間が経過した後、次の読み出し期間が開始されるまでの間に含まれる所定の期間、N本の読出用配線の電位を別の電位に切り替える構成としても良い。
【0082】
この場合、固体撮像装置は、電位変更手段が、N本の読出用配線とN個の積分回路との間に設けられたN個のスイッチを含み、該N個のスイッチが、N本の読出用配線それぞれを、別の電位を供給するための配線及びN個の積分回路の何れか一方に選択的に接続する構成としてもよい。電位変更手段がこのような構成を有することによって、読出用配線の電位を、積分回路の入力電位とは別の電位に好適に切り替えることができる。この場合、N個のスイッチは、単結晶シリコンからなる領域を含んでもよい。
【0083】
また、固体撮像装置は、N個の積分回路のそれぞれが、差動増幅器及び該差動増幅器の一方の入力端と出力端との間に接続された容量素子を含み、電位変更手段が、第1及び第2の入力端と出力端とを有し第1及び第2の入力端の何れかと出力端とを選択的に接続するスイッチを含み、出力端が、差動増幅器の他方の入力端に接続されており、第1の入力端には入力電位に相当する電位が印加され、第2の入力端には別の電位が印加される構成としてもよい。電位変更手段がこのような構成を有することによって、読出用配線の電位を、積分回路の入力電位とは別の電位に好適に切り替えることができる。