(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936563
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】研磨治具及び研磨治具に試料をセットする試料取付け治具
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20160609BHJP
【FI】
B24B37/04 V
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-27930(P2013-27930)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-155981(P2014-155981A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2016年2月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143455
【氏名又は名称】株式会社高田工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】蔵藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】舛谷 友道
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−67459(JP,U)
【文献】
特開2003−205452(JP,A)
【文献】
実開平4−13258(JP,U)
【文献】
実開平2−139060(JP,U)
【文献】
特開平1−140962(JP,A)
【文献】
特開平9−193010(JP,A)
【文献】
特開昭57−201167(JP,A)
【文献】
実開平7−11260(JP,U)
【文献】
米国特許第6383056(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00−37/34
G01N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持し、試料下端を研磨盤の研磨作業面に対して平行に維持しながら、該試料下端を前記研磨作業面に当接させて研磨を行う研磨治具であって、
対向配置された対となるアーム部材と、該各アーム部材の基側を接続する連結部材とを有し、平面視してコ字状の治具本体と、
前記試料を、前記連結部材の開口側に、前記試料下端を下方に突出させた状態で締結固定する試料取付け手段と、
前記連結部材の中央部及び前記各アーム部材の先側を上下方向にそれぞれ貫通し、先端側が前記治具本体の下面から突出し、突出長さ調整可能なレベルホールド部材とを備え、
前記レベルホールド部材の前記治具本体の下面からの突出長さは、該治具本体の下面から前記試料下端までの距離と同一又は予め設定した距離だけ短いことを特徴とする研磨治具。
【請求項2】
請求項1記載の研磨治具において、前記レベルホールド部材は、前記治具本体に螺合する雄ねじ部材と、該治具本体に螺合する該雄ねじ部材の回転を防止するロックナットを有し、しかも、該雄ねじ部材の硬度は、前記試料の硬度より大きいことを特徴とする研磨治具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の研磨治具において、前記試料取付け手段は、前記連結部材と共に前記試料を挟持するスペーサと、締結ボルトを用いて前記連結部材に取り付けられて前記スペーサを介して前記試料を該連結部材に押圧するクランプ部材とを有していることを特徴とする研磨治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨治具に前記試料を取り付ける際に、前記治具本体を支持し、該治具本体に対する前記試料の上下方向位置と、前記研磨盤の前記研磨作業面に対する前記治具本体の高さ位置をそれぞれ設定するレベリングブロック及び前記治具本体を該レベリングブロックに仮止めする締結手段を備えた試料取付け治具であって、
前記レベリングブロックは、前記治具本体の下面の一部と当接して該治具本体を支持する載置部と、
前記治具本体の下面から突出する前記レベルホールド部材の先端に当接する突出長さ設定部と、
前記試料を前記治具本体に取り付ける際に、前記試料下端を当接させて、該治具本体の下面から該試料下端までの距離を設定する試料位置設定部とを有することを特徴とする試料取付け治具。
【請求項5】
請求項4記載の試料取付け治具において、前記レベリングブロックの下面に対する前記突出長さ設定部及び前記試料位置設定部のそれぞれの高さ位置は等しいことを特徴とする試料取付け治具。
【請求項6】
請求項4記載の試料取付け治具において、前記レベリングブロックの下面に対する前記試料位置設定部の高さ位置が、前記レベリングブロックの下面に対する前記突出長さ設定部の高さ位置より設定された研磨代だけ低いことを特徴とする試料取付け治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡を用いた断面観察用の試料を作製する際に、試料の研磨量を正確に制御する研磨治具及びこの研磨治具に試料をセットする試料取付け治具に関する。
ここで、顕微鏡とは、高倍率(例えば、倍率が100〜10000倍)で使用する光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡をさす。
【背景技術】
【0002】
断面観察用の試料を精密切断機を用いて検査対象物から切り出す場合、試料の切断面は比較的平坦に形成されるので、低倍率(例えば、100倍未満)の顕微鏡を用いた場合、切断面(以下、観察面という)を直接観察することが可能となる。一方、観察面を高倍率で観察する場合や観察面の画像解析や測定を行う場合、観察面の研磨が必要になる。そこで、観察面の研磨は、観察面が表面に露出するように試料を樹脂に埋め込み、又は試料を直接手でつかんで、回転する研磨盤の研磨作業面に研磨剤を供給しながら観察面を押し当て、観察面の研磨状態を、顕微鏡等で頻繁に確認しながら行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−214467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、試料を樹脂埋めするには、樹脂埋め用の専用容器内に試料がセットできるように試料の外形形状を整える切断作業、試料をセットした専用容器内への樹脂注入作業、注入した樹脂の硬化処理等の一連の作業が必要となり、研磨を開始するまでに要する時間が長い、従って、観察面の観察が可能になるまでに要する時間が長いという問題がある。
また、研磨時に、観察面を研磨盤の研磨作業面に対して平行に維持しないと、観察面に対して形成される研磨面が傾斜する(特に、試料を直接手でつかんで研磨を行う場合に顕著となる)という問題が生じる。更に、研磨時に、試料の保持状態が変動すると、観察面が丸くなったり(研磨ダレが生じたり)、観察面が均一に研磨されないという問題が生じる。そして、観察面の研磨終了判定の時期を見誤ると、観察面を研磨し過ぎて、切断面に現れていた組織状態を壊してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、顕微鏡を用いた断面観察用の試料を作製する際に、研磨量を正確に制御すると共に、研磨作業を簡便、効率的、かつ経済的に実施することが可能な研磨治具及びこの研磨治具に試料をセットする試料取付け治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る研磨治具は、試料を保持し、試料下端を研磨盤の研磨作業面に対して平行に維持しながら、該試料下端を前記研磨作業面に当接させて研磨を行う研磨治具であって、
対向配置された対となるアーム部材と、該各アーム部材の基側を接続する連結部材とを有し、平面視してコ字状の治具本体と、
前記試料を、前記連結部材の開口側に、前記試料下端を下方に突出させた状態で締結固定する試料取付け手段と、
前記連結部材の中央部及び前記各アーム部材の先側を上下方向にそれぞれ貫通し、先端側が前記治具本体の下面から突出し、突出長さ調整可能なレベルホールド部材とを備え、
前記レベルホールド部材の前記治具本体の下面からの突出長さは、該治具本体の下面から前記試料下端までの距離と同一又は予め設定した距離だけ短い。
【0007】
試料が取り付けられた治具本体を研磨盤の上方に配置して試料下端を研磨作業面に当接させて研磨を行う際、レベルホールド部材の治具本体の下面からの突出長さが、治具本体の下面から試料下端までの距離と同一の場合、試料下端と各レベルホールド部材の先端は研磨盤の研磨作業面に同時に当接するので、試料下端は、各レベルホールド部材の先端と同時に研磨される。
一方、レベルホールド部材の治具本体の下面からの突出長さが、治具本体の下面から試料下端までの距離より予め設定した距離だけ短い場合、試料の研磨を開始すると、当初は試料の先端部(レベルホールド部材の先端より突出している部分)が先に研磨され、治具本体の下面に対する試料下端の位置は、治具本体の下面に対するレベルホールド部材の先端の位置に徐々に接近する。そして、治具本体の下面に対する試料下端の位置が、治具本体の下面に対するレベルホールド部材の先端の位置と一致した時点で、試料下端は、各レベルホールド部材の先端と同時に研磨される。
【0008】
第1の発明に係る研磨治具において、前記レベルホールド部材は、前記治具本体に螺合する雄ねじ部材と、該治具本体に螺合する該雄ねじ部材の回転を防止するロックナットを有し、しかも、該雄ねじ部材の硬度は、前記試料の硬度より大きいことが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る研磨治具において、前記試料取付け手段は、前記連結部材と共に前記試料を挟持するスペーサと、締結ボルトを用いて前記連結部材に取り付けられて前記スペーサを介して前記試料を該連結部材に押圧するクランプ部材とを有していることが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る試料取付け治具は、第1の発明に係る研磨治具に前記試料を取り付ける際に、前記治具本体を支持し、該治具本体に対する前記試料の上下方向位置と、前記研磨盤の前記研磨作業面に対する前記治具本体の高さ位置をそれぞれ設定するレベリングブロック及び前記治具本体を該レベリングブロックに仮止めする締結手段を備えた試料取付け治具であって、
前記レベリングブロックは、前記治具本体の下面の一部と当接して該治具本体を支持する載置部と、
前記治具本体の下面から突出する前記レベルホールド部材の先端に当接する突出長さ設定部と、
前記試料を前記治具本体に取り付ける際に、前記試料下端を当接させて、該治具本体の下面から該試料下端までの距離を設定する試料位置設定部とを有している。
【0011】
第2の発明に係る試料取付け治具において、前記レベリングブロックの下面に対する前記突出長さ設定部及び前記試料位置設定部のそれぞれの高さ位置を等しくすることができる。
【0012】
第2の発明に係る試料取付け治具において、前記レベリングブロックの下面に対する前記試料位置設定部の高さ位置を、前記レベリングブロックの下面に対する前記突出長さ設定部の高さ位置より設定された研磨代だけ低くすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係る研磨治具においては、試料を、連結部材に試料取付け手段を用いて機械的に取り付けるので、試料を取り付けると直ちに研磨盤を用いて研磨を開始することができる。そして、試料は研磨治具に取り付けた状態で研磨盤に対して着脱することができるので、研磨を行いながら観察部位の研磨状態を顕微鏡等で随時確認することができ、研磨作業を簡便、効率的、かつ経済的に実施することができる。更に、治具本体に錘を載せることで研磨圧力を定量的に変化させることができ、試料の材質に応じて、最適研磨条件を設定することができる。
また、試料下端が研磨盤の研磨作業面に当接して研磨される際には、各レベルホールド部材の先端も研磨作業面に同時に当接するので、複雑な設備を使用することなく、従来使用している研磨盤を使用しても、試料下端に対して研磨面が傾斜することはなく、試料下端を確実に観察することができる。そして、研磨時に、試料の保持状態を一定に保つことができ、試料下端が丸くなることを防止して、試料下端を均一に研磨することができる。更に、試料下端と各レベルホールド部材の先端は同時に研磨されるので、研磨速度の大きな試料を研磨する際は、試料の研磨速度はレベルホールド部材の先端の研磨速度に律速されて、試料下端の過剰研磨を防止することができ、試料下端の組織状態(試料下端の表面に現れている組織状態)を壊さずに研磨を行うことが可能になる。そして、過剰研磨を防止することができるため、異種材質の試料がそれぞれ取り付けられた研磨治具を、ひとつの研磨盤にセットして同時に研磨を行うことも可能になる。
【0014】
第1の発明に係る研磨治具において、レベルホールド部材が、治具本体に螺合する雄ねじ部材と、治具本体に螺合する雄ねじ部材の回転を防止するロックナットを有している場合、各レベルホールド部材の突出長さの調節が容易になると共に、調節した突出長さを簡便に固定することができる。その結果、研磨中に、治具本体を研磨作業面に対して安定して保持することができる。
そして、雄ねじ部材の硬度が、試料の硬度より大きい場合、試料の観察部位の過剰研磨を確実に防止することができると共に、雄ねじ部材の損耗を抑制して、研磨治具のランニングコストを低減できる。また、雄ねじ部材の硬度を選択することで、研磨速度を調整することができ、観察部位の研磨状態の制御が可能になる。
【0015】
第1の発明に係る研磨治具において、試料取付け手段が、連結部材と共に試料を挟持するスペーサと、締結ボルトを用いて連結部材に取り付けられてスペーサを介して試料を連結部材に押圧するクランプ部材とを有する場合、研磨治具に対する試料の着脱が容易、かつ短時間で行うことができる。
【0016】
第2の発明に係る試料取付け治具においては、レベリングブロックが、治具本体の下面の一部と当接して治具本体を支持する載置部と、治具本体の下面から突出するレベルホールド部材の先端に当接する突出長さ設定部と、試料を前記治具本体に取り付ける際に、試料の下端を当接させて、治具本体の下面から試料下端までの距離を設定する試料位置設定部とを有するので、試料を治具本体に取り付ける際に、レベルホールド部材の治具本体の下面からの突出長さを、治具本体の下面から試料下端までの距離と同一又は予め設定した距離だけ短く設定することが容易に可能となる。
【0017】
第2の発明に係る試料取付け治具において、レベリングブロックの下面に対する突出長さ設定部及び試料位置設定部のそれぞれの高さ位置が等しい場合、レベルホールド部材の治具本体の下面からの突出長さと、治具本体の下面から試料下端までの距離を同一に設定することができる。
【0018】
第2の発明に係る試料取付け治具において、レベリングブロックの下面に対する試料位置設定部の高さ位置が、レベリングブロックの下面に対する突出長さ設定部の高さ位置より設定された研磨代だけ低い場合、レベルホールド部材の治具本体の下面からの突出長さを、治具本体の下面から試料下端までの距離より予め設定した距離、即ち、研磨代だけ短く設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)、(B)は本発明の一実施の形態に係る研磨治具の斜視図である。
【
図2】(A)〜(C)はそれぞれ同研磨治具に試料を取り付ける際に使用する試料取付け治具の平面図、正面図、側面図である。
【
図4】(A)〜(C)はそれぞれ同研磨治具に試料を取り付ける際に使用する変形例に係る試料取付け治具の平面図、正面図、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る研磨治具10は、試料11を保持し、試料下端12を研磨盤の研磨作業面13に対して平行に維持しながら、試料下端12を研磨作業面13に当接させて研磨を行うものである。ここで、試料11は、例えば、集積回路基板や集積回路から構成された半導体装置等の検査対象物から、精密切断機を用いて切り出された小片であって、試料下端12は小片に現れた特定の切断面をさす。また、研磨盤は、例えば、回転テーブル上に配置された研磨パッドであって、研磨作業面13は、スラリー状の研磨剤が供給される研磨パッドの表面をさす。
【0021】
そして、研磨治具10は、対向配置された対となるアーム部材14、15と、各アーム部材14、15の基側を接続する連結部材16とを有し、平面視してコ字状の治具本体17を備えている。更に、研磨治具10は、試料11を、連結部材16の開口側の側部18に、試料下端12を下方に突出させた状態で締結固定する試料取付け手段19と、連結部材19の中央部及び各アーム部材14、15の先側を上下方向にそれぞれ貫通し、先端側が治具本体17の下面から突出し、突出長さ調整可能なレベルホールド部材を構成する雄ねじ部材20(図では、六角穴つきボルト)及びロックナット21とを備える。なお、治具本体17の下面から突出する各雄ねじ部材20の突出長さは、試料11を治具本体17に取り付けた際の治具本体17の下面から試料下端12までの距離と同一長さに設定されている。
【0022】
連結部材16の中央部及び各アーム部材14、15を貫通する雄ねじ部材20は、治具本体17に形成された雌ねじ部(図示せず)に螺合しており、雄ねじ部材20の回転角度を調節することにより、治具本体17の下面から突出する各雄ねじ部材20の先側の長さ(突出長さL、
図3参照)を正確に設定することができる。なお、雄ねじ部材20の基側(治具本体17の上面から突出する側)には、雄ねじ部材20の回転を防止するロックナット21が締結されている。これによって、研磨治具10のハンドリング時や研磨時に、雄ねじ部材20の突出長さが設定値から変化することを防止できる。
【0023】
従って、試料11が取り付けられた研磨治具10を研磨盤に対して上方から下降させた場合、治具本体17の下面から突出する各雄ねじ部材20の先端と試料下端12は、同時に研磨作業面13に当接することになる。その結果、試料下端12は、各雄ねじ部材20の先端と同時に研磨されることになる。このため、研磨中に、治具本体17を研磨作業面13に対して安定して保持することができ、従来使用している研磨盤を用いて試料11の研磨を行う際、研磨治具10を保持する専用の設備を設置しなくても、試料下端12に形成される研磨面が傾斜することはなく、試料下端12を確実に観察することができる。
【0024】
また、試料11の試料下端12が研磨作業面13に当接して研磨される際には、各雄ねじ部材20の先端も研磨作業面13に同時に当接するので、研磨時に、試料11の保持状態が一定に保たれ、試料下端12が丸くなることを防止して、試料下端12を均一に研磨することができる。
更に、試料下端12と各雄ねじ部材20の先端は同時に研磨されるので、試料11の材質が変化し研磨速度が大幅に変化しても、例えば、試料11の研磨速度が大きくなっても、試料11の研磨速度は、各雄ねじ部材20の先端の研磨速度に律速されることになって、試料下端12の過剰研磨を防止できる。このため、試料下端12の組織状態(試料下端12の表面に現れている組織状態)を壊さずに研磨を行うことが可能になる。そして、試料11を取り付けた研磨治具10を研磨作業面13から引き離し、再び研磨治具10を研磨盤に対して上方から下降させても、試料下端12と各雄ねじ部材20の先端を、同時に研磨作業面13に当接させることができるので、研磨を行いながら試料下端12の研磨状態を顕微鏡等で随時確認することができる。これにより、試料下端12の研磨状態を、容易に最適化することができる。
【0025】
ここで、雄ねじ部材20の硬度は、試料11の硬度より大きく設定することが好ましい。これによって、試料11の研磨速度を、常に雄ねじ部材20の先端の研磨速度で律速することができ、試料下端12の過剰研磨を確実に防止することができると共に、雄ねじ部材20の損耗を抑制して、研磨治具10のランニングコストを低減できる。また、雄ねじ部材20の硬度を選択することで、研磨速度を調整することができ、試料下端12の研磨状態の制御が可能になると共に、治具本体17に錘を載せることで、試料下端12に加わる研磨圧力を定量的に変化させることができ、試料11の材質に応じて、最適研磨条件を設定することができる。更に、異材質の複数の試料11を同時に研磨することも可能になる。
【0026】
試料取付け手段19は、連結部材16と共に試料11を挟持するスペーサ22と、複数の締結ボルト23を用いて連結部材16に取り付けられてスペーサ22を介して試料11を連結部材16に押圧するクランプ部材24とを有している。これによって、試料11を研磨治具10(連結部材16)に対して、容易、かつ短時間で着脱することができ、研磨治具10に試料11を取り付けた後、直ちに試料11を研磨盤にセットして研磨を開始することができる。
ここで、連結部材16の側部18の長手方向両側には、対となるガイドピン24aがそれぞれ立設され、クランプ部材24の長手方向両側には、対となるガイドピン24aがそれぞれ嵌入する対となるガイド孔24b、24cが設けられている。なお、対となるガイド孔24b、24cのうち一方、例えば、ガイド孔24cは、水平方向(クランプ部材24の長手方向)に伸びた長孔となっている。このような構成とすることにより、クランプ部材24の対となるガイド孔24b、24cにそれぞれ対となるガイドピン24aを容易に嵌入することができ、クランプ部材24を締結ボルト23を用いて連結部材16に取り付ける際に、クランプ部材24を水平に保つことができる。その結果、クランプ部材24を連結部材16に取り付けた際に、連結部材16の移動に伴って試料11の試料下端12が傾くことを防止できる。
【0027】
本発明の一実施の形態に係る研磨治具10に試料11を取り付ける際に使用する試料取付け治具25は、
図2(A)、(B)、(C)、
図3に示すように、研磨治具10に試料11を取り付ける際に、治具本体17を支持し、治具本体17に対する試料11の上下方向位置と、研磨盤の研磨作業面13に対する治具本体17の高さ位置をそれぞれ設定するレベリングブロック26と、治具本体17をレベリングブロック26に仮止めする締結手段の一例である複数の固定ボルト28を備えている。
【0028】
図3に示すように、レベリングブロック26は、治具本体17の下面の一部と当接して治具本体17を支持する載置部27と、治具本体17の下面から突出する各雄ねじ部材20の先端に当接する突出長さ設定部29、30と、試料11を治具本体17に取り付ける際に、試料下端12を当接させて、治具本体17の下面から試料下端12までの距離を設定する試料位置設定部31とを有している。ここで、アーム部材14、15をそれぞれ貫通する雄ねじ部材20の先端は突出長さ設定部29に当接し、連結部材16を貫通する雄ねじ部材20の先端は突出長さ設定部30に当接する。なお、突出長さ設定部29、30において、雄ねじ部材20の先端が当接する各平面エリアの高さ位置は、同一である。また、試料位置設定部31において、試料下端12が当接する平面エリアのレベリングブロック26の下面に対する高さ位置は、突出長さ設定部29、30の各平面エリアのレベリングブロック26の下面に対する高さ位置に等しい。
【0029】
以上の構成とすることにより、治具本体17の下面から試料下端12までの距離と、治具本体17の下面から突出する雄ねじ部材20の突出長さLを等しくできる。これにより、試料11が取り付けられた研磨治具10を研磨盤に対して上方から下降させた場合、治具本体17の下面から突出する各雄ねじ部材20の先端と試料下端12を同時に研磨作業面13に当接させることができる。
【0030】
続いて、試料取付け治具25を用いて、研磨治具10に試料11を取り付ける方法を説明する。
図3に示すように、レベリングブロック26を作業台32にセットし、基側にロックナット21が取り付けられた雄ねじ部材20が螺合された治具本体17を載置部27に組み付け固定ボルト28で固定する。次いで、各雄ねじ部材20を回転させて、各雄ねじ部材20の先端を突出長さ設定部29、30の各平面エリアに接触させた後、ロックナット21を締結して雄ねじ部材20を治具本体17に固定する。
続いて、試料位置設定部31の平面エリアに、試料下端12を当接させた(押し付けた)状態で、試料取付け手段19を用いて試料11を治具本体17(連結部材16)に固定する。そして、固定ボルト28を弛めて治具本体17から抜き取る。これにより、レベリングブロック26から、試料11が取り付けられた状態の研磨治具10を取り外すことが可能になる。
【0031】
そして、研磨治具10に取り付けられた試料11の研磨を行う場合は、研磨治具10を、研磨盤に対して治具本体17の下面(即ち、試料下端12)が研磨盤の研磨作業面13に対向するように上方に配置し、研磨治具10を下降させ、治具本体17を介して試料下端12を研磨盤の研磨作業面13に軽く押し付ける。なお、研磨圧力を制御した状態で研磨を行う際には、治具本体17に所定重さの錘を載せる。また、雄ねじ部材20の材質を変更することで、試料11の研磨速度を調整することができ、試料下端12の表面粗さを制御することができる。
【0032】
図4、
図5に変形例に係る試料取付け治具33を示す。
試料取付け治具33の一部を構成し、上面側に、治具本体17の下面の一部と当接して治具本体17を支持する載置部38が形成されたレベリングブロック34は、試料取付け治具25のレベリングブロック26と比較して、レベリングブロック34の下面に対する試料位置設定部39の高さ位置、即ち、試料11aを研磨治具10に取り付ける際に、試料11aの試料下端37を当接させる平面エリアの高さ位置が、レベリングブロック34の下面に対する突出長さ設定部40、41の高さ位置、即ち、各雄ねじ部材20の先端を当接させる平面エリアの高さ位置より設定された研磨代36の厚さMに相当する距離だけ低いことが特徴となっている。このため、レベリングブロック34の作用について説明する。
【0033】
レベリングブロック34の下面に対する試料位置設定部39の高さ位置が、レベリングブロック34の下面に対する突出長さ設定部40、41の高さ位置より設定された研磨代36の厚さMに相当する距離だけ低い場合、研磨治具17に試料11aを取り付けた際の治具本体17の下面から試料下端37までの距離Kは、治具本体17の下面から各雄ねじ部材20の先端までの距離Hより研磨代36に相当する厚さMの距離だけ長くすることができる。
【0034】
従って、検査対象物内部の特定部位を観察部位35としたい場合、観察部位35から距離Mだけ離れた位置に切断面が形成されるように、検査対象物から試料11aを切り出し、研磨治具10に取り付けると、治具本体17の下面からは、試料下端37が雄ねじ部材20の先端側と共に突出しているが、試料下端37は、雄ねじ部材20の先端より更に距離Mだけ突出している。このため、研磨治具10を用いて研磨を開始すると、雄ねじ部材20の先端から突出している部分(研磨代36)が優先的に研磨されて除去される。
【0035】
ここで、研磨時に治具本体17が傾斜して、試料11aの先端部の一部と3本の雄ねじ部材20の1本又は2本の各先端が研磨作業面13に当接する状態となっても、雄ねじ部材20の硬度が試料11aの硬度より大きいと、試料11aの先端部の一部のみが優先的に研磨される。そして、試料11aの先端部の形状が徐々に変化することに伴って、治具本体17の傾斜が徐々に修正される。その結果、研磨代36が消失して、治具本体17の下面に対する試料下端37の位置は、治具本体17の下面に対する雄ねじ部材20の先端の位置に徐々に接近し、治具本体17の下面に対する試料下端37の位置が、治具本体17の下面に対する雄ねじ部材20の先端の位置と一致した時点で試料11aの観察部位35が露出することになって、治具本体17の下面から突出する各雄ねじ部材20の先端と試料11aの観察部位35は、同時に研磨作業面13に当接することになる。
【0036】
これにより、観察部位35は、各雄ねじ部材20の先端と同時に研磨されることになる。このため、研磨中に、治具本体17を研磨作業面13に対して安定して保持することができ、観察部位35に形成される研磨面が傾斜することはなく、観察部位35を確実に研磨することができる。このように、試料11aの先側に厚さMの研磨代36の領域を正確に設定することができるので、研磨により観察部位35を正確に作製することができ、観察部位の画像解析や測定を正しく行うことができる。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10:研磨治具、11、11a:試料、12:試料下端、13:研磨作業面、14、15:アーム部材、16:連結部材、17:治具本体、18:側部、19:試料取付け手段、20:雄ねじ部材、21:ロックナット、22:スペーサ、23:締結ボルト、24:クランプ部材、24a:ガイドピン、24b、24c:ガイド孔、25:試料取付け治具、26:レベリングブロック、27:載置部、28:固定ボルト、29、30:突出長さ設定部、31:試料位置設定部、32:作業台、33:試料取付け治具、34:レベリングブロック、35:観察部位、36:研磨代、37:試料下端、38:載置部、39:試料位置設定部、40、41:突出長さ設定部