特許第5936598号(P5936598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本フルハーフ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5936598-箱型荷台の後部ドア周辺部のシール部材 図000002
  • 特許5936598-箱型荷台の後部ドア周辺部のシール部材 図000003
  • 特許5936598-箱型荷台の後部ドア周辺部のシール部材 図000004
  • 特許5936598-箱型荷台の後部ドア周辺部のシール部材 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936598
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】箱型荷台の後部ドア周辺部のシール部材
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/20 20060101AFI20160609BHJP
   B62D 33/04 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   B60P3/20 Z
   B62D33/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-263346(P2013-263346)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-116990(P2015-116990A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】山内 幸一
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 意匠登録第1311584(JP,S)
【文献】 実開平02−066351(JP,U)
【文献】 特開2011−148469(JP,A)
【文献】 特開2006−282051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/20
B62D 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、ヒンジにより開閉可能に取り付けられる後部ドアを備えた箱型荷台において、前記箱型荷台の後端の前記ヒンジが装着されたコーナーポストに固着されるシール部材であって、
前記シール部材は、前記箱型荷台の側面と平行な平行辺とこれと垂直な前方辺及び後方辺とを有するコ字状断面に形成された鋼材と、前記鋼材の上端部及び下端部において、そのコ字状断面の内側に溶接された補強板とを有し、さらに、
前記シール部材は、その前方辺が前記コーナーポストの後面にねじ結合して固着され、かつ、前記シール部材を固着したときに前記コーナーポストから突出する距離が、前記ヒンジが突出する距離と等しくなるよう設定されていることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記シール部材のコ字状断面に形成された鋼材の平行辺には、前記補強板を越えて上下に延びる延長部が設けられた請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記シール部材のコ字状断面に形成された鋼材の平行辺には、作業者が手を掛けることの可能なグリップ用孔が設けられた請求項1又は請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記グリップ用孔の近傍には、断面円形の棒が溶接して取り付けられた請求項3に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍品等の貨物を運搬するバン形トラック等の箱型荷台において、荷室内への貨物の積み降ろし時に生じる冷気の漏洩を防止するため、後部ドア周辺部に設置されるシール部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の消費生活の多様化あるいは利便性の追求に伴い、トラック、トレーラ等の車両による貨物輸送の分野では、冷凍品又は生鮮食料品等の輸送の需要が増加している。冷凍品等の貨物の輸送には、断熱パネルにより囲まれた密閉式の箱型荷台を備え、その荷室内の温度を冷凍装置によって低温に保つ冷凍車等が使用されることから、このような箱型荷台に対する需要も高まっている。荷室内の温度を、積載する冷凍品等の貨物に応じた適正な範囲から外れないよう厳格に管理する、温度管理車と呼ばれる車両も増加している。
【0003】
箱型荷台には、通常、荷台後部に観音開き式の後部ドアが設けられ、この後部ドアを開放して貨物の積み降ろしを行う。車両の箱型荷台に貨物を搬入・搬出するため、冷凍品等の貨物を貯蔵する大型倉庫、生鮮食料品などの売買を扱う大掛かりな市場設備には、図3(a)に示すように、トラック等が箱型荷台の後部ドアRDを開放した状態で近接可能な開口部が設置してある。そして、この開口部には、箱型荷台や倉庫内の冷気が荷台と開口部との隙間から漏洩し、作業環境が高温となるのを防ぐよう、ドックシェルタと呼ばれる柔軟な気密装置DSが設けられており、貨物の搬入・搬出に際しては、箱型荷台の後部をドックシェルタDSに突き当てて車両を停車させ、積み降ろし作業を実施する。このようなドックシェルタを設けた設備は、最近における食品安全性に関する要求の厳格化と相まって、大幅な増加傾向を示している。
【0004】
ところで、箱型荷台の荷台後部に取り付けられる観音開き式の後部ドアは、左右の後部ドアのそれぞれが、複数のヒンジHGによって箱型荷台における後部フレームの縦方向のコーナーポスト(支柱)に固定されている。そのため、後部ドアを開放したときは、ヒンジ部分が後部フレームのコーナーポストの後方に突出することとなる。これについて、ヒンジ部分の詳細断面図である図3(b)により説明するが、この図は、図3(a)のA−A断面図(ドックシェルタ部分は除く)となっている。
【0005】
図3(b)に示すとおり、箱型荷台の後端に置かれる後部フレームの両側には、強度及び剛性の大きいコーナーポストCPが縦方向に配置してあり(ただし、図3(b)には左側のコーナーポストのみを示す)、コーナーポストCPには、ヒンジピンHPを支持するヒンジブラケットHBがボルト等により固着される。後部ドアRDは、ヒンジピンHPを中心に回動する回動アームHAにボルト等で固定されている。なお、冷凍車等の箱型荷台の内側壁部には、外部からの熱を遮断して荷台内を保温する断熱材が装着されており、また、後部ドアRDを閉鎖したときに(図の実線)、後部ドアRDと側壁部との間隙をシールするガスケットGKが設けられている。
後部ドアRDを開放して貨物の積み降ろしを行うときは、閉鎖装置であるロックロッド(図4の右図参照)を係止部から外した後、ヒンジピンHPを中心に後部ドアRDを270°回動する。後部ドアRDは、図3(b)の2点鎖線のように、いわば裏返しとなって荷台の側面に掛け止めして保持されるが、このとき、ヒンジ部分のヒンジブラケットHBがコーナーポストCPの後方に距離Lだけ突き出す。したがって、後部ドアを開放した状態で箱型荷台の後端をドックシェルタに突き当てると、ヒンジ部分が存在しない個所で、箱型荷台のコーナーポストとドックシェルタの表面との間に間隙G(図3(a)参照)が生じてしまい、この間隙から箱型荷台や倉庫内の冷気が漏洩する不具合が発生する。
【0006】
上述の不具合に対処するよう、ヒンジ部分のヒンジブラケットと等しい距離だけ後方に突出するシール部材を、箱型荷台後端のコーナーポストの、ヒンジ部分が存在しない個所に取付ける方法があり、一例として意匠登録第1311584号公報に開示されている。この公報のシール部材は、図4に示すとおり、コーナーポストCPにリベットで固着されたベース材BMに、カバー材CMを組み付けたものである。ベース材BM及びカバー材CMはアルミニウムの形材からなり、両者の寸法は、組み付けたときにヒンジ部分のヒンジブラケットと等しい距離だけ後方に突出するよう設定されている。図4の右図に示すとおり、シール部材をヒンジ部分の間に取り付けると、箱型荷台の後端部はいわば面一の状態となって、コーナーポストとドックシェルタの表面との間に間隙が生じることはなく、冷気の漏洩を防止することができる。
また、コーナーポストの上下寸法と同一長さの細長いシール用板材をコーナーポストに溶接し、ヒンジ部分に位置する板材の部位には切欠きを形成して、後部ドアの開閉を可能としながらドックシェルタとの当接時における間隙を無くす技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】意匠登録第1311584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
冷凍品等を扱う大型倉庫などからの貨物の搬入・搬出に際し、箱型荷台の後端とドックシェルタとの間隙を通過する冷気の漏洩を極力防止することは、冷凍品等の劣化を防ぐうえでも、冷凍装置の駆動動力の省エネルギ化を図るうえでも重要である。しかし、特許文献1に開示されたシール部材は、複雑な断面形状を有する2個のアルミニウムの型材を組み合わせたものであって、製造コストが大きく、材質がアルミニウムなので強度が比較的小さい。このシール部材は、箱型荷台の後端に設置されるため衝撃を受ける機会も多く、例えば、車両の後退時にドックシェルタに急激に当たり激しい衝撃を受けたときは、変形を起こす恐れがある。
【0009】
コーナーポストに細長いシール用板材を溶接するタイプの漏洩防止装置では、シール用板材として強度の大きい鋼材等を使用できるものの、コーナーポストに溶接する際の熱に起因して、コーナーポストに歪みが発生する。冷凍車の箱型荷台の場合には、後部ドアの内壁面には断熱材が装着されるとともに、コーナーポストと後部ドアとの間にはガスケットが介在されているため、コーナーポストに歪みが生じると、後部ドアの開閉が著しく困難となることがある。また、ヒンジ部分の突出に伴う冷気の漏れを防ぐシール部材を備えていない既存の冷凍車等に、連続した細長いシール用板材を溶接で後付するのは事実上不可能である。
本発明の課題は、箱型荷台の後端のコーナーポストに取り付けられるシール部材を、単純な形状でありながら確実に冷気の漏洩を防止し、しかも、強度及び剛性が大きな構成として上述の問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、冷気の漏洩防止のため箱型荷台のコーナーポストに取り付けられるシール部材を、鋼材に曲げ加工を施して、荷台側面と平行な平行辺とこれと垂直な前方辺及び後方辺とを有するコ字状断面に形成し、かつ、コ字状断面の鋼材の上下に補強板を溶接した構造とし、このシール部材の前方辺をボルト等によりコーナーポストの後面にねじ結合して装着するものである。すなわち、本発明は、
「車両に搭載され、ヒンジにより開閉可能に取り付けられる後部ドアを備えた箱型荷台において、前記箱型荷台の後端の前記ヒンジが装着されたコーナーポストに固着されるシール部材であって、
前記シール部材は、前記箱型荷台の側面と平行な平行辺とこれと垂直な前方辺及び後方辺とを有するコ字状断面に形成された鋼材と、前記鋼材の上端部及び下端部において、そのコ字状断面の内側に溶接された補強板とを有し、さらに、
前記シール部材は、その前方辺が前記コーナーポストの後面にねじ結合して固着され、かつ、前記シール部材を固着したときに前記コーナーポストから突出する距離が、前記ヒンジが突出する距離と等しくなるよう設定されている」
ことを特徴とするシール部材となっている。ここで、上記の「鋼材」の語は、通常の炭素鋼に限らず、ステンレス鋼等の特殊鋼をも含むものである。
【0011】
請求項2に記載のように、前記シール部材のコ字状断面に形成された鋼材における平行辺には、前記補強板を越えて上下に延びる延長部を設けることができる。
【0012】
また、請求項3に記載のように、前記シール部材のコ字状断面に形成された鋼材の平行辺には、作業者が手を掛けることの可能なグリップ用孔を設けることができる。この場合には、請求項4に記載のように、前記グリップ用孔の近傍には、断面円形の棒を溶接して取り付けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシール部材は、箱型荷台の後端のコーナーポストに固着され、箱型荷台の後端とドックシェルタとの隙間から冷気が漏れるのを防止するものであって、シール部材をコーナーポストに固着したときには、コーナーポストから突出する距離が、後部ドアを開閉するヒンジ(ヒンジピンを支持するヒンジブラケット)の突出する距離と等しくなるよう設定されている。そのため、箱型荷台の後面がいわば面一の状態となり、ドックシェルタに当接したときに、ヒンジ部分以外の個所に間隙の生じることはない。
【0014】
箱型荷台のコーナーポストに固着される本発明のシール部材は、基本的に、コ字状断面に形成された強度の大きい鋼材からなり、断面において、箱型荷台の側面と平行な平行辺とこれと垂直な前方辺及び後方辺とを有し、平行辺と対向する側は開放されている。この開放側から工具やボルト等を挿入することにより、シール部材をコーナーポストに容易にねじ結合して固着することができる。この際には、シール部材の前方辺が固定されるコーナーポストの裏面に、予めナット等を溶接して置くこともできる。また、このような固着方法は大掛かりな装置等を必要とするものではないので、冷気の漏れを防ぐシール装置を備えていない既存の冷凍車等にも、本発明のシール部材を容易に取り付けることが可能である。
【0015】
そして、本発明のシール部材は、コ字状断面に形成された鋼材の上端部及び下端部において、そのコ字状断面の内側に補強板が溶接されている。鋼材はアルミニウム等の材料と比べもともと強度の大きいものであるけれども、本発明のシール部材では、上端部と下端部に設けた補強板により、シール部材全体の強度及び剛性が格段と高まる。したがって、貨物の積み降ろし時に車両が後退してドックシェルタに強い勢いで当たったとしても、シール部材が変形を受けることは殆どない。
また、シール部材のコ字状断面の内側に溶接された補強板は、コ字状断面の上下を密封することとなる。そのため、シール部材の内側を通過し、さらに、シール部材とヒンジ部分との間隙を介して漏洩する冷気の遮断も可能となり、冷気の漏洩防止効果が一層増大する。同時に、ハエなどの小害虫が、シール部材の内側を通過して箱型荷台の内部に侵入するのを阻止することができる。
【0016】
請求項2の発明は、コ字状断面に形成されたシール部材において、断面の平行辺に補強板を越えて上下に延びる延長部を設けるものである。後部ドアを開閉するヒンジは、そのヒンジピンを支持するヒンジブラケットがコーナーポストに固着され、ヒンジブラケットは、通常、ボルト等で固着する固着片を備えている。この固着片がシール部材の前方辺又は補強板と干渉するときは、固着片の部分に間隙が生じることとなるが、請求項3の発明のように、シール部材の断面の平行辺に補強板を越えて上下に延びる延長部を設けると、延長部がヒンジのヒンジブラケットの固着片を覆う形となって間隙を塞ぎ、ここからの冷気の漏洩が阻止される。
なお、シール部材における補強板を越えて上下に延びる延長部は、断面の平行辺とともに後方辺にも設けることができる。
【0017】
請求項3の発明は、シール部材のコ字状断面の平行辺に、作業者が手を掛けることの可能なグリップ用孔を設けるものである。シール部材は箱型荷台の後端に位置する部品であるので、このような手を掛けるグリップ用孔を設けると、後部ドアを開放して貨物の積み降ろし作業を行うときに、作業者が荷台に乗り降りするのが容易となる。請求項4の発明のように、グリップ用孔の近傍に断面円形の棒を溶接して取り付けたときは、手を掛けたときの接触面積が増加して作業者の痛みが緩和されるとともに、その棒によりグリップ用孔の近傍の強度が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のシール部材を、箱型荷台の後端のコーナーポストに取り付けた図である。
図2】(a)は、本発明のシール部材の単品図であり、(b)は、グリップ用孔を設けたシール部材の実施例の単品図である。
図3】(a)は、車両に積載された一般的な箱型荷台の後端を、ドックシェルタに当接した状態を示す図であり、(b)は、ヒンジ部の断面図である。
図4】箱型荷台の後端のコーナーポストに取り付けた従来のシール部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明のシール部材について説明する。図1は、本発明のシール部材を取り付けた箱型荷台の後端部における左側のコーナーポストを示す図(右側のコーナーポストにも同様なシール部材が取り付けられる)であり、図2(a)にはシール部材の単品図を、図2(b)には、グリップ用孔を設けたシール部材の単品図を示す。これらの図において、図3、4の従来の部品等と変わりのないものについては、同一の符号を付している。
【0020】
コーナーポストCPを後方から見た図1の中央右側図に示すとおり、コーナーポストCPには、後部ドアを備えた一般的な箱型荷台と同様に、回動アームHAを有するヒンジHGが上下方向に複数個固着されており、回動アームHAには、観音開き式の後部ドア(図示せず)の一方がボルト等で装着される。ヒンジHGは、図1の「ヒンジ部」の図に示すとおり、ヒンジピンHPを支持するヒンジブラケットHBを備えており、ヒンジブラケットHBの上下に形成された固着片HMにボルト等を挿通して、コーナーポストCPに固着される。
【0021】
コーナーポストCPにおけるヒンジHGの間には、本発明のシール部材1が取り付けられ、このシール部材1は、最上部のヒンジHGとコーナーポストCPの上端との間、さらには、最下部のヒンジHGとコーナーポストCPの下端との間にも設置される。コーナーポストCPを側方から見た図1の中央右側図に示すとおり、シール部材1は、コーナーポストCPから後方に突出する距離Lが、ヒンジHGが突出する距離と等しくなるよう設定されており、この点は、図4に示す従来のシール部材と同じである。そのため、ヒンジHGのみが後方に突出することはなく、箱型荷台の後面はいわば面一の状態となり、ドックシェルタに当接した際に、ヒンジHGが存在しない部位からの冷気の漏洩を防止することが可能となる。
【0022】
本発明のシール部材1は、図2(a)に示すように、全体的には上下方向に細長い鋼材であって、その断面は、箱型荷台の側面と平行な平行辺1Aと、これと垂直な前方辺1B及び後方辺1Cとを有するコ字状断面に形成されている。シール部材1の前方辺1Bは、この図に示す実施例では、その長さが後方辺1Cよりも長く設定してあり、上部と下部には取り付け孔1Hが設けられる。つまり、前方辺1Bには、コーナーポストCPの後面に取り付けるための取り付け孔1Hが必要であるが、その必要のない後方辺1Cの長さは短くなっていて、鋼材の節約とシール部材の軽量化が図られている。
【0023】
このシール部材1は、図1のA−A断面の図に示すように、取り付け孔1Hにボルト等を挿通し、コーナーポストCPの後面にねじ結合して取り付けられる。コーナーポストCPの背面側には、ボルト締結用のナットを予め溶接しておいてもよい。
本発明のシール部材1では、平行辺1Aと対向する側は開放されており、この開放側から工具やボルト等を挿入することにより、シール部材1を容易にねじ結合して固着することができる。また、このように固着されるシール部材1は、既存の冷凍車等にも容易に取り付けることが可能である。
【0024】
そして、シール部材1の上端部及び下端部には、補強板11、12がそれぞれ溶接して設置される。補強板11、12は、平面視でほぼ台形の形状であって、シール部材1のコ字状断面の内部に当接する3辺と、前方辺1B及び後方辺1Cの先端を直線状に結ぶ辺を有し、前方辺1Bの上端及び下端の位置に溶接される。なお、この実施例のシール部材1におけるコ字状断面の鋼材及び補強板には、コーナーポストCPと同一素材の鋼材であるステンレス鋼が使用されている。
本発明のシール部材1は、鋼材をコ字状断面に折り曲げる等により形成したもので、もともと強度の大きいが、補強板11、12は、シール部材1のコ字状断面の上下部を補強して、シール部材1の強度及び剛性を大幅に高めることとなる。したがって、車両が後退してドックシェルタに当接するときなどに衝撃を受けたとしても、シール部材1が変形することは殆どない。同時に、補強板11、12は、シール部材1のコ字状断面の上下を封鎖して、コ字状断面の内部からの冷気の漏れを遮断するとともに、外部から荷台の内部へのハエ等の侵入も遮断する。
【0025】
図2(a)に示す本発明のシール部材1においては、コ字状断面の平行辺1Aに、補強板11、12を越えて上下方向に延びる延長部1AEが設けられている。また、この例のように、後方辺1Cにも適宜延長部を設けることができる。この延長部1AEは、図1の「ヒンジ部」の図に示すとおり、ヒンジHGのヒンジブラケットHBを固定する固着片HMの側方部分を封鎖するものであって、シール部材1の補強板11、12とヒンジHGとの干渉を回避するため、固着片HMの部分に間隙を置かざるを得ない場合においても、その間隙からの冷気の漏洩を遮断することができる。
【0026】
図2(b)には、本発明のシール部材にグリップ用の孔を設けた実施例を示す。この実施例のシール部材1´は、コ字状断面の平行辺1Aのほぼ中央部に、作業者が手を掛けるための長円形のグリップ用孔GHを形成し、さらに、グリップ用孔GH近傍の隅部に、断面円形の棒RBを溶接したものである。それ以外の構造は、図2(a)に示す本発明のシール部材1と基本的に変わりはない。
グリップ用の孔を設けたシール部材1´は、荷台内への貨物の積み降ろし時等に、作業者が手を掛けて荷台に昇降するために設置されるもので、図1に示すとおり、コーナーポストCPの比較的低い位置に装着される。グリップ用孔GHの近傍に溶接された丸棒RBは、作業者が手を掛けたときの接触面積を増加して作業者の感じる痛みを緩和し、かつ、グリップ用孔GHの近傍の強度を増大する役目を果たす。
【0027】
以上詳述したように、本発明は、箱型荷台の後端とドックシェルタとの間から冷気の漏洩を防止するシール部材として、コ字状断面に形成された鋼材と、その断面の内部に溶接した補強板とによって強度及び剛性の大きいシール部材を構成し、このシール部材をボルト等によりコーナーポストの後面にねじ結合して取り付けるものである。上記の実施例では、鋼材を折り曲げることにより3辺を備えたコ字状断面を形成しているが、場合によっては、2枚の鋼材を溶接して形成してもよい。また、シール部材の鋼材として、コーナーポストと異なる材質あるいは厚さのものを使用するなど、実施例に対して各種の変形が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0028】
1 シール部材
1A 平行辺
1B 前方辺
1C 後方辺
11、12 補強板
GH グリップ用孔
CP コーナーポスト
RD 後部ドア
HG ヒンジ
HA 回動アーム(ヒンジの)
HB ヒンジブラケット
DS ドックシェルタ
図1
図2
図3
図4