特許第5936601号(P5936601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936601alkL遺伝子産物を用いた生体触媒による酸化法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936601
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】alkL遺伝子産物を用いた生体触媒による酸化法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/02 20060101AFI20160609BHJP
   C12P 7/26 20060101ALI20160609BHJP
   C12P 7/40 20060101ALI20160609BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160609BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C12P7/02ZNA
   C12P7/26
   C12P7/40
   C12N1/21
   C12N15/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-505377(P2013-505377)
(86)(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公表番号】特表2013-528361(P2013-528361A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2011053834
(87)【国際公開番号】WO2011131420
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年2月6日
(31)【優先権主張番号】102010015807.0
(32)【優先日】2010年4月20日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ペター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュミート
(72)【発明者】
【氏名】ブルノ ビューラー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ゲオルク ヘネマン
(72)【発明者】
【氏名】マテイス カミール ユルスィング
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン シャファー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハース
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート シュレーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】シェフ コーネリセン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ロース
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ヘーガー
【審査官】 原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−273483(JP,A)
【文献】 特表2004−508831(JP,A)
【文献】 Biotechnology and bioengineering,1998年,58, 4,p.356-365
【文献】 BIO/TECHNOLOGY,1991年,9, 4,p.367-371
【文献】 Applied and Environmental Microbiology,1998年,64, 10,p.3784-3790
【文献】 Journal of Bacteriology,1996年,178, 18,p.5508-5512
【文献】 Molecular Microbiology,1993年,8, 6,p.1039-1051
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
C12N 1/00−7/08
C12N 9/00−9/99
C12N 15/00−15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの酸化酵素及び少なくとも1つのalkL遺伝子産物を用いて有機物質を酸化する方法において、該alkL遺伝子産物を、自然に存在する形で該alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた少なくとも1つのさらに別の遺伝子産物とは無関係に供給する方法であって、前記遺伝子産物が、AlkF、AlkG、AlkH、及びAlkKから成る群からの少なくとも1つから選択され
前記有機物質が、分枝した又は非分枝の、飽和又は不飽和の、場合により置換されたアルカン、アルケン、アルキン、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン及びエポキシドからなる群から選択されており、その際、これらは、3〜22個の炭素原子を有し、
前記alkL遺伝子産物が、シュードモナス・プチダのalkL遺伝子によってコードされていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記有機物質が、カルボン酸及び該カルボン酸の相応するエステル、3〜22個の炭素原子を有する非置換アルカン、3〜22個の炭素原子を有する非置換アルケン、3〜22個の炭素原子を有する非置換の一価アルコール、3〜22個の炭素原子を有する非置換アルデヒド、3〜22個の炭素原子を有する非置換の一価アミン、並びに、更なる置換基として1つ以上のヒドロキシ基、アミン基、ケト基、カルボキシル基、シクロプロピル基又はエポキシ官能基を有する置換化合物からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記有機物質をアルコールへと、アルデヒドへと、ケトンへと又は酸へと酸化することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記有機物質をω位で酸化することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記酸化酵素が、アルカンモノオキシゲナーゼ、キシレンモノオキシゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記アルカンモノオキシゲナーゼが、シトクロムP450モノオキシゲナーゼであることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記アルカンモノオキシゲナーゼが、グラム陰性細菌の群から選択された生物由来のalkB遺伝子でコードされるalkB遺伝子産物であることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記アルコールデヒドロゲナーゼが、alkJ遺伝子でコードされたアルコールデヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項9】
前記alkL遺伝子産物が、シュードモナス・プチダGPo1及びP1由来のalkL遺伝子によってコードされたタンパク質、該遺伝子は、配列番号1及び配列番号3によって示される、並びに
ポリペプチド配列の配列番号2若しくは配列番号4を有するタンパク質から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの微生物において、又は少なくとも1つの微生物を取り囲む培地中で実施されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記酸化酵素及び前記alkL遺伝子産物が、微生物において組み換えられて合成されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記微生物が、グラム陰性細菌の群から選択されていることを特徴とする、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
有機物質を酸化する少なくとも1つの酵素及び少なくとも1つのalkL遺伝子産物を増強して合成するように遺伝子工学的に改変された微生物において、該alkL遺伝子産物が、自然に存在する形で該alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた少なくとも1つのさらに別の遺伝子産物とは無関係に合成される微生物であって、前記遺伝子産物が、AlkF、AlkG、AlkH及びAlkKから成る群からの少なくとも1つから選択され
前記有機物質が、分枝した又は非分枝の、飽和又は不飽和の、場合により置換されたアルカン、アルケン、アルキン、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン及びエポキシドからなる群から選択されており、その際、これらは、3〜22個の炭素原子を有し、
前記alkL遺伝子産物が、シュードモナス・プチダのalkL遺伝子によってコードされていることを特徴とする微生物。
【請求項14】
有機物質を酸化する少なくとも1つの酵素の酸化速度を高めるためのalkL遺伝子産物の使用において、微生物中で合成された該alkL遺伝子産物が、自然に存在する形で該alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた、酸化酵素とは異なる少なくとも1つのさらに別の遺伝子産物とは無関係に、該微生物中又は該微生物を取り囲む培地中で使用される使用であって、前記遺伝子産物が、AlkF、AlkG、AlkH及びAlkKから成る群からの少なくとも1つから選択され
前記有機物質が、分枝した又は非分枝の、飽和又は不飽和の、場合により置換されたアルカン、アルケン、アルキン、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン及びエポキシドからなる群から選択されており、その際、これらは、3〜22個の炭素原子を有し、
前記alkL遺伝子産物が、シュードモナス・プチダのalkL遺伝子によってコードされていることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、alkL遺伝子産物を利用して有機化合物を生体触媒により酸化する方法、並びに該方法で用いられる微生物である。
【背景技術】
【0002】
例えば、シュードモナス・プチダのOCTプラスミドはalkL遺伝子を含む。このプラスミドはさらに、アルカン分解の要因となっている遺伝子産物をコードする。これらのアルカン分解遺伝子は、シュードモナスOCTプラスミド上で2つのalkオペロンに配列されている;第一のalk−オペロンは、遺伝子産物AlkB、AlkF、AlkG、AlkH、AlkJ、AlkK、及びAlkLをコードし、第二のalkオペロンは、AlkS及びAlkTをコードし、その際、AlkSは、第一のalkオペロンの発現に調節作用を及ぼす。詳細な概観及びこれらのalk−オペロンの更なる遺伝子の作用はChen et al.,J Bacteriol.1995 Dec,177(23):6894−901を参照されたい。
【0003】
さらに、EP277674からは、6〜12個の炭素原子を有する無極性の脂肪族化合物を末端ヒドロキシル化するための微生物学的方法、例えば無極性に対して抵抗性があるシュードモナス・プチダ属の微生物による1−オクタノールの製造が公知であり、その際、なかでも、alkL遺伝子を有するプラスミドpGEc47が用いられ、該プラスミドも同様にシュードモナス・プチダ由来の2つのalkオペロンを有している。alkL遺伝子の調節は、陰性オペロンプロモーターの調節下にあり、それゆえ、alkB、alkF、alkG、alkH、alkJ及びalkKと一緒に転写及び翻訳される。
【0004】
WO2002022845は、上述のプラスミドpGEc47を有する大腸菌細胞(E.coli cell)によるN−ベンジル−4−ピペリジンのヒドロキシル化によってベンジル−4−ヒドロキシピペリジンを製造する方法を記載している。
【0005】
EP0502524は、alkオペロンの種々の遺伝子産物の製造によって、例えば、alkB、alkG、alkH、alkT及びalkSの遺伝子産物をコードするが、しかし、alkLの遺伝子産物はコードしないプラスミドpGEc41により、5員環又は6員環の複素環式化合物のエチル基を末端ヒドロキシル化する微生物学的方法を記載している。そのうえまた、同出願は、pGEc41のようにalkB、alkG、alkH、alkT及びalkSを含むが、しかし、alkLは含まず、その発現が、しかし、陰性プロモーターのアルカン誘導によってのみならず、tacプロモーターのIPTG誘導によっても可能である(US5306625も参照されたい)プラスミドpGMK921を記載している。
【0006】
Schneider他は、Appl Microbiol.1998 Oct;64(10):3784−90で、シトクロムP−450BM−3及び上述のプラスミドpGEc47を用いた大腸菌内での飽和脂肪酸のそのω−1−、ω−2−及びω−3−ヒドロキシ脂肪酸への生物変換反応を記載している。
【0007】
Favre−Bulle他は、Nature Bio/Technology 9,367−371(April 1991)で、生体触媒として用いられる、pGEc47を有する大腸菌細菌によるオクタンの生体内変化を介する1−オクタン酸の製造法を記載している。2つのalkオペロンが、記載された方法で完全に発現される。
【0008】
同様の試みを、Rothen他が、Biotechnol Bioeng.1998 May 20;58(4)356−65の中で行っている。
【0009】
上記の先行技術の欠点は、所望の酸化プロセスに本質的に寄与しない遺伝子産物が、生体触媒として用いられた細胞から余計に作り出され、ひいてはその効率が低下することである。そのうえまた、不要にも共合成されたalk遺伝子産物は、場合により、例えば、中間産物が不所望の副産物に流れ出ることによって、所望の産物形成に不利益である不所望の酵素活性を保護する。有機基の所望のω−ヒドロキシル化の場合、alkJ遺伝子産物は、相応するアルデヒドの形成をもたらす。例えばalkH遺伝子産物が同時に存在する場合、発生するアルデヒドがさらにカルボン酸へと酸化される。そうして、EP0502524では、所望のヒドロキシル化された方法生成物の作製に必要とされるのは、単にalkB、alkG及びalkTの遺伝子産物のみであり、それによって、例えば遺伝子alkF、alkJ、alkH及びalkSは余計なものとなる。そのうえ、ここでの欠点とは、更なるalk遺伝子産物の合成が、宿主の物質代謝能に高い要求を課すことである。例えばAlkJは、FAD含有酵素である(Chen et al.,J.Bacteriol,(1995),6894−6901)。しかしながら、宿主のFADプールは、同様にFADを含有するalkLの不可欠の産生によってすでに負荷されている。例えば大腸菌内でのFAD合成能は限られており、また同様に極めて重要な細胞代謝のために必要とされることから、細胞はalkJ産生が不要であれば回避可能に負荷される。
【0010】
さらに、alkB、alkJ及びalkHの遺伝子産物は、細胞膜に位置するか又は細胞膜に会合している。この領域中では呼吸鎖もはびこっている。膜タンパク質の過剰の産生が、細胞膜内の変化から、サイトゾルに移動する膜ベシクルの分離に至るまで引き起こす(Nieboer et al.,Molecular Microbiology(1993)8(6),1039−1051)。これにより、なおのこと、工業的プロセスにおいて不可欠の高細胞密度発酵において、最終的に細胞の早期の溶解が生じる(Wubbolts et al.,Biotechnology and Bioengineering(1996),Vol52,301−308)。
【0011】
同様に、Schneider他においては、alkB、alkF、alkG、alkH、alkJ、alkK、alkS及びalkTの遺伝子産物は余計に合成されており、それというのも、所望の反応に用いられる本来の酵素は、シトクロムP−450BM−3モノオキシゲナーゼだからである。
【0012】
工業的プロセスに鑑みれば、プラスミドコードされた代謝経路の使用は困難である。発酵槽容量の上昇とともに、プラスミド安定性を改善する選択圧の保持のための抗生物質の使用が、一方では非常に高価となり、かつ他方では廃水が危険なものとなる。それゆえ、大規模な発酵は、ほぼ常に任意の抗生物質を投与することなく行われる。それにも関わらず、人工的な酸化代謝経路の遺伝的安定性を保証するために、使用した遺伝子を宿主生物のゲノムに組み込むことが望ましい。係る試みは、組み込まれるべき遺伝子構造が小さければ小さいほど上手くいく。ここで考察される最小遺伝子セットのalkBGTLは、すでに相当の大きさを持っているため、必ずしも必要とはされない他のどの塩基配列も回避されるべきである。
【0013】
必要な分子生物学の作業の規模を減らし、その成功の蓋然性を高めるのに加えて、可能な限り小さい構造が、宿主生物のゲノム安定性にも有益である。
【0014】
本発明の課題は、先行技術の上述の少なくとも1つの欠点を克服することができる方法を提供することであった。
【0015】
発明の詳細な説明
意想外にも、以下に記載した方法及び遺伝子工学的に改変させられた細胞が、上で設定された課題の解決に寄与することが見出された。
【0016】
それゆえ、本発明の対象は、請求項1に記載されるように、alkL遺伝子産物を利用して、酸化された有機物質を製造する方法、並びに該方法で用いられる組み換え細胞である。
【0017】
本発明の更なる対象は、酸化速度を高めるためのalkL遺伝子産物の使用である。
【0018】
利点は、例えば、細胞代謝に関して、殊に高細胞密度発酵の条件下で、上記方法においてある資源の最適な利用である。
【0019】
本発明は、少なくとも1つの酸化酵素及び少なくとも1つのalkL遺伝子産物を用いて有機物質を酸化する方法において、alkL遺伝子産物を、該alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた少なくとも1つのさらに別の遺伝子産物とは無関係に供給することを特徴とする方法を記載する。
【0020】
この発明と関連して記載されるalk遺伝子は、同じようにAlkXと呼ばれるタンパク質配列をコードする。複数の遺伝子alkX、alkY及びalkZが同時に記載される場合、命名法alkXYZ若しくはタンパク質の時と同じようにAlkXYZが用いられる。
【0021】
"有機物質の酸化"との用語は、本発明と関連して、例えば、ヒドロキシル化又はエポキシ化、アルデヒド若しくはケトンへのアルコールの変換、カルボン酸へのアルデヒドの変換又は二重結合の水素化と解される。同様に、これには、殊に複数の酸化酵素の使用によって達成することができる多段階の酸化処理も一括りにされており、例えば、複数の箇所、例えばω位及びω−1位での、種々のモノオキシゲナーゼによって触媒される、アルキル基のヒドロキシル化が挙げられる。
【0022】
"少なくとも1つの酸化酵素及び少なくとも1つのalkL遺伝子産物を用いて"との用語は、本発明と関連して、酵素及び遺伝子産物を目的に合わせて供給すること、具体的には、すべての個々の酵素又は遺伝子産物それ自体を自然界で観察して見出せないような形態において供給することと解される。これは、例えば、細胞内での使用したタンパク質の異種生産若しくは過剰生産によってか、又は少なくとも部分的に精製されたタンパク質の供給によって行われることができる;しかし、この場合、自然界に存在する酵素と比べて変化した環境が含まれており、例えば、酵素を含んでいる自然細胞が変化されて、それが、例えば特定の他のタンパク質を変化した形で、例えば減衰した形で又は増強した形で又は点突然変異を備えた形で作るような環境も含まれている。
【0023】
"alkL遺伝子産物"との用語は、本発明と関連して、以下2つの条件の少なくとも1つを満たすタンパク質と解される:
1.)タンパク質は、OmpWタンパク質のスーパーファミリーの一因として同定され("National Center for Biotechnology Information"(NCBI)の"Conversed Domain Database"(CDD)中のタンパク質ファミリー3922)、その際、この分類は、標準検索条件(0.01より小さい閾値(英語"e−value"))の利用及びアルゴリズム"blastp 2.2.23+"の使用下で、2010年3月22日までに寄託されたNCBIのCDDにあるデータバンク登録を有するタンパク質のアミノ酸配列のアライメントによって行われ、
2.)RPS−BLASTによるNCBI CDD中の該当するアミノ酸配列中に含まれる保存されたタンパク質ドメインの検索に際して、1×10-5より小さい閾値(英語"e−value")を有する保存されたドメイン"OmpQW、Outer membrane protein W"(COG3047)の存在が確かめられる。
【0024】
"alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた少なくとも1つのさらに別の遺伝子産物とは無関係に"との用語は、本発明と関連して、自然に存在する形でalkL遺伝子産物の発生に結び付いている少なくとも1つのさらに別のalk遺伝子産物とは無関係であるalkL遺伝子産物を提供することと解される。例えば、遺伝子alkBFGHJKLを含んでいるオペロン中で、それぞれalkBFGHJ及びKのalk遺伝子産物はalkL遺伝子産物の発生に結び付いており、それというも、これらは同一のプロモーターを介して供給されるからである。
【0025】
全ての百分率による記載値(%)は、別記しない限り、質量パーセントである。
【0026】
本発明による方法は、各々の有機物質の酸化のために使用される酸化酵素に依存して用いられることができ、該有機物質は、この酸化酵素により基質として受容される;有利な有機物質は、有利には、分枝した又は非分枝の、有利には非分枝の、飽和又は不飽和の、有利には飽和の、場合により置換されたアルカン、アルケン、アルキン、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン及びエポキシドから成るものを含む群から選択されており、その際、これらは、有利には3〜22個、殊に6〜18個、さらに有利には8〜14個、殊に12個の炭素原子を有する。
【0027】
本発明による方法における特に有利な有機物質は、有利には、殊に3〜22個、有利には6〜18個、特に有利には8〜14個の炭素原子を有するカルボン酸及び該カルボン酸の相応するエステル、殊にアルカンのカルボン酸、殊にアルカンの非分枝カルボン酸、殊にラウリン酸及びラウリン酸のエステル、殊にラウリン酸メチルエステル及びラウリン酸エチルエステル、デカン酸、デカン酸エステル、ミリスチン酸及びミリスチン酸エステル、
3〜22個、有利には6〜18個、特に有利には8〜14個の炭素原子を有する非置換アルカン、有利には非分枝の、殊に、有利にはオクタン、デカン、ドデカン及びテトラデカンから成るものを含む群から選択されたアルカン、
3〜22個、有利には6〜18個、特に有利には8〜14個の炭素原子を有する非置換アルケン、有利には非分枝の、殊に、有利にはトランス−オクタ−1−エン、トランス−ノン−1−エン、トランス−デカ−1−エン、トランス−ウンデカ−1−エン、トランス−ドデカ−1−エン、トランス−トリデカ−1−エン、トランス−テトラデ−1−セン、シス−オクタ−1−エン、シス−ノン−1−エン、シス−デカ−1−エン、シス−ウンデカ−1−エン、シス−ドデカ−1−エン、シス−トリデカ−1−エン、シス−テトラデ−1−セン、トランス−オクタ−2−エン、トランス−ノン−2−エン、トランス−デカ−2−エン、トランス−ウンデカ−2−エン、トランス−ドデカ−2−エン、トランス−トリデカ−2−エン及びトランス−テトラデカ−2−エン、トランス−オクタ−3−エン、トランス−ノン−3−エン、トランス−デカ−3−エン、トランス−ウンデカ−3−エン、トランスドデカ−3−エン、トランス−トリデカ−3−エン及びトランス−テトラデカ−3−エン、トランス−オクタ−4−エン、トランス−ノン−4−エン、トランス−デカ−4−エン、トランス−ウンデカ−4−エン、トランス−ドデカ−4−エン、トランス−トリデカ−4−エン、トランス−テトラデカ−4−エン、トランス−デカ−5−エン、トランス−ウンデカ−5−エン、トランス−ドデカ−5−エン、トランス−トリデカ−5−エン、トランス−テトラデカ−5−エン、トランス−ドデカ−6−エン、トランス−トリデカ−6−エン、トランス−テトラデカ−6−エン及びトランス−テトラデカ−7−エンから成るものを含む群から選択されたアルケン、特に有利には、トランス−オクタ−1−エン、トランス−デカ−1−エン、トランス−ドデカ−1−エン、トランス−テトラデ−1−セン、シス−オクタ−1−エン、シス−デカ−1−エン、シス−ドデカ−1−エン、シス−テトラデ−1−セン、トランス−オクタ−2−エン、トランス−デカ−2−エン、トランス−ドデカ−2−エン及びトランス−テトラデカ−2−エン、トランス−オクタ−3−エン、トランス−デカ−3−エン、トランス−ドデカ−3−エン及びトランス−テトラデカ−3−エン、トランス−オクタ−4−エン、トランス−デカ−4−エン、トランス−ドデカ−4−エン、トランス−テトラデカ−4−エン、トランス−デカ−5−エン、トランス−ドデカ−5−エン、トランス−テトラデカ−5−エン、トランス−ドデカ−6−エン、トランス−テトラデカ−6−エン及びトランス−テトラデカ−7−エンから成る群から選択されたアルケン、
3〜22個、有利には6〜18個、特に有利には8〜14個の炭素原子を有する非置換の一価アルコール、有利には非分枝の、殊に、有利には1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール及び1−テトラデカノールから成るものを含む群から選択されたアルコール、
特に有利には1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール及び1−テトラデカノールから成るものを含む群から選択されたアルコール、
3〜22個、有利には6〜18個、特に有利には8〜14個の炭素原子を有する非置換アルデヒド、有利には非分枝の、殊に、有利にはオクタノール、ノナナール、デカナール、ドデカナール及びテトラデカナールから成るものを含む群から選択されたアルデヒド、
3〜22個、有利には6〜18個、特に有利には8〜14個の炭素原子を有する非置換の一価アミン、有利には非分枝の、殊に、有利には1−アミノ−オクタン、1−アミノ−ノナン、1−アミノ−デカン、1−アミノ−ウンデカン、1−アミノ−ドデカン、1−アミノ−トリデカン及び1−アミノ−テトラデカンから成るものを含む群から選択されたアミン、
特に有利には1−アミノ−オクタン、1−アミノ−デカン、1−アミノ−ドデカン及び1−アミノ−テトラデカンから成るものを含む群から選択されたアミン、
並びに、殊に更なる置換基として1つ以上のヒドロキシ基、アミン基、ケト基、カルボキシル基、シクロプロピル基又はエポキシ官能基を有する置換化合物、殊に、有利には1、8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、8−アミノ−[1−オクタノール]、9−アミノ−[1−ノナノール]、10−アミノ−[1−ドデカノール]、11−アミノ−[1−ウンデカノール]、12−アミノ−[1−ドデカノール]、13−アミノ−[1−トリデカノール]、14−アミノ−[1−テトラデカノール]、8−ヒドロキシ−[1−オクタナール]、9−ヒドロキシ−[1−ノナナール]、10−ヒドロキシ−[1−デカナール]、11−ヒドロキシ−[1−ウンデカナール]、12−ヒドロキシ−[1−ドデカナール]、13−ヒドロキシ−[1−トリデカナール]、14−ヒドロキシ−[1−テトラデカナール」、8−アミノ−[1−オクタナール]、9−アミノ−[1−ノナナール]、10−アミノ−[1−デカナール]、11−アミノ−[1−ウンデカナール]、12−アミノ−[1−ドデカナール]、13−アミノ−[1−トリデカナール]、14−アミノ−[1−テトラデカナール]、8−ヒドロキシ−[1−オクタン酸]、9−ヒドロキシ−[1−ノナン酸]、10−ヒドロキシ−[1−デカン酸]、11−ヒドロキシ−[1−ウンデカン酸]、12−ヒドロキシ−[1−ドデカン酸]、13−ヒドロキシ−[1−ウンデカン酸]、14−ヒドロキシ−[1−テトラデカン酸]、8−ヒドロキシ−[1−オクタン酸−メチルエステル]、9−ヒドロキシ−[1−ノナン酸−メチルエステル]、10−ヒドロキシ−[1−デカン酸−メチルエステル]、11−ヒドロキシ−[1−ウンデカン酸−メチルエステル]、12−ヒドロキシ−[1−ドデカン酸−メチルエステル]、13−ヒドロキシ−[1−ウンデカン酸−メチルエステル]、14−ヒドロキシ−[1−テトラデカン酸−メチルエステル]、8−ヒドロキシ−[1−オクタン酸−エチルエステル]、9−ヒドロキシ−[1−ノナン酸−エチルエステル]、10−ヒドロキシ−[1−デカン酸−エチルエステル]、11−ヒドロキシ−[1−ウンデカン酸−エチルエステル]、12−ヒドロキシ−[1−ドデカン酸−エチルエステル]、13−ヒドロキシ−[1−ウンデカン酸−エチルエステル]及び14−ヒドロキシ−[1−テトラデカン酸−エチルエステル]から成るものを含む群から選択された置換化合物、
特に有利には1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、8−アミノ−[1−オクタノール]、10−アミノ−[1−ドデカノール]、12−アミノ−[1−ドデカノール]、14−アミノ−[1−テトラデカノール]、8−ヒドロキシ−[1−オクタナール]、10−ヒドロキシ−[1−デカナール]、12−ヒドロキシ−[1−ドデカナール]、14−ヒドロキシ−[1−テトラデカナール]、8−アミノ−[1−オクタナール]、10−アミノ−[1−デカナール]、12−アミノ−[1−ドデカナール]、14−アミノ−[1−テトラデカナール]、8−ヒドロキシ−[1−オクタン酸]、10−ヒドロキシ−[1−デカン酸]、12−ヒドロキシ−[1−ドデカン酸]、14−ヒドロキシ−[1−テトラデカン酸]、8−ヒドロキシ−[1−オクタン酸−メチルエステル]、10−ヒドロキシ−[1−デカン酸−メチルエステル]、12−ヒドロキシ−[1−ドデカン酸−メチルエステル]、14−ヒドロキシ−[1−テトラデカン酸−メチルエステル]、8−ヒドロキシ−[1−オクタン酸−エチルエステル]、10−ヒドロキシ−[1−デカン酸−エチルエステル]、12−ヒドロキシ−[1−ドデカン酸−エチルエステル]及び14−ヒドロキシ−[1−テトラデカン酸−エチルエステル]、ここで、ラウリン酸及びラウリン酸のエステル、殊にラウリン酸メチルエステル及びラウリン酸エチルエステルが特に有利である、から成るものを含む群から選択されている置換化合物、
から成るものを含む群から選択されている。
【0028】
本発明による方法では、使用される酸化酵素及び使用される有機物質に依存して様々の酸化産物、殊にアルコール、アルデヒド、ケトン及びカルボン酸を製造することができる。これらの酸化産物は、例えば、本発明による方法によって、以下にリストアップした有機物質の変換によって得られることができる:
− アルカン/アルケン/アルキンからアルコール(例えばモノオキシゲナーゼを用いて)
− アルコールからアルデヒド(例えばアルコールデヒドロゲナーゼ又はアルコールオキシダーゼを用いて)
− アルコールからケトン(例えばアルコールデヒドロゲナーゼ又はアルコールオキシダーゼを用いて)
− アルデヒドからカルボン酸(例えばアルデヒドデヒドロゲナーゼを用いて)
− エポキシドからシアンヒドリン(例えばハロヒドリンデハロゲナーゼを用いて)。
【0029】
これと関連して、アルコール及びアルデヒド、有利にはアルコール、殊にω−アルコール、極めて有利にはω−ヒドロキシカルボン酸の、本発明による方法を用いた、殊にヒドロキシル化反応の形態での製造が有利である。
【0030】
本発明による方法において、有機物質、殊にカルボン酸及びカルボン酸エステルは、好ましくはω位で酸化されることができる。
【0031】
本発明による方法において、当業者に公知の全ての公知の酸化酵素が用いられることができ、それというのも、供給されるalkL遺伝子産物の働きは、これとは無関係だからである。係る酵素は、オキシドレダクターゼの用語で当業者によく知られており、国際生化学分子生物学連合の酵素委員会の体系的命名法の酵素分類EC 1.X.X.Xに見出される。
【0032】
有利には、本発明による方法において、酸化酵素としてアルカンモノオキシゲナーゼ、キシレンモノオキシゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼ、好ましくはアルカンモノオキシゲナーゼが用いられる。キシレンモノオキシゲナーゼの適した遺伝子は、例えばxylM遺伝子又はxylA遺伝子であり、その際、これら両方の遺伝子を含んでいるプラスミドが、GENBANK−Accession−Number M37480を有する。
【0033】
特に有利なアルカンモノオキシゲナーゼは、これと関連して、それが、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(Cytochrom−P450−Monoxygenasen)、酵母、ピチア属(Pichia)、ヤロウイア(Yarrowia)及びカンジダ(Candida)、例えばカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)又はカンジダ・マレトサ(Candida maltosa)由来の、又は植物、例えばヒヨコマメ(Cicer arietinum L.)由来の、又は哺乳類、例えばドブネズミ(Rattus norvegicus)由来のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ、殊にCYP4A1であることを特徴としている。カンジダ・トロピカリス由来の適したシトクロムP450モノオキシゲナーゼの遺伝子配列は、例えばWO−A−00/20566に開示されており、その一方で、ヒヨコマメ(Kichererbse)由来の適したシトクロムP450モノオキシゲナーゼの遺伝子配列は、例えばBarz他から"Cloning and characterization of eight cytochrome P450 cDNAs from chickpea(Cicer arietinum L.)cell suspension cultures",Plant Science Vol.155の第101頁〜第108頁(2000)の中で参照されることができる。
【0034】
更なる有利なアルカンモノオキシゲナーゼは、シュードモナス・プチダGPo1由来のalkオペロンのalkB遺伝子によりコードされる。
【0035】
alkB遺伝子配列の分離は、例えばvan Beilen他より"Functional Analysis of Alkane Hydroxylases from Gram−Negative and Gram−Positive Bacteria",Journal of Bacteriology,Vol.184(6)の第1.733頁〜第1.742頁(2002)に記載されている。alkB遺伝子の更なる相同体はまた、van Beilen他から"Oil & Gas Science and Technology",Vol.58(4)の第427頁〜第440頁(2003)の中で参照されることができる。
【0036】
さらに有利なアルカンモノオキシゲナーゼは、グラム陰性細菌の群から選択された、殊にシュードモナス類の群から、そこではシュードモナス属、特にシュードモナス・メンドシナ属(Pseudomonas mendocina)、オセアニコウリス(Oceanicaulis)属、有利にはオセアニコウリス・アレクサンドリイ(Oceanicaulis alexandrii)HTCC2633、カウロバクター属(Caulobacter)、有利にはカウロバクター sp.K31、マリノバクター属(Marinobactor)、有利にはマリノバクター・アクアエオレイ(Marinobactor aquaeolei)、特に有利にはマリノバクター・アクアエオレイ VT8、アルカニボラックス属(Alcanivorax)、有利にはアルカニボラックス・ホルクメンシス(Alcanivorax borkumensis)、アセトバクター属(Acetobacter)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アシディフィラム属(Acidiphilium)、アシドボラックス属(Acidovorax)、アエロミクロビウム属(Aeromicrobium)、アルカリリムニコラ属(Alkalilimnicola)、アルテロモナダレス属(Alteromonadales)、アナベナ属(Anabaena)、アロマトレウム属(Aromatoleum)、アゾアルカス属(Azoarcus)、アゾスピリルム属(Azospirillum)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ボルデテラ属(Bordetella)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、バークホルデリア属(Burkholderia)、クロロビウム属(Chlorbium)、シトレイセラ属(Citreicella)、クロストリジウム属(Clostridium)、コルウェリア属(Colwellia)、コマモナス属(Comamonas)、コネキシバクタ−属(Conexibacter)、コングレギバクター属(Congregibacter)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、カプリアビダス属(Cupriavidus)、シアノセイス属(Cyanothece)、デルフチア属(Delftia)、デスルホミクロビウム属(Desulfomicrobium)、デスルホホナトロノスピラ属(Desulfonatoronospira)、デチオバクター属(Dethiobacter)、ジノロセオバクター属(Dinoroseobacter)、エリスロバクター属(Erythrobacter)、フランシセラ属(Francisella)、グラシエコラ属(Glaciecola)、ゴルドニア属(Gordonia)、グリモンチア属(Grimontia)、ハヘラ属(Hahella)、ハロテリゲナ属(Haloterrigena)、ハロチオバチルス属(Halothiobacillus)、ホエフレア属(Hoeflea)、ヒポモナス属(Hypomonas)、ジャニバクター属(Janibacter)、ヤナシア属(Jannaschia)、ヨンクエテラ属(Jonquetella)、クレブシエラ属(Klebsiella)、レギオネラ属(Legionella)、リムノバクター属(Limnobacter)、ルチエラ属(Lutiella)、マグネトスピリラム属(Magnetospirillum)、メソリゾビウム属(Mesorhizobium)、メチリビウム属(Methylibium)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、メチロファーガ属(Methylophaga)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、ノカルディア属(Nocardia)、ネンジュモ属(Nostoc)、ノボスフィンゴビウム属(Novosphingobium)、オクタデカバクター属(Octadecabacter)、パラコッカス属(Paracoccus)、パルビバクラム属(Parvibaculum)、パルブラルクラ属(Parvularcula)、ペプトストレプトコッカス属(Peprostreptococcus)、フェオバクター属(Phaeobacter)、フェニロバクテリウム属(Phenylobacterium)、フォトバクテリウム属(Photobacterium)、ポラロモナス属(Polaromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、シュードアルテロモナス属(Pseudoalteromonas)、シュードビブリオ属(Pseudovibrio)、サイクロバクター属(Psychrobacter)、サイクロフレクサス属(Psychrofexus)、ラルストニア属(Ralstonia)、ロドバクター属(Rhodobacter)、ロドコッカス属(Rhodocuccus)、ロドフェラックス属(Rhodoferax)、ロドミクロビウム属(Rhodomicrobium)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、ロドスピリルム属(Rhodospirillum)、ロゼオバクター属(Roseobacter)、ロゼオバリウス属(Roseovarius)、ルエゲリア属(Ruegeria)、サギツラ属(Sagittula)、シェワネラ属(Shewanella)、シリシバクター属(Silicibacter)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、スチグマテラ属(Stigmatella)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、スルフィトバクター属(Sulfitobacter)、スルフリモナス属(Sulfurimonas)、スルフロバム属(Sulfurovum)、シネココッカス属(Synechococcus)、タラシオビウム属(Thalassiobium)、サーモコッカス属(Thermococcus)、サーモノスポラ属(Thermonospora)、チオアルカリビブリオ属(Thioalkalivibrio)、チオバチルス属(Thiobacillus)、チオミクロスピラ属(Thiomicrospira)、チオモナス属(Thiomonas)、ツカムレラ属(Tsukamurella)、ビブリオ属(Vibrio)又はサントモナス属(Xanthomonas)の群から選択された生物由来のalkB遺伝子よりコードされるalkB遺伝子産物であり、その際、アルカニボラックス・ホルクメンシス、オセアニコウリス・アレクサンドリイHTCC2633、カウロバクター sp.K31及びマリノバクター・アクアエオレイ VT8由来のものが特に有利である。これと関連して、AlkBに加えてalkG−及びalkT遺伝子産物が供給されると好ましい;これらは、alkB遺伝子産物に寄与する生物から分離可能な遺伝子産物であるか、又は、しかし、シュードモナス・プチダGPo1由来のalkG及びalkTであってもよい。
【0037】
有利なアルコールデヒドロゲナーゼは、例えば、aklJ遺伝子よりコードされた酵素(EC 1.1.99.8)、殊にalkJ遺伝子よりコードされたシュードモナス・プチダGPo1由来の酵素である(van Beilen et al.,Molecular Microbiology),(1992)6(21),3121−3136)。シュードモナス・プチダGPo1、アルカニボラックス・ホルクメンシス、ボルデテラ・パラペルツッシス(Bordetella parapertussis)、ホルデテラ・ブロンキセプティカ(Bordetella bronchiseptica)由来又はロゼオバクター・デニトリフィカンス(Roseobacter denitrificans)由来のalkJ遺伝子の遺伝子配列は、例えばKEGG遺伝子データバンク(京都遺伝子ゲノム百科事典)より参照することができる。さらに有利なアルコールデヒドロゲナーゼは、グラム陰性細菌の群から選択された、殊にシュードモナス類の群から、そこではシュードモナス属、特にシュードモナス・メンドシナ属、オセアニコウリス属、有利にはオセアニコウリス・アレクサンドリイHTCC2633、カウロバクター属、有利にはカウロバクター sp.K31、マリノバクター属、有利にはマリノバクター・アクアエオレイ、特に有利にはマリノバクター・アクアエオレイ VT8、アルカニボラックス属、有利にはアルカニボラックス・ホルクメンシス、アセトバクター属、アクロモバクター属、アシディフィラム属、アシドボラックス属、アエロミクロビウム属、アルカリリムニコラ属、アルテロモナダレス属、アナベナ属、アロマトレウム属、アゾアルカス属、アゾスピリルム属、アゾトバクター属、ボルデテラ属、ブラディリゾビウム属、バークホルデリア属、クロロビウム属、シトレイセラ属、クロストリジウム属、コルウェリア属、コマモナス属、コネキシバクタ−属、コングレギバクター属、コリネバクテリウム属、カプリアビダス属、シアノセイス属、デルフチア属、デスルホミクロビウム属、デスルホホナトロノスピラ属、デチオバクター属、ジノロセオバクター属、エリスロバクター属、フランシセラ属、グラシエコラ属、ゴルドニア属、グリモンチア属、ハヘラ属、ハロテリゲナ属、ハロチオバチルス属、ホエフレア属、ヒポモナス属、ジャニバクター属、ヤナシア属、ヨンクエテラ属、クレブシエラ属、レギオネラ属、リムノバクター属、ルチエラ属、マグネトスピリラム属、メソリゾビウム属、メチリビウム属、メチロバクテリウム属、メチロファーガ属、マイコバクテリウム属、ナイセリア属、ニトロソモナス属、ノカルディア属、ネンジュモ属、ノボスフィンゴビウム属、オクタデカバクター属、パラコッカス属、パルビバクラム属、パルブラルクラ属、ペプトストレプトコッカス属、フェオバクター属、フェニロバクテリウム属、フォトバクテリウム属、ポラロモナス属、プレボテラ属、シュードアルテロモナス属、シュードビブリオ属、サイクロバクター属、サイクロフレクサス属、ラルストニア属、ロドバクター属、ロドコッカスバクター属、ロドフェラックス属、ロドミクロビウム属、ロドシュードモナス属、ロドスピリルム属、ロゼオバクター属、ロゼオバリウス属、ルエゲリア属、サギツラ属、シェワネラ属、シリシバクター属、ステノトロホモナス属、スチグマテラ属、ストレプトマイセス属、スルフィトバクター属、スルフリモナス属、スルフロバム属、シネココッカス属、タラシオビウム属、サーモコッカス属、サーモノスポラ属、チオアルカリビブリオ属、チオバチルス属、チオミクロスピラ属、チオモナス属、ツカムレラ属、ビブリオ属又はサントモナス属の群から選択された生物由来のalkJ遺伝子よりコードされるものである。
【0038】
本発明による方法において用いられる有利なalkL遺伝子産物は、alkL遺伝子産物の作製が野生の宿主においてジシクロプロピルケトンによって誘発されることを特徴としている;これと関連して、alkL遺伝子の発現が遺伝子の一群として、例えばオペロンといったレギュロン内で起こることがさらに有利である。
【0039】
本発明による方法において用いられるalkL遺伝子産物は、有利には、グラム陰性細菌の群から、殊に、有利にはシュードモナス、特にシュードモナス・プチダ、殊にシュードモナス・プチダ、殊にシュードモナス・プチダGPo1及びPl、アゾトバクター、デスルフィトバクテリウム(Desulfitobacterium)、バークホルデリア、有利にはバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、サントモナス、ロドバクター、ラルストニア、デルフチア及びリケッチア(Rickettsia)、オセアニコウリス属、有利にはオセアニコウリス・アレクサンドリイHTCC2633、カウロバクター属、有利にはカウロバクター sp.K31、マリノバクター属、有利にはマリノバクター・アクアエオレイ、特に有利にはマリノバクター・アクアエオレイ VT8及びロドシュードモナス属から成るものを含む群から選択された生物由来のalkL遺伝子によりコードされる。
【0040】
alkL遺伝子産物が、本発明により用いられる酸化酵素とは別の生物に由来する場合に好ましい。
【0041】
これと関連して、極めて有利なalkL遺伝子産物は、シュードモナス・プチダGPo1及びP1由来のalkL遺伝子によってコードされており(これらは、配列番号1及び配列番号3によって示される)、並びにポリペプチド配列の配列番号2若しくは配列番号4を有するタンパク質、又は配列番号2若しくは配列番号4に対してアミノ酸残基の60%まで、有利には25%まで、特に有利には15%まで、殊に10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%までが欠失、挿入、置換又はそれらの組合せによって改変されており、かつ、それぞれ配列番号2若しくは配列番号4の基準配列を有するタンパク質の活性の、なお少なくとも50%、有利には65%、特に有利には80%、殊に90%超を有するポリペプチド配列を有するタンパク質であり、その際、基準タンパク質の活性100%とは、生体触媒として用いられた細胞の活性の上昇、つまり、基準タンパク質なしの生体触媒の活性と比較した、使用された細胞量を基準とした単位時間当たりに変換された物質量(細胞乾燥重量(cell dry weight)1グラム当たりの単位[U/gCDW])と解され、具体的には、酸化酵素としてP.Putida GPo1由来のalkBGTの遺伝子産物を、大腸菌細胞内でラウリン酸メチルエステルを12−ヒドロキシラウリン酸メチルエステルへと変換させるために用いている実施例において記載される系でのものと解される。酸化速度を測定するための選択法は、実施例から読み取ることができる。ここでは、単位の定義に関して、酵素反応速度において通常用いられる定義が当てはめられる。1単位の生体触媒が、1μmolの基質を1分間で産物に変換する。
【0042】
1U=1μmol/min
【0043】
所与のポリペプチドの特性及び作用に本質的な変化をもたらさない、所与のポリペプチド配列のアミノ酸残基の改変は当業者に公知である。例えば、しばしば、多くのアミノ酸は、問題なく互いに交換されることができる;係る適したアミノ酸置換の例は以下のものである:AlaとSer;ArgとLys;AsnとGln又はHis;AspとGlu;CysとSer;GlnとAsn;GluとAsp;GlyとPro;HisとAsn又はGln;IleとLeu又はVal;LeuとMet又はVal;LysとArg又はGln又はGlu;MetとLeu又はIle;PheとMet又はLeu又はTyr;SerとThr;ThrとSer;TrpとTyr;TyrとTrp又はPhe;ValとIle又はLue。
【0044】
同様に、例えばアミノ酸の挿入又は欠失の形態における、ポリペプチドの特にN末端又はC末端の改変は、しばしば、ポリペプチドの機能に本質的な影響を及ぼさないことが知られている。本発明により有利な方法は、さらに別の遺伝子産物が、AlkB,AlkF、AlkG、AlkH、AlkHJ、及びAlkKから成る群から、殊にAlkF、AlkG、AlkH、AlkJ、及びAlkLKから成る群からの少なくとも1つから選択されており、その際、さらに別の遺伝子産物は、殊に、有利には遺伝子組合せ:alkBF、alkBG、alkFG、alkBJ、alkFJ、alkGT、alkBH、alkFH、alkGH、alkJH、alkBK、alkFK、alkGK、alkJK、alkHK、alkBFJ、alkBFH、alkBFK、alkBGJ、alkFGJ、alkBGH、alkFGH、alkBGK、alkFGK、alkBJH、alkFJH、alkGJH、alkBJK、alkFJK、alkGJK、alkFHK、alkBHK、alkFHK、alkGHK、alkBGJH、alkBGJK、alkBGHK、alkBFGJ、alkBFGH、alkFGJH、alkBFGK、alkFGJK、alkGJHK、alkBFJH、alkBFJK、alkFJHK、alkBFHK、alkBFGJH、alkBFGJK及びalkBFGJHK、殊にalkFHJK及びalkBFGHJKから成るものを含む群から選択されている。
【0045】
本発明による方法にとって、酸化酵素及びalkL遺伝子産物が微生物によって供給される場合に好ましい。その際、2つの酵素はそれぞれ別個に、それぞれ1つの微生物で供給するか、又は一緒に1つの微生物で供給してよく、その際、後者が好ましい。それゆえ、本発明による有利な方法は、酸化酵素及びalkL遺伝子産物を供給する少なくとも1つの微生物中で又は該少なくとも1つの微生物を取り囲む培地中で実施されることを特徴としている。
【0046】
これと関連して、酸化酵素及びalkL遺伝子産物が少なくとも1つの微生物で組み換えられて供給されることが有利である。
【0047】
ここで、組み換え製造に関する以下の説明は、酸化酵素にもalkL遺伝子産物にも関係している。
【0048】
基本的に、組み換え製造は、タンパク質をコードする1つの遺伝子配列若しくは複数の遺伝子配列のコピー数を向上させ、遺伝子の改変プロモーターを使用し、遺伝子のコドン利用を改変し、様々な手法でmRNA又は酵素の半減期を向上させ、遺伝子の発現を調節するか又は相応するタンパク質をコードする遺伝子又は対立遺伝子を利用し、かつ場合によってはこれらの措置を組み合わせることによって行われることができる。
【0049】
係る遺伝子を備えた細胞は、例えば、形質転換、形質導入、コンジュゲーション又はこれら方法の組み合わせによって、ベクターを用いて作製され、該ベクターは、所望の遺伝子、この遺伝子の対立遺伝子又はこの部分及びこの遺伝子の発現を可能にするプロモーターを含有する。この非相同発現は、殊に細胞の染色体中への遺伝子又は対立遺伝子の挿入、又は染色体外で複製するベクターによって実現される。
【0050】
イソクエン酸リアーゼの例を用いた細胞内での組み換え製造の可能性についての概観をEP0839211が示し、該文献は参照によって組み入れ、また該文献の開示内容は、細胞内での組み換え製造の可能性に関して、本発明の開示内容の一部を成す。
【0051】
前述の、そして後述の全てのタンパク質若しくは遺伝子の供給若しくは製造若しくは発現は、1次元及び2次元ゲル電気泳動、並びに引き続き相応する評価ソフトウェアを用いたゲル中でのタンパク質濃度の光学的同定によって検出可能である。見出された発現能が、もっぱら相応する遺伝子の発現の増大に基づく場合、組み換え発現の定量化は簡単に1次元若しくは2次元タンパク質によって野生型と遺伝子工学的に改変された細胞との間で測定されることができる。コリネフォルム細菌にてタンパク質ゲルを調製するための及び該タンパク質を同定するための慣例の方法は、Hermann他(Electrophoresis,22:1712.23(2001)によって記載された手法である。タンパク質濃度は、同様に、検出されるべきタンパク質に特化した抗体を用いたウエスタンブロットハイブリダイゼーション(Sambrook et al.,Molecular Cloning:a laboratory manual,2nd Ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.USA,1989)及び引き続く濃度測定のための相応するソフトウェアを用いた光学的評価によって分析されることができる。
【0052】
組み換え発現が、タンパク質の合成の向上によって行われる場合、例えば、相応する遺伝子のコピー数を向上させるか、又はプロモーター領域及び調節領域若しくはリボソーム結合部位(構造遺伝子の上流に存在する)を突然変異させる。誘発可能なプロモーターによって、さらに、すべの任意の時点で発現を高めることが可能である。そのうえ、タンパク質遺伝子には調節配列として、一方で、いわゆる"エンハンサー"も組み込まれていてよく、これは同様に、RNAポリメラーゼとDNAとの改善された相互作用により、高められた遺伝子発現を引き起こす。mRNAの寿命を延ばすことによって、同様に発現は改善される。
【0053】
そのつどの遺伝子の組み換え発現を向上させるために、例えばエピソーム性プラスミドが用いられる。プラスミド若しくはベクターとして、原則的に、当業者にこの目的のために提供される全ての実施形態が考慮に入れられる。この種のプラスミド及びベクターについては、例えば、Novagen社、Promega,New England Biolabs Clontech又はGibco BRLのパンフレットを参照することができる。更なる有利なプラスミド及びベクターは、以下に見出すことができる:Glover,D.M.(1985),DNA cloning:a practical approach,Vol.I−III,IRL Press Ltd.,Oxford;Rodriguez,R.L.及びDenhardt,D.T(eds)(1988),Ve cloning vectors and their uses,179−204,Butterworth,Stoneham;Goeddel,D.V.(1990),Systems for heterologous gene expression,Methods Enzymol.185,3−7;Sambrook,J.;Fritsch,E.F.及びManiatis,T.(1989),Molecular cloning:a laboratory manual、2nd ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York。
【0054】
増幅されるべき遺伝子を含有するプラスミドベクターを、引き続きコンジュゲーション又は形質転換によって所望の菌株に移す。コンジュゲーションの方法は、例えばSchaefer et al.,Applied and Environmental Microbiology 60:756−759(1994)に記載されている。形質転換のための方法は、例えばThierbach et al.,Applied Microbiology and Biotechnology 29:356−362(1988),Dunican及びShivnan,Bio/Technology 7:1067−1070(1989)及びTauch et al.,FEMS Microbiology Letters 123:343−347(1994)に記載されている。"交差"事象による相同性組み換え後に、結果生じる菌株は、当該遺伝子の少なくとも2つのコピーを含む。
【0055】
それゆえ、本発明による方法においては、組み換え微生物を用いることが有利であり、良好な遺伝作業に基づき、微生物は、有利には、細菌、殊にグラム陰性細菌の群から、特に、有利には大腸菌、シュードモナス・エスピー、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・アシドボランス(Pseudomonas acidovorans)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、アシドボラックス・エスピー、アシドボラックス・テンペランス(Acidovorax temperans)、アシネトバクター・エスピー(Acinetobacter sp.)、バークホルデリア・エスピー、シアノバクテリア(Cyanobakterien)、クレブシエラ・エスピー、サルモネラ・エスピー、リゾビウム・エスピー及びリゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)から成るものを含む群から選択されており、その際、大腸菌が特に有利である。
【0056】
本発明による方法において用いられる細胞も、同じように本発明の構成部分を成す。
【0057】
したがって、有機物質を酸化する少なくとも1つの酵素及び少なくとも1つのalkL遺伝子産物(その際、該alkL遺伝子産物は、該alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた少なくとも1つのさらに別の遺伝子産物とは無関係に合成される)を大いに合成するように遺伝子工学的に改変された微生物は、本発明の対象である。
【0058】
有利な酸化酵素は、これと関連して、本発明による方法において有利には使用される同じ酸化酵素である;同じことが、有利なalkL遺伝子産物、有利には該alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた遺伝子産物、有利な有機物質、並びに有利な微生物に当てはめられる。
【0059】
もう一つの本発明の対象は、有機物質を酸化する少なくとも1つの酵素の酸化速度を高めるために、有利には微生物における、alkL遺伝子産物の使用であって、該alkL遺伝子産物は、該alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた少なくとも1つのさらに別の遺伝子産物とは無関係に使用されることを特徴とする。
【0060】
これと関連して、酸化は、有利にはアルデヒド又はアルコール、殊にアルコールを得るための有機物質の酸化である。したがって、これと関連して、有利にはヒドロキシル化の度合いが、殊にカルボン酸の場合にはω位で、有利にはカルボン酸及びそのエステルを、相応するω−ヒドロキシル化化合物へと変換すること、殊にドデカン酸メチルエステルをヒドロキシドデカン酸メチルエステルへと変換することに関して高められる。有利な酸化酵素は、これと関連して、本発明による方法で有利には使用される同じ酸化酵素である;同じことが、有利なalkL遺伝子産物、有利には該alkL遺伝子を含むalkオペロンによってコードされた遺伝子産物、有利な有機物質、並びに有利な微生物に当てはめられる。
【0061】
以下に記載した実施例は、本発明を例示的に説明するものであって、本発明(その適用の幅は、明細書の全開示内容及び特許請求の範囲からもたらされる)は、該実施例に挙げた実施形態に制限されるべきではない。
【0062】
後続の図は、例の一部を構成する:
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】大腸菌プラスミド"pBT10_alkL"を示す図
【実施例】
【0064】
比較例1:AlkBGTの発現ベクター
alkLを有さないシュードモナス・プチダGPo1由来のアルカンヒドロキシラーゼ系の発現ベクター
【0065】
pCOM系(Smits et al.,2001 プラスミド 64:16−24)から出発して、構造pBT(配列番号5)を製造し、これは、シュードモナス・プチダ由来の3つの成分アルカンヒドロキシラーゼ(AlkB)、ルブレドキシン(AlkG)及びルブレドキシン−レダクターゼ(AlkT)を有する。これら3つの遺伝子の発現のために、alkBFG遺伝子配列を、alkBプロモーターの制御下におき、かつalkT遺伝子をalkSプロモーターの制御下においた。alkB及びalkGのクローニングを簡素化するために、その間にある遺伝子alkFをalkB及びalkGと一緒に増幅し、かつクローン化した。AlkFは、触媒されるべき反応にとって重要でない。ベクターpBT10の製造の詳細な説明は、WO2009077461を参照することができる。
【0066】
例1:alkLを有するシュードモナス・プチダGPo1由来のAlkBGTアルカンヒドロキシラーゼの発現ベクター
更なる試みでは、目的に合わせてalkL遺伝子を、酸化に必要とされる最小の酵素群と一緒にそれを合成できるように、alkBFGオペロンにクローン化した。そのために、pGEc47のalkL遺伝子(Eggink) et al.,1987,J Biol Chem 262,17712−17718)をPCRで増幅した。
【0067】
そのために使用したプライマーP1及びP2は、プラスミドpBT10のSalI切断部位にクローン化するために、目標配列の外側で同様にSalI切断部位を有する。そのうえ、フォワードプライマーP1に停止コドンをSalI切断部位の後方で導入して、alkH残基の可能な翻訳を終えた。
【0068】
P1 ACGCGTCGACCTGTAACGACAACAAAACGAGGGTAG(配列番号6)
P2 ACGCGTCGACCTGCGACAGTGACAGACCTG(配列番号7)
【0069】
増幅のために、Finnzyme Phusion Polymerase(フィンザイムのPhusionポリメラーゼ)(New England Biolabs)を用いた。
【0070】
製造規程に従って、34μLのH2O、10μLの5×Phusion HF緩衝液、1μLのdNTPs(それぞれ10mM)、1.25μLのP1、1.25μLのP2(0.5mMのエンド−プライマー−濃度)、2μLのpGEc47プラスミド溶液(150ng/μL)及び0.5μLのPhusionポリメラーゼを混合し、かつ薄壁のPCR−エッペンドルフ(Eppendorf)−容器中でPCRのために用いた。
【0071】
以下のPCRプログラムを、ポリメラーゼ製造の示唆に則ってプログラミングした:
[98℃/30秒]、([98℃/10秒][72℃/60秒])30サイクル、[72℃/10分]
【0072】
754bpの長さを有する生じたPCR産物を、"peqGOLD cycle pure Kits"(PEQLAB Biotechnology GmbH,Erlangen在)を用いて、製造規定に則って精製し、かつT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてリン酸化した。そのために、該精製より得られたPCR産物溶液を、2μLのATP溶液(100mM)、2μLのキナーゼ緩衝液及び1μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼと混ぜ、37℃で20分間培養した。引き続き、この酵素を10分間75℃に加熱することによって死滅させた。
【0073】
そのようにして準備したPCR産物を製造規定に則って、それからLucigen社のpSMARTベクターにライゲーションした。このライゲーションバッチ2μlを、ヒートショック(42℃で45秒間)によって大腸菌DH5αケミカリーコンピテントセルに形質転換した。
【0074】
カナマイシンプレートで選択したコロニーの一晩培養後に、液体培養(カナマイシン30μg/mLを有する5mL LB培地)において培養し、かつプラスミドをpeqGOLD Miniprep Kits(PEQLAB Biotechnologie GmbH(Erlangen))を用いて分離した。
【0075】
SalIによる制限切断(Restriktionsspaltung)及び引き続くゲル電気泳動によって、正しくライゲーションされたプラスミドを同定した。
【0076】
係るプラスミドを、より多量に調製し、かつSalIで切断した。生じる693bp断片を、Agarosegel(アガロースゲル)(peqGOLD Gel Extraction Kit)からの精製によって分離した。
【0077】
プラスミドpBT10も同様に、より多量に調製し、SalIで切断し、かつ最後にアルカリ性ホスファターゼ(仔ウシ腸由来の[アルカリ]ホスファターゼ、CIP)(NEB)で脱リン酸化した。
【0078】
これらの手順を、反応容器中で実施した。そのために、13.3μLのプラスミドDNAを、4μLの緩衝液、19.2μLの水、2μLのアルカリ性ホスファターゼ及び1.5μLのSalI(NEB)と混ぜ、そして37℃で2時間培養した。切断し、かつ脱リン酸化したベクターを、同様に上記の通りAgarosegelにより精製した。
【0079】
ライゲーションにおけるベクターとインサートとの正しい比を調整するために、相応するDNA溶液の濃度をアガロースゲル電気泳動によって確かめた。
【0080】
ライゲーションのために、10μLの切断したベクターDNA溶液を、DNA質量比1:5となるように5μLのインサートDNA溶液と混ぜ、2μLのリガーゼ緩衝液、1μLの水並びに1μLのリガーゼを加え、引き続き22℃で2時間、かつ、その後に一晩中4℃で培養した。
【0081】
このバッチの5μLを、電気穿孔法により大腸菌細胞DH5αに形質転換した。
【0082】
カナマイシン耐性コロニーを、抗生物質を含む5mL LB培地中で一晩培養し、かつプラスミドを上記の通り調製した。
【0083】
EcoRVによる5つのクローンからのプラスミドDNAの制限切断により、3つの場合において、それぞれ8248Bp、2234Bp及び1266Bpのバンドが示された。
【0084】
得られたプラスミドをpBT10_alkL(図1を参照されたい)とし、これは配列番号8を有する。
【0085】
例2:ラウリン酸メチルエステルからω−ヒドロキシラウリン酸メチルエステルへの変換
生体内変化のために、プラスミドpBT10又はpBT_alkLを、42℃で2分間のヒートショックによって大腸菌種W3110ケミカリーコンピテントに形質転換した(Hanahan D,DNA cloning:A practival approach.IRL Press,Oxford,109−135)。ヒドロキシラウリン酸メチルエステルの合成のために、大腸菌W3110−pBT10及びW3110−pBT10_alkLを一晩中30℃及び180rpmにて、30mg/Lのカナマイシンを有する100mLのM9培地(NaHPO4 6g/L、KH2PO4 3g/L、NaCl 0.5g/L、NH4Cl 1g/L、2mM MgSO4、0.1mM CaCl2、グルコース0.5%)中で培養し、かつ遠心分離によって集菌した。バイオマスの一部を、無菌でグルコース0.5%及びカナマイシン30mg/Lを有する250mLのM9培地に再懸濁してOD450=0.2とし、かつ振盪フラスコ内で30℃及び180℃rpmにてさらに培養した。alk遺伝子の発現を、4時間の生長時間後に0.025%(v/v)のジシクロプロピルケトンの添加によって誘発し、かつ培養物を同じ条件下でさらに4時間振盪した。細胞を引き続き遠心分離除去し、細胞ペレットをKPi緩衝液に再懸濁し、かつ30℃に調温したバイオリアクターに加えた。約1.8gCDW/Lのバイオマス濃度を設定した。力強い撹拌(1500min-1)及び2vvm(体積及び1分当たりの体積の)の通気量の下で、基質のラウリン酸メチルエステルを1:2の比において細胞懸濁液に加えた(100mlの細胞懸濁液、50mlのラウリン酸メチルエステル)。温度は30℃で一定に保った。
【0086】
ヒドロキシラウリン酸メチルエステルの形成は、反応バッチのGC分析によって検出した。そのために、0分後にNegative Controlとして及び150分後にサンプルを、スポイトを用いて反応器の上昇管を通して採取し、かつ2mLのエッペンドルフ容器においてエッペンドルフ卓上型遠心分離機を使って13200rpmにて相分離のために5分間のあいだ遠心分離した。有機相は、ガスクロマトグラフィー(Thermo Trace GC Ultra)によって分析した。カラムとして、Varian Inc.FactorFourTM VF−5m、長さ:30m、膜厚:0.25μm、内径:0.25mmを用いた。
【0087】
分析条件:
炉温度 80〜280℃
昇温速度 15℃/min
スプリット比(Splitratio) 15
注入量 1μl
キャリアー流量(Carrierflow) 1.5ml/min
PTVインジェクター 15℃/sで80〜280℃
検出器基準温度: 320℃
【0088】
ここで、12−ヒドロキシラウリン酸メチルエステルの測定された形成率は、生体触媒の活性に換算することができ、かつ使用した細胞マスを基準とすることができる。
【0089】
変換速度の線形領域中では、活性に関して、活性[U]=変換した物質量[μmol]/時間[min]が当てはめられる。
【0090】
酵素の説明に通常用いられるこの単位"U"は、反応の開始時の係る生体触媒の性能の尺度である。
【0091】
【表1】
【0092】
初期活性は、付加的に発現されたalkLによって26.7倍上昇させることができた。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]