特許第5936606号(P5936606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936606
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】視野計
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/024 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   A61B3/02 F
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-509956(P2013-509956)
(86)(22)【出願日】2012年4月12日
(86)【国際出願番号】JP2012059997
(87)【国際公開番号】WO2012141240
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-88894(P2011-88894)
(32)【優先日】2011年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】島田 賢
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−282366(JP,A)
【文献】 特開2007−195787(JP,A)
【文献】 特開2009−136424(JP,A)
【文献】 特開2010−246779(JP,A)
【文献】 特開2009−034480(JP,A)
【文献】 特開平04−122236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の視野を測定して、その結果を測定結果として出力する視野測定手段を有する視野計であって、
該視野計は、
過去において測定された多数の被検眼の視野測定結果のうち、正常眼に関する測定結果を正常眼に関するデータベースとして格納した測定データベースメモリ、
得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能か否かを統計的に判定する正常眼データ判定手段、
前記正常眼データ判定手段により、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定された場合に、該得られた測定結果を、データベース検索用属性データと共に前記正常眼に関するデータベースに追加処理する、データベース管理手段、
を有して構成される視野計。
【請求項2】
前記測定データベースメモリは、前記正常眼に関するデータベースに加えて緑内障眼に関するデータベースを格納しており、過去において測定された多数の被検眼の視野測定結果を、前記正常眼に関するデータベースと緑内障眼に関するデータベースとに区分する形で測定データベースとして格納した、
ことを特徴とする、請求項1記載の視野計。
【請求項3】
前記正常眼についての視野測定における各測定点の被検眼の感度分布を示す感度分布データを格納する感度分布メモリを有し、
前記正常眼データ判定手段は、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能か否かを、該得られた測定結果が前記感度分布データの、最低感度領域以上で、最高感度領域以下の中間感度領域に含まれるか否かを判定し、該中間感度領域に含まれる場合には、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定する、
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の視野計。
【請求項4】
正常眼における視野角に対する感度分布を示す視野角−感度分布モデルを格納するモデルメモリを有し、
前記正常眼データ判定手段は、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能か否かを、該得られた測定結果の前記視野角−感度分布モデルに対する乖離度が所定値以下であるか否かで判定し、該所定値以下の場合には、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定する、
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の視野計。
【請求項5】
前記測定データベースメモリから前記正常眼に関するデータベースを読み出して、各測定点の被検眼の感度の分布を示す感度分布データを演算して、前記感度分布メモリに格納する、感度分布演算手段を有する、
ことを特徴とする、請求項3記載の視野計。
【請求項6】
前記測定データベースメモリから前記正常眼に関するデータベースを読み出して前記視野角−感度分布モデルを演算して、前記モデルメモリに格納する、分布モデル演算手段を有する、
ことを特徴とする、請求項4記載の視野計。
【請求項7】
前記正常眼についての視野測定における各測定点の被検眼の感度分布を示す感度分布データを格納する感度分布メモリ、
正常眼における視野角に対する感度分布を示す視野角−感度分布モデルを格納するモデルメモリを有し、
前記正常眼データ判定手段は、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能か否かを、
1)前記得られた測定結果が前記感度分布データの、最低感度領域以上で、最高感度領域以下の中間感度領域に含まれるか否か、
2)前記得られた測定結果の前記視野角−感度分布モデルに対する乖離度が所定の値以下であるか否か、
で判断し、前記得られた測定結果が、前記中間感度領域に含まれかつ前記得られた測定結果の前記視野角−感度分布モデルに対する乖離度が所定値以下の場合には、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定する、
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の視野計。
【請求項8】
前記測定データベースメモリから前記正常眼に関するデータベースを読み出して、各測定点の被検眼の感度の分布を示す感度分布データを演算して、前記感度分布メモリに格納する、感度分布演算手段及び、
前記測定データベースメモリから前記正常眼に関するデータベースを読み出して前記視野角−感度分布モデルを演算して、前記モデルメモリに格納する、分布モデル演算手段を有する、
ことを特徴とする、請求項7記載の視野計。
【請求項9】
前記正常眼データ判定手段により、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用できないものと判定された場合に、当該判定結果をディスプレイに表示する、判定結果出力手段を有し、
前記データベース管理手段は、入力手段から、前記得られた測定結果が緑内障のものであることを指定する信号が入力された場合に、該得られた測定結果を、データベース検索用属性データと共に前記緑内障眼に関するデータベースに追加処理する、
ことを特徴として構成される請求項2記載の視野計。
【請求項10】
被検眼の視野を測定して、その結果を測定結果として出力する視野測定手段を有する視野計であって、
該視野計は、
過去において測定された多数の被検眼視野測定結果のうち、正常眼に関する測定結果を正常眼に関するデータベースとして前記視野計の外部に設けられた測定データベースメモリに格納するデータ格納手段、
得られた測定結果が正常眼の測定結果として使用可能か否かを統計的に判定する正常眼データ判定手段、
前記正常眼データ判定手段により、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定された場合に、該得られた測定結果を、データベース検索用属性データと共に前記正常眼に関するデータベースに追加処理する、データベース管理手段、
を有して構成される視野計。
【請求項11】
前記正常眼に関するデータベースは、
1)正常眼とされる被検眼の複数の測定結果を、前記視野計が実際に被検眼の測定に使用される前にデータベースとして予め前記測定データベースメモリに格納されたデフォルトデータベースと、
2)前記視野計で測定した測定結果を順次追加処理することで、当該視野計で測定した正常眼の測定結果が多数蓄積される蓄積データベース
をそれぞれ分離した形で前記測定データベースメモリに格納する
ことを特徴とする、請求項1又は2又は10記載の視野計。
【請求項12】
前記デフォルトデータベース及び蓄積データベースに対して、前記データベース検索用属性データをパラメータとして前記測定結果を検索抽出し、新たなデータベースを生成構築するデータベース生成手段を設けた、
ことを特徴とする請求項11記載の視野計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野の測定結果をテータベースとして保存することの出来る視野計に関する。
【背景技術】
【0002】
視野計や眼圧計、検眼装置などの眼科機器の測定結果をデータベースとして保存する装置としては、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−300517
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示すものは、単に被検眼(患者)毎の測定データを集めたものであり、多数の被検眼の測定結果に基づいて、正常な眼(正常眼)や緑内障の眼(緑内障眼)などの被検眼の病状別(正常も含む)の視野の状態を統計的に纏めたものではない。従って、それらのデータベースを利用して、測定結果を評価して、被検眼の病状を判定するようなことも出来なかった。
【0005】
そこで、本発明は、被検眼の視野測定の結果を病状別(正常も含む)に集積する形でデータベースを装置内又はインターネットなどの通信回線を介して適宜な外部データベース装置に生成し、被検眼の診断に利用することの出来る、視野計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点は、被検眼の視野を測定して、その結果を測定結果(MR)として出力する視野測定手段(13)を有する視野計(2)であって、
該視野計は、
過去において測定された多数の被検眼の視野測定結果のうち、正常眼に関する測定結果を正常眼に関するデータベース(DB1)として格納した測定データベースメモリ(17)、
得られた測定結果(MR)が前記正常眼の測定結果として使用可能か否かを統計的に判定する正常眼データ判定手段(16)、
前記正常眼データ判定手段により、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定された場合に、該得られた測定結果を、データベース検索用属性データ(例えば、被検眼の被検者についての年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などのデータ)と共に前記正常眼に関するデータベース(DB1)に追加処理する、データベース管理手段(15)、
を有して構成されるものである。
なお本発明の視野計は、視野計本体にコンピュータ機能を組み込んで構成することもできるし、視野計の測定部と市販のパーソナルコンピュータを接続した形で構成することもできる。
【0007】
本発明の第2の観点は、前記測定データベースメモリ(17)は、前記正常眼に関するデータベースに加えて緑内障眼に関するデータベースを格納しており、過去において測定された多数の被検眼の視野測定結果を、前記正常眼に関するデータベース(DB1)と緑内障眼に関するデータベース(DB2)とに区分する形で測定データベース(MDB)として格納した、
ことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の観点は、前記正常眼についての視野測定における各測定点の被検眼の感度分布を示す感度分布データ(DA1)を格納する感度分布メモリを有し、
前記正常眼データ判定手段(16)は、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能か否かを、該得られた測定結果が前記感度分布データ(DA1)の、最低感度領域以上で、最高感度領域以下の中間感度領域に含まれるか否かを判定し、該中間感度領域に含まれる場合には、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定する、
ことを特徴とする点である。
【0009】
本発明の第4の観点は、正常眼における視野角に対する感度分布を示す視野角−感度分布モデル(DA2)を格納するモデルメモリを有し、
前記正常眼データ判定手段(16)は、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能か否かを、該得られた測定結果の前記視野角−感度分布モデルに対する乖離度が所定値以下であるか否かで判定し、該所定値以下の場合には、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定する、
ことを特徴とする点である。
【0010】
本発明の第5の観点は、前記測定データベースメモリ(17)から前記正常眼に関するデータベース(DB1)を読み出して、各測定点の被検眼の感度の分布を示す感度分布データ(DA1)を演算して、前記感度分布メモリに格納する、感度分布演算手段(16)を有する、
ことを特徴とする点である。
【0011】
本発明の第6の観点は、前記測定データベースメモリ(17)から前記正常眼に関するデータベース(DB1)を読み出して前記視野角−感度分布モデル(DA2)を演算して、前記モデルメモリに格納する、分布モデル演算手段(16)を有する、
ことを特徴とする点である。
【0012】
本発明の第7の観点は、前記正常眼についての視野測定における各測定点の被検眼の感度分布を示す感度分布データ(DA1)を格納する感度分布メモリ、
正常眼における視野角に対する感度分布を示す視野角−感度分布モデルを格納するモデルメモリを有し、
前記正常眼データ判定手段(16)は、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能か否かを、
1)前記得られた測定結果が前記感度分布データ(DA1)の、最低感度領域以上で、最高感度領域以下の中間感度領域に含まれるか否か、
2)前記得られた測定結果の前記視野角−感度分布モデル(DA2)に対する乖離度が所定の値以下であるか否か、
で判断し、前記得られた測定結果が、前記中間感度領域に含まれ、かつ前記得られた測定結果の前記視野角−感度分布モデルに対する乖離度が所定値以下の場合には、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定する、
ことを特徴とする点である。
【0013】
本発明の第8の観点は、前記測定データベースメモリから前記正常眼に関するデータベースを読み出して、各測定点の被検眼の感度の分布を示す感度分布データを演算して、前記感度分布メモリに格納する、感度分布演算手段及び、
前記測定データベースメモリから前記正常眼に関するデータベースを読み出して前記視野角−感度分布モデルを演算して、前記モデルメモリに格納する、分布モデル演算手段を有する、
ことを特徴とする点である。
【0014】
本発明の第9の観点は、前記正常眼データ判定手段(16)により、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用できないものと判定された場合に、当該判定結果をディスプレイ(20)に表示する、判定結果出力手段(19)を有し、
前記データベース管理手段(15)は、入力手段から、前記得られた測定結果(MR)が緑内障のものであることを指定する信号が入力された場合に、該得られた測定結果を、データベース検索用属性データと共に前記緑内障眼に関するデータベース(DB2)に追加処理する、
ことを特徴として構成される点である。
【0015】
本発明の第10の観点は、被検眼の視野を測定して、その結果を測定結果として出力する視野測定手段を有する視野計であって、
該視野計は、
過去において測定された多数の被検眼の視野測定結果のうち、正常眼に関する測定結果を正常眼に関するデータベースとして前記視野計の外部に設けられた測定データベースメモリに格納するデータ格納手段、
得られた測定結果が正常眼の測定結果として使用可能か否かを統計的に判定する正常眼データ判定手段、
前記正常眼データ判定手段により、前記得られた測定結果が前記正常眼の測定結果として使用可能と判定された場合に、該得られた測定結果を、データベース検索用属性データと共に前記正常眼に関するデータベースに追加処理する、データベース管理手段、
を有する点である。
【0016】
本発明の第11の観点は、前記正常眼に関するデータベースは、
正常眼とされる被検眼の複数の測定結果を、前記視野計が実際に被検眼の測定に使用される前にデータベースとして予め前記測定データベースメモリに格納されたデフォルトデータベースと、
前記視野計で測定した測定結果を順次追加処理することで、当該視野計で測定した正常眼の測定結果が多数蓄積され蓄積データベース
をそれぞれ分離した形で前記測定データベースメモリに格納する、ことである。
【0017】
本発明の第12の観点は、前記デフォルトデータベース及び蓄積データベースに対して、前記データベース検索用属性データをパラメータとして前記測定結果を検索抽出し、新たなデータベースを生成構築するデータベース生成手段を設けた点である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1及び第2の観点によれば、被検眼の視野を測定するたびに、測定結果が正常眼データ判定手段(16)により、正常眼の測定結果として使用可能か否かが判定され、測定結果が正常眼の測定結果として使用可能と判定された場合に、データベース管理手段(15)が測定結果を、データベース検索用属性データ(例えば、被検眼の被検者についての年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などのデータ)と共に正常眼に関するデータベース(DB1)に追加処理するので、正常眼に関する被検眼の視野測定の結果が選択的にデータベースとして集積され、その後の被検眼の診断をする際に適切に利用することが出来る。
【0019】
また、測定結果が正常眼の測定結果として使用できないものと判定された場合には、第9の観点で示したように、判定結果をディスプレイ(20)に表示し、入力手段から、測定結果(MR)が緑内障のものであることを指定する信号が入力された場合に、測定結果を、データベース検索用属性データと共に緑内障眼に関するデータベース(DB2)に追加する処理を行うので、緑内障眼に関しても、被検眼の視野測定の結果が選択的にデータベースとして集積され、その後の被検眼の診断をする際に適切に利用することが出来る。
【0020】
本発明の第3及び第4の観点によれば、測定結果が正常眼の測定結果として使用可能か否かを、各測定点の被検眼の感度分布を示す感度分布データ(DA1)又は、視野角−感度分布モデル(DA2)に基づいて判定されるので、測定結果を統計的又は生理学的な観点から自動的に判定することが出来、判定の精度を向上させることが出来る。
【0021】
本発明の第5及び第6の観点によれば、感度分布データ(DA1)又は、視野角−感度分布モデル(DA2)が、視野計に格納された正常眼に関するデータベース(DB1)に基づいて演算されるので、当該視野計における過去の計測データを反映することが出来、視野計の設置された地域的な特色などを反映させることが出来る。
【0022】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明が適用される視野計の一例を示す斜視図。
図2図2は、図1の視野計の制御部分の一例を示す制御ブロック図。
図3図3は、各検査点における正常眼の感度測定結果の分布の一例を示す図。
図4図4は、測定データの視野角に対する感度分布の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0025】
視野計2は、図1に示すように、全体が箱状に形成された本体3を有しており、本体3の前面3aには、あご載せ5及びひたい当て6が設けられている。本体3の、図1右側には、応答スイッチ1が接続コード9を介して着脱自在に設けられており、更に、あご載せ5及びひたい当て6の前方、即ち図1紙面の奥方の本体3の内部には、視標が提示される半球状の視野ドーム7が設けられている。視野ドーム7は、本体3に内蔵された公知の視標提示装置により視野測定用の視標(図示せず)が視野ドーム7内の任意の位置に視標を投影自在に構成されている。
【0026】
また、本体3の内部には、図2に示すように、視野計2の制御部10が設けられており、制御部10は、主制御部11を有している。主制御部11には、バス線12を介して視野測定部13,測定データ管理部15,データ収集制御部16、測定データベースメモリ17,検査結果判定部19及びディスプレイ20が接続している。なお、図2に示す制御部ブロック図は、本発明と関連の有る部分のみを表示しており、本発明と関連のない視野計1の他の構成部分の図示は行っていない。
【0027】
視野計1は、以上のような構成を有するので、被検眼(図示せず)についてその視野を測定する場合には、被検者に対して、あご載せ5にあごを載せ、更に、ひたい部分をひたい当て6に押圧接触させて、被検者の前眼部の被検眼を、所定の視野測定位置に配置するようにする。この状態で、図示しないキーボードなどの操作部を介して視野計2に対して被検眼の視野測定の開始を指令すると、制御部10の主制御部11は、視野測定部13に対して被検眼の視野の測定を指令し、これを受けて視野測定部13は、公知の手法で、視標(図示せず)を、視野ドーム7内の適宜な位置に順次提示してゆく。被検者は当該提示された視標を被検眼を介して視認した場合には、応答スイッチ1を操作し、視認できなかった場合には、応答スイッチ1の操作は行わないので、応答スイッチ1の操作状態と、その際の視野ドーム7内の視標位置を関連付ける形で、視野測定部13は、公知の手法で被検眼の視野を測定してゆく。
【0028】
こうして、被検眼に関する一連の視野測定結果が得られたところで、その測定結果MRは視野測定部13からデータ収集制御部16へ出力される。データ収集制御部16は、得られた被検眼に関する測定結果MRを、測定データベースメモリ17に格納された測定データベースMDBにどのような形で格納すべきか否かを判定する。なお、被検眼の測定結果MRには、被検眼の被検者についての年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などのデータが属性データ(データベース検索用の属性データ)として、検査者などにより図示しない入力手段を介して入力格納されている。また、測定データベースメモリ17には、過去において視野計2において測定された多数の被検眼の視野測定結果が測定データベースMDBとして格納されている。
【0029】
測定データベースMDBには、正常眼に関するデータベースDB1と、緑内障眼に関するデータベースDB2が蓄積されている。データ収集制御部16は、得られた測定結果MRが正常眼の測定結果として使用できるか否かを統計的及び生理学的な面から判定する。そのためには、データ収集制御部16は、測定データベースメモリ17の測定データベースMDBの内、正常眼に関するデータベースを読み出し、視野測定における各視野測定点の被検眼の感度の分布を、正常眼における感度分布データDA1として演算し、図示しないメモリ(感度分布メモリ)に格納する。通常、正常眼の感度は、図3に示すように、被検眼の感度(dB)に対してデータ数(データベースを構成する被検眼の標本数)Nが正規分布のような傾向を示す。データ収集制御部16は、メモリに格納された感度分布データDA1を構成する標本の最低感度を0とし、最高感度を100とした場合において、当該測定結果MRが、当該感度分布データDA1における最低感度からα%以上(即ち、最低感度領域以上)で最高感度から100−α%以下(即ち、最高感度領域以下)の間の領域である、中間感度領域に含まれか否かを判定し、含まれる場合には、当該測定結果MRは正常眼の測定結果であり、当該測定結果MRは正常眼の測定結果として使用可能なものと判断する。なお、図3に示す正常眼における感度分布データDA1、即ち各視野測定点の感度の分布のグラフは、他の視野計を用いた過去の測定結果を統計したものをデフォルトデータとして、視野計2の製造時に予め測定データベースメモリ17等に格納しておくように構成することも出来る。これにより、被検眼の測定データの少ない、視野計2の導入初期の頃の判定精度を高めることが出来る。なお、領域を設定するパラメータαについては、予め検査者がキーボードなどの入力手段を介して任意に設定したり、所定の検査プログラムに従ってデータ収集制御部16側で、適宜設定するように構成したりすることも出来る。
【0030】
こうして、測定結果MRが正常眼の測定結果として使用可能であると、データ収集制御部16により、統計的に判定された場合には、データ収集制御部16は、次に、得られた当該測定結果MRが生理学的に正常なものであるか否かを判定する。それには、データ収集制御部16が、測定データベースメモリ17から、図4に示すような、正常眼における視野角に対する生理学的な感度分布を示す視野角−感度分布モデルDA2を読み出す。この正常眼における視野角−感度分布モデルは、生理学的な視野角−感度分布として公知のモデルをデフォルトデータとして、視野計2の製造時に予め測定データベースメモリ17等に格納しておくように構成するとよい。また、多数の正常眼に関する測定結果MRが正常眼に関するデータベースDB1として当該視野計2で収集された後は、該データベースDB1からそれら多数の測定結果MRを読み出して、データ収集制御部16が、正常眼における視野角−感度分布モデルDA2を演算して、適宜なメモリ(モデルメモリ)に格納しておくようにしても良い。
【0031】
データ収集制御部16は、読み出された(又は、演算された)視野角−感度分布モデルDA2と、今回得られた測定結果MRを比較し、測定結果MRの視野角−感度分布モデルDA2に対する乖離度Kを、図中ハッチングで示すように、測定結果MRと視野角−感度分布モデルDA2とにより囲まれた面積として演算して求め、当該面積が所定の値β以下の場合には、得られた測定結果MRは生理学的に正常なもの、即ち、当該測定結果MRは正常眼の測定結果として使用可能であると判定する。なお、所定の値βについては、予め検査者がキーボードなどの入力手段を介して任意に設定したり、所定の検査プログラムに従ってデータ収集制御部16側で、適宜設定するように構成したりすることも出来る。
【0032】
こうして、データ収集制御部16により、統計的及び生理学的な面から測定結果MRが正常眼の測定結果として使用できるものと判定された場合には、当該判定結果をディスプレイ20に表示して検査者に告知すると共に、当該測定結果MRを測定データ管理部15に出力する。測定データ管理部15は、測定結果MRを、測定データベースメモリ17に格納されている測定データベースMDBの内、正常眼に関するデータベースDB1に追加する処理を行う。この際、被検眼の被検者に関する年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などのデータがデータベース検索用の属性データとして同時に格納される。これにより、正常眼に関するデータベースDB1は、測定結果MRが追加されることで、より統計的に信頼性の高いものとなる。なお、測定結果MRの統計的及び生理学的な面からの判定は、両方を行わず、どちらか一方のみで判定し、判定処理を簡易的に済ませることも可能である。
【0033】
また、データ収集制御部16により、統計的及び生理学的な面から測定結果MRが正常眼の測定結果として使用できないものと判定された場合には、主制御部11は検査結果判定部19を介して、その結果をディスプレイ20に表示させる。検査者は、正常眼の測定結果として採用できない旨の判定結果から、被検眼に関する緑内障を疑い、その測定結果MRを検討し、被検眼が緑内障であるか否かを判定する。検査者により、測定結果MRが緑内障のものであると判定された場合には、検査者は、入力手段を介して測定結果MRが緑内障のものであることを指定する信号を入力する。これを受けて、主制御部11は、測定データ管理部15に対して、当該測定結果MRを緑内障眼に関するデータベースDB2に追加するように指令する。測定データ管理部15は、直ちに、測定データベースメモリ17に格納されている測定データベースMDBの内、緑内障に関するデータベースDB2に測定結果MRを追加する処理を行う。この際、被検眼の被検者に関する年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などのデータが属性データとして同時に格納される。これにより、緑内障に関するデータベースDB2も、測定結果MRが追加されることで、より統計的に信頼性の高いものとなる。
【0034】
測定データベースメモリ17に格納されている正常眼に関するデータベースDB1と、緑内障眼に関するデータベースDB2からなる測定データベースMDBは、既に述べたように、被検眼の被検者に関する年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などのデータが属性データとして同時に格納されているので、検査者による測定結果MRの緑内障の判定に際して、検査者は、入力手段を介して検査結果判定部19により、データベースDB1及びDB2から、年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などをパラメータとする形で各データベースDB1又はDB2を検索して、緑内障の診断に必要なデータを収集表示させることが出来る。これにより、例えば、正視眼と近視眼の視野の相違や、検査日時の相違による正常眼データの相違など、診断に際して有効な多彩なデータの抽出が可能となる。
【0035】
更に、データ収集制御部16により測定結果MRが正常眼の測定結果として使用できるものと判定された測定結果MRも、検査結果判定部19に出力され、ディスプレイ3を介して検査者に提示される。検査者は、提示された測定結果MRを、測定データベースメモリ17に格納されている測定データベースMDBの内、正常眼に関するデータベースDB1を年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などの多様なパラメータを介して検索して、比較することで、被検眼の状態を詳細に診断することが出来る。なお、測定結果MRの診断に際しては、どのようなパラメータでデータベースDB1を検索して診断したかを測定結果MR、診断結果と共に記録しておくとよい。
【0036】
なお、このように、視野計1での被検眼の測定結果MRを順次追加する形で測定データベースMDBを更新してゆくことで、視野計1が設置されている土地に合った測定データベースMDBが構築され、当該設置地に適合した診断・判定が可能となる。また、地理的に異なる場所に設置された複数の視野計1からの測定データベースMDBを収集して分析することで、地域的な視野測定結果の相違、緑内障の症状の相違など決めの細かな研究が可能となる。
【0037】
また、視野計2では、予め検査者がキーボードなどの入力手段を介して制御部10に対して判定に使用するパラメータやその判定ルールなどを設定することも可能である。これにより、測定結果MRをデータ収集制御部16で正常眼の測定結果として使用可能か否かを検査者などが逐一判定することなく、検査者自身が設定した判定基準に基づいて、測定データベースメモリ17に格納された正常眼に関するデータベースDB1及び緑内障眼に関するデータベースDB2から、年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などの多様なパラメータを介して過去の測定結果を検索して、それらと測定結果MRを比較して、当該測定結果MRについて、正常眼/緑内障の診断をすることも可能である。
【0038】
なお、視野計2の測定データベースメモリ17に生成格納する測定データベースとしては、正常眼に関するデータベースDB1のみとし(基本構成)、緑内障眼に関するデータベースDB2は、診断結果など必要に応じて、ソフトウエアにより選択的に又はオプション装置などを導入することで生成格納可能とするような構成としても良い。これにより、基本的な正常眼に関するデータベースDB1の構築を担保しつつ、測定結果のより迅速な処理が可能となる。
【0039】
また、正常眼に関するデータベースDB1に対する測定結果MRの追加は、データ収集制御部16による自動追加処理の他に、検査者や医師などが測定結果MRを検討して、検査者や医師などの判断で入力手段を介して手動でデータ収集制御部16に対して該測定結果MRを正常眼に関するデータベースDB1に追加処理するように指令するように構成することも可能である。これにより、図3に示す中感度領域と最低感度領域、中感度領域と最高感度領域の境界部分や、図4の測定結果MRと視野角−感度分布モデルDA2とにより囲まれた面積が所定の値βの境界付近の値を示す場合に、画一的に正常眼の測定結果として使用できないものと判定される事態を避けることが出来る。
【0040】
なお、緑内障に関するデータベースDB2に、測定結果MRと共に格納される属性データとしては、前述した被検眼の被検者に関する年齢、性別、人種、視力、屈折率、病名、住居地、検査日時などのデータの他に、当該検査結果MRから判定される緑内障の病期、即ち早期、中期、末期などのデータも同時に格納することで、病状の進行度に応じたデータベースDB2とすることが出来、将来の緑内障の病状の進行度の判定をより適切に行うよりことが可能となる。
【0041】
更に、正常眼に関するデータベースDB1を、視野計2による測定結果MRを格納する前のデフォルトデータベース、即ち、一般的に正常眼とされる被検眼の多数(複数)の測定結果に関するデータを、視野計2を実際に被検眼の測定に使用する前に予め測定データベースメモリ17に格納したデータベースと、当該デフォルトデータベースに対して、視野計2で測定した測定結果MRを順次追加処理することで、当該視野計2で測定した正常眼の測定結果MRが多数蓄積された蓄積データベースとに分離した形で測定データベースメモリ17に格納しておくことも出来る。これにより、測定結果MRをデフォルトデータベースと蓄積データベースの両方で判定することが出来る。更に、デフォルトデータベースと蓄積データベースの両データベースから、検査者がキーボードなどの入力手段を介して指定した任意のデータベース検索用属性データをパラメータとして過去の測定結果MRを検索抽出し、共通のパラメータを持った新たなデータベースを測定データベースメモリ17内に生成構築するように構成する(データベース生成手段)ことも可能である。
【0042】
例えば、デフォルトデータベース及び蓄積データベースから視力(例えば、近視と判定される程度の視力)をパラメータとして、それらデータベースに蓄積された過去の測定結果MRを抽出して、新たなデータベースとすることで、時間の経過によって、近視の被検眼における感度がどのように変化しているかなどを把握し、被検眼の診断に際して応用することが可能となる。
【0043】
また、測定結果MRを格納する測定データベースは、図2に示すように、視野計2に内蔵する測定データベースメモリ17に格納する構成の他に、測定データ管理部15がインターネットなどの通信回線を介して外部のデータベース装置の測定データベースメモリに格納しておき、当該データベース装置に対しては複数の視野計2からアクセス自在に構成するようにしてもよい。こうすることで、データベース装置側で、多様な場所に設置された視野計2の測定結果を管理し、分析することが出来、測定結果MRの局所(地理)的な特徴や、傾向を把握することも可能となる。なお、この場合、各視野計2での測定結果MRは、測定データ管理部15が外部の測定データベースに対してアクセスすることで測定データベースに対する測定結果MRの追加処理などを行う。
【符号の説明】
【0044】
2……視野計
13……視野測定手段(視野測定部)
15……データベース管理手段(測定データ管理部)
16……正常眼データ判定手段、感度分布演算手段、分布モデル演算手段(データ収集制御部)
19……判定結果出力手段(検査結果判定部)
17……測定データベースメモリ
20……ディスプレイ
MR……測定結果
DA1……感度分布データ
DA2……視野角−感度分布モデル
DB1……正視眼に関するデータベース
DB2……緑内障眼に関するデータベース
MDB……測定データベース
図1
図2
図3
図4