特許第5936609号(P5936609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936609
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】キナーゼインヒビターの経口製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5375 20060101AFI20160609BHJP
   A61K 47/44 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61K31/5375
   A61K47/44
   A61K47/14
   A61K9/107
   A61K47/24
   A61K47/22
   A61K47/10
   A61P35/00
   A61P29/00
   A61P19/02
   A61P43/00 105
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-518572(P2013-518572)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2013-529686(P2013-529686A)
(43)【公表日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】US2011042162
(87)【国際公開番号】WO2012006081
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年6月26日
(31)【優先権主張番号】61/359,694
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515187113
【氏名又は名称】ベラステム インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チェン, アンドリュー シアン
(72)【発明者】
【氏名】チャイ, ヤリ ジェイ.
【審査官】 砂原 一公
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−544617(JP,A)
【文献】 特表2009−513642(JP,A)
【文献】 特表2010−521458(JP,A)
【文献】 特表2008−520606(JP,A)
【文献】 特表2004−517052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化6】
の化合物または任意の薬学的に受容可能なその塩のキナーゼインヒビターの投与のための経口製剤であって、2重量%〜5重量%の該キナーゼインヒビター、35重量%〜50重量%のグリセリルカプレート/カプリレートエステル、20重量%〜40重量%のレシチン、15重量%〜30重量%のα−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート、および10%までのPEG400、を含む、経口製剤。
【請求項2】
前記製剤が、自己乳化する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤が、該製剤を摂取する患者の胃腸管において自己乳化する、請求項に記載の製剤。
【請求項4】
非自己乳化製剤で経口投与された同等の用量についての血漿曝露(AUC)と比較して、投与後の血漿曝露が、前記患者において増加する、請求項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2010年6月29日に出願された米国仮特許出願第61/359,694号の優先権を主張し、米国仮特許出願第61/359,694号は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
種々のクラスのキナーゼの低分子インヒビターは、重要な探査医薬化合物となった。しかし、特定のキナーゼインヒビターは、水への低い溶解度および乏しい経口バイオアベイラビリティという特性を有する。
【0003】
実験的低分子インヒビターが開発された種々のクラスのキナーゼの中に、接着斑キナーゼとして公知のファミリーがある。接着斑キナーゼ(FAK)は、最近、インテグリンによって誘発されるシグナル伝達経路の重要な構成要素であることが確立された。接着域(focal contact)におけるFAKとインテグリンおよび細胞骨格タンパク質との凝集は、FAKの活性化の原因であることが提唱されている。多くの異なるアプローチからの最近の結果は、FAKを介したインテグリンシグナル伝達が、フィブロネクチンにおける増加した細胞移動をもたらすだけではなく、細胞の増殖および生存を潜在的に調節することを示した。非特許文献1。インテグリンと接着斑キナーゼ(FAK)との相互作用は、細胞外マトリックス(ECM)へのがん細胞の接着および侵入を調節する。さらに、FAKのリン酸化は、細胞の運動および侵入の増加と相関する。多様なECMタンパク質(IV型コラーゲンが挙げられる)におけるがん細胞の接着および広がりは、チロシンリン酸化の増加およびFAKの活性化をもたらす。非特許文献2。
【0004】
2,4−ジアミノピリジンクラスのインヒビターの特定の化合物は、FAKによって影響を及ぼされ得る異常状態(malcondition)(例えば、増殖性障害(例えば、がん)および炎症性障害(例えば、関節炎))の処置において有望である。例えば、このタイプの化合物が開示されている公開された特許文献1を参照のこと。有効な治療上の使用のために、そのような化合物は、適度な薬物動態学的特性(例えば、AUC)を提供するように製剤化されなければならない。化合物の経口投与が患者集団によって一般に好まれるので、好都合な薬物動態を提供する経口製剤が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/115369号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JL Guan(1997 Aug−Sep),Int J Biochem Cell Biol.,29(8−9):1085−96
【非特許文献2】H Sawai,et al.(2005),Molecular Cancer,4:37
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明は、患者への経口投与のために適合されたキナーゼインヒビター(例えば、接着斑キナーゼの低分子インヒビター)の製剤に関する。種々の実施形態において、上記経口製剤は、水への制限された溶解度をしばしば有する化合物に、好都合な薬物動態学的特性を提供するために適合された自己乳化(self−emulsifying)製剤である。
【0008】
種々の実施形態において、本発明は、キナーゼインヒビターの投与のための経口製剤を提供し、上記経口製剤は、
(a)薬学的に受容可能な形態でのキナーゼインヒビター;
(b)油;
(c)可溶化剤;および
(d)界面活性剤;
を含む。
【0009】
種々の実施形態において、本発明は、患者における異常状態の処置のための方法であって、ここで、キナーゼの阻害が医学的に必要なことが示され、上記方法は、有効な量の本発明の製剤を、有益な作用を上記患者に提供するための用量、頻度、および持続時間で上記患者に経口投与する工程を含む、方法を提供する。
【0010】
種々の実施形態において、本発明は、本発明の製剤を調製する方法であって、上記方法は、上記キナーゼインヒビターと上記可溶化剤と、必要に応じて有機溶媒とを合わせ、次に上記油および上記界面活性剤と合わせる工程を含む、方法を提供する。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
キナーゼインヒビターの投与のための経口製剤であって、該経口製剤は、
(a)薬学的に受容可能な形態での該キナーゼインヒビター;
(b)油;
(c)可溶化剤;および
(d)界面活性剤;
を含む、
経口製剤。
(項目2)
約0.01重量%〜約20重量%の前記キナーゼインヒビターを含む、項目1に記載の製剤。
(項目3)
約2重量%〜約7重量%の前記キナーゼインヒビターを含む、項目2に記載の製剤。
(項目4)
約20重量%〜約80重量%の前記油を含む、項目1に記載の製剤。
(項目5)
約5重量%〜約50重量%の前記可溶化剤を含む、項目1に記載の製剤。
(項目6)
約5重量%〜約50重量%の前記界面活性剤を含む、項目1に記載の製剤。
(項目7)
前記キナーゼインヒビターが、該インヒビターの薬学的に受容可能な塩である、項目1に記載の製剤。
(項目8)
前記キナーゼインヒビターが、式(I)
【化5】


のものまたは任意の薬学的に受容可能なその塩であり、
ここで
は、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり;
、R、およびRは、それぞれ独立してアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、またはフルオロであり;
は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり;
wは、1〜4であり;
xは、1〜3であり;
yは、1〜2であり;そして
zは、1〜4である
、項目1に記載の製剤。
(項目9)
前記キナーゼインヒビターが、式
【化6】


のものまたは任意の薬学的に受容可能なその塩である、項目8に記載の製剤。
(項目10)
前記製剤が、自己乳化する、項目1に記載の製剤。
(項目11)
前記製剤が、該製剤を摂取する患者の胃腸管において自己乳化する、項目10に記載の製剤。
(項目12)
非自己乳化製剤で経口投与された同等の用量についての血漿曝露(AUC)と比較して、投与後の血漿曝露が、前記患者において増加する、項目11に記載の製剤。
(項目13)
前記油が、酸部分がカプリル酸およびカプリン酸である中鎖トリグリセリド(例えば、Migloyl 812)、グリセリルカプレート/カプリレートエステル(例えば、Capmul MCM)、リノレオイルPEG−グリセリド(例えば、Labrafil M
1944 CS)、ヒマシ油、およびオレイン酸からなるセットから選択される、項目1に記載の製剤。
(項目14)
前記油が、グリセリルカプレート/カプリレートエステル(例えば、Capmul MCM)である、項目13に記載の製剤。
(項目15)
前記界面活性剤が、レシチン(例えば、Phospholipon 90G)、α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(例えば、トコフェリルポリエチレングリコール400)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目13に記載の製剤。
(項目15)
前記界面活性剤が、レシチン(例えば、Phospholipon 90G)およびα−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(例えば、トコフェリルポリ
エチレングリコール400)を含む、項目13に記載の製剤。
(項目16)
前記界面活性剤が、レシチン(例えば、Phospholipon 90G)およびα−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(例えば、トコフェリルポリエチレングリコール400)の約1:1混合物を含む、項目13に記載の製剤。
(項目17)
前記可溶化剤が、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、PEG400、もしくはグリセロール、またはそれらの任意の組み合わせを含み、必要に応じてラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせをさらに含む、項目1に記載の製剤。
(項目18)
前記可溶化剤が、PEG400を含む、項目17に記載の製剤。
(項目19)
前記製剤が、約10%までのPEG400を含む、項目17に記載の製剤。
(項目20)
約2重量%〜約5重量%の前記キナーゼインヒビター、約35重量%〜約50重量%のグリセリルカプレート/カプリレートエステル(例えば、Capmul MCM)、約20重量%〜約40重量%のレシチン(例えば、Phospholipon 90G)、約15重量%〜約30重量%のα−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(例えば、トコペリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、および約10%までのPEG400を含む、項目1に記載の製剤。
(項目21)
前記キナーゼインヒビターが、式
【化7】


のものまたは任意の薬学的に受容可能なその塩である、項目20に記載の製剤。
(項目22)
患者における異常状態の処置のための方法であって、ここで、キナーゼの阻害が医学的に必要なことが示され、該方法が、有効な量の項目1に記載の製剤を、有益な作用を該患者に提供するための用量、頻度、および持続時間で該患者に経口投与する工程を含む、方法。
(項目23)
前記異常状態が、増殖性障害または炎症性障害を含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
異常状態の処置のための、項目1に記載の製剤の使用。
(項目25)
前記異常状態が、増殖性障害または炎症性障害を含む、項目24に記載の使用。
(項目26)
項目1に記載の製剤を調製する方法であって、前記キナーゼインヒビターと前記可溶化剤と、必要に応じて有機溶媒とを合わせ、次に前記油および前記界面活性剤と合わせる工程を含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本明細書中で用いられる場合、用語「約」は、数値または範囲を指す場合に、その値または範囲におけるある程度の変動性を許容する(例えば、言及された値または言及された範囲限界値の、10%以内または5%以内)。
【0012】
本明細書中で用いられる場合、(処置の被験体の場合のような)「個体」は、哺乳動物および非哺乳動物の両方を意味する。哺乳動物としては、例えば、ヒト;非ヒト霊長類(例えば、類人猿およびサル);および非霊長類(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、およびヤギ)が挙げられる。非哺乳動物としては、例えば、魚類および鳥類が挙げられる。
【0013】
用語「疾患」または「障害」または「異常状態」は、交換可能に使用され、疾患または異常状態に関与する生化学的メカニズムにおいて、接着斑キナーゼ(FAK)が役割を果たしており、その結果、上記キナーゼに働きかけることによって治療上有益な作用が達成され得る疾患または状態を指すために使用される。FAKに「働きかけること」としては、FAKに結合すること、および/またはFAKの生物活性を阻害することが挙げられ得る。
【0014】
「投与すること」または「投与」は、医薬化合物を必要とする患者に医薬化合物を提供することを指す。「用量」は、1回の投与において提供される活性薬学的成分(API)量である(この場合、ピコプラチン)。投与の「頻度」は、繰り返し用量が処方される場合に、どのくらい頻繁に投薬(medication)が与えられるかを指す。例えば、投薬は、毎日投与され得る。「持続時間」は、繰り返し用量が投与される期間を指し、例えば、ピコプラチンは、2週間の持続時間にわたって投与され得る。
【0015】
障害を患う個体に対する療法を記載するために使用される場合に、表現「有効な量」は、障害に関与するFAKが活性である個体組織において、FAKを阻害するかまたは他の方法でFAKに働きかけるために有効である本発明の化合物量を指し、ここで、そのような阻害または他の働きは、有益な治療上の作用を生じるために十分な程度まで起こる。
【0016】
「実質的に」は、この用語が本明細書中で用いられる場合、完全に、またはほぼ完全にを意味し、例えば、ある成分を「実質的に含まない」組成物は、その成分を何も有さないか、またはその組成物の任意の関連のある機能的特性が、ほんのわずかな量の存在によって影響されないほどわずかな量を含むであるかのいずれであり、あるいは化合物が「実質的に純粋」であるとは、無視できるほどのほんのわずかな不純物のみが存在するということである。
【0017】
「処置すること」または「処置」は、本明細書中での意味において、障害もしくは疾患に関連する症状の緩和、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化の阻害、またはその疾患もしくは障害の防止もしくは予防、またはその疾患もしくは障害の治癒を指す。同様に、本明細書中で用いられる場合、本発明の化合物の「有効な量」または「治療上有効な量」は、その障害もしくは状態に関連する症状を全体的にもしくは部分的に緩和するか、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化を停止させるかもしくは遅くするか、またはその障害もしくは状態を防ぐか、またはその障害もしくは状態の予防を提供する化合物量を指す。特に、「治療上有効な量」は、所望される治療上の結果を達成するための、必要な投薬量において、および期間にわたる、有効な量を指す。治療上有効な量は、本発明の化合物の何らかの毒性作用または有害作用よりも治療上有益な作用の方がまさる量でもある。
【0018】
「製剤」は、この用語が本明細書中で用いられる場合、ピコプラチンおよび他の成分(例えば、賦形剤、安定剤、分散剤、および界面活性剤など)を含む組成物である。
【0019】
「自己乳化」は、製剤を(例えば、患者の胃腸管における)水性媒体と接触させると、上記製剤が、エマルジョンを自発的に形成するという、製剤の特性を指す。
【0020】
「油」は、この用語が本明細書中で用いられる場合、水の存在下で別個の相を形成し得る、非水溶性であるかまたは少なくとも部分的にのみ水溶性である有機液体を指す。「油」の例は、グリセリド(例えば、中鎖トリグリセリド、または中鎖モノグリセリドもしくは中鎖ジグリセリド、またはヒマシ油)である。油の別の例は、脂肪酸エステルである。脂肪酸エステルは、脂肪酸のアルキルエステルを指す。例は、オレイン酸エチルである。「MCT油」は、中鎖トリグリセリド油を指す。例としては、Miglyol商標の下で販売されるMCT油(例えば、Miglyol 912(カプリレート/カプレート(オクタノエート/デカノエートトリグリセリド))が挙げられる。
【0021】
「Miglyol 812」(Sasol Germany GmbH,Witten,Germany)は、酸部分がカプリル酸およびカプリン酸である中鎖トリグリセリドを指す。Miglyolは、このMCT油および他の多様なMCT油の供給源を識別する商標である。
【0022】
「Capmul MCM」は、グリセリルカプレート/カプリレートエステルである。
【0023】
「Labrafil M 2125」は、リノレオイルPEG−グリセリド、すなわち、PEG化グリセロールのリノール酸エステル(linoleic ester)である。
【0024】
「界面活性剤」は、この用語が本明細書中で用いられる場合、混合しない液体間(例えば、油と水との間)で界面の表面張力を低減し、水滴の表面張力を低減し、当該分野において周知である通りの他の界面活性特性を示す物質である。界面活性剤は、「乳化剤」としても公知である。
【0025】
用語「重量平均分子量」は、当該分野において周知であり、ポリマーの多分散サンプルの平均分子量を特徴付ける。
【0026】
「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、繰り返しの−CHCHO−単位から構成されるポリマー材料であり、ここで、2つ以上の単位が存在する。従って、ジエチレングリコールおよびそれより長い全てのポリマーは、本明細書中でこの意味において、ポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、いずれかの末端においてもしくは両方の末端において、遊離OH基を有してもよく、あるいは片方もしくは両方の末端において他の基(例えば、エーテル基)を含んでもよい(例えば、ジメチルエーテルCHO−(CHCHO)−OCHまたはモノメチルエーテルCHO−(CHCHO)−OH)。そのような末端がエーテルのPEGは、「ポリエチレングリコールエーテル」とも称され得る。PEG−400は、約400DAの重量平均分子量を有するPEGである。PEG−8000は、約8000DAの重量平均分子量を有するPEGである。化合物は、「PEG化」され得、それは、上記化合物が少なくとも1つのPEG基を有することを意味し、PEG化は、多様な手法、例えば、上記化合物によって開始されるエチレングリコールの重合によって、または上記化合物を好ましいPEGとカップリングさせることによって導入され得る。
【0027】
「ポリソルベート80」は、ソルビタンモノ−9−オクタデカノエートポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)誘導体を指し、それらは、薬において乳化剤または分散剤として使用されるポリオキシエチレンエーテルの複雑な混合物として周知である。
【0028】
「ラウリル硫酸ナトリウム」は、周知の市販の界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムである。
【0029】
「Phospholipon 90G」または「PL90G」(American Lecithin Products,Oxford,CT)は、リポソームの製造のための最低94%がホスファチジルコリンであるレシチンの商品名である。「Phospholipon 90H」または「PL90H」は、水素化PL90Gである。用語「PL90」は、これらの材料のうちのどちらか1つを指す。
【0030】
「ビタミンE TPGS」は、化合物D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネートを指す。
【0031】
種々の実施形態において、本発明は、
(a)薬学的に受容可能な形態でのキナーゼインヒビター;
(b)油;
(c)可溶化剤;および
(d)界面活性剤;
を含む、キナーゼインヒビターの投与のための経口製剤を提供する。
【0032】
例えば、上記製剤は、約0.01重量%〜約20重量%の上記キナーゼインヒビターを含み得る。より詳しくは、上記製剤は、約2重量%〜約7重量%の上記キナーゼインヒビターを含み得る。種々の実施形態において、上記キナーゼインヒビターは、式(I)
【0033】
【化1】
【0034】
のものまたは任意の薬学的に受容可能なその塩であり得、
ここで
は、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり;
、R、およびRは、それぞれ独立してアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、またはフルオロであり;
は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり;
wは、1〜4であり;
xは、1〜3であり;
yは、1〜2であり;そして
zは、1〜4である。
【0035】
より詳しくは、上記キナーゼインヒビターは、式
【0036】
【化2】
【0037】
のものまたは任意の薬学的に受容可能なその塩であり得る。
【0038】
種々の実施形態において、上記製剤は、約20重量%〜約80重量%の上記油を含み得る。上記油は、酸部分がカプリル酸およびカプリン酸である中鎖トリグリセリド(例えば、Migloyl 812)、グリセリルカプレート/カプリレートエステル(例えば、Capmul MCM)、リノレオイルPEG−グリセリド(例えば、Labrafil M 1944 CS)、ヒマシ油、およびオレイン酸からなるセットから選択される組成物であり得る。好ましくは、上記油は、グリセリルカプレート/カプリレートエステル(例えば、Capmul MCM)である。
【0039】
種々の実施形態において、上記製剤は、約5重量%〜約50重量%の上記可溶化剤を含み得る。種々の実施形態において、上記可溶化剤は、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、PEG400、もしくはグリセロール、またはそれらの任意の組み合わせを含み得、必要に応じてラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)、ポリソルベート80(ソルビタンモノ−9−オクタデカノエートポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)誘導体)、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。好ましくは、上記可溶化剤は、PEG400を含み、例えば、上記製剤は、約10%までのPEG400を含み得る。
【0040】
種々の実施形態において、上記製剤は、約5重量%〜約50重量%の上記界面活性剤を含み得る。種々の実施形態において、上記界面活性剤は、レシチン(例えば、Phospholipon 90G)、α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(トコフェリルポリエチレングリコール400)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、上記界面活性剤は、レシチン(例えば、Phospholipon 90G)とα−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(例えば、トコフェリルポリエチレングリコール400)との混合物を含み得る。より詳しくは、上記界面活性剤は、レシチン(例えば、Phospholipon 90G)およびα−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(例えば、トコフェリルポリエチレングリコール400)の約1:1混合物を含む。
【0041】
種々の実施形態において、本発明の製剤は、約2重量%〜約5重量%の上記キナーゼインヒビター、約35重量%〜約50重量%のグリセリルカプレート/カプリレートエステル(例えば、Capmul MCM)、約20重量%〜約40重量%のレシチン(例えば、Phospholipon 90G)、約15重量%〜約30重量%のα−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(例えば、トコペリル(Tocoperyl)ポリエチレングリコール1000スクシネート)、および約10%までのPEG400を含み得る。
【0042】
種々の実施形態において、上記キナーゼインヒビターは、本発明の製剤において遊離塩基の形態で存在し得る。他の実施形態において、上記キナーゼインヒビターは、上記インヒビターの薬学的に受容可能な塩(例えば、塩酸塩)であり得る。種々の実施形態において、上記キナーゼインヒビターは、SR3721、SR2516、またはSR3406であり得、それらの構造は、下に示される。
【0043】
種々の実施形態において、上記製剤は、水性媒体において自己乳化し得る。例えば、上記製剤は、上記製剤を摂取する患者の胃腸管において、自己乳化し得る。
【0044】
種々の実施形態において、本発明の製剤は、患者によって経口摂取されると、非自己乳化製剤で経口投与された同等の用量の同じキナーゼインヒビターについての薬物動態学的パラメーター曲線下面積(AUC)と比較して、AUCがその患者において増加し得る。
【0045】
種々の実施形態において、本発明は、患者における異常状態の処置のための方法であって、ここで、キナーゼの阻害が医学的に必要なことが示され、上記方法は、有効な量の本発明の製剤を、有益な作用を上記患者に提供するための用量、頻度、および持続時間で上記患者に経口投与する工程を含む、方法を提供する。種々の実施形態において、上記異常状態は、増殖性障害(例えば、がん)または炎症性障害(例えば、関節炎)を含む。
【0046】
種々の実施形態において、本発明は、異常状態の処置のための本発明の製剤の使用を提供する。例えば、上記異常状態は、増殖性障害(例えば、がん)または炎症性障害(例えば、関節炎)を含み得る。
【0047】
種々の実施形態において、本発明は、本発明の製剤を調製する方法であって、上記方法は、上記キナーゼインヒビターと上記可溶化剤と、必要に応じて有機溶媒とを合わせ、次に上記油および上記界面活性剤と合わせる工程を含む、方法を提供する。
【実施例】
【0048】
本発明の組成物における製剤のための例示的な化合物
【0049】
【化3】
【0050】
【化4】
【0051】
選択された油におけるSR2516およびSR3406の溶解度
この研究のこの目的は、溶解度に基づいて、自己乳化(self−emosifying)製剤のためのビヒクルベースとして油系を選択することであった。
【0052】
【表1】
【0053】
手順
1. 25mgの各APIを2mLのエッペンドルフバイアルに加える。重量を記録する。
2. 各賦形剤を量り分ける。重量を記録する。
3. 100秒間ビードビーターにかけてよく混合する。全てが溶解したら、過剰な固体が存在するまで、各回追加の5mg〜10mgを加える。
4. プラットフォームシェーカーを使用して25℃で一晩、全てのバイアルを振とうする。
5. 清澄性、沈殿物の存在および相対量を観察する。
6. spin−X(0.22μm)を用いて濾過する。
7. 薬物の濃度および純度(%)についてのHPLC分析のための規定濃度まで濾液を希釈する。
8. 濾液を室温に保ち、必要である場合、より長い時点(複数可)において沈殿物を観察する。
【0054】
結果
濾液サンプルにおける分析
【0055】
【表2】
【0056】
この研究のこの目的は、SRを標的濃度まで溶解することが可能な油/界面活性剤系(複数可)を選択することであった。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
この研究のこの目的は、2週間までの間の、F−1製剤中5%でのSR−261およびSR−3406の安定性を評価することであった。
【0060】
【表5】
【0061】
結果
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
本発明は、当業者がそれを作製し、使用するために十分に詳しく記載され、例示されてきたが、種々の変更、改変、および改善は、特許請求の範囲の趣旨および範囲から外れることなく、当業者に明らかである。
【0065】
本明細書中に参照される全ての特許および刊行物は、あたかも個々の刊行物それぞれが、その全体において、参考として援用されることが、具体的かつ個々に示されたかのごとく、その同程度まで、本明細書中で参考として援用される。
【0066】
用いられた用語および表現は、記載の用語として使用され、限定するものとして使用されず、そのような用語および表現の使用においては、示され記載された特徴の任意の等価物、またはその一部分を除外する意図はないが、特許請求される本発明の範囲内で種々の改変が可能であることが認識される。従って、本発明は、好ましい実施形態および必要に応じた特徴によって具体的に開示されているが、本明細書中に開示される概念の改変およびバリエーションは、当業者によって再分類され得ること、およびそのような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。