特許第5936621号(P5936621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936621
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】渦巻状に巻かれた微生物燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20160609BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20160609BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20160609BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20160609BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H01M8/16
   H01M8/02 E
   H01M8/02 Y
   H01M8/02 Z
   H01M8/02 S
   H01M4/86 M
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-543965(P2013-543965)
(86)(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公表番号】特表2013-546149(P2013-546149A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】IL2010001051
(87)【国際公開番号】WO2012081001
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】511107843
【氏名又は名称】エメフシー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】シェクター、ロネン イツァーク
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ、イタン バルチ
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/121246(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/049936(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101692499(CN,A)
【文献】 特表2012−507828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌燃料電池であって、当該細菌燃料電池は、
少なくとも2つのカソードと、前記少なくとも2つのカソードの間にある少なくとも1つのアノードとを有し、これらは処理すべき液体と液体連通しており、前記少なくとも1つのアノードは、少なくとも第一および第二の電気絶縁スペーサーによって、前記少なくとも2つのカソードから分離されており、かつ、前記少なくとも1つのアノードと前記少なくとも2つのカソードとは、外部の負荷を渡って電気的に接続されており、
前記少なくとも1つのアノードと前記少なくとも2つのカソードとは、少なくとも第三の電気絶縁スペーサーと共に、渦巻構造となるように、いっしょに巻かれており、
前記処理すべき液体、前記2つのカソードの間にある領域を流れ、かつ、空気、前記2つのカソードの互いに反対方向を向いた面の側を流れる構成となっており、
当該細菌燃料電池は、また、
前記少なくとも2つのカソードおよび前記少なくとも1つのアノードのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの導電性表面を有し、かつ、
少なくとも1つの導電性表面上に成長した生物膜を有し、該生物膜は、前記処理すべき液体と液体連通している、
前記細菌燃料電池。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアノードと前記少なくとも2つのカソードが、可撓性材料で形成されている、請求項1記載の細菌燃料電池。
【請求項3】
前記少なくとも2つのカソード同士の間に封止部が備えられ、それによって、前記少なくとも1つのアノードが、前記封止部と前記少なくとも2つのカソードとを有してなる包囲容器内に包囲されている、請求項1または2記載の細菌燃料電池。
【請求項4】
前記電気絶縁スペーサーが、プラスチック製の網を有してなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項5】
前記少なくとも2つのカソードが、酸素透過性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項6】
複数の電気出力接続部が、前記渦巻の長さに沿って配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアノードと前記少なくとも2つのカソードが、それぞれ、
金属導電体を有し、かつ、
少なくとも前記金属導電体と前記処理すべき液体との間に、導電性コーティングを有し、該導電性コーティングは、前記液体と前記導電体とを、互いから相互に封止するように作動する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項8】
前記金属導電体が、コーティングされた金属導電体を有し、かつ、前記導電性コーティングが、前記金属導電体上に形成された導電性コーティングを有する、請求項7記載の細菌燃料電池。
【請求項9】
前記少なくとも2つのカソードのうちの少なくとも1つの前記コーティングされた金属導電体が、透水性である、請求項8記載の細菌燃料電池。
【請求項10】
前記導電性表面が、前記導電性コーティングを介して前記金属導電体と電気的に連通している、請求項7記載の細菌燃料電池。
【請求項11】
前記導電性コーティングが、自体の表面上に前記生物膜成長するためのものである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項12】
前記生物膜成長するための前記少なくとも1つの導電性表面が、前記導電性コーティングの表面を覆う布帛によって定められている、請求項10または11記載の細菌燃料電池。
【請求項13】
前記生物膜が成長するための前記少なくとも1つの導電性表面が、導電性の布帛によって定められ、前記金属導電体が、コーティングされた金属導電体を有し、かつ、前記導電性コーティングが、前記金属導電体上に形成された導電性コーティングを有する、請求項10記載の細菌燃料電池。
【請求項14】
前記導電布帛が、カーボンを有してなる、請求項13記載の細菌燃料電池。
【請求項15】
前記少なくとも2つのカソードが、それぞれ、前記導電性コーティングに隣接する、酸素透過性であり液体不透過性である層をも有し、前記酸素透過性であり液体不透過性である層が、酸素を含む気体に露出している、請求項7〜14のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項16】
前記酸素透過性であり液体不透過性である層が、シリコーンゴムを有してなる、請求項15記載の細菌燃料電池。
【請求項17】
前記酸素透過性であり液体不透過性である層が微細な有孔フィルムを有してなり、該有孔フィルムがポリオレフィンを有してなる、請求項15記載の細菌燃料電池。
【請求項18】
前記金属導電体が、有孔の平坦な要素を有してなる、請求項7〜17のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項19】
前記導電性コーティングが、導電性プラスチックを有してなる、請求項7〜18のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項20】
前記金属導電体が、銅を有してなる、請求項7〜19のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項21】
前記金属導電体が、アルミニウムを有してなる、請求項7〜19のいずれか1項に記載の細菌燃料電池。
【請求項22】
廃水処理設備であって、当該廃水処理設備は、請求項1〜21のいずれか1項に記載の細菌燃料電池を複数有し、かつ、該複数の細菌燃料電池が、積み重ねられた構造となるように配置されている、前記廃水処理設備。
【請求項23】
前記複数の細菌燃料電池が、処理すべき液体が直列に流れるように接続されている、請求項22記載の廃水処理設備。
【請求項24】
前記複数の細菌燃料電池が、処理すべき液体が並列に流れるように接続されている、請求項22記載の廃水処理設備。
【請求項25】
前記複数の細菌燃料電池が、電気的に相互接続されている、請求項2224のいずれか1項に記載の廃水処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
「ELECTRODES FOR USE IN BACTERIAL FUEL CELLS AND BACTERIAL ELECTROLYSIS CELLS AND BACTERIAL FUEL CELLS AND BACTERIAL ELECTROLYSIS CELLS EMPLOYING SUCH ELECTRODES(細菌燃料電池および細菌電解セルに用いるための電極、ならびに、その電極を用いた細菌燃料電池および細菌電解セル)」と題するPCT特許出願公開公報WO2010/049936号(2009年11月1日出願)をここに参照し、その開示内容は、参考したことによってここに組み入れられる。
【0002】
本発明は、概しては、生体電気化学(bioelectric chemical)装置に関し、より詳細には、細菌燃料電池(bacterial fuel cells)に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の刊行物は、当該技術分野の現在の技術水準を表していると考えられる:
Microbial Fuel Cells(微生物燃料電池): Methodology and Technology, Bruce E. Logan et al, Environ. Sci. Technol., 40 (17), 5181 - 5192, 2006;
Microbial Fuel Cells−Challenges and Applications(微生物燃料電池−課題と応用), Bruce E. Logan & John M. Regan, Environ. Sci. Tech., 40 (17), 5172 - 5180, 2006;
Stefano Freguia, Korneel Rabaey, Zhiguo Yuan, Jurg Keller, Non-catalyzed cathodic oxygen reduction at graphite granules in microbial fuel cells(微生物燃料電池中のグラファイト粒子における無触媒のカソードの酸素還元), Electrochimica Acta, 53, 598-603, 2007;
Hong Liu et al., Quantification of the internal resistance distribution of microbial fuel cells(微生物燃料電池の内部抵抗分布の定量化), Environ. Sci. Technol., 42 (21), 8101 - 8107, 2008
米国特許出願公開公報第20070259217号;および
PCT特許出願公開公報WO 2010/049936号。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、廃水(wastewater)処理に用いるための、改善された細菌(bacterial)燃料電池を提供しようとするものである。
【0005】
従って、本発明の好ましい実施形態によると、細菌燃料電池が提供され、当該細菌燃料電池は、少なくとも1つのアノードと少なくとも2つのカソードとを含んでおり、これらは処理すべき液体と液体連通(liquid communication)しており、前記少なくとも1つのアノードは、少なくとも第一および第二の電気絶縁スペーサーによって、前記少なくとも2つのカソードから分離されており、かつ、前記少なくとも1つのアノードと前記少なくとも2つのカソードとは、外部の負荷を渡って電気的に接続されており、前記少なくとも1つのアノードと前記少なくとも2つのカソードとは、少なくとも第三の電気絶縁スペーサーと共に、概して渦巻構造となるように、いっしょに巻かれている。
【0006】
本発明の好ましい実施形態によると、少なくとも1つのアノードおよび少なくとも2つのカソードは、可撓性材料で形成される。
【0007】
好ましくは、少なくとも2つのカソード同士の間に封止部(sealing)が備えられ、それによって、前記少なくとも1つのアノードが、前記封止部と前記少なくとも2つのカソードとを有してなる包囲容器(enclosure)内に包囲されている。
【0008】
好ましくは、電気絶縁スペーサーが、プラスチック製の網を含んでいる。
【0009】
好ましくは、少なくとも2つのカソードが、酸素透過性(oxygen permeable)である。
【0010】
好ましくは、複数の電気出力接続部が、該渦巻の長さに沿って配置されている。
【0011】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、少なくとも1つのアノードと少なくとも2つのカソードは、それぞれ、金属導電体を含んでおり、かつ、該少なくとも前記金属導電体と該処理すべき液体との間に、導電性コーティングを有し、該導電性コーティングは、前記液体と前記導電体とを、互いから相互に封止するように作動する。
【0012】
好ましくは、金属導電体が、コーティングされた金属導電体を含み、かつ、前記導電性コーティングが、該金属導電体上に形成された導電性コーティングを含んでいる。
【0013】
好ましくは、少なくとも2つのカソードのうちの少なくとも1つの前記コーティングされた金属導電体が、透水性(water permeable)である。
【0014】
好ましくは、当該細菌燃料電池はまた、少なくとも1つの伝導性表面を含み、該伝導性表面は自体の表面上での生物膜の成長(biofilm growth)に適合したものであり、該伝導性表面は、前記処理すべき液体と液体連通しており、かつ、前記導電性コーティングを介して前記金属導電体と電気的に連通している。
【0015】
好ましくは、前記導電性コーティングが、自体の表面上での生物膜の成長に適合したものであり、かつ、生物膜の成長に適合した前記少なくとも1つの伝導性表面が、前記導電性コーティングの表面を覆う布帛(fabric)によって定められている。
【0016】
付加的にまたは代替的に、生物膜の成長に適合した前記少なくとも1つの伝導性表面が、伝導性の布帛によって定められ、前記金属導電体が、コーティングされた金属導電体を含み、かつ、前記導電性コーティングが、前記金属導電体上に形成された導電性コーティングを含んでいる。
【0017】
好ましくは、伝導性の布帛が、カーボンを含んでいる。
【0018】
本発明の他の好ましい実施形態によると、前記少なくとも2つのカソードが、それぞれ、前記導電性コーティングに隣接する、酸素透過性であり液体不透過性である層をも含み、前記酸素透過性であり液体不透過性である層が、酸素を含む気体に露出している。
【0019】
好ましくは、酸素透過性であり液体不透過性である層が、シリコーンゴムを含むか、または、微細な有孔フィルムを含み、該有孔フィルムがポリエチレンまたはポリプロピレンといったポリオレフィンを含んでいる。
【0020】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によると、前記金属導電体が、有孔(perforated)の平坦な要素を含んでいる。
【0021】
好ましくは、少なくとも2つのカソードのうちの少なくとも1つが、付着層(attachment layer)を含み、該付着層は、好ましくは、プラスチック製の布帛を含んでいる。
【0022】
好ましくは、導電性コーティングが、伝導性プラスチックを含んでいる。
【0023】
好ましくは、金属導電体が、銅またはアルミニウムを含んでいる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によると、廃水処理設備が、複数の細菌燃料電池を含み、かつ、該複数の細菌燃料電池は、積み重ねられた構造となるように配置されている。
【0025】
好ましくは、複数の細菌燃料電池が、直列に水力学的に接続される。追加的にまたは代替的に、複数の細菌燃料電池が、並列に水力学的に接続される。
【0026】
追加的にまたは代替的に、複数の微生物燃料電池が、電気的に相互接続される。
【0027】
本発明は、図面とあわせて、以下の詳細な記載から、より十分に理解され、把握されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1Aおよび図1Bは、本発明の好ましい実施形態に従って構築されかつ作動する、細菌燃料電池とその拡大した部分のそれぞれの簡略化した説明図である。
図1B図1Aおよび図1Bは、本発明の好ましい実施形態に従って構築されかつ作動する、細菌燃料電池とその拡大した部分のそれぞれの簡略化した説明図である。
図2A図2Aおよび図2Bは、本発明の好ましい実施形態に従って構築されかつ作動する、図1Aおよび図1Bに図示したタイプの細菌燃料電池において有用な、アノードの2つの代替的な実施形態の簡略化した拡大説明図である。
図2B図2Aおよび図2Bは、本発明の好ましい実施形態に従って構築されかつ作動する、図1Aおよび図1Bに図示したタイプの細菌燃料電池において有用な、アノードの2つの代替的な実施形態の簡略化した拡大説明図である。
図3図3は、本発明の好ましい実施形態に従って構築されかつ作動する、図1Aおよび図1Bにおいて図示したタイプの細菌燃料電池において有用な、カソードの簡略化した拡大説明図である。
図4図4は、本発明の好ましい実施形態に従って構築されかつ作動する、図1図3に図示したタイプの細菌燃料電池を、複数採用した廃水処理設備の簡略化した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで図1Aおよび1Bを参照すると、同図は、本発明の好ましい実施形態に従って構築されかつ作動する細菌燃料電池とその拡大した部分の、簡略化したそれぞれの説明図である。
【0030】
図1Aおよび1Bに示される通り、細菌燃料電池100が提供され、該細菌燃料電はアノード102を含んでおり、該アノードの両側には第一および第二のカソード104が配置されており、それぞれ、産業廃水または都市廃水106といった処理すべき液体によって液体連通している。アノード102とカソード104は、好ましくは、可撓性材料で形成され、好ましくは、電気絶縁スペーサー110と共に、概して渦巻構造(spiral configuration)108となるよう、一緒に巻かれている。電気絶縁スペーサー110の厚さによって、渦巻108の隣接する層同士の間の分離(separation)が画定され、これによって、空気がその間に流れ、従って、電気絶縁スペーサー110は、空気側スペーサー(air-side spacer)110と称することもできる。空気側スペーサー110と渦巻108の隣接する層との間の、図1Aに示した間隙(gap)は、説明を明確にする目的のためだけ示していることが理解される。これは、実際には、渦巻108の隣接する層同士の間の分離の全てを空気側スペーサー110が構築しており、追加的な間隔(spacing)が存在しないからである。
【0031】
好ましくは、カソード104は、該カソード104の上下端部に好ましくは設けられるプラスチック溶接部(plastic welding)112によって、アノード102を収納し、該プラスチック溶接部112は、アノードおよびカソード102、104を、シールする役割と、互いに隔離する役割との両方を果たす。アノード102は、好ましくは、少なくとも2つの電気絶縁スペーサー114によって、カソード104から間隔をおいて離されている。電気絶縁スペーサー114は、アノード102とカソード104との間の分離を定め、これによって、廃水106が、中央のアノード102とカソード(複数)104との間を、そのいずれかの側を流れることが可能になる。従って、電気絶縁スペーサー114は、水側スペーサー(water-side spacer)114と称することもできる。
【0032】
空気側スペーサー110と水側スペーサー114は、それぞれ、好ましくは、可撓性を有する高度有孔網(highly perforated nets)を有してなり、その厚さは、システムの水力学的(hydraulic)要求にしたがって決定される。具体的には、比較的薄い方のスペーサー110、114を使用すると、単位容積あたりの有効(active)な表面積が増加し、それによって、システムをより小型化することが可能になり、一方、比較的厚い方の水側スペーサー114を使用すると、廃水の流路に沿った目詰まりが減る。これらの考慮を前提として、廃水106の従来の前処理スクリーニングプロセスに従うと、4〜15mmの範囲内の厚さを有するスペーサー110、114を含むことが、表面積が十分に大きくなり、十分に目詰まりしにくくなり、概して好ましい。
【0033】
アノード102とカソード104は、好ましくは、電気回路118を通じて、外部負荷116に電気的に接続される。複数の電気出力接続部120は、好ましくは、渦巻108の長さに沿って配置される。電気出力接続部120は、好ましくは、電流放電(current discharge)を提供し、それによって、抵抗が最小限となり、よって抵抗損(ohmic loss、オーム損)が最小限となる。
【0034】
図1Aおよび1Bにおいて図示される実施形態においては、単一のアノードと2つのカソードだけを示しているが、より多くのアノードおよび/またはカソードを含むことも可能であることが理解される。1つのアノードと2つのカソードのセットを複数追加することは、渦巻108を複数、直列または並列に接続することによって、および/または、アノードおよびカソードの層を複数有する渦巻を使用することによって、図1Aおよび1Bに図解される実施形態に含まれ得ることである。
【0035】
渦巻108(アノード102と、カソード104と、介在している水側スペーサー114とを含む)は、当該技術分野においてよく知られる方法であるロール・トゥ・ロール加工法によって製造してよい。この製造方法に従って、渦巻108は、空気側スペーサー110とともに巻かれてもよく、その厚さは、上記のとおり、渦巻108の隣接する巻きの間の間隔を画定する。
【0036】
アノード102、カソード104、空気側スペーサー110、および、水側スペーサー114を、複数の個別の構成部品ではなく、連続したロール状に製造すると、著しく製造コストが下がり、生産効率が上がる。さらに、渦巻108のメンテナンスおよび品質管理が単純化されるが、これは、稼動過程において生じ得るあらゆる欠陥をも正すべく、必要に応じて、該渦巻を単純に広げる(unrolled、巻きを展開する)ことをすればよいからである。
【0037】
細菌燃料電池100の作動においては、廃水106は、渦巻108の内側端部において吸入ポート122を通って該電池(cell)内に入り、好ましくは、流れ配分要素(flow distribution element)によって均一に配分される。水側スペーサー114は、均一な廃水の配分を維持する役割と、十分な乱流(turbulence)を持続する役割とを果たす。空気は、好ましくは、細菌燃料電池100の上部から入り、電池を通って下方に流れる。空気は、好ましくは、細菌燃料電池100の近くに設置され得るファン124または類似の通風装置によって、渦巻108全体にわたって均一に配分され、空気側スペーサー110は、均一な空気の配分を維持する役割と、十分な乱流を持続する役割とを果たす。廃水106は、細菌燃料電池100を流れる際に、有機物(organic matter)の濃度を低減するべく、生物学的に処理される。これについては、以下に、より詳しく説明する。処理された廃水は、渦巻108の外側端部で排出ポート126から出ていき、外へ向かう空気は、好ましくは、大気へと自由に排出される。細菌燃料電池100は、好ましくは、円筒形の包囲容器(enclosure、エンクロージャー)128内に収納される。
【0038】
上記のような廃水の流れの方向は、廃水106が渦巻108の外側端部から細菌燃料電池100に入り、処理済の廃水が渦巻108の内側端部から出る、というように逆転してもよいことが理解される。
【0039】
図1Bに最も明らかに示されるように、アノード102とカソード104は、それぞれ、好ましくは、導電性コーティングによって包囲された金属導電体を含む多層構造を有する。アノード102の構造については、図1Bの拡大部分130を参照すると、もっともよく理解される。銅またはアルミニウムで好ましくは形成された金属導体132が、導電性コーティング134で包囲されていることがわかる。好ましくは、金属導体132を包み込むべく一対の液体不透過性(liquid impermeable)の伝導性プラスチックシートをラミネート加工することによって、あるいは、丸型ケーブルまたはフラットケーブルを形成するべく金属導体を伝導性プラスチックと共に共押出し(co-extruding)することによって、導電性コーティング134は形成される。好ましくは、伝導性プラスチックコーティングは、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、EVA、または、これらを組み合わせたものなど、といったプラスチックで形成され、金属をコーティングするために加工された伝導性の化合物を製造するべく、カーボンおよび/またはグラファイト粉末のような伝導性の粉末と混ぜ合わされたものである。
【0040】
生物膜の成長は、好ましくは、導電性コーティング134の外面上に支持される。任意選択的には(オプションとしては)、生物膜成長支持体136は、導電性コーティング134の少なくとも1つの外面上に設けられる。生物膜成長支持体136は、好ましくは、不織布プラスチックまたはカーボン布帛で形成され、好ましくは、付着層(attachment layer)としても機能する。
【0041】
アノード102の様々な要素の典型的な厚さは、以下の通りである:
金属導体132 20〜200ミクロン;
伝導性コーティング134 50〜400ミクロン;および
生物膜成長支持体136 10〜50ミクロン。
【0042】
さらに図2A、2Bを参照すると、アノード102の2つの代替的な実施形態が図示されている。図2Aの実施形態では、導体132は、好ましくは、有孔(perforated)の平坦な要素の形態をとり、さらなる参照符号138で示されている。導電性コーティング134は、好ましくは、導電性プラスチックのシートまたはフィルムの形態をとる。図2Bの実施形態では、導体132は、好ましくは、有孔の平坦な金属製要素140の形態をとり、拡大部分144に示されるとおり、その表面のすべてが、液体不透過性の導電性コーティング142によってコーティングされている。カーボンベース生地コーティング134は、好ましくは、導体132に、そのいずれかの側に取り付けられる。付着および生物膜成長支持体層136は、好ましくは、不織布プラスチックでできている。
【0043】
カソード104の構造は、図1Bの拡大部分150を参照すると、もっともよく理解される。拡大部分150は、左側のカソード104からのものを示すが、ここで示される構造は、同じように右側のカソード104に当てはまることが理解される。好ましくは銅またはアルミニウムで形成される有孔金属導体152が、導電性コーティングで包囲され、導電性コーティングは、好ましくは、金属導体152を液体不透過性の導電性のプラスチックでコーティングして、コーティングされた金属導体を、その液体に面する側において、導電層154で包み込むことによって実施されていることがわかる。好ましくは、導電層154は、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、EVA、またはそれらを組み合わせたものといったプラスチックを、カーボンおよび/またはグラファイトの粉末のような伝導性粉末と混ぜあわせることによって製造される導電性の有孔プラスチックで形成される。あるいは、導電層154は、カーボンベースの布帛で形成されてよい。
【0044】
生物膜の成長は、好ましくは、コーティングされた金属導体152と導電層154との外面上で、支持される。任意選択的には、付着層および生物膜成長支持体156は、導電性の層154の少なくとも1つの外面上に設けられる。付着層および生物膜成長支持体156は、好ましくは、不織布プラスチック布帛で形成される。
【0045】
反対側の、コーティングされた金属導体152の空気に面する側では、好ましくは、液体不透過性かつ酸素透過性の層158が設けられ、液体不透過性かつ酸素透過性の層158は、好ましくは、シリコーンゴム、または、ポリプロピレンやポリエチレンといった、微細有孔のポリオレフィンで形成される。液体不透過性かつ酸素透過性の層158の外側には、任意選択的に設けられる付着層160がある。付着層160は、ポリエステルやポリプロピレンといった織布または不織布プラスチック布帛を典型的に有し、付着層160は、カソード104の構造を強化するのに貢献する。
【0046】
拡大部分150に示されるカソード104の様々な要素の典型的な厚さは、以下の通りである:
有孔のコーティングされた導体152 100〜600ミクロン;
伝導性の層154 20〜250ミクロン;
生物膜成長支持体156 10〜50ミクロン;
酸素透過性かつ液体不透過性の層158 20〜500ミクロン;および、
付着層160 10〜50ミクロン。
【0047】
さらに図3を参照すると、カソード104の実施形態が図示されている。図3に示されるように、有孔の導体152は、有孔の平坦な金属要素162を含み、拡大部分166に示されるように、その表面のすべてが、液体不透過性かつ導電性のコーティング164によってコーティングされている。
【0048】
細菌燃料電池100の作動については、図1Bの拡大部分170を参照すれば、もっともよく理解される。拡大部分170に示される通り、廃水106中の有機物(化学的酸素要求量(chemical oxygen demand、COD)として表される)が、ジオバクター(Geobacter)やシュワネラ(Shewanella)のような起電性(electrogenic、電気発生性)の細菌(bacteria)によって酸化する。ジオバクターやシュワネラは、典型的には、生物膜172内に存在し、該生物膜172は、好ましくは、生物膜成長支持体136(拡大部分130)によって支持され、該生物膜成長支持体136は、アノード102の表面上に設けられる。
【0049】
こうした酸化によって、二酸化炭素(CO)、陽子および電子が生じる。陽子は、廃水106を通ってカソード104へ向かって拡散し、電子は、細菌によってアノード102へと供給され、アノード102から電気回路118を通ってカソード104へと移動する。
【0050】
カソード104では、大気中の酸素(O)が、拡大部分150に示した層158といった酸素透過性層を通過する。伝導性プラスチック層の、廃水に面する側では、Oは、陽子および電子と反応し、水(HO)を生成する。この反応は、典型的には触媒作用を必要とし、該触媒作用は好ましくは生物膜174によって提供され、該生物膜174は、好ましくは生物膜成長支持体156(拡大部分150)によって支持され、生物膜成長支持体156は、好ましくはカソード104の表面上に設けられる。酸素還元における触媒作用または媒介のための材料は、生物膜支持層156に追加的に付けられてもよい。
【0051】
図1〜3の細菌燃料電池の作動は、このようにして、電力と、有機物をその中に有する液体の処理との、両方を提供すると理解される。
【0052】
今度は図4を参照すると、同図は、本発明の好ましい実施形態にしたがって構築され、かつ、作動する、図1〜3に図示されるようなタイプの細菌燃料電池を複数採用した小型の低エネルギー廃水処理設備の簡略説明図である。
【0053】
図4に示される通り、小型の低エネルギー廃水処理設備400は、複数の積み重ねたモジュラー(モジュール式)の細菌燃料電池100を含み、該燃料電池は、好ましくは、それらの巻きの間に、概して鉛直の空気流れ通路402を画定するべく配置される。
【0054】
好ましくは、細菌燃料電池100は、これらのそれぞれの鉛直な空気流れ通路402が、互いに一線上にそろうように互いに積み重ねられる。廃水は、細菌燃料電池100のそれぞれへと、廃水供給マニホールド404から入り、該廃水供給マニホールド404は、好ましくは、モジュラー(モジュール式)であり、かつ、処理された廃水は、該細菌燃料電池100のそれぞれを処理された廃水マニホールド406から出ていき、処理された廃水マニホールド406もまた、好ましくは、モジュラー(モジュール式)である。
【0055】
好ましくは、複数の積み重ねられた細菌燃料電池100の空気流れ通路402を通る鉛直の空気の流れは、ファン408によって生みだされ、該ファン408は、インバーター410との接続によってシステムが生じる電気を原動力としてよいし、または、他のあらゆる好適な電源を原動力としてよい。あるいは、熱または風によって十分に通気され得るところでは、ファン408の使用は、完全にまたは部分的に省略してよい。図4で図示した実施形態では、それぞれの積み重ねられ細菌燃料電池100は、並列接続で示される。しかし、それらが、代替方法として、直列に接続されてもよいことが理解される。
【0056】
好ましくは、細菌燃料電池100のそれぞれが、電力管理システム(power management system、PMS)412に電気的に接続され、該PMS412は、インバータ410に電気的に接触している。インバーター410では、多数のPMS412は、システムの電気的な要求に従って、直列または並列に組み合わせてよい。
【0057】
このように、複数の細菌燃料電池100が、水力学的(hydraulically)にも電気的にも、直列および/または並列に、相互接続してよいことが理解される。複数の設備400が、廃水の性質および処理要件にしたがって、直列または並列に相互接続されてよいこともまた理解される。並列的な水力学的相互接続(hydraulic interconnection)によって、処理される廃水の量が増え、直列的な水力学的相互接続によって、処理の結果として、浄化度が上がる。同様に、並列的な電気的相互接続によって、電流出力が増加するが、直列的な電気的相互接続によって、電圧出力が増加する。燃料電池の水力学的相互接続は、それらの電気的接続に関係なく実施されてよいし、燃料電池の電気的相互接続は、それらの水力学的接続に関係なく実施されてよいということに留意すべきである。
【0058】
本文上記に具体的に示され、説明されている内容によって、本発明は限定されないということが、当業者には理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、本文上記において説明される様々な特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせを両方含み、また、先行技術にはないが、当業者が上記の記載を読めば思いつくであろう本発明の変形形態および変更形態をも含む。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4