(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
電力伝送コイルとも呼ばれる誘導性電力伝送構成要素を用いるワイヤレス電力伝送システムの場合、電力は、トランスミッタとレシーバ電力伝送コイルとの間の磁気結合を介して伝送される。幾つかの実装において、電力送達を最大にするために共振回路がトランスミッタ内で用いられ得るか、又は、電力受信を最大にするために共振回路がレシーバ内で用いられ得る。幾つかの実装において、デュアル共振システムが、トランスミッタ及びレシーバの両方内に共振回路を含む。デュアル共振システムにおける電力伝送は、トランスミッタ及びレシーバが同じ周波数で共振するとき最も効率的である。共振回路は、以下で説明するインピーダンスマッチングを介して達成され得る。
【0017】
幾つかの共振回路が高い品質係数(Q値)を有し、結果として、共振周波数付近の狭い帯域幅内で効率的に、他の周波数では大幅に少なく、エネルギーを送達する能力が生じる。
【0018】
レシーバが共振又は共振付近で動作する共振トランスミッタに磁気的に結合される場合、トランスミッタ共振回路の有効Q値はレシーバ負荷によって低減され、それに応じて、トランスミッタ電力伝送コイルによって生成される磁界強度が減少する。したがって、トランスミッタが電力を伝送する能力は減少する。共振トランスミッタ回路は、しばしば、高強度磁界を生成するように設計される。高強度磁界は、電力伝送コイルを介する高電流を用いることによって生成され得る。高強度磁界は、Q値の高いトランスミッタ共振回路を設計及び維持することによっても達成される。
【0019】
しかしながら、たとえ未結合の磁界強度が非常に強い場合であっても、複数の結合されたレシーバの影響によって、効率的な電力伝送にとって導電性でないレベルまで磁界強度を低下させることになる。したがって、複数のレシーバに対する効率的な電力伝送を可能にするためのレシーバ管理が必要となり得る。
【0020】
レシーバ管理は、例えば共振周波数の異なるレシーバを設計するなどの設計によって達成され得る。オペレーションにおいて、複数のレシーバの影響を最小限にするため、異なる周波数の複数のレシーバのそれぞれを強く結合するように、トランスミッタ周波数は異なる周波数にわたって掃引されるか又はステッピングされる。周波数の掃引又はステッピングは更に、内部でレシーバの共振周波数が、経年変化や応力などによってドリフトするレシーバを、効率的に結合する働きもする。
【0021】
レシーバ管理は、レシーバによる自己管理を介して動的に達成され得る。一例において、レシーバは、レシーバが磁界に与える影響を制限するためにその電流ドローを制限する。別の例において、レシーバは、他のレシーバもトランスミッタに結合されるときを識別し、それに応じてトランスミッタからの電力伝送を受け入れる時間を制限し、結果としてレシーバのタイムシェアリングが生じる。レシーバがタイムシェアリング中に電力伝送の受け入れを開始及び停止する際の磁界における変化は、トランスミッタによって検出され得、トランスミッタはこの知識を用いて、レシーバが存在しないとき磁界の生成を停止するか又は生成される磁界を減少させる。磁界における変化を監視することからトランスミッタによって得られる知識は、金属性物体がトランスミッタに近接し、それに応じて反応するときを識別するためにも用いられ得る。
【0022】
図1は、トランスミッタ110及びレシーバ120を備える例示のワイヤレス電力伝送システム100を示す。トランスミッタ110は、インダクタンスL1を有するコイル130を含む。レシーバ120は、インダクタンスL2を有するコイル140を含む。コイル130及び140は、電力伝送コイル間の磁気結合の尺度である結合係数kを用いて結合される。結合係数は、少なくとも部分的に、トランスミッタとレシーバとの間の距離及びレシーバに対するトランスミッタの相対的な向きの関数である。電力伝送コイル間の結合係数が減少するとき、それに応じてコイル間で伝送される電力が減少する。結合されたコイル130と140との間に、少なくとも部分的に結合係数k並びにインダクタンスL1及びL2の関数として、相互インダクタンスMが確立される。
【0023】
レシーバは、携帯電話、コンピュータ、又はGPSデバイスなどのワイヤレス充電可能なデバイスであり得る。代替として、レシーバはワイヤレス電源供給されるデバイスであり得る。
【0024】
図2は、
図1に示したシステム100におけるコイルに関する第1の等価電気モデル200を示す。インダクタ210、220、及び240は、理想トランスフォーマ230と共に、
図1におけるコイル130及び140の結合の効果をモデル化する。モデル化されたインダクタ210、220、及び240は、それぞれ式1、2、及び3に示すインダクタンスを有する。
L
kl=(1−k)・L1 (1)
L
M=k・L1 (2)
L
k2=(1−k)・L2 (3)
【0025】
図2の等価回路における理想トランスフォーマ230は、1:nの巻き数比を有するものとして示されており、ここでnは式4に定義されている。
【数1】
結合係数kは式5に定義されている。
【数2】
【0026】
しばしば、エネルギー伝送能力を向上させることが望ましい。例えば、ワイヤレス充電可能なデバイスの充電をより高速にするために、電力伝送レベルを上げることが望ましい場合がある。別の例では、結合係数kの低い値を補償することが望ましい場合がある。電力伝送は、トランスミッタコイルにおける電圧を増大させることによって増大され得る。トランスミッタコイルの電圧を増大させる1つの方法は、トランスミッタ電源出力の電圧を増大させることである。トランスミッタコイルにおける電圧を増大させる別の方法は、トランスミッタを共振周波数で動作させることである。加えて、Q値がより高い共振回路は、コイルにおいて一層高い電圧を提供する。
【0027】
電力伝送及び電力伝送効率を増大させることは、トランスミッタ電源によって見られる電気的負荷が純粋に抵抗性を示す場合に達成され得る。システムの反応性構成要素は、抵抗性負荷を提供するためにインピーダンスマッチングされていなければならない。
図2において、効率的な回路モデル200における反応性構成要素は、理想トランスフォーマ230並びにインダクタ210、220、及び240である。したがって、
図2のモデルに対し純粋に抵抗性の負荷を提供するためには、トランスフォーマ及びコイルをマッチングするためのインピーダンスマッチング回路構成要素を追加しなければならない。
【0028】
図3は、
図2の回路モデル200のための例示のインピーダンスマッチング回路を示す。トランスミッタ側では、電源310がω=2πfで表される周波数fを有する。またトランスミッタ側では、キャパシタC1aが式6で与えられるようなキャパシタンスを有し、キャパシタCMが式7で与えられるようなキャパシタンスを有する。レシーバ側では、キャパシタC2aが式8で与えられるようなキャパシタンスを有する。
【数3】
【数4】
【0029】
周波数ω=2πfの場合、キャパシタC1aのキャパシタンスはモデル200インダクタLk1のインダクタンスと大きさが等しく、キャパシタCMのキャパシタンスはインダクタLMのインダクタンスと大きさが等しく、キャパシタC2aのキャパシタンスはインダクタLk2のインダクタンスと大きさが等しい。したがって、周波数ω=2πfで、各キャパシタのリアクタンスの虚部は、その対応するインダクタのリアクタンスの虚部を打ち消し、
図3の回路は周波数ω=2πfについてインピーダンスマッチングされる。理想的なケースにおいて、システムは電源に対して純粋な抵抗性負荷と見られ、電力伝送を向上させることができる。インピーダンスマッチングは、既知の動作周波数に関する設計段階で、又はシステム条件を変更するためのオペレーション中に、行われ得る。例えば、CM、C1a、及びC2aの少なくとも1つは、システム条件を変更するためのオペレーション中にインピーダンスマッチングの調整を可能にするために、可変キャパシタとして実装され得る。可変キャパシタ又は他の可変構成要素は、関連付けられた共振回路の共振周波数を調節することも可能である。
【0030】
キャパシタCMは、
図3のトランスミッタ側に示されている。しかしながら代替として、キャパシタCMはレシーバ側に配置することも可能である。
【0031】
図2に示したようなモデル200は、ワイヤレス電力伝送システムにおけるトランスミッタコイルとレシーバコイルとの間の相互作用に関する1つの等価電気モデルを提供する。代わりに他のモデルも用いられ得る。
【0032】
図4は、
図1に示したシステム100におけるコイルに関する第2の等価電気モデル400を示す。インダクタ410、420、及び440は、理想トランスフォーマ430と共に、
図1におけるコイル130及び140の結合の効果をモデル化する。モデル化されたインダクタ410、420、及び440は、それぞれ式9、10、及び11に示すインダクタンスを有する。理想トランスフォーマ430の巻き数nは、上記の式4で定義された通りである。結合されたコイル130と140との間の結合係数kは、上記の式5で定義された通りである。
【数5】
【数6】
【0033】
図5は、
図4の回路モデル400のための例示のインピーダンスマッチング回路を示す。トランスミッタ側では、電源510がω=2πfで表される周波数fを有する。またトランスミッタ側では、キャパシタC1bが式12で与えられるようなキャパシタンスを有し、キャパシタCSが式13で与えられるようなキャパシタンスを有する。レシーバ側では、キャパシタC2bが式14で与えられるようなキャパシタンスを有する。
【数7】
【0034】
周波数ω=2πfでは、キャパシタC1bのキャパシタンスはモデル400インダクタL
p1のインダクタンスと大きさが等しく、キャパシタCSのキャパシタンスはインダクタL
Sのインダクタンスと大きさが等しく、キャパシタC2bのキャパシタンスはインダクタL
p2のインダクタンスと大きさがに等しい。したがって、周波数ω=2πfで、各キャパシタのリアクタンスの虚部は、その対応するインダクタのリアクタンスの虚部を打ち消し、
図5の回路は周波数ω=2πfについてインピーダンスマッチングされる。理想的なケースにおいて、システムは電源に対して純粋な抵抗性負荷と見られ、電力伝送を向上させることができる。インピーダンスマッチングは、既知の動作周波数に関する設計段階で、又はシステム条件を変更するためのオペレーション中に、行われ得る。例えば、CS、C1b、及びC2bの少なくとも1つは、システム条件を変更するためのオペレーション中にインピーダンスマッチングの調整を可能にするために、可変キャパシタとして実装され得る。可変キャパシタ又は他の可変構成要素は、関連付けられた共振回路の共振周波数を調節することも可能である。
【0035】
キャパシタCSは、
図5のトランスミッタ側に示されている。しかしながら代替として、キャパシタCSはレシーバ側に配置することも可能である。インピーダンスマッチングに関する他の回路トポロジも可能である。
【0036】
図6は、1つのトランスミッタ610とレシーバ620_1から620_nとして示される「n」個のレシーバ620とを備える、例示のワイヤレス電力伝送システムを示す。トランスミッタ610は電力伝送コイル630を含む。各レシーバ620は、それぞれレシーバ620_1、620_2、及び620_nに対応するコイル640_1、640_2、及び640_nとして示される、電力伝送コイル640を含む。レシーバコイル640は、対応する結合係数及び相互インダクタンスを備えるトランスミッタコイル630に結合される。例えば、レシーバコイル640_1は、結合係数k1及び相互インダクタンスM1を備えるトランスミッタコイル630に結合される。
【0037】
電力伝送効率は、トランスミッタ及びレシーバの共振周波数が同じである場合に向上する。
図6内のシステムなどのシステムは、トランスミッタ610とすべてのレシーバ620が同じ共振周波数を有するように設計され得る。しかしながら、このシステムはトランスミッタ610及びレシーバ620が異なる共振周波数を有するように設計されてもよい。またレシーバ620は、全体的なシステム設計とは無関係に設計され得るため、トランスミッタ610とは異なる共振周波数を有する可能性がある。したがってトランスミッタ610は、共振周波数が特定の周波数帯域内にある任意のレシーバ620がトランスミッタ610によって充電又は電力供給され得るように、レシーバに依存せず、且つ、その特定の周波数帯域全体にわたって電力を提供するように設計され得る。こうしたシステムでは、非共振レシーバが電力伝送を受信することもできる。
【0038】
トランスミッタ610は、複数のレシーバ620の共振周波数を判定し得る。その後、トランスミッタ610周波数は、複数のレシーバ620に順次に電力を伝送するように、一連のレシーバ620共振周波数を介してステッピングされ得る。代替として、トランスミッタ610周波数は、周波数の或る帯域全体にわたって掃引され得る。ステッピングシーケンス又は掃引シーケンスは、一様に増加する周波数又は減少する周波数を含み得る。例えば、レシーバの数及びそれらの共振周波数が未知である場合、トランスミッタは、トランスミッタの仕様に従い、或る周波数から開始して別の周波数へとステッピング及び掃引し得る。しかしながら、ステッピングシーケンス又は掃引シーケンスは一様に増加又は減少する必要はなく、代わりに、メモリ内に記憶されたシーケンスに従うか又はアルゴリズムに従って増加及び減少してもよく、定期的に又は時折中断されてもよい。例えば、1つのレシーバがオペレーション用の電力伝送を必要とする場合、トランスミッタは、レシーバに一様に電力ソースを提供するように、そのレシーバの共振周波数まで定期的にジャンプし得る。
【0039】
ステッピング及び掃引は、レシーバに並行して電力を伝送するために何回か反復され得るか、又は、各レシーバ又はレシーバのサブセットに対して全電力伝送が順次に実行されるように1回のみ実行され得る。例えば、レシーバがバッテリの再充電に使用される場合、ステッピングは、すべてのレシーバが完全に再充電されるまで、そのステップで電力伝送が発生していないとき除去されるステップで連続して反復され得る。
【0040】
トランスミッタ周波数は、トランスミッタ共振回路の共振周波数を調節することにより、共振回路の動作周波数を調節することにより、又は、トランスミッタの共振周波数及び動作周波数の両方を調節することにより、前述のように調節され得る。幾つかの実装において、トランスミッタの共振周波数及び動作周波数は、ほぼ同じであるように調整される。
【0041】
図7は、1つのトランスミッタ710とレシーバ720_1から720_nとして示される「n」個のレシーバ720とを備える、
図6のシステムと同様の例示のワイヤレス電力伝送システムを示す。
図7のシステムは、レシーバ720_1とトランスミッタ710との間の通信リンクCom_1、レシーバ720_nとトランスミッタ710との間の通信リンクCom_n、及びオプションのパワートラッカー750を更に含む。
図7に示されるように、レシーバ720_2はトランスミッタ710への通信リンクを有さず、通信リンクがオプションであることを示している。
【0042】
通信リンクは、有線リンク又は無線リンクであり得、情報交換のために標準の又は独自のプロトコルを用い得る。通信リンクは双方向性として示されているが、単向性であってもよい。通信リンクは、例えば、レシーバのタイプ及びその共振周波数を識別するために用いられ得る。
【0043】
各レシーバ720の共振周波数は、最大の電力伝送を提供する周波数を見つけるために、トランスミッタ710の共振周波数又は電源周波数を変化させることによって通信リンクを用いることなく判定され得る。最大の電力伝送は、例えば、トランスミッタ710内の電圧及び電流測定値から観察又は計算され得る。
【0044】
パワートラッカー750は、結合されたレシーバ720の共振周波数を判定するための回路であり、電気構成要素、ファームウェア、ソフトウェア、又は、電気構成要素、ファームウェア、及びソフトウェアの組み合わせを含み得る。パワートラッカー750は、トランスミッタ710での測定によって、或いは1つ又は複数の通信リンクを介して、レシーバ720の数及びレシーバ720の共振周波数を判定し得、更にレシーバ720からの他の情報を使用可能ともみなし得る。レシーバからの他の情報は、例えば、デバイスタイプ、レシーバオペレーションに必要な平均電力伝送、必要な最大充電電力、最大コイル電圧、及びデバイス充電優先度などの情報を含み得る。パワートラッカー750は、ステッピングシーケンス又は掃引シーケンスを設定するために、レシーバ720に関する情報を用い得る。パワートラッカー750は、レシーバ720からの通知によって、又は何らかの他のトリガメカニズムによって、エリア内でレシーバ720に関して更新された情報を時折、定期的に、収集し得る。パワートラッカー750は、ステッピングシーケンス又は掃引シーケンスを修正するため、又は、新しいステッピングシーケンス又は掃引シーケンスを作成するために、レシーバ720に関する更新された情報を用い得る。
【0045】
前述のようなトランスミッタ周波数のステッピング/掃引を通じたレシーバ管理の代替として又はこれに加えて、レシーバは、トランスミッタによって生成された磁界へのその影響を制限するために、自己管理を実行し得る。レシーバは、例えば、場合に応じて、受信する平均電力をオペレーション又は充電にとっての必要最低限に制限し得る。
図10はこうしたレシーバを示す。対応する説明を伴う
図8及び
図9は、
図10の実装を理解するためのベースを提供する。
【0046】
図8は、トランスミッタ110が構成要素810〜830で表され、レシーバ120が構成要素840〜870で表される、ワイヤレス電力伝送システム100の1つの実装である、例示のワイヤレス電力伝送システム800を示す。
【0047】
トランスミッタ構成要素810は、電圧Vsを備える直流電流(DC)電力ソースである。ソース810は、トランスミッタ内の1つ又は複数のバッテリ、或いはトランスミッタに接続された車両バッテリなどのバッテリであり得る。代替としてソース810は、110V AC(交流電流)などの線路電圧を例えば5V DCなどの低電圧DCに変換する電源の一部であり得る。
【0048】
トランスミッタ構成要素820は、トランスミッタ共振回路に電力供給するためにDC電圧をAC電圧に変換するように切り替えられる、スイッチのセットである。一例の構成要素820はHブリッジである。
【0049】
トランスミッタ構成要素810及び820は共に、トランスミッタ共振回路のためのAC電力ソースの少なくとも一部を形成する。他のACソーストポロジも可能である。
【0050】
トランスミッタ構成要素830は、インダクタンスL1を備える電力伝送コイル、キャパシタンスCp1を備える並列キャパシタ、及びキャパシタンスCs1を備える直列キャパシタを含む、トランスミッタ共振回路である。直列キャパシタンスCs1は示されるように可変であり得るが、必ずしもそうではない。構成要素830は例示の共振回路トポロジを示す。他のトランスミッタ共振回路トポロジも可能である。
【0051】
レシーバ構成要素840は、インダクタンスL1を備える電力伝送コイル、キャパシタンスCp2を備える並列キャパシタ、及びキャパシタンスCs2を備える直列キャパシタを含む、レシーバ共振回路である。直列キャパシタンスCs2は可変であり得る。他のレシーバ共振回路トポロジも可能である。レシーバ電力伝送コイルは、トランスミッタ電力伝送コイルによって生成される発振磁界を高電圧発振(AC)信号に変換するために、共振回路に接続される。
【0052】
レシーバ構成要素850は、共振回路からのAC電圧をDC電圧に変換することが可能な整流器である。
【0053】
レシーバ構成要素860は、整流プロセスにおいて整流器によって生成される電圧リップルを減少させるために用いられるキャパシタである。キャパシタ860の電圧は、レシーバ負荷に提供される出力電圧Voutである。
【0054】
レシーバ構成要素870はDCレシーバ負荷を表す。例えば、負荷870は出力電圧Voutによって電力供給されるレシーバの電子回路であり得、或いは、バッテリ充電回路であり得る。負荷870は、レシーバ電子回路及びバッテリ充電回路の両方であり得る。負荷870は、抵抗Rを備えるレジスタで表されているが、これは、電力調整回路、バッテリ、及び電力の吸収又は消散が可能な他のタイプの構成要素を含む、より複雑なDC負荷であり得るものの簡略表現に過ぎないことに留意されたい。
【0055】
レシーバ構成要素850、860、及び870は共に1つのトポロジを表す。他のトポロジも可能である。例えば、構成要素840からのAC電圧はレベルシフトされ得、負荷に直接印加され得る。
【0056】
負荷870の値は、電圧Voutによって、及びDC負荷により吸収される電流によって判定されるため、負荷の動作ポイントに応じて変化し得る。例えば、負荷870がバッテリ及びバッテリ充電回路である場合、負荷870の値は、バッテリの充電状態及びバッテリ充電回路の動作ポイントに依存する。
【0057】
整流器の入力に見られるAC電圧のより高次の高調波が、レシーバの共振ネットワークによって形成される狭帯域フィルタにより抑制され、それによって基本的な正弦波成分のみが考慮に入れられるという仮定の下で、構成要素850、860、及び870(すなわち、整流器、キャパシタ、及び負荷)は共に、等価レジスタReqによって近似可能であることが示され得る。Reqの値は式15で算出される。
Req=R・(8/π
2) (15)
【0058】
図9は、システム800の構成要素850、860、及び870が、説明及び計算の目的で値Reqを備える等価負荷910で表されている、システム900を示す。等価負荷910を横切る出力電圧は、式16によって記述されるVout_eqであり、ここで「ω」は毎秒当たりのラジアン(rad/s)で表される回路の動作周波数であり、「t」は時間である。
【数8】
【0059】
Vout_eqは所与の条件について解くことができる。Vout_eqが、他のパラメータの中でも、電圧Vs及び結合係数kの強い関数であることが示され得る。磁界強度及び/又はコイル間の結合が減少すると、それに応じて電圧Vout_eqも減少する。Vout_eqが、負荷910が必要とする最低電圧を下回って低下した場合、電力伝送は停止する。
【0060】
電圧Vout_eqも負荷910値Reqの関数である。最も実用的な応用において、Reqが減少すると、構成要素830の電力伝送コイルにおいて反映される等価インピーダンスが減少し、それによって、トランスミッタ共振ネットワークのQ値の低下、及び最終的に、トランスミッタによって生成される磁界の低下が生じる。Vout_eqは磁界の減少に対応して減少する。
【0061】
トランスミッタ及びレシーバが強く結合されている場合、例えばレシーバ及びトランスミッタが物理的に近接し、互いに整列されている場合、電力伝送は負荷のシンク能力によって制限される。従って、強い結合の場合、負荷910の値Reqは、負荷が吸収し得る最大電力によって判定される。
【0062】
トランスミッタ及びレシーバが弱く結合されている場合、例えばレシーバがトランスミッタから物理的に離れている場合、電力伝送は結合された電力伝送コイルの伝送能力によって制限され得る。
【0063】
負荷によって制限される最大電力は、本明細書ではPload_maxと称する。コイルの結合によって制限される最大電力は、本明細書ではPcoup_maxと称する。Pcoup_max<Pload_maxである場合、負荷910値Reqは、出力電圧Vout_eqが、レシーバ回路が適切に機能するために必要な最小電圧Vout_minを下回るまで徐々に減少し、下回った地点で電力伝送が停止する。
【0064】
Pcoup_max<Pload_maxの条件でも効率的な電力伝送を可能にするため、レシーバ電力自己管理のためにレシーバにコントローラが含まれ得る。
【0065】
図10は、レシーバが自己管理コントローラを如何に含み得るかの例として提示されるバッテリチャージャ回路を含む、例示のワイヤレス充電システム1000を示す。他のトポロジも可能である。システム1000の構成要素810、820、830、840、850、及び860は、
図8に関連して上記で説明した、同様に番号付けされた構成要素と少なくとも同様である。構成要素1010は、フリーホイール(free-wheeling)ダイオードを備えるスイッチQ1である。構成要素1020はボディダイオードである。構成要素1010及び1020は共にバックコンバータを表す。構成要素1030はインダクタである。
【0066】
構成要素1040は、バッテリ電圧Vbatt、及び適用可能であれば充電電流Ibatt、を備える再充電可能なDCバッテリである。
【0067】
構成要素1050は自己管理電力コントローラである。コントローラ1050は、キャパシタ860を横切る電圧Vout、及びバッテリ1040を介する充電電流Ibattを監視する。この監視に基づき、コントローラ1050はスイッチ1010を制御し、Ibattを制御するようにスイッチ1010のデューティサイクルを変更する。電圧Vbattは本来一定であるため、充電電流Ibattの変化は、レシーバによって吸収される電力の変化を意味する。
【0068】
図10のバックコンバータ実装の場合、バッテリ1040は、電圧Voutが、レシーバの設計及び条件の関数である最小電圧Vout_minよりも大きい場合にのみ充電される。ブーストコンバータ実装により、より低い値のVoutで充電することが可能となり得る。
【0069】
図10のレシーバ内のコントローラ1050は、Vout>Vout_minのときスイッチ1010の切り替えを開始する。コントローラは、下記の条件、(a)充電電流Ibattが、バッテリが受け入れ可能な最大電流Ibatt_maxに到達すること、(b)充電電流Ibattが、更なるデューティサイクルの増加によって充電電流Ibattの減少を生じさせるようなピークに到達すること、又は(c)VoutがVout_minまで減少することの、の1つが発生するまで、スイッチ1010のデューティサイクルを増加させる。条件(a)の場合、コントローラはデューティサイクルの増加を停止する。条件(b)及び(c)の場合、コントローラは所定の量だけデューティサイクルを減少させる。
【0070】
図11は、フローチャート1100により、コントローラ1050などのコントローラの前述の機能を示す。フローチャート1100は
図10の構成要素に関して記述しているが、フローチャート1100は
図10の例に示したトポロジの適用に限定されない。
【0071】
フローチャート1100は、Voutの値が値Vout_minを超えたとき、ブロック1110で開始する。これは、Voutの値の立ち上がり時、例えばトランスミッタ又はレシーバの起動時、又はレシーバが最初にトランスミッタに接近したとき、発生し得る。代替として、フローチャート1100は、レシーバ及びトランスミッタが安定したオペレーション状態に達した後、ある時点のトリガ時に開始し得る。例えば、バッテリ充電用の電力の伝送を受信するレシーバの場合、フローチャート1100はバッテリ充電がしきい値を下回って低下するまでトリガされない可能性がある。
【0072】
ブロック1120で、スイッチ1010のデューティサイクルd(k)は最小値dminに設定され、電流Ibatt(k)はスイッチデューティサイクルd(k)の現在値で測定される。
【0073】
ブロック1130で、デューティサイクル増分Δdが、正の符号を備える予め定義された値「D」に等しく設定される。
【0074】
ブロック1140で、現在の条件が以前の条件として保存され、新しい現在の条件が計算される。具体的には、現在の電流Ibatt(k)が以前の電流Ibatt(k−1)として保存され、現在のスイッチデューティサイクルd(k)が以前のスイッチデューティサイクルd(k−1)として保存され、現在のスイッチデューティサイクルd(k)が直前のスイッチデューティサイクルd(k−1)に増分Δdを加えたものとして計算される。
【0075】
ブロック1150で、現在の電流Ibatt(k)及び電圧Vout(k)が、スイッチデューティサイクルd(k)の現在値で測定される。
【0076】
判定ブロック1160で、現在の電圧Vout(k)が最小動作電圧しきい値Vout_minと比較され、Ibatt(k)が最大負荷電流しきい値Ibatt_maxと比較され、デューティサイクルd(k)が最大デューティサイクルしきい値dmaxと比較される。Vout(k)がVout_minよりも小さいか又は等しい場合、或いはIbatt(k)がIbatt_maxよりも大きいか又は等しい場合、レシーバ負荷が増加し過ぎたことを示し、或いは、d(k)がdmaxよりも大きいか又は等しい場合、フローチャート1100はブロック1170で、デューティサイクル増分Δdを負の符号を備える値「D」に等しく設定するように継続し、その後、ブロック1140に進み、現在の条件を保存し、(Δd=−Dを追加することによって)デューティサイクルを減少させる。
【0077】
判定ブロック1160で、Vout(k)、Ibatt(k)、及びd(k)がそれらのそれぞれのしきい値と交差していない場合、フローチャート1100はブロック1180で継続する。
【0078】
ブロック1180で、d(k)が最小デューティサイクルしきい値dminと比較される。d(k)がdminよりも小さいか又は等しい場合、フローチャートはブロック1130で、デューティサイクル増分Δdを正の符号を備える値「D」に等しく設定するように継続し、その後、ブロック1140に進み、現在の条件を保存し、(Δd=+Dを追加することによって)デューティサイクルを増加させる。判定ブロック1180でd(k)がdminよりも大きい場合、フローチャート1100は判定ブロック1190で継続する。
【0079】
判定ブロック1190で、現在の電流Ibatt(k)が直前の電流Ibatt(k−1)よりも小さい場合、フローチャート1100はブロック1170で、デューティサイクル増分Δdを負の符号を備える値「D」に等しく設定するように継続し、その後、ブロック1140に進み、現在の条件を保存し、(Δd=−Dを追加することによって)デューティサイクルを減少させる。そうでない場合、フローチャート1100はブロック1140で、現在の条件を保存し、現在の「D」の符号に応じてデューティサイクルを増加又は減少させる。
【0080】
デューティサイクルは0%から100%に物理的に制限され、dmin=0%及びdmax=100%のように、発見的方法(heuristic)でこれらの値に制限され得る。デューティサイクルは、100%より小さい最大値及び/又は0%より大きい最小値を用いて制限されてもよい。
【0081】
このように、スイッチのデューティサイクルが負荷を介して流れる電流を増加又は減少させるように変更され、それによって負荷を横切る電圧Voutにわたる制御が可能となる、自己管理されたレシーバについて説明してきた。スイッチデューティサイクルの制御は、Voutを最小動作電圧より上に保ち、ピーク動作負荷電流を見つけ、負荷電流Ibattを最大動作電流より下に保つための制御を含む。したがって、スイッチデューティサイクルの制御により、トランスミッタに近接する他のレシーバの存在、付加、又は除去によって生じる条件の変更を含む、システム条件の変更のために、レシーバがその電力ドローを適合し得るように、適応的なレシーバ負荷が可能となる。
【0082】
レシーバの別のタイプの自己管理は、フローチャート1100中に提供された例に関して上記で説明された自己管理に追加し得るか又は代替とし得る、レシーバによる適応的なタイムシェアリングである。適応的タイムシェアリングを備えるレシーバは、別のレシーバが、それぞれ、伝送された電力の受信を停止又は開始する際に、レシーバ電圧の増加又は減少があるとき、トランスミッタに近接する他のレシーバを認識する。第1のレシーバが、少なくとも1つの他のレシーバが電力の伝送を受信していることを認識すると、第1のレシーバは適応的タイムシェアリングの発見的方法を開始する。例えば、
図8の典型的なシステムにおいて、レシーバが、整流器の出力電圧Voutが急速に減少又は増加することを認識した場合、レシーバは、別のレシーバが電力伝送セッションを開始又は終了したことを判定し得、それに応じて、そのタイムシェアリングを適合し得る。タイムシェアリングを介してレシーバ自己管理を提供するために多くの異なる発見的方法が実装され得る。一実装を
図12に関して説明する。
【0083】
図12は、適応的タイムシェアリングの発見的方法の例示の実装を示すフローチャート1200である。フローチャート1200はブロック1210で開始される。
【0084】
ブロック1215で、カウントtがゼロに初期化される(すなわちt=0)。カウントtは時間の経過を表す。更にブロック1215において、持続時間変数T_endが値T_chargeに設定される。バッテリが充電されているレシーバでは、T_chargeは、1サイクルにおいて中断されない充電のためにレシーバに予め割り当てられるか又は動的に割り当てられる時間である。バッテリをフルに充電するために、複数のサイクルが必要な場合がある。受信した電力が動作電力に用いられるレシーバでは、T_chargeは、1サイクルにおいて中断されない電力伝送のためにレシーバに予め割り当てられるか又は動的に割り当てられる時間である。このようなレシーバでは、レシーバは、レシーバがそのサイクルの電力受信部分にないときレシーバに電力供給するための電力を格納するためのキャパシタなどの一次格納メカニズムを含む。
【0085】
ブロック1220で、カウントtは増分Tだけ増加され、この増分は時間に対して直接的又は間接的に関係し得る。例えば、時間に対する直接的関係が、タイマーの満了時にカウントtに対して増分をトリガすること、又は、既知の頻度及び持続時間のソフトウェアループにおいてカウントtを増分することによって、確立され得る。別の例の場合、時間に対する間接的関係が、カウントtに対する増分がソフトウェアループにおいて同じ場所で生じるが、ソフトウェアループは頻度又は持続時間に関して予測不能であるとき生じ得る。
【0086】
判定ブロック1225で、Voutが減少する場合、別のレシーバが電力伝送の受信を開始したことを示し、フローチャート1200はブロック1215で継続し、カウントtはリセットされ、T_endは再度T_chargeに等しく設定される。Voutが減少しなかった場合、フローチャート1200は判定ブロック1230で継続する。
【0087】
判定ブロック1230で、Voutが増加する場合、別のレシーバが電力伝送の受信を停止したことを示し、フローチャート1200はブロック1235をスキップし、以下で説明するブロック1240で継続する。Voutが増加しなかった場合、フローチャート1200は判定ブロック1235で継続する。
【0088】
判定ブロック1235で、カウントtがT_endの値よりも小さい場合、別のレシーバが電力伝送の受信を開始して以来、充電期間T_chargeがまだ満了していないことを示し、フローチャート1200はブロック1220で継続し、カウントtを増分する。しかしながら、カウントtがT_endの値よりも大きいか又は等しい場合、他のレシーバがその充電期間を完了したか又はほぼ完了したはずであることを示し、フローチャート1200はブロック1240で継続する。
【0089】
ブロック1240で、カウントtがゼロにリセットされ、ランダム値T_waitが生成され、T_endが、レシーバが電力の受信を開始するまでに待機することになる期間であるT_waitに設定される。T_waitに関する値は、レシーバ間の推論を制限するためにランダムである。すべてのレシーバがT_waitについて同じ値を有する場合、すべてのレシーバが電力伝送の受信を同時に開始するよう試みることになり、結果として、トランスミッタ電力伝送コイルの磁界強度においていずれのレシーバも電力を受信できない地点までの低下となる可能性がある。
【0090】
ブロック1245で、カウントtは値Tだけ増分される。
【0091】
判定ブロック1250で、Voutが減少している場合、別のレシーバが電力伝送の受信期間を開始したことを示し、フローチャート1200はブロック1215で継続する。そうでない場合、フローチャート1200は判定ブロック1255で継続する。
【0092】
判定ブロック1255で、カウントtがT_endの値よりも小さい場合、待機期間が終了していないことを示し、フローチャート1200はブロック1245で継続し、カウントtを増分する。そうでない場合、フローチャート1200はブロック1260で継続する。
【0093】
ブロック1260で、レシーバは電力伝送の受信を開始する。
【0094】
ブロック126で、レシーバが電力伝送を受けている間、カウントtが割り当てられた時間T_chargeに等しくなるまでカウントtが定期的に又は時折増分される。
【0095】
ブロック1270で、レシーバは電力伝送の受信を停止し、レシーバが再度電力伝送を受信するために効率的にキューに入るように、フローチャート1200はブロック1215で継続する。
【0096】
フローチャート1200は、例えばレシーバがもはや電力の伝送を必要としない場合、又はレシーバがトランスミッタの近隣から除かれた場合など、いつでも停止され得る。フローチャート1200は追加のブロックを含み得、例えばフローチャート1200は、レシーバがしきい値時間に等しい時間待機した場合、他の認識されるレシーバの状態に関係なくレシーバが充電を開始するように修正され得る。他の例では、フローチャート1200は、発見的方法の開始時に、他のいずれのレシーバも電力伝送の受信サイクルを開始又は停止したとして認識されない或る設定期間後にレシーバが充電を開始するように、修正され得る。フローチャート1200に対する他の修正も成され得る。
【0097】
図12の例では、T_chargeが一定であるとして説明した。T_chargeの可変値に対し別の発見的方法が適合され得る。例えば、T_chargeは充電されることになるレシーババッテリの充電状態に応じて変更され得るか、又は、トランスミッタから動作電力を受信しているレシーバの現在の負荷条件に応じて変更され得る。T_chargeは、各レシーバによって異なり得る。T_chargeが可変である場合、T_chargeはその可変性によって各レシーバによって異なり得る。T_chargeが一定である場合、T_chargeは、予期される用法及び必要性に基づき、異なるレシーバに対して異なって事前定義され得る。多くの例のうちの1つの場合、総充電時間がどちらのレシーバについてもほぼ同じであるように、T_chargeは、小容量バッテリを備えるレシーバには短く、大容量バッテリを備えるレシーバには長い可能性がある。
【0098】
フローチャート1200によって説明した適応的タイムシェアリングの発見的方法は、レシーバのすべてが発見的方法を含むシステムにおいて用いられ得る。しかしながら、たとえトランスミッタに結合された1つ又は複数のレシーバが発見的方法を含まない可能性がある場合でも、発見的方法は、レシーバ負荷の少なくとも一部を経時的に拡散させることによって、トランスミッタがより多くのレシーバに電力伝送できるようにする。
【0099】
他のレシーバがトランスミッタから電力を受信していることをレシーバが識別できるだけでなく、トランスミッタも、1つ(又は複数)のレシーバが電力伝送を受けているときを識別するためにも同様の方法を用い得る。いずれのレシーバも電力伝送を受けていないとき、トランスミッタは電力生成を減少させ得、その電力伝送回路をオフにし得るか、又はトランスミッタ自体をオフにし得る。
【0100】
トランスミッタは、アクティブなレシーバの存在を検出するために、電力伝送コイルの電圧を監視し得る。レシーバが充電を開始するとき、レシーバ負荷がトランスミッタ共振回路の有効Q値の減少を生じさせるため、電力伝送コイルの電圧は減少する。レシーバが充電を停止するとき、レシーバ負荷がないことによりトランスミッタ共振回路の有効Q値の増加が生じさせるため、電力伝送コイルの電圧は増加する。したがって、電力伝送コイルの電圧を監視することにより、トランスミッタはレシーバが充電を開始及び停止していることを認識できる。
【0101】
加えて、各減少時に電力伝送コイル電圧における減少の程度を監視することにより、トランスミッタが、レシーバの負荷の差によって、幾つかの異なるレシーバが或る期間にわたってアクティブであることを認識することが可能となり得る。
【0102】
更に、電力伝送コイル電圧の減少及び増加を監視することにより、いかなるレシーバも電力の伝送を受けていないときアイドル期間が検出され得る。トランスミッタは、各アイドルフェーズの間電力伝送コイル電圧を追跡し得、アイドルに対し典型的な値を表す、平均コイル電圧又はコイル電圧範囲を判定するために、経時的に収集された情報を用い得る。その後、コイル電圧がアイドルフェーズの間の平均又は範囲よりも大幅に低い場合、トランスミッタは、金属性物体が電力伝送コイルの近隣に置かれていたことを判定し得、トランスミッタはそれに応じて反応し得る。代替として、トランスミッタは、アイドルに対し典型的な値を判定する代わりに、アイドルの間のいかなるときでもコイル電圧と予め定義されたしきい値とを比較し得る。
【0103】
このように、トランスミッタが、電力伝送コイル電圧の変化を用いて、アイドルの期間を識別し得、更に、電力を吸収する金属性物体の存在を識別し得る。
【0104】
レシーバからの負荷がトランスミッタ共振回路の電力伝送コイル上に生成される磁界を減少させる、複数のレシーバを備えるワイヤレス電力伝送システムにおいて、これらの複数のレシーバに効率的に電力を提供するためにレシーバ管理が必要とされ得る。
【0105】
一実装において、レシーバ管理は、異なるレシーバに対して異なる共振周波数を用いること、及びトランスミッタの共振周波数及び/又は動作周波数を、異なるレシーバの共振周波数に順次に掃引又はステッピングすることを含む。
【0106】
別の実装において、レシーバ管理は、レシーバ負荷電流デューティサイクルが、複数のレシーバが存在する場合でもレシーバ電圧を維持するように制御される、レシーバ自己管理を含む。
【0107】
別の実装において、レシーバ管理は、他のレシーバが充電中であるときを識別するため、及び別のレシーバが電力伝送の受信を停止するまで電力伝送の受信の開始を待機するために、1つ又は複数のレシーバがタイムシェアリング発見的方法を用いる、レシーバ自己管理を含む。
【0108】
トランスミッタが、アイドル期間中にトランスミッタの一部又はすべてをシャットダウンするため、トランスミッタに結合された幾つかのレシーバを識別するため、並びに、金属性物体がトランスミッタに近接しており、電力伝送コイルから電力を吸収しているときを識別するために、レシーバが電力伝送の受信を開始及び停止するときを識別し得る。
【0109】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した実施形態が改変され得ること、及び多くの他の実施形態が実装され得ることも理解されよう。