(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936636
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】積層された皮革を用いた、防水性のテープ留めがなされた手袋およびミトン
(51)【国際特許分類】
A41D 19/00 20060101AFI20160609BHJP
A41D 19/04 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
A41D19/00 Q
A41D19/04 Z
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-25903(P2014-25903)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-173220(P2014-173220A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年3月12日
(31)【優先権主張番号】13/792,741
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503204222
【氏名又は名称】ザ ノース フェイス アパレル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】The North Face Apparel Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ラモス
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−539337(JP,A)
【文献】
実開昭59−047620(JP,U)
【文献】
特開平09−228118(JP,A)
【文献】
特開昭59−026504(JP,A)
【文献】
実開平06−085320(JP,U)
【文献】
実開昭58−163515(JP,U)
【文献】
実開平01−177221(JP,U)
【文献】
実開昭49−064138(JP,U)
【文献】
実開昭54−040728(JP,U)
【文献】
国際公開第92/007480(WO,A1)
【文献】
特開2000−073210(JP,A)
【文献】
特表平11−500971(JP,A)
【文献】
特開平08−302506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00 − 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面部分と、前記背面部分に接合されている掌部分を有する用具の製造方法であって、
積層構造体を切片に切断することによって、前記切片によって構成された前記背面部分と前記掌部分を形成するステップを有しており、
前記積層構造体が、互いに積層された少なくとも2つの材料を有し、前記少なくとも2つの材料のうちの第1の材料が皮革であり、前記少なくとも2つの材料のうちの第2の材料が防水通気性材料であり、
前記防水通気性材料が、複数の層を有し、前記複数の層のうちの1つが、防水性膜であり、前記防水性膜が、前記複数の層のうちの少なくとも2つの他の層の間に挟まれており、前記複数の層のうちの前記少なくとも2つの他の層が、通気性材料によって構成されている、
用具の製造方法。
【請求項2】
前記掌部分と前記背面部分を互いに縫製することによって、少なくとも1つの縫い目を形成するステップと、
前記少なくとも1つの縫い目を通して水が浸透することを防止するために、前記少なくとも1つの縫い目をテープ留めするステップ、
をさらに有している請求項1に記載の用具の製造方法。
【請求項3】
前記積層構造体がさらに、皮革材料と前記防水通気性材料との間に配置される接着材料を有する請求項1に記載の用具の製造方法。
【請求項4】
前記接着材料が、点状接着材料である請求項3に記載の用具の製造方法。
【請求項5】
皮革材料が、以下のもの、すなわち、天然皮革材料および合成皮革材料のうちの1つである請求項1に記載の用具の製造方法。
【請求項6】
前記皮革材料に、孔が形成されている請求項5に記載の用具の製造方法。
【請求項7】
前記防水通気性材料が、表生地層、前記防水性膜、および、トリコットまたは編まれた裏地を有する請求項1に記載の用具の製造方法。
【請求項8】
前記防水通気性材料が、表生地層、前記防水性膜、および、フリースまたはトリコットの裏地を有する請求項1に記載の用具の製造方法。
【請求項9】
前記防水通気性材料が、前記防水性膜と、トリコットまたは編まれた裏地の2つの層を有し、前記2つの層が、前記防水性膜の上方および下方に配設されている請求項1に記載の用具の製造方法。
【請求項10】
手を被覆する衣料を製造する方法であって、
前記手を被覆する衣料が、背面部分および掌部分を有し、前記背面部分および前記掌部分が、積層構造体から切断された切片によって構成されており、
前記積層構造体が、互いに積層された少なくとも2つの材料を有し、前記少なくとも2つの材料のうちの第1の材料が皮革であり、前記少なくとも2つの材料のうちの第2の材料が防水通気性材料であり、
前記防水通気性材料が、複数の層を有し、前記複数の層のうちの1つが、防水性膜であり、前記防水性膜が、前記複数の層のうちの少なくとも2つの他の層の間に挟まれており、前記複数の層のうちの前記少なくとも2つの他の層が、通気性材料によって構成されており、
前記掌部分が、前記背面部分に接合されており、
前記方法が、
通気性材料により構成されている少なくとも2つの層の間に防水性膜を挟むことによって、防水通気性構造体を形成するステップと、
接着材料を使用して前記防水通気性構造体を皮革材料に積層することによって、積層構造体を形成するステップと、
前記積層構造体を切片に切断するステップと、
前記積層構造体の前記切片を縫製して前記手を被覆する衣料にするステップ、
を有する方法。
【請求項11】
前記積層構造体の前記切片を互いに縫製する線に沿って縫い目を形成するステップと、
前記縫い目をテープ留めすることによって、前記手を被覆する衣料に防水性を与えるステップ、
を有する請求項10に記載の手を被覆する衣料を製造する方法。
【請求項12】
前記積層構造体の前記切片を縫製して手袋にするステップを有し、前記手袋が「逆ガン・カット」パターンで形成される請求項10に記載の手を被覆する衣料を製造する方法。
【請求項13】
ダーツを有することによって、上部にプレ・カーブ・フィットをもたらすステップをさらに有する請求項12に記載の手を被覆する衣料を製造する方法。
【請求項14】
前記積層構造体の前記切片を縫製して手袋にするステップを有し、前記手袋が、背面部分と掌部分を互いに縫製することによって形成され、
前記掌部分が、親指の空洞以外の4本の指の空洞の前方部を有し、
前記背面部分が、第2指および第5指の空洞の後方部を有し、
請求項10に記載の手を被覆する衣料を製造する方法。
【請求項15】
背面部分と、前記背面部分に接合されている掌部分を有する手を被覆する衣料の製造方法であって、
積層構造体を切片に切断することによって、前記切片によって構成された前記背面部分と前記掌部分を形成するステップを有しており、
前記積層構造体が、互いに積層された少なくとも2つの材料を有し、前記少なくとも2つの材料のうちの第1の材料が、皮革であり、前記少なくとも2つの材料のうちの第2の材料が、防水通気性材料であり、
前記防水通気性材料が、互いの上に積み重ねられて層の「サンドイッチ」を形成する複数の層を有し、前記複数の層のうちの1つが、防水性膜であり、前記防水性膜が、前記複数の層のうちの少なくとも2つの他の層の間に挟まれており、前記複数の層のうちの前記少なくとも2つの他の層が、通気性材料により構成されている、
手を被覆する衣料の製造方法。
【請求項16】
前記防水通気性材料の複数の層が、表生地層、前記防水性膜、および、トリコットまたは編まれた裏地を有する請求項15に記載の手を被覆する衣料の製造方法。
【請求項17】
前記防水通気性材料の複数の層が、表生地層、前記防水性膜、および、フリースまたはトリコットの裏地を有する請求項15に記載の手を被覆する衣料の製造方法。
【請求項18】
前記防水通気性材料の複数の層が、前記防水性膜と、前記防水性膜の上方および下方に配設された2つの層のトリコットまたは編まれた裏地とを有する請求項15に記載の手を被覆する衣料の製造方法。
【請求項19】
前記手を被覆する衣料が、以下のもの、すなわち、長いガントレット手袋、アンダー・カフ手袋、長いガントレット・ミトンおよびアンダー・カフ・ミトンのうちの1つである請求項15に記載の手を被覆する衣料の製造方法。
【請求項20】
前記衣料の上部が、前記上部においてプレ・カーブ・フィットをもたらすダーツを有する請求項15に記載の手を被覆する衣料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、皮革を積層する方法であって、特に水または湿気が多い環境における、様々な屋内および屋外の活動用に使用され得る手袋またはミトンを製作するために適用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水に晒される手袋およびミトンを製作する最も重要な目的の1つは、当該手袋およびミトンが、通気性でありながらも防水性であることを確保することである。
【0003】
現在、当該技術において、最も一般的には、防水性材料で製作された袋を手袋内に挿入することによって、手袋に防水性が与えられている。この袋は、当該袋を収容する手袋に従って形作られている。さらに、袋は、指先において仮縫いされて、手袋に対して縫製または糊付けされている。このプロセスは、手袋の全体を封止するが、封止するのはその内側だけである。ところが、手袋の外層は、所望の材料、たとえば皮革の切片を互いに縫製することによって製作され、これによって、外層に縫い目が形成される。この方法の欠点は、結果的に、外層が縫い目において防水性を失い、外層を経由して水が浸透し、外層と積層された袋との間の部分において手袋に水が充満し得る点である。結果的に、このようにして製作された手袋の幾つかの重要な特性(手袋の通気性、重量、ならびに、遮断および乾燥性能など)が減退する。
【0004】
当該技術で知られた、手袋に防水性を与える別の技法は、外層と防水性膜とを、平坦な形で互いに積層することによって、これらの2つの材料間の空隙をなくすように開発されている。しかしながら、その結果、この技法は、外層を膜に直接一体化させているため、手袋の防水性能と手袋の通気性との間のバランスを、手袋の通気性に反する方に偏らせる。すなわち、この積層するプロセスは、2つの材料から成る過度に堅牢であって不透過性の構造体を構築する。次に、この積層シースは切片に裁断され、これらの切片が共に縫製されることで手袋が形成されるが、このため必然的に手袋に縫い目ができる。縫い目があまりにも多すぎると、発汗からの蒸気を通過させる手袋の能力にさらに影響を及ぼすが、その理由は、手袋の防水性を保つために、これらの縫い目をテープ留めしなければならないためである。過剰なテープ留めは、この方法で製作された手袋の通気性を減退させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、手袋およびミトンを製造するための皮革を積層する技法であって、手袋およびミトンの通気性を妨害することなく手袋およびミトンの防水性を確保する技法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、皮革を積層する方法であって、特に水または湿気が多い環境における様々な屋内および屋外の活動に使用され得る用具を製作するために適用される方法に関する。このような用具の一実施例は、背面部分および掌部分を含み、背面部分および掌部分は積層構造体
から切断された切片で構成され得る。
【0007】
積層構造体は、互いに積層された少なくとも2つの材料を含んでもよく、ここで、当該少なくとも2つの材料のうちの第1の材料は、皮革であり、当該少なくとも2つの材料のうちの第2の材料は、防水通気性材料であり得る。防水通気性材料は、複数の層を含み、ここで、当該複数の層のうちの1つは、防水性膜であり得る。防水性膜は、当該複数の層のうちの少なくとも2つの他の層の間に挟まれ得る。当該複数の層のうちの当該少なくとも2つの他の層は、通気性材料で構成され得る。次いで、掌部分は、背面部分に接合され得る。
【0008】
具体的に、掌部分および背面部分は、互いに縫製されて、少なくとも1つの縫い目を形成することがあり、ここで、当該少なくとも1つの縫い目は、当該縫い目を経由して水が浸透することを防止するために、テープ留めされ得る。さらに、積層構造体は、皮革材料と防水通気性材料との間に配置される接着材料を含んでもよく、ここで、接着材料は、点状接着材料であり得る。
【0009】
皮革材料は、天然皮革材料または合成皮革材料であってもよく、当該皮革材料には孔が形成され得る。
【0010】
一例において、防水通気性材料は、表生地層、防水性膜、および、トリコットまたは編まれた裏地を含むシェル生地「サンドイッチ」であり得る。別の実施形態において、防水通気性材料は、表生地層、防水性膜、および、フリースまたはトリコットの裏地を含むソフト・シェル生地「サンドイッチ」であり得る。防水通気性材料の別の例は、防水性膜と、当該防水性膜の上方および下方に配設され得る2つの層のトリコットまたは編まれた裏地とを含む「ポケット・ライナー」生地「サンドイッチ」であり得る。
【0011】
手を被覆する衣料を製造する方法の一実施例は、通気性材料で製作され得る少なくとも2つの層の間に防水性膜を挟むことによって、防水通気性構造体を形成するステップと、接着材料を使用して、当該防水通気性構造体を皮革材料に積層することによって、積層構造体を形成するステップと、当該積層構造体を切片に切断するステップと、当該積層構造体の当該切片を縫製して手を被覆する衣料にするステップとを含み得る。
【0012】
一実施形態において、この方法は、積層構造体の切片を互いに縫製する線に沿って縫い目を作成するステップと、前記縫い目をテープ留めすることによって、当該手を被覆する衣料に防水性を与えるステップとを含み得る。
【0013】
この方法の別の実施例はさらに、積層構造体の切片を縫製して手袋にするステップを含んでもよく、ここで、手袋は、「逆ガン・カット」パターンで形成されてもよく、または、より具体的には、手袋は、掌部分が親指の空洞以外の4本の指の空洞の前方部を含み、かつ、背面部分が第2指および第5指の空洞の後方部を含み得る態様で、当該背面部分および当該掌部分を互いに縫製することによって形成され得る。
【0014】
本発明の一実施形態は、共に接合された背面部分および掌部分を含み得る手を被覆する衣料であり、ここで、背面部分および掌部分は、互いに積層された少なくとも2つの材料を含む積層構造体で構成され得る。当該少なくとも2つの材料のうちの第1の材料は、皮革であってもよく、当該少なくとも2つの材料のうちの第2の材料は、防水通気性材料であり得る。
【0015】
防水通気性材料は、互いの上に積み重ねられて層の「サンドイッチ」を形成し得る複数の層を含み得る。このような実施形態において、当該複数の層のうちの1つは、防水性膜であってもよく、ここで、防水性膜は、複数の層のうちの少なくとも2つの他の層の間に挟まれてもよく、これらの2つの層は通気性材料で構成されている。
【0016】
さらに、層の「サンドイッチ」は、以下のもの、すなわち、シェル生地「サンドイッチ」、ソフト・シェル生地「サンドイッチ」、および、「ポケット・ライナー」生地「サンドイッチ」のうちの1つであり得る。シェル生地「サンドイッチ」が、表生地層、防水性膜、およびトリコットまたは編まれた裏地を含み得る一方で、ソフト・シェル生地「サンドイッチ」は、表生地層、防水性膜、および、フリースまたはトリコットの裏地を含み得る。最後に、「ポケット・ライナー」生地「サンドイッチ」は、防水性膜と、当該防水性膜の上方および下方に配設され得る2つの層のトリコットまたは編まれた裏地とを含み得る。
【0017】
加えて、手を被覆する衣料は、ミトンを構成し得る。最後に、手を被覆する衣料は、その上部にダーツを含んでいてもよく、当該ダーツは、衣料の上部においてプレ・カーブ適合をもたらし得る。
【0018】
本発明は、以下に提示する詳細な説明から、および、添付の図面から、より完全に理解されるであろう。当該図面は、本発明の可能な実施例のうちの、ほんの幾つかを開示することが意図されているに過ぎず、したがって、本発明の範囲を制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、接着材料を使用して皮革材料を防水通気性材料に積層する、皮革の積層方法の一実施例を示す図である。
【0020】
【
図2】
図2(a)−(c)は、防水通気性材料が、皮革材料に積層される前に、2つの層の間にサンドイッチ状に挟まれる、皮革の積層方法の一実施例を示す図である。
【0021】
【
図3】
図3(a)、(b)は、皮革材料および防水通気性材料を含む積層の切片を縫製することによって製造された長いガントレットの一実施例を示す図である。
【0022】
【
図4】
図4は、皮革材料および防水通気性材料を含む積層の切片を縫製することによって製造された短いガントレット、すなわち、アンダー・カフ手袋の一実施例を示す図である。
【0023】
【
図5】
図5は、皮革材料および防水通気性材料の積層の切片を縫製することによって製造されたミトンの一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は一般に、皮革を積層する方法であって、特に水または湿気が多い環境における、様々な屋内および屋外の活動に使用され得る手袋またはミトンを製作するために適用され得る方法に関する。皮革を積層する好ましい実施例について、以下に詳細に説明するが、本発明による構成は、屋内および屋外用の衣料に加え、様々な手袋、ミトン、および他の衣服およびアクセサリなどの広範囲の製品に使用することができる。
【0025】
図1には、本発明による皮革を積層する一実施例が示されており、ここでは、積層体100の構造体が記載されている。積層体100は、平坦な形で互いの上に設置された3つの材料、すなわち、積層体100の外層を構成し得る皮革101と、積層体100の構造体の内側の要素となる防水通気性材料(WPB)102と、当該皮革101と当該WPB102との間に配置される接着剤103とを含み得る。接着剤103の機能は、高温環境において皮革101をWPB102に取り付けることであり、そのとき、結果として積層体100が形成され得る。
【0026】
皮革101をWPB102に積層する利点の1つは、最終製品、すなわち積層体100が、防水性皮革構造体を構成し得る点、すなわち、水が、皮革101を通して浸透すること、および、皮革101とWPB102との間に蓄積することを防止し得る材料を構成し得る点である。このようにして2つの材料を接合することは、これから詳細に論じる理由により、既存の技術に比べ、積層体100で製作される衣料の通気性、重量、ならびに遮断および乾燥性能を改善し得る。
【0027】
皮革101に使用される材料は、天然皮革材料、たとえば、ヤギ、ウシ、ブタ、もしくはヒツジの皮革、または、皮革衣料を製作するのに好適であると考えられる任意の他の皮革材料であり得る。さらに、皮革101に使用される材料は、以下のものに限定されないが、合成スエードまたはゴム等の任意の合成皮革材料であり得る。さらに、既存の積層技術に比べて積層体100の全体的な蒸気の透過性を高めるために、皮革101に通気口、または、孔を設けることができる。その一方で、防水特性が通気性よりも好まれる場合においては、孔が設けられていない皮革を適用することができる。
【0028】
さらに、接着剤103は、フィルム接着剤を構成してもよいし、または、接着剤103は、
図1に例示するように、点状接着剤であってもよい。点状接着材料を適用することにより、接着材料内において糊が断続的に配置されるため、既存の積層技術に比べると、積層体100の通気性が改善される。
【0029】
図2に示すように、WPB102は、3つの層、すなわち、膜204と、当該膜204を挟む2つの付加的な層とを含み得る。膜204に使用される材料は、防水性であり、これによって、WPB102の構造体の全体が、水に対して不浸透性となり得る。加えて、WPB102の他の2つの層は、WPB102の通気性を高め得る材料であり得る。すなわち、2つのこのような材料間に膜204を挟むことは、膜204と皮革101との間に層を配置することになり、これによって、WPB102、そして結果的には積層体100の防水特性を減じることなく、発汗による蒸気が通過することを可能にし得る。
【0030】
図2(a)に例示される一実施形態において、WPB102は、膜204、表生地(FF)206、およびトリコットまたは編まれた裏地(TWB)207を有するシェル生地「サンドイッチ」(SFS)205の構造体を構成し得る。FF206は、蒸気を透過させるのに好適であると考えられる任意の材料で構成され得る。さらに、FF206は、ナイロン、ポリエステル、または任意の他の合成材料で構成され得る。一例において、FF206は、共に接合されて積層体100を形成するWPB102と皮革101との間の界面として使用され得る。
【0031】
図2(b)に描かれた別の実施形態において、WPB102は、膜204、FF206、およびフリースまたはトリコットの裏地(FTB)209を有するソフト・シェル生地「サンドイッチ」(SSFS)208の構造体を構成し得る。この実施形態のFF206は、発汗による蒸気を通過させるのに好適であると考えられる任意の材料で構成され得る。加えて、SSFS208のFF206は、共に接合されて積層体100を構築するWPB102と皮革101との間の界面として使用され得る。
【0032】
図2(c)に示される、さらに別の実施例において、WPB102は、膜204と、当該膜204の上および下に配設される2つのTWB207の層とを有する「ポケット・ライナー」生地「サンドイッチ」(PLFS)210の構造体を構成し得る。2つのTWB207層のうちの1つは、共に接合されて積層体100を形成するWPB102と皮革101との間の界面として使用され得る。
【0033】
次に、積層体100は、様々な衣料を製造するために切片に切断される。既存の技術に比べると、このような材料で製作された衣料は改善された耐久性を示すが、その理由は、挿入された層が、層間剥離の場合に膜204を保護するためである。
【0034】
実施例のうちの
図3(a)に示される1つにおいては、積層体100は、当該積層体100の切片を共に縫製することによって、長いガントレット(LG)手袋300を形成するために使用される。その結果、積層の切片が接合する線に沿って、縫い目311が形成され得る。したがって、LG手袋300を完全に防水性である状態に維持するために、縫い目311は、防水性テープ(図面では図示せず)を用いてテープ留めされ得る。
【0035】
さらに、形成される縫い目311をより少なくして、結果的に水がLG手袋300を通過する経路をより少なくするために、できるだけ少ない積層体100の切片を使用することによってLG手袋300を組み立てることが望ましいことがある。それによって、縫い目311のテープ留めに使用されるのに必要なテープがより少なくなり、このことは、蒸気の通過を阻止するテープ留め材料の一般的な特質を考えると、手袋の通気性を高めることになる。一実施形態では、
図3に例示されるように、LG手袋300を製造するために使用される切片の数を最小化するために、「逆ガン・カット」パターンが適用され得る。
【0036】
「逆ガン・カット」パターンは、背面部分312を掌部分313に縫製することによって作成され得る。一実施例において、背面部分312は、LG手袋300の第2指および第5指の空洞の後面を含み、掌部分313は、親指の空洞以外のLG手袋300の4本の指の空洞の全ての前方部を有し得る。掌部分313への背面部分312の縫製は、単一の縫い目(すなわち側方の縫い目314)に沿って実施され得、それによって、形成される縫い目の数が最小化される。次に、後方中間部315が、指関節の縫い目316に沿って、掌部分313および背面部分312に接合され得る。さらに、内側親指部分317が、外側親指部分318に縫製され、これらの2つから成る構造体が、LG手袋300のそれ以外の部分に取り付けられ得る。その後、LG手袋300の防水性能を保つために、全ての縫い目がテープ留めされ得る。その一方で、「逆ガン・カット」パターンの縫い目は、テープ留めされない状態のままであってよく、この構造は、従来の挿入構造を用いて制作され得る。最後に、「逆ガン・カット」パターンは、挿入物を全く用いずに製作され得る。
【0037】
この手袋製造パターンの利点の1つは、手袋における縫い目の数を制限することに加え、当該技術で知られた通常の「ガン・カット」パターンに比べると、「逆ガン・カット」パターンで製作された手袋が、より快適であって、かつ、より耐久性を有し得ることであり得る。すなわち、ガン・カットパターンを反転することによって、通常の「ガン・カット」パターンとは対照的に、中間部315は、掌の皺領域ではなく、指関節領域において、LG手袋300の基部に取り付けられる。したがって、LG手袋300の装着中に物体が保持されるときに、中間部315を取り付ける縫い目が、LG手袋300の把持領域内に位置せず、したがって、当該縫い目は、指の曲げ動作を妨げることもなく、把持される物体と直接接触して配置されることもない。その結果、「逆ガン・カット」パターンは、縫い目におけるLG手袋300の断裂を低減することができ、当該「逆ガン・カット」パターンは、手袋300を、装着するのにより快適な状態にもすることができる。
【0038】
本発明の一実施形態は、各指の中間指関節においてダーツ319を含み得る。LG手袋300のこのような特徴はさらに、その耐久性を改善し得るが、その理由は、このような特徴が、指の空洞においてプレ・カーブ・フィットをもたらすことによって、LG手袋300のテープ留めされた領域における皺の形成を防止し得るためである。
【0039】
図4に例示される別の実施例において、積層体100は、当該積層体100の切片を共に縫製することによって、短いガントレット(SG)手袋400を形成するために使用され得る。SG手袋400は、アンダー・カフであり、すなわち、手首領域の辺りで短くされていることがある。
【0040】
図5は、積層体100で製作された手を被覆する衣料の、その機能性および当該衣料が指に対して実現する触覚よりも、断熱および通気性に関連する利点を優先させ得る実施形態を示す。本発明の実施例のうちの1つにおいて、積層体100の切片は、共に縫製されて、ミトン500を形成し得る。当該ミトン500は、同じ空洞内に4本の指を収容することができ、それによって、当該ミトンを製造するのに必要な縫い目の数をさらに減らす。すなわち、ミトン500は、
図3(b)に描かれた中間部315を省略することができ、したがって、指関節の縫い目316をなくすことができる。結果的に、縫い目のテープ留めを減らすことができ、このことは、ミトン500の通気性を増大させ得る。さらに、4本の指を共に収容することにより、ミトン500は、衣料に晒される指の領域表面を減らし得、それによって、指と周辺環境との間の熱交換を減らす。
【0041】
一実施形態において、ダーツ524は、ミトン500の後方部525に作成され得る。ミトン500のこのような特徴はさらにその耐久性を改善し得るが、その理由は、このような特徴が、ミトン500の上部においてプレ・カーブ・フィットをもたらすことによって、ミトン500のテープ留めされた領域における皺の形成を防止し得るためである。
【0042】
最後に、上で論じた手袋の実施形態と同様に、ミトン500は、長いガントレット・ミトンか、または、手首領域の辺りで短くされたアンダー・カフ・ミトンのいずれかであり得る。
【0043】
様々な実施形態を説明してきたが、他の実施形態が考えられる。手袋またはミトンを製造するために積層された皮革を使用する様々な実施例の上述の説明が、限定を意図しておらず、これらの実施例の任意の数の変更、組み合わせ、および代替が用いられ得ることが、理解されるべきである。
【0044】
本明細書に記載した実施例は、単に例示的なものであるが、その理由は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多数の他の実施形態を実施し得るためである。さらに、この発明の或る特徴を、或る実施例または構成の文脈でのみ上に記載され得るが、これらの特徴を、この発明の範囲内に留まったまま、様々な実施形態または構成から、および、様々な実施形態または構成間において、交換、追加、削除することが可能であり得る。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
背面部分および掌部分を有し、前記背面部分および前記掌部分が、積層構造体によって構成されており、
前記積層構造体が、互いに積層された少なくとも2つの材料を有し、前記少なくとも2つの材料のうちの第1の材料が皮革であり、前記少なくとも2つの材料のうちの第2の材料が防水通気性材料であり、
前記防水通気性材料が、複数の層を有し、前記複数の層のうちの1つが、防水性膜であり、前記防水性膜が、前記複数の層のうちの少なくとも2つの他の層の間に挟まれており、前記複数の層のうちの前記少なくとも2つの他の層が、通気性材料によって構成されており、
前記掌部分が、前記背面部分に接合されている用具。
(項目2)
前記掌部分および前記背面部分が、互いに縫製されて、少なくとも1つの縫い目を形成し、
前記少なくとも1つの縫い目が、前記少なくとも1つの縫い目を通して水が浸透することを防止するために、テープ留めされている項目1に記載の用具。
(項目3)
前記積層構造体がさらに、皮革材料と前記防水通気性材料との間に配置される接着材料を有する項目1に記載の用具。
(項目4)
前記接着材料が、点状接着材料である項目3に記載の用具。
(項目5)
皮革材料が、以下のもの、すなわち、天然皮革材料および合成皮革材料のうちの1つである項目1に記載の用具。
(項目6)
前記皮革材料に、孔が形成されている項目5に記載の用具。
(項目7)
前記防水通気性材料が、シェル生地サンドイッチであり、前記シェル生地サンドイッチが、表生地層、前記防水性膜、および、トリコットまたは編まれた裏地を有する項目1に記載の用具。
(項目8)
前記防水通気性材料が、ソフト・シェル生地サンドイッチであり、前記ソフト・シェル生地サンドイッチが、表生地層、前記防水性膜、および、フリースまたはトリコットの裏地を有する項目1に記載の用具。
(項目9)
前記防水通気性材料が、ポケット・ライナー生地サンドイッチであり、前記ポケット・ライナー生地サンドイッチが、前記防水性膜と、トリコットまたは編まれた裏地2つの層を有し、前記2つの層が、前記防水性膜の上方および下方に配設されている項目1に記載の用具。
(項目10)
手を被覆する衣料を製造する方法であって、
通気性材料により構成されている少なくとも2つの層の間に防水性膜を挟むことによって、防水通気性構造体を形成するステップと、
接着材料を使用して前記防水通気性構造体を皮革材料に積層することによって、積層構造体を形成するステップと、
前記積層構造体を切片に切断するステップと、
前記積層構造体の前記切片を縫製して手を被覆する衣料にするステップ、
を有する方法。
(項目11)
前記積層構造体の前記切片を互いに縫製する線に沿って縫い目を形成するステップと、
前記縫い目をテープ留めすることによって、前記手を被覆する衣料に防水性を与えるステップ、
を有する項目10に記載の手を被覆する衣料を製造する方法。
(項目12)
前記積層構造体の前記切片を縫製して手袋にするステップを有し、前記手袋が「逆ガン・カット」パターンで形成される項目10に記載の手を被覆する衣料を製造する方法。
(項目13)
ダーツを有することによって、上部にプレ・カーブ・フィットをもたらすステップをさらに有する項目12に記載の手を被覆する衣料を製造する方法。
(項目14)
前記積層構造体の前記切片を縫製して手袋にするステップを有し、前記手袋が、背面部分と掌部分を互いに縫製することによって形成され、
前記掌部分が、親指の空洞以外の4本の指の空洞の前方部を有し、
前記背面部分が、第2指および第5指の空洞の後方部を有し、
項目10に記載の手を被覆する衣料を製造する方法。
(項目15)
手を被覆する衣料であって、
背面部分および掌部分を備え、前記背面部分および前記掌部分が、積層構造体により構成されており、
前記積層構造体が、互いに積層された少なくとも2つの材料を有し、前記少なくとも2つの材料のうちの第1の材料が、皮革であり、前記少なくとも2つの材料のうちの第2の材料が、防水通気性材料であり、
前記防水通気性材料が、互いの上に積み重ねられて層の「サンドイッチ」を形成する複数の層を有し、前記複数の層のうちの1つが、防水性膜であり、前記防水性膜が、前記複数の層のうちの少なくとも2つの他の層の間に挟まれており、前記複数の層のうちの前記少なくとも2つの他の層が、通気性材料により構成されており、
層の前記サンドイッチが、以下のもの、すなわち、シェル生地サンドイッチ、ソフト・シェル生地サンドイッチおよびポケット・ライナー生地サンドイッチのうちの1つであり、
前記掌部分が、前記背面部分に接合されている、
手を被覆する衣料。
(項目16)
前記シェル生地「サンドイッチ」が、表生地層、前記防水性膜、および、トリコットまたは編まれた裏地を有する項目15に記載の手を被覆する衣料。
(項目17)
前記ソフト・シェル生地サンドイッチが、表生地層、前記防水性膜、および、フリースまたはトリコットの裏地を有する項目15に記載の手を被覆する衣料。
(項目18)
前記ポケット・ライナー生地サンドイッチが、前記防水性膜と、前記防水性膜の上方および下方に配設された2つの層のトリコットまたは編まれた裏地とを有する項目15に記載の手を被覆する衣料。
(項目19)
以下のもの、すなわち、長いガントレット手袋、アンダー・カフ手袋、長いガントレット・ミトンおよびアンダー・カフ・ミトンのうちの1つである項目15に記載の手を被覆する衣料。
(項目20)
前記衣料の上部が、前記上部においてプレ・カーブ・フィットをもたらすダーツを有する項目15に記載の手を被覆する衣料。