特許第5936641号(P5936641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インセプト エルエルシーの特許一覧

特許5936641医療装置内でインサイチューで成形可能な材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936641
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】医療装置内でインサイチューで成形可能な材料
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/06 20130101AFI20160609BHJP
   A61L 29/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61F2/06
   A61L29/00 C
   A61L29/00 W
   A61P9/10
   A61K49/04 A
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-47232(P2014-47232)
(22)【出願日】2014年3月11日
(62)【分割の表示】特願2009-513234(P2009-513234)の分割
【原出願日】2007年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-133156(P2014-133156A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2014年3月11日
(31)【優先権主張番号】11/443,504
(32)【優先日】2006年5月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509221607
【氏名又は名称】インセプト エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】フアルハド クホスラビ
(72)【発明者】
【氏名】ジャメス ドレヘル
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−507707(JP,A)
【文献】 国際公開第98/043695(WO,A1)
【文献】 特開2005−027840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
A61K 49/04
A61L 29/00
A61P 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、膨張可能部材を含むエンドグラフトを含み、該膨張可能部材内に、緩衝水溶液と、ヤング率が少なくとも10キロパスカルであり、かつ膨潤能が20% v/v未満である固体の非生分解性ポリマー材料とを含み、該エンドグラフトが当該エンドグラフトを通して血流を提供する、前記医療装置。
【請求項2】
前記ポリマー材料が、少なくとも100キロパスカルのヤング率を有する、請求項1記載の医療装置。
【請求項3】
前記ポリマー材料が、少なくとも10MPaのヤング率を有する、請求項1記載の医療装置。
【請求項4】
前記緩衝水溶液が、前記材料に分散されている、又は前記材料と部分的に分けられている、請求項2記載の医療装置。
【請求項5】
前記水溶液が、前記水性溶媒の重量に対して0.1重量部から1重量部のポリマー前駆体の範囲で存在する、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記材料が、100MWのポリエチレンオキシドを含む水溶性ポリマーの反応を含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記材料が、水溶性ポリアクリレートの反応を含む、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記材料が、2つのタイプの官能基の反応生成物を含む、請求項4記載の装置。
【請求項9】
前記材料が、分子量が少なくとも10000である第1のポリマー部分と、分子量が1000未満である第2のポリマー部分とを含む、請求項4記載の装置。
【請求項10】
前記材料を画像化するための放射線不透過性薬剤をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記膨張可能部材が、バルーン又はカフを含む、請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記ポリマー材料が、10% v/v、5% v/v又は1% v/v未満の膨潤能を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記ポリマー材料が、少なくとも5、10、15、20、又は30年の期間にわたって、その力学的性質を維持する、請求項1〜12のいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
腹部大動脈瘤の治療のための請求項1記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、移植される医療装置(例えば、動脈瘤を治療するために、天然の
血管内に配置される人工動脈)内の固体材料を形成する流動可能な前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
腹部大動脈瘤(AAA)は、ほぼ腹部領域に、風船様の膨隆又は嚢を形成する、大動脈中の
弱くなった領域である。血液が大動脈を流れる度に、血液の圧力は、弱くなった壁を押し
、これを拡張させる。血液は通常、堅い血栓を形成せずに、拡張された領域中に鬱血する
。AAAは通常、動脈壁の中膜における変性の結果であり、血管の内腔の緩徐で継続的な拡
大をもたらす。腹部大動脈瘤破裂は、米国における主な死因のおよそ第13位であり、年間
およそ15,000人が死亡している。500,000人以上のアメリカ人が大動脈瘤と診断される一
方、現在の装置の欠点と、観血手術的手技のリスクにより、治療を受けているのは100,00
0人未満である。
【0003】
クリップ及び観血手術は、AAAに対する従来の介入処置であった。最近では、血液凝固
を誘発するコイルを動脈瘤に導入することなどの、より侵襲的でない技術が試みられてい
る。治療されるAAAのうち、最小限に侵襲的であるのは、約30,000件のみである。他の手
法は、動脈瘤を横切ってエンドグラフトを入れ、血液がグラフトの内腔を介して流れるこ
とができるようにし、動脈瘤壁に対する圧力を低下させて、その拡張及び断裂を予防する
ものである。ステントは、その配置を容易にする、また、これを患者体内に安定化するた
めに、エンドグラフトと共に使用されている。しかし、従来のエンドグラフト装置は、動
脈瘤(複雑な三次元形状を有する可能性がある)には十分に適合できなかった。さらに、動
脈瘤は、徐々に形状を変える可能性があり、移植されたグラフト及び/又はステントが失
敗に終わる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
必要とされるのは、AAA治療装置を安定化するための技術である。装置の膨張可能部材
を膨張させて装置を適所に配置する、流動可能な前駆体材料(その後、この前駆体は硬化
し、装置を適所に保つ)を導入することによって、移植された医療装置を安定化する材料
及び方法を含めたこれらの技術を、本明細書に記載する。流動可能な充填剤によって、適
切な圧力を伴って膨張可能部材を膨張させ、部材を周囲組織に押しつけ、組織の形状に適
合させ、患者体内に十分に適合させることになる。その後、充填剤が硬化することによっ
て、装置が適所に固定される。AAAの場合、適切な膨張可能部材を備えたエンドグラフト
は、血液を大動脈に流れさせて動脈瘤嚢から分離させる内腔(1つ又は複数)を伴って、安
全に配置することができる。動脈瘤嚢は、血液がそれに流れ込まなければ破裂する可能性
が低く、例えば、嚢に架橋するエンドグラフトの周囲を虚脱させることによって、より危
険でない状態に再構築することができる。AAAを治療するための他の膨張可能かつ充填可
能な装置は、例えば、米国特許第6,312,462号、2004年10月14日に公開された米国特許公
開第2004/0204755号、及び2005年7月22日に出願された米国出願第US2006/0025853A1号(本
明細書の明確な開示を否定しない範囲で、これらを参照により本明細書に組み込む)に記
載されている。後述する通り、膨張可能部材のための充填剤は、ある種の特性を有するべ
きである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、この技術のある種の実施態様は、生体適合性膨張可能部材中でインサイチ
ューで材料を形成する方法であって、例えば、水溶性ポリマー前駆体を流動可能な水溶液
に入れたものを膨張可能部材に送達することによって、患者体内の医療装置の膨張可能部
材の体積を増大させることを含む方法を対象とする。ポリマー前駆体上の官能基は、共有
結合形成、イオン結合、熱転移などの単一又は組み合わせられた機構を受けて、膨潤能(s
wellability)が例えば約20% v/v未満であり、かつ、例えばフリーラジカル開始剤によっ
て、固体材料を形成するための官能基の化学反応を開始してから、又は第1の前駆体と反
応性官能基を有する別の前駆体とを混合してから約30秒から約30分以内のヤング率が、少
なくとも約1kPa、又は少なくとも約10kPa、又は少なくとも約100kPa、又は少なくとも約1
MPa、又は少なくとも約10MPaである、固体かつ非生分解性の材料を形成する。ある実施態
様では、ポリマー前駆体は、少なくとも100MW又は少なくとも4,000MWのポリエチレンオキ
シド及びアクリレート官能基を含む。一変形形態は、分子量が約10倍異なる2つの前駆体(
より小さな前駆体は、約2000未満又は約1000未満の分子量を任意に有する)を使用するこ
とを含む。これらの技術によって形成される材料は、その中に混在する水性溶媒を含むこ
とができ、また、混在する緩衝剤を含むこともできる。別の変形形態は、硬化する材料を
得るために、反応物溶液の濃度を変化させることを含む。
【0006】
本発明のある実施態様は、緩衝水溶液と、ヤング率が少なくとも約10kPa又は少なくと
も約100kPa又は少なくとも約1MPa又は少なくとも約10MPaであり、膨潤能が例えば約20% v
/v未満である固体かつ非生分解性ポリマー材料とを含む膨張可能部材を含む医療装置に関
する。緩衝水溶液又はこうした溶液の成分は、材料に分散させることもできるし、材料と
部分的に分けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】2つの官能基を有するポリマー前駆体を表す。
図1B】化学的に異なる主鎖と、類似の官能基とを有する2つのタイプのポリマー前駆体を表す。
図1C】2つのタイプの官能基を有するポリマー前駆体を表す。
図1D】4つの官能基を有する、多数の腕をもつポリマー前駆体を表す。
図1E】異なる分子量の2つのポリマー前駆体を表す。
図1F】2つのタイプの官能基を有する、多数の腕をもつポリマー前駆体を表す。
図1G】2つのタイプの官能基を有する、2つのポリマー前駆体を表す。
図2】ポリエチレングリコール主鎖とアクリル酸官能基とを有するポリマー前駆体を表す。
図3】ポリエチレングリコール主鎖とメタクリレート官能基とを有するポリマー前駆体を表す。
図4】メタクリレート官能基を有するポリマー前駆体を表す。
図5】ポリプロピレン主鎖とメタクリレート官能基とを有するポリマー前駆体を表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本発明の好適な実施態様の詳細な説明)
本発明の一実施態様は、移植可能医療装置内でインサイチューでポリマー材料を形成す
るためのシステムである。上述の通り、あるインプラントは、固体材料を形成するポリマ
ー前駆体を用いて膨張させることができる膨張可能部材と共にインプラントを導入するこ
とによって、体内に安定化させることができる。ポリマー前駆体及び得られる固体材料は
、水溶液中での溶解度、粘度、反応時間、重合熱、貯蔵寿命、可使時間、医療装置に対す
る接着、及び重合後の力学的性質(引張り強さ、低い膨潤能、圧縮強さ、剛性、弾性、脆
性、安定性、及び耐久性など)を含めた様々な要件を考慮して選択することができる。前
駆体上の官能基は、これらの設計の要件及び他の設計の要件に対処するように選択するこ
とができる。これらの特性を調節するために、又は他の関連する因子(例えば、pH、耐久
性、放射線不透過性、プラスチックに対する結合性、金属に対する結合性、及び生体適合
性)に対するさらなる制御を提供するために、このシステムの他の成分を選択することも
できる。
【0009】
AAAの治療のためには、二重壁の薄いバルーンを備えるエンドグラフトをAAAを横切って
入れることができ、エンドグラフトの内腔によって、エンドグラフトを介して血流を提供
することができる。バルーンは、重合して固体材料に硬化する流動可能なポリマー前駆体
でインサイチューで充填される。硬化した材料は、患者の動脈瘤の特定の形状に適合し、
安定性、すなわち漏れ止めシール(leakproof seal)を提供し、また、エンドグラフトの移
動を防止する。
【0010】
ポリマー前駆体は、他のポリマー前駆体上の特定の官能基との共有結合を形成し、それ
によってポリマー材料を形成する、反応性の官能基を有するポリマーである。ポリマー前
駆体は、任意のポリマー又は合成ポリマーであり得る。合成とは、ヒト細胞によって天然
に産生されない分子を指す用語であり、それがどのように作製されるか、又はどのように
化学修飾されているかにかかわらず、例えばコラーゲンは除外される。あるポリマー前駆
体は、それが少なくとも(分子量基準で)約90%合成であり、残りの前駆体が生物学的モチ
ーフ(例えば、特定の酵素によって分解可能な一連のアミノ酸)を有する化学基であるとい
う意味で、本質的に合成である可能性がある。ポリマー前駆体は、アミノ酸、又はペプチ
ド結合、又は糖類単位、又は多糖を含まないように選択することができる。
【0011】
ポリマー前駆体は、様々なポリマー基を含むことができる。ある前駆体は、水溶性であ
るが、これは、前駆体が、1リットルにつき少なくとも約1グラムの濃度で水溶液中に溶解
できることを意味する。ある前駆体は、ポリマー材料に形成される場合に、水溶性、及び
溶液中の望ましい粘度、及び力学的性質を与えるために有用であるポリエチレンオキシド
(PEO、-(CH2CH2O)n-)を含む。あるポリマー前駆体は、例えば、約100から約500,000MWのP
EOを含む;当業者には、これらの明確に表された値の範囲内のすべての値及び部分範囲(例
えば、約600ダルトン、約15,000ダルトン、約500から約100,000ダルトン、約5,000から約
50,000ダルトン)が含まれることが理解されよう。ある前駆体は、これに匹敵する量(例え
ば約100から約250,000ダルトン)のPEO関連ポリマー、例えば、ポリプロピレンオキシド(P
PO、-CH2(CH2)2O)n-)、他のポリアルキレン酸化物、又はPEO-PPOのコポリマーを含む。水
溶性前駆体はまた、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ塩化ビニ
ル、ポリアクロニトリル、ポリアリアミン、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリカル
ボメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロ
リドン、又はこれらの組み合わせなどの他のポリマーから直接、又は他のポリマーの誘導
体化の後に形成することができる。例えば、非水溶性ポリマーは、例えばカルボキシル、
ヒドロキシル、又はポリエチレングリコールを加えることによって、水溶性基で装飾し、
その水溶性を増強して、水溶性ポリマー前駆体を作製することができる。水溶性モノマー
の例は、以下の通りである:アクリル酸2(2-エトキシエトキシ)エチル、トリアクリル酸エ
トキシ化(15)トリメチロールプロパン、ジアクリル酸エトキシ化(30)ビスフェノールa、
ジメタクリル酸エトキシ化(30)ビスフェノールa、トリアクリル酸エトキシ化(20)トリメ
チロールプロパン、ジアクリル酸金属、モノアクリル酸メトキシポリエチレングリコール
(350)、モノメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(350)、モノアクリル酸メトキ
シポリエチレングリコール(550)、モノメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(55
0)、ジアクリル酸ポリエチレングリコール(200)、ジアクリル酸ポリエチレングリコール(
400)、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(400)、ジアクリル酸ポリエチレングリコ
ール(600)、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(600)、及びモノメタクリル酸ポリプ
ロピレングリコール。
【0012】
ポリマー前駆体は、線状でも分枝状でもよい。例えば、前駆体は、3以上、例えば、少
なくとも3、又は約3から約12の末端を有することができるが、当業者は、明確に記述され
た範囲内のすべての範囲及び値が開示されることを直ちに理解するであろう。多数の腕を
もつ前駆体を得るための、またそれらに官能基を付着するための様々な技術及び供給元は
、例えば、Aldrichカタログ又はNektar又はShearwater Polymersで、又はSartomer社カタ
ログから、並びにこれらの技術に関する文献中で知られている。
【0013】
ある実施態様は、平均分子量が異なる2以上の前駆体、又は2以上のタイプの前駆体を含
む。異なるタイプの前駆体は、異なる化学式を有する。単一のタイプのポリマーを、2つ
の異なる平均分子量を有する2つのポリマー前駆体に組み込むこともできる。前駆体の溶
液に関する分子量平均は、これらの技術で慣習的であるように、例えば、重量平均又は数
平均によって決定することができる。したがって、前駆体の分子量は、複数の前駆体の平
均分子量を表す。
【0014】
前駆体の官能基は、例えば、求電子基-求核基の組み合わせによって、重合可能又は反
応性となり得る。これらの基は、同一の基と反応性(例えばアクリレートのフリーラジカ
ル重合において見られるような)であってもよいし、相補的な基と反応性(例えば、求電子
-求核反応において見られるような)であってもよい。重合可能な基としては、例えば、エ
チレン的に不飽和である基、フリーラジカル化学、縮合化学、又は付加化学によって重合
可能な基が挙げられる。官能基の例は、以下の通りである:アクリレート、メタクリレー
ト、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロ
キシエチル、ポリプロピレングリコールジグリシダルエーテル、ポリエチレングリコール
ジグリシジルエーテル、N-アクリルオキシスクシンイミド、メタクリル酸グリシジル、及
びヘキサメチレンジイソシアネート。求電子又は求核官能基の例としては、スクシンイミ
ドエステル、マレイン酸、イソシアネート、マレイン酸、カルボジイミド、アルデヒド、
アゾ、ジアゾ、チオシアネート、カルボキシル、アミン、チオール、及びヒドロキシルが
挙げられる。前駆体上の官能基は、同じであっても異なるタイプのもの(各タイプの官能
基は、化学的に異なる基である)であってもよい。異なるタイプの前駆体は、各前駆体が
反応してポリマー材料を形成するとの条件で、同じ又は異なるタイプの官能基を有するこ
とができる。
【0015】
アクリレートは一般に水溶性であるが、水と反応しないので、ある実施態様では、アク
リレートを使用することが好都合である。対照的に、例えば、ポリウレタン前駆体は、水
と反応する。また、アクリルアミドモノマーは一般に有毒であるが、水溶性のアクリレー
トは毒性が低く、移植を伴う生医学的用途について、より許容し得るものである。
【0016】
例えば、図1Aは、同じ化学式を有する2つの官能基をもつポリマー前駆体を表す。これ
らの官能基は反応可能であり、例えばフリーラジカル重合によって、固体材料を形成する
。また、図1Bは、どちらも同じタイプの官能基を有する化学的に異なる主鎖をもつ2つの
タイプのポリマー前駆体を示す。2つの前駆体は、互いに反応可能であり、固体材料を形
成する。図1Cは、例えばラジカル重合又は求電子-求核反応によって反応して固体材料を
形成することが可能な異なる官能基をもつ一連のポリマー前駆体を表す。他の変形形態と
しては、例えば、同じタイプの官能基で終結する多数の腕をもつ前駆体(図1D)、異なる分
子量の類似の主鎖をもち、同じ官能基を有する一連の前駆体(図1E)、例えばフリーラジカ
ル重合又は求電子-求核反応のための異なるタイプの官能基をもつ多数の腕をもつ前駆体(
図1F)、又は異なる官能基をもつ一連の前駆体(図1G)が挙げられる。図2は、PEG主鎖とア
クリレート官能基を有する例示的なポリマー前駆体を表す。図3は、PEG主鎖とメタクリレ
ート官能基を有する例示的なポリマー前駆体を表す。図4は、ジグリコールと反応するメ
タクリレート官能基を有する例示的なポリマー前駆体を表す。図5は、ポリプロピレン主
鎖とメタクリレート官能基を有する例示的なポリマー前駆体を表す
【0017】
ある実施態様は、分子量の相違が大きいポリマー前駆体の組み合わせを用いる。小さな
前駆体は、より大きな前駆体の末端よりも可動性が比較的大きく、その結果、反応せずに
終結するリビング鎖が少ない。さらに、小さな前駆体は、より大きな前駆体から産生され
る材料の物理的性質を制御する、例えば、鎖架橋間の数及び距離によって制御される剛性
又は他の特性を調節するために使用することができる。例えば、より分子量が低い前駆体
は、架橋間の距離をより短くすることによって、ポリマー材料の剛性を増強することがで
きる。したがって、ある実施態様は、分子量が約30,000から約300,000である第1の前駆体
と、分子量が約100と約3,000の間である第2の前駆体を含む。他の実施態様は、第2の前駆
体の分子量の約100分の1から約10分の1である、あるいは、系中の他のすべての前駆体の
分子量よりも小さい分子量をもつ前駆体を使用する。例えば、フリーラジカル重合可能な
官能基を有する第1の前駆体を、フリーラジカル重合可能な官能基を有する、分子量が比
較的小さい前駆体と混合することができる。ポリマー前駆体は、反応すると、ポリマー材
料中のポリマー部分を形成する。したがって、30,000MWの二官能性ポリマー前駆体は、材
料中の30,000MWのポリマー部分を形成することができる。
【0018】
ポリマー前駆体が反応するのに必要とされる時間は、官能基、前駆体サイズ、pH、開始
剤、触媒、又は促進剤の選択によって制御することができる。一般に、重合のためには、
約30秒から約30分の時間が所望され、その結果、前駆体溶液(1種又は複数)は、粘度を過
度に増大させずに、かつ前駆体が堅い材料を形成するのに必要とされる、使用者が患者に
近づく手技時間を過度に延長せずに、医療装置に導入することができる。重合の時間は、
溶液又は懸濁液中での前駆体の活性化から、溶液又は懸濁液が流動可能でなくなるまでの
時間を観察することによって、患者の体外で測定することができる。前駆体の活性化とは
、その互いとの反応を誘発する(例えば、フリーラジカル重合を開始する、又は反応性のp
Hで求電子基と求核基を混合する)事象をいう。
【0019】
装置へのポリマー材料の結合は、膨張可能部材と結合する前駆体官能基及び/又は前駆
体、あるいは前駆体又は混合された前駆体を受け入れる部材を選択することによって制御
することができる。プラスチック及び金属への結合は、適切な官能基、例えばアクリル酸
ナトリウム又は他のアクリル酸金属を用いることによって増強することができる。
【0020】
ポリマー前駆体の反応時に形成される材料は、装置を患者の体内で安定に保つために、
適切な力学的性質を有するべきである。したがって、変形を阻止するのに十分に固い材料
は、移植が好都合に行われた後に装置に適用される力によってもたらされる。実施態様に
は、ヤング率が少なくとも約500kPa、又は1000kPaである、あるいは約500kPaから約50,00
0kPaの範囲である材料が含まれる;当業者は、他の値も適切であり得ること、また、明確
に記述された範囲内のすべての値及び範囲が開示されることを直ちに理解するであろう。
ヤング率は、以下の通りに測定する:既知の内径のシリコーン管にポリマー混合物を注入
することによって、架橋ポリマーの円柱形の成形されたサンプルを作製する。実質的に完
全な架橋に必要とされる時間が経過した後、1cmの長さの円柱形の「ディスク」を、鋭利
なかみそりの刃を使用して、チューブから切断する;あるいは、切断が必要でないように
、長さ1cmの管を使用する。サンプルが割れないようにディスクを慎重に取り出し、これ
に泡や角欠けがないことを確認する。次いで、ディスクを、平らな加圧板を使用する、か
つ500Nロードセルを使用する、インストロン(Instron)万能材料試験機中での粉砕試験に
かける。ヤング率は、伸張、及び予荷重ステップ(ここでは、応力‐ひずみ曲線は直線状
である)中に得られる荷重データを使用して算出することができる。荷重(N)をプラグ断面
積(平方メートル)で割ると、応力(Pa)が与えられるのに対し、予荷重圧縮の量(伸張、mm)
をプラグ長(mm)で割ると、ひずみ(単位なし)が与えられる。次いで、応力をひずみで割る
ことによってヤング率を算出することができる。最大ひずみは、以下の通りに計算するこ
とができる:
最大ひずみ率は、続いて総プラグ圧縮をプラグ長で割り、100をかけたものである。
総プラグ圧縮(mm)=伸張(mm)+変位(mm)
ひずみ率=[総プラグ圧縮(mm)/プラグ長(mm)]×100
達成される最大応力は、極限応力である。
【0021】
ある種の実施態様は、非ヒドロゲルである。ある種の実施態様は、本明細書に記述する
前駆体及び官能基から形成されるポリマー並びにそれらの組み合わせ、例えば、ポリアク
リレート、ポリメタクリレート、及びポリメチルメタクリレートである。極限応力とひず
みが高く、なおかつヤング率が約100kPaを超える材料が好ましい。水性の環境に置かれて
も実質的な水和を示さず、さらに、物理的性質上、時間が経過しても実質的な分解を示さ
ない材料が好ましい。
【0022】
ポリマー前駆体の反応時に形成される材料は、時間が経過しても装置を患者の体内で安
定に保つために適切な耐久性を有するべきである。材料のある実施態様は、少なくとも5
、10、15、20、又は30年の期間にわたって、その力学的性質を有効に維持する。ポリマー
材料のある実施態様は、動物の体内で基本的には生分解性でない、すなわち、動物体内で
の典型的な組織における(すなわち、ラット又はウサギなどの動物モデルにおける皮下、
筋肉内、又は血管内への移植によって測定可能な)機械的強度の喪失をもたらす有効な加
水分解及び/又は酵素的分解を受けない。非生分解性ポリマー材料の例は、ポリアクリレ
ート、ポリメタクリレート、及びポリメチルメタクリレートである。生分解性材料の例は
、フィブリン糊、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリ乳酸、及び多くのポリエステルである
【0023】
ポリマー材料は、水溶液中での膨潤能が制限されるように設計することができる。膨潤
度の制限によって、水が存在する場合でも、ポリマー材料が、形成後にその周囲に圧力を
かけることが好都合に防止される。また、膨潤による水の吸い込みが制限されることによ
って、材料が、患者の体内で静止できるようになる。ポリマー材料のある種の実施態様は
、ポリマー材料がその完全な圧縮強さに基本的に到達した後、300〜330milliOsmolar、pH
7.4緩衝水溶液にポリマー材料を露出させ、制約のない状態で24時間膨張させた後、その
重量の変化を観察することによって測定されたものとしての水溶液中での膨潤(体積膨潤
は、重量の変化から算出される)が、20%v/v、10% v/v、5% v/v、又は1%v/v未満である。
【0024】
ポリマー前駆体の溶液の粘度は、ポリマーのタイプ、ポリマー濃度、ポリマーの溶解度
、及びポリマーの分子量などの因子を調節することによって制御することができる。一般
に、前駆体溶液の粘度は、医学的に安全な圧力を使用するエンドグラフトの膨張を可能に
するチューブ(例えば中空のチューブガイドワイヤー)に溶液を押し入れるのに十分に低く
なければならない。ある医療装置は、例えば血管形成術又は血管の一時的な閉塞の目的で
、こうしたチューブを使用して、内視鏡装置上のバルーンを膨張させる。一般に、約500
センチポアズ未満、約100センチポアズ未満、又は約10センチポアズ未満の粘度が好まし
い。粘度は、約25気圧未満という従来の操作圧力を用いる従来のサイズのチューブで使用
するために調節することができる。
【0025】
前駆体のある実施態様は、ほぼ生理的なpH及び/又はモル浸透圧濃度で反応可能である
官能基と共に選択される。これらの特性は、例えば、前駆体を可溶化する、前駆体を所定
の位置に押し込む、あるいは装置の一部をその場で前駆体又はポリマー材料で洗浄するた
めに、生理緩衝液を用いるために有用である。2以上の前駆体の溶液が混合される場合、
混合前の第1のpH及び混合後の第2のpHのために、1以上の溶液のための緩衝剤を選択する
ことができる。例えば、第1の前駆体溶液は、前駆体の反応を最小限にするために、弱い
緩衝強度の緩衝剤中で、低いpHを有する可能性があり、緩衝強度が比較的強い第2の溶液
は、第1の溶液と混合させて、前駆体の反応に好都合である第2のpHを達成することができ
る。さらに、エステル結合は、若干酸性のpH(例えば約pH4)で、より安定であることが観
察されるので、安定性という理由で、ある種の成分について、特定のpHを選択することが
できる。移植時には、生体適合性の理由で、(例えば約7から約8という)生理的pHを選択す
ることができる。あるいは、約4から約9という異なるpHを選択することもできる。
【0026】
形成された後のポリマー材料の視覚化を可能にするために、ポリマー前駆体と共に、放
射線不透過性(radio-opaque)成分を導入することができる。放射線不透過性材料の例は、
PANTOPAQUE、硫酸バリウム、タンタル粉末、(すべて水に不溶性)、ISOVUE、OXILAN、ヨー
ダパミド(iodapamide)、オムニパーク、メトリザミド、イオペントール、イオヘキソール
、イオフェノキシ酸、イオベルソール、ガドジアミド、及びチロパノ酸ナトリウムである
。例えば、X線、磁気共鳴画像法、及び断層撮影法(例えば、スパイラルコンピュータ断層
撮影技術)による画像化を向上させるために、成分を導入することもできる。
【0027】
官能基のある実施態様は、例えば、ポリマー材料の反応速度論又は力学的性質を増強す
るために、開始剤及び/又は触媒に好都合に露出させることができる、フリーラジカル重
合可能な基である。
【0028】
開始剤は、多くの系において、重合を開始するために必要とされ、例えば、熱、化学物
質、及び光によって活性化される開始剤が挙げられる。開始剤を使用して、ポリマー前駆
体を活性化させ、重合させてポリマー材料を形成することができる。開始剤濃度は、ポリ
マー材料の重合時間、温度、及び力学的性質などの変数に影響を及ぼす可能性がある。
【0029】
酸化還元化学型の開始系では、例えば、金属イオンを、酸化剤又は還元剤として使用す
ることができる。例えば、重合を開始するために、ある種の金属イオンを、過酸化物又は
ヒドロペルオキシドと組み合わせて使用することができる。ある適切な金属イオンは、電
荷の1つだけの違いによって分けられる少なくとも2つの状態(例えば、第二鉄/第一鉄;第
二銅/第一銅;第二セリウム/第一セリウム;第二コバルト/第一コバルト;バナジン酸塩V対I
V;過マンガン酸塩;及び第一マンガン/第二マンガン)を有する。過酸化水素、t-ブチルヒ
ドロペルオキシド、過酸化t-ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化クミルを含めた、過酸化
物及びヒドロペルオキシドなどの、ペルオキシジェン(peroxygen)含有化合物も使用する
ことができる。
【0030】
熱開始系(Thermal initiating systems)、例えば、生理的体温又はその近くで、フリー
ラジカル架橋反応を開始する、市販品として入手できる低温フリーラジカル反応開始剤も
使用することができる。ある例は、過硫酸ナトリウム(50℃)、過硫酸アンモニウム(50℃)
、グルコースオキシダーゼ-グルコース-硫酸第一鉄(溶存酸素の存在下で約37℃で開始す
る)である。
【0031】
重合の開始については、光重合開始剤、例えば、DAROCUR 2959(約360nmで開始する)、I
RGACURE 651(約360nmで開始する)、エオシン-トリエタノールアミン(約510nmで開始する)
、メチレンブルー-トリエタノールアミン(約632nmで開始する)なども知られている。
【0032】
ポリマー前駆体の反応をさらに制御するために、又は貯蔵寿命を延長するために、触媒
、助触媒、及び鎖延長剤(chain extender)を使用することができる。例えば、エオシン-
トリエタノール光開始系を使用する時、少量のビニルピロリジノン(例えば1mlあたり約1
〜10μl)を加えることができる。保管中のポリマー前駆体の早期重合を防止するために、
ヒドロキノンなどの阻害剤を加えることもできる。テトラメチルエチレンジアミン(TEMED
)は、多くの重合に、例えば、過硫酸アンモニウム/TEMED又はリボフラビン/TEMEDによっ
て触媒される反応において、有用な触媒である。ほとんど又は全く酸素を必要としない、
ある種の開始剤(例えば、リボフラビンベースの開始剤系)を選択することもできる。酸素
の存在によって実質的に阻害されず、かつ生理的温度で反応を進行させることができる系
を選択することもできる。
【0033】
水溶液中へのポリマー前駆体の送達によって、水を含むことにより粘度が制御された溶
液の調製が容易になる。さらに、ある量の溶液が、患者又は使用者と接触するべき場合に
は、例えば有機溶媒とは対照的に、水溶液は、安全面での利益を提供する。また、水の存
在は、使用される重合可能な前駆体の質量を低下させ、したがって、体内に図らずも放出
されるはずである前駆体の毒物的プロフィールを向上させるために役に立つ。さらに、前
駆体のための水性溶媒は、材料の分解、又はその力学的性質に対する潜在的に望ましくな
い変更(例えば、部分的な保存(salvation)によって軟化すること)などの、膨張可能装置
中に使用される材料に関する潜在的な適合性問題を回避する。一般に、水溶液は、医療装
置の膨張可能部材のために使用される生体材料を溶媒和させない。水性溶媒は、ポリマー
材料に(例えば孔隙中に)分散させることもできるし、溶媒のある部分を、材料と分けてお
くこともできる。溶液のpHを制御するために、溶媒を、緩衝剤又は薬剤を用いて緩衝する
ことができる。所望の粘度を達成するために、系の他の成分と混合する水性溶媒の量は、
硬化する材料の特性を考慮して調節することができる。ある実施態様は、水性溶媒の重量
に対して約0.5重量部から約10重量部のポリマー前駆体を含む;当業者は、この範囲内のす
べての範囲及び値が開示されることを直ちに理解するであろう。
【0034】
移植可能医療装置の膨張部材を充填するために、ポリマー前駆体を使用することができ
る。この医療装置は例えば、例えばヒト患者の血管系に導くことが可能である(この目的
で患者に導入されるガイドワイヤーを使用する)、最小侵襲手術(minimally invasive sur
gery)(MIS)技術に好都合であり得る。膨張可能又は拡張可能な部材を有するMIS装置の例
は、例えば、PCT出願公開第WO 00/51522号、米国特許第5,334,024号、第5,330,528号、第
6,312,462号、第6,964,667号、第7,001,431号に、2004年10月14日に公開された米国特許
公開第2004/0204755号に、及び2005年7月22日に出願された米国特許出願第US2006/002585
3A1号(本明細書に明確に開示されることを否定しない範囲でこれらを本明細書に組み込む
)に提供されている。
【0035】
膨張可能部材は、部材への流動可能材料の導入の結果、体積の増加を受ける。膨張可能
部材は、例えば、バルーン、二重壁のバルーン、又は膨張可能カフであり得る。膨張可能
部材は、コンプライアント(compliant)材料又はノンコンプライアント(noncompliant)材
料、あるいはその両方を含むことができる。ノンコンプライアント材料(例えば、パリレ
ン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリエチレンテレフタレート)は一般に、生理的
条件下で変形を阻止する。コンプライアント材料の例は、一般にシリコーン、ラテックス
、及び弾性材料である。ノンコンプライアント材料は、その後の膨張を可能にする形状で
該材料を導入することによって、膨張可能部材中に使用することができる;例えば、ノン
コンプライアント材料は、送達のために巻きつけられる又は折り畳まれ、例えば、流動可
能な前駆体で部材を充填する結果として、ほどける又は開くことによって、膨張する。移
植可能医療装置の設置のために使用されるバルーンは、密閉された、柔軟性のある、膨張
可能な、弾性部材であり得る。バルーンは、例えば、球形、楕円形、管状、円柱形(シリ
ンダーの内側に内腔を伴う二重壁の間に充填される)を含めて、非常に様々な形をとるこ
とができる。膨張可能部材は、コンプライアントとノンコンプライアント材料の組み合わ
せ(例えば、ノンコンプライアント部分が、コンプライアント部分に隣接したもの)を含む
こともできる。
【0036】
使用の際には、流動可能な形のポリマー前駆体を、膨張可能部材(ここで、ポリマー前
駆体は、ポリマー材料に凝固する)に送達することができる。流動可能な前駆体を、膨張
部材に導入し、可撓性材料を膨張させ、部材の体積を増大させることができ、膨張後に部
材を密閉することができる。部材内の材料は、たとえ材料が患者の組織に直接接触してい
なくても、「患者体内にある」ということができる。部材の膨張によって、部材が患者の
組織に押し付けられ、装置を組織内に固定することができる。前駆体の固体材料への硬化
によって、装置はさらに固定される。前駆体(1種又は複数)は、膨張部材への導入より前
、導入中、又は導入後に活性化することができる。活性化は、ポリマー前駆体を、例えば
、重合を開始させる開始剤としての前駆体に共有結合を形成させる活性化剤、開始剤を活
性化するための「前駆体-及び-開始剤」溶液のpHを変化させる緩衝剤と混合することによ
って、あらかじめ達成することができる。あるいは、熱又は光重合開始剤を活性化するた
めに、熱又は光の形の外部エネルギーを適用することができる。また、例えば、求核官能
基を有する前駆体と、求電子官能基と前駆体を混合することによって、又は求電子官能基
と求核官能基を含む前駆体のあらかじめ混合された組み合わせのpHを変えるために緩衝剤
を使用することによって、求電子-求核反応を活性化することができる。
【0037】
ある実施態様では、2つの溶液は、生体外で互いに混合され、MIS技術を使用して膨張可
能部材に導入される。この混合物を、充填チューブを介して、所望の圧力が達成されるま
で膨張可能部材に注入し、部材を充填するためのチューブを抜いて、混合物と共に膨張す
る膨張可能部材から離し、該混合物を部材内に完全に密閉し、固体材料(例えば、ポリマ
ー材料)に硬化させる。重合の時間は、部材を満たし、充填チューブを抜くために必要と
される時間量よりも多い。この方法の例は、重合を開始させる開始剤を含む溶液と、重合
可能な第1の前駆体を含む第1の容器とを組み合わせることである。上述の通り、様々なタ
イプ及びサイズの前駆体を、様々なタイプの開始剤と組み合わせて使用することができる
。例えば、異なるタイプ及び/又は分子量の前駆体を含む2つの溶液を使用することができ
る。
【0038】
他の実施態様では、患者の体内で組み合わせるための、別々の充填チューブを介して別
々に導入される(例えば、膨張可能部材内で、又は導入装置中に配置される多岐管内で初
めて混合される)2つの溶液が調製される。
【0039】
一例として、2つの各末端で、ジアクリレート官能基で終結する、約10グラムの35,000M
W PEGポリマー前駆体を含む第1の前駆体容器を備えるキットを調製することができる。第
1の前駆体容器は、放射線不透過性の薬剤(例えば約10グラムのジアトリゾア酸ナトリウム
)と開始剤(例えば約1.8グラムの過硫酸塩)を含有することができる。第1の希釈剤容器は
、生理的pH(例えば7.4)かつ生理的モル浸透圧濃度、又は、他の成分と組み合わせた後に
生理的pH及びモル浸透圧濃度を達成するモル浸透圧濃度及び緩衝強度の、約230mlのリン
酸緩衝溶液を含む。第2の前駆体容器は、2つの各末端で、ジアクリル酸官能基で終結する
、基本的には純粋な約150mlの600MW PEGポリマー前駆体を含み、100mlのリン酸緩衝溶液p
H4及び触媒(例えば約1.8mlのTEMED)をさらに含む。使用者は、第1の希釈剤容器を、第1の
前駆体容器と混合し、第1の前駆体溶液を形成し、これを、第2の前駆体容器の内容物と混
合し、膨張可能部材を充填するために使用する。前駆体は、約2〜3分で、硬く堅い架橋材
料を形成する。材料は、ジアトリゾア酸ナトリウムに起因して、X線透視で可視である。
上に述べた通り、一方又は両方について、重合時間をより早く又は短く(例えば、約30秒
から約30分)するために、系を制御することができる。例えば、約1.2gの過硫酸塩及び1.2
mlのTEMEDによって、約5〜6分の重合時間が提供されるであろう。又は、同じ調合物にお
ける約0.6gの過硫酸塩及び約0.6mlのTEMEDによって、重合時間は約20分となるであろう。
【0040】
既に論じた通り、他の変形形態としては、例えば、PEG 600DAを、エトキシ化トリメチ
ロールプロパントリアクリレート又はエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレー
トで置き換えること、固体濃度を変化させること、代替の放射線不透過物質(radiopacifi
er)の使用、他の開始系(例えば鉄の塩及び過酸化水素)を使用すること、又はプラスチッ
クへの接着を促進するコモノマーを加えることが挙げられる。
【0041】
ある種の他の実施態様は、充填剤を含むポリマー材料を形成するために、ポリマー前駆
体(1種又は複数)と混合される充填剤を使用することを含む。充填剤は、ポリマー材料の
特性(例えば、剛性、機械的強度、圧縮性、又は密度)を調節するために使用することがで
きる。充填剤の例としては、固形物、例えば、ビーズ、シリンダー、マイクロビーズ、中
空材料(例えば中空微小球体)、繊維(例えばポリ乳酸繊維)、及びメッシュ(例えばナイロ
ンメッシュ)が挙げられる。こうした充填剤は、インプラントへの導入の前に、前駆体の
一方又は両方と混合することもできるし、充填剤をインサイチューで混合することもでき
る。前駆体溶液は、適所に充填剤を保持するための連続的な懸濁媒体として使用すること
ができる。
図1A
図1B
図1C
図1D-E】
図1F-G】
図2
図3
図4
図5