(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属材料の溶湯から軸対称形状に製造された半凝固金属材料を、プレス成形製品の形状に対応した凹部を有する下金型の凹部の上に搬入する半凝固金属材料搬入ステップと、
搬入された半凝固金属材料のX、Y、Z方向の寸法のうちのプレス方向に相当するZ方向の寸法変化を上金型に当接させて規制したZ方向規制状態において、半凝固金属材料のX、Y方向の一方の寸法を横パンチによりプレス成形製品と同等の寸法まで圧縮しその位置で横パンチを停止して前記一方の寸法変化を規制するプレス成形第1ステップと、
プレス成形第1ステップによる前記一方の寸法変化が規制された状態において、上金型をプレス方向に移動させ、半凝固金属材料のZ方向寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで圧縮するプレス成形第2ステップと、
を含むことを特徴とする半凝固金属材料のプレス成形方法。
前記プレス成形第2ステップは、更に、半凝固金属材料のX、Y方向の他方の寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで成長させることを特徴とする請求項1に記載の半凝固金属材料のプレス成形方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルミニウム合金等を成形する技術の1つとして、金型に溶融金属を加圧注入し、所定形状の製品を得る鋳造方法のダイカスト法が用いられてきた。溶湯を用いた場合、金型の寿命が短い、引け巣等が発生し製品の品質が十分でないなどの問題がある。
【0003】
そこで近年は、このダイカスト法において、金型に注入する金属材料として、溶融金属の代わりに、固相成分と液相成分とを共存させた半溶融状態にある金属(半凝固金属又は半溶融金属)を用いて高圧鋳造する方法が使用されてきている。
【0004】
この方法は、一般的なダイキャスト法と区別され、レオキャスティング法やチクソキャスティング法と呼ばれている。
【0005】
レオキャスティング法は、凝固途中の金属を電磁的、機械的、あるいは超音波等の手段で強制撹拌することによって、細かい球状晶を液相内に均一に分散させた固液混合の半凝固金属を得て、この半凝固金属をダイカストマシンの鋳型内に圧入し、製品を鋳造成形するものである。
【0006】
チクソキャスティング法は、溶湯を冷却中に強制撹拌して得られる半凝固金属を得た後、それを一旦急速に冷却して完全凝固させた棒状の鋳塊(ビレット)を成形しておき、製品製造時において、このビレットから必要量を切出した後、半溶融状態(半凝固状態)まで再加熱し、レオキャスティング法と同様にダイカストマシン等により製品を製造する方法である。
【0007】
いずれの方法も、一長一短があるが、いずれも半凝固金属(以下半溶融金属も含めて表示する)を鋳型内で加圧成形するという点で共通している。
【0008】
ところで、これらの方法で金属材料を金型内に圧入するには、半凝固金属を鋳込スリーブにセットしてプランジャー等の加圧手段によって鋳型内に押出す(射出する)ことが必要であるが、半凝固金属をスリーブに挿入した段階で、金属はスリーブに接触して熱を奪われるので凝固層が発生しやすい。そのため、凝固層が製品に含有するのを防ぐ工夫が必要となる。
【0009】
また、半凝固金属の充填中にはスリーブ等にはプランジャーとスリーブ終端との挟まったビスケットと称する加圧部分と金型へのランナー(湯道)等がダイカストと同様必要であり、また、流入速度を制限する(流入速度を遅くしたい)ことから断面積の大きなランナーが必要である。これらの部分は製品とは成らない部分で無駄が多く、歩留りが低く、製造コスト上昇の一因になっている。
【0010】
また、半凝固金属はスリーブや金型との摩擦が溶湯よりも大きいため、プランジャーの押圧力を溶湯よりも大きくする必要があり、溶湯に比べてプランジャーの押圧力を大きな設備が必要となり設備費が高くなる等の問題もあり製造コスト上昇の一因となっている。
【0011】
このような状況に鑑み、成形用の金型の中に、直接、半凝固金属(又は半溶融金属)を挿入して成形する方法が開発されている。
【0012】
例えば、特許文献1には、保持容器にて保持された半凝固金属下型の凹部内に反転して載置し、上金型を下降させ静かに圧縮変形させて基本形状を整え、次いで、最終形状の製品に成形する技術が開示されている。
【0013】
また、特許文献2には、半溶融金属(半凝固金属)をプレスの金型(下型)のキャビティ内に投入し、上金型を下降させて、キャビティ内の金属の温度が凝固終了温度に達する温度まで圧力を加え続けて一次成形し、その後、第2の加圧手段によってキャビティの形状を変化させて製品を二次成形する方法が開示されている。
【0014】
また、特許文献3には、金型内に半溶融金属又は半凝固金属を投入し、金型に第1の加圧(一次型締め)を行い、その後第2の加圧(最終製品とする二次型締め)を行う成形方法が開示されている。
【0015】
また、特許文献4には半凝固金属の投入位置修正を可能とするために半凝固金属を適当な固相率として液相成分を減少させ液相成分のタレ落ちや半凝固金属の崩れを防ぐ方法が開示され、これにより良好な製品が得られるとしている。
【0016】
これら4つの方法は、金型のキャビティ内に半溶融金属(半凝固金属)を投入し、その後加圧成形を行う点では同様の技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したような、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4による成形方法を用いれば、半溶融金属又は半凝固金属を用いて、引け巣がない高品質な製品を低コストで製造することができると考えられる。
【0019】
ところで、このような金型のキャビティ内に半凝固金属を投入した後、加圧により製品を製造する方法では、半凝固金属をプレス加圧により圧縮しながら金型内に充填し、一定圧以上の圧力を与え、成形の品質、精度を高めることがなされる。
【0020】
このため、下金型のキャビティ内に投入可能な寸法の半凝固金属に限定され、圧下に伴う圧縮力に直交する方向に寸法が同じか、拡大する製品に適用が限定されているのが実情である。
【0021】
また、成形に使用される半凝固金属の形状は、特許文献1の
図1、特許文献2の
図2、特許文献4の
図8に示されているように、抜き勾配のある側壁と、側壁とRで連続する平坦な底辺がある形状や、特許文献4の
図2に示されたように、底辺の中央にRで連続しながら抜け勾配のある内壁を持った形状があるが、いずれも軸対称形状(回転対称形状)となっている。
【0022】
他に特許文献3の
図4(a)に示されているように円柱のビレットを切断したものもあるが、これも半凝固金属は軸対称形状のものが使用されている。このように、プレス成形の素材は全てが軸対称形状の半凝固金属が適用されている。
【0023】
これは、半凝固金属材料は強制撹拌して全域に亘って均質化を図る必要があり、澱みなく撹拌可能な軸対称形状とすることが均質で安定した品質の良好な素材の作成に有利であることによる。
【0024】
このように、半凝固金属材料の形状に制限があるため、例えば、製品のプレス圧下方向Zに直交する幅方向(X方向)寸法及び長さ方向(Y方向)寸法が半凝固金属より大きい場合であっても、金型の構成上、重量や容積上は可能でも寸法によっては良好な成形を行うことができなくなるといったおそれがある。
【0025】
本発明は、上述した実情に鑑みなされたもので、軸対象形状の半凝固金属材料を用いて製品を製造するに際し、生産性を高めると共に、均質で機械強度的に優れた高品質な製品を製造することができる半凝固金属材料のプレス成形方法及びプレス成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
このため、本発明に係る半凝固金属材料のプレス成形方法は、
金属材料の溶湯から軸対称形状に製造された半凝固金属材料を、プレス成形製品の形状に対応した凹部を有する下金型の凹部の上に搬入する半凝固金属材料搬入ステップと、
搬入された半凝固金属材料のX、Y、Z方向の寸法のうちのプレス方向に相当するZ方向の寸法変化を上金型に当接させて規制したZ方向規制状態において、半凝固金属材料のX、Y方向の一方の寸法を横パンチによりプレス成形製品と同等の寸法まで圧縮しその位置で横パンチを停止して前記一方の寸法変化を規制するプレス成形第1ステップと、
プレス成形第1ステップによる前記一方の寸法変化が規制された状態において、上金型をプレス方向に移動させ、半凝固金属材料のZ方向寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで圧縮するプレス成形第2ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明において、前記プレス成形第2ステップは、同時に、半凝固金属材料のX、Y方向の他方の寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで成長させることを特徴とすることができる。
【0028】
本発明において、前記プレス成形第1ステップにおけるZ方向規制状態は、
搬入された半凝固金属材料のX、Y、Z方向の寸法のうちのプレス方向に相当するZ方向寸法を上金型により所定寸法まで圧縮しその位置で上金型を停止してZ方向の寸法変化を規制する状態であることを特徴とすることができる。
【0029】
本発明において、前記プレス成形第2ステップの後、
上金型をその位置で停止させた状態で半凝固金属材料に向けて移動するパンチにより加工を行うことを特徴とすることができる。
【0030】
本発明に係る半凝固金属材料のプレス成形装置は、
金属材料の溶湯から製造される軸対称形状の半凝固金属材料をプレス成形する半凝固金属材料のプレス成形装置であって、
前記半凝固金属材料を、プレス成形製品の形状に対応した凹部を有する下金型の凹部の上に搬入し、
搬入された半凝固金属材料のX、Y、Z方向の寸法のうちのプレス方向に相当するZ方向の寸法変化を上金型に当接させて規制したZ方向規制状態において、半凝固金属材料のX、Y方向の一方の寸法を横パンチによりプレス成形製品と同等の寸法まで圧縮しその位置で横パンチを停止して前記一方の寸法変化を規制し、
前記一方の寸法変化が規制された状態において、上金型をプレス方向に移動させ、半凝固金属材料のZ方向寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで圧縮すると共に、半凝固金属材料のX、Y方向の他方の寸法をプレス成形製品と同等の寸法とする
ことを特徴とする。
【0031】
本発明に係る半凝固金属材料のプレス成形装置において、
前記一方の寸法変化が規制された状態において、上金型をプレス方向に移動させ、半凝固金属材料のZ方向寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで圧縮すると共に、半凝固金属材料のX、Y方向の他方の寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで成長させることを特徴とすることができる。
【0032】
本発明に係る半凝固金属材料のプレス成形装置において、前記Z方向規制状態は、
搬入された半凝固金属材料のX、Y、Z方向の寸法のうちのプレス方向に相当するZ方向寸法を上金型により所定寸法まで圧縮しその位置で上金型を停止してZ方向の寸法変化を規制する状態であることを特徴とすることができる。
【0033】
本発明に係る半凝固金属材料のプレス成形装置において、
前記一方の寸法変化が規制された状態において、上金型をプレス方向に移動させ、半凝固金属材料のZ方向寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで圧縮すると共に、半凝固金属材料のX、Y方向の他方の寸法をプレス成形製品と同等の寸法とした後、
上金型をその位置で停止させた状態で半凝固金属材料に向けて移動するパンチにより加工を行うことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、軸対象形状の半凝固金属材料を用いて製品を製造するに際し、生産性を高めると共に、均質で機械強度的に優れた高品質な製品を製造することができる半凝固金属材料のプレス成形方法及びプレスシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施の形態で用いた半凝固金属材料を製造する容器および電磁撹拌装置を示した図である。
【
図2】(A)は同上実施の形態で用いた半凝固金属スラリー(半凝固金属材料)の形状を示した正面図であり、(B)は(A)の右側面図であり、(C)は(A)の左側面図である。
【
図3】(A)は同上実施の形態に係る成形終了後の成形品形状を示す正面図であり、(B)は(A)の右側面図(断面図)であり、(C)は(A)のA−A矢視図である。
【
図4】(A)は同上実施の形態に係る半凝固金属スラリー(半凝固金属材料)を製品の下側の形状が掘り込まれている下金型の上に投入(搬入)した状態を示す平面図であり、(B)は(A)のB−B矢視図であり、(C)は(A)のA−A矢視図である。
【
図5】(A)は上金型(スライド)が下降して半凝固スラリー(半凝固金属材料)を上パンチでわずかに(今回は4mm)潰し、その位置で上金型(スライド)が停止した状態を示した正面図であり、(B)は(A)のA−A矢視図である。
【
図6】(A)はスライド内のアクチュエータに接続してある上金型に設置されたピンが、下金型の縦カムを圧縮−停止を繰り返しながら押すことで、横カムに力を伝達させ、横カムに取り付けたパンチにより半凝固スラリー(半凝固金属材料)をX方向に圧縮し、成形品を所定厚さとした状態を示した正面図であり、(B)は(A)のA−A矢視図である。
【
図7】(A)は横カムによるX方向の成形が終了後、横カムはその位置に留まり、上金型が停止位置より下降し(Z方向への圧縮を再開)、半凝固金属スラリーは下金型に囲まれた範囲の中で圧縮され、長軸Y方向にのみ流動し、上金型(スライド)が下死点に到達した状態を表した図であり、(B)は(A)のA−A矢視図である。
【
図8】(A)は長軸Y方向の両端部のメガネ形状を下金型に設置した円柱状パンチで押し込み、材料を上パンチの穴、及び、両端部の上面側の余肉逃がし用の溝に流動させた状態を示した正面図であり、(B)は(A)のA−A矢視図である。
【
図9】一連の動作にて成形した成形品を室温まで温度低下させた後、余肉、メガネ部開口部、型バリ等をプレス型でトリム、ピアス成形し、所望の製品形状に仕上げた状態を示した図である。
【
図10】(A)は横パンチを押す構造をサーボアクチュエータにした場合の構成例を示す平面図であり、(B)は(A)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の一実施の形態に係る半凝固金属材料のプレス成形方法及びプレス成形システムについて、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0037】
本発明者等は、製品の一方向(X方向)の寸法が製品より大きい半凝固金属材料を製品と同等の寸法に縮める第一工程、更に製品の第二方向(Zの方向)寸法も製品より大きい半凝固金属材料を製品と同等の寸法まで縮める第二工程を含む、サーボプレス機を用いたプレス成形方法を考案した。
以下に、具体的な実施例を用い、その方法を説明する。
【0038】
<半凝固金属材料製造(作成)工程(ステップ)>
直径(開口部側上端部の直径)φ70mm、長さ(高さ)70mmで、抜き勾配3°の容器3を、電磁撹拌装置5に搬入した後、溶解炉(図示せず)から給湯・注湯機(ラドル)4によって汲み上げた溶湯(例えば、アルミニウム合金など)1を、
図1に示すように、給湯・注湯機4を傾け、金属製(例えば非磁性のSUS304等)の容器3にロート5aを介して注ぎ、この容器3が置かれた電磁撹拌装置5によって容器3内の溶湯を電磁撹拌しながら冷却することで、固相率30〜90%の半凝固金属材料(半凝固材料;半凝固スラリー)2を製造(作成、取得)する(この注湯開始時点から電磁撹拌は行われている)。半凝固金属材料としては、例えば、アルミニウム合金などとすることができるが、他の金属或いは合金とすることができる。
かかる工程は、半凝固金属材料製造工程(ステップ)である。
【0039】
なお、かかるステップにて取得される半凝固金属材料2は、
図2に示すように、直径(開口部側上端部の直径)φ70mm、長さ(高さ)70mmで、抜き勾配3°で底部に所定のR(R=10mm)を有する軸対称形状(回転対称形状)を有している。なお、ここでは、成形品の体積からこれらの寸法で、かつ、側壁と底面のつなぎRをR10とし、抜き勾配を3度としたが、成形品体積、スラリーの製造の容易さ等を考慮し、各寸法は決定される。
【0040】
ところで、本実施の形態においては、半凝固金属材料2をプレス成形して得られるプレス成形製品は、
図3に示すような両端が軸等に回転自在に連結される比較的長尺なリンク部品100(例えばコネクティングロッドなど)を一例としている。すなわち、得られる製品(最終的なプレス成形製品)として、X,Z方向寸法が小さく、Y方向寸法が大きい部材を例としている。なお、本実施の形態では、Z方向をプレス方向としてX,Y方向は便宜的に設定したものであり、これらを適宜入れ替えて設定することもできるものである。
【0041】
プレス成形の素材として半凝固金属材料を利用する場合、素材としての半凝固金属材料の組成や組織等が全領域において均質であることが好ましく、このため、電磁撹拌装置5によって均質な半凝固金属材料を得ようとすると、軸対象形状で、直径(開口部側上端部の直径)φ70mm、長さ(高さ)70mm、底部Rなどの形状に制限されるものであり、最終的なプレス成形品(
図3のリンク部品100参照)とは比較的かけ離れた形状の素材とならざるを得ないといった実情がある。
【0042】
本実施の形態では、このような最終的なプレス成形製品とは比較的大きくかけ離れた形状の軸対象形状の素材(半凝固金属材料)を用いて、プレス1行程(スライド1往復)の間に良好にプレス成形して最終的なプレス成形品を得ることができるようにしたものである。なお、プレス1行程(スライド1往復)の間にプレス成形を完了するのは、素材が半凝固金属材料である場合、プレス成形に掛かる時間が長くなると、素材(半凝固金属材料)が冷却されて所定以上に凝固が局所的に進行して、素材(半凝固金属材料)の全領域で均質性が担保できず、製品において組織や組成等に局所的なバラツキが生じ、局所的に機械的強度が不足するなど、均質で安定した品質を確保し難くなるからである。
【0043】
<ステップ1>
図4(A)〜(C)に示すように、直径(開口部側上端部の直径)φ70mm、長さ(高さ)70mmを有し抜き勾配3°で底部に所定のRを有する形状の半凝固金属材料2の長軸Yが、下金型20の長軸Yと一致するように半凝固金属材料2を下金型20のキャビティ21に投入(搬入)する。
かかるステップが、本発明に係る半凝固金属材料搬入ステップに相当している。
【0044】
この際、下金型20の凹部20Aの中心軸と、素材(半凝固金属材料2)の図心Cの位置(
図4(C)参照)が一致するように素材(半凝固金属材料2)を投入(搬入)できるような形状のキャビティ21を下金型20は備えて構成されている。
なお、下金型20には、プレス成形製品(例えば
図3のリンク部品100)の形状に対応した凹部20Aが形成されている。
【0045】
また、上金型7、下金型20を含む金型群はカートリッジヒータ(電熱式ヒータ)等により略300〜400°Cに保温されていると共に、温度がプレス機の機体へ伝達しないように、ダイセットと各金型の間には断熱材が設けられている。
【0046】
なお、金型の温度は150〜500°C程度であれば良い。また、金型の材質はSKD61相当で、金型表面にはBN粉末を塗布し、スラリーと金型の凝着を抑制している。金型の材質は、500〜600°Cでの強度、硬さにより決定されるため、例えば超硬合金等を用いても良いものである。
【0047】
図4(A)〜(C)に示すように、キャビティ21は、半凝固金属材料2を収容可能に、下金型20の一部と、下金型20に配設されているZ方向に移動可能な一対の縦カム22により押されてX方向に移動される一対の横カム23(横カム23の先端に取り付けられた横パンチ23A)と、下金型20の内底面20Bと、により画成された空間として形成されている。
【0048】
すなわち、キャビティ21は、Z方向の上方が開口され、X方向については対面配置される一対の横カム23(横パンチ23A)により画成され、Y方向については下金型20の一部により画成され、Z方向の下方については下金型20の内底面20Bにより画成されている。
【0049】
<ステップ2>
素材(半凝固金属材料2)のキャビティ21への投入(搬入)後、
図5(A)、(B)に示すように、直ちに上金型7(スライド6)が下降し、上パンチ10により半凝固金属材料2をZ方向に圧縮し(当該ステップでは4mm程度圧縮する)、決められた位置にて上金型7(スライド6)を停止する。なお、上金型7には上パンチ10の他、素材(半凝固金属材料2)のZ方向の移動を抑制するためのパッド11も設けられており、このパッド11は上金型7の上パンチ10と素材(半凝固金属材料2)が接触する前に下金型20と接触して、上金型7内、若しくは、スライド6内のクッション12にて一定の力を付与しながら、その位置で保持される機構となっている。
【0050】
本発明に係る「搬入された半凝固金属材料のX、Y、Z方向の寸法のうちのプレス方向に相当するZ方向の寸法変化を上金型に当接させて規制したZ方向規制状態」が、当該ステップ2に相当する。
【0051】
ここでは、上パンチ10(本発明に係る上金型に相当)により半凝固金属材料2をZ方向に圧縮(当該ステップでは4mm程度圧縮)しているが、これに限らず、もっと圧縮する構成とすることもできるし、圧縮せずに、例えば、半凝固金属材料2に上パンチ10(本発明に係る上金型に相当)を当接させて半凝固金属材料2のZ方向の寸法変化を規制するような場合とすることもできる。
【0052】
なお、かかるステップ2は、素材(半凝固金属材料2)は、下金型20、及び、上パンチ10、パッド11により規制されているため、Z方向への流動ができない状態となっている。従って、Z方向に圧縮された分の素材は、X方向或いはY方向へ押し出されることになる。
【0053】
<ステップ3>
その後、
図6(A)、(B)に示すように、上金型7(スライド6)の位置は固定したまま、上金型7内、若しくは、スライド6内に内蔵してあるサーボ駆動のアクチュエータ14(油圧)により可動されるピン13をZ方向に押し下げることで、下金型20内の縦カム22をZ方向に押し下げ、この縦カム22に伝達された力を対面配置されている一対の横カム23(横パンチ23A)に伝達させ、X方向両側から、素材(半凝固金属材料2)を圧縮してX方向に圧縮変形させる。このとき、素材(半凝固金属材料2)は、
図6(B)に示すように、Y方向には膨張(成長)される。なお、素材(半凝固金属材料2)はワレ防止のため、X方向、Y方向にしか流動しないよう、Z方向の流動が拘束されている。
かかるステップが、本発明に係るプレス成形第1ステップに相当する。
【0054】
この際、一対の横カム23(横パンチ23A)は、圧縮−停止(或いは圧縮−戻し)を繰り返しながら進むように制御され、X方向寸法が所定厚さ40mmとなった時点で停止される。なお、横カム23(或いはこれを駆動する縦カム22)の動きは、成形条件によっては、一定速度、又は、微振動(1〜100Hz程度)を与えながら動かす場合もある。
【0055】
<ステップ4>
次に、
図7(A)、(B)に示すように、ステップ3において停止していた上金型7を下降させて、半凝固金属材料2の中心位置でZ方向寸法が24mmになるまで圧縮する。この際、横カム23(横パンチ23A)はX方向に関して移動せず(固定され)、従って、Z方向につぶされた分の材料(半凝固金属材料2)はY方向へと移動する(
図7(B)参照)。
かかるステップが、本発明に係るプレス成形第2ステップに相当する。
【0056】
なお、ここでは、Z方向につぶされた分の材料(半凝固金属材料2)はY方向へと移動させて、半凝固金属材料のY方向の寸法をプレス成形製品と同等の寸法まで成長(膨張)させているが、本発明はこれに限定されるものではなく、Y方向の寸法を同等以上に成長(膨張)させる場合(後加工で余肉を除去する場合など)、或いはY方向の寸法が同等となる手前で止めて後工程で同等の寸法まで成長(膨張)させるような成形ステップを採用する場合にも適用可能である。
【0057】
上金型7(スライド6)は下降−停止(或いは下降−上昇)を繰り返しながら動き、所定位置で停止する。所定位置で停止すると(所定厚に達すると)、素材体積が成形品体積よりわずかに多いため、素材の一部は余肉部Pに流れ込むが、この余肉部Pにて素材(半凝固金属材料2)毎の体積のばらつきを吸収することが可能となっている。
【0058】
下金型20の凹部20A(プレス成形製品(リンク部品100)の形状に対応した凹部)の両端部はプレス成形製品(リンク部品100のリング形状部101、102)の外形に対応するようにメガネ形状部24として掘り込まれ、両端部の上面側には余肉逃がし用の溝(余肉部Pが流れ込む溝)が刻設されている。ただし、余肉逃がし用の溝は、上金型(上パンチ10)側に設けることも可能である。
【0059】
成形終了時には上金型7(スライド6)は下死点で停止するが、スライド6内に設けた力制御用クッション6Aにて、金型(上パンチ10)を通じ成形品(プレス成形された半凝固金属材料2)は加圧されている。なお、上金型7(スライド6)の動作方法は下降−停止(或いは下降−上昇)以外にも、成形条件によっては、一定速度、又は、微振動(1〜100Hz程度)を与えながら動かす場合もある。微振動を与える場合、微振動は上パンチ10を通じ下金型20のキャビティ21全体に加わることで、金型と素材の凝着を起こし難くすることができる。
【0060】
<ステップ5>
続いて、
図8(A)、(B)に示すように、上金型7による成形の終了後もプレス機(スライド6)は下死点にて停留しており、下金型20のメガネ形状部24の中央部に設置されているパンチ30を下金型20内、若しくは、ボルスタ内に設置されたアクチュエータ31(油圧)にてZ方向上方に向けて押し込み、プレス成型品(プレス成形された半凝固金属材料2)であるリンク部品100のリング形状部101、102の中央穴101A,102A(
図3参照)を形成する。この際、中央パンチ部はパンチ30の先端に薄肉を残し、余肉は上パンチ10の穴部10A(余肉Q)や下金型20の上部の余肉部Pに流れ込む。
【0061】
<ステップ6>
ステップ5の成形終了後、スライド6は上昇し上死点に戻り、成形品(リンク部品100)をボルスタ内に設けられているノックアウト機構40(
図8(B)参照)により押し上げて下金型20から取り出す(排出する)。
【0062】
<ステップ7>
取り出した成形品(リンク部品100)のリング形状部101、102(メガネ形状部)の中央穴101A,102A付近の前記薄肉及び余肉Q、余肉部Pなどのオバーフロー、型バリなどを、成形品(リンク部品100)を冷却後、室温にて、例えば、次工程のプレス型でトリム、ピアス加工などして除去する(
図9参照)。
【0063】
以上の成形方法により、
図3に示した成形品100を作成(生産)した。
なお、この製品は強度、伸び等の機械的性質が通常のダイキャストでは満足できないため熱間鍛造にて製作されているが、上記の方法で製作しても、機械的性質は熱間鍛造品と同程度の品質とすることができた。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、最終的なプレス成形品とは比較的大きくかけ離れた形状(X、Y,Z方向がほぼ同じような寸法)の軸対象形状の素材(半凝固金属材料2を用いて、X、Z方向寸法が小さく、Y方向寸法が大きいプレス成形品を得ることができる。
【0065】
本実施の形態では、最終的なプレス成形品とは比較的大きくかけ離れた形状の軸対象形状の素材(半凝固金属材料)を用いて、プレス1行程(スライド1往復)の間に良好にプレス成形して最終的なプレス成形製品を得ることができる。
【0066】
そして、本実施の形態によれば、最終的なプレス成形品とは比較的大きくかけ離れた形状の軸対象形状の素材(半凝固金属材料)であっても、プレス1行程(スライド1往復)の間にプレス成形を完了することができるので、従来のように、予め、別の金型等を用いて軸対象形状の素材(半凝固金属材料)を最終的なプレス成形品の形に近づけるためのプレス成形を行ってから、先程とは別の金型で最終的なプレス成形を行うような場合に比べて、プレス成形時間を短くすることができるので、素材(半凝固金属材料)が冷却されて所定以上に凝固が局所的に進行して素材(半凝固金属材料)の全領域での均質性が担保できず、製品において組織や組成等の局所的なバラツキが生じ、局所的に機械的強度が不足するなど、均質で安定した品質を確保し難くなるといったことを回避することができ、以って均質で機械強度的に優れ高品質のプレス成形製品を得ることができる。
【0067】
すなわち、本実施の形態によれば、軸対象形状の半凝固金属材料を用いて製品を製造するに際し、生産性を高めると共に、均質で機械強度的に優れた高品質な製品を製造することができる半凝固金属材料のプレス成形方法及びプレス成形装置を提供することができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、電磁撹拌装置5を用いて撹拌する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の方法によって溶湯1を撹拌しながら冷却して半凝固金属材料2を作成する場合にも適用可能である。
【0069】
また、本実施の形態では、縦カム22と横カム23を利用して横パンチ23Aを動かすようにした構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図10(A)、(B)に示すように、油圧等を利用したサーボアクチュエータにより横パンチ23Aを押す構造とすることもできる。
【0070】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは勿論である。