特許第5936665号(P5936665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936665転圧ローラおよび転圧ローラにおけるタイヤの取り外し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936665
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】転圧ローラおよび転圧ローラにおけるタイヤの取り外し方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/28 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   E01C19/28
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-231225(P2014-231225)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-94748(P2016-94748A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000182384
【氏名又は名称】酒井重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 定芳
(72)【発明者】
【氏名】根子 宏明
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−023766(JP,A)
【文献】 特開2002−309510(JP,A)
【文献】 特開平11−61726(JP,A)
【文献】 特開2005−336880(JP,A)
【文献】 特開2000−290919(JP,A)
【文献】 特開平9−221710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/22−19/40
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪または後輪の少なくとも一方が、車幅方向に同軸に並設された少なくとも3つのタイヤより構成された振動タイヤローラを有する転圧ローラにおいて、
前記振動タイヤローラは、
起振軸を内蔵し中間タイヤと一体回転可能に設けられた起振機ケースと、
前記起振機ケースを両側から回転可能に軸支し、それぞれ車体フレームに防振部材を介して取り付けられて中間タイヤと左右の外側タイヤとの間に位置する一対のブラケットと、
前記ブラケットの内の一方に、当該一方のブラケットと中間タイヤとの間に位置するように取り付けられ前記起振軸を回転させる振動用モータと、
前記各ブラケットにそれぞれ固定部が中間タイヤ寄りに位置し出力部が外側タイヤ寄りに位置する向きで取り付けられ、前記出力部が外側タイヤに接続される一対の走行用モータと、
を備えることを特徴とする転圧ローラ。
【請求項2】
軸受と、前記軸受の内輪に内嵌される内筒部材と、前記軸受の外輪に外嵌される外筒部材とを備えて構成され、前記一対のブラケットにそれぞれ第1ボルトにより着脱自在に取り付けられる一対の軸受ユニットを備え、
前記起振機ケースの両端が前記一対の軸受ユニットの各内筒部材に第2ボルトにより着脱自在に取り付けられ、
前記中間タイヤが前記起振機ケースに第3ボルトにより着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ。
【請求項3】
前記一対のブラケットの前端同士および後端同士を連結する前後一対の連結部材を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転圧ローラ。
【請求項4】
前記一対のブラケットの前端同士および後端同士を前記防振部材を介して連結する前後一対の連結支持部材を備え、
前記一対の連結支持部材にステアリングヨークが掛け渡されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転圧ローラ。
【請求項5】
前記一対の連結支持部材と前記ステアリングヨークとが、タイヤが被転圧面の凹凸に合わせて揺動可能とするように、軸受を介して接続されていることを特徴とする請求項4に記載の転圧ローラ。
【請求項6】
前輪または後輪の少なくとも一方が、車幅方向に同軸に並設された少なくとも3つのタイヤより構成された振動タイヤローラを有し、
前記振動タイヤローラは、
起振軸を内蔵し中間タイヤと一体回転可能に設けられた起振機ケースと、
それぞれ車体フレームに防振部材を介して取り付けられて中間タイヤと左右の外側タイヤとの間に位置する一対のブラケットと、
軸受と、前記軸受の内輪に内嵌される内筒部材と、前記軸受の外輪に外嵌される外筒部材とを備えて構成され、前記一対のブラケットにそれぞれ第1ボルトにより着脱自在に取り付けられて前記起振機ケースを両側から回転可能に軸支する一対の軸受ユニットと、
前記ブラケットの内の一方に取り付けられ前記起振軸を回転させる振動用モータと、
前記各ブラケットにそれぞれ固定部が中間タイヤ寄りに位置し出力部が外側タイヤ寄りに位置する向きで取り付けられ、前記出力部が外側タイヤに接続される一対の走行用モータと、
を備え、
前記起振機ケースの両端が前記一対の軸受ユニットの各内筒部材に第2ボルトにより着脱自在に取り付けられ、前記中間タイヤが前記起振機ケースに第3ボルトにより着脱自在に取り付けられている転圧ローラにおいて、前記中間タイヤを取り外す方法であって、
(1)前記一対のブラケットの内の一方のブラケットを前記車体フレームから切り離すとともに前記第1ボルトを外すことにより、前記一方のブラケットを前記一対の軸受ユニットの内の一方の軸受ユニットから取り外す工程、
(2)前記第2ボルトを外すことにより、前記一方の軸受ユニットをその軸受と内筒部材と外筒部材とが組み付けられた状態のままで、前記起振機ケースの一端から取り外す工程、
(3)前記第3ボルトを外すことにより、他方のブラケットに取り付けられた状態にある前記起振機ケースの一端側から前記中間タイヤを取り外す工程、
をその順序で行うことを特徴とする転圧ローラにおけるタイヤの取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動タイヤローラを備えた自走型の転圧ローラおよび転圧ローラにおけるタイヤの取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転圧ローラの一つとして、前輪、後輪の少なくとも一方が振動タイヤローラから構成された自走搭乗型の転圧ローラがあり、その従来例として特許文献1,2に記載のものが挙げられる。ここで「振動タイヤローラ」とは、タイヤと、当該タイヤを振動させる振動機構等とを備えるタイヤ周りのアッセンブリを指すものとする。特許文献1に記載の振動タイヤローラは、走行に関して車体左寄りのタイヤと車体右寄りのタイヤ間で差動できる構造ではないため、カーブでの転圧作業で被転圧面を荒らすおそれがある。また、最外側に位置するタイヤの外側面から車体側部に位置するタイヤ支持部材までの寸法、いわゆるサイドオーバーハングが大きいため、構造物の際周辺の転圧ができないという問題がある。
【0003】
一方、特許文献2には、タイヤ支持部材を振動タイヤローラの隣接するタイヤ間に配設し、このタイヤ支持部材にタイヤ駆動用の走行用モータを取り付ける技術が記載されている。特許文献2の技術によれば、左右のタイヤを差動できるとともに、タイヤ支持部材をタイヤ間に配設したことにより、タイヤ支持部材を最外側のタイヤよりも外方に設ける必要がなくなるため、サイドオーバーハングを小さくすることができる。したがって、その分、最外側のタイヤを構造物の際に寄せて転圧できるというメリットが奏される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−31912号公報
【特許文献2】特開2003−184022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の技術は、振動タイヤローラの起振軸を駆動するための振動用モータが最外側タイヤのディスクホイールよりも外方に位置した構造である。この構造では、振動用モータを駆動した際の回転反力を受けるべく振動用モータを支持するためのブラケットを車体側部から垂下するように設けなければならない。当該ブラケットはタイヤを支持する機能は有さないため、タイヤ支持部材のようにさほど大きな形状を要しない。しかし、最外側タイヤの外方に常に存在する部材となることから、例えばメンテナンス等のためにタイヤ交換をする場合にはこのブラケットを車体から一端外さなければならないという手間を要する。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、振動タイヤローラの最外側のタイヤの外方にモータ類支持用のブラケットを配することなく、簡単に最外側のタイヤを着脱できる転圧ローラおよび中間タイヤを簡単に取り外すことができる転圧ローラにおけるタイヤの取り外し方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、前輪または後輪の少なくとも一方が、車幅方向に同軸に並設された少なくとも3つのタイヤより構成された振動タイヤローラを有する転圧ローラにおいて、前記振動タイヤローラは、起振軸を内蔵し中間タイヤと一体回転可能に設けられた起振機ケースと、前記起振機ケースを両側から回転可能に軸支し、それぞれ車体フレームに防振部材を介して取り付けられて中間タイヤと左右の外側タイヤとの間に位置する一対のブラケットと、前記ブラケットの内の一方に、当該一方のブラケットと中間タイヤとの間に位置するように取り付けられ前記起振軸を回転させる振動用モータと、前記各ブラケットにそれぞれ固定部が中間タイヤ寄りに位置し出力部が外側タイヤ寄りに位置する向きで取り付けられ、前記出力部が外側タイヤに接続される一対の走行用モータと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、振動タイヤローラの一方の外側タイヤと他方の外側タイヤとがそれぞれの走行用モータにより独立して駆動されるので、差動回転が可能となり、車体の旋回走行施工時での路面のひきずりを低減できる。
また、振動タイヤローラの走行用モータおよび振動用モータを取り付けるブラケットが中間タイヤと外側タイヤとの間に位置する構造のため、外側タイヤの外方には何ら各モータを支持するためのブラケットを配置する必要がない。したがって、サイドオーバーハングが無くなり、外側タイヤを構造物の際ぎりぎりまで寄せて転圧できる。
また、走行用モータがブラケットに対して固定部が中間タイヤ寄りに位置し出力部が外側タイヤ寄りに位置する向きで取り付けられ、出力部が外側タイヤに接続される構成であるため、簡単なボルトの取り付け・取り外し作業で外側タイヤを着脱できる。
【0009】
また、本発明は、軸受と、前記軸受の内輪に内嵌される内筒部材と、前記軸受の外輪に外嵌される外筒部材とを備えて構成され、前記一対のブラケットにそれぞれ第1ボルトにより着脱自在に取り付けられる一対の軸受ユニットを備え、前記起振機ケースの両端が前記一対の軸受ユニットの各内筒部材に第2ボルトにより着脱自在に取り付けられ、前記中間タイヤが前記起振機ケースに第3ボルトにより着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1ボルト〜第3ボルトの着脱により中間タイヤの取り外しおよび取り付けを容易に行うことができ、中間タイヤのメンテナンス性に優れた振動タイヤローラを有する転圧車両となる。
【0011】
また、本発明は、前記一対のブラケットの前端同士および後端同士を連結する前後一対の連結部材を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、一対のブラケット間に掛け渡した連結部材によって、起振機ケースとその両側を回転自在に支持する部材(軸受ユニット)との間での相対的ながたつきおよび振動を防止して、それらの全体的な剛性を高めて、中間タイヤと左右の外側タイヤとの間の振動のばらつきを抑制できる。
【0013】
また、本発明は、前記一対のブラケットの前端同士および後端同士を前記防振部材を介して連結する前後一対の連結支持部材を備え、前記一対の連結支持部材にステアリングヨークが掛け渡されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ステアリングヨーク式の自走式振動タイヤローラを有する転圧ローラを容易に実現できる。
【0015】
また、本発明は、前記一対の連結支持部材と前記ステアリングヨークとが、タイヤが被転圧面の凹凸に合わせて揺動可能とするように、軸受を介して接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、被転圧面に凹凸に合わせて振動タイヤローラが揺動するため、各タイヤより均一な静圧力および動圧力を被転圧面に加えることができ、振動タイヤローラの締固めによる強力な効果を均一に被転圧面に及ぼすことができる。
【0017】
また、本発明は、前輪または後輪の少なくとも一方が、車幅方向に同軸に並設された少なくとも3つのタイヤより構成された振動タイヤローラを有し、前記振動タイヤローラは、起振軸を内蔵し中間タイヤと一体回転可能に設けられた起振機ケースと、それぞれ車体フレームに防振部材を介して取り付けられて中間タイヤと左右の外側タイヤとの間に位置する一対のブラケットと、軸受と、前記軸受の内輪に内嵌される内筒部材と、前記軸受の外輪に外嵌される外筒部材とを備えて構成され、前記一対のブラケットにそれぞれ第1ボルトにより着脱自在に取り付けられて前記起振機ケースを両側から回転可能に軸支する一対の軸受ユニットと、前記ブラケットの内の一方に取り付けられ前記起振軸を回転させる振動用モータと、前記各ブラケットにそれぞれ固定部が中間タイヤ寄りに位置し出力部が外側タイヤ寄りに位置する向きで取り付けられ、前記出力部が外側タイヤに接続される一対の走行用モータと、を備え、前記起振機ケースの両端が前記一対の軸受ユニットの各内筒部材に第2ボルトにより着脱自在に取り付けられ、前記中間タイヤが前記起振機ケースに第3ボルトにより着脱自在に取り付けられている転圧ローラにおいて、前記中間タイヤを取り外す方法であって、(1)前記一対のブラケットの内の一方のブラケットを前記車体フレームから切り離すとともに前記第1ボルトを外すことにより、前記一方のブラケットを前記一対の軸受ユニットの内の一方の軸受ユニットから取り外す工程、(2)前記第2ボルトを外すことにより、前記一方の軸受ユニットをその軸受と内筒部材と外筒部材とが組み付けられた状態のままで、前記起振機ケースの一端から取り外す工程、(3)前記第3ボルトを外すことにより、他方のブラケットに取り付けられた状態にある前記起振機ケースの一端側から前記中間タイヤを取り外す工程、をその順序で行うことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、中間タイヤの取り外しを、起振機ケース等の振動機構の分解や軸受ユニットの分解を要することなく簡単に行えるので、中間タイヤのメンテナンス性に優れた取り外し方法となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、振動タイヤローラの最外側のタイヤの外方にモータ類支持用のブラケットを配することなく、最外側タイヤの着脱作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】振動タイヤローラを備えたアーティキュレート式の転圧ローラの側面図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるタイヤ周りの平断面図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるタイヤ周りの側面図である。
図4】本発明の第2実施形態におけるタイヤ周りの平断面図である。
図5】振動タイヤローラを備えたステアリングヨーク式の転圧ローラの側面図(運転席等は省略)である。
図6】本発明の第3実施形態におけるタイヤ周りの平断面図である。
図7】本発明の第3実施形態におけるタイヤ周りの側面図である。
図8】走行用モータに関する概略油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の3つの実施形態について説明する。なお、本明細書において「振動タイヤローラ」とは、タイヤと、当該タイヤを振動させる振動機構等とを備えるタイヤ周りのアセンブリを指すものであり、車両全体については「転圧ローラ」というものとする。
【0022】
「第1実施形態」
図1において、転圧ローラRは、前部車体1と後部車体2とが連結部3によりアーティキュレート式に接続されており、運転席の操舵ハンドルの操作でシリンダ(図示せず)が伸縮することにより、前部車体1が後部車体2に対しセンターピン4を中心に旋回するようになっている。前部車体1は前輪側の振動タイヤローラとして車幅方向に同軸に並設された複数(本実施形態では3本)のタイヤTを備え、後部車体2は後輪側の振動タイヤローラとして車幅方向に同軸に並設された複数(本実施形態では4本)のタイヤTを備えている。前輪および後輪の各タイヤTは車幅方向に等間隔、又はそれに近い状態で配されている。本実施形態および後記する第2、第3実施形態はいずれも本発明を前輪側の振動タイヤローラに適用した形態であるが、転圧ローラの仕様によっては後輪側の振動タイヤローラにも適用可能である。以下、前輪の3本のタイヤTについて、一方の外側に位置するタイヤを第1外側タイヤT1、真中に位置するタイヤを中間タイヤT2、他方の外側に位置するタイヤを第2外側タイヤT3というものとする。
【0023】
また、以下の説明で各ボルトの挿入方向に関し、車幅方向外方から中間タイヤT2のタイヤ幅中心側に向けて挿入する場合を「内向き」と表現し、その逆方向を「外向き」と表現する。また、各部材の側面に関し、中間タイヤT2のタイヤ幅中心側に対向する側面を「内側面」と表現し、その反対の側面を「外側面」と表現する。
【0024】
転圧ローラRの振動タイヤローラは、図2に示すように、起振軸5を内蔵し中間タイヤT2と一体回転可能に設けられた起振機ケース6と、起振機ケース6を両側から回転可能に軸支し、それぞれ車体フレーム7A,7Bに防振部材8を介して取り付けられて中間タイヤT2と第1外側タイヤT1、第2外側タイヤT3との間に位置する一対のブラケット9,10と、ブラケット9,10の内の一方のブラケット10に取り付けられ起振軸5を回転させる振動用モータ11と、各ブラケット9,10にそれぞれ固定部12が中間タイヤT2寄りに位置し出力部13が外側タイヤ(第1外側タイヤT1または第2外側タイヤT3)寄りに位置する向きで取り付けられ、出力部13が外側タイヤ(第1外側タイヤT1または第2外側タイヤT3)に接続される一対の走行用モータ14,15と、を備えて構成されている。
【0025】
前部車体1には、鉛直板状の車体フレーム7A,7A,7B,7Bが車両前後方向に沿うように垂下固定されている。車体フレーム7A,7Aはそれぞれ第1外側タイヤT1、第2外側タイヤT3の前方に位置し、車体フレーム7B,7Bはそれぞれ第1外側タイヤT1、第2外側タイヤT3の後方に位置する。ブラケット9とブラケット9側の車体フレーム7A,7Bとの間、ブラケット10とブラケット10側の車体フレーム7A,7Bとの間には、防振部材8が各々、上下に取り付けられている。防振部材8は、略円柱状を呈したゴム部材よりなる中間部と、中間部の両側に接着された取付部とにより構成されている。
【0026】
ブラケット9は、第1外側タイヤT1と中間タイヤT2との間に位置し、車両前後方向に沿う鉛直で図3に示すように横長矩形状の板部材である。ブラケット9の前後端には前記した防振部材8がボルトにより取り付けられている。ブラケット10は、ブラケット9と左右対称の配置構造で防振部材8を介して車体フレーム7A,7Bと接続されることで、第2外側タイヤT3と中間タイヤT2との間に位置する。防振部材8よりも前部車体1側の転圧ローラRの質量が「ばね上質量」であり、防振部材8よりもタイヤ側の転圧ローラRの質量が「ばね下質量」となる。
【0027】
ブラケット9の車両前後方向中央部の外側面には、円筒形状の走行用モータ取付部19がタイヤ軸と同軸となるように溶接等により固設されている。走行用モータ取付部19の先端には環状のフランジ部20が径内方向に突設されている。走行用モータ14は、その固定部12の取付フランジがフランジ部20の外側面にあてがわれたうえで、外向きに挿入されるボルト21により締結固定される。なお、ブラケット9には、固定部12との干渉を避けるためおよびボルト21を挿入するための貫通孔22が形成されている。
【0028】
出力部13は、固定部12に対して境部23を境として回転する。出力部13は、その取付フランジがアダプタ25にあてがわれて外向きに挿入されるボルト26により締結固定される。第1外側タイヤT1のディスクホイールDW1は、そのタイヤ幅中心よりも車幅方向外側に位置しており、ディスクホイールDW1のディスク部の内側面には内向きに挿入されるボルト24によりアダプタ25が締結固定されている。以上により、第1外側タイヤT1は走行用モータ14によって駆動する駆動輪となる。ブラケット10に対する走行用モータ15の取付構造は、以上に説明したブラケット9に対する走行用モータ14の取付構造と左右対称であり、これにより第2外側タイヤT3は走行用モータ15によって駆動する駆動輪となる。走行用モータ14,15は油圧モータ等であり、本実施形態ではラジアルピストンモータである。
【0029】
起振機ケース6は、タイヤ軸と同軸状に配され両端が開口形成された円筒状の筒胴部6Aと、筒胴部6Aの第1外側タイヤT1寄りの開口部を塞ぐように接続固定され、中心にはベアリング29が嵌入する孔が形成された円盤状の第1蓋部6Bと、筒胴部6Aの第2外側タイヤT3寄りの開口部に取り付けられるフランジ部6Cと、フランジ部6Cに取り付けられて筒胴部6Aの第2外側タイヤT3寄りの開口部を塞ぐように取り付けられ、中心にはベアリング30が嵌入する孔が形成された円盤状の第2蓋部6Dと、を備えて構成されている。筒胴部6Aと第1蓋部6Bとフランジ部6Cとはそれぞれ互いに溶接により一体に固設されている。第2蓋部6Dは、内向きに挿入されるボルト27によりフランジ部6Cに締結固定される。
【0030】
中間タイヤT2のディスクホイールDW2は、そのタイヤ幅中心よりも第1外側タイヤT1寄りに位置している。このディスクホイールDW2のディスク部の内側面に、前記第1蓋部6Bが内向きに挿入されるボルト28により締結固定されている。これにより、起振機ケース6は中間タイヤT2の内部空間に収まるように配置されて中間タイヤT2と一体回転する。
【0031】
起振軸5は、起振機ケース6の内部にタイヤ軸と同軸状に配されており、一端がベアリング29を介して第1蓋部6Bに支承され、他端がベアリング30を介して第2蓋部6Dに支承されている。起振軸5は振動用モータ11の双方向の回転により、仮に一方向の回転方向を正転とすると、正転または逆転するように構成されている。
【0032】
起振軸5には偏心錘31が取り付けられている。偏心錘31は、例えば可変振幅可能な偏心錘である。起振軸5には一対の固定偏心錘31Aが固設されるとともに、この一対の固定偏心錘31A間において可動偏心錘31Bが起振軸5に対して回転可能に軸装されている。固定偏心錘31A,31A間には可動偏心錘31Bに当接して可動偏心錘31Bの回転を規制するストッパ31Cが固設されている。起振軸5が正方向に回転するとストッパ31Cが可動偏心錘31Bの一方の端部側を押圧しながら回転し、この状態では固定偏心錘31Aと可動偏心錘31Bの偏位の方向が一致して振動力が合成されるように作用するので大きな振動力となる。また偏心モーメントも大きくなるので高い振幅の振動となる。起振軸5が逆方向に回転するとストッパ31Cが可動偏心錘31Bの他方の端部側を押圧しながら回転し、この状態では固定偏心錘31Aと可動偏心錘31Bの偏位の方向が逆となり、振動力が互いに打ち消されるように作用するので小さな振動力となり、低い振幅の振動となる
【0033】
起振機ケース6は既述したように両側のブラケット9,10により回転可能に軸支される構成であり、本実施形態では起振機ケース6が軸受ユニット32,33を介してブラケット9,10に軸支されている。軸受ユニット32は、一対の軸受34,34と、一対の軸受34,34の各内輪に内嵌される内筒部材35と、一対の軸受34,34の各外輪に外嵌される外筒部材36と、軸受34の中間タイヤT2寄りの側部を塞ぐ内側板部材37と、軸受34の第1外側タイヤT1寄りの側部を塞ぐ外側板部材38と、を備えて構成されている。
【0034】
内筒部材35は、中間タイヤT2に対向する端部が径内方向に突設されたフランジ部として形成されており、このフランジ部が第1蓋部6Bの外側面にあてがわれて、内向きに挿入されるボルト39により締結固定されている。また、内筒部材35のフランジ部には、起振軸5の一端およびベアリング29を覆うためのエンドカバー40が内向きに挿入されるボルト41により締結固定されている。
【0035】
外側板部材38は、内筒部材35の第1外側タイヤT1に対向する端部にあてがわれ、内向きに挿入されるボルト42により締結固定されている。外側板部材38の外周面はOリングが介設されたうえで外筒部材36の内周面に摺接する。内側板部材37は、外筒部材36の中間タイヤT2に対向する端部にあてがわれ、外向きに挿入されるボルト43により締結固定されている。内側板部材37の内周面はOリングが介設されたうえで内筒部材35の外周面に摺接する。円板状のプレート44は、外筒部材36の第1外側タイヤT1に対向する端部にあてがわれて、内向きに挿入されるボルト45により締結固定されている。ボルト45のボルト頭はプレート44に穿設された座ぐり穴に収まる。プレート44はブラケット9の内側面にあてがわれて内向きに挿入されるボルト46により締結固定される。
【0036】
軸受ユニット33は、概ね軸受ユニット32と左右対称の構造であり、一対の軸受34,34と、一対の軸受34,34の各内輪に内嵌される内筒部材35´と、一対の軸受34,34の各外輪に外嵌される外筒部材36と、軸受34の中間タイヤT2寄りの側部を塞ぐ内側板部材37と、軸受34の第2外側タイヤT3寄りの側部を塞ぐ外側板部材38´と、を備えて構成されている。内筒部材35´の中間タイヤT2に対向する端部は、第2蓋部6Dの外側面にあてがわれて、外向きに挿入されるボルト47により締結固定される。
【0037】
外筒部材36の第2外側タイヤT3に対向する端部には円板状のプレート48があてがわれて内向きに挿入されるボルト45により締結固定されている。プレート48はブラケット10の内側面にあてがわれて内向きに挿入されるボルト46により締結固定される。プレート44と異なり、プレート48の内側面には、円筒形状の振動用モータ取付部49がタイヤ軸と同軸となるように溶接等により固設されている。振動用モータ取付部49は軸受ユニット33の内筒部材35´の内部に収まる。軸受ユニット32側の外側板部材38が孔無しの円板状部材であるのに対し、軸受ユニット33側の外側板部材38´は振動用モータ取付部49を挿通させるための孔が穿設されたリング状部材となっている。
【0038】
起振機ケース6の第2蓋部6DはOリングが介設されたうえで、振動用モータ取付部49の先端外周面に摺接するように構成されている。振動用モータ取付部49の先端には環状のフランジ部50が径内方向に突設されている。振動用モータ11は、その取付フランジがフランジ部50の外側面にあてがわれたうえで、内向きに挿入されるボルト51により締結固定される。そして、振動用モータ11の出力軸11Aが起振軸5の他端とスプライン結合により一体回転可能に連結されている。振動用モータ11は、例えば油圧モータである。なお、プレート48には、振動用モータ11との干渉を避けるためおよびボルト51を挿入するための貫通孔52が形成されている。
【0039】
以上のように起振機ケース6は軸受ユニット32,33を介してブラケット9,10に回転自在に軸支され、中間タイヤT2は従動輪として起振機ケース6と一体回転する。
【0040】
第1外側タイヤT1と第2外側タイヤT3とを互いに独立に回転可能とする、つまり差動させるための走行用モータ14,15に関する概略油圧回路を図8に示す。後輪側においても差動可能に構成されており、右側2つのタイヤTと左側2つのタイヤTとがそれぞれ走行用モータ53,54により独立して回転するようになっている。この後輪側における一対の走行用モータ53,54および前輪側における一対の走行用モータ14,15は、車体に搭載されたエンジンEに連結された油圧ポンプPに対して並列に接続されている。油圧ポンプPは閉回路における圧油の流れ方向を切り換える機能を有したポンプからなり、圧油の流れをU1方向或いはU2方向に切り換えることで各走行用モータ14,15,53,54の回転方向を変えて転圧ローラRを前進或いは後進させる。
【0041】
油圧ポンプPの一方のポートPaに接続する流路111には、分岐部112を介して走行用モータ53のポートP1と、走行用モータ54のポートP3と、さらに分岐部113を介して走行用モータ14のポートP5および走行用モータ15のポートP7と、が接続している。油圧ポンプPの他方のポートPbに接続する流路114には、分岐部115を介して走行用モータ53のポートP2と、走行用モータ54のポートP4と、さらに分岐部116を介して走行用モータ14のポートP6および走行用モータ15のポートP8と、が接続している。
【0042】
以上のように、前輪側における左右一対の走行用モータ14,15および後輪側における左右一対の走行用モータ53,54が油圧ポンプPに対して並列に接続されているので、たとえば転圧ローラRの操舵に伴って前輪の第1外側タイヤT1と第2外側タイヤT3との間で、または後輪の右側2つのタイヤTと左側2つのタイヤTとの間で回転差が生じても、その回転差に見合った圧油量が各走行用モータ14,15,53,54に供給され、各タイヤが差動して回転する。
【0043】
「作用」
左右の走行用モータ14,15が駆動すると、各出力部13に連結された第1外側タイヤT1、第2外側タイヤT3が駆動輪として走行回転する。中間タイヤT2は、起振機ケース6が軸受ユニット32,33を介してブラケット9,10に回転自在に軸支されていることで従動輪として走行回転する。ブラケット9,10は、ばね上質量側からの荷重をタイヤ側に伝達する機能を担う。
【0044】
また、振動用モータ11が駆動すると、その出力軸11Aに連結した起振軸5が正方向または逆方向に回転し、偏心錘31の偏心作用により起振軸5に振動力が発生する。その振動力はベアリング29,30,起振機ケース6を通して中間タイヤT2に伝達され、さらに軸受ユニット32、ブラケット9、走行用モータ14を通して第1外側タイヤT1に伝達されるとともに、軸受ユニット33、ブラケット10、走行用モータ15を通して第2外側タイヤT3に伝達される。これにより、防振部材8よりもばね下質量側において全タイヤが振動する。
【0045】
「タイヤの組み付け・取り外し手順」
各タイヤの組み付け・取り外し手順の一例を説明する。ブラケット9,10は防振部材8を介して車体フレーム7A,7Bに既に取り付けられているものとする。
【0046】
《中間タイヤT2周りの組み付け》
(1)軸受ユニット33側において、軸受34,34に内筒部材35と外筒部材36とを嵌合させて、軸受34,34に予圧がかかるようにして、内筒部材35と外側板部材38とをボルト42で締結固定するとともに、外筒部材36と内側板部材37とをボルト43で締結固定することで軸受ユニット33を組み付ける。軸受ユニット32側においては、軸受34,34に内筒部材35と外筒部材36とを嵌合させて、外筒部材36と内側板部材37とをボルト43で締結固定するのみとし、内筒部材35に対し外側板部材38は未だ締結しないでおく。
【0047】
(2)組み付けた軸受ユニット33と起振機ケース6の第2蓋部6Dとをボルト47で締結固定する。なお、ボルト27は予め第2蓋部6Dに通した状態としておく。
(3)起振機ケース6の第1蓋部6Bに取り付けられたベアリング29に起振軸5の一端を嵌合させる。次いで、起振機ケース6のフランジ部6Cと第2蓋部6Dとをボルト27で締結固定する。次に、ベアリング30を、起振軸5の他端に嵌め込みながら第2蓋部6Dに取り付ける。
【0048】
(4)振動用モータ11がボルト51で振動用モータ取付部49のフランジ部50に締結固定された状態のプレート48を、軸受ユニット33の外筒部材36にボルト45で締結固定する。このとき、振動用モータ11の出力軸11Aは起振軸5の他端にスプライン結合する。
(5)起振機ケース6の第1蓋部6Bに中間タイヤT2をボルト28で締結固定する。
【0049】
(6)起振機ケース6の第1蓋部6Bと(1)で組み付けた軸受ユニット32の内筒部材35とをボルト39で締結固定する。
(7)エンドカバー40を第1蓋部6Bにボルト41で締結固定する。
(8)外側板部材38を軸受ユニット32の内筒部材35にボルト42で締結固定する。
(9)プレート44を軸受ユニット32の外筒部材36にボルト45で締結固定する。
【0050】
以上により、ブラケット9,10に取り付ける前段階で、中間タイヤT2と、起振機ケース6と、起振軸5と、振動用モータ11と、起振機ケース6の両側を支障する一対の軸受(軸受ユニット32,33の各軸受34)とが全て組み付けられてなる中間タイヤアセンブリTAの組み付けが完了する。そして、ブラケット9,10の各走行用モータ取付部19のフランジ部20にそれぞれ走行用モータ14,15をボルト21で締結固定した後に、中間タイヤアセンブリTAのプレート44,48をそれぞれボルト46でブラケット9,10に締結することで、ブラケット9,10に対する中間タイヤT2の取付が完了する。
【0051】
《中間タイヤT2の取り外し》
次に、メンテナンスや交換等を目的として中間タイヤT2を取り外す手順の一例を説明する。
(1)ボルト24を外して第1外側タイヤT1をアダプタ25から取り外す。
(2)右側の車体フレーム7A,7Bから防振部材8を切り離したうえで、つまりブラケット9を車体フレーム7A,7Bから切り離した状態にしたうえで、ボルト46を外すことによりブラケット9を取り外す。なお、取り外したブラケット9には走行用モータ14が取り付いたままの状態である。
【0052】
(3)ボルト45を外してプレート44を軸受ユニット32の外筒部材36から取り外す。次いで、ボルト42を外して外側板部材38を軸受ユニット32の内筒部材35から取り外す。次いで、ボルト41を外してエンドカバー40を軸受ユニット32の内筒部材35から取り外す。
(4)ボルト39を外して軸受ユニット32を起振機ケース6の第1蓋部6Bから取り外す。取り外した軸受ユニット32は、軸受34と内筒部材35と外筒部材36とが分解されることなく組み付けられた状態のままである。
(5)ボルト28を外して中間タイヤT2を右方向に移動させて起振機ケース6から取り外す。起振機ケース6は軸受ユニット33を介してブラケット10側に取り付けられたままの状態であり、中間タイヤT2を取り外すに当たり、振動機構等の分解や軸受ユニット33の取り外しは一切要しない。中間タイヤT2の取り付けは、以上とは逆の手順にて行えばよい。
【0053】
上記の中間タイヤT2の具体的な取り外し手順から判るように、本発明に係る中間タイヤT2の取り外し方法は、
(1)一対のブラケット9,10の内の一方のブラケット9を車体フレーム7A,7Bから切り離すとともに第1ボルト(ボルト46に相当)を外すことにより、ブラケット9を一対の軸受ユニット32,33の内の一方の軸受ユニット32から取り外す工程、
(2)第2ボルト(ボルト39に相当)を外すことにより、軸受ユニット32をその軸受34と内筒部材35と外筒部材36とが組み付けられた状態のままで、起振機ケース6の一端から取り外す工程、
(3)第3ボルト(ボルト28に相当)を外すことにより、他方のブラケット10に取り付けられた状態にある起振機ケース6の一端側から中間タイヤT2を取り外す工程、
をその順序で行う。
この取り外し方法によれば、中間タイヤT2の取り外しまたはその逆工程である中間タイヤT2の取り付けを、起振機ケース6等の振動機構の分解や軸受ユニット32,33の分解を要することなく簡単に行えるので、中間タイヤT2のメンテナンス性に優れた取り外し方法となる。
【0054】
《第1外側タイヤT1および第2外側タイヤT3の組み付け・取り外し》
ブラケット9,10にはそれぞれ走行用モータ14,15をボルト21で締結固定し、各出力部13にはボルト26でアダプタ25を締結固定した状態としておく。そして、第1外側タイヤT1および第2外側タイヤT3を各アダプタ25に対しボルト24の締結作業を行うのみで、ブラケット9,10に対する第1外側タイヤT1および第2外側タイヤT3の組み付けがなされる。第1外側タイヤT1および第2外側タイヤT3を取り外す際はボルト26を外すだけでよい。
【0055】
以上のように、本発明によれば、一方の第1外側タイヤT1と他方の第2外側タイヤT3とがそれぞれ走行用モータ14,15により独立して駆動されるので、差動回転が可能となり、車体の旋回走行施工時での路面のひきずりを低減できる。
また、走行用モータ14を取り付けるブラケット9が中間タイヤT2と第1外側タイヤT1との間に位置し、走行用モータ15および振動用モータ11を取り付けるブラケット10が中間タイヤT2と第2外側タイヤT3との間に位置する構造であるので、第1外側タイヤT1および第2外側タイヤT3の各外方には何ら各モータを支持するためのブラケットを配置する必要がない。したがって、サイドオーバーハングが無くなり、第1外側タイヤT1や第2外側タイヤT3を構造物の際ぎりぎりまで寄せて転圧できる。
【0056】
また、縁石とか壁の際の転圧を行う際には、路面の隅々まで転圧できるように、運転者は、その際ぎりぎりをねらって作業を行いがちであり、場合によってはタイヤ側面を壁等に押し付けながらその作業を行う。したがって、最外側に位置するタイヤの側面が傷みやすくなり、このタイヤの交換頻度が特に多い傾向となる。本発明では、第1外側タイヤT1や第2外側タイヤT3の取付けおよび取外しを妨げるブラケット類やモータ類等がなくなり、かつ、走行用モータ14,15がブラケット9,10に対してそれぞれ固定部12が中間タイヤT2寄りに位置し出力部13が第1外側タイヤT1,第2外側タイヤT3寄りに位置する向きで取り付けられ、各出力部13が第1外側タイヤT1,第2外側タイヤT3に接続される構成であるため、前記したようにボルト24の取り付け・取り外し作業のみで第1外側タイヤT1,第2外側タイヤT3を簡単に着脱できる。したがって、交換頻度の多い最外側タイヤのメンテナンス性に優れた転圧ローラRとなる。
【0057】
「第2実施形態」
図4を参照して第2実施形態を説明する。第2実施形態は、ブラケット9,10の前端同士および後端同士を連結する前後一対の連結部材61,62を備えた形態である。これ以外の構成は第1実施形態と同じであるので、同じ符号を付してまたは符号を省略してその説明は省略する。
【0058】
ブラケット9,10の前端同士を連結する連結部材61は中間タイヤT2の前方において車幅方向に延設される鉛直板部材からなり、ブラケット9,10の後端同士を連結する連結部材62は中間タイヤT2の後方において車幅方向に延設される鉛直板部材からなる。連結部材61,62の各左右端には車両前後方向に沿う鉛直板状の取付座63が溶接等により固設されており、この取付座63がブラケット9,10の各内側面にあてがわれて外向きに挿入されるボルト64により締結固定される。
【0059】
中間タイヤアセンブリTAは、中間タイヤT2に振動を与えるとともに、第1外側タイヤT1、第2外側タイヤT3にも振動を伝達する。もし、中間タイヤアセンブリTAの中央の起振機ケース6と両側の軸受ユニット32,33とが一体となって振動しなければ、中間タイヤT2と第1外側タイヤT1、第2外側タイヤT3との間で振動挙動が異なることとなってしまい、転圧ローラRの車幅方向において締固め品質にばらつきを生じてしまう。本実施形態では、連結部材61,62をブラケット9,10間に掛け渡すことにより、起振機ケース6と軸受ユニット32,33との相対的な振動を防止して全体的な剛性を高めて、中間タイヤT2と第1外側タイヤT1、第2外側タイヤT3との間での振動のばらつきを抑制できる。
【0060】
「第3実施形態」
図5ないし図7を参照して第3実施形態を説明する。第1実施形態および第2実施形態は、転圧ローラRが前部車体1と後部車体2とをアーティキュレート式に接続した形式の車両であったが、第3実施形態は転圧ローラRを図5に示すように、一体のリジッドフレームの車体71を備え、前輪にステアリングヨーク72を備えたステアリングヨークタイプと呼ばれる形式の車両とした形態である。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付してまたは符号を省略してその説明は省略する。
また、本実施形態において、「車体フレーム」とは車体71を指すものとする。
【0061】
図7に示すように、ステアリングヨーク72は、側面視して車両前後方向に延設される車体取付板部72Aと、車体取付板部72Aの前後から傾斜状に下方に延びたうえで鉛直状に延設される前後一対のタイヤ取付板部72Bとを備えた形状からなる。ステアリングヨーク72は旋回ベアリング73を介して車体71に取り付けられており、旋回ベアリング73のアウタケース73Aが車体71の下部にボルト74により締結固定され、インナケース73Bがステアリングヨーク72の車体取付板部72Aにボルト75により締結固定される。運転席の操舵ハンドルの操作でシリンダ(図示せず)が伸縮することにより、ステアリングヨーク72は旋回ベアリング73の中心を軸中心として旋回する。
【0062】
図6図7に示すように、前側のタイヤ取付板部72Bの後面および後側のタイヤ取付板部72Bの前面にはインナケース77およびアウタケース78を有する旋回ベアリング76が取り付けられており、インナケース77がボルト79によりタイヤ取付板部72Bに締結固定されている。一方、タイヤ側においては、ブラケット9,10の前後端の各内側面に防振部材8の一面が取り付けられている。そして、ブラケット9,10の各前端に取り付けられた防振部材8の他面同士が、車幅方向に延設された鉛直板状の連結支持部材80により連結され、ブラケット9,10の各後端に取り付けられた防振部材8の他面同士が、車幅方向に延設された鉛直板状の連結支持部材81により連結されている。連結支持部材80,81の各端部に車両前後方向に沿う鉛直板状の取付座82が溶接等により固設されており、この取付座82が防振部材8の他面にボルトにより締結固定される。連結支持部材80,81はそれぞれ中間タイヤT2の前方、後方に位置する。連結支持部材80,81にはそれぞれ旋回ベアリング76のアウタケース78がボルト83により締結固定される。
【0063】
以上のように、一対のブラケット9,10の前端同士および後端同士を防振部材8を介して連結する前後一対の連結支持部材80,81を備え、この一対の連結支持部材80,81にステアリングヨーク72が掛け渡される構造とすれば、ステアリングヨーク式の自走式振動タイヤローラを有する転圧ローラRを容易に実現できる。
【0064】
また、一対の連結支持部材80,81とステアリングヨーク72とが、タイヤT1〜T3が被転圧面の凹凸に合わせて揺動可能とするように、軸受(旋回ベアリング76)を介して接続される構造とすれば、被転圧面に凹凸に合わせて振動タイヤローラが揺動するため、各タイヤT1〜T3より均一な静圧力および動圧力を被転圧面に加えることができ、振動タイヤローラの締固めによる強力な効果を均一に被転圧面に及ぼすことができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。本発明は、前輪、後輪の両方が振動タイヤローラからなる転圧ローラ以外にも、例えば前輪、後輪のどちらか一方が振動タイヤローラで他方が鉄輪からなるコンバインド型の転圧ローラ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 前部車体
2 後部車体
5 起振軸
6 起振機ケース
7A,7B 車体フレーム
8 防振部材
9,10 ブラケット
11 振動用モータ
12 固定部
13 出力部
14,15 走行用モータ
32,33 軸受ユニット
34 軸受
61,62 連結部材
R 転圧ローラ
T1 第1外側タイヤ
T2 中間タイヤ
T3 第2外側タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8