(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例1】
【0020】
<構成>
図1は、本発明の一実施例になるモード切り替え制御装置を具えたハイブリッド車両の駆動系およびその全体制御システムを示す概略系統図である。
【0021】
図1のハイブリッド車両は、エンジン1および電動モータ2を動力源として搭載され、エンジン1は、スタータモータ3により始動する。
エンジン1は、Vベルト式無段変速機4を介して駆動車輪5に適宜切り離し可能に駆動結合し、Vベルト式無段変速機4は、概略を以下に説明するようなものとする。
【0022】
Vベルト式無段変速機4は、プライマリプーリ6と、セカンダリプーリ7と、これらプーリ6,7間に掛け渡したVベルト8とからなる無段変速機構CVTを主たる構成要素とする。
プライマリプーリ6はロックアップ式トルクコンバータT/Cを介してエンジン1のクランクシャフトに結合し、セカンダリプーリ7は変速機クラッチCL(本発明におけるクラッチに相当)およびファイナルギヤ組9を順次介して駆動車輪5に結合する。
【0023】
かくして変速機クラッチCLの締結状態で、エンジン1からの動力はトルクコンバータT/Cを経てプライマリプーリ6へ入力され、その後Vベルト8、セカンダリプーリ7、変速機クラッチCLおよびファイナルギヤ組9を順次経て駆動車輪5に達し、ハイブリッド車両の走行に供される。
【0024】
かかるエンジン動力伝達中、プライマリプーリ6のプーリV溝幅を小さくしつつ、セカンダリプーリ7のプーリV溝幅を大きくすることで、Vベルト8がプライマリプーリ6との巻き掛け円弧径を大きくされると同時にセカンダリプーリ7との巻き掛け円弧径を小さくされ、Vベルト式無段変速機4はハイ側プーリ比(ハイ側変速比)へのアップシフトを行うことができる。
逆にプライマリプーリ6のプーリV溝幅を大きくしつつ、セカンダリプーリ7のプーリV溝幅を小さくすることで、Vベルト8がプライマリプーリ6との巻き掛け円弧径を小さくされると同時にセカンダリプーリ7との巻き掛け円弧径を大きくされ、Vベルト式無段変速機4はロー側プーリ比(ロー側変速比)へのダウンシフトを行うことができる。
【0025】
電動モータ2はファイナルギヤ組11を介して駆動車輪5に常時駆動結合し、この電動モータ2は、バッテリ12の電力によりインバータ13を介して駆動する。
インバータ13は、バッテリ12の直流電力を交流電力に変換して電動モータ2へ供給すると共に、電動モータ2への供給電力を加減することにより、電動モータ2を駆動力制御および回転方向制御する。
【0026】
なお電動モータ2は、上記のモータ駆動のほかに発電機としても機能し、後で詳述する回生制動の用にも供する。
この回生制動時はインバータ13が、電動モータ2に回生制動力分の発電負荷をかけることにより、電動モータ2を発電機として作用させ、電動モータ2の発電電力をバッテリ12に蓄電する。
【0027】
図1につき上記した駆動系を具えるハイブリッド車両は、変速機クラッチCLを解放すると共にエンジン1を停止させた状態で、電動モータ2を駆動すると、電動モータ2の動力のみがファイナルギヤ組11を経て駆動車輪5に達し、ハイブリッド車両は電動モータ2のみによる電気走行モード(EVモード)で走行を行うことができる。
この間、変速機クラッチCLを解放していることで、停止状態のエンジン1を連れ回すことがなく、EV走行中の無駄な電力消費を抑制することができる。
【0028】
上記のEV走行状態においてエンジン1をスタータモータ3により始動させると共に変速機クラッチCLを締結させると、エンジン1からの動力がトルクコンバータT/C、プライマリプーリ6、Vベルト8、セカンダリプーリ7、変速機クラッチCLおよびファイナルギヤ組9を順次経て駆動車輪5に達するようになり、ハイブリッド車両はエンジン1および電動モータ2によるハイブリッド走行モード(HEVモード)で走行を行うことができる。
【0029】
ハイブリッド車両を上記の走行状態から停車させたり、この停車状態に保つに際しては、駆動車輪5と共に回転するブレーキディスク14をキャリパ15により挟圧して制動することで目的を達する。
キャリパ15は、運転者が踏み込むブレーキペダル16の踏力に応動して負圧式ブレーキブースタ17による倍力下でブレーキペダル踏力対応のブレーキ液圧を出力するマスターシリンダ18に接続し、このブレーキ液圧でキャリパ15を作動させてブレーキディスク14の制動を行う。
【0030】
ハイブリッド車両はEVモードおよびHEVモードのいずれにおいても、運転者がアクセルペダル19を踏み込んで指令する駆動力指令に応じたトルクで車輪5を駆動され、運転者の要求に応じた駆動力をもって走行される。
【0031】
ハイブリッド車両の走行モード選択と、エンジン1の出力制御と、電動モータ2の回転方向制御および出力制御と、無段変速機4の変速制御および変速機クラッチCLの締結、解放制御と、バッテリ12の充放電制御はそれぞれ、ハイブリッドコントローラ21が、対応するエンジンコントローラ22、モータコントローラ23、変速機コントローラ24、およびバッテリコントローラ25を介してこれら制御を行うものとする。
【0032】
そのためハイブリッドコントローラ21には、ブレーキペダル16を踏み込む制動時にOFFからONに切り替わる常開式ブレーキスイッチ26からの信号と、アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ27からの信号と、プライマリプーリ6の回転数Npriを検出するプライマリプーリ回転センサ28からの信号と、セカンダリプーリ7の回転数Nsecを検出するセカンダリプーリ回転センサ29からの信号とを入力する。
ハイブリッドコントローラ21は更に、エンジンコントローラ22、モータコントローラ23、変速機コントローラ24、およびバッテリコントローラ25との間で、内部情報のやり取りを行う。
【0033】
エンジンコントローラ22は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答して、エンジン1を出力制御し、
モータコントローラ23は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答してインバータ13を介し電動モータ2の回転方向制御および出力制御を行う。
【0034】
変速機コントローラ24は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答し、エンジン駆動されるオイルポンプO/Pからのオイルを媒体として、またエンジン1の運転停止中に作動媒体が必要な場合は電動ポンプE/Pからのオイルを作動媒体として無段変速機4(Vベルト式無段変速機構CVT)の変速制御、トルクコンバータT/Cのロックアップ制御、および変速機クラッチCLの締結、解放制御を行う。
バッテリコントローラ25は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答し、バッテリ12の充放電制御を行う。
【0035】
なお
図1では、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離し可能に結合するため、無段変速機4に専用の変速機クラッチCLを設けたが、
図2(a)に例示するごとく無段変速機4が、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間に副変速機31を内蔵している場合は、副変速機31の変速を司る摩擦要素(クラッチや、ブレーキなど)を流用して、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離し可能に結合することができる。
この場合、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離し可能に結合する専用のクラッチCLを追設する必要がなくてコスト上有利である。
【0036】
図2(a)の副変速機31は、複合サンギヤ31s-1および31s-2と、インナピニオン31pinと、アウタピニオン31poutと、リングギヤ31rと、ピニオン31pin, 31poutを回転自在に支持したキャリア31cとからなるラビニョオ型プラネタリギヤセットで構成する。
複合サンギヤ31s-1および31s-2のうち、サンギヤ31s-1は入力回転メンバとして作用するようセカンダリプーリ7に結合し、サンギヤ31s-2はセカンダリプーリ7に対し同軸に配置するが自由に回転し得るようにする。
【0037】
サンギヤ31s-1にインナピニオン31pinを噛合させ、このインナピニオン31pinおよびサンギヤ31s-2をそれぞれアウタピニオン31poutに噛合させる。
アウタピニオン31poutはリングギヤ31rの内周に噛合させ、キャリア31cを出力回転メンバとして作用するようファイナルギヤ組9に結合する。
【0038】
キャリア31cとリングギヤ31rとをハイクラッチH/Cにより適宜結合可能となし、リングギヤ31rをリバースブレーキR/Bにより適宜固定可能となし、サンギヤ31s-2をローブレーキL/Bにより適宜固定可能となす。
【0039】
副変速機31は、変速摩擦要素であるハイクラッチH/C、リバースブレーキR/BおよびローブレーキL/Bを、
図2(b)に○印により示す組み合わせで締結させ、それ以外を
図2(b)に×印で示すように解放させることにより前進第1速、第2速、後退の変速段を選択することができる。
【0040】
ハイクラッチH/C、リバースブレーキR/BおよびローブレーキL/Bを全て解放すると、副変速機31は動力伝達を行わない中立状態であり、
この状態でローブレーキL/Bを締結すると、副変速機31は前進第1速選択(減速)状態となり、
ハイクラッチH/Cを締結すると、副変速機31は前進第2速選択(直結)状態となり、
リバースブレーキR/Bを締結すると、副変速機31は後退選択(逆転)状態となる。
【0041】
図2(a)の無段変速機4は、全ての変速摩擦要素H/C, R/B, L/Bを解放して副変速機31を中立状態にすることで、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離すことができる。
従って
図2(a)の無段変速機4は、副変速機31の変速摩擦要素H/C, R/B, L/Bが
図1における変速機クラッチCLの用をなし、
図1におけるように変速機クラッチCLを追設することなく、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離し可能に結合することができる。
【0042】
図2(a)の無段変速機4は、エンジン駆動されるオイルポンプO/Pからのオイルを作動媒体として、またエンジン1の運転停止中に作動媒体が必要な場合は電動ポンプE/Pからのオイルを作動媒体として制御されるもので、
変速機コントローラ24がライン圧ソレノイド35、ロックアップソレノイド36、プライマリプーリ圧ソレノイド37、ローブレーキ圧ソレノイド38、ハイクラッチ圧&リバースブレーキ圧ソレノイド39およびスイッチバルブ41を介し、無段変速機4の当該制御を以下のように行う。
【0043】
なお変速機コントローラ24には、
図1につき前述した信号に加えて、車速VSPを検出する車速センサ32からの信号、および車両加減速度Gを検出する加速度センサ33からの信号を入力する。
【0044】
ライン圧ソレノイド35は、変速機コントローラ24からの指令に応動し、オイルポンプO/P(または電動ポンプE/P)からのオイルを車両要求駆動力対応のライン圧P
Lに調圧し、このライン圧P
Lを常時セカンダリプーリ7へセカンダリプーリ圧として供給することにより、セカンダリプーリ7がライン圧P
Lに応じた推力でVベルト8をスリップしないよう挟圧する。
【0045】
ロックアップソレノイド36は、変速機コントローラ24からのロックアップ指令に応動し、ライン圧P
Lを適宜トルクコンバータT/Cに向かわせて図示せざるロックアップクラッチ(ロックアップ機構)を締結またはスリップ結合させることで、トルクコンバータT/Cを必要時に入出力要素間が相対回転(スリップ)することのないよう直結されたロックアップ状態、または入出力要素間が所定回転差で相対回転するようスリップ結合されたスリップロックアップ状態にする。
【0046】
プライマリプーリ圧ソレノイド37は、変速機コントローラ24からのCVT変速比指令に応動してライン圧P
Lをプライマリプーリ圧に調圧し、これをプライマリプーリ6へ供給することにより、プライマリプーリ6のV溝幅と、ライン圧P
Lを供給されているセカンダリプーリ7のV溝幅とを、CVT変速比が変速機コントローラ24からの指令に一致するよう制御して変速機コントローラ24からのCVT変速比指令を実現する。
【0047】
ローブレーキ圧ソレノイド38は、変速機コントローラ24が副変速機31の第1速選択指令を発しているとき、ライン圧P
Lをローブレーキ圧としてローブレーキL/Bに供給することによりこれを締結させ、第1速選択指令を実現する。
【0048】
ハイクラッチ圧&リバースブレーキ圧ソレノイド39は、変速機コントローラ24が副変速機31の第2速選択指令または後退選択指令を発しているとき、ライン圧P
Lをハイクラッチ圧&リバースブレーキ圧としてスイッチバルブ41に供給する。
第2速選択指令時はスイッチバルブ41が、ソレノイド39からのライン圧P
Lをハイクラッチ圧としてハイクラッチH/Cに向かわせ、これを締結することで副変速機31の第2速選択指令を実現する。
後退選択指令時はスイッチバルブ41が、ソレノイド39からのライン圧P
Lをリバースブレーキ圧としてリバースブレーキR/Bに向かわせ、これを締結することで副変速機31の後退選択指令を実現する。
【0049】
<モード切り替え制御>
上記ハイブリッド車両のモード切り替え動制御を、車両の駆動系が
図1に示すようなものである場合につき以下に説明する。
HEV走行中にアクセルペダル19を釈放してコースティング(惰性)走行へ移行した場合や、その後ブレーキペダル16を踏み込んで車両を制動する場合、電動モータ2による回生制動によって車両の運動エネルギーを電力に変換し、これをバッテリ12に蓄電しておくことでエネルギー効率の向上を図る。
【0050】
ところでHEV走行のままの回生制動(HEV回生)は、変速機クラッチCLが締結状態であるため、エンジン1の逆駆動力(エンジンブレーキ)分および無段変速機4のフリクション分だけ回生制動エネルギーの低下を招くこととなり、エネルギー回生効率が悪い。
そのため、HEV走行中に回生制動が開始されたら、変速機クラッチCLの解放によりエンジン1および無段変速機4を駆動車輪5から切り離してEV走行へと移行することでEV回生状態となし、これによりエンジン1および無段変速機4の連れ回しをなくすことで、その分だけエネルギー回生量を稼げるようにする。
【0051】
一方、上記のように変速機クラッチCLを解放している時は燃費の観点からエンジン1を無用な運転が行われないよう停止させておくため、上記のコースティング走行中に実行されていたエンジン1への燃料噴射の中止(フューエルカット)が変速機クラッチCLの上記解放時も継続されるよう、エンジン1への燃料噴射の再開(フューエルリカバー)を禁止することで、変速機クラッチCLの解放時にエンジン1を停止させる。
以上により、HEVモードからEVモードへの切り替えが完了する。
【0052】
EV走行中にアクセルペダル19を踏み込むなど運転状態が変化し、EVモードからHEVモードへのモード切り替え要求が発生した場合、エンジン1を再始動すると共に変速機クラッチCLを締結してEV走行モードからHEV走行モードへの切り替えを行う。
【0053】
ところで当該EV→HEVモード切り替え時の適切な駆動力制御(エンジン1および/または電動モータ2の出力制御)や、無段変速機4(無段変速機構CVT)の適切な変速制御を怠ると、以下の問題を生ずる。
つまり、無段変速機4(無段変速機構CVT)はエンジン1で駆動されるオイルポンプO/Pからの作動油を媒体として変速制御するのが普通であり、エンジン1を停止させるEV走行モードへの移行後は、オイルポンプO/Pから作動油が吐出されず、無段変速機4(無段変速機構CVT)がそれ自身回転していないこととも相俟って、たとえ電動ポンプE/Pを作動させたとしても変速制御不能状態である。
【0054】
かといってEV走行中に無段変速機4(無段変速機構CVT)は、EV走行モードへの移行時(エンジン停止時)における変速比に保たれるという訳ではなく、変速制御システム内の作動油が漏れたり、変速制御機構内におけるバネ(例えばプライマリプーリ6およびセカンダリプーリ7の可動シーブを固定シーブに附勢する皿バネ)などによるプリロードで変速制御機構が若干ながら動作するため、EV走行中に変速比がEV走行モードへの移行時(エンジン停止時)における変速比から徐々にずれてしまい、何れにしてもEV走行中は実変速比を把握し得ない。
【0055】
なおEV→HEVモード切り替え時にエンジン1が始動されるが、エンジン回転が完爆により始動完了値になって、オイルポンプO/Pの吐出油量を変速制御可能な量となすまでには、EV→HEVモード切り替えの開始から相当な応答遅れ後であり、この間も変速機は変速制御不能状態のままである。
このとき電動ポンプE/Pを作動させたとしても、エンジン1が始動を完了するまでの間はエンジン回転数が変速制御に用い得る程度に安定しておらず、無段変速機4(無段変速機構CVT)は依然として変速制御不能状態のままである。
【0056】
これらの理由から、エンジン1が完爆により始動を完了してオイルポンプO/Pから十分な量の作動油が吐出されるようになり、無段変速機4(無段変速機構CVT)が変速制御可能となった時における実変速比と、運転状態に応じた目標変速比との間には大きな乖離があり、これら実変速比および目標変速比間の変速比偏差分だけ車輪駆動力が運転状態に応じた目標駆動力に対し過不足を生ずる。
【0057】
しかるに従来のハイブリッド車両では、EV→HEVモード切り替え時における上記変速比偏差に起因した駆動力の過不足を解消しようとする試みがなされておらず、運転操作通りの駆動力が得られないという違和感を運転者に与えるという問題があった。
【0058】
本実施例は、この問題を解消、若しくは少なくとも緩和し得るよう改良したEV→HEVモード切り替え制御を提案するもので、
図1のハイブリッドコントローラ21が
図3の制御プログラムを実行して、エンジンコントローラ22および変速機コントローラ24を介し、
図4のタイムチャートに示すごとくに当該EV→HEVモード切り替え制御を遂行するものとする。
【0059】
なお
図4は、アクセル開度APO=0と、制動操作(ブレーキスイッチON)とによるコースティング走行中の瞬時t1にHEV→EVモード切り替え要求が発生し、これに呼応して変速機クラッチCLが解放され(クラッチ圧Pc=0)、コースティング走行中に実行されるフューエルカットがフューエルリカバーを禁止されていることで瞬時t1における変速機クラッチCLの解放に伴ってエンジン1が停止され(エンジン回転数Ne=0)、
その後の瞬時t2に、制動操作解除(ブレーキスイッチOFF)およびアクセルペダルの踏み込み(アクセル開度APO>0)に呼応して、EV→HEVモード切り替え要求が発生した場合の動作タイムチャートである。
【0060】
図3のステップS11においては、
図4の瞬時t2におけるようなエンジン再始動要求(EV→HEVモード切り替え要求)が発生したか否かをチェックし、発生していなければ、現在のHEV走行を継続させるべきで、
図3のEV→HEVモード切り替え制御が不要であるから、制御をそのまま終了する。
ステップS11でエンジン再始動要求(EV→HEVモード切り替え要求)が発生した(
図4の瞬時t2に至った)と判定する場合、現在のHEV走行からEV走行にモード切り替えする必要があることから、制御をステップS12に進める。
【0061】
ステップS12においては、EV→HEVモード切り替えに際して必要なエンジン1の始動および変速機クラッチCLの締結のうち、前者のエンジン始動をスタータ3によって開始させ、瞬時t2〜t3間におけるエンジン回転数Neから明らかなようにエンジン1をクランキングし、併せて、電動モータ2をそのモータトルクTmが運転状態に応じた目標駆動力対応値になるよう制御する。
【0062】
次のステップS13においては、電動ポンプE/Pを作動させてこれから作動油が吐出されるようになす。
次いでステップS14において、当該電動ポンプE/Pからの作動油を媒体として変速機クラッチCLを締結すべく、その締結圧Pcを
図4の瞬時t2以降におけるごとくに発生させ、EV→HEVモード切り替えに際して必要な変速機クラッチCLの締結を行う。
【0063】
ステップS15においては、ステップS12で開始させたエンジン始動が完了したか否かを、つまりエンジン1が完爆して自立運転を開始する
図4の瞬時t3に至ったか否かをチェックし、エンジン始動が完了するまでは制御を直前に戻して、エンジン1が自立運転を開始するようになる(
図4の瞬時t3に至る)まで待機する。
ステップS15でエンジン始動が完了したと判定するとき(
図4の瞬時t3)、オイルポンプO/Pが作動油を吐出するようになって、電動ポンプE/Pからの作動油が不要であることから、ステップS16において電動ポンプE/Pを停止させる。
【0064】
図4の瞬時t1〜t3間は前記した理由によって、無段変速機4(無段変速機構CVT)の実変速比(プーリ比)Ipを求めることができないため不明であるが、瞬時t3以降はエンジン回転数Neの立ち上がりにより無段変速機4(無段変速機構CVT)がエンジン回転を入力されるようになることで、無段変速機4(無段変速機構CVT)の実変速比Ipを求めることができる。
そこで瞬時t3以降ステップS17において、無段変速機4(無段変速機構CVT)の実変速比Ipを、Ip=Npri/Nsecの演算により求める。
【0065】
ステップS18においては、瞬時t3以降における時々刻々の目標変速比tIpを、瞬時ごとの運転状態(アクセル開度APOおよび車速VSP)から求める。
ステップS19においては、実変速比Ipに対する目標変速比tIpの比である変速比偏差度ΔIp(=tIp/Ip)を演算する。
ステップS21においては、変速比偏差度ΔIpが1以上か否かにより、Ip≦tIp(実変速比Ipが目標変速比tIpよりハイ側)か、Ip>tIp(実変速比Ipが目標変速比tIpよりロー側)かをチェックする。
【0066】
ステップS21で変速比偏差度ΔIpが1以上であると判定する場合、つまり
図4に示すごとくIp≦tIp(実変速比Ipが目標変速比tIpよりハイ側)であって、車輪駆動力が要求駆動力に対し、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差分だけ不足する場合、ステップS22において、この駆動力不足を解消するのに必要なモータトルク増大補正量ΔTmを変速比偏差度ΔIpと定数αとの乗算により求め、このモータトルク増大補正量ΔTmを、
図4に一点鎖線で示す補正前のモータトルクTmに加算して、
図4に実線で示すようなモータトルク増大補正値(Tm+ΔTm)を得る。
【0067】
ステップS23においては、電動モータ2側にモータトルク増大補正量ΔTmを上乗せするだけの余裕があるか否かをチェックする。
余裕があればステップS24において、電動モータ2を、出力トルクがモータトルク増大補正値(Tm+ΔTm)となるよう出力制御して、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差に起因した駆動力不足を解消する。
【0068】
ステップS23で電動モータ2側にモータトルク増大補正量ΔTmを上乗せするだけの余裕がないと判定する場合、ステップS25において、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差に起因した駆動力不足を解消するのに必要なエンジントルク増大補正量ΔTeを変速比偏差度ΔIpと定数βとの乗算により求め、このエンジントルク増大補正量ΔTeを、
図4に一点鎖線で示す補正前のエンジントルクTeに加算して、
図4に実線で示すようなエンジントルク増大補正値(Te+ΔTe)を得る。
【0069】
ステップS26においては、エンジン1側にエンジントルク増大補正量ΔTeを上乗せするだけの余裕があるか否かをチェックする。
余裕があればステップS27において、エンジン1を、出力トルクがエンジントルク増大補正値(Te+ΔTe)となるよう出力制御して、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差に起因した駆動力不足を解消する。
【0070】
ステップS26でエンジン1側にエンジントルク増大補正量ΔTeを上乗せするだけの余裕がないと判定する場合、ステップS28において、ステップS22およびステップS24によると同様なモータトルク増大補正と、これのみでは不足する分を補うエンジントルク増大補正との共働により、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差に起因した駆動力不足を解消する。
【0071】
ステップS21で変速比偏差度ΔIpが1未満であると判定する場合、つまり
図4に示すとは逆にIp>tIp(実変速比Ipが目標変速比tIpよりロー側)であって、車輪駆動力が要求駆動力に対し、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差分だけ過大である場合、ステップS32において、この駆動力過大を解消するのに必要なモータトルク低下補正量ΔTeを変速比偏差度ΔIpと定数αとの乗算により求め、このモータトルク低下補正量ΔTmだけ、
図4に一点鎖線で示す補正前のモータトルクTmを低下させて、モータトルク低下補正値(Tm−ΔTm)を得る。
【0072】
ステップS33においては、電動モータ2側にモータトルク低下補正量ΔTmだけトルクを低下するだけの余裕があるか否かをチェックする。
余裕があればステップS24において、電動モータ2を、出力トルクがモータトルク低下補正値(Tm−ΔTm)となるよう出力制御して、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差に起因した駆動力過大を解消する。
【0073】
ステップS33で電動モータ2側にモータトルク低下補正量ΔTmだけトルクを低下させるだけの余裕がないと判定する場合、ステップS35において、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差に起因した駆動力過大を解消するのに必要なエンジントルク低下補正量ΔTeを変速比偏差度ΔIpと定数βとの乗算により求め、このエンジントルク低下補正量ΔTeだけ、
図4に一点鎖線で示す補正前のエンジントルクTeを低下させて、エンジントルク低下補正値(Te−ΔTe)を得る。
【0074】
ステップS36においては、エンジン1側にエンジントルク低下補正量ΔTeだけトルクを低下させるだけの余裕があるか否かをチェックする。
余裕があればステップS37において、エンジン1を、出力トルクがエンジントルク低下補正値(Te−ΔTe)となるよう出力制御して、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差に起因した駆動力過大を解消する。
【0075】
ステップS36でエンジン1側にエンジントルク低下補正量ΔTeだけトルクを低下させるだけの余裕がないと判定する場合、ステップS38において、ステップS32およびステップS24によると同様なモータトルク低下補正と、これのみでは不足する分を補うエンジントルク低下補正との共働により、実変速比Ipおよび目標変速比tIp間の変速比偏差に起因した駆動力不足を解消する。
【0076】
<効果>
上記した本実施例のEV→HEVモード切り替え制御によれば、
図4に基づき以下に説明するような効果を奏することができる。
制動操作解除(ブレーキスイッチOFF)およびアクセルペダルの踏み込み(アクセル開度APO>0)によりEV→HEVモード切り替え要求が発生した瞬時t2に開始されたエンジン始動が完了する瞬時t3から演算可能となる無段変速機4(無段変速機構CVT)の実変速比Ipが目標変速比tIpと異なる場合、これら両者間の変速比偏差に起因した駆動力の過不足で、運転操作通りの駆動力が得られないという違和感を運転者に与える。
【0077】
しかして本実施例では、変速比偏差による駆動力の過不足を解消するよう電動モータ2および/またはエンジン1の出力を補正するため、EV→HEVモード切り替え時の変速比偏差に起因した駆動力の過不足が解消されて、運転操作通りの駆動力変化を生起させることができ、運転操作と異なる駆動力が発生する違和感をなくすことができる。
【0078】
しかも本実施例においては、上記駆動力の過不足を解消するに際し、エンジン1よりも高応答で高精度な出力制御が可能な電動モータ2の出力補正ΔTmを優先的に活用するため(ステップS22、ステップS24およびステップS32)、上記違和感を無くすという効果を一層顕著に奏することができる。
【0079】
そして、電動モータ2側に出力補正ΔTmを実現する余裕がない場合(ステップS23およびステップS33)、エンジン1の出力補正ΔTe(ステップS25、ステップS27、ステップS35およびステップS37)によって、変速比偏差に起因した駆動力の過不足を解消することとしたため、応答性や精度が異なる電動モータ2の出力補正ΔTmとエンジン1の出力補正ΔTeとを併用することがなく、制御が困難になるのを回避しつつ、上記違和感を無くすという効果を奏することができる。
【0080】
なお、電動モータ2の出力補正ΔTmおよびエンジン1の出力補正ΔTeがそれぞれ、単独で、変速比偏差に起因した駆動力の過不足を解消することができない場合、高応答で高精度な出力制御が可能な電動モータ2の出力補正ΔTmを優先的に活用し、不足分をエンジン1の出力補正ΔTeで行うこととしたため(ステップS28およびステップS38)、精度上の不利は避けられないものの、変速比偏差に起因した駆動力の過不足を解消し得ないという問題を生ずることがなくて、前記違和感を無くすという効果を確実に奏することができる。