特許第5936706号(P5936706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936706
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/091 20060101AFI20160609BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20160609BHJP
   B21H 5/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   F16H3/091
   F16H57/04 N
   B21H5/00 A
   B21H5/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-548444(P2014-548444)
(86)(22)【出願日】2013年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2013006626
(87)【国際公開番号】WO2014080589
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年2月16日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2012/007508
(32)【優先日】2012年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592058315
【氏名又は名称】アイシン・エーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 実公平05−017487(JP,Y2)
【文献】 特開平01−094099(JP,A)
【文献】 特開2011−007208(JP,A)
【文献】 特開平04−034207(JP,A)
【文献】 実開昭59−189948(JP,U)
【文献】 実公平07−020432(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/091
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機からの回転動力が入力される入力軸と、
前記入力軸よりも下方に配設された出力軸と、
前記入力軸に一体に設けられた複数の入力軸側ギヤと前記出力軸に相対回転可能に設けられ対応する前記入力軸側ギヤに噛合する複数の出力軸側ギヤとをもつ複数段のギヤ列と、前記出力軸側ギヤに隣接し前記出力軸に相対回転不能に配設される1以上のハブと、前記出力軸側ギヤと前記ハブとを離脱係合させる3組以上のギヤ列選択機構とを有する歯車変速機構と、
前記入力軸及び前記出力軸をそれぞれの両端部近傍のみで支承するケース部材と、
を有し、
前記出力軸は前記出力軸側ギヤ及び前記ハブが配設される部位の全体にわたる外周面に連続してスプラインが形成され、
前記ハブは前記出力軸の前記スプラインにスプライン嵌合するスプライン軸受をもち、
それぞれの前記出力軸側ギヤの軸受は、前記スプラインの歯先にその内面が当接する内径をもつ円筒状であって、それぞれ前記スプライン上に相対回転可能に配設され、
前記ケース部材は前記入力軸及び前記出力軸の一端部側で支承する第1ケース部材と他端部側で支承する第2ケース部材とに大きく2分されており、
前記出力軸側ギヤが潤滑油に接している、
ことを特徴とする変速装置。
【請求項2】
前記出力軸は前記他端部近傍に出力ギヤを有し、
前記出力軸の前記スプラインが形成された部位は前記一端部側から前記他端部側に向けて順次階段状に拡径されており、
前記ハブは、その前記スプライン軸受が前記出力軸の前記一端部側から前記他端部側に向けて前記スプラインの拡径部分に当接することで軸方向の位置決めがなされている、請求項1に記載の変速装置。
【請求項3】
前記出力軸は前記他端部近傍に出力ギヤを有し、
前記ギヤ列は前記出力ギヤに隣接するギヤから前記一端部に向けて変速比が減少するように配設され、
前記第1ケース部材の内部空間は前記一端部側から前記他端部側に向けて順次拡大されている請求項1又は2に記載の変速装置。
【請求項4】
前記出力軸の前記スプラインは径が同一の部分については塑性加工により同時に形成される請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の変速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に関し、特に部品点数を少なくでき製造コストが低廉な変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変速機は原動機からの回転動力が入力される入力軸と、出力軸と、その入出力軸に設けられたギヤ列とそのギヤ列から1つを選択するギヤ列選択機構とをもつ歯車変速機構とを有する(例えば特許文献1)。ギヤ列は入力軸側ギヤと出力軸側ギヤとが噛合しており、一方が軸に相対回転不能に配設され、他方が相対回転(遊転)可能に配設される。ギヤ列選択機構は相対回転可能に配設されたギヤを軸に離脱−係合させる機構である。遊転可能なギヤは入力軸と出力軸とに分配して配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-162214号公報(図1
【特許文献2】特開平5-17487号公報(図1
【特許文献3】特開平7-20432号公報(図1
【特許文献4】特開昭64-5158号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような変速機は遊転できるギヤやギヤ列選択機構を入出力軸の双方に配設するためにはスプラインを形成するなど軸への加工が必要になる。そのため、加工コストが増加することになる。
【0005】
また、遊転ギヤやギヤ列選択機構は潤滑の必要があるため、入出力軸の双方に潤滑機構を設ける必要が生じ部品点数が増加する。更に、出力軸側のギヤをすべて遊転ギヤとする歯車変速機構が開示されている(特許文献2)。しかしながら、出力軸の軸受の一方がギヤ9bと10bとの間に設けられており、組立の容易さの観点からケースが3分割されている。そのため、ケースの部品が多くなることによりコスト増大の一因になっている。軸の両端部に軸受を設けている歯車変速機構は特許文献3に開示されているが、特許文献3に開示の歯車変速機構は1つの軸にギヤ列選択機構を2つしか有しない構成であり、前進4速以上の歯車変速機構におけるすべてのギヤ列選択機構(3つ以上存在する)をすべて1つの軸にまとめようとする場合には、特許文献2のように軸受のうちの少なくとも一方は端部に配設されず、端部にはギヤが配設されることが通常であった(遊転ギヤを一方にまとめている歯車変速機構ではないが、軸受の位置が分かりやすい従来技術として特許文献4を挙げる)。
【0006】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、加工コストや部品点数を低減できる変速機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決する変速機は、原動機からの回転動力が入力される入力軸と、
前記入力軸よりも下方に配設された出力軸と、
前記入力軸に一体に設けられた複数の入力軸側ギヤと前記出力軸に相対回転可能に設けられ対応する前記入力軸側ギヤに噛合する複数の出力軸側ギヤとをもつ複数段のギヤ列と、前記出力軸側ギヤに隣接し前記出力軸に相対回転不能に配設される1以上のハブと、前記出力軸側ギヤと前記ハブとを離脱係合させる3組以上のギヤ列選択機構とを有する歯車変速機構と、
前記入力軸及び前記出力軸をそれぞれの両端部近傍のみで支承するケース部材と、
を有し、
前記出力軸は前記出力軸側ギヤ及び前記ハブが配設される部位の全体にわたる外周面に連続してスプラインが形成され、
前記ハブは前記出力軸の前記スプラインにスプライン嵌合するスプライン軸受をもち、
それぞれの前記出力軸側ギヤの軸受は、前記スプラインの歯先にその内面が当接する内径をもつ円筒状であって、それぞれ前記スプライン上に相対回転可能に配設され、
前記ケース部材は前記入力軸及び前記出力軸の一端部側で支承する第1ケース部材と他端部側で支承する第2ケース部材とに大きく2分されており、
前記出力軸側ギヤが潤滑油に接している、
ことを特徴とする。
【0008】
入力軸よりも出力軸の位置を相対的に下方向に配設し、ギヤ列を構成するギヤのうち入力軸側に配設するギヤをすべて入力軸と一体化することで入力軸とギヤとの間の潤滑に要する部品点数を少なくできる。特に出力軸側ギヤが潤滑油に接しているため、効率的に出力軸側ギヤやその出力軸側ギヤが配設されている出力軸の潤滑が実現できる。積極的に潤滑を行うべきギヤ列選択機構や遊転ギヤは出力軸にまとめて配設しているため、効果的に潤滑を行うことができる。特に軸受を配設する位置として、ギヤ列選択機構が3つ以上有る場合(つまり、出力軸側ギヤの組み合わせ(ギヤ列選択機構にて選択される組)が3組以上存在する場合)に従来技術で採用する位置である、端部以外の場所(軸受のうちの1つ以上)を採用した場合と比べると、後述するように構成や製造工程の簡略化が実現できる。更に、出力軸として他端部近傍を除き全体的にスプラインを形成することでスプラインの形成に要する工数を少なくすることができる。入出力軸はケースにて支承するが、入出力軸を支承する位置として両端部のみにて行うことにより、ケースの分割数を2つに減らしても充分に機能させることができるようになる。特にギヤ列選択機構が出力軸側に集約されることに対応して、ケースについてもギヤ列選択機構を機能させるための構成をまとめて簡便化することができる。
【0009】
また、出力軸側ギヤをすべて遊転させる構成を採用することにより出力軸側ギヤは入力軸の回転速度に比例した速度で回転することになる。オーバードライブなど変速比が低いギヤを選択したときに他のギヤの回転数は出力軸に固定されて回転する場合よりも小さくなって潤滑油の撹拌抵抗が小さくできる。
【0010】
更に、出力軸側ギヤは入力軸が回転する限り回転するため、ギヤ列がいずれも選択されていない、いわゆるニュートラル状態であっても入力軸が回転する限り出力軸側ギヤも回転して潤滑油を掻き上げて充分な潤滑を行うことができる。
【0011】
(2)前述した(1)の構成を採用した場合に、以下の構成を採用することができる。前記出力軸は前記他端部近傍に出力ギヤを有し、
前記出力軸の前記スプラインが形成された部位は前記一端部側から前記他端部側に向けて順次階段状に拡径されており、
前記ハブは、その前記スプライン軸受が前記出力軸の前記一端部側から前記他端部側に向けて前記スプラインの拡径部分に当接することで軸方向の位置決めがなされている。
【0012】
出力軸にはハブを軸方向に位置決めして固定する必要があるが、その固定の方法として出力軸の径を階段状にした段差を利用するようにすると、加工の手間を減らすことが可能になる。つまり、スプラインの加工はいずれにしても必要であるため、その加工と共に出力軸の径を変化させることは容易だからである。
【0013】
(3)前述した(1)及び/又は(2)の構成を採用する場合に、以下の構成を採用することができる。前記出力軸は前記他端部近傍に出力ギヤを有し
前記ギヤ列は前記出力ギヤに隣接するギヤから前記一端部に向けて変速比が減少するように配設され、
前記第1ケース部材の内部空間は前記一端部側から前記他端部側に向けて順次拡大されている。
【0014】
変速比が大きいギヤであるほど出力軸に加わるトルクが大きくなるため、出力ギヤに近い位置に配設することで、出力軸に対して望ましくない変形が生じるおそれを少なくできる。更に出力ギヤが噛合する差動装置に設けられたリングギヤは回転による潤滑油掻き上げの効果が期待できるため、出力ギヤに近接した出力軸側ギヤについて潤滑作用が大きくなる。実走行において最も汎用されるのは変速比が小さいギヤ列(5速の変速機では第5速)であり、そのギヤ列が選択されている場合には変速比が最も大きい、いわゆる第1速の出力軸側ギヤと出力軸との相対回転が大きくなる。従って第1速の出力軸側ギヤは潤滑の需要が大きいため、出力ギヤに近づけて充分な潤滑を実現する。更に、第1ケースの形状が一端部側から他端部側に向けて拡大するような形状であるため、遊転ギヤである出力軸側ギヤやギヤ列選択機構を配設した出力軸を第1ケースに挿入するときに、挿入がし易く且つ挿入の途中で出力軸側ギヤと第1ケースとの間の干渉が少なく出来るため、第1ケースの形状についての設計の自由度が高く出来る。
【0015】
また、出力軸側に配設されたギヤ列の大きさが出力ギヤから離れるにつれて小さくなるため、ギヤ列の抜差しを考えてもケースの形状を先細りのギヤ列の形状に倣った形態にすることが可能になって変速機の体格を相対的に小さくすることができる。
【0016】
(4)前述した(1)、(2)、及び/又は(3)の構成を採用する場合に、以下の構成を採用することができる。前記出力軸の前記スプラインは径が同一の部分については塑性加工により同時に形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の変速機は上記構成を有することにより構成が簡便化されて加工コストや部品点数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の変速機の一部断面図である。
図2】本発明の変速機に採用された出力軸の断面図である。
図3】本発明の変速機に採用されたギヤ列選択機構を説明する断面図である。
図4】本発明の変速機の出力軸の製造方法を説明する模式図である。
図5】本発明の変速機の出力軸の製造方法を説明する模式図である(図4のV−V断面図)。
図6】本発明の変速機の出力軸の製造方法を説明する模式図である。
図7】本変形態様の出力軸において径が一様な場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の変速装置について代表的な実施形態を図1を参照して説明する。本実施形態に係る変速装置は、車両に搭載される。なお、以下に用いる図面において断面部分に付けるハッチングは必要な部位のみとしている。
【0020】
・構成
実施形態1の変速装置は、図1に示すように、入力軸10と出力軸20と入力軸側ギヤ11〜15と出力軸側ギヤ21〜25とギヤ列選択機構31〜33とケース部材51、52とを有する。
【0021】
入力軸10は内燃機関1(原動機)から出力される回転動力がクラッチ2を介して入力される。入力軸10には入力軸側ギヤ11〜15(第1速〜第5速)がこの順に他端部側から一体的に形成されている。入力軸10はその一端部10aと他端部10bとで軸受53、54を介してケース部材51、52に支承されている。
【0022】
出力軸20は入力軸10に入力された回転動力がギヤ列(11〜15、21〜25)を介して伝達され、出力ギヤ26を介してリングギヤ41に出力される。リングギヤ41は差動装置42を介してドライブシャフト(図略)に回転動力を出力する。出力軸20は一端部20aと他端部20bとで軸受55、56を介してケース部材51、52に支承されている。
【0023】
出力軸20は他端部20b側に出力ギヤ26が一体的に形成され、出力ギヤ26から一端部20a側に向けて外周にスプライン201(図2参照)が形成されている。出力軸20のスプライン201の外径は他端部20b側から4段階(201a〜201d)で階段状に縮径されている。縮径の程度は特に限定しないが、一番細い部分(スプライン201dが形成されている部分)においても充分な強度をもたせるために形成されるスプライン歯の全歯たけ程度の大きさにすることが好ましく、全歯たけもできるだけ小さくすることが望ましい。スプライン201a〜201dは連続して設けられている。ここで、連続して設けられているとは、隣接するスプラインが潤滑油を流す流路やギヤやクラッチハブの位置決めを行うために設けられるスナップリングを嵌め込む溝などのような出力軸として機能させるために必要な部材を形成することを除き、概ねスプラインが全体的に形成されていることである。
【0024】
出力軸20は出力軸側ギヤ21〜25(第1速〜第5速)がこの順に他端部側20bから配設されている。出力軸側ギヤ21〜25はそれぞれ入力軸側ギヤ11〜15と常時噛合しており、出力軸20に対しては遊転状態で配設されている。スプライン201aの部位に出力軸側ギヤ21が配設され、スプライン201bの部位にギヤ列選択機構31、出力軸側ギヤ22、出力軸側ギヤ23が配設され、スプライン201cの部位にギヤ列選択機構32、出力軸側ギヤ24、出力軸側ギヤ25が配設され、スプライン201dの部位にギヤ列選択機構33が配設される。
【0025】
出力軸側ギヤ21〜25は、出力軸側ギヤ21、22がその間に配設されたギヤ列選択機構31により選択的に出力軸20に離脱係合され、出力軸側ギヤ23、24がその間に配設されたギヤ列選択機構32により選択的に出力軸20に離脱係合され、出力軸側ギヤ25が一端部20a側に配設されたギヤ列選択機構33により選択的に出力軸20に離脱係合される。つまり、出力軸側ギヤ21、ギヤ列選択機構31、出力軸側ギヤ22、出力軸側ギヤ23、ギヤ列選択機構32、出力軸側ギヤ24、出力軸側ギヤ25、ギヤ列選択機構33の順に出力軸20の他端部20b側から一端部20a側に向けて配設される。
【0026】
出力軸側ギヤ21はギヤ列選択機構31が隣接する側にギヤピース211が一体化されている。ギヤピース211は外周に係合歯211aと係合面211bとがギヤ列選択機構31に向けてこの順で形成されている(図3参照)。出力軸側ギヤ22〜25についてもギヤ列選択機構31〜33が隣接する側にギヤピースが設けられる。
【0027】
出力軸側ギヤ21〜25の軸受21a〜25aはそれぞれ出力軸2の外周に形成されたスプライン201(201a〜c)の歯先に内面が当接する(図3において隣接するクラッチハブ311はスプライン軸受311aによりスプライン201bに係合しているが、そのスプライン軸受311aの歯底311cとほぼ同径に形成される)。スプライン201の歯溝に潤滑油が保持されて潤滑される。
【0028】
ギヤ列選択機構31は、図3に示すように、クラッチハブ(ハブに相当)311とスリーブ315とシンクロナイザリング313とをもつ。図3では第1速の出力軸側ギヤ21を選択した状態(スリーブ315が図面右方向にスライドしてスリーブ315のスリーブ係合歯315aが、クラッチハブ311のハブ係合歯311b、シンクロナイザリング313のシンクロナイザリング係合歯314、及びギヤピース211の係合歯211aに噛合している。図3ではクラッチハブ311の図面上側がシンクロキー316が設けられている部分の断面図になっている)を示す。クラッチハブ311は出力軸20の外周に固定されている。この固定はクラッチハブ311に設けられたスプライン軸受311aが出力軸20の外周に設けられたスプライン201に噛合することで回転方向が固定される。軸方向の固定はクラッチハブ311が出力軸20の外周に設けたスプライン201の段差(スプライン201aとスプライン201bとの間の段差)に当接することで他端部20b側は位置決め固定される。そして、一端部側は例えば、出力軸20の周方向に周溝を設け、スナップリングを嵌め込むことで軸方向の固定を行う。ギヤ列選択機構32及び33についても配設される位置が異なる以外はギヤ列選択機構31と同様の構成をもつ。具体的には、ギヤ列選択機構32ではスプライン201c上であってスプライン201bとの段差に当接するように配設され、ギヤ列選択機構33ではスプライン201d上であってスプライン201cとの段差に当接するように配設される。
【0029】
ケース部材51、52は第1ケース部材51と第2ケース部材52とが分割面Bにて組み合わせられて一体化されている。第1ケース部材51は図面右方(内燃機関側)で入力軸10及び出力軸20の他端部10b及び20b側を軸受53〜56で支承している。ここで、ギヤ列は図面右方から順に第1速から第5速まで並んでいる。そのため、入力軸側ギヤ11〜15は図面左方に向かうに従い径が大きくなり、出力軸側ギヤ21〜25は図面左方に向かうに従い径が小さくなる。ここで、入力軸10側にギヤ列選択機構31を駆動する駆動部を設けているため、図面右側の入力軸側ギヤ11〜13の上部近傍が左側よりも空間があるため、第2ケース部材52の上部の体格を小さくできる。また、出力軸20側では第2ケース部材52が出力軸側ギヤ21〜25の外形にほぼ倣って形成されているため、図面左方に向かうにつれて第2ケース部材52の体格を小さくできる。第2ケース部材52の内部に位置する機構(一番外側には出力軸側ギヤ21〜25、ギヤ列選択機構31の駆動部など)が全体として左方に行くほど小さくなるような形態にすることができたため、第2ケース部材52を組み付けるときに図面左方側から引っ掛かること無くかぶせることができるので、組み付け性を考慮しても第2ケース部材52内に余分な空間を設ける必要がなくなり、ひいては第2ケース部材52の外側についても必要最低限の体格にすることができる。つまり、ギヤ列を図面右方から左方に向けて第1速から第5速へと配置したことで第2ケース部材52の体格を小さくできる。
【0030】
なお、出力軸としてはスプラインを階段状に形成することは必須では無く、スプラインを形成する部分を軸方向に同径にすることもできる。その場合にはクラッチハブ311の軸方向両側に周溝を形成し、その周溝の双方にスナップリングを嵌め込んでクラッチハブ311が軸方向に移動しないようにする。
【0031】
・階段状のスプラインが形成された出力軸20の製造方法
階段状のスプラインが形成された出力軸20(以下、単に「階段状出力軸20」と称する)の製造方法について以下に説明する。本出力軸の製造方法としては転造や切削により製造可能である。例えば、スプライン201a〜201dのそれぞれについて対応するダイスを用意して製造できる。
【0032】
ここで、スプライン201a〜201dのそれぞれについて転造ダイス(ラック型、ローラ型など)を共用することができる。つまり、スプライン201a〜201dにおける圧力角、モジュールを同一のものとして端数だけを変更することにより転造に用いる転造ダイスを共用することができる。更に、転造ダイスとして1組(2つ以上)のものを採用する場合、スプライン201a〜201dにおける歯数の差がその転造ダイスの数の倍数であって、転造ダイスの配置を転造ダイスの位相も含めて出力軸を基準とするn回対称(nは転造ダイスの数)になるように設定すれば、それぞれの転造ダイスの間の距離のみを変更し、複数のダイス間の位相はそのままでもスプライン201a〜201dそれぞれの歯を順次、適正に形成することができる。例えば、ラック型のダイスを用いた場合、ラック型のダイスは2つで一組であるため、スプライン201a〜201dにおける歯数の差は偶数にし、出力軸20の軸方向に垂直方向の両側からダイスを当接させるようにする。以下、図4及び5を参照して詳細に説明する。ここで、2つのダイスについて歯の位相とは出力軸粗材60の軸心を基準としてダイスの歯の形状が2回対称になることをいう。3つ以上のダイスを用いる場合(ローラ型)ではそのダイスの数nに対応するn回対称になるようにする。
【0033】
スプライン201a〜201dのラック型を用いた転造について具体的に説明する。まず出力軸粗材60を製造する(図4)。出力軸粗材60は一端部60a及び他端部60bのそれぞれに設けられた支承軸64及び65と他端部60bの支承軸65に隣接する出力ギヤ26の基になる出力ギヤ粗材66、スプライン201が形成されるスプライン粗材601をもつ。スプライン粗材601はスプライン粗材601a〜601dまでの4つに分類でき、他端部60bから一端部60aに向かうにつれて段階的に縮径している。縮径の程度はスプライン201a〜201dにおける縮径の程度に対応して決定される。出力軸粗材60は線材からプレスや切削などにより形成できる。
【0034】
製造した出力軸粗材60について軸心を回動中心として支承軸64及び65を支承する。その後、スプライン粗材601a〜601dをスプライン粗材601dから順にスプライン201に加工していく(図4ではスプライン粗材601bの部分を加工している)。その時にラック型ダイス71、72を用いて転造を行う。ラック型ダイス71及び72は出力軸粗材60の軸心を基準として対称(同位相)に動くようになっている。ラック型ダイス71及び72は、図5に示すスプライン粗材601bの部分に対応する間隔mを対応するスプライン201a〜201dの歯先円直径と同じか僅かに小さくする(例えばスプライン粗材601cの部分であれば間隔m1(参考までに図4の出力軸粗材60のV1−V1断面を図面右方に上下方向の間隔m1を説明するために示す。本来の左右方向の位置は図5に示すスプライン粗材601bと同位置である)に、スプライン粗材601dの部分であれば間隔m2(参考までに図4の出力軸粗材60のV2−V2断面を図面右方に上下方向の間隔m2を説明するために示す。本来の左右方向の位置は図5に示すスプライン粗材601bと同位置である)にする)。間隔を狭くする方向での調節はラック型ダイス71及び72の双方を出力軸粗材60の軸心にそれぞれ向けて同じ距離だけ移動させる。ここで、ラック型ダイス71の歯とラック型ダイス72の歯と出力ギヤ粗材66の軸心とのラック型ダイス71、72の移動方向Pにおける相対位置は、ラック型ダイス71、72が出力ギヤ粗材66の軸心を基準として2回対称になるように移動させる。従って、ラック型ダイス71、72の各々の歯と出力ギヤ粗材66の軸心との相対関係(位相)は間隔が異なっても変化しない。つまり、形成されるスプライン201の歯は出力軸20の軸心を基準として2回対称になる。ここで、径が異なるスプライン201の歯数の差を偶数にすることでラック型ダイス71、72が転造時に押圧する部分の歯の位相は同じにできるため、ラック型ダイス71、72の調節を簡単にできる。なお、上述の説明に用いた図4及び5や、以下に用いる図6においてはバックアップロールなどの記載は省略している。
【0035】
この転造工程をスプライン201の径が異なる部分について順に(本実施形態ではスプライン201a〜201dの4回)行うことでスプライン201が形成される。転造加工を行う順番は特に限定されず、径が大きい方(スプライン粗材601a)から加工を行っても良いし、反対に径が小さい方(スプライン粗材601d)から行っても良いし、径にかかわらず途中(スプライン粗材601b、601cのいずれか)から転造加工を行っても良い。
【0036】
その後、油路、油溝、油通路、周溝などを形成し、それぞれのスプライン201a〜201dについて大径研磨を行う。更に、出力ギヤ粗材66を加工して出力ギヤ26を形成する。更に必要に応じて出力ギヤ26の歯面やスプライン201の歯面に熱処理を行う。熱処理は必要なときに必要な部位に必要な回数行うことができる。また、出力ギヤ26の創製とスプライン201の創製とを行う順序については逆にしても良い。
【0037】
ダイスとしてラック型ダイスを用いた場合について説明を行ったが、図6に示すように、ローラー型ダイス73及び74を用いても同様に出力軸にスプラインを形成することができる。ローラー型ダイス73及び74を採用する場合にはスプライン粗材601a〜601dについて4回に分けて転造を行うことに代えて、スプライン粗材601a〜601dの部分をスプライン粗材601dの部分からスプライン粗材601aに向けて少しずつ軸方向に相対移動させることで順次転造を行うことができる。その場合に、ローラ型ダイス73及び74の他端部側73a及び74aが段差に至ったときに次の径にまでダイス73及び74の間隔を広げて連続的に転造加工を行うことができる。
【0038】
(変形態様)
出力軸としては図7に示すようなスプライン701の径が軸方向で同一にすることもできる。クラッチハブ、出力軸側ギヤを出力軸に配設したときに軸方向の位置決めを行うことを目的として、それぞれのクラッチハブ311〜313及び出力軸側ギヤ21〜25が配設される位置に隣接する位置に周溝703a〜703gが形成され、それぞれのクラッチハブ311〜313及び出力軸側ギヤ21〜25が配設された後、スナップリングを嵌め込んでいくことで組立が完了する。すなわち、図7において、出力軸70に対して図面左方より、それぞれのクラッチハブ311〜313及び出力軸側ギヤ21〜25を挿入していく。同一のスプラインが形成されているため円滑に挿入可能である。結果、出力ギヤ76から図面左方に向けて出力軸側ギヤ21、クラッチハブ311、出力軸側ギヤ22、出力軸側ギヤ23、クラッチハブ312、出力軸側ギヤ24、出力軸側ギヤ25、そしてクラッチハブ313の順に、それらの間にスナップリングを挟持し軸方向の移動が制限された状態で配設される。それぞれのクラッチハブ311〜313及び出力軸側ギヤ21〜25は図1に示したものと内径が僅かに異なるものの、その他の構成は同じものが採用でき、簡易的に同じ符号を付して説明している。
【0039】
本変形態様の形態を採用することにより、ダイスの幅を大きくできるため軸方向で段差を設けた出力軸20と比べ、スプライン701の転造による形成が少ない工数で行うことができる。
【0040】
(付記)
(1)上述の変速機用の出力軸は、原動機からの回転動力が入力される入力軸と、前記入力軸よりも下方に配設された出力軸と、前記入力軸に一体に設けられた複数の入力軸側ギヤと前記出力軸に相対回転可能に設けられ対応する前記入力軸側ギヤに噛合する複数の出力軸側ギヤとをもつ複数段のギヤ列と、前記出力軸側ギヤに隣接し前記出力軸に相対回転不能に配設される1以上のハブと、前記出力軸側ギヤと前記ハブとを離脱係合させるギヤ列選択機構とを有する歯車変速機構と、を有する変速装置に用いられる出力軸であって、
前記出力軸側ギヤ及び前記ハブが配設される部位の全体にわたる外周面にスプラインが形成され、且つ、前記他端部近傍に出力ギヤを有し、
前記スプラインが形成された部位は前記一端部側から前記他端部側に向けて順次階段状に拡径されていることができる。
【0041】
このような形態を採用することにより、ハブや、出力軸側ギヤの軸方向の位置決めを行う場合にスプラインの径が変化する段差の部分に当接させることができる。スプラインの形成は出力軸の外周に連続して広い範囲に行うので、スプラインの形成と共に軸方向の位置決めを行うための形状が形成されるため加工コストを低減することができる。
【0042】
(2)上記の変速機用出力軸は更に以下の構成を有することができる。すなわち、前記ハブは前記出力軸の前記スプラインにスプライン嵌合するスプライン軸受をもち、
それぞれの前記出力軸側ギヤの軸受は、前記スプラインの歯先にその内面が当接する内径をもつ円筒状であって、それぞれ前記スプライン上に相対回転可能に配設され、
前記ハブは、その前記スプライン軸受が前記出力軸の前記一端部側から前記他端部側に向けて前記スプラインの拡径部分に当接することで軸方向の位置決めがなされているものである。
【0043】
特にハブは出力軸に対して相対回転不能に固定されるため、その位置決めをスプラインの段差部分にて行っても影響が小さいからである。
【0044】
(3)上述の変速機用出力軸の製造方法は、径が異なり且つ軸方向に連続する複数のスプラインが外周に形成された出力軸を製造する方法であって、
スプラインが設けられた後の最終形状に対応する複数の径をもつ円筒形状のスプライン粗材を軸方向に連続して接続した形状をもつ出力軸粗材を製造する工程と、
前記出力軸粗材を軸心を回転軸として回動自在に保持しながら、2以上のダイスにて前記スプライン粗材の外周のそれぞれに対して順次スプラインを転造する転造工程と、を有し、
前記径が異なるスプライン間の歯数の差は前記ダイスの数の倍数で有り、
前記ダイスの位置及び位相は前記出力軸粗材の前記軸心に対して回転対称に配設され、
前記転造工程において、前記ダイスは前記位相の相対的な関係は変化させずに前記出力軸粗材の軸心からのそれぞれの距離を同じように変化させて前記スプライン粗材の径に応じてダイスの調整を行った後に転造を行うものであることができる。
【0045】
このような形態を採用することにより、加工コストの大きな部分を占めるダイスの数を少なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の変速機は上記構成を有することにより構成が簡便化されて加工コストや部品点数を低減できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7