【実施例】
【0069】
以下の実施例は本発明の実例を詳細に示すが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0070】
実施例1:アンドログラホリドとインターフェロンの併用療法を施した、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘発させたマウス
動物
C57BL/6マウスをJax(登録商標)マウス研究所から購入し、Pontificia Universidad Catolicas動物施設に収容した。動物の世話および使用は、Institutional Animal Care and Use Committeeの承認された動物使用プロトコルおよびガイドラインに従って行なった。
【0071】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の誘発および処置
ミエリン乏突起膠細胞の糖タンパク質(MOG)35−55ペプチド(MEVGWYRSPFSRVVHLYR)またはプロテオリピドタンパク質(PLP)139−151(HSLGKWLGHPDKF;CPC Scientific,Sunnyvale,CA,USA)(等量の不完全フロイントアジュバント(IFA;DIFCO,MI,USA)を含み、2.5mg/mlのヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Ra株(Difco,Detroit,MI)を補充したPBS中に1.5mg/mlで乳化)での免疫処置によってEAEを誘発させた。マウスを200mlのこの乳剤で皮下にて免疫処置した。百日咳毒素(LIST BIOLOGICAL LABS,CA,USA)200ng(200μlのPBS中)を、最初の免疫処置後0日目と2日目に腹腔内注射した。
【0072】
動物を、臨床症状について、以下のとおりにスコアリングした:0=疾患の徴候なし;1=尾の緊張消失;2=尾の弛緩;3=後肢部分麻痺;4=後肢完全麻痺;5=動物の屠殺を要する瀕死状態;6=死亡。
【0073】
IFN−βアッセイでは、C57BL/6に200μLのPBS中1μgのIFN−β(IFN−β Rebif 88μ/ml MERCK SORONO)を腹腔内投与した。対照マウスには200μLのPBSを注射した。
【0074】
IFN−βは、免疫処置後15日目から30日目まで毎日投与した。
【0075】
併用療法(CT)アッセイでは、C57BL/6に4mg/kgのアンドログラホリドとIFN−β 1ug(200μLのPBS中)を腹腔内投与した。対照マウスには200μLのPBSを注射した。
【0076】
併用療法(CT)を、免疫処置後15日目から30日目まで、毎日または2日毎のいずれかで施した。36日目に、すべての動物を屠殺した。臨床スコアを記録し、組織学的解析のために脊髄を収集した。
【0077】
組織学的調製物
マウスをイソフルランで深く麻酔し、氷冷1×PBS(25ml)、続いて4%p−ホルムアルデヒドを経心臓的に灌流させた。脊髄を解剖し、4%PFA中で4℃にて一晩、後固定した。組織を30%(w/v)スクロース中で4℃にて一晩凍結保護し、OCT化合物中に包埋し、凍結させ、低温槽で20μm厚の切片にした。
【0078】
脊髄の炎症性浸潤物
炎症性浸潤物を評価するため、ヘマトキシリンエオシン染色(H&E)を行なった。胸髄(toraxic spinal cord)切片を、Gill改変ヘマトキシリン溶液(SIGMA,USA)およびエオシンY(SIGMA,USA)で染色した。単核細胞浸潤を、4つの異なる切片の脊髄周囲部において陽性核に占有された面積として決定した。
【0079】
脊髄のミエリン染色
EAE脊髄における脱髄を評価するため、ルクソールファストブルー(LFB)染色を行なった。胸髄切片をLFB(SIGMA,USA)で染色し、ニューロン核をクレシルバイオレットで染色した。脱髄を、脊髄白質内のLFB染色のない面積として評価した。
【0080】
免疫組織化学検査
脊髄切片(20mm)を10%FCS、1%グリシンおよび0.05%Triton X−100(Sigma−Aldrich)を含有する透過化/ブロッキング溶液で処理した。一次抗体であるラット抗CD11b(1:200;BD,USA)(ブロック溶液中)を4℃の加湿チャンバ内で一晩適用した。フルオレセインとコンジュゲートさせたヤギ抗ラット二次抗体(Millipore,USA)を室温で1時間適用した。
【0081】
IFN−β(
図1)および併用療法(CT)EAEマウス(
図2)における疾患重症度
3つのMOG免疫処置C57BL/6Jマウス群(150ug MOG−ペプチド;500ug MT;200ng PT)を、IFN−β(1μgのIFN−β(IFN−β Rebif 88μ/ml MERCK SORONO)、200μLのPBS中、腹腔内)で毎日、併用療法(CT)(4mg/kgのアンドログラホリド+IFN−β 1ug)で毎日または2日毎に、慢性期の初め(免疫処置後15日目)から免疫処置後30日目まで処置した。対照として、MOG免疫処置C57BL/6JマウスにPBS(ビヒクル)を注射した。免疫処置後(p.i.)36日目にすべてのマウスを屠殺し、(スコア:PBS=2.4;CT毎日=0.17;CT2日毎=0.75)、組織学的解析のために処理した。
【0082】
併用療法では、慢性EAEマウスモデルにおいて臨床症状を有意に低減させる。
図1と2を比較すると、式Iの化合物の付加により、インターフェロンとの相乗効果がもたらされることが実証される。
【0083】
EAE処置マウスにおいて併用療法により脊髄における炎症性浸潤物が低減される(
図3)
非免疫処置マウス(NI)(左パネル)、PBS(中央パネル)または併用療法(CT)(右パネル)のいずれかで処置したMOG免疫処置マウスを灌流し、4%p−ホルムアルデヒドで固定した。脊髄を解剖し、炎症性浸潤物についてヘマトキシリン−エオシン染色によって解析した。差し込み図は高倍率(10倍)を示す。単核面積割合を、胸髄の250μmずつ離れた4つの異なる切片を用いて定量した。結果を平均±SEMとして示す。
【0084】
結果:併用療法により、慢性EAEマウスモデルにおいて脊髄細胞浸潤が低減される。
【0085】
EAE処置マウスにおいて併用療法により脊髄における炎症性浸潤物および脱髄が低減される(
図4)
非免疫処置マウス(NI)(左パネル)、PBS(中央パネル)、併用療法(CT)(右パネル)のいずれかで処置したMOG免疫処置マウスを灌流し、4%p−ホルムアルデヒドで固定した。脊髄を解剖し、炎症性浸潤物についてヘマトキシリン−エオシン染色(H&E)によって解析し、脱髄をルクソールファストブルー(LFB)染色によって評価した。差し込み図は高倍率(10倍)を示す。Aは代表的な胸髄切片を示す。Bは浸潤細胞および脱髄の拡大図を示す。
【0086】
結果:併用療法により、慢性EAEマウスモデルにおいて脊髄細胞浸潤および脱髄が低減される。
【0087】
併用療法(CT)マウスからの小グリア細胞は静止表現型を示した(
図5)
パネルAは、解剖し、マクロファージ/小グリアについて免疫蛍光検査法によって抗CD11b抗体を用いて解析した後、Alexa−fluor 488コンジェゲート二次抗体(緑)とともにインキュベーションした、非免疫処置マウス(NI)(左パネル)、PBS(中央パネル)または併用療法(CT)(右パネル)のいずれかで処置したMOG免疫処置マウスからの脊髄を示す。パネルBは、高倍率(20倍)の差し込み図を示す。
【0088】
結果:CD11b+細胞は長い突起(process)を示したのに対して、対照小グリア細胞では短くて分岐した突起を示した。併用療法により、マクロファージ浸潤、小グリア活性化またはその両方が抑制され得る。
【0089】
実施例2:ヒト多発性硬化症(MS)患者
アンドログラホリドのみを受けているMS患者
材料および方法:
被験体−患者
8名のMS患者は、なんらかの臨床的理由、または経済的制限(例えば、市販のインターフェロン薬物製剤品に対する金銭的入手性の欠如)などまたは両方のため、既存の通常の薬理学的処置を全く受けていなかった。
【0090】
アンドログラホリド製品
アンドログラホリドを、精製され、純度が標準化され、乾燥され、HP Ingredients,Inc.(Bradeton,Florida USA)から市販品で入手可能であり、アンドログラホリド35.0%(w/w)以上という同定規格(identity specification)に従うAndrographis paniculataの標準エキスとして入手した。本明細書に記載の試験に使用した材料は、HPLCによる含有量の実際の同定アッセイで、47.2%(w/w)のアンドログラホリド、2.1%(w/w)のネオアンドログラホリドおよび3.0%(w/w)の14−デオキシアンドログラホリドを有していた(質量測定値はすべて、溶媒なしでの乾燥重量を示す)。
【0091】
処置レジメン
8名の患者を全員、体重1キログラムあたり2mgのアンドログラホリド、体重1キログラムあたり0.15mgのネオアンドログラホリド、および体重1キログラムあたり0.2mgのデオキシアンドログラホリドの投薬量を毎日(経口)摂取する非盲検の42ヶ月の処置レジメンに配した。
【0092】
結果:
安全性および耐容性
42ヶ月間の処置後、試験製品に対する不耐性、有害な相互作用または反応は、いずれの患者からも担当医師からも報告されず、観察もされなかった。インターフェロンβでの処置期間中に通常予測されることとは対照的に、アンドログラホリドで処置した患者では、風邪のような副作用もなんら報告されなかった。
【0093】
42ヶ月間の処置期間中、臨床的管理手段および神経画像検査による管理手段によって測定したところ、多発性硬化症の再発を示した患者はいなかった。
【0094】
すべての患者は、感受性および神経運動機能(neuromotricity)のいくらかの部分的機能回復を示した。数名の患者では、この回復の大きさは臨床的に有意であった。
【0095】
臨床結果
1.すべての患者が、4ヶ月間の治療時に既に目立っていた痛み、疲労、痙縮のある程度の症候性コントロールおよび気分の改善を報告しているが、その効果は、併用療法(アンドログラホリドをインターフェロンと併用)を受けた群より有意に低かった。
【0096】
2.以前から非常に長期にわたって活動性疾患を有している2名の患者(それぞれ、発症時から21年および17年)は、初期再発エピソードを1回示した(処置開始後、最初の60週間以内)が、症状は非常に短期間で軽度であり、彼らが以前に受けたようなさらなる免疫抑制処置の必要はなかった。
【0097】
3.1名の患者は、臨床的に完全寛解であり、3年より長い期間が経っても症状も神経画像検査による新たな病変部も無く、単独療法のみを継続している。
【0098】
4.8名の患者のうち2名は部分的に局所機能が改善(6ヶ月目に発語障害(構語障害)および視力;12〜14ヶ月目の間に嚥下(神経性嚥下障害)および細かい運動機能(fine motricity)(筆記の回復、自力で食べる、および衛生管理)など)。
【0099】
5.8名の患者のうち1名は、散発的な機能(疲労、脚力、協調および平衡歩行など)が6ヶ月目に改善し、現在まで進歩が持続した。
【0100】
6.処置前は立ち上がることも階段を上ることもできなかった2名の患者は、30ヶ月目に重力に逆らって動かすこと(antigravity displacement)を始め、この障害からの最初の回復を4〜6ヶ月の単独療法の間に感じ始めた。
【0101】
7.磁気共鳴画像法(MRI)によって測定したとき、脳内の脱髄病変部の総数および大きさに変化なし。
【0102】
8.MRIガドリニウム造影剤取込みによって測定したとき、時間点0と比べて脱髄病変部の炎症活動のある程度の低減および42ヶ月間なお持続中)。
【0103】
インターフェロンβのみを受けたMS患者
材料および方法:
被験体−患者
再発寛解型の該疾患を有すると診断された10名のMS患者
結果:
安全性および耐容性
1.すべての患者において、12ヶ月間(継続中)のインターフェロンβの単独療法(インターフェロンβ−1a(IFNβ−1a)Avonex(r)30μg/週(im)、インターフェロンβ−1a(IFNβ−1a)Rebif(r)22μgまたは44μg/週3回(sc)のいずれか)の後、完全な安全性および耐容性
インターフェロンβ−1b(IFNβ−1b)ベタフェロン(r)/ベタセロン(Betaseron)(r)(医師の指示に従う)。試験製品に対するある程度の有害な反応がこれらの患者または医師によって報告されており、観察されている。
【0104】
2.臨床的管理手段および神経画像検査による管理手段によって測定したところ、12ヶ月の処置期間中、再発なし。
【0105】
3.8名の患者のうち6名において風邪のような症状(疼痛(ache)および痛み(pain)、発熱、悪寒、発汗または頭痛など)が出現し8、そのうち数名は、アスピリンまたはイブプロフェンの使用が必要であった。
【0106】
4.2名の患者が、処置期間中の4ヶ月目に軽度の鬱を報告した。
【0107】
臨床結果
1.すべての患者で、ANG群または併用療法(ANF+INF)を受けた群にみられたような疲労の症候性コントロールおよび気分の改善はどの度合いでも報告されなかった。
【0108】
2.(処置の最初の1年以内に)再発エピソードを示した患者はいなかった。
【0109】
3.新たな神経画像検査による病変部の出現という事実にもかかわらず、主観的健全さの臨床的徴候を示した患者はいなかった。
【0110】
4.発語障害(構語障害)および視力に対しても、嚥下(神経性嚥下障害)および細かい運動の機能に対しても改善はみられなかった。
【0111】
5.重力に逆らった動きに対する効果なし。
【0112】
6.磁気共鳴画像法(MRI)によって測定したところ、脳内の脱髄病変部の総数および大きさに変化なし。
【0113】
7.MRIガドリニウム造影剤取込みによって測定したところ、時間点0と比べて脱髄病変部の炎症活動のある程度の低減および12ヶ月間なお持続中)。
【0114】
併用療法(アンドログラホリドとインターフェロン)
材料および方法:
インターフェロンβ(IFN−β)を用いてファーストライン治療を既に受けている患者を集め、55mgのアンドログラホリドを含む経口錠剤のさらなる併用療法を1日2回、60ヶ月間受けさせた。集めた患者のうち、これまでに3名が60ヶ月の処置期間を終了した。
【0115】
結果:
1.併用療法にてインターフェロンとともに2mg/kgのアンドログラホリドを60ヶ月間、毎日経口摂取後、すべての患者において完全な安全性および耐容性
2.臨床的追跡および神経画像検査による追跡によって観察したところ、60ヶ月間、再発なし。
【0116】
3.アンドログラホリド錠剤をインターフェロンとともに投与した場合、2〜3ヶ月間の式Iの化合物の投与で観察されるように、疲労、強さおよび平衡感覚に対するCTの早期症候性相乗効果。
【0117】
4.併用療法(CT)を用い、24〜30ヶ月目の間に観察される、一部だが場合によっては有意な感受性および神経運動機能の機能回復。
【0118】
5.併用療法(CT)を用い、神経画像検査による管理手段によって測定したところ、14〜24ヶ月目の間に神経学的病変部の有意な消退。
【0119】
6.すべての患者が、4ヶ月間のCT治療時に既に目立っていた痛み、疲労、痙縮の全体として症候性コントロールおよび気分の改善を報告している。
【0120】
7.アンドログラホリド錠剤+インターフェロン(併用療法)を受けた患者は、疲労および運動機能の改善に対してより早期でより大きな効果を伴って応答した。
【0121】
8.CTでの12〜14ヶ月目の間に局所機能の改善(発語障害(構語障害)および視力、嚥下(重度の神経性嚥下障害)ならびに細かい運動の機能(筆記の回復、自力で食べる、および衛生管理)など)。
【0122】
9.CTを用いての、散発的な機能(疲労、脚力、協調および平衡歩行など)における改善。
【0123】
10.この障害からの最初の回復を、CTを用いて4〜6ヶ月目の間に感じ始め、30ヶ月目には重力に逆らった動き。
【0124】
11.CTを用いての、脳白質内の脱髄病変部の大きさおよび数の有意な低減。
【0125】
12.MRIガドリニウム造影剤取込みによって測定したところ、CTを用いての、脱髄病変部の炎症活動の低減。
【0126】
ここに本発明者の開示を示したため、当業者には、その変形例が容易に導き出され得る。例えば、アンドログラホリドの用量を増大させても、または式Iのある化合物を別のものに置き換えても同様の効果が得られ得る。したがって、本発明者らは、本発明者らの特許の法的範囲が本明細書において教示した本発明者らの具体的な実施例によってではなく、本発明者らの添付の法的特許請求の範囲および法的に許容され得るその均等物によって規定されることを意図する。