特許第5936732号(P5936732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5936732-フィルムコーティング組成物 図000016
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5936732
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】フィルムコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/02 20060101AFI20160609BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61K47/02
   A61K47/38
   A61K9/28
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-43930(P2015-43930)
(22)【出願日】2015年3月5日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502264153
【氏名又は名称】日本カラコン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 由明
(72)【発明者】
【氏名】石川 宏
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/054872(WO,A1)
【文献】 特開2005−47862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/02
A61K 9/28
A61K 47/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物と、
黄色三二酸化鉄を顔料として含む、第1のコーティング用組成物によるコーティングの後に行う第2のコーティング用組成物と
を含む、緑色フィルムコーティング用キット。
【請求項2】
第2のコーティング組成物がさらに二酸化チタンを顔料として含み、その含有量が第2のコーティング組成物の全体重量の15重量%以下である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
いずれのコーティング用組成物も酸化鉄および二酸化チタン以外の顔料を含まない、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された黄色三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む、緑色フィルムコーティング製剤。
【請求項5】
黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物を用いてフィルムコーティングを行う第1のコーティング工程と、
黄色三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティング用組成物を用いて、第1のコーティング工程によるコーティングの上にフィルムコーティングを行う第2のコーティング工程と
を含む、緑色フィルムコーティングの形成方法。
【請求項6】
黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む、赤紫色フィルムコーティング製剤。
【請求項7】
二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む、黄色または赤色フィルムコーティング製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬錠剤や食品などのフィルムコーティングのための組成物に関し、より詳細には酸化鉄および二酸化チタンを顔料として用いたフィルムコーティングを形成するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や栄養補助食品などの分野において、錠剤は最も汎用されている剤型であるといえる。錠剤には、主に、有効成分を賦形剤などと共に成形したままのものである素錠(裸錠)と、薬剤の安定化や矯味などの目的で素錠の表面に被膜を形成したコーティング錠がある。コーティング錠の製造方法としては、その容易さなどから、フィルムコーティング剤により被膜を形成したフィルムコーティング錠とする方法が広く用いられている。フィルムコーティング錠は、コーティング剤に顔料を加えることにより比較的容易に錠剤の色を変えられることも、その利点の一つである。
【0003】
例えば、特許文献1には、薬剤、糖剤および食品に用いる乾燥食用フィルム被覆組成物であって、アルミニウムレーキなどの粉末状食用顔料粒子を含むものが開示されている。特許文献2には、フィルム形成ポリマーとしてポリビニルアルコール(PVA)を、可塑剤としてポリエチレングリコールまたはグリセリンを、また流動促進剤としてタルクを含むフィルムコーティング組成物であって、特許文献1に記載されているような食用顔料を含むものが開示されている。また、特許文献3には、セルロース系ポリマー、粘着防止剤、光沢増大剤および真珠光沢顔料を含む真珠光沢フィルムコーティング組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4543370号明細書
【特許文献2】米国特許第6448323号明細書
【特許文献3】米国特許第6902609号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患者による薬の飲み間違えを防ぐなどの目的のため、様々な色のフィルムコーティング錠を提供できるようにすることが望まれている。食用の顔料について規制があまり無い国においては、フィルムコーティング剤に様々な顔料を用いることができ、様々な色のフィルムコーティング錠を製造することができる。しかし、日本のような規制が厳しい国では、既に認可されている顔料を用いて様々な色を表現せざるを得ない。
【0006】
酸化鉄は食用の顔料として日本を含む多くの国で認可されており、比較的不活性であること、および酸化などの化学反応により退色する傾向がないことから、フィルムコーティング剤にもよく用いられる顔料である。食用として認められている酸化鉄顔料には、赤色(べんがら)、黄色(鉄黄)および黒色(鉄黒)があり、やはり食用の顔料として認められている二酸化チタンと組み合わせて、ピンク、ライトゴールド、ダークオレンジおよびグレーなどの色を作り出せることが知られている。しかし、これまで既存の認可されている顔料を用いて緑色を作り出すことはできなかった。そこで、本発明は既存の認可されている顔料を用いて緑色のフィルムコーティング錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上述したような問題を検討した結果、黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物を用いてフィルムコーティングを行い、次いでその上に黄色三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティング用組成物を用いてフィルムコーティングを行う2回のフィルムコーティング工程により、緑色のフィルムコーティングを実現できることを見出した。さらに本発明者らは、その2回のフィルムコーティング工程で用いる各コーティング用組成物において顔料の組成を調整することにより、緑色以外のフィルムコーティングであって従来よりも鮮やかな発色を有するものも実現できることも併せて見出した。すなわち、本発明は少なくとも二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、少なくとも黄色または赤色のいずれかの酸化鉄顔料を含む第2のコーティングとを用いて2層フィルムコーティングを行うことにより、従来得られなかった色のフィルムコーティングを実現したものである。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物と、
黄色三二酸化鉄を顔料として含む、第1のコーティング用組成物によるコーティングの後に行う第2のコーティング用組成物と
を含む、緑色フィルムコーティング用キット。
(2)第2のコーティング組成物がさらに二酸化チタンを顔料として含み、その含有量が第2のコーティング組成物の全体重量の15重量%以下である、(1)に記載のキット。
(3)いずれのコーティング用組成物も酸化鉄および二酸化チタン以外の顔料を含まない、(1)または(2)に記載のキット。
(4)黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された黄色三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む、緑色フィルムコーティング製剤。
(5)黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物を用いてフィルムコーティングを行う第1のコーティング工程と、
黄色三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティング用組成物を用いて、第1のコーティング工程によるコーティングの上にフィルムコーティングを行う第2のコーティング工程と
を含む、緑色フィルムコーティングの形成方法。
(6)黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む、赤紫色フィルムコーティング製剤。
(7)二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む、黄色または赤色フィルムコーティング製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来用いられている認可された顔料を用いて、これまで実現されていなかった緑色のフィルムコーティング製剤を提供することが可能となる。また、これまでよりも鮮やかな発色を有する黄色、赤色または赤紫色のフィルムコーティング製剤を提供することが可能となる。フィルムコーティングにより表現可能な色が増えることは、例えば医薬品においてはユーザの飲み間違いを予防するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1〜5および比較例1〜5で得られたフィルムコーティング錠の色に関し、色差計を用いて波長550nmの反射率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、第一の態様において、黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物と、黄色三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティング用組成物とを含む、緑色フィルムコーティング用キットに関する。各コーティング用組成物は、水または有機溶媒(例えば水性アルコール)などの適切な溶媒に溶解または分散させて用いる。
【0012】
黒酸化鉄とは、示性式Fe3O4で表される酸化鉄の一種、四三酸化鉄を主成分(90重量%以上)とする黒色顔料であり、黄色三二酸化鉄は、示性式Fe2O3・H2Oで表される酸化鉄の一種を主成分(98重量%以上)とする黄色顔料である。また、二酸化チタンは白色顔料である。いずれも食用の顔料として広く用いられているものである。
【0013】
2種のコーティング用組成物を用いて緑色のフィルムコーティングを実現するためには、各組成物における顔料の含有量は以下のようにすることが好ましい。すなわち、第1のコーティング用組成物において、二酸化チタンの含有量は、組成物の全体重量の10重量%以上、特に15重量%以上であって、30重量%以下、特に25重量%以下とすることが好ましい。また、黒酸化鉄の含有量は、組成物の全体重量の0.1重量%以上、特に0.2重量%以上であって、5重量%以下、特に3重量%以下、とりわけ2重量%以下とすることが好ましい。第2のコーティング用組成物において、黄色三二酸化鉄の含有量は、組成物の全体重量の0.1重量%以上、特に0.2重量%以上であって、5重量%以下、特に3重量%以下、とりわけ2重量%以下とすることが好ましい。
【0014】
第2のコーティング用組成物は、黄色三二酸化鉄に加えて、顔料として二酸化チタンを、組成物の全体重量の0.5重量%以上、特に1重量%以上含むことが、より鮮やかな緑色の発色のために好ましい。ただし、第2のコーティング用組成物により形成するフィルムコーティングは、下層となる第1のコーティング用組成物により形成したフィルムコーティングの色を透過し、その透過光によって緑色にみえるものである必要があるため、第2のコーティング用組成物において二酸化チタンの含有量は、組成物の全体重量の15重量%以下、さらに10重量%以下、特に5重量%以下、とりわけ4重量%以下とすることが好ましい。
【0015】
第1および第2のコーティング用組成物は、酸化鉄および二酸化チタンを上記のような範囲で含有することにより、順番にコーティングした際に緑色に見えるフィルムコーティングを形成することができる。用いる成分を最小限にするという観点から、第1および第2のコーティング用組成物は酸化鉄および二酸化チタン以外の顔料を含まないことが好ましい。なお、本明細書において「緑色」とは、500〜570nmの波長を有するか、あるいはマンセル・カラー・システムでGと表現される色彩を意味する。
【0016】
第1および第2のコーティング用組成物は、顔料の他に、従来のフィルムコーティング剤に用いられているものと同様の基剤、可塑剤および滑沢剤などを含有する。
【0017】
基剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルアルコールアクリル酸メチルメタクリレートコポリマー、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフト共重合体などの水溶性コーティング基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース系腸溶性コーティング基剤、メタアクリル酸コポリマー、セラックなどのその他の腸溶性フィルムコーティング基剤、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メタアクリル酸共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アクリル酸エチル・メタアクリル酸共重合体、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、エチルセルロースなどの水不溶性コーティング基剤などが挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用できる。水溶性コーティング基剤、特にヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース類やポリビニルアルコール(部分けん化物)が好ましい。被膜の形成しやすさや、形成後の被膜の強度、あるいは得られる被膜の外観などの観点から、いずれのコーティング用組成物においても、基剤は組成物の全体重量の40重量%以上、特に50重量%以上、とりわけ60重量%以上の量を用いることが好ましい。
【0018】
可塑剤としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチルなどが挙げられるが、ポリエチレングリコールが特に好ましい。ポリエチレングリコールは、水溶性コーティング基剤との相溶性に優れ、基剤のガラス転移温度を低下させ、さらにフィルムコーティングの脆性を少なくし、高い光沢性を付与する性質を有する。ポリエチレングリコールとしては、例えばその平均分子量が190〜42,000、特に400〜9,300の範囲であるものがより好ましい。なお、上記平均分子量は、第15改正日本薬局方「マクロゴール400」の項目に記載の平均分子量試験にて測定可能である。ポリエチレングリコールの市販品としては、マクロゴール200、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、マクロゴール35000等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。いずれのコーティング用組成物においても、可塑剤は組成物の全体重量の3重量%以上、特に5重量%以上であって、30重量%以下、特に20重量%以下の量で用いることが好ましい。
【0019】
滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、沈降炭酸カルシウム、カオリン等が挙げられ、日本薬局方で規定されたタルクが特に好ましい。滑沢剤を使用する場合、粘着性の改善および被膜形成を容易にする観点から、いずれのコーティング用組成物においても、滑沢剤は組成物の全体重量の5重量%以上、特に10重量%以上であって、50重量%以下、特に40重量%以下、とりわけ30重量%以下の量で用いることが好ましい。
【0020】
第1および第2のコーティング用組成物には、上記の他に、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトールなどの糖アルコール類またはショ糖、乳糖などの糖類である味覚改善剤、ゲル化剤、界面活性剤、香料などの他の成分がさらに含まれていてもよい。
【0021】
本発明の第1および第2のコーティング用組成物を含む緑色フィルムコーティング用キットを用いてフィルムコーティングを形成する対象(被コーティング物)は、医薬品であっても、あるいは栄養補助食品や糖菓などの食品であってもよく、その形態は、圧縮錠剤、粒剤、ビーズ剤、顆粒剤などのいずれであってもよい。例えば被コーティング物が医薬品である場合、活性成分に加えて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤、活性成分の溶解補助剤等、通常この分野で常用され得る種々の添加剤が含まれる。賦形剤としては、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、結合剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん等が挙げられる。崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。また、滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。更に、活性成分の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。
【0022】
本発明の緑色フィルムコーティング用キットを用いて被コーティング物にフィルムコーティングを行う方法には、黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物を適切な濃度となるよう水または有機溶媒に溶解または分散させてフィルムコーティングを行う第1のコーティング工程と、黄色三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティング用組成物を適切な濃度となるよう水または有機溶媒に溶解または分散させて、第1のコーティング工程によるコーティングの上にフィルムコーティングを行う第2のコーティング工程とが含まれる。フィルムコーティングを行う方法としては、当技術分野において周知の標準的なフィルムコーティング装置を用いて、パンコーティング法、流動コーティング法、転動コーティング法などにより行うことができる。それぞれのコーティング工程は、コーティング剤の付与と乾燥からなる一連のコーティング過程を1回のみ行うものであってもよく、あるいは複数回行うものであってもよい。
【0023】
本発明は別の側面において、上述した方法により調製される、黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された黄色三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む、緑色フィルムコーティング製剤に関する。本発明の製剤におけるフィルムコーティングの量は、被コーティング物の光や湿気などからの保護、苦みなどの不快な味覚の軽減などの目的が十分達成されるよう、第1および第2のコーティングを合わせて1μm以上、特に5μm以上、とりわけ10μm以上、さらに20μm以上となるようにすることが好ましい。第2のコーティングは、第1のコーティングの色を透過させることにより、透過光とそれ自身の色とをあわせて緑色にみえるようにする必要がある。そのため、第2のコーティング用組成物において二酸化チタンの含有量は、組成物の全体重量の15重量%以下、さらに10重量%以下、特に5重量%以下、とりわけ4重量%以下とすることが好ましい。コーティングによる被コーティング物の重量増加は、例えば被コーティング物が直径5〜15mm程度あるいはそれに準じるサイズの錠剤の場合、1〜10重量%、特に2〜5重量%の範囲とすることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、第二の態様において、黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物と、三二酸化鉄を顔料として含む、第1のコーティング用組成物によるコーティングの後に行う第2のコーティング用組成物とを含む、赤紫色フィルムコーティング用キット、ならびに該キットを用いた赤紫色フィルムコーティングの形成方法および該方法によりフィルムコーティングを形成して得られる、黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む赤紫色フィルムコーティング製剤に関する。
【0025】
三二酸化鉄は、Fe2O3を主成分(98重量%以上)とする、別名べんがらとも称される赤色顔料である。上述した緑色フィルムコーティング用キットにおいて、用いている黄色三二酸化鉄を赤色の三二酸化鉄に置き換えることにより、緑色ではなく赤紫色フィルムコーティング用キットとすることができる。なお、本明細書において「赤紫色」とは、700〜800nmの波長を有するか、あるいはマンセル・カラー・システムでRPと表現される色彩を意味する。本発明による2層フィルムコーティングによれば、同じ組成で1層フィルムコーティングした場合と比較してより鮮やかな発色を得ることができる。
【0026】
赤紫色フィルムコーティング用キットにおいて、各組成物における顔料の含有量は以下のようにすることが好ましい。すなわち、第1のコーティング用組成物において、二酸化チタンの含有量は、組成物の全体重量の10重量%以上、特に15重量%以上であって、30重量%以下、特に25重量%以下とすることが好ましい。また、黒酸化鉄の含有量は、組成物の全体重量の0.1重量%以上、特に0.2重量%以上であって、5重量%以下、特に3重量%以下、とりわけ2重量%以下とすることが好ましい。第2のコーティング用組成物において、三二酸化鉄の含有量は、組成物の全体重量の0.01重量%以上、特に0.02重量%以上であって、1重量%以下、特に0.5重量%以下、とりわけ0.1重量%以下とすることが好ましい。第2のコーティング用組成物は、三二酸化鉄に加えて顔料として二酸化チタンを組成物の全体重量の15重量%以下、さらに10重量%以下、特に5重量%以下、とりわけ3重量%以下で含んでいてもよい。各コーティング用組成物の組成や、本発明のキットを用いたフィルムコーティング方法などについては、既に緑色フィルムコーティング用キットについて既に説明したとおりである。
【0027】
また、本発明は、第三の態様において、二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物と、黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄を顔料として含む、第1のコーティング用組成物によるコーティングの後に行う第2のコーティング用組成物とを含む、黄色または赤色フィルムコーティング用キット、ならびに該キットを用いた黄色または赤色フィルムコーティングの形成方法および該方法によりフィルムコーティングを形成して得られる、二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティングと、前記第1のコーティングの上に形成された黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄を顔料として含む第2のコーティングとを含む、黄色または赤色フィルムコーティング製剤に関する。
【0028】
上述した緑色フィルムコーティング用キットにおいて、第1のコーティング用組成物において黒酸化鉄を用いない場合、第2のコーティング用組成物で黄色三二酸化鉄を用いれば黄色フィルムコーティング用キットとすることができ、あるいは第2のコーティング用組成物で赤色の三二酸化鉄を用いれば赤色フィルムコーティング用キットとすることができる。なお、本明細書において「黄色」とは580〜600nm、特に580〜595nmの波長を有するか、あるいはマンセル・カラー・システムでYと表現される色彩を意味し、「赤色」とは600〜750nm、特に610〜750nmの波長を有するか、あるいはマンセル・カラー・システムでRと表現される色彩を意味する。本発明による2層フィルムコーティングによれば、同じ組成で1層フィルムコーティングした場合と比較してより鮮やかな発色を得ることができる。
【0029】
黄色または赤色フィルムコーティング用キットにおいて、各組成物における顔料の含有量は以下のようにすることが好ましい。すなわち、第1のコーティング用組成物において、二酸化チタンの含有量は、組成物の全体重量の10重量%以上、特に15重量%以上であって、30重量%以下、特に25重量%以下とすることが好ましい。第2のコーティング用組成物において、黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄の含有量は、組成物の全体重量の0.01重量%以上、特に0.02重量%以上であって、1重量%以下、特に0.5重量%以下、とりわけ0.1重量%以下とすることが好ましい。第2のコーティング用組成物は、黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄に加えて顔料として二酸化チタンを組成物の全体重量の15重量%以下、さらに10重量%以下、特に5重量%以下、とりわけ3重量%以下で含んでいてもよい。各コーティング用組成物の組成や、本発明のキットを用いたフィルムコーティング方法などについては、既に緑色フィルムコーティング用キットについて既に説明したとおりである。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
1-1. 緑色フィルムコーティング錠の調製
(実施例1)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを2.55g、二酸化チタンを6g、および黒酸化鉄を0.075g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを7.95g、二酸化チタンを0.6g、および黄色三二酸化鉄を0.075g添加し、45分間攪拌しフィルムコーティング液2を調製した。
【0032】
通常の製法により調製された、粉末セルロース、部分アルファー化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムからなる錠剤1kgを、コーティング装置(LABCOAT M、O'Hara製)に投入し、フィルムコーティング液1を噴霧した。フィルムコーティング液1の噴霧終了後、引き続きフィルムコーティング液2を噴霧しフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施例2)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを2.475g、二酸化チタンを6g、および黒酸化鉄を0.15g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを7.875g、二酸化チタンを0.6g、および黄色三二酸化鉄を0.15g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液2を調製した。
【0035】
実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液1およびフィルムコーティング液2を順に噴霧してフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
(実施例3)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを2.4g、二酸化チタンを6g、および黒酸化鉄を0.225g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを7.35g、二酸化チタンを1.2g、および黄色三二酸化鉄を0.075g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液2を調製した。
【0038】
実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液1およびフィルムコーティング液2を順に噴霧してフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
(実施例4)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを2.325g、二酸化チタンを6g、および黒酸化鉄を0.3g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを7.875g、二酸化チタンを0.6g、および黄色三二酸化鉄を0.15g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液2を調製した。
【0041】
実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液1およびフィルムコーティング液2を順に噴霧してフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
(実施例5)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを2.175g、二酸化チタンを6g、および黒酸化鉄を0.45g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを7.275g、二酸化チタンを1.2g、および黄色三二酸化鉄を0.15g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液2を調製した。
【0044】
実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液1およびフィルムコーティング液2を順に噴霧してフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
(比較例1)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを5.25g、二酸化チタンを3.3g、黒酸化鉄を0.0375g、および黄色三二酸化鉄を0.0375g添加し45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
【0047】
(比較例2)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロース19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを5.175g、二酸化チタンを3.3g、黒酸化鉄を0.075g、および黄色三二酸化鉄を0.075g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
【0048】
(比較例3)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを4.875g、二酸化チタンを3.6g、黒酸化鉄を0.1125g、および黄色三二酸化鉄を0.0375g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
【0049】
(比較例4)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを5.1g、二酸化チタンを3.3g、黒酸化鉄を0.15g、および黄色三二酸化鉄を0.075g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
【0050】
(比較例5)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを4.725g、二酸化チタンを3.6g、黒酸化鉄を0.225g、および黄色三二酸化鉄を0.075g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例1と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
比較例1〜5で得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
1-2. 目視試験
実施例1〜5および比較例1〜5で得られたフィルムコーティング錠の色を、それぞれコーティング組成が同じもの同士について目視で比較したところ、いずれも実施例で得られたフィルムコーティング錠のほうが、よりきれいな緑色であると判断された。
【0053】
1-3. 色調測定
実施例1〜5および比較例1〜5で得られたフィルムコーティング錠の色に関し、色差計(Datacolor International製)を用いて、波長550nm(緑色の波長に相当)の反射率を測定した。結果を表7および図1のグラフに示す。実施例1〜5で得られたフィルムコーティング錠は、比較例1〜5で得られたフィルムコーティング錠と比べて、波長550nmにおける反射率が高かった。
【0054】
【表7】
【0055】
2-1. フィルムコーティング錠の調製
(実施例6)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを2.55g、二酸化チタンを6g、および黒酸化鉄を0.075g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを8.61825gおよび三二酸化鉄を0.00675g添加し、45分間攪拌しフィルムコーティング液2を調製した。
【0056】
通常の製法により調製された、粉末セルロース、部分アルファー化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムからなる錠剤1kgを、コーティング装置(LABCOAT M、O'Hara製)に投入し、フィルムコーティング液1を噴霧した。フィルムコーティング液1の噴霧終了後、引き続きフィルムコーティング液2を噴霧し赤紫色のフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表8に示す。
【0057】
【表8】
【0058】
(実施例7)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを2.325g、二酸化チタンを6g、および黒酸化鉄を0.3g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを6.795g、二酸化チタンを1.8g、および三二酸化鉄を0.03g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液2を調製した。
【0059】
実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液1およびフィルムコーティング液2を順に噴霧して赤紫色のフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表9に示す。
【0060】
【表9】
【0061】
(実施例8)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを2.325g、二酸化チタンを6g、および黒酸化鉄を0.3g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを6.81g、二酸化チタンを1.8g、および三二酸化鉄を0.015g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液2を調製した。
【0062】
実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液1およびフィルムコーティング液2を順に噴霧して赤紫色のフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表10に示す。
【0063】
【表10】
【0064】
(実施例9)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.95g、タルクを2.55g、および二酸化チタンを6g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.95g、タルクを7.2g、二酸化チタンを1.2g、および黄色三二酸化鉄を0.015g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液2を調製した。
【0065】
実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液1およびフィルムコーティング液2を順に噴霧して黄色のフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表11に示す。
【0066】
【表11】
【0067】
(実施例10)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.95g、タルクを2.55g、および二酸化チタンを6g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液1を調製した。次に、別途用意した精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.95g、タルクを7.935g、二酸化チタンを0.6g、および三二酸化鉄を0.015g添加し、45分間攪拌してフィルムコーティング液2を調製した。
【0068】
実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液1およびフィルムコーティング液2を順に噴霧して赤色のフィルムコーティング錠を得た。得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表12に示す。
【0069】
【表12】
【0070】
(比較例6)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを5.54325g、二酸化チタンを3g、黒酸化鉄を0.075g、および三二酸化鉄を0.00675g添加し45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧して赤紫色のフィルムコーティング錠を得た。
【0071】
(比較例7)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを5.545g、二酸化チタンを3.9g、黒酸化鉄を0.15g、および三二酸化鉄を0.03g添加し45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧して赤紫色のフィルムコーティング錠を得た。
【0072】
(比較例8)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを4.56g、二酸化チタンを3.9g、黒酸化鉄を0.15g、および三二酸化鉄を0.015g添加し45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧して赤紫色のフィルムコーティング錠を得た。
【0073】
(比較例9)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを4.95g、二酸化チタンを3.6g、および黄色三二酸化鉄を0.075g添加し45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧して黄色のフィルムコーティング錠を得た。
【0074】
(比較例10)
精製水210gに、ヒドロキシプロピルセルロースを19.5g、マクロゴール400を1.875g、タルクを5.0175g、二酸化チタンを3.6g、および三二酸化鉄を0.0075g添加し45分間攪拌してフィルムコーティング液を調製した。実施例6と同様に、通常の製法により調製された錠剤1kgをコーティング装置に投入し、フィルムコーティング液を噴霧して赤色のフィルムコーティング錠を得た。
比較例6〜10で得られたフィルムコーティング錠におけるコーティング組成を表13に示す。
【0075】
【表13】
【0076】
2-2. 色差測定試験
実施例6〜10および比較例6〜10で得られたフィルムコーティング錠の色に関し、色差計を用いてフィルムコーティング錠の色を測定した。結果を表14に示す。実施例6〜10で得られたフィルムコーティング錠は、比較例6〜10で得られたフィルムコーティング錠と比べてa値やb値が高く、より鮮やかな色をしていた。
【0077】
【表14】
【要約】
【課題】本発明は既に認可されている顔料を用いて緑色のフィルムコーティング錠を提供できるようにすることを目的とする。また、従来よりも鮮やかな発色を有するフィルムコーティング錠を提供することも併せて目的とする。
【解決手段】黒酸化鉄と二酸化チタンを顔料として含む第1のコーティング用組成物と、黄色三二酸化鉄を顔料として含む、第1のコーティング用組成物によるコーティングの後に行う第2のコーティング用組成物とを含む緑色フィルムコーティング用キットを用いることにより、緑色のフィルムコーティングを形成可能とする。また、各コーティング用組成物において顔料の組成を調整することにより、緑色以外のフィルムコーティングであって従来よりも鮮やかな発色を有するものも形成可能とする。
【選択図】図1
図1