【実施例】
【0036】
以下に、実施例を示し、本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
[第1工程]ペルオキソチタン酸水溶液(A液)の製造
四塩化チタンの60%(重量/容量)水溶液39.6mlを蒸留水で4000mlとした溶液に2.5%(重量/容量)アンモニア水、440mlを滴下して水酸化チタンを沈殿させた。沈殿物をろ取し、蒸留水で洗浄後、蒸留水を加えて720mlとした水酸化チタン懸濁液に、30%(重量/容量)の過酸化水素水、80mlを加えて攪拌した。7℃において24時間放置して余剰の過酸化水素水を分解させて、黄色粘性液体1000mlを得た。
【0037】
[第2工程]B液の製造
第一工程で得られたペルオキソチタン酸水溶液を耐圧ガラス容器に密閉して水浴中で12時間煮沸(98〜100℃)したところ、淡黄色半透明の1.00%(重量/容量)のアナターゼ型酸化チタン分散液が生成した。
1.00%(重量/容量)のアナターゼ型酸化チタン分散液100mlに対し、金属銀として0.1%(重量/容量)の銀を含む硝酸銀水溶液を0.1ml加え、1×10
−6%(重量/容量)撹拌・混合しての銀を含むB液を作成した。
【0038】
[第3工程]ペルオキソチタン酸水溶液(A液)を内装面に塗布し乾燥する工程
第1工程で製造したペルオキソチタン酸水溶液(A液)を、噴射スプレーを用いてスライドガラス上に10ml/m
2の量で塗布して、25℃で乾燥することによって、ペルオキソチタン酸膜を製造した。
【0039】
[第4工程]B液を塗布し乾燥する工程
第3工程で製造したA液を塗布し乾燥したスライドガラス板の上に、第2工程で製造したB液を、10ml/m
2の量で塗布して、40℃で乾燥することによって、実施例1のアナターゼ型酸化チタンを含有する内装用複合膜を塗布した試料を得た。
【0040】
(実施例2)
[第1工程]A液の製造
60%(重量/容量)四塩化チタン水溶液、5.00mlを蒸留水で500mlに希釈した溶液に、30%(重量/容量)過酸化水素水、20mlを加えて攪拌して褐色の透明液体を作製し、この溶液に10%アンモニア水(濃アンモキア水1容量部:水9容量部)を滴下してpHを7とし、黄色透明の溶液を作製した。得られた溶液を25℃で一昼夜放置し、黄色の析出沈殿物を生成させた。これを、ろ取し、洗浄後、蒸留水を加えて約150mlとし、陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B、H型)及び陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410、OH型)をそれぞれ25gずつ投入して30分間放置し、ろ過してイオン交換樹脂を取り除いた後、蒸留水で約180mlとし、氷水で冷却し、30%(重量/容量)過酸化水素水、20mlを加えて冷却することによって、1時間後に透明黄色液体のA液、200mlを得た。
第2工程〜第4工程は、実施例1と同様に行って実施例2のアナターゼ型酸化チタンを含有する内装用複合膜を塗布した試料を得た。
【0041】
(実施例3)
[第1工程]A液の製造
実施例1と同様にしてA液を得た。
[第2工程]B液の製造
第一工程で得られたペルオキソチタン酸水溶液を耐圧ガラス容器に封入して水浴中で12時間煮沸(98〜100℃)したところ、淡黄色半透明の1.00%(重量/容量)のアナターゼ型酸化チタン分散液を得た。1.00%(重量/容量)のアナターゼ型酸化チタン分散液100mlに対し、金属白金として0.001%(重量/容量)の白金ナノコロイド(特許文献8を参照)を含む水溶液を0.1ml加え、1×10
−8重量部(重量/容量)の白金ナノコロイドを含む1.00%(重量/容量)のB液を作成した。
第3工程及び第4工程は、実施例1と同様に行って実施例3のアナターゼ型酸化チタンを含有する内装用複合膜を塗布した試料を得た。
【0042】
(比較例1)
実施例1の第2工程で得たB液を、スライドガラス上に10ml/m
2の量を塗布し、40℃で乾燥、加熱処理することによって、比較例1のアナターゼ型酸化チタン複合膜が塗布した試料を得た。
【0043】
(比較例2)
実施例1の第1工程で得たペルオキソチタン酸水溶液(A液)を、スライドガラス上に10ml/m
2の量を塗布して、40℃で乾燥することによって、比較例2アナターゼ型酸化チタン複合膜を塗布した試料が得られた。
【0044】
(比較例3)
実施例1と同様に、但し第2工程で硝酸銀を加えずにアナターゼ型酸化チタン複合膜を塗布した試料を得た。
【0045】
(試験例1)酸化窒素除去試験
試料 :実施例1〜3及び比較例1、2の試験片、及びガラス片
試験方法:JIS R 1701−1:2004,ファインセラミックス−光触媒材料
の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能 6.1,6.2
試験機関:株式会社 環境技術研究所
結果を表1に示す。
触媒膜及びアンダーコーを有する実施例1〜3は、優れた酸化窒素除去作用を有
することが示された。
比較例1は、アナターゼ型酸化チタンの光触媒膜を有するが、成膜性が良くない
ために、酸化窒素除去作用が実施例1〜3より劣る。
触媒膜を有していない比較例2及びガラス片は、酸化窒素除去作用を有していな
い。
【表1】
【0046】
(試験例2)活性酸素遮蔽試験
試料 :10cm×10cmの表面を磨いた木片に、0.1molメチレンブルーの
エタノール溶液を均等に噴霧して活性酸素遮蔽試験片を作成した。
実施例1〜3及び比較例1、2の方法に従って、但しガラス片の代わりに上
記の活性酸素遮蔽試験片を用いて活性酸素遮蔽試験用の試料を作成し、暗所
で25℃で2日間乾燥した。
試験方法 1)0.1molメチレンブルー、及びそれ2倍及び4倍に希釈した溶液を
塗布した標準色調片を作成した。
2)ガラス片の代わりに上記の活性酸素遮蔽試験片を用いて試料から10
cm離して、照度5000ルックスの蛍光灯で照射して試験片の色相の変化
を観測し、下記の評価用語に従って評価した。
4:変化なし
3:2倍に希釈した標準色調片と同等の色調になった
2:4倍に希釈した標準色調片と同等の色調になった
1:青色が殆ど消失した
0:青色が完全に消失した
結果 結果を表2に示す。
触媒膜を有し、アンダーコートを有していない比較例1は、メチレンブルーが
速に退色し、活性酸素が基材に達していることが示された。
触媒膜及びアンダーコートを有する実施例1〜3は、メチレンブルーの退色速
度が遅く、アンダーコートが活性酸素の侵襲を防いでいることが示された。
【表2】
【0047】
(試験例3)抗菌試験
試料 :実施例1、3及び比較例3の試験片
試験機関:社団法人京都微生物研究所
試験方法:光照射フィルム密着法(明条件、暗条件)
「抗菌性技術協議会の光照射フィルム密着法」に従い、蛍光灯照射(550
0lx、10cm)/非照射試験片上に滴下した菌液中の菌液について、
24時間後に生菌数を測定した。
結果 結果を表3に示す。
触媒膜、アンダーコート、及び貴金属を含む実施例1の試験片は、明条件及び
暗条件下の何れにおいても抗菌活性を有すが、貴金属を含まない比較例1、3
の試験片は、明条件下で抗菌活性を有するが、暗条件下では抗菌活性を有さな
いことが示された。
【表3】