特許第5936738号(P5936738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5936738
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】計測システム及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/32 20060101AFI20160609BHJP
   G01L 11/02 20060101ALI20160609BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   G01K11/32 D
   G01L11/02
   G02B6/02 416
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-78376(P2015-78376)
(22)【出願日】2015年4月7日
【審査請求日】2015年9月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 第23回日本ソノケミストリー討論会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000124959
【氏名又は名称】株式会社カイジョー
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100122541
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 友彰
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(72)【発明者】
【氏名】杉山 晋
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−130467(JP,A)
【文献】 特開2004−309219(JP,A)
【文献】 特開2013−127479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/32
G01L 11/02
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの入射光を入力すると外部圧力・外部温度に応じた所定波長の反射光を出力するFBG部を有し、当該反射光に基づく反射光信号を出力するFBGセンサと、
前記外部圧力・外部温度に変化を引き起こす超音波照射素子と、
前記FBGセンサから反射光信号を収集し、収集した複数の反射光信号に対応する複数の波長値データを作成するとともに、当該複数の波長値データから構成されて前記反射光の波長の経時的な変化を示す波形データを作成する波長分析手段と、
前記波長値データに基づいて外部に生じた温度変化にかかる温度値データを算出する温度値データ算出手段と、
前記波形データをスペクトル解析し、前記超音波照射素子が発振する周波数成分のスペクトル強度から圧力値データを算出する圧力値データ算出手段と、
を有することを特徴とする計測システム。
【請求項2】
前記温度値データ算出手段は、複数の前記波長値データから算出した代表波長値データと、当該代表波長値データと外部変化が生じていない状態での波長値データの初期値との差分に基づき前記温度値データを算出することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記温度値データ算出手段は、前記波形データをフーリエ変換することにより抽出した直流成分から前記温度変化にかかる温度値データを算出することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項4】
光源からの入射光を入力すると超音波照射素子によって引き起こされた外部圧力・外部温度の変化に応じた所定波長の反射光をFBG部から出力し、当該反射光に基づく反射光信号を出力するステップと、
前記ステップでの反射光信号を収集し、収集した複数の反射光信号に対応する複数の波長値データを作成するとともに、当該複数の波長値データから構成されて前記反射光の波長の経時的な変化を示す波形データを作成するステップと、
前記波長値データに基づいて外部に生じた温度変化にかかる温度値データを算出するステップと、
前記波形データをスペクトル解析し、前記超音波照射素子が発振する周波数成分のスペクトル強度から圧力値データを算出するステップと、
を実行することを特徴とする計測方法。
【請求項5】
前記温度値データを算出する際に、複数の前記波長値データから算出した代表波長値データと、当該代表波長値データと外部変化が生じていない状態での波長値データの初期値との差分に基づき前記温度値データを算出することを特徴とする請求項に記載の計測方法。
【請求項6】
前記温度値データを算出する際に、前記波形データをフーリエ変換することにより抽出した直流成分から前記温度変化にかかる温度値データを算出することを特徴とする請求項に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理現象に対応するデータに基づいて前記物理現象の温度値と圧力値とを計測する計測システム及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物理現象を検出するセンサとしてファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg grating:FBG)センサが開発されており、このFBGセンサは研究分野および産業分野において広範囲に応用されている(例えば、特開2010−286836号など)。
【0003】
前記ファイバブラッググレーティングセンサにはグリッドが存在しており、前記ファイバブラッググレーティングセンサに入射した入射光の一部が前記グリッドで反射するとともに残りの前記入射光が前記グリッドを透過する構造になっている。前記入射光の反射に伴うファイバブラッググレーティングセンサの伸縮に起因して反射波長がシフトし、そのシフト量に基づいて歪量のデータを取得するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−286836号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「次世代センサハンドブック」 培風館 2008年7月8日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、前記ファイバブラッググレーティングセンサにおける入射光の反射に伴う波長変化は、外部圧力・外部温度の変化に基づいて引き起こされるものであるとの知見を得た。
【0007】
前記ファイバブラッググレーティングセンサにより取得するデータに含まれている外部圧力・外部温度の変化の情報を分離して個別のデータとして取り出すことが可能になれば、前記ファイバブラッググレーティングセンサの応用範囲を更に拡大することができるものである。
【0008】
本発明の目的は、外部圧力と外部温度とのデータを分離して個別のデータとして取得することを可能にした計測システム及び計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る計測システムは、光源からの入射光を入力すると外部圧力・外部温度に応じた所定波長の反射光を出力するFBG部を有し、当該反射光に基づく反射光信号を出力するFBGセンサと、前記外部圧力・外部温度に変化を引き起こす超音波照射素子と、前記FBGセンサから反射光信号を収集し、収集した複数の反射光信号に対応する複数の波長値データを作成するとともに、当該複数の波長値データから構成されて前記反射光の波長の経時的な変化を示す波形データを作成する波長分析手段と、前記波長値データに基づいて外部に生じた温度変化にかかる温度値データを算出する温度値データ算出手段と、前記波形データをスペクトル解析し、前記超音波照射素子が発振する周波数成分のスペクトル強度から圧力値データを算出する圧力値データ算出手段と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
前記温度値データ算出手段は、複数の前記波長値データから算出した代表波長値データと、当該代表波長値データと外部変化が生じていない状態での波長値データの初期値との差分に基づき前記温度値データを算出することを特徴とするものである。
【0011】
前記温度値データ算出手段は、前記波形データをフーリエ変換することにより抽出した直流成分から前記温度変化にかかる温度値データを算出することを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る計測方法は、光源からの入射光を入力すると超音波照射素子によって引き起こされた外部圧力・外部温度の変化に応じた所定波長の反射光をFBG部から出力し、当該反射光に基づく反射光信号を出力するステップと、前記ステップでの反射光信号を収集し、収集した複数の反射光信号に対応する複数の波長値データを作成するとともに、当該複数の波長値データから構成されて前記反射光の波長の経時的な変化を示す波形データを作成するステップと、前記波長値データに基づいて外部に生じた温度変化にかかる温度値データを算出するステップと、前記波形データをスペクトル解析し、前記超音波照射素子が発振する周波数成分のスペクトル強度から圧力値データを算出するステップと、を実行することを特徴とするものである。
【0015】
前記温度値データを作成する際に、複数の前記波長値データから算出した代表波長値データと、当該代表波長値データと外部変化が生じていない状態での波長値データの初期値との差分に基づき前記温度値データを算出することを特徴とするものである。
【0016】
前記温度値データを算出する際に、前記波形データをフーリエ変換することにより抽出した直流成分から前記温度変化にかかる温度値データを算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、FBGセンサが出力する反射光信号を収集し、収集した複数の反射光信号に対応する複数の波長値データを作成するとともに、当該複数の波長値データから構成されて前記反射光の波長の経時的な変化を示す波形データを作成し、前記波長値データに基づいて外部に生じた温度変化にかかる温度値データを算出し、前記波形データに基づいて外部に生じた圧力変化にかかる圧力値データを算出するため、外部圧力と外部温度とのデータを分離して個別のデータとして取得することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る計測システムを示す機能ブロック図である。
図2図1に示したFBGセンサの具体的構成を示す機能ブロック図である。
図3図1に示した制御手段の具体的構成を示す機能ブロック図である。
図4】(a)は、本発明の実施形態に係る計測システムを超音波洗浄装置に適用した構成図、(b)は、ファイバブラッググレーティングセンサのFBG波長を示す特性図である。
図5図1に示す波長分析手段が生成した波形データをデフォルメして図示した特性図である。
図6図1に示す波長分析手段が生成した波形データの一部を所定時間で区切って抽出(拡大)した特性図である。
図7図1に示す波長分析手段が生成した波形データをフーリエ変換(FFT処理)して求めたスペクトル強度(FFT強度)を示す特性図である。
図8】超音波の周波数を低周波側の26kHzに設定し、その周波数の下での印加電力を5W,10W,25W,50Wに変化させた場合における波形データと振幅とを図示している特性図である。
図9】超音波の周波数を中間周波側の130kHzに設定し、その周波数の下での印加電力を10W,25W,50Wに変化させた場合における波形データと振幅とを図示している特性図である。
図10】超音波の周波数を中間周波側の200kHzに設定し、その周波数の下での印加電力を10W,25W,50W,100Wに変化させた場合における波形データと振幅とを図示している特性図である。
図11】超音波の周波数を高周波側の430kHzに設定し、その周波数の下での印加電力を10W,25W,50W,100Wに変化させた場合における波形データと振幅Sとを図示している。
図12】超音波の周波数をそれぞれ26kHz,130kHz,200kHz,430kHzに設定した場合における、電力と変化量RMS及びスペクトル強度(FFT強度)との関係を示す特性図である。
図13】(a)は、超音波洗浄装置において超音波照射素子によって溶液に照射される超音波の圧力(音圧)や溶液の温度を計測する場合を示す概略図、(b)は、超音波の周波数を78kHzとし、電力を50Wとした場合における変化量RMS(pm)とスペクトル強度(FFT強度)(dB)との深さ方向での変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る計測システム1の全体を示す図であり、図1に示す本発明の実施形態に係る計測システム1は、ファイバブラッググレーティングセンサ20(以下、FBGセンサ20)と、波長分析手段30と、制御手段40とから構成されている。次に、図1に示す計測システムを構築する各構成の具体的内容について詳述する。
【0023】
図1に示す前記FBGセンサ20は図2に示すように、端部にFBG部21aを有する光ファイバ21と、入射光L1を光ファイバ21に照射する光源22と、光ファイバ21からの反射光L2を受光する検出器23と、光ファイバ21と光源22と検出器23とを光学的に結合する分波器24から構成されている。図2では、前記入射光L1及び前記反射光L2を矢印にて明記している。
図2に示す前記光ファイバ21のFBG部21aには、公知のファイバブラッググレーティング構造が形成されており、前記光ファイバ21のFBG部21aは光源22からの入射光L1を入力すると外部圧力・外部温度に応じた所定波長の反射光L2を出力する。
図2に示す光源22は、例えば1500nm近傍の波長λ1を有するレーザ光を発振する半導体レーザLD(レーザダイオード)で構成されている。
図2に示す検出器23は、CCDやCMOS、フォトダイオード(PD)のように受光した反射光L2に基づき電気信号(本発明の反射光信号に相当する)を生成して外部に出力する装置として構成される。
図2に示す分波器24は、例えば光サーキュレータであり、前記光源22からの入射光L1を光ファイバ21に入射させ、前記FBG部21aで反射された反射光L2を検出器23へ導くように構成される。
【0024】
上述したFBGセンサ20においては、光源22からの入射光L1を入力(入射)させると、FBG部21aが外部圧力・外部温度に応じた所定波長の反射光L2を出力し、FBGセンサ20は、前記FBG部21aが出力する前記反射光L2に基づく反射光信号を出力する。前記FBG部21aは、前記入射光L1の一部を反射させて反射光L2を出力(出射)するものであり、その反射光L2はFBG波長λB(図4(b))を有している。
ここで、前記反射光L2が有するFBG波長λBは、外力圧力・外部温度によって変化するという知見を得ている。具体的に、本発明の実施形態に係る計測システム1において用いたFBGセンサ20では、外部圧力によって1mのFBGセンサ20が0.8μm伸びた(伸縮した)場合(外力的な歪が生じる)、FBG波長λBが1pm伸び(伸縮し)、外部温度(歪)が0.1℃上昇するとFBG波長λBが1pm伸びる(伸縮する:波長が長くなる)ことが分かっている。
【0025】
図1に示す波長分析手段30は、例えばFFTアナライザによって構成される。図1に示す波長分析手段30は、図2に示す検出器23が出力する電気信号(反射光信号)を所定のレート(サンプリングレート)に基づいて収集(サンプリング)し、さらに、収集した電気信号のそれぞれの反射光の波長(nm)を算出して前記収集した複数の反射光信号に対応した複数の波長値データを作成する機能を有する。
さらに、図1に示す波長分析手段30は、前記機能に加えて、前記作成した波長値データを時間軸に沿ってプロットすることによって反射光の波長の経時的な変化を示す波形データを作成する機能を有する。
さらに、波長分析手段30は、フーリエ変換(FFT処理・解析)を実行して、時間領域で表示されている前記波形データをスペクトル解析し、周波数成分ごとのスペクトルの大きさ(強度:FFT強度)を検出することが可能となっている。
なお、上述した波形データやフーリエ変換(FFT処理)の結果は、図1に示す波長分析手段30に設けたディスプレイに表示させることも可能であるし、後述するように、図1に示す制御手段40に設けたディスプレイに表示させることができる。
【0026】
図1に示す制御手段40は図3に示すように、パーソナルコンピュータ(PC)で構成することができ、指令部41と解析部42とを有する。
今回使用した測定装置は光源22、分波器24、検出器23、および制御手段40を含みアンリツ社製(Anritsu社)の超高速FBGセンサモニタを用いている。
図3に示す指令部41は、図2に示すFBGセンサ2の光源22に指令を与えたり、図1に示す波長分析手段30からのデ一タを受信したりするなどして、図1に示す計測システム1の動作全般を制御するものであり、ソフトウェアとして実装されるものである。
図3に示す解析部42は、図3に示す指令部41と同様にソフトウェアとして実装されるものであり、図3に示す解析部42は図1に示す波長分析手段30が作成した前記波長値データに基づいて外部に生じた温度変化にかかる温度値データを算出する温度値データ算出手段43と、前記図1に示す波長分析手段30が作成した前記波形データに基づいて外部に生じた圧力変化にかかる圧力値データを算出する圧力値データ算出手段44とを含んでいる。
【0027】
図4(a)は、本発明の実施形態に係る計測システム1を、超音波洗浄装置50において、超音波照射素子51によって溶液E(洗浄液)に照射される超音波の圧力(音圧)や溶液Eの温度を計測するために適用した実施例を示すものである。超音波洗浄装置50は、溶液Eを収容するタンク52を備え、前記タンク52の底面に超音波照射素子51が固設されている。
図4(a)に示す超音波洗浄装置50は、前記超音波照射素子51から超音波を照射することによって、溶液E内に圧力(すなわち超音波による音圧)を生成するとともに溶液Eの温度を上昇させて、タンク52内の溶液Eに浸漬された不図示のワークR(例えば、シリコンウェハ等)を超音波洗浄するものである。溶液Eの温度を制御するにあたっては、ヒータを追加して行っても良い。
【0028】
前記超音波洗浄装置50において、上述した前記FBGセンサ20は図4(a)に示すように、タンク52内に配置された固定体6によって光ファイバ21の両端21b、21cが保持されて、溶液E中でFBG部21aが所定の位置に位置するように設置される。図4においては、FBGセンサ20の光ファイバ21を除いた部分は不図示であるが、実際には、光ファイバ21が延設されてタンク52の外部に設置された分波器24に接続されている。
【0029】
本発明の実施形態に係る計測システム1は、上記超音波洗浄装置50において超音波照射素子51によって溶液Eに生成される圧力(音圧)および溶液Eの液温が所望のものとなっているかを計測するために用いるものである。
不図示の制御装置によって超音波照射素子51を駆動すると、溶液Eに圧力変化と温度変化が生じることになり、これに伴って、計測システム1では、波長分析手段30によって波長値データと波形データが生成されることになる。
【0030】
図5は、横軸を時間tとし、縦軸を反射光の波長λR(つまりはFBG波長λB)として生成した波形データをデフォルメして記載したものである。図6は、波形データの一部を所定時間(txからtyまでの間)で区切って抽出(拡大)したものと理解されたい。
図6に示したように、波形データは上下に振動する(交流的な)波形データとして把握されるものであるところ、本発明の実施形態は、このような波長の経時的な変化を示す波形データが、圧力値と相関するデータと温度値と相関するデータを含むことを利用したものである。より詳しくは、反射光L2に対応する波長値データが温度値と相関しており、上下に振動する(交流的な)信号波形すなわち波長分析手段30が処理(作成)した反射光L2の波長の経時的な変化を示す波形データ(波形信号の振幅S)が圧力値データと相関しているのである。
以下に、温度値データ算出手段43が波長分析手段30から出力される波長値データに基づいて外部に生じた温度変化にかかる温度値データを算出(作成)する方法と、圧力値データ算出手段44が波長分析手段30から出力される波形データに基づいて外部に生じた圧力変化にかかる圧力値データを算出(作成)する方法とを詳述する。
尚、温度値データと、圧力値データの変化について判断する方法は、温度は波長値データが直流成分であり、圧力変化は、たとえば超音波振動が交流成分であるので、測定した波長値データ・波形データの値により圧力変化なのか、温度変化なのかを波長分析手段30で判断することができる。
【0031】
先ず、温度値データ算出手段43が温度値データを算出する方法1乃至3を説明する。
<方法1:1つの波長値データを初期値から算出する方法>
波長分析手段30が時刻txからtyまでの間にサンプリングした波長値データのうちの1つを抽出する。例えば、n番目にサンプリングした波長値データλnを抽出する。さらに、超音波を印加していない初期状態(かつ、ヒータを設けている場合には、ヒータをOFFにする)でサンプリングしておいた波長値データλ0(以下、初期値)との差分D1(単位:nm、図5参照)を算出する。ここに、前記抽出した波長値データλnが代表波長値データである。
前記差分D1(nm)をFBG波長λBの波長変化分とみなし、上述したように、予め求めておいた相関関係に基づき温度値に換算することにより、上昇温度(相対的な液温(初期状態からX℃上昇した))を算出するものである。
なお、当然ではあるが、初期値λ0をサンプリングした際の液温を他の温度センサ等で計測しておくことにより、上述した差分D1から上昇した後の液温(初期状態がP℃であるところ、上昇後の温度がP+X℃であること)を算出できるようにしても良い。
<方法2:複数の波長値データから算出した代表波長値データと初期値から算出する方法>
実際の波長値データのサンプリング数は多数に及ぶものである。図6に、生データを示す約3200個に及ぶ波長値データを、サンプリング順にプロットした波形データを示す。図6において、横軸はサンプリング数であり、縦軸は反射光波長(つまりはFBG波長λBである)を示している。
方法2は、サンプリングした多数(例えば、数万個)の波長値データを統計学的に操作して、その代表波長値データを算出し、当該代表波長値データと外部変化が生じていない状態での波長値データの初期値との差分に基づき前記温度値データを算出するものである。図6に示す例では、代表値λm、差分D2である。
統計学的な操作としては、一般的な、算術平均値を用いても良いし、最頻値、中央値、調和平均値、幾何平均値等の公知の代表値を用いることができる。これにより、算出する温度値のデータの精度が高められることは容易に理解できるであろう。
なお、初期値λ0は、初期状態においてサンプリングした多数の波長値データから算出し、それらの代表値を初期値としてもよい。
上述した方法1及び2に係る前記温度値データ算出手段43は、複数の前記波長値データから算出した代表波長値データと、当該代表波長値データと外部変化が生じていない状態での波長値データの初期値との差分に基づき前記温度値データを算出する構成として構築している。
<方法3:波形データをフーリエ変換(FFT処理)して抽出した直流成分値と初期値から算出する方法>
上述したように波形データは、図5に示したように上下に振動する(交流的な)信号波形である。そこで、方法3では、所要の時間領域(図6の例ではtxからtyの間)において、波形データをフーリエ変換(FFT処理)することで算出される直流成分値λnを、当該時間領域における波長値データと見なすものである。図6に示した例では、便宜上、直流成分値λnを方法2の代表値λmと同値としている。ここに、前記抽出した直流成分値λnが代表波長値データである。
その後の操作は方法1と同様である(初期値との差分に基づき温度変化を求める)。
上述した方法3に係る前記温度値データ算出手段は、前記波形データをフーリエ変換(FFT処理)することにより抽出した直流成分から前記温度変化にかかる温度値を算出する構成として構築している。
本測定装置が利用するFBG装置の温度上昇による伸び(伸縮)は段落0024で説明されており、これに基づき温度変化を算出する計算式は以下の通りである。
温度変化の算出式の一例としては
温度変化ΔT=係数k×波長変化ΔλB
ΔT=0.1×ΔλB
このΔλBに差分Dを代入すると温度変化を得ることができる。
【0032】
次に、圧力値データ算出手段44が波長分析手段30から出力される、複数の波長値データから構成されて反射光L2の波長の経時的変化を示す波形データに基づいて外部に生じた圧力変化にかかる圧力値データを作成(算出)する方法を詳述する。
超音波洗浄装置50では、超音波照射素子51への印加電圧によって溶液Eに付与される圧力(音圧)を調整して、ワークRに対する超音波圧力(音圧)を調整できるようになっている。
本発明の実施形態に係る計測システム1は、超音波洗浄装置50において、超音波照射素子51へ印加する電圧の変動に応じた圧力変動が生じているかを確認するものである。
【0033】
図6に示した波形データの例では、上下に振動する(交流的な)信号波形の振幅Sが圧力値データと相関するものであるが、実際の波形データは複数の波形の組み合わせで構成されているため、実際には一義的に振幅Sを特定することは困難である。
そこで、波長分析手段30が時刻txからtyまでの間にサンプリングした波長値データから図7に示すように波形データをフーリエ変換(FFT処理)してスペクトル解析し、超音波照射素子51が照射している(照射するように指令されている)設定周波数(fa(kHz))のスペクトル強度(FFT強度)Ia(dB)を求め、このスペクトル強度(FFT強度)Iaを対数換算して実効値を算出することにより、振幅Sを求めるものである。
計算式の一例としては、
【数1】
があり、Δλ(S)が求められるが、上記計算式に限定されるものではない。
図7において、横軸は周波数(kHz)、縦軸はスペクトル強度(FFT強度)(dB)を示している。
こうして導出した振幅S(nm)をFBG波長λBの波長変化分とみなし、上述したように、予め求めておいた相関関係に基づいて振幅S(圧力値)を換算するのである。
本測定装置が利用するFBG装置は、非特許文献1の書籍より1Paに対して−3×10−12程度であるので、1550nm帯においては、約−5pm/Mpaの圧力感度に相当する。
これに基づき、圧力変化を算出する計算式は以下の通りである。
圧力変化の算出式の一例としては
圧力変化=係数×波長変化
P=−2.15×1017×ΔλB
このΔλBに振幅Sを代入すると、圧力変化を得ることができる。
【0034】
次に、上述した本発明の実施形態に係る計測システムの有効性を図8図13に基づいて検証する。
図8図12は、実測に基づく生データであり、横軸を時間tとし、縦軸を反射光の波長λRとしている。さらに、図8図12では、圧力値データ算出手段44が波長分析手段30から出力される波長分析手段30から出力される反射光L2の波長の経時的な変化を示す波形データを示している。前記波形データの振幅Sは、前記図7に基づいて説明したように、波長分析手段30から出力される波形データをフーリエ変換(FFT処理)してスペクトル解析し、その解析結果から特定の周期(周波数)の強度Ia(スペクトル強度)を求め、その強度を周期性の振幅Sとして圧力データに変換している。
【0035】
図8は、超音波の周波数を低周波側の26kHzに設定し、その周波数の下での印加電力を5W,10W,25W,50Wに変化させた場合における波形データと振幅Sとを図示している。図9は、超音波の周波数を中間周波側の130kHzに設定し、その周波数の下での印加電力を10W,25W,50Wに変化させた場合における波形データと振幅Sとを図示している。図10は、超音波の周波数を中間周波側の200kHzに設定し、その周波数の下での印加電力を10W,25W,50W,100Wに変化させた場合における波形データと振幅Sとを図示している。図11は、超音波の周波数を高周波側の430kHzに設定し、その周波数の下での印加電力を10W,25W,50W,100Wに変化させた場合における波形データと振幅Sとを図示している。
【0036】
図12は、超音波の周波数をそれぞれ26kHz,130kHz,200kHz,430kHzに設定した場合における、電力と変化量RMS及びスペクトル強度(FFT強度)との関係をそれぞれ示している。図12において、横軸を電力(W)とし、左側の縦軸を変化量RMS(pm)とし、右側の縦軸をスペクトル強度(FFT強度)(dB)としている。
このグラフは、圧力に対応する波長変化量の大きさを変化量RMSとスペクトル強度(FFT強度)で算出し、その算出した波長変化量の大きさに違いがあるかを確認したものである。
図12に示す変化量RMS(pm)は、波長の平均値から測定した各波長の値を減算し、二乗平均を行い、平方根にて処理した値である。従って、前記変化量RMS(pm)は波長変化量の大きさとなり、この変化量を圧力に換算することができるものである。
図12では、電力の変化に伴う特定の周期(周波数)の強度(スペクトル強度(FFT強度),四角印で示している)と前記変化量RMS(菱形印で示している)との関係を図示している。
図12から明らかなように、電力値の変化に相応してスペクトル強度(FFT強度)及び変化量RMSが相対的に変化しており、洗浄領域音場を全体的に調べることができる変化量RMSの手法もフーリエ変換(FFT処理)による手法でも、波長変化量の大きさを算出することができる検証を得た。
【0037】
図8図11に示す結果からして、本発明の実施形態に係る計測システムは、計測対象の超音波の周波数が低周波側26kHzから高周波側430kHzに渡って振幅Sの変化にリニア性を有していることが検証できた。さらに図12に示す結果からして、変化量RMSの変位とFFT強度の変位と間には近似的なリニア性の関係があることが検証でき、それらの波長変化量を圧力に換算して圧力値を算出することが検証できた。
【0038】
次に、図13(a)(b)に基づいて本発明の実施形態に係る計測システムを超音波洗浄装置に適用してタンクに充填した溶液の深さ方向での計測を検証した。
図13(a)は、図4(a)で説明した超音波洗浄装置50において、超音波照射素子51によって溶液E(洗浄液)に照射される超音波の圧力(音圧)や溶液Eの温度を計測する場合を図示している。
図13(b)は、超音波の周波数を78kHzとし、電力を50Wとした場合における変化量RMS(pm)とスペクトル強度(FFT強度)(dB)との深さ方向での変化を示している。図13(b)において、縦軸を深さ方向の距離(mm)とし、下側の横軸を変化量RMS(pm)とし、上側の横軸をスペクトル強度(FFT強度)(dB)としている。
図13(b)の結果より、超音波照射素子51の周波数の半波長毎に計測データに変化が生じていると判断でき、超音波が液深方向のワークRに正しく照射されていることが判断できる。
液深方向の、スペクトル強度(FFT強度)を測定することで超音波発振器、超音波照射素子が正常に発振しているかを判断することができる。
【0039】
以上の検証結果から、本発明の実施形態に係る計測システムは、計測対象の超音波の周波数の低周波側から高周波側に渡って振幅Sの変化にリニア性を有して圧力及び温度上昇を計測することができるものである。さらに、溶液の深さ方向での計測には一定の制限があるものの圧力及び温度上昇を計測することができるものである。
【0040】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 計測システム
20 ファイバブラッググレーティングセンサ
30 波長分析手段
40 制御手段
42 解析部
43 温度値データ算出手段
44 圧力値データ算出手段
【要約】
【課題】ファイバブラッググレーティングセンサが出力する波長変化のデータに基づいて圧力と温度とのデータを算出して取得することを可能にする。
【解決手段】光源からの入射光を入力すると外部圧力・外部温度に応じた所定波長の反射光を出力するFBG部を有し、当該反射光に基づく反射光信号を出力するFBGセンサと、前記FBGセンサから反射光信号を収集し、収集した複数の反射光信号に対応する複数の波長値データを作成するとともに、当該複数の波長値データから構成されて前記反射光の波長の経時的な変化を示す波形データを作成する波長分析手段と、前記波長値データに基づいて外部に生じた温度変化にかかる温度値データを算出する温度値データ算出手段と、前記波形データに基づいて外部に生じた圧力変化にかかる圧力値データを算出する圧力値データ算出手段と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13