【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、非ケーキング剤の溶液の調製のための方法であって、非ケーキング剤の濃縮物が循環ループにおいて循環させられるとともに濃縮物が引き続いて水によって希釈されることで溶液が得られる方法で達成される。得られた希釈溶液は、好ましくは、それを直接塩上に投与するのに必要とされる濃度を有する。前記非ケーキング剤は、好ましくは、メソ酒石酸のFe
3+塩を含む。
【0010】
好ましくは、前記循環ループは、非ケーキング剤の水性濃縮物が貯蔵される第1のリザーバーまたはバッファタンクを含む。
【0011】
本発明による非ケーキング剤水溶液(即ち、濃縮物の形態における水溶液、ならびにそれを塩上に投与するための適当な濃度を有する溶液の形態における水溶液)、特にFeMTAに基づくものは、それらが本発明に従って絶えず循環させられる場合、より安定および均質のままであることが見出された。
【0012】
絶えず循環させられた濃縮物が、周囲温度より低い温度、例えば20℃より低い温度、例えば高くとも15℃などの温度に冷却されるならば、特に良好な結果が得られる。
【0013】
濃縮物の安定性は、循環ループ雰囲気における酸素レベルが低減されるならば、さらに改善されることが見出された。循環ループはそのため、好ましくは、循環ループの気体内部含有量の5vol%未満、例えば1vol%未満または0.2vol%未満の酸素レベルを持つ不活性な内部雰囲気を有する。その場合、より少ないFe
2+イオンでさえもFe
3+に酸化され、メソ酒石酸Fe(II)の析出は、少なくとも部分的に防止される。この様式で、FeMTAは有効に安定化される。
【0014】
第1の循環ループにおける圧力は、好ましくは大気圧である。
【0015】
濃縮物の流れは、非ケーキング剤の水溶液を得るため、循環ループから引き出し、水の、好ましくは連続的な、流れと混合することができる。前記水は、非ケーキング剤水溶液を作製するのに従来から使用されている任意の水供給からとることができる。それは、好ましくは、水路、堀または池から、より好ましくは湖または川からの水であり、最も好ましくは、それは地下水である。あまり好ましくないが、海水またはブラインも、濃縮物の希釈に使用することができる。
【0016】
濃縮物の流れと水の混合は、所望の希釈度を高い正確さで得ることを可能にする。濃縮物流に対する水流の流速比は、例えば、1:1から9:1の間、例えば2:1から7:1の間であってよい。こうした流速比は、FeMTA溶液に特に適当である。他の流速比も、そう所望されるならば使用することができる。
【0017】
非ケーキング剤溶液の品質を改善するため、好ましくは20μS/cm未満の伝導率を有する、懸濁固形物(殊に金属)および有機材料を実質的に含まない水供給、例えば蒸留水などが使用され得る。
【0018】
水の温度が40℃より低い、好ましくは15℃より低いならば、特に良好な結果が得られる。
【0019】
ループ(6)内を循環させられる本発明による非ケーキング剤の濃縮物は、典型的に、前記濃縮物の合計重量に基づいて少なくとも1.0wt%の鉄(即ち、Fe
2+およびFe
3+の合わせた量)、好ましくは少なくとも2.0wt%の鉄、および最も好ましくは少なくとも3.5wt%の鉄を含む。典型的に、濃縮物は、前記濃縮物の合計重量に基づいて多くとも20wt%の鉄、好ましくは多くとも4.5wt%の鉄、および最も好ましくは多くとも4.0wt%の鉄を含む。FeMTAを含む濃縮物の場合において、鉄濃度は、好ましくは、前記濃縮物の合計重量に基づいて約1〜5wt%である。
【0020】
水による濃縮物の希釈後、前記溶液の合計重量に基づいて少なくとも0.2wt%の鉄(即ち、Fe
2+およびFe
3+の合わせた量)を典型的に含む溶液が得られる。典型的に、水による希釈後の溶液は、前記溶液の合計重量に基づいて多くとも2.5wt%の鉄、好ましくは多くとも1.5wt%の鉄、および最も好ましくは多くとも0.7wt%の鉄を含む。FeMTAを含む溶液の場合において、鉄濃度は、典型的に、前記溶液の合計重量に基づいて0.2wt%から5wt%の範囲以内である。
【0021】
具体的な実施形態において、希釈溶液は引き続いて、第2の循環ループへ送給され、ここで、希釈溶液は、それが分注される前に一時的に貯蔵される。前記第2の循環ループは、好ましくは、希釈溶液が貯蔵される第2のリザーバーまたは緩衝剤タンクを含む。
【0022】
この段階においても、溶液が周囲温度より低い温度、例えば20℃より低い温度、高くとも15℃などの温度に冷却され
るならば、および/または循環ループ雰囲気における酸素レベルが低減されるならば、溶液の安定性はさらに改善される。第2の循環ループは、好ましくは、第2の循環ループの気体内部含有量の5vol%未満、例えば1vol%未満または0.2vol%未満の酸素レベルを持つ不活性な内部雰囲気を有する。第2の循環ループの圧力は、好ましくは大気圧である。
【0023】
希釈溶液の1つまたは複数の流れは、第2の循環ループから引き出すことで、ある量の塩の中に投与することができる。1つ超の放出流の使用は、系の信頼性を改善する。当業者が理解している通り、放出流の1つに問題があっても、他の放出流の1つまたは複数がまだ使用できるので、器具は使用不可にする必要はない。1つ超の流れが引き出されるならば、これは同時におよび/または連続して行うことができる。
【0024】
溶液は、例えば、1つまたは複数のスタティックミキサーに通過させることができる。スタティックミキサーは、第1の循環ループの上流ならびに水流および濃縮物流が混合されるポイントの下流に配置することができる。
【0025】
溶液のpHをモニターするため、溶液の流れは、1つまたは複数のpH測定ステーションを介して通過させることができる。これは、万が一測定pHが所定の範囲外である場合に、pHの調整を可能にする。溶液のpHのための適当な設定値は、例えば3から5の間、例えば、4から4.5の間である。pHは、例えば、酒石酸および/または塩酸の溶液を添加することによって調整することができる。pHが3より低いならば、pH値は、好ましくは、水酸化ナトリウムの水溶液を添加することによって調整される。
【0026】
上に記載されている通り、FeMTAに基づく水溶液において、Fe
3+はFe
2+に還元される傾向があり、これは、メソ酒石酸Fe
2+錯体として析出する。これに対抗するため、溶液は、好ましくは、化学的酸化または電解酸化のいずれかである酸化ステップにかけられる。より具体的には、FeMTA水溶液(または、FeMTAに基づく任意の水溶液)中のFe
2+イオンは、この様式で、少なくとも部分的に酸化されることでFe
3+を形成し、Fe(II)MTA錯体の析出が少なくとも大幅に防止される。この様式で、FeMTA濃度は有効に安定化することができる。本発明による安定化は、鉄塩を溶液中に保持することによって、非ケーキング剤として有機酸の前記鉄塩の溶液の有効性(機能性)を維持することを意味することが留意される。有機酸(好ましくは、ある特定の量のメソ酒石酸を含む酒石酸である)の鉄塩は、溶液を電解酸化に少なくとも部分的にかけるやり方による、可溶性がより少ない第一鉄成分の量を低減することによって、この発明による溶液中に保持される。
【0027】
本発明による酸化ステップは、例えば、上に記載されている通りの循環ループ内で、および/または調製されたFeMTAベース水溶液のバッチ内で実施することができる。酸化ステップは、好ましくは電解酸化ステップである。
【0028】
電解酸化ステップは、1つまたは複数の電解セル内で、陽極および陰極を用いて実施することができる。任意選択により、陽極および陰極は、例えば多孔質または非多孔質のセパレーターによって分離されていてよい。多孔質セパレーターは、例えば、多孔質隔膜、例えば多孔質ガラス(例えば、焼結ガラス)、多孔質のポリマーもしくはセラミックの膜、または不織多孔質材料であってよい。非多孔質セパレーターは、例えば、膜、例えばアニオン交換膜またはカチオン交換膜などのイオン交換膜であってよい。
【0029】
電解セルは、例えば、1〜3M HCl水溶液の陰極液を含むことができる。電気化学セル構成および任意選択により適用されるセパレーターに依存して、代替の陰極液、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは任意の他の適当な電解質など、塩の水溶液なども使用することができる。
【0030】
陽極は、FeMTAを含む水性混合物中に存在する他の種を酸化せずにFe
2+の選択的酸化を可能にするとともにプロセス条件下で酸化しない適当な材料から作製することができる。適当な材料としては、例えば、白金、白金メッキチタン、炭素もしくはRuO
2/IrO
2コーティングチタン(DSA(登録商標))、または任意の他の安定な電極材料が挙げられる。
【0031】
電解セルがセパレーターを用いずに使用されるならば、陰極でのFe
3+からFe
2+への望ましくない還元は、例えば、陽極の電極表面積より小さい電極表面積を有する陰極を使用することによって最小化することができる。陰極表面積は、例えば、陽極電極表面積の50%未満、例えば20%未満、例えば2%未満であってよい。別法として、または追加として、Fe
3+還元以外の反応に対して、より選択的である材料、例えば、H
+からH
2への還元に対して、より選択的である白金含有陰極材料の陰極が使用され得る。陰極でのFe
3+の還元を最小化するためのさらに可能なやり方は、FeMTAベース溶液(好ましくは、FeMTA溶液)のほんの一部分だけが陰極還元にかけられるようなやり方で流れ条件を制御することである。FeMTAに基づく水溶液は、例えば、少なくとも1つの電解セルの1つまたは複数が有する陽極に沿って、例えば、FeMTAに基づく水溶液を放出するための放出、例えば分注ステーション、およびFeMTAに基づく新鮮な溶液を供給するための供給へ操作可能に接続されているループを介して循環させることができる。
【0032】
好ましくは、溶液中のFe
2+の少なくとも50wt%、例えば少なくとも80wt%または少なくとも95wt%がFe
3+に酸化される。
【0033】
電解セル内で使用されるべき電位は、ルーチン的最適化によって微調整されることで、Fe
2+酸化を最大化するとともに副生成物の生成を低減することができる。
【0034】
電解セルが陽極と陰極との間にセパレーターを含むならば、1つまたは複数の電解セルの陽極とセパレーターとの間の陽極液空間は、例えば、循環ループの一部であってよい。陽極は、例えば、陽極液流体が移送される循環ループの一部である多孔質構造から作製することができる。こうした場合において、陽極およびセパレーターは、全体的または部分的に、互いに対向して位置することができる。
【0035】
本発明は、開示される方法を実施するための投与ステーションにも関する。この目的のため、投与ステーションは、非ケーキング剤の濃縮物のための供給に接続されている第1の流入口、水の供給に接続されている第2の流入口、および溶液の放出のための流出口を有する循環ループを含み、前記循環ループは、1つまたは複数のpH測定ステーションをさらに含む。
【0036】
任意選択により、投与ステーションは、第1の循環ループの流出口によって送給される第2の循環ループを含むことができ、第2の循環ループは、分注ユニットへの放出のため、溶液の流れを引き出すための1つまたは複数の放出ラインを含む。均質な溶液を維持するため、投与ステーションは、例えば、循環ループの中、および/またはその間、および/またはその下流に1つまたは複数のスタティックミキサーを含むことができる。
【0037】
本発明は、非ケーキング剤の水溶液を含有する循環ループおよび/またはリザーバーを含む、非ケーキング剤の水溶液を調製するための投与ステーションにも関し、ここで、循環ループおよび/またはリザーバーは、上記で開示されている通りの少なくとも1つの電解セルを含む。
【0038】
添付の図面を参照して、本発明をさらに説明する。