特許第5936763号(P5936763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936763
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】非ケーキング剤溶液のための調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01D 3/26 20060101AFI20160609BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20160609BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20160609BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20160609BHJP
   C25B 1/00 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
   C01D3/26
   B01J4/00 103
   B01F3/08 Z
   B01F5/00 D
   !C25B1/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-502313(P2015-502313)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公表番号】特表2015-520714(P2015-520714A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】EP2013056458
(87)【国際公開番号】WO2013144174
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】12162533.9
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12162544.6
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/619,997
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/620,033
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】バッケンズ,ヘンドリクス ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】へーゼン,ウィリアム フェルディナンド
【審査官】 磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2000/059828(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/139587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 3/26
B01F 3/08
B01F 5/00
B01J 4/00
C25B 1/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ケーキング剤の溶液の調製のための方法であって、該非ケーキング剤が、メソ酒石酸のFe3+塩(FeMTA)を含み、前記非ケーキング剤の濃縮物がループ(6)内を循環させられるとともに、該濃縮物が引き続いて水によって希釈されることで前記溶液が得られる方法。
【請求項2】
前記濃縮物の流れが循環ループ(6)から引き出され、水の流れと混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
得られた溶液が引き続いて第2の循環ループ(12)内に送給される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
溶液の流れが第2の循環ループ(12)から引き出されることで、ある量の塩の中に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1および/または第2の循環ループ(6、12)における温度が20℃より低い、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
第1および/または第2の循環ループ(6、12)が、循環ループの気体内部含有量の1vol%より低い酸素含有量を持つ内部雰囲気を有する、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の循環ループ(12)における溶液のpHが3.5から5の間である、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液が、循環ループ(6、12)の中、および/またはその間、および/またはその上流の1つまたは複数のスタティックミキサー(9)を介して通過される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液の流れが1つまたは複数のpH測定ステーション(18、19)を介して通過されるとともに、測定されたpHが所定の範囲外である場合にpHが調整される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に塩化カリウムまたは塩化ナトリウムなどの塩のために、非ケーキング剤の溶液を調製および投与する方法に関する。それは、非ケーキング剤を調製、計量および分注するための分注ステーションにも関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ナトリウムは、特に長期の貯蔵中、水分に対する曝露時に大きな凝集塊を形成する傾向がある。これらの硬化塊は一般にケーキと称される。非ケーキング剤は一般に、ケーキングを防止するために塩に添加される。古典的な非ケーキング剤としては、フェロシアン化ナトリウムおよびフェロシアン化カリウムが挙げられる。窒素含有量により、および処理ブライン中における生成鉄痕跡量により、これらの非ケーキング剤をヒドロキシポリカルボン酸の鉄塩と置き換えることが提案され、前記ヒドロキシポリカルボン酸は、好ましくは、メソ酒石酸を含む酒石酸類の混合物である(例えば、WO2000/059828を参照されたい)。ある特定の量のメソ酒石酸を含む酒石酸類の混合物の鉄塩は、後文において、「メソ酒石酸のFe3+塩に基づく非ケーキング剤」または「メソ酒石酸のFe3+塩を含む非ケーキング剤」とも称される。メソ酒石酸のFe3+塩は、後文において、FeMTAとして示される。WO2010/139587も、メソ酒石酸のFe3+塩に基づくこうした非ケーキング剤を開示している。
【0003】
塩(例えば塩化カリウム、好ましくは塩化ナトリウム)の非ケーキング剤は、典型的に、水中に溶解され、水溶液として貯蔵された後、これらは、ある量の塩の中に分注される。例えば、FeMTAに基づく非ケーキング剤は、典型的に、約2〜5wt%のFe濃度を有する水性濃縮物として供給される。非ケーキング溶液は、引き続いて、水での希釈による使用のために調製される。非ケーキング剤が塩上へ投与される場合、Fe濃度は、典型的に、溶液の合計重量に基づいて約2wt%より低く、例えば0.5wt%から1.5wt%の範囲以内、例えば約0.6wt%である。他の濃度も、そう所望されるならば使用することができる。
【0004】
所望の濃度および所望のpHを有する溶液が得られた後、水溶液は計量され、塩上にスプレーされるかまたは注がれる。
【0005】
塩上への非ケーキング剤の投与は、好ましくは連続的プロセスである。好ましくは、非ケーキング剤の溶液は、コンベアを介して連続的に供給される塩上へ注がれるかまたはスプレーされる。塩上への非ケーキング剤の均質分布を得るために、所望の濃度を有する非ケーキング剤溶液の連続的供給が必要とされる。しかしながら、非ケーキング剤は、典型的に現場外で調製され、そのため現場に不連続的に供給される。非ケーキング剤溶液の連続的供給を有するため、前記溶液は、典型的には容器内に貯蔵され、これから、連続流は計量のために塩上へと引き出される。前記容器は定期的に補充される。均質の溶液を保持するため、溶液は撹拌される。
【0006】
FeMTAまたは好ましくはFeMTAの水溶液に基づく非ケーキング剤の水溶液の生成後、溶液の鉄含有量の典型的に約1〜3wt.%、好ましくは2〜3wt.%はFe2+であり、残部はFe3+である。Fe2+は、それの低い可溶性により、メソ酒石酸Fe(II)(後文において、メソ酒石酸のFe(II)錯体またはメソ酒石酸のFe(II)塩としても示される)として析出する傾向がある。これは溶液からFe2+を除去し、溶液は、新鮮なFe2+へのFe3+の還元によって平衡化される。その結果として、一部の酒石酸は、シュウ酸、およびCOのような他の分解生成物に酸化される。この緩徐な分解プロセスは時間をかけて溶解FeMTAの濃度を低減し、その結果として、非ケーキング剤としての溶液の有効性を低減する。同様の問題が、第二鉄成分および前記第二鉄成分より可溶性が少ない第一鉄成分との有機酸の鉄塩を含む他の非ケーキング剤について起こる。
【0007】
貯蔵容器内の均質状態を保つための、こうした非ケーキング剤、例えばFeMTAに基づく非ケーキング剤の水溶液の撹拌は、撹拌により空気が溶液中に導入され、これは、より多くのFe3+がFe2+に酸化されるので溶液の安定性に有害作用を有するので、望ましくないことが見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本発明の目的は、塩、例えば塩化カリウム、および好ましくは塩化ナトリウムのための非ケーキング剤の安定な水溶液を調製するための方法および投与ステーションを提供することであり、前記溶液は、濃度において均一であり、連続的方式における塩上への供給に備える形態である。前記の通り、非ケーキング剤は、好ましくは、第二鉄成分および前記第二鉄化合物より可溶性が少ない第一鉄成分との有機酸の鉄塩を含む非ケーキング剤であり、より好ましくは、それは、FeMTAに基づく非ケーキング剤である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、非ケーキング剤の溶液の調製のための方法であって、非ケーキング剤の濃縮物が循環ループにおいて循環させられるとともに濃縮物が引き続いて水によって希釈されることで溶液が得られる方法で達成される。得られた希釈溶液は、好ましくは、それを直接塩上に投与するのに必要とされる濃度を有する。前記非ケーキング剤は、好ましくは、メソ酒石酸のFe3+塩を含む。
【0010】
好ましくは、前記循環ループは、非ケーキング剤の水性濃縮物が貯蔵される第1のリザーバーまたはバッファタンクを含む。
【0011】
本発明による非ケーキング剤水溶液(即ち、濃縮物の形態における水溶液、ならびにそれを塩上に投与するための適当な濃度を有する溶液の形態における水溶液)、特にFeMTAに基づくものは、それらが本発明に従って絶えず循環させられる場合、より安定および均質のままであることが見出された。
【0012】
絶えず循環させられた濃縮物が、周囲温度より低い温度、例えば20℃より低い温度、例えば高くとも15℃などの温度に冷却されるならば、特に良好な結果が得られる。
【0013】
濃縮物の安定性は、循環ループ雰囲気における酸素レベルが低減されるならば、さらに改善されることが見出された。循環ループはそのため、好ましくは、循環ループの気体内部含有量の5vol%未満、例えば1vol%未満または0.2vol%未満の酸素レベルを持つ不活性な内部雰囲気を有する。その場合、より少ないFe2+イオンでさえもFe3+に酸化され、メソ酒石酸Fe(II)の析出は、少なくとも部分的に防止される。この様式で、FeMTAは有効に安定化される。
【0014】
第1の循環ループにおける圧力は、好ましくは大気圧である。
【0015】
濃縮物の流れは、非ケーキング剤の水溶液を得るため、循環ループから引き出し、水の、好ましくは連続的な、流れと混合することができる。前記水は、非ケーキング剤水溶液を作製するのに従来から使用されている任意の水供給からとることができる。それは、好ましくは、水路、堀または池から、より好ましくは湖または川からの水であり、最も好ましくは、それは地下水である。あまり好ましくないが、海水またはブラインも、濃縮物の希釈に使用することができる。
【0016】
濃縮物の流れと水の混合は、所望の希釈度を高い正確さで得ることを可能にする。濃縮物流に対する水流の流速比は、例えば、1:1から9:1の間、例えば2:1から7:1の間であってよい。こうした流速比は、FeMTA溶液に特に適当である。他の流速比も、そう所望されるならば使用することができる。
【0017】
非ケーキング剤溶液の品質を改善するため、好ましくは20μS/cm未満の伝導率を有する、懸濁固形物(殊に金属)および有機材料を実質的に含まない水供給、例えば蒸留水などが使用され得る。
【0018】
水の温度が40℃より低い、好ましくは15℃より低いならば、特に良好な結果が得られる。
【0019】
ループ(6)内を循環させられる本発明による非ケーキング剤の濃縮物は、典型的に、前記濃縮物の合計重量に基づいて少なくとも1.0wt%の鉄(即ち、Fe2+およびFe3+の合わせた量)、好ましくは少なくとも2.0wt%の鉄、および最も好ましくは少なくとも3.5wt%の鉄を含む。典型的に、濃縮物は、前記濃縮物の合計重量に基づいて多くとも20wt%の鉄、好ましくは多くとも4.5wt%の鉄、および最も好ましくは多くとも4.0wt%の鉄を含む。FeMTAを含む濃縮物の場合において、鉄濃度は、好ましくは、前記濃縮物の合計重量に基づいて約1〜5wt%である。
【0020】
水による濃縮物の希釈後、前記溶液の合計重量に基づいて少なくとも0.2wt%の鉄(即ち、Fe2+およびFe3+の合わせた量)を典型的に含む溶液が得られる。典型的に、水による希釈後の溶液は、前記溶液の合計重量に基づいて多くとも2.5wt%の鉄、好ましくは多くとも1.5wt%の鉄、および最も好ましくは多くとも0.7wt%の鉄を含む。FeMTAを含む溶液の場合において、鉄濃度は、典型的に、前記溶液の合計重量に基づいて0.2wt%から5wt%の範囲以内である。
【0021】
具体的な実施形態において、希釈溶液は引き続いて、第2の循環ループへ送給され、ここで、希釈溶液は、それが分注される前に一時的に貯蔵される。前記第2の循環ループは、好ましくは、希釈溶液が貯蔵される第2のリザーバーまたは緩衝剤タンクを含む。
【0022】
この段階においても、溶液が周囲温度より低い温度、例えば20℃より低い温度、高くとも15℃などの温度に冷却されならば、および/または循環ループ雰囲気における酸素レベルが低減されるならば、溶液の安定性はさらに改善される。第2の循環ループは、好ましくは、第2の循環ループの気体内部含有量の5vol%未満、例えば1vol%未満または0.2vol%未満の酸素レベルを持つ不活性な内部雰囲気を有する。第2の循環ループの圧力は、好ましくは大気圧である。
【0023】
希釈溶液の1つまたは複数の流れは、第2の循環ループから引き出すことで、ある量の塩の中に投与することができる。1つ超の放出流の使用は、系の信頼性を改善する。当業者が理解している通り、放出流の1つに問題があっても、他の放出流の1つまたは複数がまだ使用できるので、器具は使用不可にする必要はない。1つ超の流れが引き出されるならば、これは同時におよび/または連続して行うことができる。
【0024】
溶液は、例えば、1つまたは複数のスタティックミキサーに通過させることができる。スタティックミキサーは、第1の循環ループの上流ならびに水流および濃縮物流が混合されるポイントの下流に配置することができる。
【0025】
溶液のpHをモニターするため、溶液の流れは、1つまたは複数のpH測定ステーションを介して通過させることができる。これは、万が一測定pHが所定の範囲外である場合に、pHの調整を可能にする。溶液のpHのための適当な設定値は、例えば3から5の間、例えば、4から4.5の間である。pHは、例えば、酒石酸および/または塩酸の溶液を添加することによって調整することができる。pHが3より低いならば、pH値は、好ましくは、水酸化ナトリウムの水溶液を添加することによって調整される。
【0026】
上に記載されている通り、FeMTAに基づく水溶液において、Fe3+はFe2+に還元される傾向があり、これは、メソ酒石酸Fe2+錯体として析出する。これに対抗するため、溶液は、好ましくは、化学的酸化または電解酸化のいずれかである酸化ステップにかけられる。より具体的には、FeMTA水溶液(または、FeMTAに基づく任意の水溶液)中のFe2+イオンは、この様式で、少なくとも部分的に酸化されることでFe3+を形成し、Fe(II)MTA錯体の析出が少なくとも大幅に防止される。この様式で、FeMTA濃度は有効に安定化することができる。本発明による安定化は、鉄塩を溶液中に保持することによって、非ケーキング剤として有機酸の前記鉄塩の溶液の有効性(機能性)を維持することを意味することが留意される。有機酸(好ましくは、ある特定の量のメソ酒石酸を含む酒石酸である)の鉄塩は、溶液を電解酸化に少なくとも部分的にかけるやり方による、可溶性がより少ない第一鉄成分の量を低減することによって、この発明による溶液中に保持される。
【0027】
本発明による酸化ステップは、例えば、上に記載されている通りの循環ループ内で、および/または調製されたFeMTAベース水溶液のバッチ内で実施することができる。酸化ステップは、好ましくは電解酸化ステップである。
【0028】
電解酸化ステップは、1つまたは複数の電解セル内で、陽極および陰極を用いて実施することができる。任意選択により、陽極および陰極は、例えば多孔質または非多孔質のセパレーターによって分離されていてよい。多孔質セパレーターは、例えば、多孔質隔膜、例えば多孔質ガラス(例えば、焼結ガラス)、多孔質のポリマーもしくはセラミックの膜、または不織多孔質材料であってよい。非多孔質セパレーターは、例えば、膜、例えばアニオン交換膜またはカチオン交換膜などのイオン交換膜であってよい。
【0029】
電解セルは、例えば、1〜3M HCl水溶液の陰極液を含むことができる。電気化学セル構成および任意選択により適用されるセパレーターに依存して、代替の陰極液、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは任意の他の適当な電解質など、塩の水溶液なども使用することができる。
【0030】
陽極は、FeMTAを含む水性混合物中に存在する他の種を酸化せずにFe2+の選択的酸化を可能にするとともにプロセス条件下で酸化しない適当な材料から作製することができる。適当な材料としては、例えば、白金、白金メッキチタン、炭素もしくはRuO/IrOコーティングチタン(DSA(登録商標))、または任意の他の安定な電極材料が挙げられる。
【0031】
電解セルがセパレーターを用いずに使用されるならば、陰極でのFe3+からFe2+への望ましくない還元は、例えば、陽極の電極表面積より小さい電極表面積を有する陰極を使用することによって最小化することができる。陰極表面積は、例えば、陽極電極表面積の50%未満、例えば20%未満、例えば2%未満であってよい。別法として、または追加として、Fe3+還元以外の反応に対して、より選択的である材料、例えば、HからHへの還元に対して、より選択的である白金含有陰極材料の陰極が使用され得る。陰極でのFe3+の還元を最小化するためのさらに可能なやり方は、FeMTAベース溶液(好ましくは、FeMTA溶液)のほんの一部分だけが陰極還元にかけられるようなやり方で流れ条件を制御することである。FeMTAに基づく水溶液は、例えば、少なくとも1つの電解セルの1つまたは複数が有する陽極に沿って、例えば、FeMTAに基づく水溶液を放出するための放出、例えば分注ステーション、およびFeMTAに基づく新鮮な溶液を供給するための供給へ操作可能に接続されているループを介して循環させることができる。
【0032】
好ましくは、溶液中のFe2+の少なくとも50wt%、例えば少なくとも80wt%または少なくとも95wt%がFe3+に酸化される。
【0033】
電解セル内で使用されるべき電位は、ルーチン的最適化によって微調整されることで、Fe2+酸化を最大化するとともに副生成物の生成を低減することができる。
【0034】
電解セルが陽極と陰極との間にセパレーターを含むならば、1つまたは複数の電解セルの陽極とセパレーターとの間の陽極液空間は、例えば、循環ループの一部であってよい。陽極は、例えば、陽極液流体が移送される循環ループの一部である多孔質構造から作製することができる。こうした場合において、陽極およびセパレーターは、全体的または部分的に、互いに対向して位置することができる。
【0035】
本発明は、開示される方法を実施するための投与ステーションにも関する。この目的のため、投与ステーションは、非ケーキング剤の濃縮物のための供給に接続されている第1の流入口、水の供給に接続されている第2の流入口、および溶液の放出のための流出口を有する循環ループを含み、前記循環ループは、1つまたは複数のpH測定ステーションをさらに含む。
【0036】
任意選択により、投与ステーションは、第1の循環ループの流出口によって送給される第2の循環ループを含むことができ、第2の循環ループは、分注ユニットへの放出のため、溶液の流れを引き出すための1つまたは複数の放出ラインを含む。均質な溶液を維持するため、投与ステーションは、例えば、循環ループの中、および/またはその間、および/またはその下流に1つまたは複数のスタティックミキサーを含むことができる。
【0037】
本発明は、非ケーキング剤の水溶液を含有する循環ループおよび/またはリザーバーを含む、非ケーキング剤の水溶液を調製するための投与ステーションにも関し、ここで、循環ループおよび/またはリザーバーは、上記で開示されている通りの少なくとも1つの電解セルを含む。
【0038】
添付の図面を参照して、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明による投与ステーションの例示的な実施形態のレイアウトを概略的に示す図である。
図2図1の投与ステーションにおける使用のための電解質セルを概略的に示す図である。
図3】試料のディフラクトグラムをモデルフィットと一緒に示すグラフである。
図4】{[Fe(C)(HO)](HO)の化学構造式である。
図5】遊離Fe(III)濃度に対するpHの影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、塩のための非ケーキング剤としての使用のための、メソ酒石酸Fe3+塩(FeMTA)に基づく溶液の調製のための投与ステーション1を示している。投与ステーション1は、ポンプ5を含む供給ラインを介して濃縮物供給源3に接続されているまたは接続可能な第1のリザーバー2を含む。第1のリザーバー2は、非ケーキング剤の水性濃縮物を貯蔵する。リザーバー2は、第1の循環ループ6の一部を形成する。FeMTAベース濃縮物は、循環ポンプ7によってループ6の中を絶えず循環させられる。
【0041】
放出分岐8は、濃縮物流の一部をスタティックミキサー9に移送するため、ループ6から分岐する。スタティックミキサー9の上流で、水供給ライン10が放出分岐8に開口することで、脱塩水を供給する。このポイントで、濃縮物の流れは、脱塩水の流れと混合され、そのあと、混合物はスタティックミキサー9に入る。濃縮物流および水流の流速は、希釈水溶液が密度制御ユニット30によって非ケーキング剤の所望の濃度で得られるようなやり方で制御される。水流は、例えば、FeMTAベース濃縮物の流速より1〜7倍高い流速を有することができる。
【0042】
スタティックミキサー9を通過した後、溶液は、第2の循環ループ12の一部を形成する第2のリザーバーまたは緩衝剤タンク11に移送される。非ケーキング剤の希釈水溶液は、2つの平行な循環ポンプ13、14によってループ12の中を連続的に循環させられる。2つ以上のポンプが使用されることで、連続流を分注ユニットに提供する。ポンプは、1つのポンプの故障が、他のポンプの引き継ぎの引き金となるようなやり方で配置される。
【0043】
図1に示されている例示的構成において、第2のループ12は、4つのそれぞれの分注ユニット16への溶液の移送のため、4つの放出ライン15に接続されている。各放出ライン15は、バルブ17によって閉鎖可能である。分注ユニット16は、例えばコンベアまたは同様の移送ラインによってそれぞれの分注ユニット16に沿って誘導することができるある量の塩上に、非ケーキング剤の水溶液をスプレーするかまたは注ぐ。
【0044】
複数のpH測定ステーション18、19は、第1のループ6および第2のループ12内にそれぞれ配置される。これらのpH測定ステーション18、19で、万が一測定pHが濃縮溶液については3.5<pH<4.0の範囲外、および希釈溶液については4.0<pH<4.5の範囲外である場合に、pHが調整される。
【0045】
上に記載されている通り、FeMTAに基づく濃縮および希釈水溶液、特に濃縮および希釈FeMTA水溶液の貯蔵中に、Fe3+含有量の一部は、Fe2+に還元される。引き続いて、Fe2+は、溶液からメソ酒石酸Fe(II)錯体として析出する。このリスクを低減するため、FeMTAベース水溶液は、1つまたは複数の電解セルを用いて実施される電解酸化ステップにかけられる。図2は、こうした電解セルの例示的な実施形態を示す。
【0046】
電解セル21は、陽極22および陰極23を含む。陽極22および陰極23は、非多孔質イオン交換膜24によって分離されている。
【0047】
陰極液は、陰極液リザーバー25と、陰極23と膜24との間の陰極液空間26との間を循環させられる。示されている例において、陰極液は、1〜3M HCl水溶液を含む。
【0048】
同様に、FeMTAベース水溶液は、陽極液リザーバー27と、陽極22と膜24との間の陽極液空間28との間を循環させられる。
【0049】
電力供給ユニット29は、陽極22と陰極23との間の電位差を提供する。陰極23で、水素イオン(H)は電気化学的に還元されることで水素(H)を形成する。塩化物(Cl)イオンは、陰極液空間26から、イオン交換膜24および陽極液空間28を介して陽極22に向かって移動する。陽極22で、第一鉄(Fe2+)イオンは第二鉄(Fe3+)イオンに酸化される。
【0050】
Fe2+の酸化はFe2+含有量を低減し、その結果としてメソ酒石酸Fe(II)の析出を低減する。この様式で、水溶液中のFeMTA含有量は安定化される。
【0051】
FeMTAベース溶液は、そう所望されるならば、リザーバーから放出されることで、ある量の塩に投与することができ、FeMTA溶液は、新鮮な供給で補充することができる。
【0052】
本発明を以下の実施例によってさらに例示する。
(実施例)
(参考例1)
【実施例1】
【0053】
電気化学反応器は、垂直に位置された2つの黒鉛陽極ロッド(直径10mm×50mm高)および20mmの直径のガラスチューブ付き、底部にガラスフリット付き、および白金陰極金網を含有するガラスビーカーの形態で構成されていた。Ag/AgCl/飽和KCl参照電極を、黒鉛陽極の1つの近くの陽極区画に置いた。15時間の沸騰を伴うWO2010/139587の実施例4aに従って生成したFeMTAに基づく水溶液を、電解より前に濾過することで、任意の析出メソ酒石酸Fe(II)を除去した。電気化学反応器に、ある量のFeMTAベース溶液を充填した。陽極液区画からガラスフリットを介する陰極液区画内へのFeMTAベース溶液の純流を創出するために、陰極液区画の液面を、陰極液をポンピングすることによって陽極液区画内のレベルより低く維持した。陽極および陰極をDC電源に接続し、陽極と参照電極との間の測定電位が+0.85ボルトから+0.97ボルトの間であるようなやり方で、電位を陽極と陰極との間に印加した。溶液のFe(II)含有量を電解中にとった試料中で測定し、結果を表に示す。処理陽極液は、1週間超の後で清澄なままであり、FeMTAが電気化学処理によって安定化されることを示した。
【0054】
【表1】
(参考例2)
【実施例2】
【0055】
FeMTAに基づく水溶液を、参考例1に記載されている通りに生成した。溶液のpHを4.35に設定した。EP2012/074188に記載されている通りに、投与ユニットを使用して、ある量の塩上で計量するためにそれを使用した。しばらくして、灰色がかった固体が、濃縮FeMTA緩衝剤タンク内に析出した。これらの固体の試料(試料A)を、X線回折(XRD)および誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−ES)およびクロマトグラフィーで分析した。
【0056】
より具体的には、XRD調査を行うことで、結晶相(単数または複数)の存在を研究し、それらの化学的および構造的組成を決定した。ディフラクトグラムを、標準試料ホルダーを使用するBruker D8回折計上で記録した。
【0057】
設定:Cu Kα照射、2θ範囲:5〜75°、0.02°ステップ、1ステップ当たり16.5秒の積分時間、20mmの可変発散スリットおよび0.6mmの検出器スリット。黒鉛モノクロメータを使用することで発蛍光を抑制し、したがって、より低いバックグラウンドシグナルが得られた。
【0058】
BrukerからのTopasソフトウェアパッケージを使用して、ディフラクトグラムを分析した。ICDD、ICSDおよび/またはCODデータベース(ICDD、International Centre for Diffraction Data、Powder Diffraction file、Full File 2007、ICSD、International Crystal Structure Database、http://www.fiz-karlsruhe.de/icsd.html、COD、Crystallography Open Database、http://www.crystallography.net/)から取得した参照ディフラクトグラムを使用するRietveld精密化によって、観察された結晶相(単数または複数)を定量的な帰属を行った。
【0059】
試料の結晶相(単数または複数)は、全ての測定回折位置にフィットする1種の単一化合物と同定することができた。この構造は、同様のコバルト錯体(COD−2204721)から採用した。Dai-Xi Li、Duan-Jun XuおよびYuan-Zhi Xu、Acta Crystallographica、セクションE60(12) (2004) (1982〜1984)も参照されたい。鉄およびコバルトは周期表において隣接しており、両方とも二価であり、匹敵できる原子半径(それぞれ156および150)を有するので、元素置き換えは正当である。
【0060】
試料のディフラクトグラムをモデルフィットと一緒に図3に示す。モデルのディフラクトグラムは測定データに非常によくフィットし、ビームおよび回折計の幾何形状を記載するためのモデルを使用した測定方法によって引き起こされた測定およびモデル化強度におけるわずかな不一致だけが観察され得た。測定データからのフィットの差異を灰色の曲線で下記に示す。
【0061】
錯体の化学式は、{[Fe(C)(HO)](HO)であった。
【0062】
構造を図4に表示する。化合物は、鉄原子が八面体幾何形状で2つの酒石酸ジアニオンおよび2個の水分子によって配位されている鉄ポリマー錯体である。各カルボキシル基のヒドロキシル酸素原子および1個の酸素原子は鉄原子にキレート化するが、このカルボキシル基の他の酸素原子は配位されてない。ポリマー鎖が水素結合を介して互いに連結されていることで、溶媒水分子で充填される空洞を形成する。
【0063】
誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−ES)実験を、硝酸を使用する密閉容器マイクロ波破壊による固体の試料を消化することによって行った。放射視界型ICP−ES(Spectro Arcos NT)によって、元素濃度を測定した。スカンジウムを内部標準として使用した。
【0064】
結果を表1および2に報告する。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
ステンレス鋼チューブ、長さ300mm、内部直径7.8mmをカラムとして、Alltech(No.9646)によって供給されたIOA 1000有機酸、および硫酸、c(H2SO4)=0.01mol/lを移動相として使用するクロマトグラフィーを介して、試料Aも分析した。
【0068】
メソ−D,L−TAおよび不純物の決定の結果を表3に示す。
【0069】
【表4】
結論:
【0070】
錯体の化学式は{[Fe(C)(HO)](HO)である。化合物は、鉄原子が八面体幾何形状で2個の酒石酸ジアニオンおよび2個の水分子によって配位されている鉄ポリマー錯体である。鉄は2+状態である。固体は、メソ形態におけるタータレート54.9wt%からなる(残部は、鉄、水および一部の副次的不純物である)。DまたはL体におけるタータレートは検出されなかった。副生成物も検出されなかった。試料Aは、大量の鉄(22wt%)および少量のマンガン(0.4wt%)を含有していた。カルシウムおよびマグネシウムなどの一部の痕跡量の金属が検出された。
(参考例3)
【実施例3】
【0071】
FeMTAに基づく水溶液を、参考例1および2に記載されている通りに生成した。この溶液の最初のpH3.8を、1M HClの添加によって3.5に、および引き続いてさらに、0.5pH単位のステップで最終的にpH1に減少させた。比較の理由で、FeClの希釈(0.7wt%Fe)水溶液を、希釈NaOH水溶液の添加によってステップ的pH増加にかけた。全てのこれらの様々なpH値で、EG&G Instruments potentiostat/galvanostatモデル263Aを使用して、遊離Fe3+濃度を測定した。
【0072】
図5に示されている通り、2.5より高いpHで、Fe(OH)の析出が観察される。メソ酒石酸の存在下、2.5より上のpHで、Fe3+は、それがメソ酒石酸とともに錯体を形成するので、溶液中に留まる。しかしながらpHが4.5を超えて増加するならば、この錯体は分解し始め、Fe3+は溶液からFe(OH)として析出し始める。
【0073】
図5に、遊離Fe(III)濃度に対するpHの影響を示し、ここで、
【0074】
【化1】
は、FeMTAに基づく水溶液に使用されており、
【0075】
【化2】
は、FeCl水溶液に使用されている
(参考例4)
【実施例4】
【0076】
FeMTAに基づく水溶液を、参考例1〜3に記載されている通りに生成した。合計の鉄含有量は、溶液の合計重量に基づいて3.75wt%であった。この溶液(実験4.1)を密閉容器内に室温で貯蔵した。溶液におけるFe(II)含有量を、(EG&G Instruments potentiostat galvanostatモデル263Aを使用する)サイクリックボルタンメトリー(CV)を使用し、Fe(II)およびFe(III)の含有量の和に対して、経時的に測定した。サイクリックボルタンメトリーは、白金作用電極、Ag/AgCl基準電極および白金対電極を有する三電極系を使用して行われる。100〜120mlの1モルHClを有するガラスビーカーに、250マイクロリットルの試料溶液を添加する。電位掃引を、+0.65ボルトから出発し、+0.80ボルトまで上に、+0.10ボルトまで下に、および+0.65ボルトに戻って(全ての電位対Ag/AgCl参照電極)25mV/sの走査速度で行う。この掃引中に電流を測定する。第2および第3の走査の平均を使用することで、Fe(II)含有量を算出した。相対的なFe(II)含有量(合計鉄wt%)は、Fe(II)のシグナル(即ち、Fe(II)酸化の平均制限電流の絶対値)を、Fe(II)のシグナルおよびFe(III)のシグナルの和(即ち、Fe(III)還元の平均制限電流の絶対値)で割ることによって算出される。試料のFe(II)含有量(絶対wt%における)を、その試料のCV測定および合計鉄3.75wt%を含有するFeCl参照溶液のCV測定の得られる電流に基づいて算出する。4日目の時点で、析出物が形成された。表4に結果を要約する。Fe(II)含有量は、溶液の合計重量に基づいて最大およそ0.1wt%まで増加した。
【0077】
FeMTAに基づく別の水溶液を、参考例1〜3に記載されている通りに生成した。合計鉄含有量は、溶液の合計重量に基づいて3.75wt%であった。この溶液を数カ月間貯蔵し、その後、析出物が形成された。150ミクロンのキャンドルフィルターを使用し、この溶液の一分量を濾過することで、固体を除去した。この濾過溶液(実験4.2)をループ内で循環させ、図2に示されている通りの電解循環系を使用する電解ステップにかけた。電解条件は図2に基づき以下の通りであった:充填床陽極(1.5cm厚の黒鉛顆粒層を有する0.04m Pt/Tiの電極)および0.04m Pt/Tiの電極を有する電解セルをアニオン交換膜とともに使用することで、陽極液(FeMTA溶液)から陰極液(およそ2M HCl)を分離した。2つのポンプを使用して、陽極液および陰極液の溶液を、対応する容器および電気化学セル上に循環させた。陽極と陰極との間の印加電位差は1ボルトであった。電流密度はFe(II)含有量に依存し、プロセス中に減少する。試料をとり、記載されている通りのCVを使用してFe(II)含有量を測定した。
【0078】
結果を表4に要約する。
【0079】
実験4.2に関するFe(II)含有量を、実験4.1に関して示されている通りに測定した。2日以内に、Fe(II)含有量を、溶液の合計重量に基づいて0.01wt%未満に低減した。
【0080】
実験4.2に関してとった最終試料を密閉容器内に室温で貯蔵した(これは実験4.3であった)。Fe(II)含有量を再び、実験4.1に関して示されている通りに経時的に測定した。予想される通り、50日後、Fe(II)含有量はおよそ0.05wt%に増加していた。これらの結果も表4に要約する。
【0081】
【表5】
図1
図3
図4
図5
図2