(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS C 6481(1996)に準拠して測定される、前記剥離樹脂層からの前記金属箔の剥離強度が1〜100g/cmである、請求項1に記載の剥離樹脂層付金属箔。
前記非極性樹脂(A)と前記熱硬化性樹脂(B)の含有量比率(A/B)が、質量比で、60/40〜90/10である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の剥離樹脂層付金属箔。
前記非極性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレン系共重合体ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、及びフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の剥離樹脂層付金属箔。
前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、及びビニル基を有する樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の剥離樹脂層付金属箔。
【発明を実施するための形態】
【0013】
剥離樹脂層付金属箔
本発明の剥離樹脂層付金属箔が
図1に模式的に示される。
図1に示されるように、本発明の剥離樹脂層付金属箔10は、金属箔12の少なくとも一方の面に剥離樹脂層14を備えたものである。金属箔12の両面に剥離樹脂層14を備えていてもよいし、
図2に示されるように金属箔12を剥離樹脂層14の両面に備えていてもよい。そして、剥離樹脂層14は、(A)非極性樹脂50〜95質量部と、(B)熱硬化性樹脂4〜40質量部と、(C)離型剤1〜25質量部とを合計100質量部含んでなり、かつ、非極性樹脂(A)と熱硬化性樹脂(B)の含有量比率(A/B)が、質量比で、55/45〜96/4である。このような特定の組成を有する樹脂組成物で剥離樹脂層14を構成することで、熱間プレスに耐えうる材料でありながら望ましい剥離が実現可能となる。すなわち、剥離樹脂層14の破壊を生じさせることなく有意に低い剥離強度で金属箔12−樹脂層14間の剥離を実現することが可能となる。
【0014】
上述したように、プリプレグでありうる合成樹脂製の板状キャリアの片面又は両面に機械的に剥離可能に金属箔を密着させた、キャリア付金属箔は既に知られているが(例えば特許文献2参照)、プリプレグは補強基材が高価な材料であること、補強基材によっては繊維の折り目などによる表面のうねりが、ビルドアップ層を積層した際に伝搬し、ビルドアップ配線層のうねりにも大きく影響することなどから、プリプレグを含まない樹脂層を金属箔上に機械的に剥離可能に設けることができれば好都合である。また、金属箔自体の自己支持性や他の積層部材により所望の支持性を確保することができれば、樹脂層にキャリアとしての支持機能をプリプレグ等で持たせる必要もない。しかしながら、そのようなプリプレグを含まない樹脂層付金属箔の作製を実際に試みると、樹脂層から金属箔を剥離する際に、剥離強度が高すぎて剥がしにくかったり、あるいは剥離樹脂層の破壊(破断、割れ等)が生じたりする等の問題が生じうることが判明した。特に、剥離樹脂層はプリント配線板の製造工程で行われる熱間プレスに耐えうる材料であること(例えば熱間プレス時に流動して位置ずれを生じることがないこと)が望まれる。しかしながら、そのような要求を満たす樹脂材料はある程度の高い耐熱性を備えるものであり、通常の熱硬化性樹脂を使用した場合は一般的に脆くなりがちであり、それ故、剥離の際に剥離樹脂層の破壊を生じやすい。一方、樹脂層が柔らかすぎると熱膨張が大きくなり積層時のプレスに耐えられず位置ずれを生じやすくなり、そもそもプリント配線板用途に適さなくなる。したがって、熱間プレスに耐えうる材料でありながら望ましい剥離を実現可能な剥離樹脂層を備えた、剥離樹脂層付金属箔が望まれる。この点、本発明の組成を有する樹脂組成物で剥離樹脂層14を構成することで、熱間プレスに耐えうる材料でありながら、剥離樹脂層14の破壊を生じさせることなく有意に低い剥離強度で、金属箔12−剥離樹脂層14間の剥離を実現することができる。
【0015】
このように、金属箔12は、剥離樹脂層14を破壊することなく機械的に剥離可能であるのが好ましい。剥離樹脂層14からの金属箔12の剥離強度(引きはがし強さ)が、JIS C 6481(1996)に準拠して測定した場合に、1〜100g/cmであるのが好ましく、より好ましくは5〜50g/cmであり、さらに好ましくは7〜40g/cm、特に好ましくは10〜40g/cmである。上記範囲内の剥離強度であると、金属箔12−剥離樹脂層14間で必要な密着性を確保しながらも、剥離時には剥離樹脂層14の破断による樹脂残渣等の無い優れた剥離特性を有することができる。
【0016】
図2に示されるように、合計2枚の金属箔12が剥離樹脂層14の両面に設けられるのが特に好ましい。これにより、剥離樹脂層付金属箔10’の両側の金属箔12にビルドアップ配線層をそれぞれ形成して積層体(例えば銅張積層板)とした後、剥離樹脂層14と金属箔12の界面で、両側のビルドアップ配線層付積層体を剥離により互いに分離して後続のプリント配線板への加工に付することができる。その結果、プリント配線板の製造効率を大幅に向上することができる。また、剥離樹脂層付金属箔10’の両側の合計2枚の金属箔12の自己支持性によって剥離樹脂層付金属箔10’が全体として所望の自己支持性を備えることもできる。
【0017】
金属箔12の材質は特に限定されず、公知の種々の材質の箔であることができ、圧延箔及び電解箔のいずれであってもよい。金属箔12の例としては、銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、亜鉛箔、亜鉛合金箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、及びそれらの任意の組合せ等が挙げられる。好ましい金属箔12は銅箔又は銅合金箔である。なお、上述したように、合計2枚の金属箔12が剥離樹脂層14の両面に設けられてもよい。この場合、1枚の金属箔12を銅箔又は銅合金箔で構成して、もう1枚の金属箔12を他の材質の金属箔(例えばステンレス鋼箔)で構成してもよいし、2枚の金属箔12の両方を銅箔又は銅合金箔で構成してもよい。いずれにしても、金属箔が2枚である場合をも包含する表現として、金属箔の少なくとも1つが銅箔又は銅合金箔であるのが好ましいということができる。
【0018】
金属箔12の厚さは特に限定されないが、7〜210μmであるのが好ましく、より好ましくは9〜105μmであり、さらに好ましくは12〜70μmである。これらの範囲内の厚さであるとハンドリングがしやすく、キャリア箔やキャリア樹脂層等のキャリアも不要となる。
【0019】
金属箔12は、電解製箔又は圧延製箔されたままの金属箔(いわゆる生箔)であってもよいし、少なくともいずれか一方の面に表面処理が施された表面処理箔の形態であってもよい。表面処理は、金属箔の表面において何らかの性質(例えば防錆性、耐湿性、耐薬品性、耐酸性、耐熱性、及び基板との密着性)を向上ないし付与するために行われる各種の表面処理でありうる。表面処理は金属箔の少なくとも片面に行われてもよいし、金属箔の両面に行われてもよい。銅箔に対して行われる表面処理の例としては、防錆処理、シラン処理、粗化処理、バリア形成処理等が挙げられる。
【0020】
金属箔12の剥離樹脂層14と接合される側は粗化処理が施されていない平滑な表面であるのが剥離容易性の観点から好ましい。例えば、金属箔12の剥離樹脂層14と接合される側は、JIS B 0601(2001)に準拠して測定される算術平均粗さRaが0.05〜1.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。一方、金属箔12の剥離樹脂層14と接合されない側にはビルドアップ層との密着性を向上させるため粗化された表面であるのが好ましい。例えば、金属箔12の剥離樹脂層14と接合される側は、JIS B 0601(2001)に準拠して測定される算術平均粗さRaが0.05〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0μmである。
【0021】
剥離樹脂層14は、(A)非極性樹脂50〜95質量部と、(B)熱硬化性樹脂4〜40質量部と、(C)離型剤1〜25質量部とを合計100質量部含んでなり、かつ、非極性樹脂(A)と前記熱硬化性樹脂(B)の含有量比率(A/B)が、質量比で、55/45〜96/4である。このような組成を有する樹脂組成物で剥離樹脂層14を構成することで、熱間プレスに耐えうる材料でありながら、剥離樹脂層14の破壊を生じさせることなく有意に低い剥離強度で、金属箔12−剥離樹脂層14間の剥離を実現することができる。また、前述したとおり、剥離樹脂層14は材料コストを安価とする点、また、ビルドアップ層のうねりを低減する点等からプリプレグを含まないのが好ましい。
【0022】
非極性樹脂は、極性を有しない樹脂であれば特に限定されない。樹脂が極性を有すると金属箔への密着性が過度に高くなる傾向があるが、非極性樹脂を用いることで密着性を適度に低下させて剥離容易性を剥離樹脂層14に付与することができる。もっとも、非極性樹脂は溶剤に可溶なものであるのが樹脂剥離層14を塗布により形成しやすいことから好ましい。溶剤に可溶な非極性樹脂の好ましい例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレン系共重合体ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、フッ素樹脂、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、中でも溶剤への溶解性及び塗布成形性の点からスチレン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。非極性樹脂は一種単独で用いられてもよいし、二種以上が併用されてもよい。剥離樹脂層14における非極性樹脂の含有量は、非極性樹脂、熱硬化性樹脂及び離型剤の合計量100質量部に対して、50〜95質量部であり、好ましくは55〜90質量部、より好ましくは60〜80質量部である。
【0023】
熱硬化性樹脂は、熱硬化性官能基を有する樹脂であれば特に限定されず、公知の様々な熱硬化性樹脂が使用可能である。熱硬化性樹脂を含むことで剥離樹脂層14に熱間プレスに耐えうる特性を付与することができる。熱硬化性樹脂の好ましい例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ビニル基を有する樹脂(例えばスチレンで変性された樹脂)、及びそれらの任意の組合せが挙げられるが、中でもビニル基を有する樹脂が特に非極性樹脂との相溶性を保持する点で好ましい。その中でも、芳香族炭化水素系骨格のビニル基含有樹脂、特にスチレン誘導体型樹脂が剥離性樹脂層に耐熱性を付与できる点で好ましい。更にこの中でも、ポリフェニレンエーテル樹脂のスチレン誘導体(以下、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂)が剥離性樹脂の耐熱性及び剥離性、強靭性を保持させる観点で特に好ましい。熱硬化性樹脂は一種単独で用いられてもよいし、二種以上が併用されてもよい。剥離樹脂層14における熱硬化性樹脂の含有量は、非極性樹脂、熱硬化性樹脂及び離型剤の合計量100質量部に対して、4〜40質量部であり、好ましくは8〜35質量部、より好ましくは15〜30質量部である。
【0024】
非極性樹脂(A)と熱硬化性樹脂(B)の含有量比率(A/B)は、質量比で、55/45〜96/4、好ましくは58/42〜92/8、より好ましくは60/40〜90/10である。このA/B比が小さすぎると、熱硬化性樹脂の割合が高くなる結果、剥離樹脂層14が硬いが故に脆くなり、剥離できないか、あるいは剥離を試みたとしても、剥離樹脂層14が破断、割れ等により破壊されやすくなる。一方、このA/B比が大きすぎると、熱硬化性樹脂の割合が低くなる結果、プリント配線板の製造工程で行われる熱間プレスへの耐久性が低下する(その結果、熱間プレス時に流動して位置ずれを生じうる)。
【0025】
離型剤は、公知の種々の離型剤が適宜使用であり特に限定されない。離型剤の含有により、剥離樹脂層14の剥離容易性をより一層向上させることができる。離型剤の好ましい例としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、中でもフッ素系化合物が離型性が付与される点で特に好ましい。フッ素系化合物の例としては、フッ素系界面活性剤、フッ素オイル等が挙げられる。シリコーン系化合物の例としては、シリコーンオイル、シリコーンエマルジョン等が挙げられる。剥離樹脂層14における離型剤の含有量は、非極性樹脂、熱硬化性樹脂及び離型剤の合計量100質量部に対して、1〜25質量部、好ましくは1〜10質量部である。このような範囲内の含有量であると、剥離が容易になるとともに、離型樹脂層14を成形した後の離型剤の表面濃縮を防止できる等の利点がある。
【0026】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて、剥離樹脂層14を構成する樹脂組成物に、熱可塑性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性粒子、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、界面活性剤、蛍光剤、粘度調整剤、カップリング剤等の添加剤を所望量含有させる構成としてもよい。すなわち、剥離樹脂層14を構成する樹脂組成物は、非極性樹脂、熱硬化性樹脂、離型剤、及び必要に応じて添加剤(任意成分)を含んでなるものでありうる。そのような添加剤の量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であればよく、例えば、非極性樹脂、熱硬化性樹脂及び離型剤の合計量100質量部に対して10質量部以下、5質量部以下、又は3質量部以下でありうる。
【0027】
必要に応じて、剥離樹脂層14は無機フィラーを任意成分としてさらに含んでいてもよい。すなわち、剥離樹脂層14は上記樹脂組成物から実質的になる(又はからなる)ものであってもよいし、上記樹脂組成物及び無機フィラーから実質的になる(又はからなる)ものであってもよい。無機フィラーは、樹脂組成物に使用可能な公知のものが適宜使用可能である。無機フィラーの好ましい例としては、シリカ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、アルミナ等が挙げられる。剥離樹脂層14における無機フィラーの含有量は、剥離樹脂層14の全体量に対して、70質量%以下(すなわち0〜70質量%)であり、より好ましくは50質量%以下であり、例えば40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってもよい(この場合、剥離樹脂層14における樹脂組成物の含有量は剥離樹脂層14の全体量に対して、30質量%以上(すなわち30〜100質量%)であり、より好ましくは50質量%以上であり、例えば60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上でありうる)。なお、剥離樹脂層14が無機フィラーを含有しない場合(すなわち無機フィラー含有量が0質量%の場合)には、剥離樹脂層14における非極性樹脂、熱硬化性樹脂及び離型剤の各含有量について言及される「質量部」なる単位は「質量%」と実質的に読み換えることが可能である。
【0028】
剥離樹脂層14の厚さは特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜100μmであり、さらに好ましくは10〜70μmであり、特に好ましくは15〜50μmである。これらの範囲内の厚さであると樹脂組成物の塗布により剥離樹脂層14の形成がしやすいとともに、望ましく高いせん断強度を確保することができ、それにより破断、割れ等の破壊が生じにくくなる。
【0029】
樹脂剥離層14の形成は、非極性樹脂、熱硬化性樹脂、離型剤、及び必要に応じて無機フィラーを上記所定の組成となるように溶剤(好ましくはトルエン等の有機溶剤)に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを金属箔12に塗布し、乾燥、及び加熱処理を施すことにより行うことができる。樹脂ワニスは、樹脂固形分が5〜50質量%であるのが好ましく、より好ましくは15〜40質量%である。乾燥は自然乾燥、風乾、及び加熱乾燥のいずれであってもよい。また、加熱処理は所望の樹脂剥離層14が形成されるかぎりその条件は特に限定されないが、例えば50〜200℃(好ましくは80〜180℃)の温度で例えば1〜10分間(好ましくは1〜5分間)行えばよい。
【0030】
プリント配線板
本発明の剥離樹脂層付金属箔はプリント配線板の製造用途に適する。したがって、本発明の剥離樹脂層付金属箔を用いてプリント配線板を好ましく製造することができる。プリント配線板は典型的には多層プリント配線板であり、絶縁層の厚さ、使用する金属箔の厚さ、これらの層数等の構成は公知のものが採用可能であり、特に限定されない。プリント配線板の製造もまた、コアレスビルドアップ法等の公知の方法を用いて行えばよい。例えば、コアレスビルドアップ法により多層プリント配線板を製造する場合、金属箔上に所望のビルドアップ配線層を形成した後、剥離樹脂層を剥離し、必要な加工を施して所望のプリント配線板を形成すればよい。
【0031】
以下、
図2に示されるような両面に金属箔12を備えた剥離樹脂層付金属箔10’を用いてコアレスビルドアップ法により多層プリント配線板の製造する方法の典型的な態様について説明する。この方法は、
図3及び4に示されるように、(1)剥離樹脂層付金属箔10’の両面(すなわち金属箔12の各表面)にビルドアップ配線層22を形成する工程と、(2)得られたビルドアップ配線層付積層体20を金属箔12と剥離樹脂層14の界面で分離する工程と、(3)得られた多層金属張積層板30に加工を施して多層プリント配線板を得る工程を含んでなる。以下、各工程について具体的に説明する。
【0032】
(1)ビルドアップ配線層の形成工程
この工程では、剥離樹脂層付金属箔10’の両面(すなわち金属箔12の各表面)に、絶縁層24と内層回路26を含む配線層とを交互に積層配置したビルドアップ配線層22を形成して、所望により熱間プレスを施して、
図3に示されるビルドアップ配線層付支持体20を得る。本発明において採用可能なビルドアップ工法は特に限定されない。例えば、金属箔12の表面に樹脂フィルムを張り合わせる手法、金属箔12の表面に樹脂組成物を塗布する手法等により、絶縁層24を設ける方法等を採用することができる。絶縁層24として樹脂フィルムを用いる場合には、樹脂フィルムの表面に銅箔に代表される金属箔を同時にプレス加工で張り合わせ、事後的に、必要に応じたビアホール等の層間導通手段27の形成と組み合わせて、当該金属箔をエッチング加工して、内層回路26を形成することができる。また、金属箔12の表面に樹脂フィルムのみを張り合わせ、その表面にセミアディティブ法で内層回路26のパターンを形成することもできる。
【0033】
また、樹脂組成物を塗布する手法により絶縁層24を形成する場合には、金属箔12の表面に当該樹脂組成物を塗布し、乾燥及び硬化させ、研磨作業を行った後に、必要に応じてビアホール等の層間導通手段27を形成すればよい。この場合、硬化した樹脂層の所望の位置に穿孔加工を施せばよい。その後、その穿孔部の孔内への導電性ペースト充填、当該孔内への導体ポスト挿入配置等を行い、その後、硬化した樹脂層の表面に導電性ペーストで回路形状を形成する又はセミアディティブ法で内層回路26を直接形成する等の工程を施せばよい。
【0034】
上述した方法によるビルドアップ配線層の形成操作を複数回繰り返すことにより、
図3に示されるようなビルドアップ配線層付積層体20が得られる。この段階で、必要に応じて、外層回路28を備える外層面にソルダーレジスト29を施してもよい。
【0035】
なお、ビルドアップ配線層を形成する最初の段階で、金属箔12の表面に、メッキレジスト等を用いて、回路形成を行う部分以外を被覆して、回路形成を行う部位に金、錫、ニッケル等からなる外層回路パターンを予め形成して用いてもよい。こうすることで、一面側の外層回路形状が既に組み込まれた状態の、ビルドアップ配線層付積層体を得ることができる。
【0036】
(2)ビルドアップ配線層付積層体の分離工程
この工程では、上記工程により得られたビルドアップ配線層付積層体20を、金属箔12と剥離樹脂層14との界面で分離して、
図4に示されるような互いに分離された多層金属張積層板30を得る。金属箔12と剥離樹脂層14との界面での分離は、金属箔12及び/又は剥離樹脂層14を引き剥がすことにより行うことができる。
【0037】
(3)多層プリント配線板の形成工程
この工程では、上記分離工程により得られた多層金属張積層板30の各々を用いて、所望の多層プリント配線板に加工する。多層金属積層板から多層プリント配線板への加工方法は公知の種々の方法を採用すればよい。例えば、多層金属張積層板30の外層にある金属箔12をエッチング加工して外層回路配線を形成して、多層プリント配線板を得ることができる。また、多層金属張積層板30の外層にある金属箔12を、完全にエッチング除去し、そのままの状態で多層プリント配線板として使用することもできる。さらに、多層金属張積層板30の外層にある金属箔12を、完全にエッチング除去し、露出した樹脂層の表面に、導電性ペーストで回路形状を形成する又はセミアディティブ法等で外層回路を直接形成する等して多層プリント配線板とすることも可能である。
【0038】
なお、上記例は両面に金属箔12を備えた剥離樹脂層付金属箔10’を用いた製造例であるが、片面にのみ金属箔12を備えた剥離樹脂層付金属箔10にも当該片面に関して同様に適用可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0039】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0040】
例1
樹脂組成物を含んでなる樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを用いて剥離樹脂層付銅箔を製造し、その評価を行った。具体的には以下のとおりである。
【0041】
(1)樹脂ワニスの調製
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)80質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)19質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)1質量部とを、溶剤であるトルエンに溶解し、樹脂固形分25質量%の樹脂ワニスを調製した。
【0042】
(2)剥離樹脂層付銅箔の作製
上述の樹脂ワニスを、厚さ18μmの電解銅箔の電極面(算術平均粗さRa:0.2μm)に均一に塗布し、風乾後、150℃で3分間の加熱処理を行い、剥離樹脂層を備えた電解銅箔、すなわち剥離樹脂層付銅箔を得た。このとき、剥離樹脂層の平均厚さは25μmとした。
【0043】
(3)評価
得られた剥離樹脂層付銅箔の剥離樹脂層を、厚さ18μmの別の電解銅箔の析出面(算術平均粗さRa:0.5μm)に当接させ、さらに当該別の電解銅箔の電極面(算術平均粗さRa:0.2μm)側を市販の100μm厚さのFR−4グレードのプリプレグの表面に当接させた。こうして得られた積層体を、圧力30kgf/cm
2及び温度190℃で90分間の熱間プレス成形を行って銅張積層板を製造した。そして、この銅張積層板を、ワークサイズに切断して、50mm幅の剥離強度測定用の直線回路を形成した。その後、その試験用の直線回路を用いて、JIS C 6481(1996)に準拠して、銅張積層板の剥離樹脂層から銅箔を剥離する際の、剥離強度を測定した。また、剥離強度を測定する際、剥離樹脂層に破壊があるかどうかを目視で確認した。
【0044】
例2
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)80質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)19質量部、離型剤として、シリコーン系粘着剤(X−40−3270−1、信越化学工業製)1質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0045】
例3
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)70質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)28質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−251、DIC製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0046】
例4
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)70質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)28質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−552、DIC製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0047】
例5
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)70質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)28質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0048】
例6
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)70質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)28質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−563、DIC製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0049】
例7
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)70質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)28質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(FC4430、スリーエム製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0050】
例8
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)70質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)28質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(FC4432、スリーエム製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0051】
例9
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)90質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)8質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0052】
例10
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)60質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)38質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0053】
例11
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)80質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)15質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)5質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0054】
例12
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(SIS5229P、JSR製)80質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)15質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)5質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0055】
例13
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)80質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)10質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)10質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0056】
例14
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)60質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)30質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)10質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0057】
例15
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)50質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)25質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)25質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0058】
例16(比較)
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)100質量部のみを用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0059】
例17(比較)
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)90質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)10質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0060】
例18(比較)
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)98質量部、熱硬化性樹脂は用いず、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0061】
例19(比較)
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)50質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)48質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)2質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0062】
例20(比較)
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)50質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)20質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)30質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0063】
例21(比較)
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)70質量部、熱硬化性樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(YDF−8170C、新日鉄住金化学製)18質量部、エポキシ樹脂の硬化剤として、フェノール樹脂(MEH7500、明和化成製)11質量部、エポキシ樹脂の硬化促進剤として、イミダゾール(2E4MZ、四国化成工業製)1質量部、溶剤としてトルエン:メチルエチルケトン=1:1(質量比)の混合溶媒を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0064】
例22
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2827、JSR製)80質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 2200、三菱瓦斯化学製)15質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)5質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0065】
例23
溶剤に可溶な非極性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(TR2003、JSR製)80質量部、熱硬化性樹脂として、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(OPE−2St 1200、三菱瓦斯化学製)15質量部、離型剤として、フッ素系界面活性剤(F−553、DIC製)5質量部を用いたこと以外は、例1と同様の手順により剥離樹脂層付銅箔の作製及び評価を行った。
【0066】
結果
例1〜23において得られた評価結果は表1及び2に示されるとおりであった。また、少なくとも例1〜15、22及び23においては熱間プレス時に剥離樹脂層が流動して位置ずれを生じることも無かった。これらの結果から、本発明によれば、剥離樹脂層の破壊を生じさせることなく有意に低い剥離強度で金属箔−樹脂層間の剥離を実現可能な、熱間プレスにも耐えうる、剥離樹脂層付金属箔を提供できることが分かる。
【表1】
【0067】
【表2】