特許第5936795号(P5936795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936795採便用の綿棒およびこれを含むイムノクロマトグラフィーを利用した検出キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5936795
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】採便用の綿棒およびこれを含むイムノクロマトグラフィーを利用した検出キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   G01N33/543 521
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-556884(P2015-556884)
(86)(22)【出願日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】JP2015070912
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-151373(P2014-151373)
(32)【優先日】2014年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西谷 公良
(72)【発明者】
【氏名】結城 久美子
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−229342(JP,A)
【文献】 特表2007−511768(JP,A)
【文献】 特開2006−242928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 1/00
G01N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)および(2)を含む、イムノクロマトグラフィ−を利用した検出キット。
(1)軸体の端部に綿体部が設けられた採便用の綿棒であって、
綿体部の外周面には、性質または種類の異なる糞便の採取量のばらつきを防ぐためのリング状のが、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置であって、かつ、綿体部の先端から2.0〜6.0mmの外周面に形成されている前記綿棒
(2)糞便由来のサンプルを不溶性担体中を展開させることにより、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、コンジュゲートは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたものであり、
前記不溶性担体は、
サンプルを供給するサンプル供給部と、
被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された検出部と、
を有する、前記テストストリップ
【請求項2】
性質または種類の異なる糞便が、排泄便及び直腸便である請求項1に記載の検出キット。
【請求項3】
(1)の綿棒は、排泄便を採取する場合には、溝部より先端で、直腸便を採取する場合には、綿体部全体で糞便を採取することで、採取量のばらつきを防止するための綿棒である、請求項2に記載の検出キット。
【請求項4】
(1)の綿体部の形状が、軸体の外周より拡径した円柱型である、請求項1〜3のいずれかに記載のイムノクロマトグラフィ−を利用した検出キット。
【請求項5】
(1)の円柱型の綿体部の直径が4.0〜5.5mm、長さが13.0〜15.0mmである請求項4に記載のイムノクロマトグラフィ−を利用した検出キット。
【請求項6】
コンジュゲートを有するコンジュゲート部が、テストストリップの前記サンプル供給部よりも下流側に配置されている請求項1〜のいずれかに記載の検出キット。
【請求項7】
軸体の端部に綿体部が設けられた採便用の綿棒であって、綿体部の外周面には、性質または種類の異なる糞便の採取量のばらつきを防ぐためのリング状のが、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置であって、かつ、綿体部の先端から2.0〜6.0mmの外周面に形成されている前記綿棒。
【請求項8】
性質または種類の異なる糞便が、排泄便及び直腸便である請求項7に記載の綿棒。
【請求項9】
綿棒は、排泄便を採取する場合には、溝部より先端で、直腸便を採取する場合には、綿体部全体で糞便を採取することで、採取量のばらつきを防止するための綿棒である、請求項8に記載の綿棒。
【請求項10】
綿体部の形状が、軸体の外周より拡径した円柱型である、請求項7〜9のいずれかに記載の採便用の綿棒。
【請求項11】
円柱型の綿体部の直径が4.0〜5.5mm、長さが13.0〜15.0mmである請求項10に記載の採便用の綿棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採便用の綿棒およびこれを含むイムノクロマトグラフィーを利用した検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法は、特異性や感度の高い検出が可能であることから広く普及している。イムノクロマトグラフィーを利用した検出に適用される試料としては、血液、尿、糞便などが挙げられ、これらは臨床検査試料として好適であり、診断上有用な試料として広く利用されている。
これらのうちでも、糞便中に含まれる被検出物質をイムノクロマトグラフィーを利用して検出するためには、特定量の糞便を採取する必要があり、そのために採便棒に各種の工夫がされているものがある。
例えば、特許文献1には、特徴となる採便棒が容器中央に収容された採便用容器が開示されている。該採便棒は、棒状部と先端の採便部からなり、採便部には棒状部の外径よりも拡径された複数の環状凸部が連設されている。このような凸部の形成により、糞便を採取する(掻き取る)作用が強くなり、採取すべき糞便が硬質便の場合でも容易に必要量採取することができる。
このほかに、特に糞便を採取するために特化したものではないが、形状に工夫をこらした綿棒としては、以下が知られている。
特許文献2には、鼻孔用洗浄綿棒が開示されている。当該綿棒の軸棒の先端に綿球が取り付けられ、綿球の周囲に溝のようなリング状のくぼみが形成されており、当該綿球には洗浄液が含浸されている。このリング状のくぼみを有することで花粉やホコリなどを拭き取り易くしたものである。
特許文献3には、耳掃除用の綿棒が開示されている。当該綿棒の軸体の端部に綿体部が設けられ、軸体に外耳孔より大きい当止め部が設けられ、綿体部の先端が軟骨性外耳道より奥へ突き入ることを阻止して、耳掃除の安全性を確保したものである。
特許文献4には、軸部と軸部の先端に当接部を有し、軸部に、人体の各挿入部位に応じて挿入可能な深さを示す目印が形成されている綿棒が開示されている。
ところで、ロタウイルスやアデノウイルスの感染は、大人だけではなく、乳幼児にも多くみられる感染である。したがって、乳幼児のロタウイルス等を検出するために採取される糞便としては、乳幼児のオムツ等に排出された排泄便のほかに、乳幼児の肛門に挿入して採取する直腸便も挙げられる。直腸便は、一般に排泄便に比べて固いことが多いため、同種の採便棒を同様に使用した場合には、排泄便では採取量が多く、直腸便では採取量が少なくなり、糞便の採取量にばらつきが生じるという問題がある。
さらに、採取された糞便は、適当な液体に懸濁されて、イムノクロマトグラフィーを利用して検出されるため採便用の綿棒の構成は、該イムノクロマトグラフィーを利用した検出系に対する影響が少ないものが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−317481号公報
【特許文献2】特開2003−339767号公報
【特許文献3】特開平7−194650号公報
【特許文献4】特開2005−13423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の採便棒は、直腸便と排泄便の両方を採取できるように構成されたものではない。また、従来技術の鼻や耳などに挿入される綿棒をそのまま糞便の採取に用いても糞便を適切に採取することはできない。
すなわち、特許文献1は、硬質便でも十分に採取できるように掻き取り作用を強化するために採便棒の周囲に凸部が形成されているが、あくまでも排出便から採取するために凸部が形成されたものである。このような凸部を有する採便棒は、直腸を傷つけることから糞便採取のために直接直腸に挿入することはできず、直腸便を採取するには不向きである。
また、特許文献2は、拭き取り易くするために、綿棒を湿らせ、綿棒の中心部分にくぼみが形成されている。このくぼみはあくまでも拭き取りをし易くするためのもので、位置、綿棒全体の大きさ、形状について言及はなく、糞便の採取に適したものとはいえない。
特許文献3は、軸部に挿入可能な深さを示す目印が設けられているものの、綿体部にはなんらの工夫はされておらず、また、綿棒の挿入部位は耳、鼻、口を想定しており、糞便採取や、肛門に挿入することについて一切検討がされていない。
特許文献4も、耳に挿入するために、奥へ突き入ることを防止するために軸部に止め部を設けたもので、綿体部には何ら工夫はされておらず、糞便の採取に用いることはできない。
本発明は、イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法において、糞便を試料として採取する場合に、直腸に挿入して直腸便を採取する場合及び排泄された排泄便を採取する場合のいずれにおいても必要量を適切に採取することができる採便用の綿棒およびこれを含むイムノクロマトグラフィーを利用した検出キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、糞便採取用の綿棒において、綿体部の外周面に、リング状の凹部または凸部を、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置に形成することにより、必要な量の糞便を採取できることがわかった。このような構成の綿棒により、軟便を採取する場合は、綿体部のうち、溝より先端部分に糞便を付着させることができ、また、直腸便に代表される硬質便を採取する場合は、綿体部全体を直腸に挿入して、綿体部全体に糞便を付着させることができるからである。
具体的には、本発明は、以下の構成を有する。
<1>以下の(1)および(2)を含む、イムノクロマトグラフィ−を利用した検出キット。
(1)軸体の端部に綿体部が設けられた採便用の綿棒であって、
綿体部の外周面には、リング状の凹部または凸部が、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置に形成されている前記綿棒
(2)糞便由来のサンプルを不溶性担体中を展開させることにより、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、コンジュゲートは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたものであり、前記不溶性担体は、
サンプルを供給するサンプル供給部と、
被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された検出部と、
を有する、前記テストストリップ
<2>(1)の綿体部の形状が、軸体の外周より拡径した円柱型である、上記<1>に記載のイムノクロマトグラフィ−を利用した検出キット。
<3>(1)の円柱型の綿体部の直径が4.0〜5.5mm、長さが13.0〜15.0mmであり、リング状の凹部または凸部が綿体部の先端から2.0〜6.0mmの外周面に形成されている上記<2>に記載のイムノクロマトグラフィ−を利用した検出キット。
<4>凹部が、溝である上記<1>〜<3>のいずれかに記載の検出キット。
<5>コンジュゲートを有するコンジュゲート部が、テストストリップの前記サンプル供給部よりも下流側に配置されている前記<1>〜<4>のいずれかに記載の検出キット。
<6>軸体の端部に綿体部が設けられた、採便用の綿棒であって、綿体部の外周面には、
リング状の溝が、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置に形成されている前記綿棒。
<7>綿体部の形状が、軸体の外周より拡径した円柱型である、上記<6>に記載の採便用の綿棒。
<8>円柱型の綿体部の直径が4.0〜5.5mm、長さが13.0〜15.0mmであり、リング状の溝が綿体部の先端から2.0〜6.0mmの外周面に形成されている上記<7>に記載の採便用の綿棒。
<9>凹部が、溝である上記<6>〜<8>のいずれかに記載の綿棒。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法において、試料として糞便を採取する場合に、直腸便などの硬質便を採取する場合は、綿体部全体を使用することにより、また、排泄便から軟便などを採取する場合には、綿体部の凹部または凸部より先端部分を使用することにより、1種類の採便用の綿棒で、性質・種類の異なる糞便の必要量を適切に採取することができる。
したがって、そのような採便用の綿棒によれば採取した試料をイムノクロマトグラフィーに適用して、正確な検出が可能となる。
さらに、本発明の採便用の綿棒の凹部または凸部を免疫反応に影響する成分を添加することなく綿体部と同材料で形成すれば、綿体部を検体希釈席等の液体に浸漬してサンプルを調整する場合にも免疫反応に余計な物質が溶出するおそれがなく望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の採便用の綿棒の模式構成図である。
図2】本発明の実施例に用いた採便用の綿棒の模式構成図である。
図3】イムノクロマトグラフィー用テストストリップの模式構成図である。
図4】本発明の採便用の綿棒の綿体部の形状のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(サンプル)
本発明において、試料としては糞便を用いる。糞便は、そのままサンプルとして用いてもよく、適宜希釈液によって希釈してサンプルとしてもよい。また、適宜希釈し濾過したものをサンプルとして用いてもよい。
【0009】
(被検出物質)
本発明の被検出物質としては、試料である糞便中に含まれ、抗原抗体反応を利用して検出し得るものであればいずれでもよく、ウイルス、寄生虫、タンパク質などが挙げられる。
例えば感染性胃腸炎は、ウイルスおよび寄生虫が主な原因であり、被検出物質となるウイルスとしては、ノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、エンテロウイルス等があげられ、被検出物質となる寄生虫としてはクリプトスピリジウム、アメーバ赤痢、ジアルジア等があげられる。
このほかにも、被検出物質となるウイルスとしてインフルエンザウイルス、被検出物質となるタンパク質としては、ヒトヘモグロビン、B型肝炎ウイルス抗体、C型肝炎ウイルス抗体、ヒト免疫不全ウイルス抗体等が挙げられる。
【0010】
(採便用の綿棒)
本発明に係る採便用の綿棒は、軸体の端部に綿体部が設けられた綿棒であって、綿体部の外周面には、リング状の凹部または凸部が、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置に形成されている。凹部または凸部は実質的に1つ形成されていればよい。
【0011】
(綿体部)
綿体部は、脱脂綿、化学繊維等の繊維体からなり、軸体の端部に設けられている。
綿体部の形状は、排泄便の採取のほかに肛門に挿入して直腸便を採取できるような形状である必要がある。このため断面形状は円形のほか、楕円形、多角形などが挙げられるが、このうちでも軸体の外周より拡径した円柱型であることが望ましい。直腸便を採取する場合、綿体部の全体が肛門に挿入されるため、綿体部の外周は全体が滑らかな形状であることが望ましく、特に先端の形状は丸みをおびていることが望ましい。したがって、全体の形状は円柱型(いわゆる俵型)、水滴型(雫型)、断面楕円型が望ましく、円柱型(いわゆる俵型)が最も望ましい。
円柱型の場合の断面直径は、4.0〜5.5mm、望ましくは、4.0〜4.5mmである。
また、円柱の長さは13.0〜15.0mm、望ましくは、13.5〜14.5mmである。
また、リング状の凹部または凸部の位置は、綿体部の先端から2.0〜6.0mmの外周面に形成され、望ましくは、2.6〜6.0mmであり、更に望ましくは2.6〜3.5mmである。
綿体部は、例えば、軸体の先端部に接着剤等を介して繊維体を巻きつけることにより形成される。
綿体部の表面には、糞便採取の妨げにならず、肛門への挿入の妨げにならず、また免疫反応への妨げにならない範囲であれば、各種の加工を施すこともでき、例えばエンボス加工などが挙げられる。
綿体部の形状のバリエーションを図4に示す。
図4aは、綿体部の全体形状がいわゆる水滴型(雫型)である。図4bは長軸方向の断面形状が細長い楕円である楕円型である。図4cは、いわゆる俵型(円柱型)であり、図4dは、俵型の表面にエンボス加工が施されている。いずれも、綿体部の外周面には、リング状の溝が、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置に形成されている。図4eは、俵型であり、外周面には溝ではなく、滑らかな凸部がリング状に形成されている。なお、図4中、綿体部の先端はいずれも、丸みを帯びた形状であるが、金型で成型した場合には製造の都合上このような形状になるところ、本発明では、このような丸みを有しているものも含めて、(c)〜(e)を俵型(円柱型)とよぶものとする。
【0012】
(軸体)
軸体は、紙、プラスチック等の素材からなり、端部に設けられた綿体部を排泄便の表面に当接して、あるいは直腸に挿入して糞便を採取しうる剛性を有するように形成されている。
また、軸体は、糞便採取者が軸体を把持した場合に滑ることがなく把持しやすい形状が望ましく、断面形状は、円形のほか、三角形、四角形等の多角形状が挙げられる。
軸体の長さは、糞便に手を触れることなく、綿体部を糞便に当接でき、また肛門に手を触れることなく綿体部を挿入できる長さがあればよく、かつ、採取した糞便を液体に懸濁させる場合には該液体の入った容器に挿入して綿体部を液体に浸漬できるような長さがあればよい。
具体的には、5〜20cm、より望ましくは10〜18cmである。
軸体の太さは、断面が円形の場合は、直径1.5〜3.5mm、より望ましくは2.0〜3.0mmである。
【0013】
(凹部または凸部)
凹部または凸部は綿体部の周面にリング状に実質的に1つ形成され、排泄便から糞便を採取するのに適当な量を付着せしめる位置にあればよく、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置に形成されている。
綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置とは、異なる性状の糞便であっても所定量の糞便を採取するためのものであり、凹部または凸部より先端部分で軟便を採取し、全体で直腸便などの硬質便を採取するためのものであり、望ましくは、20〜40%であり、更に望ましくは、25〜35%である。
より具体的には、綿体部の形状が、軸体の外周より拡径した円柱型であって、円柱型の綿体部の直径が4.0〜5.5mm、長さが13.0〜15.0mmである場合、リング状の凹部または凸部は、綿体部の先端から2.0〜6.0mmの外周面に形成されていることが望ましい。
凹部または凸部が実質的に1つ形成されているとは、綿体部を観察した場合に目視で2つの部分に分けられていることが認識できる程度のものであればよい。したがって、微視的に見れば必ずしも1条の凹部または凸部に限らず、ごく細い凹部または凸部が複数条近接して形成された場合も、概観上は1つの凹部または凸部に見えるため、これを含む意味である。凹部または凸部の深さおよび幅も、綿体部の2つの部分の境界が視認できる程度に形成されていればよい。
凹部の深さまたは凸部の高さは、上述のとおり視認できるものであればよく、0.5〜4.0mm、より望ましくは2.0〜3.0mmである。このうち、凸部については、本発明の採便用の綿棒が直腸にも挿入される場合を考慮すれば、凸部の高さや形状はその挿入の妨げにならず、挿入後の違和感の少ない形状であることがより望ましい。したがって、凸部の高さは0.5〜1.5mmくらいが望ましく、形状も滑らかなものが望ましい。
凹部の典型例としては溝が挙げられ、綿体部への溝の形成方法は、溝が刻設される方法であればいかなる方法でもよく、例えば綿体部を成型する金型内壁の一部に突条部を設け、金型内を綿体部が通過する際に突条に圧接されて溝を形成する方法などが挙げられる。
また、凸部の典型例としては線条体が挙げられ、綿体部へ線条体の形成方法は、いかなる方法でもよく、例えば、成型された綿体部の外周面に、さらに、同一素材である綿の線条体を接着剤とともに巻きつけ、巻きつけた部分が他の部分より軽く盛り上がるように成型する方法などが挙げられる。
【0014】
以下、本発明に係る採便用の綿棒の作用について説明する。
本発明の採便用の綿棒は、糞便の性状・種類、採取部位により糞便を付着させる綿体部の部位を適宜変更することができる。例えば、排泄便を採取する場合には、綿体部の凹部または凸部より先端部分に糞便を付着させ、また、肛門に挿入して直腸便を採取する場合には、綿体部全体を肛門に挿入して糞便を付着させればよい。また、糞便の性状が硬質の場合には、綿体部全体、軟質の場合には、凹部または凸部より先端部分に付着させればよい。
【0015】
(イムノクロマトグラフィーテストストリップ)
本発明のイムノクロマトグラフィーテストストリップは、糞便由来のサンプルを展開させることによりサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出する不溶性担体を有しており、前記不溶性担体は、サンプルを供給するサンプル供給部と、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された検出部とを有している。
コンジュゲートは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたものであり、テストストリップの一部にコンジュゲート部として配置されてもよいし、テストストリップとは別に、検体と混合されるように個別のコンジュゲート試薬として存在してもよい。
以下、テストストリップの一部にコンジュゲート部として配置される場合について、説明する。
上記サンプル供給部は、被検出物質を含有するサンプルを供給する部位であり、不溶性担体の一部に形成されており、サンプル供給部がコンジュゲート部の上流側となる。
上記コンジュゲート部は、コンジュゲートを含有する部位であり、上記サンプル供給部よりも下流側の不溶性担体上に形成される。
上記検出部は、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された部位であり、コンジュゲート部の下流側の不溶性担体上に形成される。
上流より下流に向かってサンプル供給部、コンジュゲート部、検出部の順で配置され、これらは同一の不溶性担体中に形成されてもよいし、それぞれ別体の不溶性担体が一部重なるように積層されたものであってもよい。
典型例としては、それぞれが別体の担体で構成され、サンプル供給部を担うサンプルパッド、コンジュゲート部を担うコンジュゲートパッド、検出部を担う検出パッドが順に積層されたテストストリップが挙げられる。各担体はその一部が上流および下流の担体に接触するように積層されている。
被検出物質を含有するサンプルがサンプルパッドに供給されると、サンプルはサンプルパッドを通過して下流側のコンジュゲートパッドへと流れる。コンジュゲートパッドでは、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとが複合体(凝集体)を形成する。その後、サンプルはコンジュゲートパッドの下面に接触して配置されている検出パッドへと展開される。
検出パッドでは被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化されているため、該複合体がここで免疫反応により結合して固定化されることになる。
固定化された複合体は、コンジュゲートに由来する吸光度あるいは反射光を検出する手段により検出される。
また、以下、テストストリップとは別に、コンジュゲートが個別のコンジュゲート試薬として存在する場合について説明する。
個別のコンジュゲート試薬の態様としては、例えば、フィルター中にコンジュゲートが内蔵されたフィルターチップが挙げられる。このようなフィルターチップを使って、検体希釈液を通過させることでコンジュゲートと被検出物質が結合し、複合体(凝集体)を形成する。これをコンジュゲートパッドを有さないこと以外は同一の前記テストストリップに供給することで、被検出物質を検出することができる。
【0016】
上記イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、プラスチック製粘着シートのような固相支持体上に配置させることが好ましい。該固相支持体は、サンプル及びコンジュゲートの毛管流を妨げない物質で構成する。また、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを固相支持体上に接着剤等で固定化してもよい。この場合、接着剤の成分等においてもサンプル及びコンジュゲートの毛管流を妨げない物質で構成する。該イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、イムノクロマトグラフィー用テストストリップの大きさ、サンプルの添加方法や添加位置、不溶性担体の検出部の形成位置、シグナルの検出方法などを考慮した適当な容器(ハウジング)に格納・搭載して使用することができ、このように格納・搭載された状態を「デバイス」という。
【0017】
(被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原)
本発明で用いられる被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原は、被検出物質に結合可能な抗体または抗原であり、被検出物質がウイルスや抗原の場合は抗体、被検出物質が抗体の場合は抗原が好ましい。被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原は、後述する標識体および検出部に固定化される。標識体および検出部に固定化される抗体または抗原は同一であってもよいが、標識体と検出部とで別のものであることが好ましい。
【0018】
(標識体)
本発明で用いられる標識体は、従来からイムノクロマトグラフィー用テストストリップに用いられている公知の標識体を用いることができる。例えば、金コロイド粒子や白金コロイド粒子などのコロイド状金属粒子、カラーラテックス粒子、磁性粒子、蛍光粒子などが好ましく、特に金コロイド粒子、カラーラテックス粒子が好ましい。
【0019】
(コンジュゲート)
本発明で用いられるコンジュゲートは、上記のような標識体に被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化されたものである。コンジュゲートは、被検出物質がロタウイルスおよびアデノウイルスを検出する場合、金コロイド粒子に抗ロタウイルスモノクローナル抗体および抗アデノウイルスモノクローナル抗体が固定化されたものが好ましい。
被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原を標識体へ固定化させる方法としては、物理吸着、化学結合等が挙げられ、物理吸着により固定化させるのが一般的である。
【0020】
(その他)
本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、さらに測定条件、サンプルに応じて他の試薬や構成を含み得る。
他の試薬としては、例えば非特異反応を防止するブロッキング剤が挙げられる。
他の構成としては、例えば、試料中における測定に不要な成分を除去するための3rd padや、不溶性担体を移動・通過したサンプルを吸収することにより、サンプルの展開を制御する吸収パッドが挙げられる。
本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの作製は実施例に記載の方法を適宜、修飾・改変して行うことができる。
【0021】
(キット)
本発明のイムノクロマトグラフィーを利用した検出キットは、前記採便用の綿棒と前記イムノクロマトテストストリップを含む。検出キットは、他にも検出に必要な試薬、試料の希釈液、試験用チューブ、取扱い説明書、テストストリップ格納用のハウジングなどを含んでもよい。
【実施例】
【0022】
[試験例1]本発明の採便用の綿棒を使って試料である糞便を採取する試験
1.本発明の綿棒
本試験例に用いた綿棒を図1、2に示す。本発明の綿棒は、軸体1の端部に綿体部2が設けられ、綿体部の先端近傍の外表面にリング状の溝3が1つ形成されている。軸体の長さは145mmあり、綿端部は軸体の先端から14.5mmであり、溝は先端から3mmの位置に形成されている。綿体部は、軸体に繊維状の綿を巻き付けることにより形成され、溝は、金型を綿体部が通過する際に金型内面に形成された凸状態により圧縮されることにより成型された。
軸体の断面形状円形であり、直径は2.5mmである。綿体部は円柱型(俵型)であり、断面の直径は4.5〜5mmである。溝の深さは約1mmであり、したがって溝のくびれ部の断面直径は2.5〜3mmである。
2.糞便の採取
試料は、ボランティアの糞便7検体から調整した。検体の性状内訳は、軟便3検体、硬質便4検体であった。
検体からの試料(糞便)の採取は、上記1.の綿棒を用いて綿体部先端より3mm、5mm、10mmの位置まで各検体の糞便を拭い、綿体部に糞便を付着させることにより糞便の採取を行った。採取した糞便の重量を測定した。結果を表1に示す。
3.結果と考察
軟便を綿体部の先端から3mmの位置まで採取した量の平均値は54mgであり、硬質便を先端から10mmの位置まで採取した量の平均値58mgにほぼ一致した。
したがって、試料の性状に応じて、綿体部の採取する位置を変更することにより、採取量を平均化可能であることが確認できた。たとえば、硬質便と軟便であれば、軟便の場合は、綿体部全体の表面積の30%の位置まで採取し、硬質便の場合は、ほぼ全体で採取すればよい。
【0023】
【表1】
【0024】
[試験例2]本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの作製例(3padタイプ)
プラスチック製粘着シート(a)に検出対象となる抗原に対する抗体(c1)およびコントロール試薬(c2)を固定化したメンブレン(b)を貼り、次いで、金コロイドに抗体を感作したコンジュゲートを含浸させたコンジュゲートパッド(d)を配置装着した。
さらに、このコンジュゲートパッドに重なるようにサンプルパッド(e)を配置装着し、反対側の端には吸収パッド(f)を配置装着した。
このように各構成要素を重ね合わせた構造物を一定幅に切断してイムノクロマトグラフィー用テストストリップを作製した。図3にイムノクロマトグラフィー用テストストリップの模式構成図を示した。
本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップのサンプルパッドに、試験例1で採取した糞便を希釈液に懸濁した溶液を添加し、コンジュゲートパッド、メンブレン中を展開させることで、検出を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法において、試料として糞便を採取する場合に、直腸便などの硬質便を採取する場合は、綿体部全体を使用することにより、また、排泄便から軟便などを採取する場合には、綿体部の凹部または凸部より先端部分を使用することにより、1種類の採便用の綿棒で、性質・種類の異なる糞便の必要量を適切に採取することができる。
したがって、そのような採便用の綿棒によれば、糞便の性状、採取方法によらず綿体部における採取部位を変えるだけで一定量を採取することができるため、イムノクロマトグラフィーに適用して、正確な検出が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
(1)軸体
(2)綿体部
(3)溝
(4)綿棒
(a)プラスチック製粘着シート
(b)抗体を固定化したメンブレン
(c1)検出対象に対する抗体
(c2)コントロール試薬
(d)コンジュゲートパッド
(e)サンプルパッド
(f)吸収パッド
【要約】
本発明は、イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法において糞便を試料として採取する場合に、糞便の性状・種類に関わらず検出に適した量を適切に採取することができる採便用の綿棒およびこれを含むイムノクロマトグラフィーを利用した検出キットを提供することを課題とする。
軸体の端部に綿体部が設けられた採便用の綿棒であって、綿体部の外周面に、リング状の凹部または凸部が、綿体部の表面積において先端より15〜40%に相当する位置に形成された綿棒およびイムノクロマトグラフィー用テストストリップを組み合わせたキットにより、上記課題を解決できる。
図1
図2
図3
図4