特許第5936797号(P5936797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936797イムノクロマトグラフィー用テストストリップ
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  • 特許5936797-イムノクロマトグラフィー用テストストリップ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5936797
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】イムノクロマトグラフィー用テストストリップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   G01N33/543 521
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-560112(P2015-560112)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2015074138
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-174816(P2014-174816)
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 いつみ
(72)【発明者】
【氏名】西谷 公良
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/001598(WO,A1)
【文献】 特開2007−259995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糞便由来のサンプルを不溶性メンブレン中を展開させることによりサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するイムノクロマトグラフィーを利用した検出における非特異反応抑制方法であって、以下の工程(a)〜(c)の工程を含む方法。
(a)サンプルと、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたコンジュゲートを接触させてサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を形成する工程
(b)前記複合体をポリスルホンからなる平均孔径が20〜50μmの多孔質性サードパッドを通過させて非特異反応物質を低減させる工程
(c)サードパッドを通過した前記複合体を不溶性メンブレン中を展開させて、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された検出部にて、前記複合体を検出する工程
【請求項2】
糞便由来のサンプルを不溶性メンブレン中を展開させることによりサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するイムノクロマトグラフィーを利用した検出方法であって、以下の工程(a)〜(c)の工程を含む方法。
(a)サンプルと、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたコンジュゲートを接触させてサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を形成する工程
(b)前記複合体をポリスルホンからなる平均孔径が20〜50μmの多孔質性サードパッドを通過させて非特異反応物質を低減させる工程
(c)サードパッドを通過した前記複合体を不溶性メンブレン中を展開させて、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された検出部にて、前記複合体を検出する工程
【請求項3】
請求項1に記載の非特異反応抑制方法または請求項2に記載の検出方法に使用されるイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、コンジュゲートは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたものであり、かつ以下の構成(1)〜(3)を有する前記テストストリップ。
(1)サンプル供給部を有するサンプルパッド
(2)サンプルパッドの下流であって、不溶性メンブレンの上流に配置されるポリスルホンからなる平均孔径が20〜50μmの多孔質性サードパッド
(3)被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出する検出部を有する不溶性メンブレン
【請求項4】
コンジュゲートが、コンジュゲートパッドに含浸されており、該コンジュゲートパッドはサンプルパッドの下流であってサードパッドの上流に配置されている、請求項に記載のテストストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイムノクロマトグラフィー用テストストリップおよびこれを利用した検出方法に関する。特に、糞便由来のサンプル中の被検出物質を検出するのに適したテストストリップおよびこれを利用した検出方法に関する。さらに、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを利用した検出における、非特異反応の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法は、特異性や感度の高い検出が可能であることから広く普及している。イムノクロマトグラフィーを利用した検出に適用されるサンプルとしては、尿、糞便、唾液、血液、血清などが挙げられ、これらは臨床検査サンプルとして好適であり、診断上有用なサンプルとして広く利用されている。
これらのサンプル中に含まれる被検出物質をイムノクロマトグラフィーを利用して検出するためには、サンプル中に含まれるさまざまな検出妨害物質を排除する必要がある。妨害物質としては、イムノクロマトグラフィーによるサンプルの展開そのものの妨げになるような、展開用の不溶性メンブレンの詰まりの原因となるような物質や、被検出物質が存在しないにも拘わらず、呈色反応を示すような、いわゆる非特異反応の原因となるような物質がある。この非特異反応の原因としては種々の要因が考えられるが、未だ明らかではない。
一般に、不溶性メンブレン中の詰まりの原因となるような物質を排除するためには、サンプルパッドにその分離機能を担保させたり、全血をサンプルとする場合には、血球を排除するために血球分離膜をサンプル添加部の下流に配置する方法が知られている。
また、特許文献1には、非特異反応を抑制するために、特定のポリマーを含有する緩衝液をイムノクロマトグラフィーの展開溶媒として用いる方法が開示されている。
また、特許文献2には、非特異反応を抑制するために、血清アルブミンおよび直鎖状水溶性ポリマーをコンジュゲートと共存配置させたイムノクロマトグラフィー検出装置が開示されている。
さらにまた、抗原抗体反応における非特異的反応をブロッキングする試薬としてゼラチン、カゼイン、ウシ血清アルブミンなどが一般に知られており、これらをイムノクロマト反応の系内に共存させる方法も種々知られている。
このように、検出妨害物質による影響を排除するための方法は種々知られているが、イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法において、糞便由来のサンプルを適用する場合にこれらの非特異反応を抑制する方法について検討されたものはこれまでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-344406号公報
【特許文献2】特開2002-148266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、糞便由来のサンプルを不溶性メンブレン中を展開させることによりサンプル中の被検出物質を検出するイムノクロマトグラフィーを利用した検出方法において、糞便に特有の非特異反応を抑制する方法および、これに用いるイムノクロマトグラフィー用テストストリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリスルホンまたはセルロースアセテートからなる多孔質性サードパッドを、不溶性メンブレンの上流に配置したテストストリップを利用することにより、糞便由来サンプルにおいても、非特異反応を抑制し、正確に検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。これらの材質は、全血をサンプルとして展開させるためのイムノクロマトグラフィーにおいて血球分離膜としては利用されることはあったが、糞便由来のサンプルを展開させるためのイムノクロマトグラフィーにおいては今まで全く利用されたことがなく、またその可能性についても検討されたことがないものである。本発明者らは、このようなもっぱら血球分離に適した材料を使って、糞便由来サンプルとコンジュゲートとの複合体を通過させることで、意外にも非特異反応が抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>
糞便由来のサンプルを不溶性メンブレン中を展開させることにより、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、コンジュゲートは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたものであり、かつ以下の構成(1)〜(3)を有する前記テストストリップ。
(1)サンプル供給部を有するサンプルパッド
(2)サンプルパッドの下流であって、不溶性メンブレンの上流に配置されるポリスルホンまたはセルロースアセテートからなる多孔質性サードパッド
(3)被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出する検出部を有する不溶性メンブレン
<2>
コンジュゲートが、コンジュゲートパッドに含浸されており、該コンジュゲートパッドはサンプルパッドの下流であってサードパッドの上流に配置されている、前記<1>に記載のテストストリップ。
<3>
多孔質性サードパッドの平均孔径が1〜100μmである前記<1>または<2>に記載のテストストリップ。
<4>
糞便由来のサンプルを不溶性メンブレン中を展開させることによりサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するイムノクロマトグラフィーを利用した検出方法であって、以下の工程(a)〜(c)の工程を含む方法。
(a)サンプルと、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたコンジュゲートを接触させてサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を形成する工程
(b)前記複合体をポリスルホンまたはセルロースアセテートからなる多孔質性サードパッドを通過させる工程
(c)サードパッドを通過した前記複合体を不溶性メンブレン中を展開させて、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された検出部にて、前記複合体を検出する工程
<5>
コンジュゲートが、コンジュゲートパッドに含浸されており、該コンジュゲートパッドはサンプルパッドの下流であってサードパッドの上流に配置されている、前記<4>に記載の検出方法。
<6>
多孔質性サードパッドの平均孔径が1〜100μmである前記<4>または<5>に記載の検出方法。
<7>
糞便由来のサンプルを不溶性メンブレン中を展開させることによりサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するイムノクロマトグラフィーを利用した検出における非特異反応抑制方法であって、以下の工程(a)〜(c)の工程を含む方法。
(a)サンプルと、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたコンジュゲートを接触させてサンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を形成する工程
(b)前記複合体をポリスルホンまたはセルロースアセテートからなる多孔質性サードパッドを通過させて非特異反応物質を低減させる工程
(c)サードパッドを通過した前記複合体を不溶性メンブレン中を展開させて、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された検出部にて、前記複合体を検出する工程
【発明の効果】
【0006】
本発明の、特定の材質からなるサードパッドを含むイムノクロマトグラフィー用テストストリップによれば、糞便由来のサンプル中の被検出物質を糞便に特有の非特異反応を起こさずに検出することができる。したがって、糞便中の被検出物質をイムノクロマトグラフィーを利用して、正確に検出することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のサードパッドを配置したテストストリップの模式構成図である。
図2】サードパッド無しのテストストリップの模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(サンプル)
本発明において、サンプルとしては糞便を用いる。糞便は、そのままサンプルとして用いてもよく、適宜希釈液によって希釈してサンプルとしてもよい。また、適宜希釈し濾過したものをサンプルとして用いてもよい。
【0009】
(被検出物質)
本発明の被検出物質としては、サンプルである糞便中に含まれ、抗原抗体反応を利用して検出し得るものであればいずれでもよく、ウイルス、寄生虫、タンパク質などが挙げられる。
例えば感染性胃腸炎は、ウイルスおよび寄生虫が主な原因であり、被検出物質となるウイルスとしては、ノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、エンテロウイルス等があげられ、被検出物質となる寄生虫としてはクリプトスピリジウム、アメーバ赤痢、ジアルジア等があげられる。このほかにも、被検出物質となるウイルスとしてインフルエンザウイルス、被検出物質となるタンパク質としては、ヒトヘモグロビン、B型肝炎ウイルス抗体、C型肝炎ウイルス抗体、ヒト免疫不全ウイルス抗体等が挙げられる。
【0010】
(イムノクロマトグラフィー用テストストリップ)
本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、糞便由来のサンプルを不溶性メンブレン中を展開させることにより、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するテストストリップであって、以下の構成(1)〜(3)を有している。
(1)サンプル供給部を有するサンプルパッド
(2)サンプルパッドの下流であって、不溶性メンブレンの上流に配置されるポリスルホンまたはセルロースアセテートからなる多孔質性サードパッド
(3)被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出する検出部を有する不溶性メンブレン
【0011】
コンジュゲートは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が標識体に固定化されたものであり、コンジュゲートの存在様式としては、コンジュゲートパッドとして、サンプルパッド、サードパッド、不溶性メンブレン以外の別のパッドに含浸された状態で存在してもよいし(タイプA)、サンプルパッドの一部にコンジュゲート部として存在してもよいし(タイプB)、さらには、テストストリップとは別に、検体と混合されるように個別のコンジュゲート試薬として存在してもよい(タイプC)。
【0012】
以下、コンジュゲートの存在様式が上記タイプAのテストストリップについて説明する。
サンプルの流れ方向の上流より下流に向かって、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、サードパッド、不溶性メンブレンの順で配置され、それぞれ上下の層と少なくとも一部が重複するように配置される。このような配置例のテストストリップを図1に示す。
このようなテストストリップのサンプルパッドに、被検出物質を含有するサンプルが供給されると、被検出物質はサンプルパッドを通過して下流側のコンジュゲートパッドへと流れる。コンジュゲートパッドでは、被検出物質とコンジュゲートが接触して複合体(凝集体)を形成しながら当該パッドを通過する。その後、複合体はコンジュゲートパッドの下面に接触して配置された多孔質サードパッドを通過し、不溶性メンブレンへと展開される。
不溶性メンブレンには、その一部に被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化されているため、該複合体がここで免疫反応により結合して固定化されることになる。固定化された複合体は、コンジュゲートに由来する吸光度あるいは反射光を検出する手段により検出される。
【0013】
次に、コンジュゲートの存在様式がタイプBのテストストリップについて説明する。
上記タイプAのテストストリップとの違いは、サンプルパッドとコンジュゲートパッドが一体になった点であり、つまり、サンプルパッドの一部にサンプル供給部およびコンジュゲート部が構成されている点である。
上記サンプル供給部は、被検出物質を含有するサンプルを供給する部位であり、上記コンジュゲート部は、コンジュゲートを含有する部位であり、サンプル供給部がコンジュゲート部の上流側となる。
【0014】
次に、コンジュゲートの存在様式がタイプCのテストストリップについて説明する。
上記タイプAのテストストリップとの違いは、コンジュゲートパッドが存在せず、コンジュゲートは個別のコンジュゲート試薬として存在する点である。例えば、フィルター中にコンジュゲートが内蔵されたフィルターチップが挙げられる。このようなフィルターチップを使って、検体希釈液を通過させることでコンジュゲートと被検出物質が結合し、複合体(凝集体)を形成する。これをコンジュゲートパッドを有さないこと以外はタイプAと同一の前記テストストリップに供給することで、被検出物質を検出することができる。
【0015】
(サンプルパッド)
本発明に用いられるサンプルパッドとは、サンプルを受け入れる部位であり、パッドに成型された状態で液体のサンプルを吸収し、液体と検出対象物とが通り抜けることができるどんな物質及び形態をも含む。サンプルパッドに適した材料の具体例として、ガラス繊維(グラスファイバー)、アクリル繊維、親水性ポリエチレン材、乾燥紙、紙パルプ、織物等が含まれるが、これらに限定されない。好適には、グラスファイバー製パッドが用いられる。該サンプルパッドには、後述するコンジュゲートパッドの機能を併せ持たせることも出来る。また、サンプルパッドには、抗体固定化メンブレンにおける非特異的反応(吸着)を防止・抑制する目的で、通常使用されるブロッキング試薬を含ませることができる。
【0016】
(サードパッド)
サードパッドは、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートの複合体を透過させることができるものであればいずれでもよいが、本発明では、糞便由来の非特異反応物質を捕捉することを目的とするため、サードパッドは、ポリスルホンまたはセルロースアセテートからなる多孔質性の部材である必要がある。これらの材質のサードパッドは、理由は定かではないがコンジュゲートと被検出物質の複合体を通過させるものの、糞便サンプルに起因する非特異反応物質を捕捉し、非特異反応を低減させることができる。一方で、ポリスルホンおよびセルロースアセテート以外の材質からなるサードパッドでは非特異反応を低減させる効果は認められなかった。すなわち、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、グラスファイバーにはそのような捕捉機能はなかった。
また、本発明の多孔質性サードパッドの平均孔径は、下限としては1μm以上が例示され、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましく、20μm以上が特に好ましく、25μm以上が最も好ましい。上限としては、100μm以下が例示され、80μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、55μm以下がさらに好ましく、50μm以下が特に好ましく、45μm以下が最も好ましい。また、平均孔径の範囲としては、上記下限と上限の組み合わせである1〜100μmが例示され、5〜80μmが好ましく、10〜60μmがより好ましく、15〜55μmがさらに好ましく、20〜50μmが特に好ましく、25〜45μmが最も好ましい。1μm未満では詰まりの原因となり、検体の流れ自体が遅くなるからであり100μmより大きいと前記非特異反応物質を捕捉する機能が低下するためと思われるからである。
上記平均孔径は、サードパッドの表面又は裏面の電子顕微鏡写真から求めたものである。
【0017】
(不溶性メンブレン)
本発明に用いられる不溶性メンブレンは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化された少なくとも1つの検出部を有する。被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原の不溶性メンブレン担体への固定化は、従来公知の方法で実施することができる。ラテラルフロー式のイムノクロマト試薬の場合には、上記の抗体または抗原を所定の濃度で含有する液を調製し、ノズルから液を一定の速度で吐出しながら水平方向に移動させることのできる機構を有する装置などを用いて、上記液をライン状に不溶性メンブレン担体に塗布し、乾燥させることにより固定化させることができる。上記液の抗体または抗原の濃度は0.1〜5mg/mLが好ましく、0.5〜2mg/mLがさらに好適である。また、抗体または抗原の不溶性メンブレン担体への固定化量は、ラテラルフロー式の場合には上記の装置のノズルからの吐出速度を調節することによって最適化でき、0.5〜2μL/cmが好適である。
なお、上記ラテラルフロー式のイムノクロマト試薬を用いた測定方法は、サンプルが毛細管現象により不溶性メンブレン担体に対して並行方向に移動するように展開する方式の測定方法である。
また、上記の抗体または抗原を所定の濃度で含有する液は、緩衝液に抗体または抗原を添加することにより調製することができる。該緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液など通常使用される緩衝液をあげることができる。緩衝液のpHは6.0〜9.5の範囲が好ましく、6.5〜8.5がより好ましく、7.0〜8.0がさらに好ましい。緩衝液には、さらに塩化ナトリウムなどの塩類、スクロースなどの安定剤や保存剤、プロクリンなどの防腐剤等を含んでもよい。塩類は塩化ナトリウムなどのようにイオン強度の調整のために含ませるもののほか、水酸化ナトリウムなど緩衝液のpHを調整する目的で添加するものも含まれる。
不溶性メンブレンに抗体または抗原を固定化した後、さらに、通常使用されるブロッキング剤を溶液あるいは蒸気状にして抗体または抗原を固定化した部位以外を被覆し、ブロッキングを行うこともできる。
なお、不溶性メンブレンには、従来からイムノクロマト試薬で用いられているコントロール捕捉試薬を固定化してもよい。該コントロール捕捉試薬は、アッセイの信頼性を担保するための試薬であって、コンジュゲートパッドに含ませたコントロール試薬を捕捉するものである。例えば、コンジュゲートパッドに標識されたKLHをコントロール試薬として含む場合には、抗KLH抗体などがコントロール捕捉試薬に該当する。コントロール捕捉試薬を固定化する位置は、アッセイ系の設計に適合するよう適宜選択することができる。
【0018】
本発明で用いられる不溶性メンブレンを構成するメンブレンとしては、従来からイムノクロマト試薬の不溶性メンブレン担体として用いられている公知のメンブレンが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン類、ガラス、セルロースやセルロース誘導体などの多糖類、セラミックス等からなる繊維から構成されるメンブレンがあげられる。具体的には、ザルトリウス社、ミリポア社、東洋濾紙社、ワットマン社などから市販されているガラス繊維ろ紙やセルロースろ紙などが挙げられる。中でも、ザルトリウス社、UniSart CN140が好ましい。また、この不溶性メンブレン担体の孔径と構造を適宜選択することにより、コンジュゲートとサンプル中の被検出物質との複合体が不溶性メンブレン担体中を流れる速度を制御することが可能である。
【0019】
上記イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、プラスチック製粘着シートのような固相支持体上に配置させることが好ましい。該固相支持体は、サンプル及びコンジュゲートの毛管流を妨げない物質で構成する。また、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを固相支持体上に接着剤等で固定化してもよい。この場合、接着剤の成分等においてもサンプル及びコンジュゲートの毛管流を妨げない物質で構成する。該イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、イムノクロマトグラフィー用テストストリップの大きさ、サンプルの添加方法や添加位置、不溶性メンブレンの検出部の形成位置、シグナルの検出方法などを考慮した適当な容器(ハウジング)に格納・搭載して使用することができ、このように格納・搭載された状態を「デバイス」という。
【0020】
(被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原)
本発明で用いられる被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原は、被検出物質に結合可能な抗体または抗原であり、被検出物質がウイルスや抗原の場合は抗体、被検出物質が抗体の場合は抗原が好ましい。被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原は、後述する標識体および検出部に固定化される。標識体および検出部に固定化される抗体または抗原は同一であってもよいが、標識体と検出部とで別のものであることが好ましい。
【0021】
(標識体)
本発明で用いられる標識体は、従来からイムノクロマトグラフィー用テストストリップに用いられている公知の標識体を用いることができる。例えば、金コロイド粒子や白金コロイド粒子などのコロイド状金属粒子、カラーラテックス粒子、磁性粒子、蛍光粒子などが好ましく、特に金コロイド粒子、カラーラテックス粒子が好ましい。
【0022】
(コンジュゲート)
本発明で用いられるコンジュゲートは、上記のような標識体に被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原が固定化されたものである。コンジュゲートは、被検出物質がロタウイルスおよびアデノウイルスを検出する場合、金コロイド粒子に抗ロタウイルスモノクローナル抗体および抗アデノウイルスモノクローナル抗体が固定化されたものが好ましい。
被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体または抗原を標識体へ固定化させる方法としては、物理吸着、化学結合等が挙げられ、物理吸着により固定化させるのが一般的である。
【0023】
(その他)
本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、さらに測定条件、サンプルに応じて他の試薬や構成を含み得る。
他の試薬としては、例えば非特異反応を防止するブロッキング剤が挙げられる。
他の構成としては、例えば、不溶性メンブレンを移動・通過したサンプルを吸収することにより、サンプルの展開を制御する吸収パッドが挙げられる。
本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの作製は実施例に記載の方法を適宜、修飾・改変して行うことができる。
【0024】
(キット)
本発明のイムノクロマトグラフィーを利用した検出キットは、前記イムノクロマトグラフィー用テストストリップを含むものであればよい。本検出キットは、他に検出に必要な試薬、サンプルの希釈液、試験用チューブ、便採取用の綿棒、取扱い説明書、テストストリップ格納用のハウジングなどを含んでもよい。
【0025】
(その他)
本明細書中、上流または下流という意味は、サンプルの流れる方向の上流側、下流側という意味で用いる。すなわち、本発明のテストストリップで上からサンプルパッド、コンジュゲートパッド、サードパッド、不溶性メンブレンが一部で重なるように積層されている場合、サンプルパッドがもっとも上流であり、不溶性メンブレンが下流ということになる。また、不溶性メンブレンの下流側端部が重なるように上にエンドパッドが積層されることがあるが、この場合、エンドパッドがもっとも下流である。
【実施例】
【0026】
1.試験方法
(i)イムノクロマトグラフィー用テストストリップの作製
図1に、本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの模式構成図を示した。
プラスチック製粘着シート(a)に不溶性メンブレン(b)を貼り、次いで、サードパッド(g)、コンジュゲートパッド(d)、サンプルパッド(e)を順に配置装着し、反対側の端には吸収パッド(f)を配置装着した。コンジュゲートパッドには、金コロイドに抗アデノウイルスモノクローナル抗体を感作したコンジュゲートが含浸されており、不溶性メンブレンには、抗アデノウイルスモノクローナル抗体(c1)およびコントロール試薬(c2)が流れ方向に対して垂直にライン上に固定化されている。各パッドは、上下のパッドとその一部が接するように積層して配置される。抗アデノウイルスモノクローナル抗体(c1)からなるラインをテストライン、コントロール試薬(c2)からなるラインをコントロールラインという。
このように各構成要素を重ね合わせた構造物を一定幅に切断してイムノクロマトグラフィー用テストストリップを作製した。
比較例の「サードパッドなし」のテストストリップを図2に示す。本テストストリップはサードパッドが存在しないため、コンジュゲートパッドの流れ方向下流端部が不溶性メンブレンと、上流端部がサンプルパッドとそれぞれ接するように、サンプルパッドの長さが長いものに代えて配置装着した。
【0027】
(ii)サードパッドの平均孔径の求め方
適当な大きさに切り取ったサードパッドを試料台に固定し、Ptスパッタコーティングを施して検鏡用試料とした。日立製走査電子顕微鏡 S-4800を用い、加速電圧1.5kV、観察倍率200〜2000倍でサードパッドの表面及び裏面の写真撮影を行った。
表面および裏面上に観察される孔を6ポイントずつ選択し、これらの孔の直径を測定して、最大値及び最小値を除いた4ポイントの孔の直径の平均値を求めた。ここで、ポリスルホンからなる膜は、表裏で非対称膜のため、上流側として使う面の平均孔径を求めた。
測定結果を表1に示す。
【0028】
(iii)試験手順
正常成人4人の糞便を検体として用いた(検体はいずれもアデノウイルスフリーの陰性検体である)。各検体0.1mgを検体希釈液1000mlに懸濁し、その上清をサンプルとした。
表1に記載の素材からなるサードパッドを配置したテストストリップにサンプル120μLを滴下し、10分後にテストラインの発色強度を「カラーチャート」という色見本を用いて評価した。カラーチャートによる発色強度は0〜4まで0.25刻みの値で数値化されており、0.25未満の極めて弱い非特異反応についてはさらに、SS(非常に弱い)、S(弱い)という基準にて評価した。発色強度の評価結果から、非特異反応の強さの評価を行い、さらに、4検体の結果から総合評価を行った。各評価基準は、表1の下に示した。
【0029】
2.試験結果
試験結果を表1に示す。
本結果より、サードパッドとしてポリスルホンおよびセルロースアセテートからなるサードパッドを用いた場合には、非特異反応を抑制することができ、特にポリスルホンの場合により良く非特異反応を抑制することができた。この場合のサードパッドの多孔質の孔の平均孔径は20〜50μmであった。
一方、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ガラスファイバーからなるサードパッドを用いた場合は、非特異反応を抑制することができなかった。また、サードパッド自体を用いなかった場合も、テストラインに着色が観察され、非特異反応を抑制することができなかった(表中に示さず)。
【0030】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の、特定の材質からなるサードパッドを含むイムノクロマトグラフィー用テストストリップによれば、糞便由来のサンプル中の被検出物質を糞便に特有の非特異反応を起こさずに検出することができる。したがって、糞便中の被検出物質をイムノクロマトグラフィーを利用して、正確に検出することが可能となった。
【符号の説明】
【0032】
(a)プラスチック製粘着シート
(b)不溶性メンブレン
(c1)検出対象に対する抗体
(c2)コントロール試薬
(d)コンジュゲートパッド
(e)サンプルパッド
(f)吸収パッド
(g)サードパッド
【要約】
糞便由来のサンプルを不溶性メンブレン中を展開させることによりサンプル中の被検出物質を検出するイムノクロマトグラフィーを利用した検出方法において、糞便に特有の非特異反応を抑制する方法および、これに用いるイムノクロマトグラフィー用テストストリップを提供することを課題とする。
ポリスルホンまたはセルロースアセテートからなる多孔質性サードパッドを、不溶性メンブレンの上流に配置したテストストリップを利用することにより、糞便由来サンプルにおいても、非特異反応を抑制する方法および、これに用いるイムノクロマトグラフィー用テストストリップを提供する。
図1
図2