(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャップが前記外筒部に取り付けられた状態で、前記内筒部の先端が前記キャップの内面に形成された係止溝に嵌るように構成されている、請求項5に記載の一方弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば心臓カテーテル検査など、カテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入しそのカテーテルを通じて造影剤を注入する検査においては、注入される薬液が非常に高圧となることがある。そのため、この種の検査に用いられる一方弁は高い耐圧性能を有している必要がある。このような点に鑑み、特許文献2のような、一方弁としての機能を一時的に解除できる弁(以下、「開放機能付き一方弁」とも言う)であって、しかも高い耐圧性能を備えた弁の開発が従来より望まれていた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、一方弁としての機能を一時的に解除でき、しかも高い耐圧性能を備える開放機能付き一方弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一形態の一方弁は、下記の通りである。
1.
薬液を送るための流体回路に用いられる医療用の一方弁であって、
液体の入口および出口を有する弁室を構成するケーシングと、
前記弁室内において前記入口を閉塞するように配置されるとともに、該入口を開放するために弾性変形可能または変位可能に構成された弁体と、
前記ケーシングに移動可能に保持された可動部材であって、移動することによって前記弁体を弾性変形または変位させる可動部材と、
前記可動部材を覆うように前記ケーシングに取り付けられるキャップと、
を備え、
前記可動部材は、前記キャップよりも細径の軸部を有し、前記可動部材の一部と前記キャップの一部とが当接すること
で前記可動部材が前記キャップから抜けないように構成され
、かつ、可動部材の前記一部は前記弁室の外部に設けられている、
開放機能付き一方弁。
【0009】
なお、「可動部材の一部とキャップの一部とが当接する」とは、両部材が直接当接する形態に限らず、他の部材を介して間接的に当接する形態をも含む。
【0010】
2.前記キャップは、機械的固定手段によって前記ケーシングに固定される、上記1に記載の一方弁。
【0011】
3.前記キャップは、上面部と、その周縁部に一体に形成された周壁部とを有するもの(すなわち有底筒状)であって、
前記上面部には、前記可動部材の一部が通される開口部が形成されている、上記1または2に記載の一方弁。
【0012】
4. 前記可動部材は、
先端側が前記弁体に当接する作用部として形成された軸部を有し、
前記作用部は、前記弁体と前記弁室の壁面との間に入り込むくさび形状に形成されている、上記1〜3のいずれか1つに記載の一方弁。
【0013】
5.前記ケーシングは、
前記可動部材を保持する内筒部と、
その外側に形成され、前記キャップが取り付けられる外筒部と、
を有する、上記1〜4のいずれか1つに記載の一方弁。
【0014】
6. 前記キャップが前記外筒部に取り付けられた状態で、前記内筒部の先端が前記キャップの内面に形成された係止溝に嵌るように構成されている、上記5に記載の一方弁。
【0015】
7.前記可動部材が、さらに、
前記軸部に形成されたフランジ部を有する、上記4に記載の一方弁。
【0016】
8.さらに、
前記可動部材を、前記弁体から離れる方向に付勢する付勢部材を備える、上記1〜7のいずれか1つに記載の一方弁。
【0017】
9. 前記弁室の入口部分に、
前記弁室の壁面を窪ませるように形成された凹部であって前記弁体によって覆われる凹部が設けられており、液体を供給するための流路が該凹部内に連通している、上記1〜8のいずれか1つに記載の一方弁。
【0018】
10.さらに、
前記凹部に、前記弁体の一方の面を支持する突起が形成されている、上記9に記載の一方弁。
【0019】
11.前記ケーシングとして、
前記入口が形成されるケーシング本体と、
前記出口が形成され、前記ケーシング本体に取り付けられるクロージャー部材と、
を有し、
さらに、
前記ケーシング内に配置された支持部材であって、前記弁体の一方の面を押さえる弁体押えを有する支持部材を備える、上記1に記載の一方弁。
【0020】
12.前記支持部材の外周部が、
前記ケーシング本体と前記クロージャー部材との間に保持されるように構成されている、上記11に記載の一方弁。
【0021】
13.前記可動部材の作用部が、前記弁室の上面に対して同一面となるかまたは突出するように形成されている、上記4に記載の一方弁。
【0022】
14.前記弁室の形状が、前記出口側に向かって断面積が狭まるテーパ状に形成されている、上記1〜13のいずれか1つに記載の一方弁。
【0023】
15.さらに、
前記可動部材と前記ケーシングとの間をシールするためのリング状シール部材を備える、上記1に記載の一方弁。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一方弁としての機能を一時的に解除でき、しかも高い耐圧性能を備えた開放機能付き一方弁を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の一形態に係る一方弁について説明する。なお、以下の説明では、上、下、右、左などの方向を示す用語を用いるが、これは本発明を何ら限定するものではない。
【0027】
図1に示す本実施形態の一方弁1は、主に医療用の流体回路に利用されるものである。特には、この一方弁1は高い耐圧性能を有し、例えば心臓カテーテル検査に使用可能なものである。一方弁1は、
図1、
図2に示すように、弁室10を構成するケーシング50と、その弁室10内に配置される円板状の弁体25と、ケーシング50の一部に移動可能に保持された可動ピン60と、その可動ピン60を覆うようにケーシング50に取り付けられるキャップ70と、を備えている。
【0028】
この一方弁1には、供給チューブP1および排出チューブP2が接続される。一方弁1は、基本的には、供給チューブP1から排出チューブP2へと向かう流れのみを許容し、可動ピン60が押されている間のみ双方向の流れを許容する。なお、薬液の流れる方向はチューブP1、P2内の薬液の圧力に依存するものであるため、所定の圧力条件の下では、上記以外の流れ方向も可能である。一例として、P2側の液圧がP1側より高いような条件下では、可動ピン60が押されていない状態では薬液は流れず、押されている間のみP2側からP1側に向かって薬液が流れることとなる。
【0029】
限定されるものではないが、ケーシング50、可動ピン60、キャップ70、および後述する支持部材21の各部品は一例として樹脂成形品であってもよい。
【0030】
ケーシング50は、
図1、
図2に示すように、供給チューブP1が接続されるケーシング本体40と、排出チューブP2が接続される略円筒形状のクロージャー部材30とを有している。クロージャー部材30がケーシング本体40に取り付けられると、両部材間に弁室10が形成される。弁室10の上流側には、薬液を弁室内に供給するための入口部11が形成され(
図2)、下流側には、薬液を外部へと送り出すための出口部13が形成されている。
【0031】
弁室10は概ね横向き円柱状のような形状であって、その下流側は、出口部13側に向かって断面積が徐々に小さくなるようなテーパ状となっている。弁室10内には、入口部11を開閉するための弁体25(詳細下記)や、その弁体25を押さえる支持部材21(詳細下記)が配置される。
【0032】
図5を参照してケーシング本体40の形状を詳細に説明する。ケーシング本体40は、
図5に示すように、弁室10を構成する円筒状(一例)の本体部41と、その上流側に設けられた本体部41よりも細い円筒状部分であって供給パイプP1が連結されるチューブ保持部48とを有している。ケーシング本体40の材質は、限定されるものではないが、弁内部が見えるように透過性を有するものであってもよいし、または、非透過性のものでもよい。
【0033】
チューブ保持部48の内部には供給チューブP1の端部が差し込まれる。液圧が上昇してもチューブが外れないように、供給チューブP1は従来公知の方法によって十分な強度でチューブ保持部48内に接続される。供給チューブP1の接続を作業性良く行うことができるように、チューブ保持部48に1つまたは複数のリブが形成されていてもよい。この例では、円筒部49の上部および下部に、径方向に張り出したリブ49f、49fが1つずつ形成されている。
【0034】
本体部41は、
図5、
図6に示すように、円筒を横向きにしたような形状であり、その内部に弁体25(
図1参照)およびそれを押さえる支持部材21が配置される(これらの部材については詳細下記)。
図6に示すように、本体部内の壁面41hの一部には、薬液を供給するための入口部11が形成されている。
【0035】
この例では、入口部11には、壁面41hを部分的に窪ませるように形成した凹部11a(
図4、
図6参照)が設けられており、この凹部11aに流路11cが連通している。
図4に示すように、凹部11aと流路11cの境界部分にはチャンファー面11bが形成されている。また、
図6に示すように凹部11aの輪郭形状は円形であり、凹部11a内には、一例として3つのリブ43Raが形成されている。これらのリブ43Raは、放射状に、互いに等間隔に形成されている。リブ43Raは、弁体25の前面を支持する役割を果たす(詳細下記)。
【0036】
図6に示すように、入口部11の周囲には、弁体25の外周部を支持するための複数の支持リブ43Rbが形成されている。一例として、6つの支持リブ43Rbが、互いに等間隔で放射状に配置されている。
【0037】
弁体25は、
図1に示すように、一例として円板状であり可撓性を有している(可撓性を有していない弁体については後で再度説明する)。弁体の厚みは均一であってもよい。弁体の材質は、例えばシリコーンゴムであってもよく、その硬度は一例で5°以上90°以下の範囲、好ましくは40°以上80°以下の範囲、さらに好ましくは60°以上80°以下の範囲であってもよい。弁体25は、入口部11を閉塞できる程度の直径を有している。
【0038】
弁体25を押さえるための支持部材21は、
図8に示すように、リング状のフレーム27と、その中心部に配置された略コーン形状(円錐形状)の押さえ部23と、押さえ部23とフレーム27とを繋いで押さえ部23を支持する4本(一例)の支持アーム26を有している。押さえ部23は弁体25の方向に向かって突出しており、その先端部で、弁体25の背面の中心部付近を押さえる。
【0039】
支持部材21によるこのような支持方法によれば、弁体25の外周部付近が拘束されていないため、自由に弾性変形可能となる。弁体25は、基本的には、
図2に示すように入口部11を塞ぎ、弁室10から供給パイプP1側に向かう流れを阻止する。一方、供給パイプP1から薬液が供給される場合には、その液圧によって弁体25の外周部が弾性変形し、これにより薬液の弁室10内への薬液の流入を許容する。
【0040】
再び支持部材21の説明に戻る。
図8に示すように、支持部材21は、仮に弁室内に気泡が混入した場合であってもその気泡を弁室外に良好に排出できるように、各部の形状がR状またはテーパ状に設けられている。具体的には、各支持アーム26の流れ方向上流側にはなだらかなR形状が形成されている。また、フレーム27に関しても、流れ方向上流側ほどフレームの板厚が薄くなるようなテーパ形状となっている。このような構成よれば、支持アーム26やフレーム27の断面形状が単純な矩形の場合と比較して、気泡が下流側に流れ易いという利点がある。
【0041】
なお、気泡を取り除く作業としては、限定されるものではないが、例えば一方弁1全体を排出チューブP2側が上となるように起こして、ユーザーが手または所定の道具を用いて軽く弁を叩くことによって気泡を下流側に逃がすものであってもよい。ケーシング40の材質が透明の場合、ケーシング内に気泡が残っているか否かを良好に視認することができる。さらに、本実施形態のように弁室10の下流側が出口部13に向かって断面積が徐々に小さくなるテーパ状に形成されている場合、気泡を良好に外に逃がすことができる。
【0042】
上記構成の変形例しては、各支持アーム26のR形状に代えて、その断面形状を、流れ方向上流側ほど板厚が薄くなるようなテーパ状としてもよい。また、フレーム27にR形状が設けられていてもよい。
【0043】
再び
図2を参照する。支持部材21は、その外周部がケーシング本体40とクロージャー部材30との間に挟まれて支持される構成となっている。このような構成によれば、支持部材21を固定するための専用の部品または構造を設ける必要がない。また、支持部材21が弁室10内で回転するのを防止するために、
図5、
図8に示すように、フレーム27の外周部に突起27aが形成され、この突起27aがケーシング本体内の長手方向溝43gに係合するようになっていてもよい。
【0044】
なお、弁室10内に気泡を滞留させないために、本実施形態では可動ピン60の先端形状も所定の形状を有しているが、これについては後述する。
【0045】
次いで、可動ピン60およびそれが配置される構造部について説明する。
図2に示すように、可動ピン60が配置される収容スペース15は、ケーシング本体40の外筒部45(詳細下記)とそれに取り付けられるキャップ70とによって形成されている。
【0046】
キャップ70は、
図2、
図9に示すように全体として略有底筒状であって、この例では、平坦な上面部71と、その周辺部から下向に延び出した円筒状の周壁部73とを有している。上面部71には1つの開口部が設けられており、ここを通って可動ピン60の一部が外部へと突出している。
図9に示すように、周壁部73の内面には凸部76(一例として断面形状が矩形)が形成されている。この例では、凸部76は周壁部73の両側に1つずつ設けられている。
【0047】
本実施形態では、使用時に薬液に高い圧力が加わったとしてもキャップ70および可動ピン60が外れないように、キャップ70は十分な強度でケーシング本体40に取り付けられる。キャップ70を固定するための手段としては、例えば、接着剤にまたは溶着などを利用してもよいが、機械的な固定手段がより好ましい。機械的な固定手段としては、例えば、一方の部材の凸部が他方の部材の凹部に嵌合するもの、ネジ部どうしが螺合するもの、または、ネジもしくは固定ピンといった追加の固定具を利用して両部材を固定するものであってもよい。
【0048】
本実施形態では、一例として、キャップ70の内側の凸部76(
図9参照)が、ケーシングの外筒部45の外周に形成されたL字の溝45g(
図4参照)に係合する構成となっている。このような固定方式によれば、キャップ70を十分な強度で、しかも位置精度よく固定することができる。なお、必要であれば、キャップ70を外筒部45に取り付けられた後、接着剤等でさらなる固定を行ってもよい。
【0049】
次いで、可動ピン60について説明する。可動ピン60は
図7に示すように、一例として円形の断面形状の軸部61と、その一部に形成されたフランジ部67を有している。軸部61の先端側(下端側)には、弁体25に当接する作用部63が形成されている。
【0050】
作用部63は、
図4に示すように、弁体25の外周部を壁面41hから浮き上がらせることができるようにくさび形状に形成されている。具体的には、作用部63は、弁体25と壁面41hとの間に入り込む突出部63aと、その突出部63aの下流側に形成された平坦部63bとを有している。この平坦部63は、
図4の破線で示すように可動ピン63が上方に位置している状態で、弁室10の上面と同一面またはそれより突出するように構成されていることが好ましい。仮に、この平坦面63が弁室の上面よりも窪んだ位置となる場合、この部分に気泡が滞留してしまうおそれがあるが、上記構成とすれば、気泡を良好に下流側に流すことができる。
【0051】
再び
図7を参照すると、軸部61にはOリングR1(詳細下記)を嵌めるための環状溝61cが形成されている。フランジ部67はその環状溝61cより上方に形成されており、フランジ部67に円弧形状のガイド孔67aが4つ形成されている。軸部61の上端は、ユーザーによって、または、所定の機構によって押される部分であり、上端外周のコーナー部はR形状とされている。
【0052】
図5に示すように、可動ピン60は、ケーシング本体41の外筒部45内に配置される。外筒45の内側には内筒部46が形成されており、この内筒部46は断面形状が円弧形状の4つの壁片46aで構成されている。可動ピン60を外筒部45内にセットすると、各壁片46aが可動ピンの各ガイド孔67aに通された状態となる。各壁片46aは、可動ピン60の上下方向の動きをガイドする部材として機能するとともに、可動ピン60が中心軸周りに回転するのを防止する役割を果たす。
【0053】
上記のように構成された可動ピン60は、
図2、
図3に示すように、上下動できるように構成されている。まず、可動ピン60が第1の位置(上方位置)にある
図2の状態について説明する。
【0054】
この状態では、可動ピン60のフランジ部67の下方に配置されたコイルばね68の付勢力によって可動ピン60が上方に持ち上げられ、フランジ部67の上面がキャップ70の内面に押し付けられている。フランジ部67はキャップ70の開口部よりも大径に形成されているので、可動ピン60がキャップ外へと抜けることはない。本実施形態では、フランジ部67の上面およびキャップ70の内面がいずれも平坦面であって両部材が面で接触するようになっているので、キャップ70は、フランジ部67からの力を均一に受けることができる。
【0055】
可動ピン60がこの第1の位置にあるとき、可動ピン60の作用部63は弁体25から離れ、弁体25は入口部11を閉塞する。この状態では、一方弁1は、供給チューブP1側から排出チューブP2側への流れのみを許容する一方弁として機能する。なお、上述したように、薬液の流れる方向はチューブP1、P2内の薬液の圧力に依存するものであり、例えば、P2側の液圧がP1側より高いような流体回路で弁1を使用する場合には、可動ピン60が押されていない状態では薬液は流れず、押されている間のみP2側からP1側に向かって薬液が流れることとなる。本実施形態の一方弁1はこのように薬液の流れが特定方向に限定されるものではない。
【0056】
一方、
図3では、可動ピン60が下方に押され、第2の位置(下方位置)に移動している。可動ピン60は、コイルばね68の付勢力に抗しながら押し下げられ、
図3の位置まで移動した状態では、可動ピン60の作用部63が弁体25と壁面41hとの間に入り込み(
図4)、弁体25の外周部が弾性変形し、これにより入口部11が開放される。その結果、薬液が双方向に流れることができるようになる(いずれの方向に流れるかはP1、P2内の液圧に依存する)。
図3の状態で可動ピン60を押すのをやめると、コイルばね68の付勢力によって可動ピン60が再び第1の位置に戻り、弁体25が元の形状に戻って入口部11が閉塞され、弁1が一方弁として機能する状態となる。
【0057】
上述のとおり、本実施形態の一方弁1では、可動ピン60を押すことにより、弁の一方弁として機能を一時的に解除することができる。可動ピン1を押す手段は特に限定されるものではなく、例えば、ユーザーが手でまたは所定の道具を用いて可動ピン60を押してもよいし、所定の機構が可動ピン60を押すものであってもよい。
【0058】
図2、
図3を参照しつつ、弁の組立状態について説明を追加すると、可動ピン60にはOリングR1が嵌められ、これにより、可動ピン60と内筒部46との間のシール性が確保されている。このような構成の場合、OリングR1からの力を受けて、内筒部46に径方向外向き力が加わることになるが、本実施形態では、
図3に示すように、内筒部46を構成する各壁片46aの先端がキャップ70の上面部71の内面に形成された係止溝71gに嵌るように構成されている。したがって、内筒部46の先端側が拡がることが防止され、その結果、使用時においてもOリングR1によるシール性が良好に保たれる。
【0059】
一方弁1を構成する各部品の具体的な材質は特に限定されるものではないが、一例として、可動ピン60は摺動性の良いポリアセタール樹脂(POM)であってもよい。ケーシング50を構成する部品は、一例としてポリカーボネート樹脂(PC)であってもよい。また、必要に応じて、弁体25の外周面(特には、壁面41hに対向する面)に微細な凸凹形状が施されていてもよい。
【0060】
以上説明したように本実施形態の一方弁1は、可動ピン60を動かすことで一方弁としての機能を一時的に解除することが可能である。そして、この可動ピン60は収容スペース15内に配置されており、可動ピン60はキャップ70から抜けないように構成されている。したがって、仮に、使用時に薬液の圧力が上昇し可動ピン60に対して同ピンを押し出すような向きの大きな力が加わったとしても、その力はフランジ部67を介してキャップ70によって受け止められるので可動ピン60が外れることはない。よって、本実施形態の一方弁1は、薬液の高圧注入に良好に対応することができる。
【0061】
また、本実施形態では、キャップ70が機械的固定手段(45g、76)を用いてケーシング50に固定されている。そのため、例えば接着剤のみを用いてキャップ70を固定するものと比較して、十分な強度で、しかも位置精度よくキャップ70の固定を行うことができる。
【0062】
また、本実施形態では、弁室10の入口部11に
図6に示すような凹部11aが形成されているため、弁体25を僅かに変形させるだけで確実に入口部11を開放させることができる。すなわち、もしこのような凹部11aが形成されていない場合、入口部11を開放するためには中央の流路11cが開放される程度にまで弁体25を変形させる必要がある。これに対して本実施形態の構成によれば、
図6に示すように、弁体25の外周部が変形した時点で凹部11aが開放されそれに連通する流路11cも開放された状態となるので、弁体25の僅かな変形で入口部11の開閉を行うことが可能となる。
【0063】
一方、このように凹部11aを設けた場合、弁の使用時に弁体25の背面に加わる液圧が問題となる。すなわち、弁1をどのような流体回路内で使用するかによっても異なるが、仮に使用時に弁室10内の液圧が非常に高くなるような場合、その液圧によって弁体25が凹部11a側へと押し付けられることが想定される。この場合、もし凹部11a内に支持リブ43Raが設けられていないと、弁体25が凹部11aに張り付いたような状態となりうる。この状態では、可動ピン60の作用部63を弁体25と壁面41hとの間に押し込んだとしても、入口部11が十分に開放されない可能性がある。これに対して本実施形態のように、凹部11a内に支持リブ43Raが形成されていれば、弁体25が凹部11aに張り付いたような状態となることが防止され、可動ピン60の操作によって良好に入口部11を開閉できるようになる。なお、支持リブ43Raは必ずしも
図6に示したような形状に限定されものではなく、凹部11aの底部から突出する任意の形状の突起が形成されていてもよい。
【0064】
以上、図面を参照して本発明の一形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではなく、種々変更可能である。
例えば、上記では、弁体25が可撓性を有するものであってその外周部が弾性変形する例を説明したが、弁体25は可撓性を有していなくても良い。例えば、弁体は、可撓性のないプレート状の部材であって、(a)入口部11を閉塞する位置と、(b)入口部11を開放する位置との間で変位可能に構成されていてもよい。可動ピン60を押した場合に、この弁体は(b)の位置へと変位し、これにより入口部11が開放される。この場合、支持部材21は、少なくともその押さえ部23が弾性を有し、その押さえ部が弾性的に縮むことで上記弁体の変位を許容する構成としてもよい。
【0065】
支持部材の押さえ部の形状は、円錐型に限定されるものではなく、例えば円錐台型であってもよく、このような形状とすることでより広い面積で弁体が押さえられることとなる。
【0066】
キャップ70は、一方弁1の使用時に可動ピン60が抜けないように十分な強度でケーシング50に固定されるものであれば、その形状は特に限定されるものではなく、有底筒状以外の形状としてもよい。
【0067】
可動ピン60としては、外部からの力を受けて移動しそれにより弁体25を動かすものであれば、その形状は限定されるものではなく、ピン形状以外の形状を有していてもよい。本実施形態のようにピン形状とする場合、その断面形状は、円形に限らず、矩形および多角形等であってもよい。また、可動ピン60の抜けを防止するための構造として、上記実施形態では可動ピン60のフランジ部67がキャップ70の上面に当接するものを例示したが、抜け防止のための構造はフランジに限らず、可動ピン外周に設けられた単なる突起などであってもよい。また、可動ピン60をユーザーが手で押しやすくするために、可動ピン60の突出部に追加のキャップ(不図示)が取り付けられてもよい。
【0068】
上記例では、ケーシング50がケーシング本体およびクロージャー部材30で構成されていたが、ケーシングは弁室10を形成するものであれば、その部品点数や形状は限定されるものではない。
【0069】
弁体25は、円形の輪郭形状のものに限らず、楕円形、矩形、多角形等の輪郭形状を有していてもよい。また、上記では弁体25の厚みが一定のものを想定したが、弁体25の厚みが部位によって異なっていてもよい。
【0070】
なお、
図10は、本実施形態の医療用の一方弁1の外観を示す図であって、(A)は一方弁の平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図、(D)が斜視図である。左側面図は、(C)の右側面図と対称形に表れる。底面図は、キャップ部分を除き、(A)の平面図と対称形に表れる。(D)の斜視図は、可動ピンが押された状態を示している。
【0071】
(弁の他の機能)
さらに、本発明の他の形態に係る一方弁は次のようなものであってもよい。
【0072】
液体の入口および出口を有する弁室を構成するケーシングと、
前記弁室内において前記入口を閉塞するように配置されるとともに、該入口を開放するために弾性変形可能または変位可能に構成された弁体と、
前記ケーシングに移動可能に保持された可動部材であって、移動することによって前記弁体に当接してその弁体を弾性変形または変位させる可動部材と、
を備え、
前記可動部材を押すと、その移動量に対応する量の薬液が、前記出口を通じて弁室外に押し出される、開放機能付き一方弁。
【0073】
図3を参照してこの弁について説明する。この弁は、可動ピン60を押した際に、その移動量に対応した少量の薬液が弁室10内から押し出されるように構成されている。一方、可動ピン60を押すのをやめると、コイルばね68によって可動ピン68が元の位置に戻るとともに、弁体25が一時的に変形して弁室10内に再度薬液が補充される。このように、可動ピン60の操作で少量の薬液を押し出せる機能は、特に、例えば心臓カテーテル検査で造影剤を注入する場合に有効である。すなわち、この種の検査では、患者の血管内にカテーテルが挿入されることとなるが、一方弁が上記のような機能を有している場合、カテーテルの先端から少量の造影剤を出すこと可能となり、その結果、例えば、カテーテル先端が現在患者体内のどの部位にあるかの確認を良好に実施できる。