(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
乳房の癌やその他の異常を診断するために、乳房をX線撮影し画像を収集する乳房撮像法(マンモグラフィ)が広く使用されている。このマンモグラフィ装置において、撮影収集した乳房の画像データは、PACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像保管通信システム)等の画像サーバに格納され、画像ビューワに表示される。読影医はこの画像ビューワに表示された乳房の画像を読影し、乳房の病変の位置、病変の種類や内容をレポートとして作成する。このレポート作成に、コンピュータを用いたレポートシステムを使用することが増えている。
【0003】
レポートシステムは、例えばマンモグラフィガイドラインに基づいた、病変の種類や形状、特徴等の選択項目があらかじめ用意されており、読影医は、乳房の位置毎に、この項目に沿って該当欄にチェックを入力する等の操作を行ってレポートを作成する。
【0004】
また読影の補助機能として、マンモグラフィ装置で撮影収集した乳房の画像データを画像解析し、病変の位置座標と病変の種類を検出するCAD(Computer-aided Detection:コンピュータ支援診断装置)システムが使用されている。CADシステムで検出した病変の座標位置は、画像データに重畳して表示することが出来る。読影医はCADシステムによる検出結果を参考にして読影を行うことができる。
【0005】
マンモグラフィ装置で撮影した画像は独特であり病変の判別がしにくいため、読影には技術を要する。近年、読影医の不足により、マンモグラフィ装置で撮影収集した画像データを、ネットワークを介して読影医のいる読影施設に送信し読影を依頼する遠隔読影が行われている。読影医は、依頼施設から送信された画像データを読影して、レポートシステムにレポートを入力する。読影施設で入力されたレポートは、依頼施設に送信される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る医用画像処理装置1と、医用画像処理装置1を有する読影施設Bと、読影依頼施設Aのネットワークシステムの概略構成を示すブロック図である。読影施設Bと読影依頼施設Aとは、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。
【0013】
読影施設Bは、医用画像処理装置1とCAD装置(Computer-aided Detection:コンピュータ支援診断装置)9とが備えられており、施設内のLANを介して相互に通信可能に接続される。
【0014】
CAD装置9は、医用画像処理装置1が読影依頼施設Aから取得した画像を解析して、画像内の病変部の位置座標と病変の種類を検出する。
【0015】
読影依頼施設Aは、画像データベース6、マンモグラフィ装置7、端末8が備えられており、施設内のLANを介して相互に通信可能に接続される。
【0016】
マンモグラフィ装置7は、被検体の乳房をMLO(mediolateral oblique view;内外斜位撮影)方向とCC(craniocaudal view,頭尾方向撮影)方向との2方向で撮影を行い、撮影した乳房画像を画像データベース6へ送る。
画像データベース6は、マンモグラフィ装置7で撮影した乳房画像を格納する。
【0017】
図2は、医用画像処理装置1の概略構成を示すブロック図である。医用画像処理装置1は、制御部10、画像表示部11、レポート表示部12、操作部13、通信部15、記憶部16、情報処理媒体17、画像記憶部18、レポートサーバ19がバスによって相互に通信可能に接続されて構成されている。
【0018】
画像表示部11は画像ビューワ等のモニタであり、制御部10の制御に基づいて画像データを表示する。レポート表示部12も同様にモニタであり、制御部10の制御に基づいて、レポートデータ画面を表示する。詳細は後述する。
操作部13はキーボードやマウス等であり、データの入力を行う。
通信部15は、施設内LANに接続し、読影施設B内の装置との通信を行う。また通信部15は、ネットワークNに接続し、外部施設の装置との通信も行う。
【0019】
記憶部16は、制御部10や通信部15などのワーク領域となるもので、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。
情報記憶媒体17(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、ハードディスク、或いはメモリ(Flash Memory、ROM:Read Only Memory)などにより実現できる。情報記憶媒体17には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)、複数のアプリケーション等が記憶される。
【0020】
画像記憶部18は、マンモグラフィ装置7で撮影し制御部10が取得した乳房画像を格納する。また画像記憶部18は、データ変換部102でレポートデータを変換したDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)形式のMammography CAD SR(Structured Reporting)データを格納する。詳細は後述する。
【0021】
レポートサーバ19は、レポートを作成する際の病変の種類や特徴等の選択可能な項目を記憶している。これらの選択可能な項目はレポート入力画面としてレポート表示部12に表示され、読影医は、該当項目を選択入力してレポートを作成することができる。またレポートサーバ19は、読影医が入力したレポートデータを格納する。
【0022】
制御部10は、医用画像処理装置1の総括的な制御を行うとともに、その他の様々な演算処理や制御処理などを行う演算装置である。制御部10の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。制御部10は、情報記憶媒体17に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。
【0023】
制御部10は、画像取得部101、データ変換部102、領域抽出部103を含む。画像取得部101は、画像データベース6に格納されている乳房画像を取得する。データ変換部102は、レポートサーバ19に格納されたレポートデータを、DICOM形式のデータに変換する。
DICOMは、医用画像機器のネットワークにおける標準規格であり、一般的な医用画像機器はDICOM形式のデータにすることで相互に通信することが出来る。
領域抽出部103は、レポートサーバ19に格納されたレポートデータに基づき、乳房画像上の病変を含む領域を抽出する。詳細は後述する。
【0024】
図3は、端末8の概略構成を示すブロック図である。端末8は、制御部80、表示部82、操作部83、通信部85、記憶部86、情報記憶媒体87がバスによって相互に通信可能に接続されて構成されている。
【0025】
操作部83、記憶部86、情報記憶媒体87は、医用画像処理装置1と同様の動作を行うので説明を省略する。
表示部82はモニタ等であり、制御部80の制御に基づいて、マンモグラフィ装置7が撮影した画像データ等を表示する。
通信部85は、施設内LANに接続し、読影依頼施設A内の装置との通信を行う。また通信部85は、ネットワークNに接続し、外部施設の装置との通信も行う。
【0026】
制御部80は、端末8の制御およびマンモグラフィ装置7の動作の制御を行うとともに、その他の様々な演算処理や制御処理などを行う演算装置である。制御部80の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。制御部80は、情報記憶媒体87に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。
【0027】
制御部80は、乳房画像取得部801、データ変換部802を含む。乳房画像取得部801は、マンモグラフィ装置7で撮影した乳房画像を取得する。乳房画像取得部801で取得する乳房画像は、DICOMのデータであってもなくてもよい。データ変換部802は、乳房画像取得部801で取得した乳房画像がDICOMのデータでない場合に、DICOMのデータに変換する。詳細は後述する。
【0028】
次に、前述の構成の読影依頼施設Aおよび読影施設B内の装置の動作について説明する。まず、読影依頼施設Aが読影施設Bに乳房画像を送信する動作について、
図4を参照して説明する。
【0029】
読影依頼施設Aの端末8は、マンモグラフィ装置7で撮影した被検体の乳房画像を画像データベース6に格納する(ステップS101)。読影依頼施設Aの操作者が、画像データベース6に格納される乳房画像のうち、読影施設Bに読影を依頼したい画像を、端末8の操作部83を介して選択すると、端末8の乳房画像取得部801は、選択された当該画像を取得する。次にデータ変換部802は、当該画像についてDICOMのデータで無い場合、DICOM形式のデータに変換する(ステップS103)。そして通信部85は、ステップS103で変換したDICOM形式の乳房画像データを読影施設Bに送信する(ステップS105)。このとき、送信する乳房画像データには、撮影日時、患者ID、撮影時の解像度等といった付帯情報も付随している。
【0030】
図5に、マンモグラフィ装置7でMLO方向に撮影した左右の乳房画像の一例を示す。ここで乳房の部位について説明する。乳頭中央からフイルム縁へ下ろした垂線から尾側の部位をL、垂線と乳房下縁の長さと同じ長さを頭方に伸ばし、垂線と平行に引いた線とで囲まれた部位をM、それより頭側の部位をUとする。また乳頭近郊(乳頭中央から2cm)の部位をS、腋窩(本来の乳腺から外れた高い位置と判断される部位)はXとする。なお、
図5の乳房画像では、右乳房の部位Mに病変(腫瘍)a、左乳房の部位Mに病変(石灰化)bがあるものとする。
【0031】
次に、乳房画像データを受信した医用画像処理装置1の動作について、
図6を参照して説明する。
【0032】
制御部10は、ステップS105で読影依頼施設Aから送信された、DICOM形式の乳房画像データを通信部15を介して受信し、画像記憶部18に格納する(ステップS111)。また制御部10は、この受信したDICOM形式の乳房画像データを、通信部15を介してCAD装置9へ送信する(ステップS112)。
【0033】
ここで、ステップS112で乳房画像データを受信した後のCAD装置9の動作について、
図7を参照して説明する。医用画像処理装置1から乳房画像データを受信(ステップS151)したCAD装置9は、この画像データについて画像解析を行い(ステップS153)、病変部の検出および病変部の座標を算出する(ステップS155)。なおCAD装置9による画像解析は、既知の技術を用いてよい。次にCAD装置9は、DICOM形式のCAD処理結果のデータ(DICOM Mammography CAD SRデータ)を生成し(ステップS157)、医用画像処理装置1に送信する(ステップS159)。
【0034】
図6に戻り、制御部10はステップS111で受信した乳房画像データを画像表示部11に表示させる(ステップS113)。次に、通信部15はステップS159でCAD装置9が送信したDICOM Mammography CAD SRデータを受信し、画像表示部11に表示する(ステップS114)。このとき、CAD装置9から受信したDICOM Mammography CAD SRデータは、乳房画像データに重畳して画像表示部11に表示してもよい。次に操作者がレポート入力画面の起動を操作部13を介して指示すると、制御部10はレポート表示部12に、レポートサーバ19に記憶される選択可能な項目をレポート入力画面として表示させる(ステップS115)。読影医は、ステップS113で画像表示部11に表示された乳房画像を読影し、CAD装置9からのDICOM Mammography CAD SRデータを参照して、レポート表示部12に表示されるレポート入力画面の該当項目を選択しレポートを作成する。作成されたレポートは、レポートサーバ19に格納される(ステップS116)。
【0035】
図8に、
図5の乳房画像に対応し入力されたレポートの一例を示す。
図8(A)は、右乳房Rの部位Mにある病変aについてのレポート、
図8(B)は、左乳房Lの部位Mにある病変bについてのレポートである。レポートには、左右の乳房(R,L)、部位(U,M,L等)、および病変の種類や詳細等について記載されている。このレポートにおける選択項目は、例えばマンモグラフィガイドラインに則った項目であっても良いし、特定の形式を持たない自由項目であっても良い。
【0036】
次にデータ変換部102は、ステップS115でレポートサーバ19に格納したレポートのデータを、DICOM形式のCAD処理結果のデータ(DICOM Mammography CAD SRデータ)に変換し(ステップS117)、画像記憶部18に格納する(ステップS119)。そして通信部15は、ステップS114でCAD装置9から受信したDICOM Mammography CAD SRデータ、およびステップS117でレポートのデータから変換したDICOM Mammography CAD SRデータとを、読影依頼施設Aの端末8に送信する(ステップS121)。
【0037】
なお、ステップS157でCAD装置9が生成したDICOM Mammography CAD SRデータを、直接読影依頼施設Aの端末8に送信してもよい。この場合、端末8の表示部82は、CAD装置9で生成したDICOM Mammography CAD SRデータを、乳房画像に重畳表示する。このときの表示例を
図9に示す。
図9では、検出した病変a、bそれぞれを丸や四角で囲み、病変の具体的な位置がわかるように表示される。
【0038】
ここで、ステップS117におけるデータ変換処理の詳細について、
図10のフローチャートを参照して説明する。なお、
図5および
図8に示す乳房画像および病変を具体例とする。
【0039】
データ変換部102は、DICOM Mammography CAD SRのデータファイルを作成する(ステップS301)。次にデータ変換部102は、レポートサーバ19に格納されたレポートデータより、1つめの病変の部位を抽出する(ステップS303)。また領域抽出部103は、ステップS303で抽出した1つめの病変の部位を含む、乳房画像上の領域を抽出し、画像表示部11に強調表示する(ステップS305)。
図11に、病変を含む領域を強調表示した乳房画像の例を示す。なお、
図11において、右乳房の画像を画像1、左乳房の画像を画像2とする。
次にデータ変換部102は、ステップS301で作成したDICOM Mammography CAD SRのデータファイルに、ステップS303で抽出した病変の部位を記録する(ステップS307)。
【0040】
次にデータ変換部102は、当該1つめの病変について、レポートサーバ19に格納されたレポートデータより、病変の内容を抽出し(ステップS309)、ステップS301で作成したDICOM Mammography CAD SRのデータファイルに記録する(ステップS311)。
【0041】
データ変換部102は、レポートデータにある全ての病変の部位、病変の内容がDICOM Mammography CAD SRのデータファイルに記録したか否か判断する(ステップS313)。DICOM Mammography CAD SRのデータファイルに全ての病変が記録されていない場合は(ステップS313で「No」)、ステップS303の処理に戻る。
【0042】
図12に、
図8のレポートデータの内容を記録したDICOM Mammography CAD SRのデータファイルの例を示す。a1は病変aについての所見、b1は病変bについての所見を記録しており、レポートデータの項目毎にタグをつけ、1行毎に記録している。a1は、上から順に、1つめの病変aであることを示すタグ、画像1であることを示すタグ、病変の種類を示すタグ、腫瘍の形状を示すタグ、腫瘍の辺縁を示すタグ、腫瘍の濃度を示すタグ、腫瘍のある部位(図形データ)を示すタグを記録している。b1は、上から順に、2つめの病変bであることを示すタグ、画像2であることを示すタグ、病変の種類を示すタグ、石灰化の形態を示すタグ、石灰化の分布を示すタグ、石灰化のある部位(図形データ)を示すタグを記録している。なお、病変のある部位の図形データとは、
図11で強調表示した領域の形のデータである。
【0043】
なお、端末8の表示部82は、ステップS121で医用画像処理装置1が読影依頼施設Aに送信した、CAD装置9からのDICOM Mammography CAD SRデータと、レポートから変換したDICOM Mammography CAD SRデータとの両方を合わせて、乳房画像上に同時に重畳表示しても良い。この場合の表示例を
図13に示す。CAD装置9で生成したDICOM Mammography CAD SRデータは病変自体を丸や四角で囲んで具体的な位置が分かるように表示されるのに対して、医用画像処理装置1が生成したDICOM Mammography CAD SRデータは、病変を含む領域を強調表示する。これにより、画像解析結果と読影結果とが一致するか否かを一目で確認することが出来る。
【0044】
以上説明した実施形態によれば、読影施設Bは、読影依頼施設Aから受信した乳房画像よりレポートデータを作成し、当該レポートデータより、病変の部位および病変の内容についてDICOM Mammography CAD SRデータに変換して、読影依頼施設Aに送信する。これにより、遠隔読影を行った際に、読影依頼施設Aと読影施設Bが異なるレポートシステムを有していても、レポートデータを医療画像機器の標準規格であるDICOM形式のMammography CAD SRデータに変換することで、読影施設Bで作成されたレポートの内容に相当するレポートデータを読影依頼施設Aで参照することが可能である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。