特許第5936844号(P5936844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936844カレンダー表示デバイスおよびカレンダーウォッチ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936844
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】カレンダー表示デバイスおよびカレンダーウォッチ
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/253 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   G04B19/253 C
   G04B19/253 F
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-240096(P2011-240096)
(22)【出願日】2011年11月1日
(65)【公開番号】特開2012-98286(P2012-98286A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2014年9月12日
(31)【優先権主張番号】01827/10
(32)【優先日】2010年11月2日
(33)【優先権主張国】CH
(31)【優先権主張番号】01826/10
(32)【優先日】2010年11月2日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】510283546
【氏名又は名称】ソシエテ・アノニム・ドゥ・ラ・マニュファクチュア・ドーロジュリー・オードゥマール・ピゲ・エ・シ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ティボー・フィリッピンヌ
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−012375(JP,U)
【文献】 米国特許第02764828(US,A)
【文献】 米国特許第03760585(US,A)
【文献】 特表2006−524801(JP,A)
【文献】 特開平01−000489(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第00884544(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/24−19/253
G04C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にウォッチムーブメントを具備してなる機械的ウォッチピースのための、カレンダー表示デバイスであって、
前記カレンダー表示デバイスは、
1週間の7つの曜日を記号化した一連の刻印を複数有する曜日のディスクである第1のディスク(1)と、月の日付を記号化した刻印を有する日付のディスクである第2のディスク(2)と、1年の月を記号化した12の刻印を有する、月のディスクである第3のディスク(3)とを具備してなり、前記曜日のディスク(1)および前記日付のディスク(2)のうちの一方のディスク(1,2)は、固定されることによってダイアルとして機能し、これに対して、他方のディスク(2,1)は、前記ダイアルに対して同心状にかつ回転可能に配置されることによって回転ディスクとして機能し、前記ダイアルは開口(2.1)を具備してなり、前記開口(2.1)は、回転可能に取り付けられかつ前記ウォッチピースの前記ウォッチムーブメントによって直接的にまたは間接的に駆動される前記月のディスク(3)における現在の月の刻印を視認可能にするようになっており、かつ、
週の日付および曜日を同時に示すために、前記ダイアルに対して同心状にかつ回転可能に配置されるハンド(4)を具備してなり、
前記ウォッチピースの前記ウォッチムーブメントを発端として前記月のディスク(3)を直接的にまたは間接的に駆動するギアトレイン(6)と少なくとも協働する補正機構(9,10)を具備してなり、前記補正機構(9,10)は、双方向様式で前記ダイアル(1,2)において表示される月を変更できるように、前記月のディスク(3)を前進させかつ後退させるための手段を具備してなることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記月のディスク(3)を前進させかつ後退させるための手段は、一方では、前記月のディスク(3)を直接的にまたは間接的に駆動する前記ギアトレイン(6)とかみ合う補正ホイール(9.2)に固定された補正星状部(9.1)を具備してなり、かつ他方では、押圧によって作動可能となりかつ作動時に時計方向に対する反時計方向において前記補正星状部(9.1)の回転を引き起こす第1の補正レバー(10.1)および第2の補正レバー(10.2)を具備してなり、それにより、前記レバー(10.1,10.2)のうちの1つの作動時のそれぞれにおいて、前方または後方のいずれかにおいて1/12回転にわたって前記月のディスク(3)を駆動し、双方向様式で前記ダイアル(1,2)上に表示された月を変更可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記レバー(10.1,10.2)が作動しないときに、表示された月を補正する間に前記ギアトレイン(6)の連続が解放され一方で前記ギアトレイン(6)と前記月のディスク(3)とが主制御部(10.4)を用いてその現在のポジションに固定される様式で、前記第1の補正レバー(10.1)および前記第2の補正レバー(10.2)は、作動時に、前記月のディスク(3)を駆動する前記ギアトレイン(6)におけるカムホイール(6.4)上に配置された月のカム(6.4)と協働する前記主制御部(10.4)の上昇を、中間制御部(10.3)を用いて引き起こすものであることを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ウォッチピースが、前記ウォッチピースの前記ウォッチムーブメントを発端として前記月のディスク(3)と前記回転ディスク(1,2)とを個別に制御する2つの別個のギアトレインを具備してなる場合、表示される月に応じた前記回転ディスク(1,2)上の前記刻印と前記ダイアル(2,1)上の前記刻印との間の割り出しが自動的になされるよう、前記補正機構(9,10)の前進および後退のための前記手段が前記月のディスク(3)と前記回転ディスク(1,2)とを同時に制御する様式で、前記補正機構(9,10)は、前記月のディスク(3)を駆動する前記ギアトレイン(6)ならびに前記ウォッチピースの前記ウォッチムーブメントによって前記回転ディスク(1,2)を駆動する第2のギアトレインと同時に協働するよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ウォッチピースが、前記ウォッチピースの前記ウォッチムーブメントを発端として前記月のディスク(3)と前記回転ディスク(1,2)とを制御するために単一のギアトレイン(6)を具備してなる場合、表示される月に応じた前記回転ディスク(1,2)上の前記刻印と前記ダイアル(2,1)上の前記刻印との間の割り出しが自動的になされるよう、前記デバイスは、前記月のディスク(3)と前記回転ディスク(1,2)との間または前記回転ディスク(1,2)と前記月のディスク(3)との間に順運動リンク(7,8)を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記月のディスク(3)と前記回転ディスク(1,2)との間の前記順運動リンク(7,8)は、2つの別個の部品を具備してなることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記順運動リンクの第1の部品(7)は、前記月のディスク(3)の第2の内側歯状部(3.2)とかみ合うことが可能な第1の接続ピニオン(7.1)を具備してなり、前記第1の接続ピニオン(7.1)は、前記回転ディスク(1,2)の内側歯状部(1.1)と順にかみ合う第2の接続ピニオン(7.4)を有する第2の中間接続ホイール(7.3)を駆動する第1の中間接続ホイール(7.2)に接続されていることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記月のディスク(3)の前記第2の内側歯状部(3.2)は、12の等間隔角度部分を具備してなり、前記等間隔角度部分は、2月に対応する部分を除いて、前記回転ディスク(1,2)上の前記刻印と前記ダイアル(2,1)上の刻印との間の前記割り出しが表示される月に応じて自動的に実施される様式で前記月のディスク(3)を駆動することによって前記回転ディスク(1,2)が前進できるようにするノッチ(3.2.1)および歯(3.2.2)からなる連続部をそれぞれ具備してなることを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記順運動リンクの前記第1の部品(7)は、前記順運動リンクの前記第1の部品(7)とは独立して前記回転ディスク(1,2)を駆動できるようにする分離手段(7.5)を、好ましくはキャッチ・リリース機構を具備してなることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記順運動リンクの第2の部品(8)は、前記月のディスク(3)に固定されたピン(3.3)と協働できる4つ歯星状部(8.1)を具備してなり、
前記星状部(8.1)は、前記月のディスク(3)による前記星状部(8.1)の4分の1の作動時には常にうるう年の2月の月に関連して前記回転ディスク(1,2)における刻印と前記ダイアル(2,1)上の刻印との自動的な割り出しを行うために1つのステップを経て前記回転ディスク(1,2)が前進させられる様式で前記回転ディスク(1,2)の前記内側歯状部(1.1)とかみ合うことが可能なアクチュエーティングフィンガー(8.4)に固定された第2の中間ホイール(8.3)とかみ合う第1の中間ホイール(8.2)に固定されていることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記中間ホイール(8.2,8.3)の少なくとも1つは、ジャンパ(8.5)と協働可能な歯状部(8.2.1)を具備してなり、それは、その停止ポジションにおいて前記4つ歯星状部(8.1)を保持し、かつ、前記月のディスクに固定された前記ピン(3.3)による前記星状部(8.1)の作動後に、前記ジャンパ(8.5)がそれと協働する前記中間ホイール(8.2,8.3)を再位置決めするよう構成されており、そうしたポジションにおいて、前記月のディスク(3)へ向けて方向付けられた前記4つ歯星状部(8.1)の歯(8.1.1,8.1.2)が、前記月のディスクの回転方向にかかわらず、前記ピン(3.3)の経路内に位置させられるようになっていることを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記月のディスク(3)は、
前記ギアトレイン(6)であって、ひと月ごとの回転を実施するために前記ウォッチムーブメントによって駆動される駆動フィンガー(6.1)を具備してなり、かつ月のカム(6.4)を有するカムホイール(6.3)とかみ合う第1の中間駆動ホイール(6.2)を駆動する、前記ギアトレイン(6)によって、前記ウォッチピースの前記ウォッチムーブメントにより駆動され、
前記カムホイール(6.3)は、前記月のディスクがひと月ごとに1/12回転だけ回転する様式で、前記月のディスク(3)の第1の内側歯状部(3.1)とかみ合う駆動ホイール(6.8)を有する駆動ピニオン(6.7)とかみ合う第3の中間駆動ホイール(6.6)に固定された第2の中間駆動ホイール(6.5)を駆動するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記回転ディスク(2,1)は、前記ギアトレイン(6)による前記ウォッチピースの前記ウォッチムーブメントによって駆動され、前記月のディスク(3)は、前記回転ディスク(1,2)と前記月のディスク(3)との間に配置された前記順運動リンク(7,8)によって間接的に駆動されるものであることを特徴とする請求項5ないし請求項11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記日付のディスクである前記第2のディスク(2)は、固定されたダイアルを形成し、前記曜日のディスクである前記第1のディスク(1)は、前記ダイアルの周囲で回転可能なリングとして構成され、かつ、前記月のディスクである前記第3のディスク(3)は、前記ダイアルと同心状にかつその下方で回転可能に配置されたリングとして構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記曜日のディスクである前記第1のディスク(1)は、35の等間隔角度部分において、1週間の7つの曜日を記号化した一連の刻印を5つ有しており、前記日付のディスクである前記第2のディスク(2)は、前記第1のディスク(1)における前記部分と同じ角度寸法の31の等間隔角度部分において、1から31のひと月の日数を記号化したその刻印を有しており、前記第2のディスク(2)における前記開口(2.1)は、最初の刻印と最後の刻印との間に配置されており、かつ、前記第1のディスク(1)における前記部分と同じ角度寸法の4つのさらなる等間隔角度部分に対応する1つの角度寸法を占めることを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記曜日のディスクである前記第1のディスク(1)は、固定されたダイアルを形成し、前記日付のディスクである前記第2のディスク(2)は、前記ダイアルの周囲で回転可能なリングとして構成され、かつ、前記月のディスクである第3のディスク(3)は、前記ダイアルと同心状にかつその下方で回転可能に構成されたリングとして構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
うるう年および通常の年を示す、現在の年の数の表示部および/または現在の年のタイプの表示部(5)を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
ベーシックムーブメントを備えるウォッチピースであって、請求項1ないし請求項17のいずれか一項に記載のカレンダー表示デバイスを具備してなり、前記カレンダー表示デバイスが前記ウォッチピースの前記ベーシックムーブメントによって駆動されるものであることを特徴とする、ウォッチピース。
【請求項19】
前記ウォッチピースは、前記カレンダー表示デバイスの第1の補正レバー(10.1)および第2の補正レバー(10.2)を作動可能にする、対応する第1および第2の押圧片を備えることを特徴とする請求項18に記載のウォッチピース。
【請求項20】
前記ウォッチピースは、機械的な腕時計であることを特徴とする請求項18または請求項19に記載のウォッチピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にウォッチムーブメントを備える機械的ウォッチピースのためのカレンダー表示デバイスに関するものであり、このデバイスは、1週間の7つの曜日を記号化した一連の刻印を複数有する第1のディスク(曜日のディスク)と、ひと月の日付を記号化した刻印を有する第2のディスク(日付のディスク)と、1年の月を記号化した12の刻印を有する第3のディスク(月のディスク)とを備えており、曜日のディスクおよび日付のディスクの一方は固定されることによってダイアルとして機能し、これに対して他方のディスクは、ダイアルと同心状にかつダイアルに対して回転可能に構成されることによって回転ディスクとして機能し、ダイアルは開口を備えており、この開口は、回転可能に取り付けられかつウォッチピースのウォッチムーブメントによって駆動される月のディスク上の現在の月の刻印を見ることができるようにし、かつ、日付および1週間の曜日を同時に示すために、ハンドがダイアルと同心状にかつダイアルに対して回転可能に配置されている。本発明は、またそうしたカレンダー表示デバイスを備えるウォッチピースに関連するものである。
【背景技術】
【0002】
そうしたカレンダー表示器を備えるウォッチピース(watch pieces)は、「複雑化されたタイムピース(complicated time pieces)」と称されるウォッチピースのカテゴリに属し、かつ使用者がウォッチピースのダイアルをちらっと簡単に見ることによって、曜日、日付、月に関する情報を見ることができ、さらには現在の月全体を見ることができるものである。特許文献1および特許文献2には、このタイプのデバイスの代表的な例が示されている。これらデバイスは、月全体に関するその日付に対応する曜日の情報を非常に便利に提供するという著しい利点をもたらす。ただし、たいていは月の長さが7(1週間の長さ)の倍数ではないため、これらデバイスは、日付単位の刻印とともに曜日単位で刻印を再調節するために、各月の始めに使用者が手動で処置をすることが必要であり、別の方法ではカレンダー表示器は補正されないという重大な欠点を有する。
【0003】
日付表示器の、一般にはカレンダーデータの表示の技術分野において、当業者によって「永久カレンダー」と呼ばれる機構もまた公知である。このタイプの機構は、通常、月の長さを示すカムを使用することによってあらかじめプログラムが組まれており、かつ100年以上の長期間にわたって曜日、日付、月および可能であればその年を表示することができる。多くの場合において、永久カレンダー機構は、ウォッチピースのダイアル内に配置された複数の個々の開口を用いて上記データを表示するよう使用されている。これはまた、特許文献3に記載されたウォッチの第1の実施形態における場合でもある。このタイプの表示器は、単一の日付に関するカレンダーデータのみを示し、そのため、月全体にわたる全体的な眺めを提供するという上記利点を提供しない。ゆえに特許文献3に示されたウォッチの第2の実施形態は、永久カレンダー機構と組み合わせることによって冒頭で述べたタイプのカレンダー表示デバイスを提供し、それによって、月全体にわたる全体的な眺めに関する利点が追加される。さらに、そのデバイスは永久カレンダー機構を備えているため、当該文献に記載されたデバイスは、各月の始めにおいて日付の単位の刻印とともに曜日の単位の刻印が自動的に再調節されるという利点を提供する。
【0004】
しかしながら、当該文献の詳細な研究によって、技術的に実施が相当困難でありかつそのデザインが非常に複雑である2つの技術的特徴部の結果として、これら2つの利点が得られるのみであることが注目される。事実、特許文献3に基づく永久カレンダー機構の操作は、引き込み式歯を保持するプログラム化されたホイールに基づくものであり、その動作は、このプログラム化ホイールに適応された非常に複雑化された運動力学によって制御される。さらに特許文献3に基づく動作の運動力学チェーンは、1週間の曜日を示す固定ダイアルに対する月のディスクの回転および日付のディスクの回転を、駆動ホイールを発端として、同等であるが別個の様式で制御する2つの駆動トレインを要求する。
【0005】
特許文献3と権利者が同じ特許文献4には、他の観点から見た同じデバイスが開示されており、特に、冒頭で述べたタイプのカレンダー表示デバイスが、所定の月にわたるカレンダーデータ全体の眺めを提供するという利点があるにもかかわらず、現在の月の最後の日の夕方まで次の月のカレンダーを見ることができないという問題に関連するものである。さらに、当該文献の冒頭には、機械的ウォッチムーブメントに基づいたこのタイプのデバイスの設計は非常に困難となろうと記載されている。
【0006】
結果的に、特許文献4は、冒頭で述べたタイプのカレンダー表示デバイスのデザインとは異なり、かつ、日付のディスクを、1から31までの日付の刻印の半分をそれぞれが有する2つの異なるディスクへ分割することを示している。当該文献は、さらに、使用者が、月の始めであるか終わりであるかにかかわらず1つの月におおむね対応する期間にわたってカレンダーのデータを参照できるように、表示される日付に応じて上記より複雑な運動力学によるこれら2つのディスクの互いに対する回転を提供する。例えば、月の始めにデータを表示するために、1から15までの日付を有する第1の日付のディスクは、16から31までの日付を有する第2の日付のディスクと、1から31までの数字が上昇順となるように整列させられ、その一方で、月の終わりへ向けて日付を表示するために、1から15までの日付を有する第1の日付のディスクのポジションが、1から16の数字が16から31の数字を追うように、16から31までの日付を有する第2の日付のディスクに対して変更されるが、いずれの場合においても、アセンブリ全体は、1週間の日付を示すダイアルに適合される。
【0007】
こうした簡単な説明は、一方では各月の始めに1週間の曜日のスケールおよび日付のスケールの自動的な調整を得るために、他方では月の終わりへ向けてカレンダーデータをさらに見ることができないという、冒頭で述べたタイプのカレンダー表示デバイスの欠点を避けるために、特許文献3および特許文献4の解決法は、そのデザインがより複雑であり、実施が困難であり、製造コストが高く、さらには、2つの別個の日付のディスクを使用するため、このタイプのデバイスの主な利点および美観的な魅力を損なうものであることを示す。
【0008】
上で述べたような主要な欠点を有する上記文献に基づくデバイスとは別に、従来技術においては、相対的に簡単な手段を用いて、冒頭で述べたタイプのカレンダー表示デバイスにおける上記2つの利点(つまり、一方では各月の始めに曜日および日付のスケールを自動的に割り出し(indexing)、他方では、月の終わりへ向けて、いつでもカレンダーデータをさらに見ることができるようにすること)を提供することができる機構を含むものは依然として示されていない。したがって、現在公知の従来技術を考慮すると、よりデザインが簡単で、製造が容易でありかつ製造コストが低いという利点を提供できる、そうしたデバイスを形成ことが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許第25 267号明細書(DE 25 267)
【特許文献2】米国特許第340,855号明細書(US 340,855)
【特許文献3】欧州特許第1 351 104号明細書(EP 1 351 104)
【特許文献4】欧州特許第1 351 105号明細書(EP 1 351 105)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、公知のカレンダー表示デバイスの欠点を解消し、かつ上記利点を得ることであり、特に、各月の始めにおいて曜日と日付のスケールの自動的な割り出しができ、かつ、月の終わりを含むカレンダーデータのさらなる眺めがいつでも得られ、複雑さおよびデバイスの製造コストを著しく増大させず、嵩張らず、その一方で、機構の主な利点および美観的な魅了が残されている、カレンダー表示デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明は、上記タイプの、特に請求項1に記載された特徴部によって特徴付けられたウォッチムーブメントを備える機械的ウォッチピースのためのカレンダー表示デバイス、あるいは対応するウォッチピースを提案する。特に、本発明に基づくデバイスは、ウォッチピースのウォッチムーブメントを発端として月のディスクを駆動するギアトレインと少なくとも協働する補正機構を備えており、この機構は、双方向様式でダイアル上に表示される月を変更できるように、月のディスクを前進させかつ後退させるための手段を備える。
【0012】
有利なことに、月のディスクを前進させかつ後退させるためのこれら手段は、ギアトレインとかみ合う補正ホイールに固定された補正星状部と、ウォッチピースのプッシュ部片によって作動可能な第1の補正レバーと第2の補正レバーと、を備えている。それゆえ、これらプッシュ部片の作動はそれぞれ、1回転1/12にわたって前方または後方への月のディスクの回転を引き起こし、双方向様式でダイアル上に表示される月を変更できるようにする。
【0013】
使用者が、現在の月全体にわたる普通にカレンダーデータを全体的に見ることができるようにするウォッチピースのこれら手段が設けられることによって、使用者は、表示される月を前進させかつ後退させるための対応するプッシュ部片を押すことによって、ダイアリーの様式で、表示される月を選択しかつ他の月のカレンダーデータを参照することがいつでもできる。従来の機構と比較すると、本発明に基づくデバイスは、単純でかつ整然とした手段を用いてこれら利点を得ることができ、かつこのタイプの機構の外観を維持することができる。
【0014】
ウォッチピースが、ウォッチピースのウォッチムーブメントにより月のディスクと回転ディスクとを制御するために1つのみのギアトレインしか備えない場合、本発明に基づくデバイスは、好ましくは、表示される月に応じた回転ディスク上の刻印とダイアル上の刻印との間の自動的な割り出しがなされるように、言い換えると、ダイアル上に表示される月の上記変更と同時に、ダイアル上に新しく表示される月に関する日付のスケールと曜日のスケールとの間の割り出しが可能となるように、月のディスクと回転ディスクとの間に順運動リンク(direct kinematic link)をさらに備える。
【0015】
月のディスクと回転ディスクとの間の順運動リンクが、自動的な割り出しを制御する2つの個別の部品(つまり一方がうるう年の2月のためのものであり、かつ他方が他の月すべておよび年のためのものである)を有するよう構成されることは特に有利となる。
【0016】
それゆえ、回転ディスクが日付のディスクであるかまたは曜日のディスクであるかにかかわらず、単一のギアトレインを用いてかつ月のディスクによって直接的に回転ディスクを制御することが可能となり、したがって、相対的にデザインが単純でありかつ容易に製造が実施できる手段によって自動的な割り出しが達成できる。
【0017】
代替的には、ウォッチピースが、ウォッチピースのウォッチムーブメントによって月のディスクと回転ディスクとを個別に制御する2つの個別のギアトレインを備えている場合、補正機構は、表示される月に応じて回転ディスク上の刻印とダイアル上の刻印との間の割り出しが自動的になされるよう、補正機構の前進および後退のための手段が月のディスクおよび回転ディスクを制御する様式で、月のディスクを駆動するギアトレインならびにウォッチピースのウォッチムーブメントによって回転ディスクを駆動する第2のギアトレインと同時に協働するよう構成されている。
【0018】
この機構の特に重要な変形例においては、日付のディスクである第2のディスクが固定ダイアルを形成し、曜日のディスクは、ダイアルの周囲で回転可能なリングとして構成される。一変形例において、可逆的な装置を使用することもできる。月のディスクである第3のディスクは、通常は、ダイアルと同心状にかつダイアルに対して回転可能に配置されたリングとして構成されている。結果的に、このデバイスは、いくつかの実施形態を提供してもよく、かつそれにより、技術的なかつ美観的な外観に関する可変性が提供されてもよい。
【0019】
さらなる特徴部および対応する利点は、従属請求項から、かつ以下のより詳細な本発明の説明から明らかとなる。
【0020】
添付の図面は、本発明の実施形態を概略的にかつ例示的な様式で示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に基づくカレンダー表示デバイスのダイアル上の表示部全体の概略平面図である。
図2a】日付のディスクによって形成されたダイアルが、下方にある部品を示すために取り除かれた状態の、図1に示されるデバイスの斜視図である。
図2b図2aとは異なる視点から見た、日付のディスクによって形成されたダイアルが、下方にある部品を示すために取り除かれた状態の、図1に示されるデバイスの斜視図である。
図3】月のディスクのギアトレインをより詳細に示す、図2に示されるデバイスの一部の拡大斜視図である。
図4】月のディスクと回転ディスクとの間の順運動リンクの第1の部品を詳細に示す、図2に示されたデバイスの一部の拡大斜視図である。
図5】月のディスクと回転ディスクとの間の順運動リンクの第2の部品を詳細に示す、図2に示されたデバイスの一部の拡大斜視図である。
図6a】通常の年の間の順運動リンクの第2の部品の動作を示す、概略平面図である。
図6b】通常の年の間の順運動リンクの第2の部品の動作を示す、概略平面図である。
図7a】うるう年の間の順運動リンクの第2の部品の動作を示す、概略平面図である。
図7b】うるう年の間の順運動リンクの第2の部品の動作を示す、概略平面図である。
図8a】より理解を容易にするためにいくつかの部品が透過状態で図示されている、順運動リンクの対応するジャンパに対する月のディスクのピンと4つ歯星状部との間のその協働に対する、順運動リンクの第2の部品の動作を詳細に示す、概略平面図である。
図8b】より理解を容易にするためにいくつかの部品が透過状態で図示されている、順運動リンクの対応するジャンパに対する月のディスクのピンと4つ歯星状部との間のその協働に対する、順運動リンクの第2の部品の動作を詳細に示す、概略平面図である。
図8c】より理解を容易にするためにいくつかの部品が透過状態で図示されている、順運動リンクの対応するジャンパに対する月のディスクのピンと4つ歯星状部との間のその協働に対する、順運動リンクの第2の部品の動作を詳細に示す、概略平面図である。
図9】第1および第2の補正レバーを詳細に示す、補正機構の一部の拡大概略平面図である。
図10a】ひと月に前進する動作の間の、補正機構の動作の一段階を詳細に示した、概略平面図である。
図10b】ひと月に前進する動作の間の、補正機構の動作の図10aとは異なる段階を詳細に示した、概略平面図である。
図10c】ひと月に前進する動作の間の、補正機構の動作の図10aおよび図10bとは異なる段階を詳細に示した、概略平面図である。
図10d】ひと月に前進する動作の間の、補正機構の動作の図10a、図10および図10cとは異なる段階を詳細に示した、概略平面図である。
図11a】ひと月に後退する動作の間の、補正機構の動作の一段階を詳細に示した、概略平面図である。
図11b】ひと月に前進する動作の間の、補正機構の動作の図11aとは異なる段階を詳細に示した、概略平面図である。
図11c】ひと月に前進する動作の間の、補正機構の動作の図11aおよび図11bとは異なる段階を詳細に示した、概略平面図である。
図11d】ひと月に前進する動作の間の、補正機構の動作の図11a、図11および図11cとは異なる段階を詳細に示した、概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に基づくカレンダー表示器の一例である実施形態を示す図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
【0023】
図1に概略的に示されるように、本発明に基づくカレンダー表示デバイスはメカニカルウォッチの一部に組み込まれるものであり、それは、従来のウォッチムーブメントを具備し、かつ使用者が所定の月全体の暦日付を見ることができる機構のカテゴリに属する。特に、このタイプのデバイスは、一週間の日付を月の日付にあわせることができる。
【0024】
このため、本発明のデバイスは、このタイプのデバイスの従来の部品、つまり曜日のディスクである第1のディスク1と、日付のディスクである第2のディスク2とを備えており、第1のディスクは、一週間の7つの曜日を記号で表す一連の刻印を複数有しており、第2のディスクは、一月の日付を記号で表す刻印を有する。曜日ディスク1および日付ディスク2の一方のディスク1,2が、ダイアルとして動作しかつ堅固に取り付けられているのに対して、二つのディスク2,1のもう一方は、同心となるよう配置されることにより回転ディスクとして作動し、かつ上記ダイアルに対して回転可能である。
【0025】
図1には、本発明に基づくデバイスの一例が示されており、このものにおいて、日付ディスクである第2のディスク2は、固定ダイアルを形成している。曜日ディスクである第1のディスクは、ダイアルとして機能する日付ディスクの周囲で回転可能なリングのように構成されている。この装置の変形例は、デバイスのこの実施形態の詳細な説明の後に詳細に説明する。加えて「ディスク」との語は、本明細書において包括的に使用されており、対応する部品が効果的にディスク状に構成されることもできるが、環状のものにもできるように使用される。さらに、当業者には、ディスクの刻印が本発明の範囲を変更することなく、多くのさまざまな形態のものを採用できることが明らかである。例えば、日付は、図面に示されるように1から31までの数字によって、または、空間を省略するために奇数の数字が記号によって置換されている1から31の一連の数字によって、あるいは、日付を示す他のシンボルによって、効果的に示されてもよい。同様の手法が曜日ディスクにも適用され、その記号は、例えば一週間の曜日の一連のイニシャルから構成されてもよく、図1に示されるように日曜日が特別な様式でマークされてもよく、あるいは一週間の日付を表す他の一連の記号から構成されてもよい。
【0026】
さらに、本発明に基づくデバイスは、月のディスクである第3のディスクは、好ましくは一年の月が記号化された12の刻印を有しており、その装置は、上記説明と同様にさらに変更できることは明らかだ。月のディスクは、ダイアルの下方に回転可能に取り付けられており、かつウォッチピースのウォッチムーブメントによって毎月1/12回転の割合で通常駆動される。ダイアルは開口2.1を備えており、開口2.1を通して使用者は、表示された月に対応する月のディスク3にある刻印を見ることができる。さらに、かつこの項目に関してなされた上記説明と同様に、月のディスク3は、好ましくは、ダイアルと同心状となりかつダイアルの下方で回転するように配置されたリング状に構成されている。
【0027】
図に示されたデバイスの好ましい実施形態において、リングまたは日付のディスク1は、一週間の7日を記号化した一連の刻印が5つ、ひいては、35の等間隔角度部分において35の刻印が、その周縁部にわたって保持されている。日付のディスク2(つまりこの実施形態におけるダイアル)もまた、特に図1に見られるように、第1のディスク1における角度寸法と同様の31の等間隔角度部分において、その周縁部にわたって1から31の一月の日付を記号化されたその刻印を保持している。使用者が第3のディスク3上の現在の月の刻印を見ることを可能にする開口2.1は、日付のための最初の刻印と最後の刻印との間においてダイアル2の周縁部に配置されており、かつ、日付のディスク1上の部分と同様の角度寸法の他の四つの等間隔角度部分に対応した角度寸法を占める。ダイアル2のこの構成は、美的な外観のためにかつカレンダーデータに関する情報をより明瞭に示すために使用者にとって特に有利である。なお、さらなる変更が可能であり、それについては、カレンダー表示デバイスの好ましい実施形態の詳細な説明の後に簡単に説明する。
【0028】
日付および現在の週の曜日を同時に示すために、本発明によるデバイスは、ダイアルに対して同心となるように配置されかつダイアルに対して回転可能に配置されたハンド4をさらに備える。このハンド4は、その月の最後の日と次の月の最初の日との間を除いて通常は一日ごとに1ステップ前進し、かつ、現在の日付および曜日を示すようになっている。従来技術に基づく駆動のための機構およびハンド4のポジションの補正については本明細書では説明せず、また図面にも示さない。
【0029】
また、図1に示されるデバイスの実施形態は、その年がうるう年であるかあるいは通常の年であるかを示す現在の年のタイプの表示部5を備えている。代替的にまたは付加的に、デバイスは、例えば対応する開口を有することによって、現在の年の数の表示部を備えることができる。加えて、さらなるインフォメーション、例えば現在の時間、分、秒および第2のハンドによる時間に関する情報、月の変化に関する情報などを、対応するウォッチピースに組み込むことができるが、図面の複雑化を避けるためにこれらは図面に示されない。これらの組み込みは実際に従来のものであるため、本発明に関連するものではない。
【0030】
図2には、図1に示されたデバイスの斜視図を示す。この図においては、下方に配置された部品を図示するために、日付のディスク2によって形成されたダイアルが取り除かれている。当該図面において、曜日のディスク1を形成しかつダイアル2(図示せず)の周囲で回転するリングを明確に見ることができ、ダイアルの下方に配置された月のディスク3をリングが形成するようになっている。月のディスク3が、異なる厚さで2つの高さとなるよう構成された2つの内側歯状部3.1,3.2をその内周に有することが明らかである。月のディスク3の第1の内側歯状部3.1は、ディスク3およびその中の構造体を駆動可能なギアトレイン6と協働する。その作動については図3を参照して以下に詳述する。
【0031】
実際に、月のディスク3は、ギアトレインによってウォッチピースのウォッチムーブメントによって所望の速度で駆動される。ウォッチムーブメントの残りの移動部品は完全に通常のものであるため、図3には主に、駆動フィンガー6.1からギアトレイン6を示すが、駆動フィンガー6.1は、この実施形態において、月ごとにその1つが完全に回転するように、ウォッチムーブメントによって駆動される。それゆえ駆動フィンガー6.1は、月に一度、第1の中間駆動ホイール6.2を駆動する。この第1の中間駆動ホイール6.2は、月のカム6.4を保有するカムホイール6.3とかみ合う(その機能については以下で明らかにする)。カムホイール6.3は、第3の中間駆動ホイール6.6に固定された第2の中間駆動ホイール6.5を駆動する。駆動ホイール6.6は、駆動ホイール6.8を保有する駆動ピニオン6.7とかみ合い、駆動ホイール6.8は、月のディスクが月ごとの回転の1/12にわたって回転するように、月のディスク3の第1の内側歯状部3.1とかみ合う。異なるホイールとピニオンの歯状部の比率は、月のディスク3の内側歯状部3.1における144の歯と比較して、例えば12の歯からなる歯状部を備える第1の中間駆動ホイール6.2と、48の歯を備えるカムホイール6.3と、10の歯と30の歯をそれぞれ備える第2の中間駆動ホイール6.5および第3の中間駆動ホイール6.6と、10の歯と40の歯をそれぞれ備える駆動ピニオン6.7および駆動ピニオン6.8と、を備えることによって選択されてもよい。これは上記結果物をもたらす。
【0032】
加えて、ギアトレイン6の構成要素はそれぞれ好ましい実施形態であるが、月のディスク3の適切な駆動を得ることができるなんらかの構造体を有していてもよく、本発明は実際にこのデバイスのこの部分にあるものではないことに留意されたい。当然のことながら、上記比率は、例えば特に月のディスク3が12の代わりに24の刻印を有し、そのために月ごとの回転の1/24の割合で駆動されなければならない場合に、異なるように選択することができる。
【0033】
図2を参照すると、曜日のディスクが図示されている場合において、本発明に基づくデバイスは、従来の機構と比較して、月のディスク3と回転ディスク1,2との間に順運動リンク7,8を備えている。この順運動リンク7,8は、回転ディスク1,2上の刻印とダイアル2,1上の刻印との間に自動的な割り出しを、ひいては表示された月に応じて週の曜日および日付との間で割り出し行うことが可能である。図2から明らかなように、順運動リンク7,8の部品は、月のディスク3の第2の内側歯状部3.2と協働する。
【0034】
月のディスク3と回転ディスク1,2との間の順運動リンク7,8の構造および作動についてより詳細に説明するために、図2に関連して、まず、それが、以下の説明から明らかになる別個の機能を有する二つの個別の部品7,8を備えていることに留意されたい。
【0035】
図4において拡大斜視図により詳細に図示された順運動リンクの第1の部品7は、月のディスク3の第2の内側歯状部3.2とかみ合うことができる1の接続ピニオン7.1を備えている。この第1の接続ピニオン7.1は第1の中間接続ホイール7.2に接続されており、第1の中間接続ホイール7.2は第2の中間接続ホイール7.3を駆動し、第2の中間接続ホイール7.3は第2の接続ピニオン7.4を保持し、続いて第2の接続ピニオン7.4は、回転ディスク1.2の、ひいては(この図に示されている)曜日のディスクの内側歯状部1.1と噛みあう。したがって、月のディスク3の回転は、以下で述べるように2月を除けば、ダイアル2,1に対する回転ディスク1,2(図示された例では曜日のディスク1)の回転を自動的に生じるようになる。
【0036】
図2から明らかなように、月のディスク3の第2の内側歯状部3.2は、この端部に対して、12の等間隔角度部分を備えており、この部分は、それぞれ2月に対応する部分から離れて、ノッチ3.2.1および歯3.2.2の連続部を備えており、それは、表示される月に応じて回転ディスク1,2上の刻印とダイアル2,1上の刻印との間の割り出しが自動的になされるよう、月のディスク3を駆動することによって前進するように、ディスク1,2を回転できるようにする。
【0037】
通常は月の長さが7(一週間の長さ)の偶数ではないことを考慮すれば、順運動リンクの第1の部品7の作動と第2の内側歯状部3.2をそれぞれ備えるディスク3との協働動作は、ダイアル2,1上の情報に対して回転ディスク1,2上の情報を調整するために上記機構が自動的な割り出しを行うことが想起される(recall)場合に容易に理解される。結果として、月の表示を変更する場合、表示される新しい月の日付に対して曜日を正しく合わせるために、固定ダイアル2,1に対して回転ディスク1,2を回転させることによって回転ディスク1,2を調整することが必要となる。したがって、図1から明らかなように、図面に図示された好ましい実施形態に関して、一度31の日数を有する月を通過した後、曜日のディスク1を、第1のディスク1の4つの等間隔角度部分に対応する角度を通って、明確には時計方向に、回転させることが可能である。代替的には、反時計方向に曜日のディスク1を回転させることも可能である(この場合においては、3つの等間隔角度部分に対応する角度を通る)。一度、30日、29日または28日を有する月を通過すると、回転ディスク1,2の情報とダイアル2,1の情報との間の正しい調整を可能にするために、このディスクは、それぞれ3、2または1の等間隔角度部分に対応した回転を時計方向に実施しなければならないか、あるいは、それぞれ2、1または0の等間隔角度部分に対応した回転を反時計方向に実施しなければならない(0の等間隔角度部分に対応した回転とは、回転しないことを意味する)。
【0038】
反時計方向の回転が、回転ディスク1によって実施されるより短い経路を要求すること、したがって時計方向における回転に比べてエネルギーの消費量に関してより有利な挙動を示すことを考慮すると、反時計方向の回転による調整の第1の解決法が好ましく、これが図面に示されている。なお、当業者であれば本明細書の技術的教示の観点から、時計方向の回転による調整の第2の解決法を実施することも可能である。再調整中に回転ディスク1,2の反時計方向の回転の第1の解決法を実施するために、月のディスク3の第2の内側歯状部3.2の12の等間隔角度部分は、順運動リンクの第1の部品7の上記移動部品を用いて、31、30、29または28の日数を有する月の終わりにおいて回転ディスク1,2の3,2,1または0のステップ(1つのステップが、第1のディスク1の等間隔角度部分の1つの角度距離に対応する)の回転を達成するための方法で構成されている。うるう年において2月のみが29日を有すること、および通常の年では2月は28日を有するよう調整が必要なことを考慮すると、月のディスク3の第2の内側歯状部3.2の12の等間隔角度部分はそれぞれ、2月に対応する部分を除いて、ステップの対応した数にわたって上記順運動リンクの第1の部品7を用いたギアトレイン6による月のディスク3の駆動に追従して回転ディスク1,2を前進できるようにするノッチ3.2.1および歯3.2.2の連続部を有する。したがって、31の日数を有する月に対応した月のディスク31の第2の内側歯状部3.2の部分は、3つのノッチ3.2.1と2つの歯3.2.2を備えており、かつ、2月に対応する月のディスク3の第2の内側歯状部3.2の部分は、ノッチおよび歯を有していない。月のディスク3の内周にわたる順運動リンクの第1の部品7の構成に応じて、月のディスクの第2の内側歯状部3.2の12の等間隔角度部分は、図2に示される場合のように、月のディスク3の上面の対応する刻印と整列させられる必要はないことに留意されたい。
【0039】
月のディスク3の第2の歯状部3.2の上記構成に対応した回転ディスク1,2の所望の駆動を確実なものとするために、順運動リンクの部品7の第1の接続ピニオン7.1および第2の接続ピニオン7.4は、例えば、6の歯および9の歯をそれぞれ有していてもよく、これに対して、第1の中間接続ホイール7.2および第2の中間接続ホイール7.3は、それぞれ20の歯および10の歯からなる歯状部を有しており、回転ディスクの内側歯状部は、図2に示されるその35の等間隔角度部分のそれぞれにおける3つの歯に対応する105の歯を有している。当業者には、これら歯上部および対応するギア比が、回転ディスク1,2が上述したように駆動される限りは変更可能であることは明確である。
【0040】
上記説明は、それぞれの月の終わりにおいてウォッチピースのウォッチムーブメントによってもたらされる月のディスク3の回転が、2月を除いて、回転ディスク1,2上の刻印がダイアル2,1上の刻印に対して再び正しく調整されるように、ダイアル2,1に対して回転ディスク1,2(図示された例においては曜日のディスク1)の回転を自動的にもたらすことを示す。
【0041】
順運動リンクの第1の部品7に関して、第1の部品7が、好ましくはキャッチ・リリース機構である分離手段7.5を備えることに留意されたい。例えば、これら分離手段7.5は、図4に示されるように、第1の接続ピニオン7.1と第1の中間接続ホイール7.2との間に配置されており、かつ、順運動リンクの第1の部品7とは関係なく回転ディスク1,2を駆動することができる。特に、これらは、第1の接続ピニオン7.1の回転とは関係なく、回転ディスク1,2を回転可能にし、その歯は、これら分離手段7.5が2月に対応する月のディスク3の第2の歯状部3.2における等間隔角度部分にわたってスライドするときに、この部分が平滑である場合に、その回転をロックする。これら分離手段7.5の機能は、以下の説明でより明確となる。
【0042】
図5を参照すると、ここでは、図2に示された第2の部分でもある、順運動リンクの第2の部品8に焦点が当てられる。この順運動リンクの第2の部品8は、月のディスク3に固定されたピン3.3と協働可能な4つ歯の星状部8.1を備える。この星状部8.1は第1の中間ホイール8.2に固定されており、第1の中間ホイール8.2は、アクチュエーティングフィンガー8.4に固定された第2の中間ホイール8.3とかみ合う。アクチュエーティングフィンガーは、月ディスク3による星状部8.1の4つの動作ごとに、回転ディスク1,2の内側歯状部1.1とかみ合うことができ、回転ディスク1,2は一ステップ前進するようになる。このため、図5における拡大図から明らかなように、第1および第2の中間ホイール8.2,8.3はそれぞれ12の歯を有していてもよい。もちろん、当業者にはさらなる付加事項が利用可能であるが、これらピニオン8.2,8.3における歯の数および星状部8.1における歯の数は、4つ歯の星状部8.1およびアクチュエーティングフィンガー8.4がそれぞれの動作時に4分の1回転するように、4の倍数でなければならない。
【0043】
順運動リンクの第2の部品8の動作は、図6aおよび図6b、図7aおよび図7bのそれぞれにより容易に理解される。これら図面には、通常の年の間およびうるう年の間のそれぞれのデバイスの第2の部品の作動ステップが概略平面図によって示されている。実際に、上記説明は、回転ディスク1,2とダイアル2,1との間の自動的な割り出しが、31または30の日数を有する月に関連して、順運動リンクの第1の部品7によって実施されることを示すものであり、これは、通常の2月(この月の長さは7(つまり一週間の日数)の倍数である)のために反時計方向の回転による調整の好ましい解決法に少なくとも関連することは必要ではない。デバイスまたはそれに備えられるウォッチピースの通常の作動時に、順運動リンクの第2の部品8のみが、うるう年の2月の終わりにおいて(上述されたように、29の日数を有する月でありかつ1つのステップを経て回転ディスク1,2の調整を要求する場合)、効果的に動作するようになる。
【0044】
月のディスク3に固定されるピン3.3は、月のディスク3がギアトレイン6によって駆動されるときに、月のディスク3における12の等間隔角度部分のうちの1つに対応する角度距離にわたって、各月を前進させる。図6aおよび図6bに示されるような通常の年の間では、このピン3.3は、2月の終わりにおいて、順運動リンクの第2の部品8に近接する。このとき、月のディスク3が2月から3月まで表示を移動させるよう駆動された場合に、ピン3.3は、図6aにおける矢印で示された経路に沿って前進し、かつ4つ歯星状部8.1の歯が図6aに示された矢印の方向において4分の1回転にわたって回転するように、4つ歯星状部8.1の歯と協働する。第1および第2の中間ホイール8.2,8.3を用いて、これは、4つ歯星状部8.1の各動作時において、つまり1年に一度それぞれのデバイスおよび底に備えられるウォッチピースの通常の動作時において、図6aに示された矢印の方向において、4分の1回転にわたるアクチュエーティングフィンガー8.4の回転を発生させる。図6bには、作動の最初の年の間は4分の1回転にわたる回転の後の部品のポジションを示す。図6aおよび図6bから明らかなように、アクチュエーティングフィンガー8.4は、動作の最初の年、2回目の年および3回目の年の間は自由に回転する。したがって、これらの年が28の日数を有するなら、回転ディスク1,2のポジションに対してなんの変化も生じず、調整も必要とされない。
【0045】
上記部品は、動作の始めの3回の通常の年の間に4分の3回転にわたって回転させられた後、図7aに示されるポジションに位置する。月のディスク3が4回目の年(つまり、うるう年)の間にギアトレイン6によって駆動されたときに2月から3月へ表示部を移動させるために、ピン3.3は、駆動フィンガー8.4が再び4分の1回転にわたって回転しかつ4年内に1つの完全な動向の回転をすべて実行するように、4つ歯星状部8.1の歯と再び協働しかつ4分の1回転にわたってその回転を発生させる。このとき自由な回動はなく、駆動フィンガー8.4は、回転ディスク1の歯状部1.1とかみ合い、かつ上記歯状部の例においては3つの歯にわたって、言い換えると、回転ディスクの35の等間隔角度部分の1ステップまたは特にそのうちの1つに対応した角度距離にわたって、回転ディスクを駆動させる。この調整は、上記分離手段7.5があるため、順運動リンクの部品7とは独立して実施可能である。特に、これら手段は、うるう年における2月の終わりにおいて回転ディスク1,2の回転を、ピニオン7.1から切り離すことができ、この場合において、それは、月のディスク3の平滑部分にわたってその歯がスライディングすることによってロックされるため静止する。
【0046】
したがって、回転ディスク1,2上の刻印およびダイアル2,1上の刻印は、うるう年の2月のために自動的に割り出しされるようになっている。ゆえに、ここでは、本発明に基づく上記デバイスおよびデバイスに備えられるウォッチピースが、表示される月に応じて、回転ディスク1,2上の刻印とダイアル2,1上の刻印との間の完全に自動的な割り出しを使用者に提供できることに留意されたい。順運動リンクの2つの部品7,8があるため、通常の年およびうるう年のいずれにおいても、デバイスは永久的なカレンダー機構を効果的に形成する。さらにこうした利点は、デザインが相対的に単純でありかつ製造が容易な、特に、主にウォッチピースのムーブメントと月のディスク3との間に単一ギアトレインを使用し、そのため回転ディスク1,2が月のディスクによって単純に制御される機械的手段の利用により得られる。
【0047】
順運動リンクの第2の部品8に関して、中間ホイール8.2,8.3の少なくとも1つが、ジャンパ8.5と協働可能な歯状部8.2.1を備えていることに留意されたい。このジャンパは、その静止位置に4つ歯星状部8.1を保持する。これは、上記動作中において、回転ディスク1,2の不随意的な回転を避けるために重要である。さらに、中華ンホイール8.2,8.3の少なくとも1つは、ジャンパ8.5が、月のディスク3に固定されたピン3.3による星状部8.1の作動後にジャンパ8.5と協働する中間ホイール8.2,8.3を再度位置決めするよう構成されている。その位置は、月のディスク3へ向けて方向付けられた4つ歯星状部8.1の歯8.1.1,8.2.1が、月のディスクの回転方向に関係なく、常にピン3.3の経路内に配置されるものである。
【0048】
これは、ピン3.3による4つ歯星状部8.1の動作後(つまり星状部8.1の4分の1回転を経た回転の後)に、ジャンパ8.5が、対応する中間ホイールの最後の歯のポイントをジャンプしないが小さな角度距離にわたって逆方向に4つ歯星状部8.1に関して中間ホイールを再位置決めするように、少なくとも1つの中間ホイール8.2,8.3の歯およびジャンパ8.5のポイントが配置されているために得られるものである。したがって、ジャンパ8.5は、月のディスク3に対するピン3.3が時計方向または反時計方向に回転するかどうかにかかわりなく、いかなる場合でもピン3.3が星状部8.1の歯のうちの1つを作動させる停止ポジションにおいて四つ歯星状部8.1を留まらせる。対応する中間ホイール8.2,8.3の歯状部8.2.1とジャン間8.5との間のこの行動のさまざまな段階が図8aないし図8cに概略的に示されている。図8aにおいて、ピン3.3は、4分の1回転にわたって4つ歯星状部8.1によって駆動されるが、それは、月のディスク3が完全なステップへまだ移動させられていない場合には、その経路上にある星状部8.1の最後の歯からはまだ離れない。図8bにおいて、ピン3.3が上記最後の歯から離れており、月のディスク3はその回転を続けている。図8bの丸で囲まれた部分には、ジャンパ8.5のポイントが、この移動の段階の間にジャンパ8.5が係合する歯の他方の側へ移動しないことが示されている。最終的に、図8cには、ジャンパ8.5が図8bに図示されるように停止された歯と協働して4つ歯星状部8.1を停止させる停止ポジションが示されている。図8aから図8cでは移動方向が矢印で示されている。この停止ポジションは、図8aに見られるポジションに対応している。このポジションにおいて、月のディスク3へ向けて方向付けられた4つ歯星状部8.1の歯8.1.1,8.1.2は、月のディスクの回転方向にかかわらず、常に、ピン3.3の経路内に配置されている。この特徴部の目的は以下の説明から明らかとなる。
【0049】
事実、本発明に基づくカレンダー表示デバイスは、補正機構9,10を備えていることが好ましい。補正機構9,10の構造および作動については図9図10aから図10dおよび図11aから図11dを参照して以下に説明する。
【0050】
好ましい実施形態において、この補正機構9,10は、ウォッチピースのウォッチムーブメントを発端として月のディスク3を駆動するギアトレイン6と協働する。特に、補正機構9,10は、双方向の様式で、ダイアル2,1上に表示される月を変更するために、月のディスクの前進および後退(advancing and reversing)のための手段を備えている。好ましくは、図9に概略的に示されるように、月のディスク3を前進させかつ後退させるための手段は、一方で、月のディスク3を駆動するギアトレイン6とかみ合う補正ホイール9.2に固定された補正星状部9.1を備えている。例えば、補正星状部9.1は、12の歯を有していてもよく、かつ補正ホイール9.2は、ギアトレイン6に関して上述した駆動ピニオン6.7とかみ合う36の歯からなる歯状部を有していてもよい。当然のことながら、当業者はこれら動作部品の他の構成および/または協働する歯車の構成に応じた他の減速比を選択することができる。他方で、月のディスク3を前進させかつ後退させるためのこれら手段は、第1の補正レバー10.1および第2の補正レバー10.2を備えており、第1の補正レバー10.1および第2の補正レバー10.2は、圧力によって作動させられ、そして作動時に、時計方向に対する反時計方向において補正星状部9.1の回転を引き起こし、それにより、レバー10.1,10.2の一方が作動するときに、前方または後方のそれぞれいずれかにおいて回転の12分の1にわたって月のディスク3を駆動する。特に、第1の補正レバー10.1および第2の補正レバー10.2の作動は、中間制御部10.3を用いて、月のディスク3を駆動するギアトレイン6におけるカムホイール6.4上に配置された月のカム6.4と協働する主制御部10.4の上昇を引き起こす。それゆえ、ギアトレイン6の連続部は、表示される月を補正する間は解放され、その一方で、ギアトレイン6および月のディスク3は、レバー10.1,10.2が作動されないときに、図示されていない対応するジャンパによって固定されている。レバー10.1,10.2の一方の作動によって、使用者が表示させることを希望した月のためのカレンダーデータをダイアリーの形式で参照するために、使用者は、双方向様式でダイアル2,1上に表示される月を変更することができる。
【0051】
図10a、図10b、図10cおよび図10dのシーケンスは、ひと月ごとの前進の作動中の、補正機構9,10のさまざまな段階のより詳細な概略平面図を示す。図10aには、補正機構9,10の一部を形成する部品の停止ポジションおよびスタートポジションを示す。図10bには、その軸10.1.1の周囲でそれが枢軸回動することおよびその自由端10.1.2を移動させることを引き起こす、使用者が補正レバー10.1を押圧し始めたときの上記部品のポジションを示す。この自由端は、中間制御部をその軸10.3.1の周囲で枢軸回転させるために、例えば中間制御部10.3に固定された第1のピン10.3.2の助けにより、中間制御部10.3を押す。例えば、主制御部10.4に固定された他のピン10.4.3を使用して、この枢軸回転は、軸10.4.1の周囲で枢軸回転しそれにより通常は月のカム6.4に対して付勢されている主制御部10.4の上昇を引き起こす。事実、この制御部10.4は、月の終わりのカム、爪、主制御部10.4および月のカム6.4をさらに備える永久カレンダー機構の一部を形成する。この機構については、本発明の対象物ではなくかつ当業者に公知であるため詳細には説明しない。月のカム6.4におけるノッチの深さに応じて、当該技術分野において公知の様式で月の長さを制御するために、主制御部10.4は、月のディスク3を駆動するギアトレイン6におけるカムホイール6.3上に配置された月のカム6.4と協働する。主制御部10.4の上記上昇は、月のカム6.4の解放をもたらし、図10bに見られるように、主制御部10.4のフィンガー10.4.2が、月のカム6.4におけるノッチのうちの1つから抜け出る。続いて、図10cには、一度ギアトレイン6が解放されかつ使用者が第1の補正レバー10.1を押し続けると、第1のレバー10.1の第1の端部10.1.2が、図10cに矢印を用いて記号で示される反時計方向における回転の1/12にわたってその進路の終わりまで補正星状部9.1を回転させるよう補正星状部9.1の歯状部とかみ合うまで前進し続けることを示している。この補正星状部9.1の作動は、図9に示される補正ホイール9.2およびギアトレイン6を用いて、月のディスク3による回転の1/12にわたる前進を引き起こし、それにより、順運動リンク7,8を用いて、回転ディスク1,2の刻印とダイアル2,1の刻印との間の自動的な調整(ひいては、表示される曜日と日付が現在表示されている月に対応するような、表示される曜日と日付との間の自動的な調整)と同様に月の表示部への変更を引き起こす。最後に、図10dには、使用者が第1の補正レバー10.1をもはや押さないようになった、さまざまな部品のポジションが示されており、補正機構は図10aに示されるそのスタートポジションに位置決めされている。
【0052】
同様に、図11a、図11b、図11cおよび図11dのシーケンスは、ひと月の間の作動および後退中の、補正機構9,10のさまざまな段階をよし詳細に示す概略平面図を示す。図11aには、補正機構9,10の一部を形成する部品の停止ポジションつまりスタートポジションを示す。図11bは、第2の補正レバー10.2を使用者が押し始め、その軸10.2.1の周囲でのレバー10.2の枢軸回動が引き起こされかつその自由端10.2.2が移動させられるときの、部品のポジションの概略図である。この自由端は、その軸10.3.1の周囲で中間制御部を枢軸回動させるために、例えば中間制御部10.3に固定された第2のピン10.3.3と協働して、中間制御部10.3を押圧する。再び、主制御部10.4に固定されたピン10.4.3を用いて、この枢軸回動は、その軸10.4.1の周囲で主制御部を枢軸回動させることによって、主制御部の上昇を引き起こす。ひと月ごとの前進の場合のように、主制御部10.4の上昇は、主制御部10.4のフィンガー10.4.2が月のカム6.4におけるノッチのうちの1つから抜け出るため、月のカム6.4の解放をもたらす。続いて、図11cには、一度ギアトレイン6が解放されかつ使用者が第2の補正レバー10.2を押し続けると、レバー10.2の自由端10.2.2が、このとき時計方向において、回転の1/12にわたって、その進路の終わりにおいて、それを回転させるために、補正星状部9.1の歯状部とかみ合うまで前進することが示されている。再度、図11cには移動の方向が矢印によって記号で示されている。補正星状部9.1の動作は、図9に見られる補正ホイール9.2およびギアトレイン6によって、月のディスク3による回転の1/12にわたる後退を引き起こし、それにより、回転ディスク1,2の刻印とダイアル2,1の刻印との間の自動的な調整(ひいては、表示される曜日と日付とが現在表示されている月に対応するような、表示される曜日と日付との間の自動的な調整)と同様に、順運動リンク7,8を用いて月の表示を変更する。最終的に図11dには、使用者が第2の補正レバー10.2をもはや押さなくなったときの、さまざまな部品のポジションが示されており、補正機構は、図11aに示されたそのスタートポジションに位置決めされている。
【0053】
当然のことながら、レバー10.1,10.2および制御部10.3,10.4などのさまざまな部品が、例えば対応するバネを用いて、それらの停止ポジションへ向けて付勢されていてもよく、それら付勢部材は単純化するために図面には示されていない。同様に、主制御部10.4は、デバイスの通常動作中において(言い換えると月のディスク3が、補正レバーを用いて使用者によって手動で補正される代わりに、ウォッチピースの動作によって1つのステップにわたって前進させられるときに)、月のカム6.4の手段(図示せず)によって隆起されることに留意されたい。
【0054】
最終的に、補正機構9,10の作動部分の範囲内において上記解決法は、ウォッチピースが主に月のディスク3および回転ディスク1,2をウォッチピースのウォッチムーブメントによって制御するための単一のギアトレイン6を備えている場合に、言い換えると、デバイスが月のディスク3と回転ディスク1,2との間に順運動リンク7,8を備えている場合に、関連するものであることに留意されたい。この変形例を詳細に記載する必要はなく、ギアトレイン6が、ウォッチピースのウォッチムーブメントによって月のディスクと回転ディスク1,2とを制御するために、まず回転ディスクを駆動し、続いて順運動リンクが回転ディスクによって月のディスク3を駆動するように構成できることは、本発明の技術的教示を持ち合わせた当業者には明確であろう。したがって、これは、上で詳述した好ましい実施形態の可逆的な構成を示す。この場合、上記ギアトレインおよび補正機構9,10は、本発明の技術的教示を持ち合わせた当業者の範囲内で、上記説明に基づいて適合される必要がある。特に補正機構9,10は、例えばこの場合においては、上で詳細に説明された場合に用にギアトレイン6と協働して直接それを駆動する代わりに、月のディスク3上において順運動リンク7,8を用いて間接的に作動することができる。
【0055】
同様に、原理上、順運動リンク7,8と組み合わせられる月のディスク3および回転ディスク1,2のそうした単一のギアトレイン6を、ウォッチピースのウォッチムーブメントを発端とする月のディスク3および回転ディスク1,2をそれぞれ制御する二つの個別のギアトレインで置換することも考えられる。この場合、上記補正機構9,10は、上記説明と単純に適合される必要があり、かつ、ウォッチピースのウォッチムーブメントによって、月のディスク3を駆動するギアトレイン6と、回転ディスク1,2を駆動する第2のギアトレインとが同時に協働するよう構成されるようになる。この方法において、機構9,10の前進および後退のための手段は、上で詳細に記載した好ましい解決法と同様に表示される月に応じて、回転ディスク1,2の刻印とダイアル2,1の刻印との間の割り出しを自動的に行うために、月のディスク23を駆動するギアトレインと回転ディスク1,2を駆動する第2のギアトレインとによって、月のディスク3および回転ディスク1,2を同時に制御する。例えば回転ディスク1,2を駆動する第2のギアトレインは、当該技術分野において公知のように構成することができ、その一方で、第2のギアトレインと機構9,10の前進および後退のための手段との協働は、同様に、月のディスク3を駆動するギアトレイン6のために使用されるものに対応する手段によって捕捉され得る。補正機構のそうした変形例を詳細に説明する必要はなく、本発明の技術的教示を持ち合わせた当業者には、上で詳述した機構を、上記2つのギアトレインに対して補正レバー10.1,10.2のそれぞれの接続部を要求する代替的な解決法の事例へと、好ましい解決法の範囲内で適合させる方法は公知である。この理由のため、二つの個別のギアトレインを使用する代替的な解決法は、明らかに有利なものではないが、実現可能な選択肢として残されている。
【0056】
当然のことながら、本発明に基づくカレンダー表示デバイスの他の同等の実施形態(図示せず)が考えられることに留意されたい。例えば、上述したものとは実質的に異なる表示に関するすべての動作または結果を伴わずに、回転ディスク1,2のポジションまたは配置を変更することができる。すべてのこうした実施形態は、実際に、本明細書においてそのすべてを詳細に説明できなくとも、本明細書に基づく技術的教示を持ち合わせた当業者の範囲内でなされるものである。
【0057】
この場合にはいくつかの引用された例について充分に説明するために、依然として日付を示す固定ダイアルをリングとして構成し、一方で、曜日を示す回転ディスクを、この場合には当該リングの内側で回転する実ディスクとして構成することが可能であろう。この構成は、特定の方法において、上記本発明の好ましい実施形態に基づく構成の逆転であることを示す。図1に示された好ましい構成を変更したさらなる変形例は、他の態様から、回転ディスクおよびダイアルを入れ替えたもの、つまり、固定ダイアルとして曜日のディスク1を使用しかつ回転ディスクとして日付のディスク2を使用したものである。上記2つの場合と同様に、この構成は、原理上は、2つの異なる変形例の形態で提供されてもよい。一方では、曜日のディスクである第1のディスク1は固定ダイアルを形成してもよく、また、日付のディスクである第2のディスク2は前記ダイアルの周囲で回転可能なリングとして構成されてもよく、月のディスクである第3のディスク3は、ダイアルと同心にかつその下方で回転可能に構成されたリングとして構成される。他方では、曜日のディスク1は固定ダイアルを形成すると同時にリングとして構成されてもよく、日付のディスク2はこの場合は内側で回転する回転ディスクを形成する。これら二つの後者の場合において、開口2.1は曜日のディスク1に組み込まれている。日付のディスク2は依然として31の区域を必要とするため、28の等間隔角度部分にわたって一週間の7つの曜日を記号化した一連の刻印を4つ伴う曜日のディスク1を備え、これに対して、上記開口が同様のサイズの等間隔角度部分を占めることが好ましい。この方法において、互いにかみ合う異なる部品のギアトレインおよび歯状部の対応した変更によって、好ましい実施形態と比較して、表示部に関して同等の結果を得ることが可能となる。例えば42の等間隔角度部分において一週間の7つの曜日を記号化した一連の刻印を6つ有するさらなる変形、またはこれに関連する他の特徴部の変更も考えることができ、これは本明細書の技術的教示を考慮した当業者の範囲内にある。
【0058】
上記4つの構成をもたらすさらなる変更は、月のディスクである第3のディスク3を、同心とならない様式でダイアルの下方に配置することを含む。実際に、月のディスク3を曜日のディスク1および日付のディスク2に対して同心状に配置することが好ましいが、これは必ずしも必要ではない。同様に、月のディスク3をリングとして構成することも必要ではないが、硬質なディスクによって形成されてもよい。また、いずれの場合においても、ギアトレイン6は、内側歯状部の変わりに外側歯状部またはディスク軸を用いて月のディスク3と協働することもできる。
【0059】
加えて、本発明が、上述された本発明に基づくカレンダー表示デバイスを備えるウォッチピースに関連し、このデバイスがウォッチピースの基本的なムーブメントによって駆動されることにも留意されたい。特に、このデバイスの第1の補正レバー10.1および第2の補正レバー10.2は、通常は、ウォッチピースのケース上に配置された対応する第1および第2のプッシュ部片によって作動可能である。
【0060】
上記説明に鑑みて、本発明に基づく上記特徴を備えるカレンダー表示デバイスは、月全体のためのカレンダーの日付すべてを見ることに加えて、ダイアリー様式で表示される月を手動で変更するオプションを提供し、それにより、使用者が希望した月のカレンダーデータをいつでも参照する機会を使用者に提供するという著しい利点をもたらすものであることは明白である。さらにそうしたデバイスは、通常、月のディスプレイが変更されるときに曜日の日付に関する情報と日付との間の自動的な割り出しをも可能にする。この自動的な割り出しは、通常の年かつまたうるう年に対して適用され、永久的なデバイスを形成する。また、この自動的な割り出しは、いくつかの手段によって、特に月のディスクと回転ディスクとの間の順運動リンクによって、特別に技術的に整理された様式で実施されてもよい。加えて、それは、技術的な要求または美観的な要求に応じた多数の変形例が提供できるため、非常に可変性の高いものである。これら利点は、デバイスの複雑さ、かさ、または製造コストを大幅に増大させることなく得られる。最終的に、本発明のデバイスは、ウォッチピースのダイアル上に視認可能に表示され、したがって、そうしたウォッチピースの美観的な魅力に著しく寄与するよう理想的に適合される。
【符号の説明】
【0061】
1 第1のディスク
1.1 ディスクの内側歯状部
2 第2のディスク
2.1 開口
3 第3のディスク
3.1 第1の内側歯状部
3.2 第2の内側歯状部
3.3 ピン
4 ハンド
5 表示部
6 ギアトレイン
6.1 駆動フィンガー
6.2 第1の中間駆動ホイール
6.3 カムホイール
6.4 カムホイール
6.5 第2の中間駆動ホイール
6.6 第3の中間駆動ホイール
6.7 駆動ピニオン
6.8 駆動ホイール
7 順運動リンクの第1の部品
7.1 第1の接続ピニオン
7.2 第1の中間接続ホイール
7.3 第2の中間接続ホイール
7.4 第2の接続ピニオン
7.5 分離手段
8 順運動リンクの第2の部品
8.1 4つ歯星状部
8.1.2 歯
8.2 中間ホイール
8.2.1 歯状部
8.3 中間ホイール
8.4 駆動フィンガー
8.5 ジャンパ
9 補正機構
9.1 補正星状部
9.2 補正ホイール
10 補正機構
10.1 第1の補正レバー
10.2 第2の補正レバー
10.3 中間制御部
10.4 主制御部
10.1.2 自由端
10.2.1 軸
10.2.2 自由端
10.3.1 軸
10.3.2 第1のピン
10.3.3 第2のピン
10.4.1 軸
10.4.2 フィンガー
10.4.3 ピン
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d