(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936849
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/72 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
B29D30/72
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-256354(P2011-256354)
(22)【出願日】2011年11月24日
(65)【公開番号】特開2013-107372(P2013-107372A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】手島 敏治
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−028966(JP,A)
【文献】
特開平01−278317(JP,A)
【文献】
特開平06−270287(JP,A)
【文献】
特開平06−226881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00 − 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面と前記支持面に開口する貫通孔とを備えた支持具の前記支持面上に、前記貫通孔を跨いで円環状のゴム部材を成型し、
前記支持面に成型された前記ゴム部材をシェーピングされたタイヤ中間体のサイドウォール部に対向配置し、
前記支持具を前記タイヤ中間体に近接させて前記支持面上の前記ゴム部材を前記サイドウォール部に当接させ、
前記貫通孔を介して前記サイドウォール部に前記ゴム部材を押圧する押圧部材をタイヤ径方向に移動させて前記ゴム部材を前記サイドウォール部に貼付することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記押圧部材をタイヤ径方向内側から外側に向けて移動させることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
放射状に配置された複数の前記押圧部材をタイヤ径方向に移動させて前記ゴム部材を前記サイドウォール部に貼付することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記押圧部材が前記ゴム部材を前記サイドウォール部に押圧した状態で前記支持具を前記タイヤ中間体から離隔することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記支持具を撓ませて前記支持面上の前記ゴム部材を前記サイドウォール部に当接させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
支持面と前記支持面に開口する貫通孔とを備え、前記支持面上に前記貫通孔を跨いで円環状のゴム部材が成型された支持具と、
シェーピングされたタイヤ中間体を保持するタイヤ保持体と、
前記タイヤ保持体に保持された前記タイヤ中間体のサイドウォール部に前記ゴム部材が対向配置するように前記支持具を固定する支持具固定体と、
前記支持具固定体と前記タイヤ保持体とを相対的に近接させ、前記支持具の前記支持面上に成型された前記ゴム部材を前記支持面に支持させた状態で前記サイドウォール部に当接させる駆動装置と、
前記支持面に支持された前記ゴム部材を前記貫通孔を介して前記サイドウォール部に押圧しながらタイヤ径方向に移動する押圧部材とを備えることを特徴とする空気入りタイヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、空気入りタイヤは、インナーライナー、サイドウォール部、ビード部、トレッド部などの各タイヤ構成部材を予め形成し、これらのタイヤ構成部材を未加硫の状態で貼り合わせてグリーンタイヤを成型し、このグリーンタイヤを加硫成型することで製造される。
【0003】
このような空気入りタイヤの製造方法では、円環状に成型したゴム部材を、トロイダル状にシェーピングされた未加硫のタイヤ中間体のサイドウォール部に貼付してグリーンタイヤを成型することがある(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【0004】
下記特許文献1,2では、支持具の支持面に貼り付けられた円環状のゴム部材を、シェーピングされた未加硫のタイヤ中間体のサイドウォール部に移しかえた後、タイヤ中間体を保持するビードロックドラムの両側に設けたブラダーを膨らませてサイドウォール部にゴム部材を貼付する。このような場合、ゴム部材を支持する支持具からサイドウォール部にゴム部材を移しかえる際にゴム部材にシワが寄りゴム部材を均一に貼付できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−270287号公報
【特許文献2】特開2002−307571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点を考慮してなされたものであり、シェーピングされた未加硫のタイヤ中間体のサイドウォール部にシワが寄ることなく均一に円環状のゴム部材を貼付することができる空気入りタイヤの製造方法及び空気入りタイヤの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、支持面と前記支持面に開口する貫通孔とを備えた支持具の前記支持面上に、前記貫通孔を跨いで円環状のゴム部材を成型し、前記支持面に成型された前記ゴム部材をシェーピングされたタイヤ中間体のサイドウォール部に対向配置し、前記支持具を前記タイヤ中間体に近接させて前記支持面上の前記ゴム部材を前記サイドウォール部に当接させ、前記貫通孔を介して前記サイドウォール部に前記ゴム部材を押圧する押圧部材をタイヤ径方向に移動させて前記ゴム部材を前記サイドウォール部に貼付することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る空気入りタイヤの製造装置は、支持面と前記支持面に開口する貫通孔とを備え、前記支持面上に前記貫通孔を跨いで円環状のゴム部材が成型された支持具と、シェーピングされたタイヤ中間体を保持するタイヤ保持体と、前記タイヤ保持体に保持された前記タイヤ中間体のサイドウォール部に前記ゴム部材が対向配置するように前記支持具を保持する支持具保持体と、前記支持具固定体と前記タイヤ保持体とを相対的に近接させ、前記支持具の前記支持面上に成型された前記ゴム部材を
前記支持面に支持させた状態で前記サイドウォール部に当接させる駆動装置と、
前記支持面に支持された前記ゴム部材を前記貫通孔を介して前記サイドウォール部に押圧しながらタイヤ径方向に移動する押圧部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シェーピングされた未加硫のタイヤ中間体のサイドウォール部にシワが寄ることなく均一に円環状のゴム部材を貼付することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの製造装置を示す概略的構成図である。
【
図4】
図1に示す空気入りタイヤの製造装置の動作を示す説明図である。
【
図5】
図1に示す空気入りタイヤの製造装置の動作を示す説明図である。
【
図6】
図1に示す空気入りタイヤの製造装置の動作を示す説明図である。
【
図7】
図1に示す空気入りタイヤの製造装置の動作を示す説明図である。
【
図8】
図1に示す空気入りタイヤの製造装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る空気入りタイヤの製造装置(以下、製造装置という)10は、
図1に示すように、支持面22上にゴム部材Mが成型された支持具12と、シェーピングされたタイヤ中間体1を保持するタイヤ保持体14と、支持具12を保持する支持具保持体16と、支持具保持体16とタイヤ保持体14とを相対的に近接離間させる駆動装置18と、ゴム部材Mをタイヤ中間体1のサイドウォール部2に押圧するための押圧機構20とを備え、トロイダル状にシェーピングされた未加硫のタイヤ中間体1のサイドウォール部2にゴム部材Mを貼付する。
【0012】
支持具12は、
図2に示すように、弾性変形が可能な金属製の板状の部材であり、一方の板面にゴム部材Mが成型される支持面22が形成されている。支持具12には支持面22に開口する貫通孔24が設けられている。貫通孔24は、平面視において円形の円孔部24aと、周方向に等しい間隔をあけて円孔部24aから放射状に延びる複数の長孔部24bからなる。
【0013】
このような構成の支持具12は、支持面22に不図示の押出機の口金を近接させ、支持具12と押出機とを相対的に回転させながらゴム材料を口金より支持面22上に吐出することで、支持面22に長孔部24bを跨いで肉薄の円環状のゴム部材Mが成型される。
【0014】
タイヤ保持体14は、
図1に示すように、保持するタイヤ中間体1の回転軸Lに沿って延びる主軸26と、主軸26に取り付けられた一対のビード支持部28とを備える。
【0015】
一対のビード支持部28は、主軸26の軸方向(つまり、回転軸Lに沿った方向)Xに移動可能で、かつ、拡縮変形可能に設けられており、トロイダル状にシェーピングされた未加硫のタイヤ中間体1のビード部3を径方向内側から支持する。
【0016】
支持具保持体16は、支持具12の側端部に係止する爪部30を備えており、支持具12の側端部に爪部30を係止させることで、支持具12の支持面22上に設けられたゴム部材Mが、タイヤ保持体14に保持されたタイヤ中間体1のサイドウォール部2に対向し、かつ、円環状のゴム部材Mの中心がタイヤ中間体1の回転軸Lに一致するように支持具12を保持する。また、支持具保持体16に保持された支持具12の長孔部24bは、タイヤ中間体1の回転軸Lを中心として放射状に延びている。
【0017】
本実施形態では、
図1に示すように、2つの支持具保持体16がタイヤ保持体14に保持されたタイヤ中間体1を軸方向Xに挟んで設けられており、一方の支持具保持体16に保持された支持具12に設けられたゴム部材Mが、タイヤ中間体1の一方のサイドウォール部2に対向し、他方の支持具保持体16に保持された支持具12に設けられたゴム部材Mが、タイヤ中間体1の他方のサイドウォール部2に対向する。
【0018】
駆動装置18は、支持具保持体16を主軸26の軸方向Xに進退移動させるシリンダを備えており、タイヤ保持体14に保持されたタイヤ中間体1のサイドウォール部2に対して支持具保持体16を近接離間させる。
【0019】
なお、本実施形態では、駆動装置18が、支持具保持体16をタイヤ保持体14に対して移動させる場合について説明するが、タイヤ保持体14を支持具保持体16に対して移動させてもよい。
【0020】
押圧機構20は、
図1に示すように、ゴム部材Mをタイヤ中間体1のサイドウォール部2に押圧する複数の押圧部材32と、複数の押圧部材32を連結する連結部材34と、連結部材34を主軸26の軸方向Xに沿って移動させるシリンダ装置38とを備え、タイヤ中間体1との間で支持具保持体16に保持された支持具12を挟むように、支持具12における支持面22の反対側の面に対向して配置されている。
【0021】
複数の押圧部材32は、ゴム部材Mをタイヤ中間体1のサイドウォール部2に押圧しながらタイヤ中間体1の径方向に移動させることができるローラ等からなる部材であり、
図3に示すように、支持具12に穿設された長孔部24bに対向するようにタイヤ中間体1の周方向に等しい間隔をあけて、タイヤ中間体1の回転軸Lを中心として放射状に配置されている。
【0022】
連結部材34は、押圧部材32毎に設けられ複数の支持腕35と、複数の支持腕35を連結する連結板36とを備える。支持腕35は、一端部に押圧部材32が取り付けられ、他端部に回動軸37を介して連結板36が取り付けられている。
【0023】
図1に示すように、押圧部材32にゴム部材Mが当接しておらず回動軸37周りの力が作用していない状態では、支持腕35は、押圧部材32が取り付けられた一端部へ向かうほどタイヤ中間体1の回転軸Lから離れるように径方向外方へ広がっており、支持具12に設けられたゴム部材Mの内周縁と対向する位置に押圧部材32を配置する。
【0024】
また、押圧部材32がゴム部材Mに当接すると、支持腕35は回動軸37の周りを回動し、
図1に示すような押圧部材32をゴム部材Mの内周縁に対向する位置から径方向外方へ移動させる。
【0025】
連結板36には、主軸26の軸方向Xに沿って進退可能なシリンダ装置38の出力軸が接続されており、シリンダ装置38が動作することで、支持具保持体16に保持された支持具12に対して近接離間する。
【0026】
次に、上記した製造装置10を用いて、トロイダル状にシェーピングされた未加硫のタイヤ中間体1のサイドウォール部2にゴム部材Mを貼付する方法について説明する。
【0027】
まず、
図1に示すように、タイヤ中間体1をタイヤ保持体14に保持させるとともに、支持面22上にゴム部材Mが成型された支持具12を支持具保持体16に保持させる。
【0028】
この時、支持具保持体16に保持された支持具12は、タイヤ中間体1のサイドウォール部2から主軸26の軸方向Xに間隔をあけて配置され、また、押圧機構20が有する押圧部材32は、支持具12よりもタイヤ中間体1から主軸26の軸方向Xに離れた位置に配置されており、支持具12の長孔部24bを通して支持面22上に成型されたゴム部材Mの内周縁と対向する。
【0029】
次に、駆動装置18が備えるシリンダを動作させてタイヤ中間体1のサイドウォール部2に対して支持具保持体16を近接する方向へ移動させて、
図4に示すように、支持具12の支持面22上に成型されたゴム部材Mの少なくとも一部をタイヤ中間体1のサイドウォール部2に当接させる。
【0030】
本実施形態では、ゴム部材Mを支持する支持具12が弾性変形可能であるため、タイヤ中間体1のサイドウォール部2が曲面形状をなしている場合であっても、支持具12がサイドウォール部2の形状に沿って変形してゴム部材Mをサイドウォール部2に当接させることができる。
【0031】
次に、支持具12の支持面22上のゴム部材Mをタイヤ中間体1のサイドウォール部2に当接させた状態を保ちつつ、押圧機構20が備えるシリンダ装置38を動作させて支持具保持体16に保持された支持具12に対して連結板36を近接させ、
図5に示すように、支持具12に穿設された長孔部24bを通してゴム部材Mの内周縁に支持腕35の一端部に設けられた押圧部材32を当接させる。
【0032】
そして、押圧部材32をゴム部材Mの内周縁に当接させた状態から、更にシリンダ装置38を動作させて支持具保持体16に保持された支持具12に対して連結板36を近接させると、押圧部材32がタイヤ中間体1のサイドウォール部2にゴム部材Mを押し付ける。その際、ゴム部材Mからの反作用により、支持腕35には支持腕35に対して回動軸37周りの力が働き、押圧部材32をゴム部材Mの内周縁に対向する位置から径方向外方へ移動させる。これにより、押圧部材32は、ゴム部材Mをタイヤ中間体1のサイドウォール部2に圧着しながらゴム部材Mの内周縁から外周縁までタイヤ中間体1の径方向外方に向かって移動する(
図6参照)。
【0033】
次いで、
図6に示すような押圧部材32がゴム部材Mの外周縁をタイヤ中間体1のサイドウォール部2に押圧した状態を維持しつつ、駆動装置18が備えるシリンダを動作させることで、タイヤ中間体1のサイドウォール部2に対して支持具保持体16を離間させ、
図7に示すように、支持具12の支持面22からゴム部材Mを剥離する。
【0034】
次いで、押圧機構20が備えるシリンダ装置38を動作させて連結板36を支持具12に対して離間させる方向に移動させることで、支持具12の長孔部24bを通して
図1に示すような支持具12における支持面22の反対側まで押圧部材32を移動させる。
【0035】
以上のように本実施形態では、支持面22上のゴム部材Mをタイヤ中間体1のサイドウォール部2に当接させた状態で、押圧部材32が支持具12に穿設された長孔部24bを通ってゴム部材Mをサイドウォール部2に押さえ付けながらタイヤ中間体1の径方向に移動する。このような本実施形態では、ゴム部材Mが支持具12に支持された状態でサイドウォール部2に対して径方向へ順次圧着されることになり、ゴム部材Mをサイドウォール部2に圧着する前に支持具12からサイドウォール部2にゴム部材Mを移しかえることがないため、シワが寄ることなく均一にサイドウォール部にゴム部材を貼付することができる。
【0036】
また、本実施形態では、押圧部材32が、ゴム部材Mをタイヤ中間体1のサイドウォール部2に圧着しながらタイヤ中間体1の径方向内側から外側に向かって移動するため、サイドウォール部2に対して鋭角な方向から押圧部材32がゴム部材Mを押圧することができ、ゴム部材Mを押圧しながら滑らかに押圧部材32を移動させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、タイヤ中間体1の回転軸Lを中心として放射状に配置された複数の押圧部材32が、円環状のゴム部材Mに対して周方向に所定間隔毎に当接するため、ゴム部材Mを周方向に均一にサイドウォール部2に押し付けることができる。
【0038】
また、本実施形態では、押圧部材32がタイヤ中間体1のサイドウォール部2にゴム部材Mを押圧した状態を維持しつつ支持具12をタイヤ中間体1のサイドウォール部2から離隔するため、ゴム部材Mを支持具12から剥離する際にゴム部材Mが支持具12に引っ張られても捲れ上がることがなく、均一にゴム部材Mをサイドウォール部2に貼付することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…タイヤ中間体 2…サイドウォール部 3…ビード部
10…製造装置 12…支持具 14…タイヤ保持体
16…支持具保持体 18…駆動装置 20…押圧機構
22…支持面 24…貫通孔 24a…円孔部
24b…長孔部 28…ビード支持部 30…爪部
32…押圧部材 34…連結部材 35…支持腕
36…連結板 37…回動軸 38…シリンダ装置
M…ゴム部材