特許第5936851号(P5936851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936851
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】摩擦具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20160609BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   B43L19/00 C
   B43K29/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-265092(P2011-265092)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-116588(P2013-116588A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝洋
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第027842(JP,Z2)
【文献】 特開2009−090566(JP,A)
【文献】 特開2009−023272(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3048483(JP,U)
【文献】 特開2006−231886(JP,A)
【文献】 特開2009−107236(JP,A)
【文献】 特開2008−183883(JP,A)
【文献】 実開平5−91890(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3089484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
B43K 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性インキを用いて紙面上に形成した熱変色性の筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の筆跡を熱変色可能な弾性材料から成る摩擦体を、前後が貫通するケース体へ摺動可能に収容した摩擦具であって、
前記摩擦体を、断面を略楕円形状に且つ前後端に摩擦部を設けて形成し、
前記ケース体を、断面を略楕円形状に且つ楕円の長径側に窓部を設けて形成し、
前記ケース体における前記窓部と反対側の内側面又は当該内側面に隣接する前記摩擦体の外側面に前後方向へ延びる突部を形成し、
前記摩擦体を前記ケース体の貫通孔に収容させ、前記ケース体の窓部から露出した前記摩擦体を押動することにより、前記摩擦体又は前記ケース体を前記突部に摺接させ、前記ケース体の前方又は後方の開口部から前記摩擦部を繰り出す構造の摩擦具。
【請求項2】
熱変色性インキを用いて紙面上に形成した熱変色性の筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の筆跡を熱変色可能な弾性材料から成る摩擦体を、前後が貫通するケース体へ摺動可能に収容した摩擦具であって、
前記摩擦体を、断面を略楕円形状に且つ前後端に摩擦部を設けて形成し、
前記ケース体を、断面を略楕円形状に且つ楕円の長径側に窓部を設けて形成し、且つ前記ケース体の前方部及び後方部の内面に突起を形成し
前記摩擦体を前記ケース体の貫通孔に収容させ、前記摩擦体の摩擦部を前記ケース体の前後端面より内方に位置させて前記摩擦体を前記突起に当接させ、
前記ケース体の窓部から露出した前記摩擦体を押動することにより、前記ケース体の前方又は後方の開口部から前記摩擦部を繰り出す構造の摩擦具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摩擦具に関する。詳細には、紙面上の熱変色性インキによる筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を備えた摩擦具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により第1状態から第2状態に変色させる弾性を有する摩擦体について、例えば特許文献1、特許文献2がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−148744号公報
【特許文献2】特開2009−126102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載されているような摩擦体では、一般的に断面形状が円形状や四角形状であり、先端部や縁端部や角部を使用することで、紙面上の熱変色性インキによる筆跡の狭い面積を熱変色させることは考えられていたものの、広い面積の筆跡を熱変色させることについては考えられておらず、特許文献1に記載されているような小さな摩擦体を摩擦しながら徐々に移動させて、広い面積を摩擦していくという作業を行う必要があり、大変であった。尚、広い面積を熱変色させる場合にはドライヤーの熱風が利用されることもあるが、ドライヤーの熱風は紙に当たった際に広がってしまうことから、狙った箇所だけを熱変色させることが困難であった。
【0005】
また、摩擦体には、筆箱などに収容した状態で汚れてしまうことを防止する構造が求められており、摩擦体をキャップの頂部に収容して、摩擦体が必要な時にキャップの頂部から突出させて使用する構造が前記特許文献2で開示されている。しかしキャップという小さな部品に摩擦体を収容しなければならないことから、摩擦体の大きさが限られており、広い面積の筆跡を熱変色させる摩擦体をキャップに装着することは困難であった。尚、摩擦体を単純に大きく形成して広い面積を摩擦できることを可能にした場合でも、摩擦体が大きいことから反対に狭い面積を摩擦し難くなるという問題が生じてしまう。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、紙面上の熱変色性インキによる筆跡の広い面積でも狭い面積でも狙った消したい箇所だけを熱変色させることができ、また摩擦体の摩擦部が汚れてしまうことを防ぐことができる摩擦具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
「1.熱変色性インキを用いて紙面上に形成した熱変色性の筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の筆跡を熱変色可能な弾性材料から成る摩擦体を、前後が貫通するケース体へ摺動可能に収容した摩擦具であって、
前記摩擦体を、断面を略楕円形状に且つ前後端に摩擦部を設けて形成し、
前記ケース体を、断面を略楕円形状に且つ楕円の長径側に窓部を設けて形成し、
前記ケース体における前記窓部と反対側の内側面又は当該内側面に隣接する前記摩擦体の外側面に前後方向へ延びる突部を形成し、
前記摩擦体を前記ケース体の貫通孔に収容させ、前記ケース体の窓部から露出した前記摩擦体を押動することにより、前記摩擦体又は前記ケース体を前記突部に摺接させ、前記ケース体の前方又は後方の開口部から前記摩擦部を繰り出す構造の摩擦具。
2.熱変色性インキを用いて紙面上に形成した熱変色性の筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の筆跡を熱変色可能な弾性材料から成る摩擦体を、前後が貫通するケース体へ摺動可能に収容した摩擦具であって、
前記摩擦体を、断面を略楕円形状に且つ前後端に摩擦部を設けて形成し、
前記ケース体を、断面を略楕円形状に且つ楕円の長径側に窓部を設けて形成し、且つ前記ケース体の前方部及び後方部の内面に突起を形成し
前記摩擦体を前記ケース体の貫通孔に収容させ、前記摩擦体の摩擦部を前記ケース体の前後端面より内方に位置させて前記摩擦体を前記突起に当接させ、
前記ケース体の窓部から露出した前記摩擦体を押動することにより、前記ケース体の前方又は後方の開口部から前記摩擦部を繰り出す構造の摩擦具。」である。
【0008】
本発明で、摩擦体を構成する弾性材料は、弾性を有する樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦体を構成する弾性材料は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)から成るものよりも、摩擦時に消しカスが生じない低摩耗性の弾性材料から成ることが好ましい
【0009】
摩擦体の形状は、前後方向に直交する方向の断面を略楕円形状に形成するものであり、その断面は幾何学的に完全な楕円形状である必要はなく、曲率半径が大きい長径側と曲率半径が小さい短径側が存在し、紙面に対する摩擦部の接触のさせ方で接触面積が変化できる形状であればよい。楕円形状であることから、狭い面積を摩擦する際には楕円の短径側が適し、広い面積を摩擦する際には楕円の長径側が適したものとなる。
【0010】
本発明で、ケース本体を構成する材料は、樹脂や金属が挙げられ、特にABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、PP樹脂(ポリプロピレン)、POM樹脂(ポリオキシメチレン)、PC樹脂(ポリカーボネート)、PS樹脂(ポリスチレン)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)などのように滑り性のよい材料を選定することにより、弾性材料から成る摩擦体とケース本体の摺動性がよくなり、摩擦部を繰り出し易くすることができる。
【0011】
また、ケース体の内側面又は摩擦体の外側面に形成する前後方向へ延びる突部は、ケース体から摩擦体を繰り出す前後方向へ延びるリブや前後方向へ連続する複数の突起で構成することができる。この場合、ケース本体の内側面と摩擦体の外側面との隙間は前後方向へ延びる突部の高さを考慮して設定する必要がある。
【0012】
また、摩擦体の前後端面をケース体の前後端面より内方に位置させる場合、摩擦体の摩擦部をケース体の前後端面から0.5mmから5mmの範囲で内方へ位置させることで、摩擦体の前後端にある摩擦部が汚れ難くなり、またケース本体から摩擦部を繰り出す際に、使用者の操作が行い難くなることもない。窓部と反対側のケース体の内側面又は摩擦体の外側面に突部を設ける場合には、摩擦体に当接させる突起を窓部側の内側面に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の摩擦具によれば、紙面上の熱変色性インキによる筆跡の広い面積でも狭い面積でも狙った箇所だけを容易に熱変色させることができ、また摩擦体の摩擦部が汚れてしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本実施例の摩擦具における分解図である。
図2図2は本実施例の摩擦具における携帯時の図である。
図3図3は本実施例の摩擦具における使用時の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明における摩擦具の実施例について説明を行う。尚、説明を分かり易くするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ番号を付してある。本実施例の説明においては図面手前側を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。
【0016】
図1に示すように本実施例の摩擦具1は、摩擦体2とケース体3とで構成するものである。摩擦体2は、前後方向に直交する方向の断面を楕円形状に形成してあり、前後端に前方摩擦部2aと後方摩擦部2bとを形成してある。ケース体3は、前記摩擦体2より大きな楕円形状で形成してあり、楕円形状の前方開口部3aと後方開口部3bとを連通する貫通孔3cを形成してある。また、楕円の長径側には長円形状の窓部3dを形成して、前記摩擦体2を前後方向へ指でスライドできるようにしてあり、窓部3dの反対側の内側面には前後方向へ延びる2本のリブ3eを形成して前記摩擦体2が摺接できるようにしてあり、窓部3d側の内側面には突起3f,3gを形成して摩擦体2が当接できるようにしてある。
【0017】
図2は摩擦具の携帯時における状態であり、摩擦体2がケース体3の貫通孔3aに収容され、摩擦体2の前方摩擦部2aをケース体3の前端面3hより1mm内方へ、摩擦体2の後方摩擦部2bをケース体3の後端面3iより1mm内方へ位置させて、摩擦具1を筆箱などに入れて持ち運ぶ際に、摩擦部2a,2bが汚れてしまうことを防止している。またケース体3の内側面に形成した突起3f,3gは、摩擦体2の前後に当接してケース体3の貫通孔3cから摩擦体2が抜け落ちることを防止している。
【0018】
図3は摩擦具の使用時における状態であり、ケース体3の窓部3dから露出した摩擦体2を前方へ押動することにより、摩擦体2をケース体3のリブ3e上で摺動させながら前方摩擦部2aを前方開口部3aから繰り出した状態である。摩擦体2はケース体3の突起3fを乗り越えて前進しており、図3の状態でも摩擦体2の側面には突起3fが当接して抜け落ちが防止されている。尚、熱変色性インキを用いて紙面上に形成した熱変色性の筆跡は、楕円形状である前方摩擦部2aの長径側部分21aを用いて摩擦すれば広い面積の筆跡を熱変色させることができ、前方摩擦部2aの短径側部分22aを用いて摩擦すれば狭い面積の筆跡を熱変色することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の摩擦具は、熱変色性インキを用いて紙面上に形成した熱変色性の筆跡を摩擦する以外にも、熱変色性インキが予め紙面等の上に印刷や塗装されたものの摩擦にも使用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1…摩擦具、
2…摩擦体、
2a…前方摩擦部、21a…長径側部分、21b…短径側部分、
2b…後方摩擦部、
3…ケース体、
3a…前方開口部、3b…後方開口部、3c…貫通孔、3d…窓部、
3e…リブ、3f,3g…突起、3h…前端面、3i…後端面。
図1
図2
図3