特許第5936852号(P5936852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936852ユニット式建物における給水設備の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936852
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ユニット式建物における給水設備の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   E04B1/348 V
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-265425(P2011-265425)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-117131(P2013-117131A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】安藤 由里子
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−204667(JP,A)
【文献】 特開2001−159166(JP,A)
【文献】 特開平09−049644(JP,A)
【文献】 特開昭63−268878(JP,A)
【文献】 特開平05−132980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大梁及び柱からなる躯体部と、該躯体部に対してそれぞれ固定される壁体、床及び天井とを有し工場にて生産される建物ユニットを用い、該建物ユニットを建物の施工現場に輸送し、該施工現場にて複数の前記建物ユニットにより施工されるユニット式建物について、そのユニット式建物における給水設備の設置方法であって、
前記工場において、前記壁体に設けられた孔部に対して該壁体のユニット内側面に給水用の水栓を取り付け、前記水栓と前記ユニット式建物の施工後に床下空間に設置されるヘッダとを接続可能な長さを有する水配管を用い、該水配管の一端側を前記水栓に接続するとともに、同水配管の他端側である自由端を含む配管非固定部を前記壁体のユニット外側に出しておく第1工程と、
その後、同じく前記工場において、前記水配管の壁外となっている前記配管非固定部を前記壁体のユニット外側面に仮止めする第2工程と、
その後、前記施工現場において、前記仮止めを取り外し、前記水配管の前記自由端を前記ヘッダに連結する第3工程と、を有し、
前記壁体において前記配管非固定部が仮止めされる前記ユニット外側面は、施工後のユニット式建物において、当該壁体を有する建物ユニットの隣りに配置される建物ユニットの壁体と対向する対向面となっており、
前記ユニット式建物を構成する前記建物ユニットは、少なくとも地上において各々分割された複数の立ち上げ部からなる基礎の上に据え付けられており、
前記複数の立ち上げ部は、前記建物ユニットの外周面に沿って所定間隔で並べられることで、前記建物ユニットの下方となる前記床下空間の周縁部に沿って互いに離間して配置され、
前記第3工程では、前記配管非固定部を、隣り合う建物ユニットの対向する壁体同士の間を通してそれら壁体の下方に引き出すとともに、隣り合う前記立ち上げ部の間を通して前記ヘッダが設置される前記床下空間に引き込み、当該ヘッダに連結することを特徴とするユニット式建物における給水設備の設置方法。
【請求項2】
前記壁体は、ユニット内側及びユニット外側となる一対の壁面材と、それら壁面材を連結する下地フレームとを有しており、
前記第1工程では、前記下地フレームに対して継手部材を固定するとともに、前記継手部材を介して前記水配管と前記水栓とを接続することを特徴とする請求項1に記載のユニット式建物における給水設備の設置方法。
【請求項3】
前記第1工程では、前記水配管の前記配管非固定部側を、ユニット外側の前記壁面材に設けられた挿通孔を挿通させることで前記壁体のユニット外側に出しておくとともに、前記挿通孔の内周面と前記水配管の外周面との隙間を断熱材により塞ぐことを特徴とする請求項に記載のユニット式建物における給水設備の設置方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記水配管の前記配管非固定部側を粘着テープにより仮止めすることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のユニット式建物における給水設備の設置方法。
【請求項5】
前記ユニット式建物は、戸境壁を挟んで両側に第1住戸と第2住戸とを有し、それら各住戸が互いに異なる建物ユニットにより構築される集合住宅であり、
前記戸境壁は、前記第1住戸側の建物ユニットに前記壁体として設けられる第1壁体と、前記第2住戸側の建物ユニットに前記壁体として設けられ、前記第1壁体に所定間隔を隔てて対向する第2壁体とを有し、それら各壁体は、ユニット内側及びユニット外側となる一対の壁面材をそれぞれ有しており、
前記各壁体におけるユニット内側の各壁面材には、前記戸境壁の厚み方向に見て同じ位置に、水栓取り付け用の孔部がそれぞれ設けられるとともに、同じく各壁体におけるユニット外側の各壁面材には、前記戸境壁の厚み方向に見て異なる位置に、水配管引き出し用の孔部がそれぞれ設けられており、
前記第1工程において、前記水栓取り付け用の孔部に前記水栓を取り付けるとともに、前記水配管引き出し用の孔部から前記水配管を前記壁体の外側に出しておくことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のユニット式建物における給水設備の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物における給水設備の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物において、給水設備には給水用の水栓が含まれており、水栓には水道管などの上水管が水配管を介して接続されている。また、建物に複数の水栓が設けられている場合などには、水配管を介して複数の水栓に接続されたヘッダが床下空間に設置され、上水管からヘッダを介して複数の水栓に給水が行われる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−3994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、施工現場での作業工数の低減を実現できる構法として、工場にて製造した建物ユニットを施工現場にて複数組み合わせてユニット式建物を構築するというユニット工法がある。ここで、水配管については、ユニット工法においても施工現場にて水栓やヘッダの設置位置に合わせて敷設し、水栓やヘッダへの接続作業を施工現場にて行うと考えられる。しかしながら、施工現場での作業負担を低減する上では、施工現場における水配管の敷設作業に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、建物ユニットに水配管を工場先付けしておくことで施工現場での作業負担を低減するとともに、水配管を工場先付けした状態でも建物ユニットを好適に運搬することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0007】
第1の発明のユニット式建物における給水設備の設置方法は、大梁及び柱からなる躯体部と、該躯体部に対してそれぞれ固定される壁体、床及び天井とを有し工場にて生産される建物ユニットを用い、該建物ユニットを建物の施工現場に輸送し、該施工現場にて複数の前記建物ユニットにより施工されるユニット式建物について、そのユニット式建物における給水設備の設置方法であって、前記工場において、前記壁体に設けられた孔部に対して該壁体のユニット内側面に給水用の水栓を取り付け、前記水栓と前記ユニット式建物の施工後に床下空間に設置されるヘッダとを接続可能な長さを有する水配管を用い、該水配管の一端側を前記水栓に接続するとともに、同水配管の他端側である自由端を含む配管非固定部を前記壁体の外側に出しておく第1工程と、その後、同じく前記工場において、前記水配管の壁外となっている前記配管非固定部を前記壁体のユニット外側面に仮止めする第2工程と、その後、前記施工現場において、前記仮止めを取り外し、前記水配管の前記自由端を前記ヘッダに連結する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、建物ユニットの壁体に水栓を取り付ける作業や、その水栓に水配管を接続する作業を施工現場において行うという必要がないため、施工現場では、水配管の自由端をヘッダに接続するという容易な作業を行えばよい。しかも、水配管は水栓とヘッダとを接続可能な長さを有しているため、施工現場においては水配管をそのままヘッダに接続すればよい。さらに、水配管の配管非固定部は建物ユニットの壁体のユニット外側面に仮止めされているため、水配管を水栓に接続した状態でも、建物ユニットを工場から施工現場に運搬する際に水配管が運搬の支障となることを回避できる。したがって、建物ユニットに水配管を工場先付けしておくことで施工現場での作業負担を低減できるとともに、水配管を工場先付けした状態でも建物ユニットを好適に運搬することができる。
【0009】
第2の発明では、前記壁体は、施工後のユニット式建物において、隣り合う建物ユニットの壁体と対向し、該対向面が前記ユニット外側面となるものである。
【0010】
第2の発明によれば、壁体において水配管に仮止めがなされているユニット外側面は、隣の建物ユニットの壁体と対向しているため、水配管の仮止めが解除されることで壁面の塗装がはがれるなど仮止めの痕跡が残ったとしても、その痕跡を隣の建物ユニットの壁体により覆い隠すことができる。したがって、水配管を壁体に仮止めしておいても、壁体を補修するという手間が施工現場で発生することを回避できる。
【0011】
第3の発明では、前記壁体は、ユニット内側及びユニット外側となる一対の壁面材と、それら壁面材を連結する下地フレームとを有しており、前記第1工程では、前記下地フレームに対して継手部材を固定するとともに、前記継手部材を介して前記水配管と前記水栓とを接続する。
【0012】
第3の発明によれば、水栓連結部材により水栓と水配管とを連結する作業、及び水栓連結部材を下地フレームに取り付ける作業が工場で行われるため、施工現場での作業負担を低減できる。しかも、壁体の構築と、水栓連結部材の取り付け作業とを同時に行うことができるため、工場での建物ユニットの製造作業についても作業負担を低減できる。
【0013】
第4の発明では、前記第1工程では、前記水配管の前記配管非固定部側を、前記壁面材に設けられた挿通孔を挿通させることで前記壁体の外側に出しておくとともに、前記挿通孔の内周面と前記水配管の外周面との隙間を断熱材により塞ぐ。
【0014】
第4の発明によれば、水配管の貫通部分により壁体の断熱性が低下することを抑制できる。
【0015】
第5の発明では、前記第2工程では、前記水配管の前記配管非固定部側を粘着テープにより仮止めする。
【0016】
第5の発明によれば、水配管の配管非固定部を壁体のユニット外側面に仮止めする作業を容易に行うことができる。しかも、仮止めの態様を水配管の長さに合わせて可変とすることができる。
【0017】
第6の発明では、前記ユニット式建物は、少なくとも地上において各々分割された複数の立ち上げ部からなる基礎の上に据え付けられており、前記複数の立ち上げ部は、前記床下空間の周縁部となる位置に沿って互いに離間した状態で配置されている。
【0018】
第6の発明によれば、複数の基礎部が例えば基礎ブロックなどにより互いに独立して構成されている場合、隣り合う基礎部の間の離間部分を水配管の敷設スペースとして利用することができる。詳しくは、第3工程において、水配管の配管非固定部を、隣り合う建物ユニットの壁体同士の間などを通してそれら壁体の下方に引き出すとともに、隣り合う基礎部の間を通して床下空間に引き込み、ヘッダに連結することができる。これにより、基礎に水配管を挿通するための挿通孔などを形成するという手間を省くことができる。つまり、施工現場での作業負担をより一層低減できる。
【0019】
第7の発明では、前記ユニット式建物は、戸境壁を挟んで両側に第1住戸と第2住戸とを有し、それら各住戸が互いに異なる建物ユニットにより構築される集合住宅であり、前記戸境壁は、前記第1住戸側の建物ユニットに前記壁体として設けられる第1壁体と、前記第2住戸側の建物ユニットに前記壁体として設けられ、前記第1壁体に所定間隔を隔てて対向する第2壁体とを有し、それら各壁体は、ユニット内側及びユニット外側となる一対の壁面材をそれぞれ有しており、前記各壁体におけるユニット内側の各壁面材には、前記戸境壁の厚み方向に見て同じ位置に、水栓取り付け用の孔部がそれぞれ設けられるとともに、同じく各壁体におけるユニット外側の各壁面材には、前記戸境壁の厚み方向に見て異なる位置に、水配管引き出し用の孔部がそれぞれ設けられており、前記第1工程において、前記水栓取り付け用の孔部に前記水栓を取り付けるとともに、前記水配管引き出し用の孔部から前記水配管を前記壁体の外側に出しておく。
【0020】
第7の発明のユニット式建物では、戸境壁を挟んで両側の各住戸について各々の給水設備を集約して配置することが可能となり、当該建物における給水本管(各住戸の給水設備の上流側に設けられる水道本管)の設置等に関して好都合となる。また、上記構成では、住戸境界部を挟んで両側の対称位置に水栓を設けることになるため、各住戸の間取りや流し設備の設置等について設計を行う際にその設計工数を削減できる点で有利となり、例えば設計から施工完了までの工期を短縮したい場合等に好都合となる。つまりこの場合、それら両住戸のうち一方を設計すれば、他方はそれを流用すればよいこととなる。
【0021】
一方、上記のとおり住戸境界部を挟んで両側の対称位置に水栓を設ける構成では、ユニット式建物の施工に際し、壁体外側に出ている各住戸の水配管同士が互いに干渉することが懸念される。この点、住戸ごとの各壁体におけるユニット外側の各壁面材に、戸境壁の厚み方向に見て異なる位置に水配管引き出し用の孔部を設け、その孔部を用いて水配管の一部を壁体外側に出すようにしているため、各住戸の水配管同士が干渉するといった不都合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】建物の間取りを示す平面図。
図2】建物ユニットの構成を示す斜視図。
図3】水栓周辺の建物の縦断面図。
図4】給水設備を設置する作業手順を説明するための図。
図5】壁体の概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明の建物の床構造を、鉄骨ラーメンユニット構法により構築されたユニット式建物において具体化している。図1は建物10の間取りを示す平面図である。
【0024】
図1に示すように、建物10は複数の住戸を1棟で構成した集合住宅とされている。建物10においては、例えば第1住戸11a及び第2住戸11bが横並びに配置されている。それら住戸11a,11bの境界部には戸境壁12が設けられており、その戸境壁12により住戸11a,11bの各住戸内空間が仕切られている。なお、建物10は、仮設住宅等の仮設建物として使用されるのに適したものとなっている。
【0025】
各住戸11a,11bにはキッチン15がそれぞれ設けられており、各キッチン15は戸境壁12に隣接する位置に配置されている。キッチン15には、水回り設備として流し台16と水栓17とが設けられている。流し台16は床面に載置されており、水栓17は流し台16の上方において戸境壁12に取り付けられている。
【0026】
ここで、第1住戸11aと第2住戸11bとは、それら住戸11a,11bの境界線を軸線として互いに線対称に配置された間取りを有しており、住戸11a,11bの各キッチン15は戸境壁12を挟んで隣接している。この場合、第1住戸11a及び第2住戸11bの各水栓17及び流し台16は、住戸境界線を挟んで両側の対称位置に設けられており、戸境壁12の厚み方向に重なるように配置されている。
【0027】
建物10は複数の建物ユニット20が連結されることで構築されている。本実施形態では、建物10において4つの建物ユニット20が横並びに配置されており、その並び方向において一端側の2つの建物ユニット20により第1住戸11aが構成され、他端側の2つの建物ユニット20により第2住戸11bが構成されている。なお、隣り合う建物ユニット20の間のユニット境界線をドッキングラインDLとしている。
【0028】
建物ユニット20の構成について、図2を参照しつつ説明する。図2は建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
【0029】
図2に示すように、建物ユニット20は、四隅に配置された柱21と、柱21の上端部(上仕口)に連結された天井大梁22と、柱21の下端部(下仕口)に連結された床大梁23とを有しており、これら柱21、天井大梁22、床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、溝部開放側を互いに向き合わせるようにユニット内側に向けて配置されている。
【0030】
建物ユニット20において長辺部(桁面)に沿って延び且つ相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく長辺部に沿って延び且つ相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔で且つ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23と平行に延びている。天井小梁25及び床小梁26はそれぞれリップ溝形鋼よりなる。天井小梁25に対して天井面材27が取り付けられており、床小梁26に対して床面材28が取り付けられている。
【0031】
建物10においては、隣り合う建物ユニット20同士の各柱21がドッキングプレート等の連結部材により互いに連結されている。また、図2での図示は省略しているが、建物ユニット20において、建物外壁部となる部位には、外壁材が取り付けられているとともに、各住戸11a,11bの境界部となる部位には、戸境壁12を構成する壁体51が設けられている。なお、壁体51の詳細は後述する。
【0032】
本実施形態では、水栓17を有する給水設備が各住戸11a,11bのそれぞれに設けられている。ここでは、第1住戸11aの給水設備について、図3を参照しつつ説明する。図3は水栓17周辺の建物10の縦断面図である。なお、図3においては床小梁26及び流し台16の図示を省略しているとともに、第2住戸11bの水栓17及び水配管61の図示を省略している。
【0033】
図3に示すように、第1住戸11a及び第2住戸11bのそれぞれにおいて、キッチン15の下方には床下空間31が設けられており、キッチン15と床下空間31とは床部32により上下に仕切られている。床部32は床面材28を含んで構成されている。床面材28は、合板やパーティクルボード等により形成されており、根太35を挟んで床大梁23及び床小梁(図示略)の上に載置されている。床面材28の下側には床断熱材34が設けられている。床断熱材34は、硬質ウレタンフォームなどの発泡系断熱材により形成されており、床面材28の下面に沿って延びている。
【0034】
床大梁23は、スペーサ41を介して基礎42の上に設けられている。基礎42は建物10を下方から支持するものであり、建物ユニット20は基礎42の上に据え付けられている。基礎42は、地上において各々分割された複数の基礎ブロック43により形成されており、これら基礎ブロック43は、建物ユニット20の外周面に沿って所定間隔で並べて設けられている。この場合、床下空間31の周縁部となる位置に基礎ブロック43が配置されていることになる。なお、基礎ブロック43が立ち上げ部に相当する。
【0035】
基礎ブロック43は、プレキャストコンクリート部材などにより形成されたコンクリートブロックが地上面に載置されたものであり、基礎ブロック43の載置部分は例えば砕石が敷き詰められた砕石層とされている。各基礎ブロック43は互いに離間しており、それぞれ独立した構成とされている。なお、本実施形態の基礎42は、簡易式の基礎構造とされており、仮設住宅等の仮設建物に適したものとなっている。
【0036】
戸境壁12は、ドッキングラインDLを挟んで対向する一対の壁体51を有する二重壁とされている。一対の壁体51のうち一方の壁体51は、第1住戸11aの建物ユニット20に対して固定されており、第1壁体に相当する。他方の壁体51は、第2住戸11bの建物ユニット20に対して固定されており、第2壁体に相当する。各壁体51は、ユニット内側の壁面を形成する内側面材52と、ユニット外側の壁面を形成する外側面材53と、それら内側面材52と外側面材53との間に設けられた下地フレーム54とを有しており、柱21や天井大梁22、床大梁23といった躯体部に対して固定されている。
【0037】
なお、外側面材53及び内側面材52が一対の壁面材に相当する。また、一対の壁体51のそれぞれにおいて、ユニット外側面が互いに対向する対向面に相当する。
【0038】
下地フレーム54は、上下方向に延びる縦フレーム材54aと、左右方向に延びる横フレーム材54bとを含んで構成されており、それら縦フレーム材54aと横フレーム材54bとは互いに連結されている。縦フレーム材54a及び横フレーム材54bは、それぞれ軽量鉄骨材により形成されている。
【0039】
内側面材52及び外側面材53は、それぞれ2枚重ねの石膏ボードにより形成されている。内側面材52は下地フレーム54のユニット内側面に取り付けられており、外側面材53は下地フレーム54のユニット外側面に取り付けられている。内側面材52のユニット内側面には壁紙等が取り付けられており、そのユニット内側面は仕上面とされている。一方、外側面材53は内側面材52の下地面材となっており、ユニット外側面は戸境壁12において露出しないため非仕上面とされている。
【0040】
なお、図示は省略するが、内側面材52と外側面材53との間には断熱層が設けられており、その断熱層によって壁体51に断熱性が付与されている。
【0041】
第1住戸11aについて、水栓17は水配管61を介してヘッダ62に接続されている。水配管61は、剛性樹脂材料により形成されたフレキシブル配管やフレキシブルホースなどの可撓管とされている。なお、水配管61は、可撓性を有していれば金属材料により形成されていてもよい。
【0042】
ヘッダ62には、水配管61に加えて水道管等の上水管63が接続されており、水道水等の上水が上水管63からヘッダ62を介して水配管61に供給されるようになっている。ヘッダ62は複数の接続部62aを有しており、水配管61及び上水管63は接続部62aにそれぞれ接続されている。なお、ヘッダ62には、水配管61の他にも下流側の配管が接続されており、この場合、ヘッダ62は上水を複数の供給先に分配することになる。また、上水管63に温水器が接続されていれば、温水がヘッダ62を介して水配管61に供給可能となる。
【0043】
ヘッダ62は床下空間31に設置されており、床下空間31においては地表面に載置されている。なお、ヘッダ62は床下空間31において基礎42の内側面に対して固定されていてもよい。
【0044】
水配管61と水栓17とは、水栓連結部材としての継手部材65により連結されている。継手部材65はエルボ形状とされており、一端を水栓17が接続される水栓接続口とし、他端を水配管61が接続される配管接続口としている。継手部材65は壁体51の内部に設けられている。具体的には、継手部材65は、壁体51において内側面材52と外側面材53との間に配置されており、下地フレーム54の横フレーム材54bに対して取付金具66により取り付けられている。内側面材52には水栓取り付け用の孔部71が設けられており、継手部材65は、水栓接続口を孔部71からキッチン15側に露出させた状態で固定されている。水栓17は、キッチン15側から孔部71を介して継手部材65の水栓接続口にねじ込まれることで継手部材65に接続されており、それによって壁体51に対して固定されている。
【0045】
壁体51の外側面材53には、水配管引き出し用の孔部72が設けられており、水配管61における水栓17とは反対側の自由端が孔部72から壁体51のユニット外側に引き出されている。孔部72は、水栓取り付け用の孔部71よりも下方に配置されており、孔部72には、その孔部72の内周面と水配管61の外周面との隙間を埋めるための隙間埋め材73が取り付けられている。隙間埋め材73は、断熱シートなどの断熱材により形成されており、孔部72により壁体51の断熱性が低下することを抑制している。なお、孔部72が挿通孔に相当する。
【0046】
ここで、給水設備に関する構成については、第1住戸11aと第2住戸11bとでほぼ同じにされているが、水配管引き出し用の孔部72の配置が異なっている。具体的には、第1住戸11a及び第2住戸11bにおける水配管引き出し用の各孔部72は、戸境壁12の厚み方向において異なる位置に設けられている。本実施形態では、第2住戸11bの方が、第1住戸11aよりも孔部72が高い位置に配置されている。この場合、一対の壁体51の間において、各住戸11a,11b側から引き出す各水配管61が互いに干渉するといった不都合を回避できる。
【0047】
次に、建物10における給水設備の設置方法について図4図5を参照しつつ説明する。図4は給水設備を設置する作業手順を説明するための図、図5は壁体51の概略正面図である。
【0048】
まず、建物ユニット製造工場などの工場において、図4(a)に示すように、壁体51に水栓17を取り付けるとともに、その水栓17に水配管61を接続する作業を行う。具体的には、壁体51について、下地フレーム54に対して内側面材52を取り付けた後、その内側面材52に対して水栓取り付け用の孔部71を形成し、その孔部71の位置に合わせて継手部材65を下地フレーム54に固定するとともに、その継手部材65に水配管61の一端を接続する。そして、キッチン15側から水栓17を孔部71を通じて継手部材65に接続する。また、外側面材53に水配管引き出し用の孔部72を形成し、その孔部72から水配管61の自由端側をユニット外側に引き出しながら、外側面材53を下地フレーム54に対して取り付ける。その後、壁体51のユニット外側面に対して、孔部72と水配管61との隙間を塞ぐように隙間埋め材73を取り付ける。
【0049】
上記作業のうち、水配管61の一端側を水栓17に接続するとともに、その水配管61の他端側である自由端を含む配管非固定部を壁体51のユニット外側に出しておく作業が、第1工程に相当する。第1工程が行われることにより、建物ユニット20においては、水配管61における自由端を含む配管非固定部が、壁体51の孔部72からユニット外側に露出した状態となる。
【0050】
なお、水配管61については、建物構築後のヘッダ62の設置予定位置に基づいて水栓17(継手部材65)とヘッダ62とを接続可能な長さを算出し、その長さとなるように水配管61を切断するなどして長さ調整を行っておく。
【0051】
次に、同じく工場において、図4(b)に示すように、水配管61におけるユニット外側に出してある配管非固定部を、壁体51のユニット外側面に対して粘着テープ74により仮止めする。
【0052】
具体的には、図5(a)に示すように、水配管61のうち壁外側となる部分(非固定部)を、壁面に沿って蛇行させた状態で折り返し配置し、1又は複数の箇所で粘着テープ74により仮止めする。また、図5(b)に示すように、水配管61の非固定部を、壁面に沿って渦巻き状に配置し、1又は複数の箇所で粘着テープ74により仮止めする。いずれにしても、水配管61を、壁面上で互いに重なることなく壁面に沿って設けるとよい。これにより、壁外側への水配管61の張出量が抑えられ、トラック輸送時においてサイズアップにより輸送制限されてしまうという不都合を抑制できる。
【0053】
なお、水配管61のうち非固定部を壁体51のユニット外側面に仮止めする作業が第2工程に相当する。また、粘着テープ74は、建物ユニット20の運搬時には壁面から剥がれず、且つ施工現場において水配管61の仮止めを解除する時には壁面から剥がしやすい程度の粘着力を有している。それよりも粘着力が強い粘着テープ74については、仮止めを解除する際に、壁面に貼付された部分と水配管61に貼付された部分とが分離するように、引きちぎれる程度の強度をテープ本体が有していることが好ましい。
【0054】
その後、図4(c)に示すように、建物ユニット20をトラック等により施工現場に運搬し、図4(d)に示すように、建物ユニット20を施工現場にて基礎42の上に設置する。
【0055】
建物ユニット20を設置した後、施工現場において、図4(e)に示すように、粘着テープ74を取り外して水配管61の仮止めを解除し、図4(f)に示すように、住戸11a,11bのそれぞれにおいて、ヘッダ62を床下空間31に設置するとともに水配管61の自由端をヘッダ62に接続する。この場合、水配管61の配管非固定部については、隣り合う建物ユニット20の各壁体51同士の間の隙間(戸境壁12を形成する一対の壁体51の間の隙間)、及び基礎ブロック43同士の離間部分を通して床下空間31に引き出す。
【0056】
なお、壁体51に対する水配管61の仮止めを取り外し、その水配管61の自由端をヘッダ62に連結する作業が第3工程に相当する。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0058】
建物ユニット20の壁体51に水栓17を取り付ける作業や、その水栓17に水配管61を接続する作業が第1工程として工場で行われるため、施工現場では水配管61をヘッダ62に接続するという容易な作業を行えばよい。しかも、水配管61は水栓17とヘッダ62とを接続可能な長さを有しているため、施工現場においては、水配管61の長さ調整を行わずに配管自由端をそのままヘッダ62に接続すればよい。さらに、水配管61の配管非固定部を壁体51のユニット外側面に仮止めする作業が第2工程として工場で行われているため、水配管61を水栓17に接続した状態でも、建物ユニット20を工場から施工現場に運搬する際に水配管61が運搬の支障となることを回避できる。したがって、建物ユニット20に水配管61を工場先付けしておくことで施工現場での作業負担を低減できるとともに、水配管61を工場先付けした状態でも建物ユニット20を好適に運搬することができる。
【0059】
壁体51において水配管61の配管非固定部が仮止めされているユニット外側面は、建物構築後においては、戸境壁12において隣の建物ユニット20の壁体51と対向する面であるため、粘着テープ74を剥がすことで壁面の塗装がはがれるなど仮止めの痕跡が残ったとしても、その痕跡を隣の建物ユニット20の壁体51により覆い隠すことができる。これにより、水配管61を壁体51に仮止めしておいても、壁体51を補修するという手間が施工現場で発生することを回避できる。
【0060】
基礎42が、互いに離間した複数の基礎ブロック43により形成されているため、それら基礎ブロック43の離間部分を通して水配管61を床下空間31に敷設することができる。これにより、水配管61を挿通するための孔を基礎42に形成するという手間が施工現場で発生することを回避できる。
【0061】
水配管61の仮止めが粘着テープ74により行われるため、水配管61の長さや径寸法に合わせて仮止めの態様を適宜設定することができる。しかも、単に粘着テープ74を水配管61ごと壁体51に貼り付けるという容易な作業により仮止めを実施できるため、仮止め作業の容易化を図ることができる。
【0062】
壁体51において、水配管61が外側面材53の孔部72を通じて壁外に引き出されている部分に対して隙間埋め材73が取り付けられているため、その孔部72からゴミや埃などが壁体51の内部に入ることを防止できる。しかも、隙間埋め材73が断熱材により形成されているため、孔部72により壁体51の気密性や断熱性が低下することを抑制できる。
【0063】
継手部材65を介して水配管61を水栓17に接続する作業、及び継手部材65を下地フレーム54に取り付ける作業が第1工程として工場にて行われるため、施工現場での作業負担を低減できる。しかも、壁体51の内部に継手部材65及び水配管61を設置する作業を工場にてまとめて行うことができるため、工場にて壁体51を構築した後に施工現場にて壁体51の内部に継手部材65及び水配管61の設置作業を行う場合とは異なり、継手部材65及び水配管61を設置する作業自体を容易化できる。このため、施工現場だけでなく、工場においても作業負担を低減できる。
【0064】
住戸11a,11bの各水栓17が戸境壁12に設けられている構成において、戸境壁12の一対の壁体51のそれぞれに設けられた水配管引き出し用の孔部72は、壁厚み方向において異なる位置に設けられているため、住戸11a,11b側から孔部72を通じて引き出される各水配管61が互いに干渉するという不都合を抑制できる。これにより、間取りが線対称とされている一対の住戸11a,11bについて、それぞれの水栓17を住戸境界線を挟んで重なる位置に配置しても、水配管61を適正に敷設することができる。
【0065】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0066】
(1)壁体51に対する水配管61の仮止めは、粘着テープ74ではなく他の仮止め部材によりなされてもよい。例えば、壁体51に引掛フックを取り付け、その引掛フックに水配管61を引っ掛けることで仮止めとしてもよい。また、紐や締結バンドなどにより水配管61を壁体51の一部に対して締結することで仮止めとしてもよい。
【0067】
(2)上記実施形態では、壁体51が戸境壁12を構成する壁構成体とされているが、壁体51自身が位置の外壁や間仕切壁とされていてもよい。この場合でも、水配管61を壁体51のユニット外側面に対して仮止めすることは可能である。ただし、仮止めは、壁体51における仕上面ではない部分に対してなされることが好ましい。これにより、施工現場において壁体51の補修作業を行うという手間を省くことができる。
【0068】
(3)上記実施形態では、水栓17が継手部材65を介して壁体51の下地フレーム54に固定されていたが、水栓17は壁体51の下地フレーム54に対して直接固定されていてもよい。また、水配管61は継手部材65を介さずに水栓17に対して直接接続されていてもよい。
【0069】
(4)上記実施形態では、戸境壁12において住戸11a,11bの各水栓17が、壁厚み方向において重なる位置に設けられていたが、壁厚み方向において異なる位置に設けられていてもよい。
【0070】
(5)上記実施形態では、戸境壁12の一対の壁体51において、第1住戸11aの水配管引き出し用の孔部72の方が、第2住戸11bの水配管引き出し用の孔部72よりも高い位置に設けられていたが、低い位置に設けられていてもよい。要はそれら孔部72が壁厚み方向で異なる位置に設けられていればよい。異なる位置としては、上下方向だけでなく左右方向において異なる位置が挙げられる。
【0071】
(6)建物10が複数階建ての場合、上階部の床下空間は、上階部及び下階部の各屋内空間の間に設けられていることになるが、その床下空間にヘッダ62が設けられていてもよい。この場合でも、上階部を形成する建物ユニット20について、壁体51に仮止めしておいた水配管61をヘッダ62に接続することが可能となる。
【0072】
(7)ヘッダ62に対して壁付きの水栓が複数接続されている場合、それら水栓には、ヘッダ62に接続される水配管がキッチン15等の住戸内空間を通じて床下空間31に敷設されている水栓が含まれていてもよい。この水栓に接続された水配管については、壁体の内壁面に設けられた貫通孔、及び床部32に設けられた貫通孔を通じて、壁体の内部から床下空間31に引き出されていることが好ましい。
【0073】
(8)基礎42は、床下空間31の周縁部に沿って延びる連続基礎とされていてもよい。この場合、基礎42や床大梁23には、水配管61を床下空間31に引き込むための引き込み孔が形成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0074】
10…建物、11a…第1住戸、11b…第2住戸、12…戸境壁、17…水栓、20…建物ユニット、21…柱、22…大梁としての天井大梁、23…大梁としての床大梁、31…床下空間、42…基礎、43…立ち上げ部としての基礎ブロック、51…第1壁体及び第2壁体を構成する壁体、52…内側面材、53…外側面材、54…下地フレーム、61…水配管、62…ヘッダ、65…継手部材、71…水栓取り付け用の孔部、72…挿通孔としての水配管引き出し用の孔部、73…断熱材としての隙間埋め材、74…粘着テープ。
図1
図2
図3
図4
図5