(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
この超音波診断装置の実施形態について各図を参照して説明する。
【0014】
超音波診断装置1は、被検体に対して超音波を送信し、被検体からの反射波に基づいて被検体内の運動体(血流)の流速を表すドプラスペクトラム画像を生成する。
【0015】
図1は、超音波診断装置を示すブロック図である。
図1に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送信部3、受信部4、補間部5、Bモード信号処理ユニット6、ドプラ信号処理ユニット7、画像生成手段8、表示制御手段9、表示手段10、ユーザインターフェース11、及び制御手段12を備えている。超音波プローブ2、送信部3及び受信部4が送受信部の一例である。
【0016】
超音波プローブ2には、複数の超音波振動子が所定方向(走査方向)に1列に配置された1次元アレイプローブ、又は、複数の超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブを用いる。2次元アレイプローブを用いることで、3次元の領域を超音波で走査することができ、3次元の領域におけるボリュームデータを取得することが可能となる。また、超音波プローブ2には、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配列された1次元アレイプローブであって、走査方向に直交する方向に超音波振動子を機械的に揺動させることで3次元領域の走査が可能な1次元アレイプローブを用いても良い。
【0017】
送信部3は超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させ、受信部4は、超音波プローブ2が受信したエコー信号を受信する。送信部3及び受信部4は、所定のパルス繰り返し周波数(PRF)に従って、超音波プローブ2に超音波を送受信させる。
【0018】
送信部3は、図示しないクロック発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路を備えている。クロック発生回路は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する回路である。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカスを実施する回路である。パルサ回路は、各超音波振動子に対応した個別経路(チャンネル)の数に応じたパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ2の各超音波振動子に供給するようになっている。
【0019】
受信部4は、図示しないプリアンプ回路、A/D変換回路、受信遅延回路、及び加算回路を備えている。プリアンプ回路は、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換回路は、増幅されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延回路は、A/D変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算回路は、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。その加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、この受信部4によって加算処理された信号をRF信号(Radiofrequency Signal)という場合がある。
【0020】
受信部4から出力されたRF信号は、補間部5に出力される。補間部5は、受信部4から出力されたRF信号を用い、周期的に欠落した信号を推定することにより補間する。
【0021】
次に、超音波プローブ2、送信部3、受信部4及び補間部5の動作について
図2及び
図3を参照して簡単に説明する。
【0022】
被検体の計測部位の体表に超音波プローブ2を当てる。検査者は超音波プローブ2を被検体の体表に沿って連続的に走査する。その走査の間、送信部3から印加された送信信号が超音波プローブ2の各超音波振動子(図示省略)に与えられ、超音波プローブ2から被検体に向けて超音波パルスが送信される。送信された超音波パルスは被検体から随時反射され超音波プローブ2を介して受信部4に入り、受信部4内で増幅、A/D変換、遅延演算、加算処理などが行われる。受信部4で各処理が行われた信号は補間部5に入力される。補間部5では、入力された信号を基に欠落した信号を補間する。
【0023】
図2は、被検体内における同じ位置(観測点)に対して超音波を4回送受信したとき、各回数間の送受信に要する所要時間の変化を示す図である。
図2では横軸を時間(t)軸とし、超音波を送受信したときの回数である1回目から4回目をN1〜N4で示す。
【0024】
図2に示すように、超音波の送受信に要する所要時間の変化は、1回目と2回目の間、2回目と3回目の間、及び、3回目と4回目の間でそれぞれΔ1、Δ2、Δ3となる。この所要時間の変化Δ1、Δ2、Δ3は、観測点における運動体の速度ベクトルに相当する。
【0025】
超音波の方向を実線とすると、観測点は実線上に多数設けられる。補間部5は、隣り同士となる実線間に補間線を想定し、想定した補間線に観測点を配置し、配置した観測点における所要時間の変化を補間する。
【0026】
例えば、補間部5は、補間線上の各観測点における所要時間の変化を、その補間線から等しい距離にある2つの補間線または実線の各観測点における所要時間の変化の平均値として補間する。
【0027】
次に、RF信号及び補間部5により補間された信号(所要時間の変化を含む)は直交検波の完了したIQデータに変換され、その後、Bモード信号処理ユニット6及びドプラ信号処理ユニット7に出力される。
【0028】
Bモード信号処理ユニット6は、エコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号からBモード超音波ラスタデータを生成する。具体的には、Bモード信号処理ユニット6は、直交検波されたデータに対してフィルタ処理を行い、さらに、対数変換による圧縮処理を施す。
【0029】
次にドプラ信号処理ユニット7について
図5を参照して説明する。
【0030】
図5は、本実施形態と比較されるドプラ信号処理ユニット7のブロック図である。
図5に示すように、ドプラ信号処理ユニット7は、ウォールフィルタ(Wall Filter)71、自己相関ブロック(AC:Auto Correlator)72、算出手段73、ポストフィルタ処理手段74、及びログ(Log)圧縮部75を備えている。流れてくるドプラ信号(実部成分及び虚部成分)はウォールフィルタ71にてクラッタ成分を取り除き、自己相関ブロック72を経て、算出手段73にて、速度V、分散σ、パワー値Pを算出する。パワー値Pはログ圧縮部75により、8ビット(bit)の信号に圧縮される。なお、ログ圧縮部75により圧縮される前、圧縮された後においてもパワー値、スカラ、ベクタにP、P1、P2を付して説明する。
【0031】
ここで、ポストフィルタ処理とは、速度V、分散σ、パワー値Pが算出された後のフィルタ処理をいう。ポストフィルタ処理手段74には、ブランク処理手段741及び/または平滑化処理手段742が含まれる。また、ポストフィルタ処理というときは、ブランク処理及び/または平滑化処理をいう場合がある。
【0032】
ポストフィルタ処理にブランク処理及び平滑化処理が含まれるとき、これらの手順はいずれの処理を先にしてもよい。
【0033】
なお、この実施形態のポストフィルタ処理手段74について、ブランク処理手段741が含まれ、平滑化処理手段742が含まれないものとして説明する。
【0034】
速度V、分散σ、圧縮後のパワー値Pはブランク処理手段741を経てディジタルスキャンコンバータ(Digital Scan Converter)81(以下、DSCと称する)へ送られる。DSC81にて、表示手段10に表示するための情報へ変換され、表示手段10に送られ、色情報として表示される。算出手段73、ブランク処理手段741、速度、分散σ、及びパワー値Pの詳細は後述する。
【0035】
ただし、上記
図5に示すドプラ信号処理ユニット7は、スカラP1またはベクタP2のいずれか一方のパワー値Pを算出手段73から後段に流すものである。これに対して、本実施形態に係るドプラ信号処理ユニット7は、スカラおよびベクタの両方のパワー値Pを算出手段73から後段に流すようにし、後段のパワー値を用いる全ての処理において、スカラまたはベクタのどちらかのパワー値を選択的に用いるようにしたものである。
【0036】
次に、本実施形態に係るドプラ信号処理ユニット7について
図3及び
図6を参照して説明する。
【0037】
ドプラ信号処理ユニット7の自己相関ブロック72は、被検体内の各観測点における複数回の送受信により得られるドプラ信号を基に運動体(血流)の速度ベクトルを求める速度ベクトル算出部の一例である。ドプラ信号を複素データ(実部成分及び虚部成分を含む)という場合がある。
【0038】
図3は複数回の送受信に要した所要時間の変化を複素数平面上に表した図である。
図3に示すΔ1、Δ2、Δ3は、複数回の送受信に要した所要時間の変化を示し、|Δ1|、|Δ2|、|Δ3|は、信号レベルの大きさを示し、θ1、θ2、θ3は、速度成分を示す。
【0039】
図6は、算出手段73から後段にスカラP1およびベクタP2が流れるドプラ信号処理ユニットの一例を示す図、
図7は算出手段の一例を示すブロック図である。
図6及び
図7に示すように、算出手段73は、
自己相関ブロック72により求められた複数の速度ベクトルの絶対値の和であるスカラP1を求める第1算出手段731、自己相関ブロック72により求められた速度ベクトル
の和の絶対値であるベクタP2を求める第2算出手段732、スカラP1とベクタP2との比である分散σを求める分散算出手段733を有している。
【0040】
第1算出手段731は、
自己相関ブロック72により求められた速度ベクトルの絶対値の和としてスカラP1を求める。
【0041】
第1算出手段731は、求めたスカラP1をログ圧縮部75に出力する。ログ圧縮部75は、スカラP1を圧縮して、ブランク処理手段741に出力する。
【0042】
次に、第2算出手段732により求められるベクタP2を数式で表すと、次の式(1)となる。
P2=|Δ1+Δ2+Δ3| (1)
【0043】
第2算出手段732は、求めたベクタP2をログ圧縮部75に出力する。ログ圧縮部75は、ベクタP2を圧縮して、ブランク処理手段741に出力する。
【0044】
図4は、ログ圧縮部75からブランク処理手段741に出力されたスカラP1及びベクタP2を示す図である。
図4では、深さ方向の観測点を(Q1a、Q1b、Q1c)、(Q2a、Q2b、Q2c)、…で示し、ラスタ方向の観測点を(Q1a、Q2a、Q3a、Q4a、Q5a)、(Q1b、Q2b、Q3b、Q4b、Q5b)、…で示している。また、各観測点のスカラP1をP11a〜P15c、各観測点のベクタP2をP21a〜P25cで示している。
【0045】
記憶手段(図示省略)には、スカラP1、及び、ベクタP2にそれぞれ基づくしきい値が記憶されている。各しきい値は経験則に基づいて定められている。制御手段12は、ユーザインターフェース11の入力部の操作を受けて、しきい値を記憶手段に記憶させる。なお、制御手段12がスカラP1、ベクタP2の入力を受けて、予め定められた式からしきい値を求め、しきい値を記憶手段に記憶させるようにしてもよい。
【0046】
算出手段73は分散σを求めるための分散算出手段733を有している。分散σは、スカラP1及びベクタP2を基に求められる比であり、次の式で表される。
σ={P2/(P2を作るときのデータ数)}/{P1/(P1を作るときのデータ数)} (2)
【0047】
ドプラ信号処理ユニット7は、各観測点におけるパワー値をブランク処理するためのブランク処理手段741を有している。ブランク処理手段741には一または複数のブランク処理が含まれる。各ブランク処理において、ブランク処理されるパワー値としてスカラP1またはベクタP2を用い、パワー値を数値判定(しきい値判定)するときに用いるしきい値としてスカラP1またはベクタP2を用いる。この実施形態では、少なくとも一以上のブランク処理において、ブランク処理されるパワー値にスカラP1またはベクタP2のいずれか一方を選択したとき、選択したパワー値に対するしきい値としてスカラP1またはベクタP2の他方を用い、しきい値以下のパワー値を削除する。なお、他のブランク処理においては、ブランク処理されるパワー値としきい値判定に用いるパワー値とが同じスカラP1であっても、同じベクタP2であってもよい。
【0048】
次に、ブランク処理されるパワー値としてスカラP1を用い、ブランク処理されるパワー値に対するしきい値判定にベクタP2を用いる
ブランク処理の一例を示す。
【0049】
観測点Q1a、Q1bのスカラP11a、P11bがしきい値(輝度値:100)以下で、他の観測点のスカラP11c〜P15cがしきい値を超えるとき、ブランク処理手段741は、スカラP11a、P11bを記憶手段から削除し(その値を0とし)、その他のスカラP11c〜P15cを記憶手段に残す。
【0050】
なお、上記実施形態では、しきい値としてベクタP2を用い、スカラP1をブランク処理するものを示したが、逆の態様、すなわち、しきい値としてスカラP1を用い、ベクタP2をブランク処理するようにしてもよい。
【0051】
(変形例1)
次に、ドプラ信号処理ユニットの他の例について
図8を参照して説明する。なお、変形例のポストフィルタ処理手段74について、ブランク処理手段741が含まれ、平滑化処理手段742が含まれないものとして説明する。
【0052】
図8は、ドプラ信号処理ユニットの他の例を示すブロック図である。
図8に示すように、ドプラ信号処理ユニット7は、ベクタ算出部76を有している。算出手段73からスカラP1、分散σがベクタ算出部76に入力され、ベクタ算出部76は、スカラP1及び分散σを基に、ベクタP2を算出する。
ベクタP2は次の式から求める。
P2=P1×σ
ここで、σは、上記式(2)により求められる。
【0053】
スカラP1、及び、求められたベクタP2は、ログ圧縮部75に出力され、その後、ブランク処理手段741で、ブランク処理されることは、上記実施形態と同様であるので、
その説明を省略する。なお、スカラP1に乗算される分散σは、そのものである必要はなく、例えば、S字、上凸、下凸に変換したものを使用してもよい。
【0054】
(変形例2)
上記変形例1では、分散σを記憶手段に記憶させたが、記憶手段の容量の制約で、分散σを記憶できない場合がある。
【0055】
次に、分散σを演算で求める方法の一例について
図9を参照して説明する。
【0056】
図9は、スカラP1、ベクタP2を基に、分散σを求める方法の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、DSC81に送られてきたスカラP1、ベクタP2を分散算出部82に送る。
【0057】
分散算出部82は、次の式(3)により、スカラP1、ベクタP2をアンチログ(Anti Log)処理をした後に除算を行う。
σ=ALog(ベクタ)/ALog(スカラ) (3)
ここで、ALogとは、アンチログ処理をいう。
【0058】
上記演算処理された分散σは、DSC81に送られ、分散σに応じて、スカラP1、ベクタP2を変換する。
【0059】
以上に説明したBモード信号処理ユニット6及びドプラ信号処理ユニット7から出力された信号は、画像生成手段8に送られる。
【0060】
画像生成手段8は、Bモード信号処理ユニット6にて処理された後のデータに基づいて超音波画像データを生成する。例えば、画像生成手段8はDSC81を備え、直交座標系で表される画像を得るために、Bモード信号処理ユニット6にて処理された後のデータを直交座標系で表される画像データに変換する。例えば、画像生成手段8は、Bモード超音波ラスタデータに基づいて2次元情報としての断層像データを生成し、その断層像データを表示制御手段9に出力する。表示制御手段9は、その断層像データに基づく断層像を表示手段10に表示させる。
【0061】
画像生成手段8は、ドプラ信号処理ユニット7にて処理された後のデータに基づいて2次元血流像を生成する。画像生成手段8は、ドプラ信号処理ユニット7から送られるデータをカラー処理する。なお、ドプラ信号処理ユニット7から送られるデータには、ブランク処理により残された各観測点のスカラP1、及び、ブランク処理により削除された観測点のスカラP1(輝度値0に相当する)が含まれている。
【0062】
カラー処理では、例えば、平均速度−分散(V−σ)表示の場合には、超音波プローブ2に近づく血流の流れは赤色系の色に変換され、超音波プローブ2から遠ざかる血流の流れは青色系の色に変換される。また、平均速度Vの大きさは輝度の違いにより表現され、さらに、分散σは色相により表示される。2次元血流像を表示制御手段9に出力する。表示制御手段9は、2次元血流像を表示手段10に上記断層像に重ねて表示させる。
【0063】
制御手段12は、操作者によって指定された各観測点(レンジゲート)の座標情報をユーザインターフェース11から受けると、各観測点の座標情報をプローブ2及び画像生成手段8に出力する。
【0064】
次に、シミュレーションにより示す血流の画像について、
図10から
図13を参照して説明する。
【0065】
図10は、実験用ファントムを用いたBモード像を示す図である。
図10に示すように、○で囲ってある部分が狭くなっており、血流のスムーズな流れをさえぎることで、乱流を起こし、分散値の高い領域を作っている。
【0066】
図11は、スカラP1をしきい値に用いて、スカラP1をブランク処理し(スカラブランク)、スカラP1で表示(スカラ表示)することをシミュレーションした血流画像である。
図11に示すように、ROI(Region of Interest)の下端部に多くのノイズが見えているのがわかる。このように、スカラブランク、スカラ表示では、血流を表示する代わりにノイズもまた多く出てしまい消すことが困難である。
【0067】
図12は、ベクタP2をしきい値に用いて、ベクタP2をブランク処理し(ベクタブランク)、ベクタP2で表示(ベクタ表示)することをシミュレーションした血流画像である。
図12に示すように、ROIの下端部のノイズは少なくなり、血流成分のみが残っていることがわかる。しかし、肝心の血流成分もスカラ表示に比べ弱く(カラーマップ(Color Map)上では暗く)なり、最適な血流情報が得られていないことがわかる。
【0068】
図13は、この実施形態であって、ベクタP2をしきい値に用いて、スカラP1をブランク処理し(スカラブランク)、スカラP1で表示(スカラ表示)することをシミュレーションした血流画像である。
図13に示すように、ROIの下端部のノイズが少なく、また、本来ほしい血流成分のパワー値としても高く(カラーマップ上で明るく)なり、最適な血流情報が得られていることがわかる。
【0069】
次に、
図11に示すスカラブランク、スカラ表示の効果と、
図13に示すスカラブランク、スカラ表示の効果との比較について
図14を参照して説明する。
図14は血流画像の効果確認図である。
図14に示すように、スカラのしきい値AでスカラP1をブランク処理するスカラブランクでは、ノイズを削除するとき、弱血流を削除してしまう。
【0070】
これに対し、ベクタのしきい値BでスカラP1をブランク処理するスカラブランクでは、ノイズを完全に削除できないが、弱血流を残すことができる。この残った弱血流を含む血流をスカラ表示することで、最適な血流情報を得ることが可能となる。
【0071】
[第2の実施形態]
第2の実施形態において、第1の実施形態の構成と同じものについては同一番号を付してその説明を省略する。
【0072】
第1の実施形態のポストフィルタ処理手段74について、ブランク処理手段741が含まれ、平滑化処理手段742が含まれないものとして説明した。これに対し、第2の実施形態のポストフィルタ処理手段74について、ブランク処理手段741及び平滑化処理手段742が含まれるものとして説明する。また、以下の説明で、ポストフィルタ処理というときは、ブランク処理及び平滑化処理の両方を含むものとする。なお、第1の実施形態でも述べたように、ポストフィルタ処理にブランク処理及び平滑化処理が含まれるとき、これらの処理はいずれを先にしてもよい。
【0073】
上記ポストフィルタ処理手段74において、パワー値を用いる演算では、スカラP1及びベクタP2を使い分けることが可能である。
【0074】
また、所定条件に応じて、しきい値として用いるパワー値(スカラ、ベクタ)と、ポストフィルタ処理されるパワー値(スカラ、ベクタ)とを切替え可能な切替手段(図示省略)をポストフィルタ処理手段74に設けてもよい。
【0075】
次に、条件の一例として被検体の診断対象を用いる。切替手段は、被検体の診断対象に応じて、しきい値として用いるパワー値をスカラP1とベクタP2との一方から他方に切り替える。また、切替手段は、ポストフィルタ処理されるパワー値をスカラP1とベクタP2との一方から他方に切り替える。
【0076】
次に、条件の他の例として分散σを用い、分散σに応じて、パワー値を切り替えるようにしてもよい。例えば、表示制御手段9は、分散σを表示手段10に表示させ、入力された分散σを受けて、切替手段は、分散σが大きければ、スカラP1からベクタP2に切り替え、分散σが小さければ、ベクタP2からスカラP1に切り替える。
【0077】
次に、ポストフィルタ処理手段74において、スカラP1、ベクタP2を選択する処理の一例について
図15を参照して説明する。
【0078】
図15は、スカラP1、ベクタP2を選択する処理の一例を示す図である。
図15にステップS1〜S3に示すように、ポストフィルタ処理手段74には、ブランク処理手段741としてハイパワーブランク(High Power Blank)、ローパワーブランク(Low Power Blank)、平滑化処理手段742として平滑化フィルタ(smoothing Filter)の各処理ブロックがある。
【0079】
本実施形態では、これら3つのポストフィルタ処理されるパワー値としてスカラP1またはベクタP2の一方を選択したとき、これら3つのポストフィルタ処理されるパワー値の少なくとも1つに対するしきい値判定にスカラP1またはベクタP2の他方を用いる。
【0080】
例えば、3つのポストフィルタ処理されるパワー値としてスカラP1を選択したとき、3つのポストフィルタ処理のうちのハイパワーブランクに対するしきい値判定にベクタP2を用い、他のポストフィルタ処理であるローパワーブランク及び平滑化フィルタに対するしきい値判定にスカラP1を用いる。
【0081】
また、例えば、3つのポストフィルタ処理されるパワー値としてベクタP2を選択したとき、3つのポストフィルタ処理のうちのハイパワーブランク及びローパワーブランクに対するしきい値判定にスカラP1を用い、他のポストフィルタ処理である平滑化フィルタに対するしきい値判定にベクタP2を用いる。
【0082】
なお、パワー値によって、速度V、分散σ情報を修正することもできるため、速度Vや分散σに関してもフィルタのしきい値にベクタP2を用いることが可能である。
【0083】
図15にステップS4〜S5に示すように、DSC81では、速度Vや分散σの座標変換も行っている。速度成分に関しては、DSC81内でもパワー値でしきい値判定を行い(S4)、パワー値に応じた重み付けをして補正することができる(S5)。
【0084】
重み付けのしきい値はスカラP1、ベクタP2のどちらを用いてもよい。変換された速度データ、分散データは、スカラP1、ベクタP2と同様に表示手段10に送られる。
【0085】
DSC81にて、表示データが表示手段10に送られる。表示手段10で、パワー表示を行う際には、スカラP1を表示する(ステップS6)。以上のステップS1〜S6によって、分散値が高く、ノイズの疑いが高い成分を効率的に取り除き、正常流部に関しては、最適な血流表示を得ることが可能となる。
【0086】
なお、実施形態では、
図15に示すように、3つのポストフィルタ処理において、先にブランク処理(S1、S2)を行い、その後で平滑化処理(S3)を行うものを示したが、前述したように、これらの処理はいずれを先にしてもよい。例えば、先に平滑化処理を行い、その後でブランク処理を行うようにしてもよい。
【0087】
図16はブランク処理のみで構成されたポストフィルタ処理の例を示す図である。
図16に示すように、ポストフィルタ処理としてブランク処理(S1’)を行い、平滑化処理を行わずに、パワー値でしき値判定を行うステップS4に移行するようにしてもよい。
【0088】
図17は平滑化処理のみで構成されたポストフィルタ処理の例を示す図である。
図17に示すように、ポストフィルタ処理として平滑化処理(S2’)を行い、ブランク処理を行わずに、パワー値でしき値判定を行うステップS4に移行するようにしてもよい。
【0089】
また、実施形態では、ポストフィルタ処理されるパワー値として、スカラP1及び/またはベクタP2を示したが、これに限らず、自己相関係数をポストフィルタ処理するようにしてもよい。また実施形態では、ポストフィルタ処理の対象となる値としてパワー値を用いる態様を示したが、各実施形態ではパワー値と自己相関係数を含むものの総称として観測値と定義する。
自己相関係数は次の式のいずれかで表される。
(k=1、2、・・・、n)
ここで、nは複数回の送受信によって得られたデータの数に相当する。自己相関係数(IQデータからΔkを求めた後の複素データ)は、データ量も少なくデータとして保持するのに適している。
複素データをポストフィルタ処理することは、絶対値データをフィルタ処理するより精度が高くなるという利点を有する。
【0090】
前記実施形態に示すスカラP1またはベクタP2に対するしきい値は、表示手段10に表示されたスカラP1、ベクタP2、分散σを基に、操作者がユーザインターフェース11を用いて入力するようにしてもよい。また、スカラP1またはベクタP2を基に予め定められた式から求められたしきい値を自動的に入力するようにしてもよい。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。