特許第5936859号(P5936859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936859
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】二薬混合用シリンジキット
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20160609BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61J1/20 314C
   A61M5/145
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-283255(P2011-283255)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-132349(P2013-132349A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149000
【氏名又は名称】株式会社大協精工
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(74)【代理人】
【識別番号】100094488
【弁理士】
【氏名又は名称】平石 利子
(72)【発明者】
【氏名】川村 英明樹
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−518411(JP,A)
【文献】 特開2004−105234(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01080742(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0177186(US,A1)
【文献】 国際公開第1999/049914(WO,A1)
【文献】 特開2002−089717(JP,A)
【文献】 特表平10−512946(JP,A)
【文献】 特表2012−525217(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0037091(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0084852(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0280462(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/030975(WO,A1)
【文献】 米国特許第05851201(US,A)
【文献】 国際公開第2010/150042(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャ付きの第1バレルの先端部と、プランジャ付きの第2バレルの先端部とを相互に接続して連通させることで、第1バレル内の薬剤と第2バレル内の薬剤とを混合する二薬混合用シリンジキットであって、
前記第1バレルの先端部には、外周にオネジを有し、内周に内テーパ面を有する接続筒部が形成され、
前記第2バレルの先端部には、前記接続筒部の外周のオネジに着脱自在に螺合するメネジを内周に有するネジ筒部と、前記接続筒部の内周の内テーパ面に嵌合する外テーパ面を外周に有するノズル部とが形成されており、
前記第1バレルの接続筒部の外周面およびオネジの表面と、前記第2バレルのネジ筒部の内周面およびメネジの表面の少なくとも一方がRa1.0〜2.0の表面粗さで粗面化されており、
前記第1バレルの接続筒部の内テーパ面および前記第2バレルのノズル部の外テーパ面が6〜12%のテーパ度を持ち、かつ、両者のテーパ嵌合状態で前記ノズルの先端部が前記接続筒部内に位置していることを特徴とする二薬混合用シリンジキット。
【請求項2】
第1バレルの先端部の接続筒部の外周に台形ネジが形成され、
第2バレルの先端部のノズル部の外側に、内周に前記接続筒部の台形ネジに着脱自在に螺合するネジが形成されたネジ筒部が、形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の二薬混合用シリンジキット。
【請求項3】
前記第1バレルおよび第2バレルを構成する合成樹脂が環状ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1または2に記載の二薬混合用シリンジキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方のバレル内の薬剤と他方のバレル内の薬剤とを混合するための二薬混合用シリンジキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プランジャ付きの一方のバレルの先端部と、プランジャ付きの他方のバレルの先端部とを相互に螺合して連通させることにより、一方のバレル内に収容されている薬剤と、他方のバレル内に収容されている他の薬剤とを混合するようにした、いわゆる二薬混合用シリンジキットが従来一般に知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−518411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたような二薬混合用シリンジキットを含むこの種のシリンジキットにおいて、一方のバレルおよび他方のバレルは、通常、射出成形された合成樹脂からなり、その表面は滑らかな鏡面状に成形されている。
【0005】
このため、二薬の混合に先だって一方のバレルの先端部と他方のバレルの先端部とを相互に螺合させる際などにおいては、その螺合面にスティックアンドスリップ現象(摩擦面が引掛かったり滑ったりを繰り返す摩擦振動現象)が発生し易く、作業の円滑性および確実性を阻害する要因となっている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に対応してなされたものであり、二薬の混合に先だって一方のバレルの先端部と他方のバレルの先端部とを相互に螺合させる際などに発生し易いスティックアンドスリップ現象を未然に防止できる二薬混合用シリンジキットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、本発明に係る二薬混合用シリンジキットは、プランジャ付きの第1バレルの先端部と、プランジャ付きの第2バレルの先端部とを相互に接続して連通させることで、第1バレル内の薬剤と第2バレル内の薬剤とを混合する二薬混合用シリンジキットであって、第1バレルの先端部には、外周にオネジを有し、内周に内テーパ面を有する接続筒部が形成され、第2バレルの先端部には、接続筒部の外周のオネジに着脱自在に螺合するメネジを内周に有するネジ筒部と、接続筒部の内周の内テーパ面に嵌合する外テーパ面を外周に有するノズル部とが形成されており、第1バレルの接続筒部の外周面およびオネジの表面と、第2バレルのネジ筒部の内周面およびメネジの表面の少なくとも一方がRa1.0〜2.0の表面粗さで粗面化されており、第1バレルの接続筒部の内テーパ面および第2バレルのノズル部の外テーパ面が6〜12%のテーパ度を持ち、かつ、両者のテーパ嵌合状態で前記ノズルの先端部が前記接続筒部内に位置していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る二薬混合用シリンジキットでは、第1バレル内の薬剤と第2バレル内の薬剤とを混合する際、第1バレルの接続筒部の外周のオネジと、第2バレルのネジ筒部の内周のメネジとを相互に螺合させ、第1バレルの接続筒部の内周の内テーパ面と第2バレルのノズル部の外周の外テーパ面とを嵌合させる。その際、第1バレルの接続筒部の外周面およびオネジの表面と、第2バレルのネジ筒部の内周面およびメネジの表面の少なくとも一方がRa1.0〜2.0の表面粗さで粗面化されているため、両者間のスティックアンドスリップ現象が未然に防止される。
【0009】
本発明の二薬混合用シリンジキットにおいて、第1バレルの接続筒部の内テーパ面および第2バレルのノズル部の外テーパ面が6〜12%のテーパ度(長さに対する直径の変化の割合いを百分率で示すテーパの度合い。6〜12/100とも表記される)を持っているため、両者のテーパ嵌合およびテーパ嵌合状態からの離脱が円滑となる。加えて、両者のテーパ嵌合状態でノズルの先端部が接続筒部内に位置するように構成されているため、第1バレル内の薬剤と第2バレル内の薬剤とを混合する際に、第1バレルのプランジャのガスケットが十分なストロークで第1バレル内を摺動できる。
【0010】
また、本発明の二薬混合用シリンジキットにおいて、第1バレルおよび第2バレルは、透明性、蒸気滅菌性、薬剤非吸着性に優れた環状ポリオレフィンにより構成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る二薬混合用シリンジキットによれば、第1バレルの接続筒部の外周のオネジと、第2バレルのネジ筒部の内周のメネジとを相互に螺合させ、あるいはその螺合状態を解除する際などに発生し易いスティックアンドスリップ現象を未然に防止することができ、その作業の円滑性および確実性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る二薬混合用シリンジキットの構成を示す分解斜視図である。
図2図1に示した第1プランジャおよび第1バレルの拡大斜視図である。
図3図2に示した第1バレルの縦断面図である。
図4図1に示した第2プランジャおよび第2バレルの拡大斜視図である。
図5図4に示した第2バレルの縦断面図である。
図6図3に示した第1バレルの側面図である。
図7】一実施形態に係る二薬混合用シリンジキットの接続状態の斜視図である。
図8図7に示した接続状態の第1バレルおよび第2バレルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る二薬混合用シリンジキットの実施の形態を説明する。一実施形態に係る二薬混合用シリンジキットは、例えば薬剤Aと薬剤Bとを必要時に混合するために使用される。
【0014】
図1に示すように、一実施形態の二薬混合用シリンジキットは、第1プランジャ1が摺動自在に挿入された状態で内部空間に薬剤Aが予め収容された第1バレル2(図2図3参照)と、第2プランジャ3が摺動自在に挿入された状態で内部空間に薬剤Bが予め収容された第2バレル4(図4図5参照)とを備えている。
【0015】
第1プランジャ1は、第1バレル2内に臨む先端部にガスケット(図示省略)を有し、第1バレル2の後端部から突出する後端部にエンドプレート1Aを有する。第2プランジャ3も同様に構成されており、第2バレル4内に臨む先端部にガスケット(図示省略)を有し、第2バレル4の後端部から突出する後端部にエンドプレート3Aを有する。
【0016】
第1バレル2を構成する材料としては、特に限定はされないが、シリンジ用として一般に使用されている材料、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリアリレート等の光学的に透明でかつ110℃以上のガラス転移点または融点を有する材料で形成されることが好ましい。特に環状ポリオレフィンが、透明性、蒸気滅菌性、薬剤非吸着性の点で望ましい。
【0017】
第1バレル2は、上記の各種の合成樹脂により一体に射出成形されており、その後端部にはフランジ2Aが形成されている。同様に、第2バレル4も、上記と同様の各種合成樹脂により一体に射出成形されており、その後端部にはフランジ4Aが形成されている。なお、第1バレル2と第2バレル4とを構成する合成樹脂は、同一あるいは同種の合成樹脂(以下、同種合成樹脂)であってもよいし、異材あるいは異種の合成樹脂(異種合成樹脂)であってもよい。
【0018】
ここで、図2および図3に示すように、第1バレル2の先端部には接続筒部2Bが形成されており、この接続筒部2Bの外周には、リード角が大きく、巻き数が少ない台形ネジからなるオネジ2Cが形成されている。そして、接続筒部2Bの内周には、例えば6〜12%、好ましくは6〜10%程度のテーパ度を持つ内テーパ面2Dが形成されている。
【0019】
一般に市販されている注射器のノズルのテーパ(本発明の外テーパ面4Eに相当)は、通常約6%のテーパがつけられている。したがって、内テーパ面2Dのテーパ度を6%とすれば、市販の注射器を本願の第1バレルと接合することができ好ましい。この場合、オネジ2Cも一般に市販されている注射器と螺合できる形状、寸法を有する必要がある。また、内テーパ面2Dのテーパ度を上述の通り6〜10%程度としておけば、市販の注射器を使用することもできるし、本発明専用に設計した第2バレルを使用することもできより好ましい。なお、内テーパ面2Dのテーパ度をあえて市販の注射器が使用できない程度とすることも用途によって有効である。
【0020】
一方、図4および図5に示すように、第2バレル4の先端部には、中心孔4Bを有するノズル部4Cが形成され、その外側には同心円状にネジ筒部4Dが形成されている。そして、ノズル部4Cの外周には、接続筒部2Bの内周の内テーパ面2Dに緊密かつ円滑に嵌合する上記テーパ度を持つ外テーパ面4Eが形成され、ネジ筒部4Dの内周には、接続筒部2Bの外周のオネジ2Cに着脱自在に螺合するメネジ4Fが形成されている。なお、上記の内テーパ面2Dと外テーパ面4Eのテーパ度は、密封性の面からは一致することが好ましいが、必ずしも一致する必要はないことは、上に述べたとおりである。
【0021】
ここで、第1バレル2の接続筒部2Bのオネジ2Cの表面と、第2バレル4のネジ筒部4Dのメネジ4Fの表面の何れか一方は、所定の表面粗さで粗面化されてる。本実施形態では、第2バレル4のネジ筒部4Dのメネジ4Fの表面は粗面化されていないが、図6に示す第1バレル2の接続筒部2Bの外周面およびオネジ2Cの表面は、Ra1.0〜2.0の表面粗さで粗面化されている。
【0022】
加えて、第1バレル2の接続筒部2Bの内テーパ面2Dと第2バレル4のノズル部4Cの外テーパ面4Eとがテーパ嵌合した状態で、第2バレル4のノズル部4Cの先端部は、第1バレル2の接続筒部2B内に位置するように構成されている(図8参照)。
【0023】
以上のように構成された一実施形態の二薬混合用シリンジキットでは、例えば第1バレル2内の薬剤Aと第2バレル4内の薬剤Bとを混合する際、図1に示した第1バレル2の接続筒部2Bの外周のオネジ2Cと、第2バレル4のネジ筒部4Dの内周のメネジ4Fとを相互に螺合させ、第1バレル2の接続筒部2Bの内周の内テーパ面2Dと第2バレル4のノズル部4Cの外周の外テーパ面4Eとをテーパ嵌合させる(図7参照)。
【0024】
その作業の際、第1バレル2の接続筒部2Bの外周面およびオネジ2Cの表面と、第2バレル4のネジ筒部4Dの内周面およびメネジ4Fの表面の少なくとも一方(本実施形態では、第1バレル2の接続筒部2Bのオネジ2Cの表面)がRa1.0〜2.0の表面粗さで粗面化されているため、両者間のスティックアンドスリップ現象が未然に防止される。また、第1バレル2の接続筒部2Bの内周の内テーパ面2Dと第2バレル4のノズル部4Cの外周テーパ面4Eとは、いずれも粗面化処理がされていないことが、密封性の確保の面で好ましい。
【0025】
従って、一実施形態の二薬混合用シリンジキットによれば、第1バレル2の接続筒部2Bの外周のオネジ2Cと、第2バレル4のネジ筒部4Dの内周のメネジ4Fとを相互に螺合させ、あるいはその螺合状態を解除する際などに発生し易いスティックアンドスリップ現象を未然に防止することができ、その作業の円滑性および確実性を確保することができる。
【0026】
また、一実施形態の二薬混合用シリンジキットでは、第1バレル2の接続筒部2Bの内周の内テーパ面2Dと第2バレル4のノズル部4Cの外周の外テーパ面4Eとがテーパ嵌合した状態で、第2バレル4のノズル部4Cの先端部が第1バレル2の接続筒部2B内に位置している(図8参照)。このため、図7に示すように第1バレル2の接続筒部2Bと第2バレル4のネジ筒部4Dとが接続された状態で、第1バレル2の第1プランジャ1のガスケットは十分なストロークで第1バレル2内を摺動することができる。その結果、第1バレル2内の薬剤Aと第2バレル4内の薬剤Bとを十分、かつ、確実に混合することができる。
【0027】
本発明に係る二薬混合用シリンジキットは、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、第1バレル2の接続筒部2Bの外周面およびオネジ2Cの表面は粗面化せず、第2バレル4のネジ筒部4Dの内周面およびメネジ4Fの表面のみをRa1.0〜2.0の表面粗さで粗面化してもよいし、第1バレル2の接続筒部2Bの外周面およびオネジ2Cの表面と第2バレル4のネジ筒部4Dの内周面およびメネジ4Fの表面の両方ともRa1.0〜2.0の表面粗さで粗面化してもよい。最も好ましいのは、第1バレル2の接続筒部2Bの外周面およびオネジ2Cの表面のみを粗面化する形態である。この形態であれば、市販の注射器にもそのまま使用することができる。
【0028】
また、粗面化する表面粗さは、第1バレル2または第2バレル4を構成する合成樹脂の種類に応じて、Ra1.0〜2.0の範囲で適宜変更することができる。この範囲の表面粗さであれば、第1バレル2と第2バレル4とが同種の合成樹脂で構成されていても、異種の合成樹脂で構成されていても、スティックアンドスリップ現象を良好に防止できる。なお、表面粗さがRa1.0未満では、シリンジに一般的に使用される合成樹脂において、スティックアンドスリップ現象を効果的に防止することができず、Ra2.0を超えると、螺合抵抗が低下して混合操作中に螺合が緩む虞がある。
【0029】
1 :第1プランジャ
1A:エンドプレート
2 :第1バレル
2A:フランジ
2B:接続筒部
2C:オネジ
2D:内テーパ面
3 :第2プランジャ
3A:エンドプレート
4 :第2バレル
4A:フランジ
4B:中心孔
4C:ノズル部
4D:ネジ筒部
4E:外テーパ面
4F:メネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8