【実施例1】
【0023】
図1ないし
図7は本発明に係るサーモスタット装置の一実施例を示す。
これらの図において、全体を符号10で示すサーモスタット装置は、
図1、
図6に示す構造を有し、
図7で示す自動車用エンジンの冷却水回路においてエンジン冷却水出口側に組み込まれて設けられる。
【0024】
まず、本発明に係るサーモスタット装置10を適用する冷却水回路の概要を
図7を用いて簡単に説明すると、符号1はエンジン、その冷却水出口にはラジエータ通路2を介してラジエータ3が接続され、戻り通路4がエンジン冷却水入口に接続され、冷却水の冷却回路が構成されている。5はウォータポンプ(W/P)で、エンジン冷却水入口に設けられている。
【0025】
前記ラジエータ通路2のエンジン冷却水出口側には、本発明を特徴づけるサーモスタット装置10が設けられ、ここで分岐されたバイパス通路6(後述する連通孔31が相当する)が前記ウォータポンプ5の上流側に接続されている。
【0026】
7は車内空調用の熱交換器であるヒータ、8はヒータ通路であり、このヒータ通路8は、エンジン1からの冷却水をヒータ7に送り、車室内空気等を温めた後、前記サーモスタット装置10を経てエンジン1に戻すように構成されている。なお、ラジエータ3からの戻り通路4へのヒータ通路8の接続は、ウォータポンプ5(W/P)の上流であれば、戻り通路4とバイパス通路6との接続前であっても接続後であってもよい。ここでは、接続前の位置に接続している。
【0027】
上述した冷却水回路によれば、エンジン1で熱せられた冷却水をラジエータ3に送り、冷却水温度を低下させ、ウォータポンプ5でエンジン1内に導入することにより、エンジン1を冷却するようになっている。ここで、前記サーモスタット装置10は、周知の通り、エンジン1からの冷却水温度が低いときには、ラジエータ3を迂回させるように、バイパス通路6(連通孔31)を介してエンジン1に戻したりする流路切換え機能をもつものである。
【0028】
前記サーモスタット装置10は、
図1、
図6に示されるように、全体がほぼドーム状を呈する装置ハウジング11を備え、その一部にはラジエータ3に向かうラジエータ通路2につながる通路12が開口して設けられている。
ここで、この装置ハウジング11は、エンジン1のジャケット部1A等にボルト止めされることで使用される。なお、このジャケット部1Aの代わりに、単独の装置ボディを用い、これに適宜の通路を形成してもよい。
【0029】
図1中13はエンジン出口通路であり、エンジン1内の冷却水をヒータ7側に給送するように構成されている。14はこのエンジン出口通路13と前記ラジエータ3への通路12とを接続、遮断するサーモスタット装置10のメインバルブであり、その弁体(後述する第2弁体との関係から第1弁体となる部分)が開閉動作することにより、エンジン1からの冷却水を選択的にラジエータ3側に給送するようになっている。
【0030】
図1中15はサーモエレメントであり、エンジン出口通路13中のエンジン冷却水温度によってピストン15aを伸縮駆動することにより、前記メインバルブ14となる第1弁体を開閉制御するように構成されている。なお、16はメインバルブ14における第1弁体を弁閉方向に付勢するコイルばねによるメインスプリングである。
【0031】
前記装置ボディとしてのエンジンジャケット部1Aには、前記ヒータ8またはラジエータ3からウォータポンプ5を経てエンジン入口に冷却水を還流させるための戻り通路20が形成され、前記サーモスタット装置10の取付部に対応して各通路13,20に空間部21,22が形成されている。さらにこれらの空間部21,22を連通させる開口23が形成されている。
【0032】
図中符号30で示すものは、本発明を特徴づけるサブバルブ(バイパスバルブ)を構成する連通孔31(バイパス通路6)をフランジ状部30aに有し全体が前記開口23に嵌合するように形成されたほぼ筒状を呈する装置フレームであり、
図3、
図4から明らかなように、前記装置ハウジング11から垂下された一対の脚部11b、11cに係止保持されるように構成されている。
【0033】
図3中符号32はフランジ状断面を有する形状を呈するように、例えば、断面がほぼ逆L字形状を呈するリング状部材で構成される第2弁体であり、前記連通孔31を開閉するための弁部32aとガイド筒32bからなり、このガイド筒32bが前記装置フレーム30の筒状部に移動自在に嵌装して設けられ、この第2弁体32の弁部32aによって前記装置フレーム30のフランジ状部30aに形成されている連通孔31が開閉され、バイパス通路6が連通するように構成されている。この第2弁体32はサブスプリングとしてのコイルばね33により付勢され、かつ装置フレーム30の筒状部先端に嵌合して係止されたストッパ34により組付け保持され、これによりサブバルブ組立体が構成されている。
【0034】
ここで、この第2弁体32の断面形状は、必ずしもフランジ状あるいはほぼ逆L字形状でなくともよく、要は連通孔31に嵌合する突起状形状を有するもの等、連通孔31の形状に応じて閉じることができる形状であれば、どのような形状でもよいことは勿論である。
【0035】
そして、このサブバルブを構成する第2弁体32は、前記サーモエレメント15の動きとは無関係に、前記通路21,22間の圧力差によってコイルばね34の付勢力を撓ませながら開閉動作するようになっている。
なお、上述した第2弁体32のガイド筒32bは、必ずしも全周に渡るものでなくてもよく、周方向の数カ所の突起状になっていてもよい。要は、この第2弁体32が装置フレーム30の筒状部の回りで軸線方向に移動可能になっており、かつ通路21,22間の圧力差でコイルばね33を撓ませながら通路孔31を開閉され、バイパス通路6が連通するように構成されておればよい。
【0036】
上述したサブバルブ組立体によれば、これをサーモスタット装置10を構成する装置ハウジング11の脚部11b,11cに対して簡単に組付けて保持することができる。この組立状態では、前記装置フレーム30はメインスプリング16により装置ハウジング11の脚部11b,11cの先端爪部に係止され、その組立状態が維持されるようになっている。
【0037】
ここで、
図1,2中符号25は装置フレーム30のフランジ状部30aの外側に嵌装されて保持されるゴムリングであり、開口23との間に介装することにより、第1の通路であるエンジン出口通路13と第3の通路である戻り通路20とのシールを確実にするようにしてもよい。勿論、このゴムリング25は上述した介装位置には拘らず、開口23と装置フレーム30のフランジ状部30aと開口23との間にサンドイッチ状に挟まれるように介在させて設けても良い。
【0038】
また、このようなサブバルブ組立体を組付けたサーモスタット装置10を、装置ボディであるエンジンジャケット部1Aの空間部21、開口23、空間部22による組付け部分に対し装置フレーム30を含むサブバルブ組立体、サーモエレメント15部分を挿入し、装置フレーム30のフランジ状部30aを開口23の段部に当接させることで、装置ボディへの組付けが完了する。このとき、装置フレーム30はメインスプリング16に押圧されて装置ボディ11A側に安定して支持される。
【0039】
ここで、上述したサブバルブ組立体を組み付けたサーモスタット装置10を、
図5(a)に示しており、この組立時には、装置ハウジング11の脚部11b,11cの先端に係止される装置フレーム30のフランジ状部30aは、メインバルブを構成するメインスプリング16により押圧付勢されることにより係止保持され、サーモスタット装置10としての組立体が構成される。
【0040】
上述したサーモスタット装置10は、装置ボディ(エンジンジャケット部)1Aにおいてエンジン出口通路13、戻り通路20が並列して設けられており、前記空間部21,22を有する部分に対し差込んで装着することで、組付け固定される。
この組付け固定時において、前記装置ハウジング11を装置ボディ1Aに組み付けることにより、装置フレーム30は、
図5(b)に示すように、前記係止状態が解除されるとともに、前記メインスプリング16で前記装置ボディ1A側に押圧付勢されて組み付けられることになる。このとき、前記装置ハウジング11の脚部11b、11cの先端係止部分と装置フレーム30のフランジ状部30aとの間には若干の隙間が形成されて離間している。
【0041】
このように構成することにより、メインスプリング16で押圧付勢される装置フレーム30は、装置ボディ1A側に確実に押圧保持され、これにより安定した組付け固定状態が得られ、組付け性がよくなる。
【0042】
また、このようにして得られるサーモスタット装置10におけるメインバルブ14とバイバスバルブ、さらに戻り通路20の作動関係は、
図4に示すようになっている。すなわち、暖機前にはメインバルブは閉じており、暖機後は開状態となる。一方、戻り通路20は常時開路となっている。また、バイバスバルブ(サブバルブ)は、暖機前、暖機後とは無関係に、低回転時には閉、高回転時には開となる。
【0043】
以上の構成によれば、サーモスタット装置10を構成するメインバルブである第1弁体15、メインスプリング16等と共に、前記サブバルブ組立体を組付けることにより、サーモスタットバルブ(15)と第2弁体32とを一体的に備えた構造とすることができる。しかも、この場合に、上記の装置フレーム30は、サーモエレメント15のガイド部材として、さらにメインスプリング16のばね受けも兼ねる部材であり、構成部品点数も少なく、組立性の面でも優れ、コスト低減が図る等の利点もある。また、上述した構成では、サーモスタット装置10としてのレイアウト上での自由度が大きくなり、エンジン1の小型化も達成できる等の利点もある。
【0044】
また、上述した構成によれば、装置フレーム30に連通孔31(バイパス通路6)を一体に成型し、さらにバイパスバルブとなる第2弁体も金属によるプレス成型または樹脂による一体成形で簡単に作製可能であり、構造も簡単で、生産性も向上させることができる。
【0045】
さらに、上述した構成によれば、簡単な構造かつ安価なコイルばねを採用することができるため、組立性も向上し、製造コストも低減させることができる。
また、上述した構成によれば、第1通路と第3通路間を特別なシール構造を用いることなく、装置フレーム30とゴムリング25とにより簡易な構造で両通路を隔離することができ、サーモスタット装置10をエンジン1のジャケット部1Aに組付けることが容易になり組立性も向上し、製造コストも低減させることができる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、サーモスタット装置10を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
例えばエンジン回転数とは連動しない電動式ウォータポンプW/Pを用いたタイプの自動車用エンジンの冷却水装置に用いるサーモスタット装置であっても適用して効果を発揮し得るものである。