特許第5936871号(P5936871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936871
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】制動機構を備えた配光可変装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20160609BHJP
   F21V 14/08 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   F21S8/12 295
   F21V14/08
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-28182(P2012-28182)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-165017(P2013-165017A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】望月 光之
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−095501(JP,A)
【文献】 特開平10−149554(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02459472(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
F21V 14/08
B60Q 1/00−1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具の配光を変えるための可動光学部品と、可動光学部品を駆動する駆動機構と、駆動途中の可動光学部品に制動力を与える制動機構とを備え、
前記制動機構が相対移動に伴って互いに反発し合う磁界を形成する磁石と非鉄金属製の負荷部材とを含み、磁石または負荷部材の何れか一方を可動光学部品と一体移動可能に設けたことを特徴とする車両用灯具の配光可変装置。
【請求項2】
前記駆動機構が可動光学部品を原点位置から作用位置に移動するアクチュエータと、可動光学部品を作用位置から原点位置に復帰させるスプリングとを含み、前記制動機構が復帰途中の可動光学部品に制動力を与える請求項1記載の車両用灯具の配光可変装置。
【請求項3】
前記可動光学部品が車両用灯具のシェードである請求項1または2記載の車両用灯具の配光可変装置。
【請求項4】
前記負荷部材が磁石を挟んで対向する一対の導体壁を備え、前記磁石が導体壁に対して平行移動可能に組み合わされている請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具の配光可変装置。
【請求項5】
前記負荷部材がアルミまたはアルミ合金からなる請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具の配光可変装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用の配光を変えるための可動光学部品を駆動および制動する機構を備えた配光可変装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具において、レンズ、シェード、反射鏡などの可動光学部品を移動し、車両周辺への配光を変化させる配光可変装置が知られている。この種の配光可変装置では、通常、可動光学部品をDCモータやソレノイドにより原点位置から作用位置(配光可変位置)に駆動し、スプリングによって作用位置から原点位置に復帰させている。
【0003】
例えば、特許文献1の配光可変装置は、シェードをソレノイドで退避位置から遮光位置に駆動し、ソレノイドに内蔵のリターンスプリングで遮光位置から退避位置に復帰させている(段落0026)。特許文献2の配光可変装置は、シェードをモータによりリンク機構を介して作用位置に配置し、トーションスプリングによって原点位置に戻している(段落0031)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−40459号公報
【特許文献2】特開2010−9766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の配光可変装置によると、可動光学部品をスプリングの弾発力で戻しているので、スピード制御が困難となり、可動光学部品が作用位置から原点位置に素早く移動し、配光が急激に変化するという不都合があった。また、可動光学部品を摩擦部材などの接触部品で制動することも考えられるが、接触部品の擦れ音や摩耗に伴う別の問題が発生する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、接触部品を使用することなく、可動光学部品に制動力を与え、配光を緩やかに変化させることができる配光可変装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、次のような配光可変装置を提供する。
(1)配光を変えるための可動光学部品と、可動光学部品を駆動する駆動機構と、可動光学部品に制動力を与える制動機構とを備え、制動機構が相対移動に伴って互いに反発し合う磁界を形成する磁石と非鉄金属製の負荷部材とを含み、磁石または負荷部材の何れか一方を可動光学部品と一体移動可能に設けたことを特徴とする配光可変装置。
【0008】
上記配光可変装置は、可動光学部品が重力によって作用位置から原点位置に復帰するタイプの照明装置に使用することができる。ただし、車両用灯具など、可動光学部品に確実な動作が求められる用途では、以下に示すように、可動光学部品をスプリングによって復帰させるのが好ましい。
【0009】
(2)駆動機構が可動光学部品を原点位置から作用位置に移動するアクチュエータと、可動光学部品を作用位置から原点位置に復帰させるスプリングとを含み、制動機構が復帰途中の可動光学部品に制動力を与えることを特徴とする(1)に記載の配光可変装置。
【0010】
(3)可動光学部品が車両用灯具のシェードであることを特徴とする(1)または(2)に記載の配光可変装置。
【0011】
(4)負荷部材が磁石を挟んで対向する一対の導体壁を備え、磁石が導体壁に対して平行移動可能に組み合わされていることを特徴とする(1),(2)または(3)に記載の配光可変装置。
【0012】
(5)負荷部材がアルミまたはアルミ合金からなることを特徴とする(1),(2),(3)または(4)に記載の配光可変装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配光可変装置において、磁石と負荷部材との間に相対移動が発生すると、非鉄金属製の負荷部材に渦電流が流れ、渦電流によって負荷部材に磁界が形成され、この磁界が磁石の磁界と反発し合い、この反発力によって可動光学部品の移動が妨げられる。このため、制動機構に接触部品を使用することなく、磁気作用による制動力を可動光学部品に与え、照明装置の配光を緩やかに変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による実施例1の配光可変装置を装備した車両用灯具を示す斜視図である。
図2図1の配光可変装置の制動機構を示す側面図である。
図3】制動機構の動作を示す斜視図である。
図4】本発明による実施例2の配光可変装置を装備した車両用灯具を示す斜視図である。
図5図4の配光可変装置の制動機構を示す側面図である。
図6】本発明による実施例3の配光可変装置を装備した車両用灯具を示す斜視図である。
図7図5の配光可変装置の制動機構を示す側面図である。
図8】制動機構の変更例を示す側面図である。
図9】制動機構の別の変更例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を車両用灯具の配光可変装置に具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す車両用灯具1は、灯具ハウジング(図示略)の内側に光源2、リフレクタ3、レンズ4、配光可変装置5を備え、配光可変装置5がシェード6、駆動機構7、制動機構8を装備している。シェード6は、車両用灯具1の配光を変えるための可動光学部品であって、駆動機構7のアクチュエータにより駆動され、制動機構8によって制動される。
【0016】
図2に示すように、アクチュエータとしてのモータ9(ソレノイドも使用可)はカム部材10と中間部材11を介してシェード6に連結されている。シェード6は軸12で支持枠13に回動可能に支持され、モータ9により原点位置(図1参照)と作用位置(図3参照)とに駆動される。そして、支持枠13にシェード6を原点位置に復帰させるトーションスプリング14が装着され、このスプリング14の付勢力に抗して、制動機構8が復帰途中のシェード6に制動力を与えるようになっている。次に、制動機構8の詳細な構成を幾つかの実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0017】
図1図3に示す実施例1の制動機構8は、永久磁石16と非鉄金属製の負荷部材17を備えている。負荷部材17は、アルミまたはアルミ合金材料でコ字形に形成され、永久磁石16を挟んで対向する一対の導体壁17a,17bを備えている。永久磁石16は、ホルダ18によりブラケット19を介して中間部材11に取り付けられ、導体壁17a,17bに対して平行移動可能に組み合わされ、モータ9によってシェード6と一体に負荷部材17の内側でその長手方向に往復移動されるようになっている。
【0018】
図3に示すように、シェード6の作用位置でモータ9が消勢されると、シェード6がスプリング14の付勢力で作用位置から原点位置に復帰する。このとき、永久磁石16が図3の矢印方向に移動し、負荷部材17に磁石16の磁束を打ち消すように渦電流が流れる。そして、渦電流により形成された負荷部材17の磁界と磁石16の磁界とが互いに反発し合い、この反発力がシェード6に制動力として作用する。したがって、この制動力でスプリング14の付勢力を弱め、シェード6を減速回動させ、車両用灯具1の配光を緩やかに変化させることができる。
【実施例2】
【0019】
図4図5に示す実施例2の制動機構8では、永久磁石21が磁性体ケース22に固定的に保持され、非鉄金属製の負荷部材23がブラケット19によりシェード6と一体移動可能に取り付けられている。そして、シェード6が原点位置に復帰するとき、負荷部材23が永久磁石21の磁束を横切って移動し、永久磁石21と負荷部材23が両者の相対移動に伴って互いに反発し合う磁界を形成し、反発力を制動力としてシェード6に作用させる。したがって、実施例1と同様に、制動力によってスプリング14の付勢力を弱め、シェード6を減速回動させ、車両用灯具1の配光を緩やかに変化させることができる。
【実施例3】
【0020】
図6図7に示す実施例3の制動機構8では、電磁石25が磁性体ケース22に固定的に保持され、非鉄金属製の負荷部材23がシェード6と一体移動可能に設けられている。そして、実施例2と同様に、シェード6が原点位置に復帰するときに、電磁石25と負荷部材23が両者の相対移動に伴って互いに反発し合う磁界を形成し、原点位置に向かうシェード6に制動力を作用させる。したがって、実施例3の制動機構8によっても、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0021】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、以下に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更して実施することも可能である。
(1)図8に示すように、非鉄金属製のコ字形負荷部材27をシェード6と一体移動可能に設け、永久磁石28を負荷部材27の導体壁27a,27bの間に位置するように灯具ハウジング29に固定的に設けること。
(2)図9に示すように、永久磁石31をシェード6と一体移動可能に設け、非鉄金属製の負荷部材32を二つに分割し、一対のI字形またはL字形の導体壁32a,32bの間に永久磁石31を配置すること。
(3)上記各実施例の制動機構8をレンズや反射鏡などの可動光学部品に応用すること。
(4)上記実施例の制動機構8を車両用灯具以外の各種照明装置に適用すること。
【符号の説明】
【0022】
1 車両用灯具
2 光源
3 リフレクタ
4 レンズ
5 配光可変装置
6 シェード
7 駆動機構
8 制動機構
14 トーションスプリング
16 永久磁石
17 負荷部材
17a,17b 導体壁
21,28,31 永久磁石
25 電磁石
22,27,32 負荷部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9