(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ貯蔵部からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を介してペン先へインキを誘導する直液式筆記具に内蔵される、最大泡圧法により測定される動的表面張力が、ライフタイム20msにおいて30〜55mN/mの範囲にあり、且つ、ライフタイム20msの動的表面張力とライフタイム5000msの動的表面張力の差が10mN/m以下である筆記具用水性インキ組成物が、筆記具本体に着脱可能なインキ貯蔵部に内蔵されるインキカートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般に、ペン芯式筆記具に適用される水性インキは、表面張力(静的表面張力)が高すぎる場合、櫛溝部にインキを保持できず、筆記具内部の気圧変化によって誘導芯を介してペン先からインキのボタ落ちが発生したり、特に毛細管力の低いペン先においては筆跡にウスや途切れが発生する。また、表面張力が低すぎる場合、筆記具内部の気圧変化によって櫛溝部に保持されたインキが回収できない等の問題が生じるため、表面張力(静的表面張力)を規定するように様々なインキ組成が適用されている。
これに対して本発明では、前記不具合を解消できるとともに、今まで筆記具インキで論じられてきた表面張力値(静的表面張力の測定値)を規定しただけでは得られなかったインキカートリッジ交換時のインキ供給安定性(カートリッジ交換性)が付与できる条件を見出したものである。
【0009】
前記動的表面張力とは、液体が動きのある状態(流動状態)で示す表面張力(即ち、動きのある気液界面における表面張力)であり、本発明では最大泡圧法で測定する。前記最大泡圧法は、液中に挿した細管(プローブ)の先端から気泡を発生させたとき(即ち、新たな界面が形成されたとき)の最大圧力(最大泡圧)をミリ秒単位で測定することにより、液体の表面張力(mN/m)を求める方法である。
具体的には、気泡がプローブ先端から放出されて新しい気泡表面が生成され(t
1)、次の気泡が成長していく際に曲率半径が最小かつ圧力が最大となる(t
2)〔詳細には、気泡の曲率半径Rとプローブ先端の半径rが等しくなったときに圧力は最大となる〕。その後、気泡は更に成長し、再びプローブ先端から放出される(t
3)。尚、t
1〜t
3は各状態における時間tである。前述の経過で気泡の発生を繰り返すことで圧力変化が繰り返されており、特に、経過時間において、新しい表面が生成されてから圧力が最大になるまでの時間(t
1−t
2間)をライフタイム(気泡の寿命)といい、t
2−t
3間をデッドタイムという。
前記ライフタイムが小さいほどより動的であり、大きいほど静的に近づいた値が得られるものであるが、本発明においては、最も動的であり、より測定誤差が小さい条件となる値(高精度値)である20msでの動的表面張力値を規定するとともに、ライフタイム20msと5000ms(最も静的に近づいた値でのより測定誤差の小さい高精度条件)との差を規定している。尚、前記ライフタイム間では、表面張力が略曲線状の分布となるが、ライフタイム20ms時の動的表面張力と5000ms時の動的表面張力の差が10mN/m以下であるもの(即ち、動的な流動状態において速度等の条件による数値変化が小さいもの)が本発明のインキ組成物を構成している。
このようなライフタイムにおいて、インキを一定範囲の動的表面張力とすることで、インキカートリッジを新しいものに交換した際のインキの流量や速度等の流動条件によらず、ペン先からのインキのボタ落ちを生じることなく、ペン先へのインキ供給が安定して持続できるようになる。そのため、筆記時のインキ吐出安定性に優れ、かすれや線飛び等を生じることのない安定した筆跡形成が長期的に持続できる筆記具用水性インキ組成物となる。更に、紙面に対する筆跡滲みも抑制できるため、筆跡形成性に優れたインキとなる。
【0010】
前記最大泡圧法による動的表面張力の測定は、動的表面張力測定機(協和界面科学社製、BP−D3やBP−D5)、バブルプレッシャー動的表面張力計(KRUSS社製、BP−2)等を用いて測定することができる。
尚、本発明においては、協和界面科学社製のBP−D5を用いて、気泡発生用ガス:空気、測定温度:20℃、サンプル量80mLの条件で自動測定される。また、ブランクとして脱イオン水の動的表面張力を同条件で測定している。
【0011】
前記水性インキ組成物は、水と着色剤、更に前述の動的表面張力を得るために、必要に応じて配合される添加剤から構成される。
前記着色剤としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料が使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0012】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤等を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分22%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、C.I.Pigment Red220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、更には熱変色性組成物、光変色性組成物、香料等を直接又はマイクロカプセル化したカプセル顔料等を例示できる。
【0013】
前記熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が好適であり、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として適用される。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
【0014】
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報、特開2005−1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態が、特定温度域で記憶保持できる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0015】
前記着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%の範囲で用いられる。
また、着色剤として顔料を用いた場合、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、PVP、PVA等の非イオン性高分子等が用いられる。
【0016】
また、水に相溶性のある従来汎用の水溶性有機溶剤を用いることができる。具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
【0017】
更に、紙面への固着性や粘性を付与するために水溶性樹脂を添加することもできる。前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられる。前記水溶性樹脂は一種又は二種以上を併用することができ、インキ組成中1〜30重量%の範囲で用いられる。
【0018】
また、インキ中には界面活性剤や水溶性切削油を添加することが好ましい。これらの界面活性剤や水溶性切削油は、インキ物性を調整するのに有用であり、所望の動的表面張力値への調整においても効果的に作用する。
【0019】
前記界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられ、これらの活性剤の中から適宜選択し、所望の動的表面張力値となるような添加量でインキ中に配合される。
【0020】
尚、リン酸エステル系界面活性剤は、金属類に対して吸着力があるため、ボールやチップ本体に対して吸着することで高い潤滑性を示す。よって、ボールペン形態の筆記具においてはより有用である。
前記リン酸エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、リン酸トリエステル、或いはその誘導体等が例示でき、これらのリン酸エステル系界面活性剤は、単独又は二種以上混合して使用される。その中でもインキ経時安定性を考慮すれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、リン酸ジエステルが最も好適である。
【0021】
その他、必要に応じて、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、トリルトリアゾール、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤を使用してもよい。
更に、ボールペン形態の筆記具に適用する際には潤滑剤を添加することができ、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β−アラニン型界面活性剤、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
【0022】
更に、必要に応じて剪断減粘性付与剤を添加し、インキに適当な粘性を与えて実用に供することができる。用いられる剪断減粘性付与剤は従来公知のものから適宜選択することができ、その具体例としては、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン等の多糖類、ポリアクリル酸、架橋型アクリル酸、ポリビニルアセトアミド、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、会合性ウレタンエマルジョン等が挙げられ、単独或いは混合して用いられる。
【0023】
前記水性インキ組成物は、各種チップを筆記先端部に装着し、軸筒内部(インキ貯蔵部)に直接インキを収容し、合成樹脂製の櫛溝状インキ流量調節部材(ペン芯)を介在させる構造を有するマーキングペン、ボールペン、筆ペン、万年筆等の汎用の直液式(ペン芯式)筆記具に直接充填される他、筆記具本体に着脱可能なインキカートリッジのインキ貯蔵部に充填される。
【0024】
前記筆記具を構成するチップのうち、マーキングペンチップとしては、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、毛筆等が適用でき、ボールペンチップとしては、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等が適用できる。尚、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等が適用でき、直径0.15mm〜2.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
また、万年筆形態のチップ(ペン体)としては、ステンレス板、金合金板等の金属板を先細テーパー状に裁断し、屈曲又は湾曲したものや、ペン先形状に樹脂成形したもの等が適用できる。尚、前記ペン体には中心にスリットを設けたり、先端に玉部を設けることもできる。
特に、ボールペンチップは、チップ自体の毛細管力が乏しく、筆記先端へのインキ誘導力が低いため、インキの動的表面張力が高いと吐出安定性が低下する傾向にある。そのため、本発明のインキはペン先へのインキ供給性能に優れるため、ペン先の種類によらず高い吐出安定性を発現できる点で有用である。
【0025】
前記ペン芯の材質としては、多数の円盤体を櫛溝状とした構造に射出成形できる合成樹脂であれば汎用のポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等いずれを用いることもできるが、特に成形性が高く、ペン芯性能が得られやすい点からアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が好適である。
【0026】
更に、前記ペン芯後方に配設され、水性インキを収容するインキ貯蔵部は、筆記具本体に着脱可能な構造としてインキカートリッジ形態とすることもできる。この場合、先に収容するインキを使い切った後に新たなインキカートリッジと取り替えて使用されるため、新たにインキ貯蔵部内のインキをペン先に流動させる必要が生じる。そのため、本願構成のインキの適用がより有用なものとなる。
前記インキカートリッジとしては、筆記具本体に接続することで筆記具を構成する軸筒を兼ねたものや、筆記具本体に接続した後に軸筒(後軸)を被覆して保護するものが適用できる。尚、後者においては、インキカートリッジ単体での適用の他、使用前の筆記具において、筆記具本体とインキカートリッジが接続されているものや、ユーザーが筆記具使用時に軸筒内のインキカートリッジを接続して使用を開始するように非接続状態で軸筒内に収容したもののいずれであってよい。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の表に実施例及び比較例の直液式筆記具用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。尚、動的表面張力は、協和界面科学(株)製の自動動的表面張力計BP−D5を用いてライフタイムを20〜5000msの範囲で連続的に変化させながら測定した(尚、t
1−t
2間の動的表面張力差Δは絶対値である)。測定条件としては、20℃で80mLのサンプルを用いて、プローブ(キャピラリ)の先端がサンプル液面から13mm浸漬した位置での自動測定である。
また、表面張力(静的表面張力)は、協和界面科学(株)製の表面張力計DY−300を用いて20℃で測定した。
【0028】
【表1】
【0029】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)オリエント化学工業(株)製、商品名:ウォーターブラック191
(2)山陽色素(株)製、商品名:サンダイスーパーブラックC:顔料分30%
(3)オリエント化学工業(株)製、商品名:ウォーターイエロー6C
(4)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:ブリリアントブルーFCF−L
(5)オリエント化学工業(株)製、商品名:ウォーターブルー105S
(6)ユシロ化学(株)製、商品名:FGS690
(7)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(8)川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールE100
(9)AGCセイミケミカル(株)製、商品名:サーフロンS−111N
(10)アーチケミカルズジャパン社製、商品名:プロキセルXL−2
【0030】
インキの調製
水に各成分を添加し、室温又は必要に応じて50℃〜60℃の範囲に加温して混合攪拌した後、加温したものは放冷することで各インキを調製した。
【0031】
筆記具Aの作製
前記各インキ組成物をボールペン形態のペン先を有するペン芯式筆記具(パイロットコーポレーション社製、Hi−TecpointV5)外装のインキ貯蔵部に2.1g充填し、キャップを嵌合することで試料用筆記具Aを作製した。尚、前記筆記具のペン芯はABS樹脂材料を射出成形することで形成した。
【0032】
インキカートリッジの作製
ポリエチレン樹脂からなる有底筒状の成形体内部をインキ貯蔵部とし、前記各インキ組成物0.9gを充填した後、開口部内側に栓体を圧入嵌合させることでインキカートリッジを得た。
【0033】
筆記具Bの作製
前記筆記具Aで用いたボールペン形態のペン先を有するペン芯を使用し、インキ貯蔵部が着脱可能となる接続部(槍体)を設けた前軸に対し、インキカートリッジを収容可能な後軸を螺合することで筆記具本体とした(キャップが嵌合されている)。
前記筆記具本体に対して、先に作製したインキカートリッジを接続することで試料用筆記具Bを作製した。
【0034】
前記試料筆記具を用いて以下の試験を行った。
手書筆記試験
筆記可能であることを確認した各試料筆記具Aを、室温にてオフィスデポ製レポート用紙に手書きで1行に12個の螺旋状の丸を連続筆記した。その際の筆跡の滲みの有無を目視により確認した。
【0035】
機械筆記試験
筆記可能であることを確認した各試料筆記具Aを、室温にて旧JIS P3201筆記用紙Aに走行試験機(精機工業研究所製)で螺旋状の丸を1200m連続筆記した際の筆跡の状態を確認した。
【0036】
カートリッジ交換試験
前記試料筆記具Bを先に用いた走行試験機により書き切った後、同じ構成の新しいインキカートリッジに交換し、キャップを外したペン先下向き状態で1時間放置した。その後、前記走行試験機で500m連続筆記した際の筆跡の状態を確認した。
前記各試験の結果を以下の表に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
尚、試験結果の評価は以下の通りである。
手書筆記試験
○:良好な筆跡を示した。
×:筆跡に滲みが見られた。
機械筆記試験
○:良好な筆跡を示した。
△:筆跡に部分的に複数のカスレや線飛びが見られた。
×:筆跡に断続的に連続したカスレや線飛びが生じた。
カートリッジ交換試験
○:ペン先へのインキ供給が安定しており、カスレや線飛びは見られず良好な筆跡が得られた。
×:ペン先へのインキ供給が変則的で筆跡にカスレや線飛びが見られた。