特許第5936882号(P5936882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936882回路接続材料、及びそれを用いた実装体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936882
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】回路接続材料、及びそれを用いた実装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20160609BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20160609BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20160609BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20160609BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C09J201/00
   H01L21/60 311Q
   C09J9/02
   C09J11/04
   C09J11/06
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-46982(P2012-46982)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-181131(P2013-181131A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】浜地 浩史
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−231326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物に圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子と導電性粒子とがそれぞれ独立して分散され
前記弾性体粒子の平均粒子径が、前記導電性粒子の平均粒子径の0.2倍以上5.0倍以下であり、
前記弾性体粒子の含有量が、前記接着剤組成物に対して1wt%以上30wt%以下であり、
前記圧縮回復率が、フィッシャースコープH100Cを用いて、室温の試料台上で前記弾性体粒子の中心方向に対し圧縮速度0.33mN/秒で荷重を50%の変位まで負荷し、5秒間保持した後、0.33mN/秒で除荷し、変位負荷前の弾性体粒子の直径を2amm、50%変位負荷時の弾性体粒子の厚さをamm、除荷後30分間放置したときの厚さをbmmとし、(b−a)/a×100(%)として算出される回路接続材料。
【請求項2】
前記接着剤組成物は、膜形成樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有し、
前記弾性体粒子は、ポリウレタン粒子である請求項に記載の回路接続材料。
【請求項3】
第1の電子部品の電極上に、膜形成樹脂と、重合性樹脂と、重合開始剤とを含有する接
着剤組成物に圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子と導電性粒子とがそれぞれ独立して分散された異方性導電フィルム、第2の電子部品を順に配置する工程と、
前記第2の電子部品の上面から圧着ヘッドにて押圧する工程と
を有し、
前記弾性体粒子の平均粒子径が、前記導電性粒子の平均粒子径の0.2倍以上5.0倍以下であり、
前記弾性体粒子の含有量が、前記接着剤組成物に対して1wt%以上30wt%以下であり、
前記圧縮回復率が、フィッシャースコープH100Cを用いて、室温の試料台上で前記弾性体粒子の中心方向に対し圧縮速度0.33mN/秒で荷重を50%の変位まで負荷し、5秒間保持した後、0.33mN/秒で除荷し、変位負荷前の該弾性体粒子の直径を2amm、50%変位負荷時の該弾性体粒子の厚さをamm、除荷後30分間放置したときの厚さをbmmとし、(b−a)/a×100(%)として算出される実装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が分散された回路接続材料、及びそれを用いた実装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粒子が分散された異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)は、例えば、フランジを有するリールに巻回されたリール体として使用される。このリール体においては、例えば温度条件などによって異方性導電フィルムが伸縮することにより、巻装体の巻き絞りが発生する。その結果、異方性導電フィルムの樹脂層(接着剤成分)が、樹脂層の長さ方向に沿った幅方向の一端よりも外側に流動して、剥離基材の側面からはみ出してしまうことがある。樹脂層が剥離基材の側面からはみ出してしまうと、異方性導電フィルムにおける樹脂層がリールのフランジの側面に付着してしまい、異方性導電フィルムを正常に引き出せなくなる不具合(以下、「ブロッキング」と呼ぶ)が発生する。
【0003】
特許文献1、2には、異方性導電フィルムの耐ブロッキング性を向上させるために、微粒子を充填し、接着剤組成物の流動を適度に抑制することが記載されている。しかし、接着剤組成物に微粒子を充填した場合、圧着時に導電性粒子に適正な圧力が掛からず、接続信頼性が低下することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−183049号公報
【特許文献2】特開2003−249287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、優れた耐ブロッキング性を有するとともに、優れた接続信頼性を有する回路接続材料、及びそれを用いた実装体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明者は、鋭意検討を行った結果、高い圧縮回復率を有する弾性体粒子を配合することにより、耐ブロッキング性及び接続信頼性が改善されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明に係る回路接続材料は、接着剤組成物に圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子と導電性粒子とがそれぞれ独立して分散され、前記弾性体粒子の平均粒子径が、前記導電性粒子の平均粒子径の0.2倍以上5.0倍以下であり、前記弾性体粒子の含有量が、前記接着剤組成物に対して1wt%以上30wt%以下であり、前記圧縮回復率が、フィッシャースコープH100Cを用いて、室温の試料台上で前記弾性体粒子の中心方向に対し圧縮速度0.33mN/秒で荷重を50%の変位まで負荷し、5秒間保持した後、0.33mN/秒で除荷し、変位負荷前の弾性体粒子の直径を2amm、50%変位負荷時の弾性体粒子の厚さをamm、除荷後30分間放置したときの厚さをbmmとし、(b−a)/a×100(%)として算出されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る実装体の製造方法は、第1の電子部品の電極上に、膜形成樹脂と、重合性樹脂と、重合開始剤とを含有する接着剤組成物に圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子と導電性粒子とがそれぞれ独立して分散された異方性導電フィルム、第2の電子部品を順に配置する工程と、前記第2の電子部品の上面から圧着ヘッドにて押圧する工程とを有し、前記弾性体粒子の平均粒子径が、前記導電性粒子の平均粒子径の0.2倍以上5.0倍以下であり、前記弾性体粒子の含有量が、前記接着剤組成物に対して1wt%以上30wt%以下であり、前記圧縮回復率が、フィッシャースコープH100Cを用いて、室温の試料台上で前記弾性体粒子の中心方向に対し圧縮速度0.33mN/秒で荷重を50%の変位まで負荷し、5秒間保持し、0.33mN/秒で除荷した後、変位負荷前の該弾性体粒子の直径を2amm、50%変位負荷時の該弾性体粒子の厚さをamm、除荷後30分間放置したときの厚さをbmmとし、(b−a)/a×100(%)として算出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、高い圧縮回復率を有する弾性体粒子が配合されているため、巻き絞まりによる巻圧を緩和し、優れた耐ブロッキング性を得ることができる。また、圧着時に導電性粒子に適正な圧力を掛けることができるため、高い接続信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】リールに巻回された回路接続材料を模式的に示す断面図である。
図2】圧着時における弾性体粒子の平均粒子径の影響を模式的に示す断面図である。
図3】本実施の形態における圧着時の端子部分を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.回路接続材料及びその製造方法
2.実装体及びその製造方法
3.実施例
【0012】
<1.回路接続材料及びその製造方法>
本発明の具体例として示す回路接続材料は、接着剤組成物に高い圧縮回復率を有する弾性体粒子と導電性粒子とを分散させて構成される。この回路接続材料は、ペースト又はフィルム形状であり、目的に応じて適宜選択することができる。
【0013】
弾性体粒子は、圧縮回復率が50%以上である。ここで、圧縮回復率は、弾性体粒子の直径を2amm、50%変位負荷時の弾性体粒子の厚さをamm、除荷後の厚さをbmmとしたとき、(b−a)/a×100(%)として算出される。
【0014】
すなわち、弾性体粒子は、50%以上の変位が可能な柔軟性を有する。これにより、圧着時に導電性粒子に適正な圧力を掛けることができるため、高い接続信頼性を得ることができる。また、弾性体粒子は、圧縮回復率が50%以上であることにより、リールの巻き絞まりによる巻圧を緩和し、接着剤組成物がリールのフランジの側面に付着してしまい、回路接続材料を正常に引き出せなくなるブロッキングを防ぐことができる。
【0015】
図1は、リールに巻回された回路接続材料を模式的に示す断面図である。図1に示すように、リールに巻回された回路接続材料は、剥離基材20に挟持されている。本実施の形態では、接着剤組成物10中に弾性体粒子11が存在するため、リールの巻き絞まりによる巻圧に対し、弾性体粒子11の回復しようとする力が作用する。これにより、リールの巻き絞まりによる巻圧を緩和することができる。
【0016】
弾性体粒子としては、上記圧縮回復率の条件を満たすものであれば特に限定されず、例えば、ポリウレタン、ポリスチレンなどの樹脂粒子が挙げられる。これらの中でもポリウレタン粒子が好ましく用いられる。
【0017】
弾性体粒子の平均粒子径は、導電性粒子の平均粒子径の0.2倍以上5.0倍以下であることが好ましい。これにより、優れた耐ブロッキング性及び接続信頼性が得られる。弾性体粒子の平均粒子径が、導電性粒子の平均粒子径の0.2倍より小さくなると、リールの巻き絞まりによる巻圧を緩和することが困難となり、耐ブロッキング性が低下する。一方、弾性体粒子の平均粒子径が、導電性粒子の平均粒子径の5.0倍より大きくなると、圧着時に導電性粒子に適正な圧力を掛けることが困難となり、接続信頼性が低下する。なお、平均粒子径は、例えば示差走査電子顕微鏡で観察した所定数の弾性体粒子又は導電性粒子の粒子径の平均値とすることができる。
【0018】
図2及び図3は、圧着時における弾性体粒子の平均粒子径の影響を模式的に示す断面図である。この図2及び図3は、基板30上の配線とチップ40のバンプ41とを加熱加圧により接続させる様子を示す。図2に示すように、導電性粒子12に対して弾性体粒子11の平均粒子径が十分に大きい場合、弾性体粒子11がバンプ41に押し潰される際の回復しようとする力が大きいため、導電性粒子12を十分に押し潰すことができず、接続抵抗値が上昇してしまう。一方、本実施の形態のように弾性体粒子の平均粒子径を導電性粒子の平均粒子径の0.2倍以上5.0倍以下とすることにより、弾性体粒子11がバンプ41に押し潰される際の回復しようとする力が小さくなり、導電性粒子12を十分に押し潰すことができる。
【0019】
弾性体粒子の含有量は、接着剤組成物に対して1wt%以上30wt%以下であることが好ましい。これにより、優れた耐ブロッキング性及び接続信頼性が得られる。弾性体粒子の含有量が、接着剤組成物に対して1wt%未満であると、リールの巻き絞まりによる巻圧を緩和することが困難となり、耐ブロッキング性が低下する。一方、弾性体粒子の含有量が、接着剤組成物に対して30wt%を超えると、圧着時における接着剤組成物の流動性が低下し、端子間から導電性粒子を排除することが困難となり、接続信頼性が低下する。
【0020】
また、本実施の形態における接着剤組成物は、膜形成樹脂と、重合性樹脂と、重合開始剤とを含有する。
【0021】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂などの種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも膜形成状態、接続信頼性などの観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。膜形成樹脂の含有量は、接着剤組成物100質量部に対して、通常30〜80質量部、好ましくは40〜70質量部である。
【0022】
重合性樹脂は、ラジカル重合性樹脂、カチオン重合性樹脂などであり、用途に応じて適宜選択することができる。
【0023】
ラジカル重合性樹脂は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシアクリレートが好ましく用いられる。ラジカル重合性樹脂の含有量は、接着剤組成物100質量部に対して、通常10〜60質量部、好ましくは20〜50質量部である。
【0024】
ラジカル重合性樹脂を使用する場合のラジカル重合開始剤は、公知のものを使用することができ、中でも有機過酸化物を好ましく使用することができる。有機過酸化物としては、パーオキシケタール類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、シリルパーオキサイド類などが挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、本実施の形態では、パーオキシケタール類が好ましく用いられる。ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル系接着剤組成物100質量部に対して、通常0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部である。
【0025】
カチオン重合性樹脂は、1官能性エポキシ化合物、含複素環エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂などを用いることができる。特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を単独又は混合して用いることが好ましい。
【0026】
カチオン重合性樹脂を使用する場合のカチオン硬化剤は、カチオン種がエポキシ樹脂末端のエポキシ基を開環させ、エポキシ樹脂同士を自己架橋させる。このようなカチオン硬化剤としては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレノニウム塩等のオニウム塩を挙げることができる。特に、芳香族スルホニウム塩は、低温での反応性に優れ、ポットライフが長いため、カチオン硬化剤として好適である。
【0027】
また、接着剤組成物は、無機基材への密着性を向上させるために、シランカップリング剤などをさらに含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、メタクリロキシ系、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などが挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、本実施の形態では、メタクリロキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0028】
また、接着剤組成物に分散させる導電性粒子は、例えば、ニッケル、金、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したものなどを用いることができる。また、導電性粒子の平均粒径は、接続信頼性の観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。また、接着剤組成物中の導電性粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは1000〜50000個/mm、より好ましくは5000〜30000個/mmである。
【0029】
次に、上述した回路接続材料からなる異方性導電フィルムの製造方法について説明する。本実施の形態における異方性導電フィルムの製造方法は、膜形成樹脂と、重合性樹脂と、重合開始剤とを含有する接着剤組成物に圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子と導電性粒子とを分散させるものである。これらを溶解させる有機溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶剤、その他各種有機溶剤を用いることができる。
【0030】
具体的には、先ず、上述した回路接続材料を調整後、バーコーター、塗布装置などを用いて剥離基材上に塗布する。剥離基材は、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布した積層構造からなり、異方性導電材料中の樹脂の乾燥を防ぐとともに、樹脂の形状を維持する。
【0031】
次に、剥離基材上に塗布された異方性導電材料を熱オーブン、加熱乾燥装置などにより乾燥させる。これにより、厚さ5〜50μm程度の異方性導電フィルムを製造することができる。
【0032】
また、異方性導電フィルムのリール体を製造する場合、例えば、異方性導電フィルムを切断し、この異方性導電フィルムを剥離基材の側面がフランジの内面に接するようにしながら巻取部に巻取ることによりリール体を得ることができる。
【0033】
<2.実装体の実装方法>
次に、上述した回路接続材料を用いた電子部品の実装方法について説明する。本実施の形態における電子部品の実装方法は、第1の電子部品の電極上に、膜形成樹脂と、重合性樹脂と、重合開始剤とを含有する接着剤組成物に圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子と導電性粒子とが分散された異方性導電フィルム、第2の電子部品を順に配置する工程と、第2の電子部品の上面から圧着ヘッドにて押圧する工程とを有する。これにより、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極とを導電性粒子を介して接続するとともに、異方性導電フィルムを硬化させることができる。
【0034】
ここで、第1の電子部品としては、ガラス基板にIZO(Indium Zinc Oxide)膜がコーティングされたIZOコーティングガラス、ガラス基板にSiNx(シリコン窒化)膜がコーティングされたSiNxコーティングガラスなどが挙げられる。また、第2の電子部品としては、COF(Chip On Film)、IC(Integrated Circuit)などが挙げられる。
【0035】
本実施の形態では、接着剤組成物に圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子が含まれているため、圧着時に導電性粒子に適正な圧力を掛けることができ、高い接続信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0036】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。ここでは、弾性体粒子として圧縮回復率が異なるポリウレタン粒子を作製した。そして、ポリウレタン粒子を含有する異方性導電フィルムのリールサンプルを作製した。また、異方性導電フィルムを用いて実装体を作製した。評価項目としてリールサンプルのブロッキング試験、及び実装体の接続抵抗の測定を行った。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
圧縮回復率の測定、ブロッキング試験の評価、及び接続抵抗の測定は、次のように行った。
【0038】
[圧縮回復率の測定]
測定機器としてフィッシャースコープH100C(フィッシャーインスツルメント製)を用いた。室温の試料台上でポリウレタン粒子の中心方向に対し圧縮速度0.33mN/秒で荷重を50%の変位まで負荷し、5秒間保持した後、0.33mN/秒で除荷した。そして、変位負荷前のポリウレタン粒子の直径を2amm、50%変位負荷時のポリウレタン粒子の厚さをamm、除荷後30分間放置したときの厚さをbmmとし、(b−a)/a×100(%)として算出した。
【0039】
[ブロッキング試験の評価]
リールサンプル先端に75gの重りをぶら下げ、35℃のオーブンに3時間放置し、その後異方性導電フィルムを引き出し、最後まで引き出せるか否かの試験を行った。5巻試験を行い、5巻全てが良好に最後まで引き出せた場合を○とし、1巻でも引き出し不良が発生した場合を×とした。
【0040】
[接続抵抗の測定]
実装体について、デジタルマルチメータ(デジタルマルチメータ7555、横河電機社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの初期の接続抵抗を測定した。
【0041】
<3.1 圧縮回復率について>
[実施例1]
(ポリウレタン粒子の作製)
先ず、ポリウレタン粒子を作製した。イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート30gを溶解させて分散媒とした。これに、3つの水酸基を有する分子量700のカプロラクタムトリオールを70g、及び3つのイソシアネート基を有する無黄変タイプのポリイソシアネートを100g添加し、600rpmで30分間撹拌して懸濁液を製造した。この懸濁液を3Lのフラスコに入れて70℃に昇温した後、250rpmで6時間反応させて冷却した後、遠心分離して固液分離した。これを水で十分に洗浄して乾燥し、平均粒子径5μmのポリウレタン粒子(PU−1)を得た。このポリウレタン粒子(PU−1)の圧縮回復率を測定したところ、90%であった。なお、平均粒子径は、示差走査電子顕微鏡で観察した10個のポリウレタン粒子の粒子径の平均値とした。
【0042】
(異方性導電フィルムの作製)
次に、ポリウレタン粒子を含有する異方性導電フィルムのリールサンプルを作製した。フェノキシ樹脂(品名:YP−50、東都化成社製)を固形分換算で60質量部、ラジカル重合性樹脂(品名:EB−600、ダイセル・サイテック社製)を15質量部、及び反応開始剤(品名:パーヘキサC、日本油脂社製)を2質量部として構成された接着剤組成物中に平均粒子径5μmの導電性粒子(品名:AUL704、積水化学工業社製)を平均粒子密度が10000個/mmになるように分散させた。また、平均粒子径5μmのポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して10wt%充填させた。この異方性導電接続材料をPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、オーブンで乾燥させ、厚さ20μmの異方性導電フィルムを作製した。
【0043】
(リールサンプルの作製)
異方性導電フィルムを1.5mm幅にスリットし、プラスチックリールへ100Mに巻き取ったリールサンプルを作製した。
【0044】
(実装体の作製)
評価用ガラス基板(IZO(Indium Zinc Oxide)250nmコーティングガラス)に1.5mm幅にスリットされた異方性導電フィルムを、150μm厚の緩衝材(ポリテトラフルオロエチレン)を用い、1.5mm幅のツールの仮圧着機にて70℃−1MPa−1secの条件で仮圧着した。次いで、評価用COF(50μmP、Cu8μmt−Snメッキ、38μmt)を同圧着機にて80℃−0.5MPa−0.5secの条件で仮固定し、最後に190℃−2MPa−10secの条件にて1.5mm幅のツールを用いた本圧着機で圧着し、実装体を作製した。
【0045】
(評価結果)
表1に、実施例1の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.02Ωであった。
【0046】
[実施例2]
2つのイソシアネート基を有する無黄変タイプのイソホロンジイソシアネートを100g添加した以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径5μmのポリウレタン粒子(PU−2)を得た。このポリウレタン粒子(PU−2)の圧縮回復率を測定したところ、50%であった。
【0047】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−2)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0048】
(評価結果)
表1に、実施例2の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.12Ωであった。
【0049】
[比較例1]
2つの水酸基を有する分子量2000のカプロラクタムジオールを70g添加した以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径5μmのポリウレタン粒子(PU−3)を得た。このポリウレタン粒子(PU−3)の圧縮回復率を測定したところ、40%であった。
【0050】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−3)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0051】
(評価結果)
表1に、比較例1の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、×であった。また、接続抵抗値は、0.99Ωであった。
【0052】
[比較例2]
ポリウレタン粒子の代わりにSiフィラーを使用した。このSiフィラー(Si−1)の圧縮回復率は、フィラーが割れてしまうため測定できなかった。
【0053】
また、実施例1と同様に、Siフィラー(Si−1)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0054】
(評価結果)
表1に、比較例2の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、4.05Ωであった。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、圧縮回復率が50%未満の弾性体粒子を用いた比較例1は、優れた耐ブロッキング性を得ることができなかった。また、弾性体粒子を用いない比較例2は、接続抵抗値が上昇した。一方、実施例1、2のように圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子を用いることにより、耐ブロッキング性を向上させることができた。また、導電性粒子に適正な圧力が掛かるため、実装体の接続抵抗値を低下させることができた。
【0057】
<3.2 平均粒子径について>
[実施例3]
イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート70gを溶解させて分散媒とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径1μmのポリウレタン粒子(PU−4)を得た。このポリウレタン粒子(PU−4)の圧縮回復率を測定したところ、88%であった。
【0058】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−4)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0059】
(評価結果)
表2に、実施例3の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.04Ωであった。
【0060】
[実施例4]
イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート5gを溶解させて分散媒とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径20μmのポリウレタン粒子(PU−5)を得た。このポリウレタン粒子(PU−5)の圧縮回復率を測定したところ、84%であった。
【0061】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−5)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0062】
(評価結果)
表2に、実施例4の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.06Ωであった。
【0063】
[比較例3]
イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート80gを溶解させて分散媒とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.5μmのポリウレタン粒子(PU−6)を得た。このポリウレタン粒子(PU−6)の圧縮回復率を測定したところ、86%であった。
【0064】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−6)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0065】
(評価結果)
表2に、比較例3の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、×であった。また、接続抵抗値は、1.00Ωであった。
【0066】
[比較例4]
イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート2gを溶解させて分散媒とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径27μmのポリウレタン粒子(PU−7)を得た。このポリウレタン粒子(PU−7)の圧縮回復率を測定したところ、88%であった。
【0067】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−7)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0068】
(評価結果)
表2に、比較例3の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、2.04Ωであった。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示すように、弾性体粒子の平均粒子径が1μm未満、すなわち導電性粒子の平均粒子径の0.2倍より小さい場合(比較例3)、リールの巻き絞まりによる巻圧を緩和することが困難となり、良好な耐ブロッキング性が得られなかった。また、弾性体粒子の平均粒子径が25μmより大きい、すなわち導電性粒子の平均粒子径の5.0倍より大きい場合(比較例4)、圧着時に導電性粒子に適正な圧力を掛けることが困難となり、接続抵抗値が上昇した。一方、実施例3、4のように弾性体粒子の平均粒子径が1μm以上25μm以下、すなわち、弾性体粒子の平均粒子径が導電性粒子の平均粒子径の0.2倍以上5.0倍以下である場合、優れた耐ブロッキング性及び接続信頼性が得られることが分かった。
【0071】
<3.3 含有量について>
[実施例5]
ポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して1wt%充填させて異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0072】
(評価結果)
表3に、実施例5の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.02Ωであった。
【0073】
[実施例6]
ポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して30wt%充填させて異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0074】
(評価結果)
表3に、実施例6の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.03Ωであった。
【0075】
[比較例5]
ポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して0.5wt%充填させて異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0076】
(評価結果)
表3に、比較例5の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、×であった。また、接続抵抗値は、0.98Ωであった。
【0077】
[比較例6]
ポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して35wt%充填させて異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0078】
(評価結果)
表3に、比較例6の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、3.05Ωであった。
【0079】
【表3】
【0080】
表3に示すように、弾性体粒子の含有量が、接着剤組成物に対して1wt%未満である場合(比較例5)、リールの巻き絞まりによる巻圧を緩和することが困難となり、良好な耐ブロッキング性が得られなかった。また、弾性体粒子の含有量が、接着剤組成物に対して30wt%を超えた場合(比較例6)、圧着時にける接着剤組成物の流動性が低下し、端子間から導電性粒子を排除することが困難となり、接続抵抗値が上昇した。一方、実施例5、6のように弾性体粒子の含有量が、接着剤組成物に対して1wt%以上30wt%以下である場合、優れた耐ブロッキング性及び接続信頼性が得られることが分かった。
【符号の説明】
【0081】
10 接着剤組成物、11 弾性体粒子、12 導電性粒子、20 剥離基材、30 基板、40 チップ、41 バンプ
図1
図2
図3