【実施例】
【0036】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。ここでは、弾性体粒子として圧縮回復率が異なるポリウレタン粒子を作製した。そして、ポリウレタン粒子を含有する異方性導電フィルムのリールサンプルを作製した。また、異方性導電フィルムを用いて実装体を作製した。評価項目としてリールサンプルのブロッキング試験、及び実装体の接続抵抗の測定を行った。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
圧縮回復率の測定、ブロッキング試験の評価、及び接続抵抗の測定は、次のように行った。
【0038】
[圧縮回復率の測定]
測定機器としてフィッシャースコープH100C(フィッシャーインスツルメント製)を用いた。室温の試料台上でポリウレタン粒子の中心方向に対し圧縮速度0.33mN/秒で荷重を50%の変位まで負荷し、5秒間保持した後、0.33mN/秒で除荷した。そして、変位負荷前のポリウレタン粒子の直径を2amm、50%変位負荷時のポリウレタン粒子の厚さをamm、除荷後30分間放置したときの厚さをbmmとし、(b−a)/a×100(%)として算出した。
【0039】
[ブロッキング試験の評価]
リールサンプル先端に75gの重りをぶら下げ、35℃のオーブンに3時間放置し、その後異方性導電フィルムを引き出し、最後まで引き出せるか否かの試験を行った。5巻試験を行い、5巻全てが良好に最後まで引き出せた場合を○とし、1巻でも引き出し不良が発生した場合を×とした。
【0040】
[接続抵抗の測定]
実装体について、デジタルマルチメータ(デジタルマルチメータ7555、横河電機社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの初期の接続抵抗を測定した。
【0041】
<3.1 圧縮回復率について>
[実施例1]
(ポリウレタン粒子の作製)
先ず、ポリウレタン粒子を作製した。イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート30gを溶解させて分散媒とした。これに、3つの水酸基を有する分子量700のカプロラクタムトリオールを70g、及び3つのイソシアネート基を有する無黄変タイプのポリイソシアネートを100g添加し、600rpmで30分間撹拌して懸濁液を製造した。この懸濁液を3Lのフラスコに入れて70℃に昇温した後、250rpmで6時間反応させて冷却した後、遠心分離して固液分離した。これを水で十分に洗浄して乾燥し、平均粒子径5μmのポリウレタン粒子(PU−1)を得た。このポリウレタン粒子(PU−1)の圧縮回復率を測定したところ、90%であった。なお、平均粒子径は、示差走査電子顕微鏡で観察した10個のポリウレタン粒子の粒子径の平均値とした。
【0042】
(異方性導電フィルムの作製)
次に、ポリウレタン粒子を含有する異方性導電フィルムのリールサンプルを作製した。フェノキシ樹脂(品名:YP−50、東都化成社製)を固形分換算で60質量部、ラジカル重合性樹脂(品名:EB−600、ダイセル・サイテック社製)を15質量部、及び反応開始剤(品名:パーヘキサC、日本油脂社製)を2質量部として構成された接着剤組成物中に平均粒子径5μmの導電性粒子(品名:AUL704、積水化学工業社製)を平均粒子密度が10000個/mm
2になるように分散させた。また、平均粒子径5μmのポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して10wt%充填させた。この異方性導電接続材料をPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、オーブンで乾燥させ、厚さ20μmの異方性導電フィルムを作製した。
【0043】
(リールサンプルの作製)
異方性導電フィルムを1.5mm幅にスリットし、プラスチックリールへ100Mに巻き取ったリールサンプルを作製した。
【0044】
(実装体の作製)
評価用ガラス基板(IZO(Indium Zinc Oxide)250nmコーティングガラス)に1.5mm幅にスリットされた異方性導電フィルムを、150μm厚の緩衝材(ポリテトラフルオロエチレン)を用い、1.5mm幅のツールの仮圧着機にて70℃−1MPa−1secの条件で仮圧着した。次いで、評価用COF(50μmP、Cu8μmt−Snメッキ、38μmt)を同圧着機にて80℃−0.5MPa−0.5secの条件で仮固定し、最後に190℃−2MPa−10secの条件にて1.5mm幅のツールを用いた本圧着機で圧着し、実装体を作製した。
【0045】
(評価結果)
表1に、実施例1の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.02Ωであった。
【0046】
[実施例2]
2つのイソシアネート基を有する無黄変タイプのイソホロンジイソシアネートを100g添加した以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径5μmのポリウレタン粒子(PU−2)を得た。このポリウレタン粒子(PU−2)の圧縮回復率を測定したところ、50%であった。
【0047】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−2)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0048】
(評価結果)
表1に、実施例2の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.12Ωであった。
【0049】
[比較例1]
2つの水酸基を有する分子量2000のカプロラクタムジオールを70g添加した以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径5μmのポリウレタン粒子(PU−3)を得た。このポリウレタン粒子(PU−3)の圧縮回復率を測定したところ、40%であった。
【0050】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−3)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0051】
(評価結果)
表1に、比較例1の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、×であった。また、接続抵抗値は、0.99Ωであった。
【0052】
[比較例2]
ポリウレタン粒子の代わりにSiフィラーを使用した。このSiフィラー(Si−1)の圧縮回復率は、フィラーが割れてしまうため測定できなかった。
【0053】
また、実施例1と同様に、Siフィラー(Si−1)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0054】
(評価結果)
表1に、比較例2の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、4.05Ωであった。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、圧縮回復率が50%未満の弾性体粒子を用いた比較例1は、優れた耐ブロッキング性を得ることができなかった。また、弾性体粒子を用いない比較例2は、接続抵抗値が上昇した。一方、実施例1、2のように圧縮回復率が50%以上である弾性体粒子を用いることにより、耐ブロッキング性を向上させることができた。また、導電性粒子に適正な圧力が掛かるため、実装体の接続抵抗値を低下させることができた。
【0057】
<3.2 平均粒子径について>
[実施例3]
イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート70gを溶解させて分散媒とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径1μmのポリウレタン粒子(PU−4)を得た。このポリウレタン粒子(PU−4)の圧縮回復率を測定したところ、88%であった。
【0058】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−4)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0059】
(評価結果)
表2に、実施例3の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.04Ωであった。
【0060】
[実施例4]
イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート5gを溶解させて分散媒とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径20μmのポリウレタン粒子(PU−5)を得た。このポリウレタン粒子(PU−5)の圧縮回復率を測定したところ、84%であった。
【0061】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−5)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0062】
(評価結果)
表2に、実施例4の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.06Ωであった。
【0063】
[比較例3]
イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート80gを溶解させて分散媒とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.5μmのポリウレタン粒子(PU−6)を得た。このポリウレタン粒子(PU−6)の圧縮回復率を測定したところ、86%であった。
【0064】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−6)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0065】
(評価結果)
表2に、比較例3の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、×であった。また、接続抵抗値は、1.00Ωであった。
【0066】
[比較例4]
イオン交換水1000gに懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェート2gを溶解させて分散媒とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径27μmのポリウレタン粒子(PU−7)を得た。このポリウレタン粒子(PU−7)の圧縮回復率を測定したところ、88%であった。
【0067】
また、実施例1と同様に、ポリウレタン粒子(PU−7)を含有する異方性導電フィルムを作製し、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0068】
(評価結果)
表2に、比較例3の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、2.04Ωであった。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示すように、弾性体粒子の平均粒子径が1μm未満、すなわち導電性粒子の平均粒子径の0.2倍より小さい場合(比較例3)、リールの巻き絞まりによる巻圧を緩和することが困難となり、良好な耐ブロッキング性が得られなかった。また、弾性体粒子の平均粒子径が25μmより大きい、すなわち導電性粒子の平均粒子径の5.0倍より大きい場合(比較例4)、圧着時に導電性粒子に適正な圧力を掛けることが困難となり、接続抵抗値が上昇した。一方、実施例3、4のように弾性体粒子の平均粒子径が1μm以上25μm以下、すなわち、弾性体粒子の平均粒子径が導電性粒子の平均粒子径の0.2倍以上5.0倍以下である場合、優れた耐ブロッキング性及び接続信頼性が得られることが分かった。
【0071】
<3.3 含有量について>
[実施例5]
ポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して1wt%充填させて異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0072】
(評価結果)
表3に、実施例5の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.02Ωであった。
【0073】
[実施例6]
ポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して30wt%充填させて異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0074】
(評価結果)
表3に、実施例6の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、1.03Ωであった。
【0075】
[比較例5]
ポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して0.5wt%充填させて異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0076】
(評価結果)
表3に、比較例5の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、×であった。また、接続抵抗値は、0.98Ωであった。
【0077】
[比較例6]
ポリウレタン粒子(PU−1)を上記接着剤組成物に対して35wt%充填させて異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に、リールサンプルを作製した。さらに、実施例1と同様に、異方性導電フィルムを用いて評価用ガラス基板と評価用COFとを圧着し、実装体を作製した。
【0078】
(評価結果)
表3に、比較例6の評価結果を示す。リールサンプルのブロッキング試験の結果は、○であった。また、接続抵抗値は、3.05Ωであった。
【0079】
【表3】
【0080】
表3に示すように、弾性体粒子の含有量が、接着剤組成物に対して1wt%未満である場合(比較例5)、リールの巻き絞まりによる巻圧を緩和することが困難となり、良好な耐ブロッキング性が得られなかった。また、弾性体粒子の含有量が、接着剤組成物に対して30wt%を超えた場合(比較例6)、圧着時にける接着剤組成物の流動性が低下し、端子間から導電性粒子を排除することが困難となり、接続抵抗値が上昇した。一方、実施例5、6のように弾性体粒子の含有量が、接着剤組成物に対して1wt%以上30wt%以下である場合、優れた耐ブロッキング性及び接続信頼性が得られることが分かった。