(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源からの光を信号光と参照光とに分割し、被測定物体を経由した前記信号光と前記参照光との干渉光を生成し、前記干渉光の検出結果に基づいて前記被測定物体の画像を形成する光画像計測装置であって、
前記被測定物体を経由した信号光を導く第1の光ファイバと、
前記参照光を導く第2の光ファイバと、
前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの一方又は双方について、当該光ファイバの一部を曲線形状に保持し、この曲線形状を変化させることにより当該光ファイバに導かれる光の偏光状態を変化させる偏波コントローラと
を有し、
前記偏波コントローラが、
当該光ファイバの一部をループ形状に保持し、このループ形状におけるループ数及び/又はループ半径を変化させることにより前記偏光状態を変化させ、
当該光ファイバの一部の両端をそれぞれ保持する両端保持部と、
前記一部が捲回される巻回部と、
前記巻回部を前記一部の巻回方向に回転させる回転機構と
を備える
光画像計測装置。
光ファイバに導かれる光の偏光状態を変化させる偏波コントローラであって、前記光ファイバの一部を曲線形状に保持し、この曲線形状を変化させることにより前記光の偏光状態を変化させ、
前記光ファイバの一部の両端をそれぞれ保持する両端保持部と、
前記両端保持部により保持されている前記両端の間の距離を変化させる機構と、
テーパ状又は階段状に形成された周面を有し、当該光ファイバの一部に対して前記周面を当接させて当該一部の形状を保持する保持部材と、
前記テーパ状における傾斜方向又は前記階段状における段差方向に沿って前記保持部材を移動させる移動機構と
を備える偏波コントローラ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る光画像計測装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。この発明に係る光画像計測装置は、OCTを用いて被測定物体の断層像や3次元画像を形成する。この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0018】
以下の実施形態では、被測定物体は被検眼(眼底)とし、フーリエドメインタイプのOCTを適用して眼底のOCT計測を行う眼底観察装置について説明する。特に、実施形態に係る眼底観察装置は、特許文献5に開示された装置と同様に、スペクトラルドメインOCTの手法を用いて眼底のOCT画像及び眼底像の双方を取得可能である。なお、スペクトラルドメイン以外のタイプ、たとえばスウェプトソースOCTの手法を用いる光画像計測装置に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。また、この実施形態ではOCT装置と眼底カメラとを組み合わせた装置について説明するが、眼底カメラ以外の眼底撮影装置、たとえばSLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡などに、この実施形態に係る構成を有するOCT装置を組み合わせることも可能である。また、この実施形態に係る構成を、単体のOCT装置に組み込むことも可能である。
【0019】
[構成]
図1及び
図2に示すように、眼底観察装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底のOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
【0020】
〔眼底カメラユニット〕
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、又は近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像であってもよい。眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、たとえばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
【0021】
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ(単にCCDと呼ぶことがある)35、38。)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの信号光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット100に導く。
【0022】
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。なお、観察光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いることも可能である。
【0023】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この眼底反射光は、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系のピントが前眼部に合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。
【0024】
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。また、撮影光源としてLEDを用いることも可能である。
【0025】
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用指標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための指標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。
【0026】
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー40にて反射され、ミラー32に反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0027】
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、たとえば従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。また、固視標の表示位置を任意に変更することも可能である。
【0028】
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
【0029】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
【0030】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい(オートアライメント機能)。
【0031】
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0032】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31及びフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0033】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT計測用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、光路長変更部41と、ガルバノスキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。
【0034】
光路長変更部41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT計測用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、たとえばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含んで構成される。
【0035】
ガルバノスキャナ42は、OCT計測用の光路を通過する光(信号光LS)の進行方向を変更する。それにより、眼底Efを信号光LSで走査することができる。ガルバノスキャナ42は、たとえば、信号光LSをx方向に走査するガルバノミラーと、y方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。それにより、信号光LSをxy平面上の任意の方向に走査することができる。
【0036】
〔OCTユニット〕
図2を参照しつつOCTユニット100の構成の一例を説明する。OCTユニット100には、眼底EfのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、眼底Efを経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するように構成されている。この検出結果(検出信号)は演算制御ユニット200に送られる。
【0037】
なお、スウェプトソースタイプのOCT装置の場合には、低コヒーレンス光源を出力する光源の代わりに波長掃引光源が設けられるとともに、干渉光をスペクトル分解する光学部材が設けられない。一般に、OCTユニット100の構成については、光コヒーレンストモグラフィのタイプに応じた公知の技術を任意に適用することができる。
【0038】
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、たとえば1040〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光L0として用いてもよい。
【0039】
光源ユニット101は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、LEDや、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含んで構成される。
【0040】
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて信号光LSと参照光LRに分割される。
【0041】
参照光LRは、光ファイバ104により導かれて光減衰器(アッテネータ)105に到達する。光減衰器105は、公知の技術を用いて、演算制御ユニット200の制御の下、光ファイバ104に導かれる参照光LRの光量を自動で調整する。光減衰器105により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ104により導かれて偏波コントローラ(偏波調整器)106に到達する。偏波コントローラ106は、たとえば、ループ状に保持された光ファイバ104に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ104内を導かれる参照光LRの偏光状態を調整する装置である。偏波コントローラ106の構成については後述する。偏波コントローラ106により偏光状態が調整された参照光LRは、ファイバカプラ109に到達する。
【0042】
ファイバカプラ103により生成された信号光LSは、光ファイバ107により導かれ、コリメータレンズユニット105により平行光束とされる。更に、信号光LSは、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に到達する。そして、信号光LSは、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ11により屈折されて眼底Efに照射される。信号光LSは、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる信号光LSの後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれ、光ファイバ108を経由してファイバカプラ109に到達する。
【0043】
ファイバカプラ109は、信号光LSの後方散乱光と、ファイバカプラ104を経由した参照光LRとを干渉させる。これにより生成された干渉光LCは、光ファイバ110により導かれて出射端111から出射される。更に、干渉光LCは、コリメータレンズ112により平行光束とされ、回折格子113により分光(スペクトル分解)され、集光レンズ114により集光されてCCDイメージセンサ115の受光面に投影される。なお、
図2に示す回折格子118は透過型であるが、たとえば反射型の回折格子など、他の形態の分光素子を用いることも可能である。
【0044】
CCDイメージセンサ115は、たとえばラインセンサであり、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ115は、この電荷を蓄積して検出信号を生成し、これを演算制御ユニット200に送る。
【0045】
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。
【0046】
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ115から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様である。
【0047】
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、眼底EfのOCT画像を表示装置3に表示させる。
【0048】
また、眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15及びLED51、61の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31、43の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、光路長変更部41の移動制御、ガルバノスキャナ42の動作制御などを行う。
【0049】
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、光減衰器105の動作制御、偏波コントローラ106の動作制御、CCDイメージセンサ120の動作制御などを行う。
【0050】
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼底観察装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、たとえばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
【0051】
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、2つ以上の筐体に別れて構成されていてもよい。
【0052】
〔制御系〕
眼底観察装置1の制御系の構成について
図3を参照しつつ説明する。
【0053】
(制御部)
眼底観察装置1の制御系は、制御部210を中心に構成される。制御部210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。
【0054】
(主制御部)
主制御部211は前述の各種制御を行う。特に、主制御部211は、眼底カメラユニット2の合焦駆動部31A、光路長変更部41及びガルバノスキャナ42、更にOCTユニット100の光源ユニット101、光減衰器105及び偏波コントローラ106を制御する。
【0055】
合焦駆動部80は、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。なお、主制御部211は、図示しない光学系駆動部を制御して、眼底カメラユニット2に設けられた光学系を3次元的に移動させることもできる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの眼球運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、装置光学系の位置を眼球運動に追従させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0056】
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0057】
(記憶部)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼底観察装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0058】
(画像形成部)
画像形成部220は、CCDイメージセンサ115からの検出信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部220は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。
【0059】
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。
【0060】
(画像処理部)
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。また、画像処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
【0061】
画像処理部230は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。表示部240A等の表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
【0062】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0063】
以上のように機能する画像処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムが予め格納されている。
【0064】
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス240には、表示部240Aと操作部240Bとが含まれる。表示部240Aは、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスや表示装置3を含んで構成される。操作部240Bは、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。操作部240Bには、眼底観察装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、操作部240Bは、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。また、表示部240Aは、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルモニタなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0065】
なお、表示部240Aと操作部240Bは、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルモニタのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部240Bは、このタッチパネルディスプレイとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部240Bに対する操作内容は、電気信号として制御部210に入力される。また、表示部240Aに表示されたグラフィックユーザインターフェイス(GUI)と、操作部240Bとを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
【0066】
〔偏波コントローラ〕
図2に示すように参照光路に設けられた偏波コントローラ106について説明する。偏波コントローラ106は、複数のユニットからなる従来のものと異なり、単一のユニットからなる。また、偏波コントローラ106は、複数のパドルの回転角を適宜に組み合わせることによって偏光状態を調整する従来のものと異なり、光ファイバの一部を曲線形状に保持し、この曲線形状を変化させることによって、この光ファイバに導かれる光の偏光状態を変化させる。このような偏波コントローラ106の構成例を
図4に示す。
【0067】
なお、この実施形態では参照光路(つまり光ファイバ104)にのみ偏波コントローラが設けられているが、同じ構成の偏波コントローラを信号光路(眼底Efを経由した信号光LSの光路。つまり光ファイバ107又は108)に設けることが可能である。また、参照光路と信号光路の双方に同じ構成の偏波コントローラを設けることも可能である。
【0068】
さて、
図4に示す偏波コントローラ106は、パドル310と、巻回部320と、回転軸330a及び330bとを含んで構成される。なお、後述する巻回部320の回転や、回転軸330a及び330b周りのパドル310の回転を電動で駆動させる構成を適用する場合、偏波コントローラ106は、この回転駆動を行うためのアクチュエータ(ステッピングモータ等)や、このアクチュエータが発生した駆動力を駆動対象に伝達する伝達機構を含んで構成される。
【0069】
パドル310は、基部311と、本体部312とを有する。基部311側を下方と呼び、本体部312側を上方と呼ぶことにする。本体部312の一面には略円板状の凹部(切欠き)314が形成されている。凹部314が開口している側を前方と呼び、その反対側を後方と呼ぶことにする。凹部314の後方側の面を背面316と呼ぶ。また、凹部314は、巻回部320の外周面より大きな径の内周面315を有する。なお、上下方向及び前後方向の双方に直交する方向を左右方向と呼ぶことにする。
【0070】
基部311と本体部312との間には、パドル310の前面側から後面側に向かう方向を深さ方向とし(つまりパドル301の前面側に開口し)、かつ、左右方向に延びる溝状の切欠きが形成されている。この切欠きをファイバ保持溝313と呼ぶことにする。ファイバ保持溝313の中央部分は凹部314と連結している。ファイバ保持溝313の両端部313a及び313bは、光ファイバ104を保持するように作用する。それにより、光ファイバ104のうち偏波コントローラ106内に配設される部分の両端が保持される。ファイバ保持溝313の両端部313a及び313bは、「両端保持部」として機能する。
【0071】
ここで、ファイバ保持溝313からの光ファイバ104の脱落を防止するための構造(たとえばツメ、凸部、フタ等)を設けることが可能である。また、ファイバ保持溝313(特にその両端部313a及び313b)の溝幅を光ファイバ104の径に応じて設計することにより、光ファイバ104の脱落を防止することもできる。また、様々な太さの光ファイバに対応できるように、両端部313a及び313bの内部に弾性部材(ゴム、スポンジ等)を設け、その弾性を利用して光ファイバを保持して脱落防止を図ることも可能である。
【0072】
巻回部320は、略円板状の凹部314の略中央部分に設けられ、背面316側から前方に向かって延びる円柱状(若しくは円板状)の部材である。円柱形状の巻回部320の外周面には、光ファイバ104が所定回数だけ巻回される。巻回部320は、その円柱形状における軸を中心として回転可能に設けられている。巻回部320の回転方向は双方向とされる。つまり、巻回部320は、前方から見て時計回り方向及び反時計回り方向の双方に回転可能とされている(
図4の両側矢印Aを参照)。
【0073】
ここで、光ファイバ104は巻回部320の外周面に沿って円中軸を略中心として巻回されるので、巻回部320は光ファイバ104の巻回方向に回転される(つまり巻回部320の軸を中心として回転する)と言える。ここで巻回方向とは、光ファイバ104を巻回するときの巻き方向だけでなく、捲回された状態における光ファイバ104が巻かれている方向、すなわち
図4の両側矢印Aに示す双方向を意味するものとする。
【0074】
巻回部320は、手動で回転されるように構成されていてもよいし、前述のようにアクチュエータにより発生される駆動力によって(つまり電動で)回転されるように構成されていてもよい。巻回部320を手動で回転させる場合、回転操作を行うためのノブ等の操作部材を設けることができる。
【0075】
他方、
図3に示す構成は電動の場合を示すものである。この場合の例として、所定のトリガを受けた制御部210がそのトリガに応じたパルスを偏波コントローラ106に送信すると、このパルスを受けたステッピングモータ(アクチュエータ)がこのパルスに基づく方向及び回転角度だけ巻回部320を回転させる。なお、このトリガは、ユーザが操作部240Bを用いて入力する操作信号であってもよいし、眼底観察装置1自身が生成する信号であってもよい。後者の例として、画像処理部230がOCT画像を解析して画質を判定し、その判定結果に応じて偏光状態の調整の要否を判断し、画質の状態に応じたパルスを生成するように構成できる。また、画質の判定と偏光状態の調整とを交互に行いながら偏光状態の最適化を図るようにしてもよい。
【0076】
巻回部302の径と、光ファイバ104の巻回回数は、それぞれ、たとえば特許文献8に示す次式を参照して適宜に設定される。
【0078】
δ:偏波コントローラが光に付与する位相差
a:定数
N:光ファイバの巻回回数(ループ数)
r:光ファイバの素線半径
R:光ファイバの巻回半径(ループ半径)
【0079】
この実施形態の偏波コントローラ106は、従来の偏波調整では固定された条件であったループ数(N)とループ半径(R)を変化させるものである。上記数式から分かるように、ループ数(N)とループ半径(R)は位相差(δ)に大きく影響する。よって、この実施形態の偏波コントローラ106によれば、捩じりを加える方式の従来の偏波コントローラと比較して少ない個数のユニットで同程度の調整量を実現することができる。
【0080】
偏波コントローラ106によるループ数やループ半径の変化について説明する。
図4は、光ファイバ104が巻回部320に比較的きつく巻回されている状態を示している。この状態から巻回部320を回転させると、巻回部320に対する光ファイバ104の巻回状態が緩和され、その結果、
図5に示すように、巻回部320に対する光ファイバ104の巻回状態が(少なくとも一部)解かれる。
【0081】
図4及び
図5に示す状態を前方から見ると、それぞれ
図6A及び
図6Bのようになる。
図4及び
図6Aに示す状態においては、光ファイバ104は、巻回部320の外周に沿って巻回されているので、そのループ半径は巻回部320の外周径(直径R1)の半分R1/2となる。
【0082】
一方、
図5及び
図6Bに示す状態においては、光ファイバ104は、巻回部320に対する巻回状態が解かれ、自身の可撓性及び弾性により凹部314の内周面315に沿って配される。内周面315の直径をR2とすると、この状態において偏波コントローラ106内にある光ファイバ104の(少なくとも)一部のループ径はR2/2となる。ここで、内周面315の径(直径R2)は巻回部320の外周径(直径R1)よりも大きく設計されている(つまりR2>R1)。したがって、巻回部320の回転により、光ファイバ104のループ径を変化させることができる。
【0083】
また、ファイバ保持溝313の両端部313a及び313bによって光ファイバ104が保持されており、かつ、ループ径が変化されることから、ループ数も変化する。つまり、ループ半径=R1/2である
図4及び
図6Aに示す状態におけるループ数N1は、ループ半径=R2/2(>R1/2)である
図5及び
図6Bに示す状態におけるループ数N2よりも大きくなる(つまりN1>N2)。
【0084】
このようにしてループ半径とループ数を変化させることにより、光ファイバ104を通過する参照光LRの偏光状態が変化される。
【0085】
なお、上記の例ではループ半径とループ数の双方を変化させているが、これには限定されない。たとえば、ファイバ保持溝313の両端部313a及び313bによる保持状態を考慮することで、ループ半径のみを変化させたり、ループ数のみを変化させたりすることも可能である。その具体例として、巻回部320の回転とともに、偏波コントローラ106内に配される光ファイバ104の長さを変化可能にする。そのためには、少なくとも巻回部320を回転させている間において、光ファイバ104の軸方向(長さ方向)に沿って光ファイバ104が移動可能に両端部313a及び313bを構成する。
【0086】
このような構成を適用することで、巻回状態が解かれる方向に巻回部320を回転させつつ偏波コントローラ106内に配される光ファイバ104の部分を長くすることにより、ループ数を変化させずにループ半径を変化させることができる。また、巻回部320に更に光ファイバ104を巻回させる方向に巻回部320を回転させつつ偏波コントローラ106内に配される光ファイバ104を長くすることにより、ループ半径を変化させずにループ数を変化させることができる。
【0087】
この実施形態の偏波コントローラ106は、上記のような巻回部320の回転による偏光状態の変化に加え、左右方向に配設された回転軸330a及び330b周りのパドル310の回転によっても偏光状態を変化させることができる。このパドル310の回転により、偏光軸(速軸、遅軸)の回転位置を調整することができる。このパドル310の回転は、上記のように電動又は手動で行うことができる。いずれの場合においても、巻回部320の回転と同様の構成を適用することが可能である。
【0088】
また、これら2種類の偏光状態の変化方向を使い分けるように構成することも可能である。たとえば、巻回部320の回転を用いて偏光状態の大まかな調整(粗調整)を行い、パドル310の回転を用いて細かな調整(微調整)を行うように構成することができる。粗調整と微調整とを自動で行うために、制御部210は次のような制御を行うことが可能である。まず、上記の要領で粗調整を自動で行う。粗調整は、たとえば画質の評価値が所定の許容範囲に入るまで行われる。粗調整が完了したら微調整に移行する。微調整では、画質が最大になるようにパドル310の回転角度が決定される。この処理は、たとえば微調整と画質評価とを交互に行うようにして実行される。
【0089】
干渉信号が最適となる偏波コントローラ106の設定状態を記憶し、それを再現できるように構成することが可能である。それにより、偏波コントローラ106の最適な状態を容易に再現することが可能となる。
【0090】
偏波コントローラ106の設定状態としては、巻回部320の回転角度及び/又はパドル310の回転角度がある。より一般に、偏波コントローラの設定状態は、光ファイバがどのような曲線形状に設定されているかに相当する。よって、最適な設定状態とは、光ファイバの最適な曲線形状に相当するものであり、その一例として、巻回部320の最適な回転角度及び/又はパドル310の最適な回転角度に相当するものである。
【0091】
「干渉信号が最適」とは、たとえば干渉信号(CCD115による検出信号)の強度が実質的に最大になる状態である。干渉信号の強度は、公知の信号処理によって検出することができる。また、得られた干渉信号に基づいて画像を形成し、その画像を解析することによってその干渉信号の強度を推定するようにしてもよい。干渉信号が最適か否かの判定は、偏波コントローラ106の設定状態を変更しつつ干渉信号の強度をモニタすることによって行うことができる。このような信号処理、画像処理、判定処理等は、たとえば主制御部211又は画像処理部230が実行する。
【0092】
主制御部211は、そのようにして求められた最適な設定状態を示す情報を記憶部212に記憶させる。主制御部211は、所定のタイミングで、過去に記憶された最適な設定状態を示す情報を記憶部212から読み出して偏波コントローラ106を制御することにより、偏波コントローラ106の設定状態をこの最適な設定状態に変更する。
【0093】
なお、この実施形態では、主制御部211、記憶部212及び画像処理部230は演算制御ユニット200(つまり偏波コントローラ106の外部)に設けられているが、偏波コントローラ自体にこれらを設けることも可能である。
【0094】
被検眼を経由した信号光の偏光状態は、その被検眼の光学特性によって異なる。これを鑑み、偏波コントローラ106の最適な設定状態を被検眼の識別情報(患者ID、左右眼情報等)に関連付けた記憶させ、識別情報の入力に対応してその識別情報に関連付けられた最適な設定状態を読み出して制御を行うように構成することができる。この構成によれば、被検眼に応じた最適な設定状態を容易に再現することが可能である。
【0095】
上記の例では、偏波コントローラ106の最適な設定状態を実際に再現しているが、最適な設定状態を示す情報を表示部240Aに表示させるようにしてもよい。ユーザは、この表示情報を参照して偏波コントローラ106の設定状態を調整することができる。
【0096】
[効果]
眼底観察装置1の効果について説明する。
【0097】
眼底観察装置1は、光源からの光を信号光LSと参照光LRとに分割し、被検眼Eの眼底Efを経由した信号光LSと参照光LRとの干渉光LCを生成し、干渉光LCの検出結果に基づいて眼底Efの画像を形成する光画像計測装置として機能する。更に、眼底観察装置1は、眼底Efを経由した信号光LSを導く第1の光ファイバ(光ファイバ107、108)と、参照光LRを導く第2の光ファイバ(光ファイバ104)と、偏波コントローラ(偏波コントローラ106)とを有する。偏波コントローラは、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバの一方又は双方について、当該光ファイバの一部を曲線形状に保持し、この曲線形状を変化させることにより当該光ファイバに導かれる光の偏光状態を変化させる。
【0098】
このような偏波コントローラを有する眼底観察装置1によれば、従来のように複数のパドルの回転角、つまり光ファイバの捩じり度合いを適宜に組み合わせて偏光状態の調整を行う代わりに、単一のユニットを用いて光ファイバの曲線形状(光ファイバの軸方向の沿う光ファイバの形状)を変化させることにより偏光状態を調整するように構成されているので、偏光状態を調整する作業の容易化を図ることができる。
【0099】
偏波コントローラは、当該光ファイバの一部をループ形状に保持し、このループ形状におけるループ数及び/又はループ半径を変化させることにより偏光状態を変化させるように構成されていてもよい。この構成によれば、上記数式から分かるように偏光状態への影響が比較的大きいループ数及び/又はループ半径を変化させることができるので、単一のユニットだけで偏光状態を容易に調整することが可能である。
【0100】
偏波コントローラは、両端保持部(ファイバ保持溝313の両端部313a及び313b)と、巻回部(巻回部320)と、回転機構とを備えていてもよい。両端保持部は、当該光ファイバの一部の両端をそれぞれ保持する。巻回部は、当該光ファイバの一部が捲回される。回転機構は、当該光ファイバの一部の巻回方向に巻回部を回転させる。この構成によれば、偏波コントローラ内に配された光ファイバの一部の両端を保持した状態で、当該一部を回転させることができるので、ループ数及び/又はループ半径を変化させる動作を簡易な構造のユニットで実現することが可能である。
【0101】
偏波コントローラは、巻回部の周囲に設けられ、かつ巻回部より大きな径の内周面(凹部314の内周面315)を有する部材(パドル310)を備えていてもよい。このような部材を設けることにより、巻回部の回転により巻回状態が緩んで巻回部から外れた光ファイバの部分がこの内周面に沿って配されることとなる。よって、巻回部から外れた光ファイバの曲線形状を保持できる。また、この内周面の径に応じた偏光状態を容易に実現することができる。なお、巻回部の外周面の径や、上記部材の内周面の径、又はこれら径の差(若しくは比)については、適宜に設定することができる。
【0102】
偏波コントローラは、光ファイバの巻回方向と異なる方向に、少なくとも巻回部を移動させる移動機構を備えていてもよい。この移動機構は、両端保持部の近傍を軸(回転軸330a及び330b)として、光ファイバの巻回方向に対し略直交する方向に、少なくとも巻回部を傾倒させるように構成されていてもよい。このような構成により、従来と同様に光ファイバを捻ることによって偏光状態を調整することができる。つまり、この構成を適用する場合、偏波コントローラは、偏光状態を変化させるための2種類の動作を行うことが可能となる。
【0103】
なお、上記の実施形態において、巻回部320の移動方向(傾倒方向、回転方向)は、円柱状の巻回部320の前面(円柱頂部の平面)の法線方向となっている。この法線方向は、光ファイバ104の巻回方向、つまり巻回部320の外周面の法線方向に対して略直交する方向である。また、上記の実施形態では、巻回部320だけでなくパドル310全体が回動するように構成されているが、巻回部を含む任意の構成部分のみが回動するように構成しても同様の効果が得られる。
【0104】
[変形例]
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【0105】
上記の実施形態では、光ファイバのループ数及び/又はループ半径を変化させることにより光ファイバの曲線形状を変化させているが、光ファイバの曲線形状を変化させるための構成はこれに限定されるものではない。
【0106】
たとえば、
図7Aに示す偏波コントローラ400は、光ファイバ500の一部の両端を保持する一対の両端保持部410a及び410bを有する。更に、偏波コントローラ400は、両端保持部410a及び410bの間の距離を変化させる機構420を有する。なお、
図7Aに示す構成例では両端保持部410bのみが移動されるように構成されているが、両端保持部410aのみを移動させる構成や、両端保持部410a及び両端保持部410bの双方を移動させる構成を適用することも可能である。また、両端保持部410a及び410bの相対的な移動方向は、これらの間の距離を変化させる方向、つまりこれらにより保持されている光ファイバ500の部位の間の距離を変化させる方向とされる。この移動方向を実現するための両端保持部410bの移動方向を両側矢印Bで示す。
【0107】
更に、偏波コントローラ400は、光ファイバ500の形状を保持するための1つ以上の回転部材430を有する。回転部材430は、
図7Aの紙面に直交する方向を軸として回転可能な略円筒状の部材である。回転部材430の周面に、光ファイバ500が回転部材430から脱落することを防止するための加工を施すことができる。この脱落防止加工の例として、凸部やツメを形成することができる。また、回転部材430の周面に、光ファイバ500との間において適度な摩擦を生じさせるための加工を施すことができる。この摩擦発生加工の例として、回転部材430の周面に微細な凹凸を形成したり、適当な材料を周面に塗布したりすることができる。
【0108】
回転部材430は、両端保持部410a及び410bの相対的な移動方向に沿って移動可能とされている。更に、回転部材430は、当該相対的な移動方向に直交する方向、特に
図7Aの紙面における上下方向に移動可能とされていてもよい。回転部材430を移動可能とする機構は、両端保持部410a及び410bの相対的な移動に起因する光ファイバ500の移動に応じて自在に回転部材430を移動させる受動的な機構であってもよいし、人力又はアクチュエータを用いて回転部材430を移動させる能動的な機構であってもよい。アクチュエータを用いる場合、回転部材430の移動制御は制御部210により行われる。また、回転部材430の周面の径を変更可能とした構成や、光ファイバ500の形状保持に関与する回転部材430の個数を変更可能とした構成を適用することもできる。
【0109】
両端保持部410a及び410bの間の距離を近接させたときの状態を
図7Bに示す。この動作例において、回転部材430は、両端保持部410a及び410bの相対的な移動方向に移動されている。
【0110】
このような偏波コントローラ400によれば、両端保持部410a及び410b並びに回転部材430によって光ファイバの一部を曲線形状に保持し、更に、両端保持部410a及び410bにより保持されている光ファイバ500の両端位置の間の距離を機構420によって変化させることができる。このように光ファイバ500の両端位置の間の距離を変化させることにより、光ファイバ500の曲線形状を変化させることができ、ひいては光ファイバ500に導かれる光の偏光状態を変化させることができる。つまり、偏波コントローラ400は、従来のように複数のパドルの回転角、つまり光ファイバの捩じり度合いを適宜に組み合わせて偏光状態の調整を行う代わりに、単一のユニットを用いて光ファイバの曲線形状(光ファイバの軸方向の沿う光ファイバの形状)を変化させることにより偏光状態を調整するように構成されている。したがって、偏光状態を調整する作業の容易化を図ることができる。
【0111】
なお、両端保持部410bを移動させる構成については、手動で行う構成及び電動で行う構成のいずれを採用してもよい。いずれにおいても、上記の実施形態と同様に構成することが可能である。
【0112】
また、光ファイバ500の曲線形状をより安定させるための部材として、回転部材430以外の構成を設けることが可能である。この部材としては、偏波コントローラ400内に配される光ファイバ500の少なくとも一部(たとえば山の頂上及びその近傍と、谷の頂上及びその近傍)を支持する支持部材などがある。回転部材430はこの支持部材の一例である。
【0113】
また、光ファイバ500の曲線形状は、
図7A及び
図7Bに示すような波状には限定されず、たとえば螺旋形状等の任意の形状を適用することが可能である。
【0114】
回転部材430の他の構成例を
図8に示す。この回転部材430においては、その周面431の径が回転軸430aに沿う方向における位置によって異なっている。
図8に示す周面431は、回転軸430aに沿う方向にテーパ状に形成されている。このテーパ状は、線形テーパには限定されず、曲線的なテーパ形状であってもよい。光ファイバ500は、周面431に当接される。それにより光ファイバ500の形状が保持される。この回転部材430は「保持部材」の一例である。
【0115】
回転部材430は、図示しない移動機構によって回転軸430aに沿う方向に移動される。この移動方向は、周面431の傾斜方向に沿う方向である。回転部材430を移動させることにより、光ファイバ500が当接する周面431の位置が変更される。そうすると、この当接位置における光ファイバ500の曲げ半径(曲率半径)が変化する。この変化は、前述の「数1」に示す式における光ファイバの巻回半径Rの変化に相当する。したがって、偏波コントローラが光に付与する位相差δが変化することとなる。このような構成を上記した任意の構成と組み合わせることが可能である。
【0116】
なお、保持部材の周面の形状はテーパ状に限定されるものではなく、たとえば階段状であってもよい。この保持部材は、図示しない移動機構によって、この階段形状における段差方向に移動される。段差方向とは、段差が形成されている方向、つまり周面の径が変化する方向に相当する。
【0117】
上記の実施形態においては、光路長変更部41の位置を変更することにより、信号光LSの光路と参照光LRの光路との光路長差を変更しているが、この光路長差を変更する手法はこれに限定されるものではない。たとえば、参照光の光路に反射ミラー(参照ミラー)を配置し、この参照ミラーを参照光の進行方向に移動させて参照光の光路長を変更することによって、当該光路長差を変更することが可能である。また、被検眼Eに対して眼底カメラユニット2やOCTユニット100を移動させて信号光LSの光路長を変更することにより当該光路長差を変更するようにしてもよい。また、特に被測定物体が生体部位でない場合などには、被測定物体を深度方向(z方向)に移動させることにより光路長差を変更することも可能である。