特許第5936897号(P5936897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人京都大学の特許一覧

特許5936897固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池
<>
  • 特許5936897-固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池 図000002
  • 特許5936897-固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池 図000003
  • 特許5936897-固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池 図000004
  • 特許5936897-固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池 図000005
  • 特許5936897-固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池 図000006
  • 特許5936897-固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池 図000007
  • 特許5936897-固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936897
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質積層体及び固体電解質積層体の製造方法及び燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20160609BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20160609BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20160609BHJP
   C04B 35/48 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H01M8/02 K
   H01M8/12
   H01B1/06 A
   C04B35/48 B
   H01M8/02 E
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-74254(P2012-74254)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-206702(P2013-206702A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000693
【氏名又は名称】特許業務法人ハートクラスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【弁理士】
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】平岩 千尋
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 正利
(72)【発明者】
【氏名】山口 篤
(72)【発明者】
【氏名】水原 奈保
(72)【発明者】
【氏名】宇田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】韓 東麟
(72)【発明者】
【氏名】倉満 晶子
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−317627(JP,A)
【文献】 特開2008−053194(JP,A)
【文献】 特開2012−170833(JP,A)
【文献】 Emiliana Fabbri, Alessandra D'Epifanio, Simone Sanna, Elisabetta Di Bartolomeo, Giuseppe Balestrino,,A novel single chamber solid oxide fuel cell based on chemically stable thin films of Y-doped BaZrO3,Energy & Environmental Science,2010年 4月 1日,vol.3, No.5,pp.618-621
【文献】 韓 東麟, 野瀬 嘉太郎, 岸田 恭輔, 乾 晴行, 宇田 哲也,YをドープしたBaZrO3の相平衡と熱履歴の関係,資源・素材,2011年 9月26日,vol.2011, No.2,pp.113-114
【文献】 井口 史匡, 湯上 浩雄,固体電解質薄膜における残留応力と導電特性の関係,日本機械学会年次大会講演論文集,2009年 9月12日,vol.1,pp.229-230
【文献】 Yoshihiro Yamazaki, Raul Hernandez-Sanchez,Sossina M Haile,High Total Proton Conductivity in Large-Grained Yttrium-Doped Barium Zirconate,Chemistry of Materials,2009年 5月20日,vol.21, No.13,pp.2755-2762
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
C04B 35/48
H01B 1/06
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素イオン導電性を有するイットリウム添加ジルコン酸バリウムからなる固体電解質であって、
上記イットリウム添加量が、15〜20mol%であるとともに、
上記固体電解質の100℃〜1000℃における格子定数の温度変化に対する増加率が、3.3×10−5Å/℃〜4.3×10−5Å/℃である、固体電解質。
【請求項2】
上記固体電解質は、結晶粒の平均径が1μm以上である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
室温での格子定数が4.218Å〜4.223Åである、請求項1又は請求項2に記載の固体電解質。
【請求項4】
400℃〜800℃における、プロトン伝導度が1mS/cm〜60mS/cmである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載した固体電解質から形成された固体電解質層の両側面に電極層が積層形成された、固体電解質積層体。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法であって、
BaCO3と、ZrO2と、Y23とを混合して粉砕する第1の粉砕工程と、
上記粉砕した混合物を、所定温度で所定時間熱処理する第1の熱処理工程と、
上記第1の熱処理工程を終えた混合物を再度粉砕する第2の粉砕工程と、
上記第2の粉砕工程を終えた混合物を圧縮成形する第1の圧縮成形工程と、
上記圧縮成形した成形体を所定温度で熱処理する第2の熱処理工程と、
上記第2の熱処理工程を終えた成形体を粉砕する第3の粉砕工程と、
上記第3の粉砕工程を終えた粉砕物を圧縮成形する第2の圧縮成形工程と、
上記第2の圧縮成形工程により成形された成形体を、酸素雰囲気下、1400℃〜1600℃の温度で、少なくとも20時間熱処理する固体電解質焼結工程と、
上記固体電解質焼結工程を終えた焼結体を、上記固体電解質焼結工程より低い温度で所定時間保持する第3の熱処理工程とを含む、固体電解質の製造方法。
【請求項7】
上記第3の熱処理工程は、400℃〜1000℃の温度で、5〜30時間保持することにより行われる、請求項6に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項8】
上記固体電解質焼結工程を終えた上記焼結体を常温まで冷却した後に、上記第3の熱処理工程が行われる請求項6又は請求項7のいずれかに記載の固体電解質の製造方法。
【請求項9】
上記固体電解質焼結工程と上記第3の熱処理工程とを連続して行う、請求項6又は請求項7に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項10】
水素イオン導電性を有するイットリウム添加ジルコン酸バリウムからなる固体電解質層と、この固体電解質層の両側に設けた電極層とを備える固体電解質積層体の製造方法であって、
請求項6から請求項9のいずれか1項に記載した固体電解質の製造方法によって薄膜状の固体電解質を形成する固体電解質層形成工程と、
上記固体電解質層の一側にアノード電極材料を積層するアノード電極材料積層工程と、
上記固体電解質層の他側にカソード電極材料を積層するカソード電極材料積層工程と、
上記電極材料を形成した積層体を所定温度に加熱して、上記電極層を焼結させる電極材料焼結工程とを含む、固体電解質積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体電解質を備えて構成される燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、固体電解質、固体電解質の製造方法等に関する。詳しくは、600℃以下の中温域で動作するとともに、容易に製造することができる固体電解質及び固体電解質の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(以下、「SOFC」という)は、効率が高く、白金等の高価な触媒を必要としない。一方、作動温度が800℃〜1000℃の高温であるため、インターコネクタ等の構造材料が劣化しやすいという問題がある。
【0003】
上記問題を解決するため、作動温度を600℃以下に低下させた中温作動型のSOFCが期待されている。ところが、作動温度が低いと効率が低下し、所要の発電性能を確保できないという問題がある。このため、低い作動温度でも効率が高く、所要の発電性能を確保できる固体電解質が求められている。
【0004】
固体電解質として、酸素イオン導電性あるいはプロトン導電性を有するものが採用される。酸素イオン導電性を有する固体電解質を採用した場合、燃料極において、酸素イオンが水素と結びついて水が生成され、この水が燃料を希釈して効率を低下させるという問題がある。
【0005】
一方、イットリウム添加ジルコン酸バリウム(以下、「BZY」という)等のプロトン導電性を有する固体電解質は、電荷輸送のための活性エネルギが低いため低温で高いプロトン伝導率を実現でき、上記酸素イオン導電性を有する固体電解質に代わる固体電解質材料として期待されている。また、プロトン導電性の固体電解質を採用した場合には、酸素イオン導電性の固体電解質における上記の問題が生じることもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3733030号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記BZYは、優れた化学安定性を有するが、多結晶材料として焼結性が悪く、また、結晶粒が小さいため結晶粒界の比率が大きくなってプロトン導電性を阻害し、総電気伝導率が低くなるという問題があった。このため、上記BZYは、これまで有効利用がなされていなかった。
【0008】
特に、イットリウムの添加量が10mol%以下の場合は、焼結時に結晶粒が成長しにくいため、粒界面密度が高くなって抵抗が大きくなり、これを燃料電池に利用した場合発電性能が低くなる。
【0009】
一方、イットリウムを15mol%以上添加した場合、イットリウムを均等に分散固溶させることが困難である。このため、200℃〜400℃の温度範囲において、非平衡相の緩和が生じて熱膨張率が変化するという現象が発生する。
【0010】
イットリウム添加量を異ならせた固体電解質の温度変化に対する格子定数の変化を図4に示す。この図に示すように、イットリウムを添加しない場合、温度変化に対する格子定数の変化率はほぼ一定であり、格子定数は所定の勾配を有する直線状グラフに沿って一次関数的に増加する。一方、イットリウムの添加量を増加させていくと、同一温度に対する格子定数が一定割合で大きくなるとともに、400℃前後の温度範囲において、格子定数の値が一次関数の直線近傍から外れて大きく増加する領域が現れる。上記格子定数が大きく増加する領域は、イットリウムの添加量が15mol%を越えると表れ、20mol%では顕著になる。これは、上記温度領域において、非平衡相の緩和が生じたためであると推測される。
【0011】
なお、上記格子定数は、高温XRD測定結果からリートベルト解析によって算出したものである。
【0012】
格子定数は、結晶の単位格子の各辺の長さであるため、上記格子定数の変化に応じて、熱膨張率も変化することになる。すなわち、イットリウムの添加量が多くなると、400℃近傍の領域において熱膨張率が大きく変化する。上記固体電解質を燃料電池に用いる場合、薄膜状の固体電解質層の両側面に電極層が積層形成される。上記電極層を構成する材料は熱膨張係数がほぼ一定であり、温度に比例して熱膨張する。このため、イットリウム添加量が多い固体電解質を採用した場合、400℃近傍において、上記固体電解質と上記電極材料を積層して形成される積層体の境界面に大きな剪断力が発生して、固体電解質層にクラックが生じたり、電極層が剥離するという問題が生じる。この結果、製造工程における歩留りや、燃料電池の耐久性を確保できないという問題があった。
【0013】
本願発明は、上記問題を解決するために案出されたものであって、イットリウム添加量を増加させた場合にも、上記熱膨張率の変化が生じないイットリウム添加ジルコン酸バリウムからなる固体電解質及びその製造方法等を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、水素イオン導電性を有するイットリウム添加ジルコン酸バリウムからなる固体電解質であって、上記イットリウム添加量が、15〜20mol%であるとともに、上記固体電解質の100℃〜1000℃における格子定数の温度変化に対する増加率が、3.3×10−5Å/℃〜4.3×10−5Å/℃である固体電解質に係るものである。
【0015】
本願発明では、イットリウムの添加量を15〜20mol%に設定している。これにより、高いプロトン伝導度を確保できるとともに、焼結性を改善することが可能となる。
【0016】
上記イットリウムの添加量が15mol%以下である場合、熱膨張率の変化は比較的小さく、熱膨張による問題が生じることは少ない。しかし、焼結性を改善するとともに、上記中温域におけるプロトン伝導度を確保するためには、イットリウムの添加量を15mol%以上に設定するのが好ましい。一方、上記イットリウムの添加量が20mol%を越えると、イットリウムを均等に分散配合することが困難になり、またイオン導電性も低下する。
【0017】
本願発明に係る固体電解質では、100℃〜1000℃における格子定数の温度変化に対する増加率がほぼ一定である。すなわち、上記温度範囲において非平衡相の緩和が生じることがなく、熱膨張率がほぼ一定に保持される。このため、電極層を積層形成する工程等において、熱膨張率の変化によるクラックの発生を防止できるとともに、電極層が剥離する恐れもなくなる。
【0018】
上記固体電解質の100℃〜1000℃における格子定数の温度変化に対する増加率を、3.3×10−5Å/℃〜4.3×10−5Å/℃に設定するのが好ましい。格子定数の増加率を上記範囲に設定することにより、熱膨張率を所要の範囲に設定することが可能となる。100℃〜1000℃における平均熱膨張率が、5×10−6(1/K)〜9.8×10−6(1/K)となるように、上記格子定の増加率を設定するのがより好ましい。
【0019】
本願発明に係る固体電解質を薄膜状に成形し、この薄膜状固体電解質に電極材料を積層形成した後、焼結する温度が約1000℃である。したがって、100℃から1000℃における格子定数を上記値に設定することにより、電極層の焼結工程において、固体電解質層と電極層との熱膨張量に大きな相違が生じることがなくなり、クラックや剥離が生じるのを効果的に防止することができる。
【0020】
記固体電解質の結晶粒の平均径を1μm以上に設定するのが好ましい。
【0021】
上述したように、固体電解質の結晶粒の平均径が小さくなると、粒界面密度が高くなって抵抗が大きくなり、プロトン伝導度が低下する。結晶粒の平均径を1μm以上とすることにより、上記問題を回避することができる。
【0022】
体電解質の室温での格子定数を4.190Å〜4.230Åに設定するのが好ましい。
【0023】
室温での格子定数は、イットリウムの添加量や、400℃近傍の格子定数の変化と相関がある。このため、室温での格子定数を上記の範囲に設定することにより、400℃近傍での格子定数を推定して、固体電解質の熱膨張係数を把握することができる。また、積層した電極層を焼結させる場合に、剥離等を防止することができる。
【0024】
固体電解質の400℃〜800℃における、プロトン伝導度を1mS/cm〜60mS/cmに設定するのが好ましい。上記温度範囲において上記プロトン伝導度を確保できるため、燃料電池を構成した場合の中温域における所要の発電性能を確保することが可能となる。
【0025】
本願発明に係る固体電解質を利用して形成される固体電解質積層体の形態は特に限定されることはない。上述した固体電解質から形成された固体電界質層の両側面に電極層を積層形成することにより、中温域において使用することができる固体電解質積層体を形成することができる。
【0026】
上述した固体電解質積層体は、次の工程を含む製造方法によって製造される。たとえば、BaCO3と、ZrO2と、Y23とを混合して粉砕する第1の粉砕工程と、上記粉砕した混合物を、所定温度で所定時間熱処理する第1の熱処理工程と、上記第1の熱処理工程を終えた混合物を再度粉砕する第2の粉砕工程と、
上記第2の粉砕工程を終えた混合物を圧縮成形する第1の圧縮成形工程と、上記圧縮成形した成形体を所定温度で熱処理する第2の熱処理工程と、上記第2の熱処理工程を終えた成形体を粉砕する第3の粉砕工程と、上記第3の粉砕工程を終えた粉砕物を圧縮成形する第2の圧縮成形工程と、上記第2の圧縮成形工程により成形された成形体を、酸素雰囲気下、1400℃〜1600℃の温度で、少なくとも20時間熱処理する固体電解質焼結工程と、上記固体電解質焼結工程を終えた焼結体を、上記固体電解質焼結工程より低い温度で所定時間保持する第3の熱処理工程とを含んで製造することができる。
【0027】
上記BaCO3と、ZrO2と、Y23の配合量は、イットリウム添加量が15〜20mol%となれば、特に限定されることはない。たとえば、イットリウム添加量を15mol%とする場合、BaCO3を62wt%と、ZrO2を33wt%と、Y23を5wt%とを混合した材料を採用することができる。
【0028】
本願発明では、固相反応法によって固体電解質焼結体を形成する。上記粉砕工程を行う手法も特に限定されることはない。たとえば、既知のボールミリングによって粉砕工程を行うことができる。たとえば、第1の粉砕工程と第2の粉砕工程を、ボールミリングを約24時間行うことにより上記粉砕工程を行うことができる。上記粉砕工程後の粉砕粒度は特に限定されることはないが、平均粒径が355μm以下となるように粉砕するのが好ましい。
【0029】
上記第1の熱処理工程は、たとえば、大気雰囲気下、1000℃に約10時間保持することにより、また、上記第2の熱処理工程は、大気雰囲気下、1300℃に約10時間保持することにより、それぞれ行うことができる。
【0030】
上記圧縮成形工程を行う手法も特に限定されることはない。たとえば、粉砕した材料を1軸成形して所要の成形体を形成することができる。上記圧縮成形工程は、各配合成分を均一に分散混合するものであり、粉砕を容易に行うことができれば、成形体の形態は特に限定されることはない。たとえば、直径20mmの円筒型を用いて、10MPaの圧縮力を軸方向に作用させ、円盤状の成形体を形成する。
【0031】
上記成形体を約1300℃で約10時間熱処理することにより、各成分粉体を固溶させて、上記各成分が均一に分散された材料を形成することができる。その後、上記第2の熱処理工程を終えた成形体を粉砕する第3の粉砕工程が行われる。上記各成分粉体を均一に分散混合させるため、上記第3の粉砕工程−上記圧縮成形工程−第2の熱処理工程を繰り返し行うのが望ましい。これにより、各成分が均一に分散固溶した材料を形成することができる。上記各成分粉体が均一に分散されているかどうかは、X線回折装置(XRD)を用いて確認することができる。
【0032】
次に、上記第3の粉砕工程を終えた粉砕物を圧縮成形する第2の圧縮成形工程が行われる。第2の圧縮成形工程、エチルセルロース等のバインダを添加して、上記粉砕物を圧縮成形することにより行うことができる。上記第2の圧縮成形工程は、上記粉砕物を固体電解質層の形態に成形するものであり、たとえば、所定厚みの円盤状に成形することができる。
【0033】
次に、上記成形体を、酸素雰囲気下、1400℃〜1600℃の温度で、少なくとも20時間熱処理する焼結工程を行うことにより、固体電解質焼結体を得ることができる。
【0034】
上記工程において得られた固体電解質の格子定数は、上述したように、400℃近傍の温度領域において、特異な変化を示す。このため、本願発明では、上記固体電解質焼結体を、上記焼結工程より低い温度で所定時間保持する第3の熱処理工程を行う。
【0035】
上記第3の熱処理工程は、上記固体電解質焼結体に、格子定数の変化が生じない特性を付与できれば特に限定されることはない。たとえば、上記第3の熱処理工程を、400℃〜1000℃の温度で、5〜30時間保持することにより行うことができる。
【0036】
上記第3の熱処理工程を行うことにより、400℃近傍の温度領域において、格子定数が特異的に変化することがなくなり、100℃〜1000℃における格子定数の温度変化に対する増加率をほぼ一定にすることができる。
【0037】
上記第3の熱処理工程を、上記焼結工程後に上記焼結体を常温まで冷却した後に行うことができる。また、上記焼結工程と上記第3の熱処理工程とを連続して行うこともできる。
【0038】
上記第3の熱処理工程を終えた上記固体電解質焼結体の一側にアノード電極材料を積層するアノード電極材料積層工程と、上記固体電解質層の他側にカソード電極材料を積層するカソード電極材料積層工程と、上記電極材料を形成した積層体を所定温度に加熱して、上記電極層を焼結させる電極材料焼結工程とを行うことにより、固体電解質積層体が形成される。
【0039】
本願発明に係る固体電解質層形成工程によって形成された固体電解質層は、温度変化に対する格子定数の変化が一定であり、熱膨張率が温度によって変化することがない。このため、上記電極材料焼結工程において、上記固体電解質層にクラックが生じたり、電極層が剥離することがない。
【0040】
上記電極材料も特に限定されることはない。たとえば、カソード電極材料として、プラチナやLSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)等の電極材料を採用できる。また、アノード電極材料として、Ni−BZY(ニッケルを添加したイットリウム添加ジルコン酸バリウム)等の電極材料を採用することができる。
【0041】
上記電極材料を、上述した製造方法によって形成された固体電解質の表面に積層し、所要の温度に加熱して焼結させることにより、固体電解質積層体を形成することができる。
【0042】
上述した製造方法では、まず固体電解質層を構成する円盤状の焼結体を形成し、この円盤状の焼結体を支持部材として電極層を積層形成したが、製造方法は上記方法に限定されることはない。
【0043】
たとえば、まずアノード電極を構成する成形体を形成し、このアノード電極成形体を支持部材として、上記固体電解質層及び上記カソード電極層を順次積層形成する手法を採用できる。
【0044】
上記アノード電極成形体は、たとえば、BaCO3と、ZrO2と、Y23から合成したBZYとNiとを混合するアノード電極材料調整工程と、上記アノード電極材料を圧縮成形してアノード電極層となるアノード電極成形体を形成するアノード電極成形工程とにより形成することができる。上記アノード電極は支持部材となるため、厚みが1mm程度に設定するのが好ましい。
【0045】
上記アノード電極成形体に固体電解質層を積層形成する手法は以下のように行うことができる。すなわち、上述した製造方法と同様に、上記第1の粉砕工程と、上記第1の熱処理工程と、上記第2の粉砕工程と、上記第1の圧縮成形工程と、上記第2の熱処理工程と、上記第3の粉砕工程とを行い、BZYの粉砕物を形成する。
【0046】
次に、上記粉砕物をペースト化するペースト化工程と、上記ペースト化された粉砕物を、上記アノード電極成形体の一側に積層する固体電解質積層工程とを行う。上記固体電解質積層は、支持部材とならないため、厚みを10μm〜100μmに設定できる。
【0047】
そして、上記固体電解質積層工程において成形された積層体を、酸素雰囲気下、1400℃〜1600℃の温度で、少なくとも20時間熱処理するアノード電極−固体電解質焼結工程と、上記アノード電極−固体電解質焼結工程を終えた積層体を、上記アノード電極−固体電解質焼結工程より低い温度で所定時間保持する第3の熱処理工程とが行われる、
【0048】
上記第3の熱処理工程を終えた薄膜状固体電解質の一側に、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物(LSC)又はランタンストロンチウム鉄コバルト複合酸化物(LSCF)等からなるカソード電極材料を積層するカソード電極材料積層工程と、上記カソード電極材料の焼結温度以上に加熱するカソード電極焼結工程とを行う。なお、カソード電極材料積層工程とカソード電極焼結工程とは上述した方法と同様に行うことができる。これら工程によっても上述した固体電解質積層体を形成することができる。
【0049】
本願発明では、上記固体電解質層に第3の熱処理がほどこされているため、100℃〜1000℃の温度範囲において格子定数の温度変化に対する増加率が一定となり、これにともない熱膨張率も一定となっている。このため、固体電解質層と電極層とに歪等を生じさせることなく焼結させることが可能となり、固体電解質層にクラックが生じたり、電極層が剥離することなく、固体電解質積層体を形成することができる。また、内部応力等の発生も抑制されるため、耐久性の高い固体電解質積層体を形成することができる。
【0050】
本願発明に係る固体電解質は、600℃以下の温度範囲で使用される種々の形式の燃料電池に好適であるが、600℃以上の温度で使用される燃料電池にも利用することができる。
【発明の効果】
【0051】
焼結性を改善するためにイットリウムの添加量を大きく設定しても、格子定数の変化率及び熱膨張率が一定で、高いプロトン導電性を備えるイットリウム添加ジルコン酸バリウムからなる固体電解質を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本願発明に係る固体電解質積層体の一例を示す全体斜視図である。
図2図1に示す固定電解質積層体の要部の拡大断面図である。
図3】熱処理を施した本願発明に係る固体電解質と、熱処理を施していない固体電解質の温度変化に対する格子定数の変化を示す図である。
図4】イットリウムの添加量が異なる固体電解質の温度に対する格子定数の変化を示す図である。
図5】本願発明に係る焼結工程及び第3の熱処理工程を示す図である。
図6】本願発明の第2の実施形態に係る焼結工程及び第3の熱処理工程を示す図である。
図7】固体電解質積層体の他の形態を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本願発明に係る実施形態を図に基づいて説明する。
【0054】
燃料電池を構成する固体電解質積層体1は、固体電解質層2と、この固体電解質層の一側に積層形成された第1の電極層3と、他側に形成された第2の電極層4とを備えて構成される。
【0055】
本実施形態に係る固体電解質層2として、水素イオン導電性を有するイットリウム添加ジルコン酸バリウム(BZY)からなる固体電解質2aが採用されている。上記第1の電極層3は、プロトン導電性セラミックを積層して焼結することにより形成されており、アノード電極として機能するように構成している。一方、上記第2の電極層4は、白金又はLSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)を積層形成して焼結することにより形成されており、カソード電極として機能するように構成されている。
【0056】
上記電極材料の他、上記カソード電極材料として、LSC、LSCF、LSM、BSCF等の電極材料を採用できる。一方、上記アノード電極材料として、Ni−BZY(ニッケルを添加したイットリウム添加ジルコン酸バリウム)、NiFe−BZY、Fe−BZY、Ni−BCY(BaCe0.80.23-δ)を採用することができる。
【0057】
以下、固体電解質積層体1の製造方法について説明する。
【0058】
まず、イットリウムを20mol%添加したBZYからなる固体電解質層2を形成するため、原材料として、BaCO3を62wt%と、ZrO2を31wt%と、Y23を7wt%とを混合して、ボールミリングによる第1の粉砕工程を行い、これら原料を均一に混合する。その後、1000℃で約10時間熱処理して第1の熱処理工程を行い、さらに、上記第1の熱処理工程を施した粉体材料をボールミリングすることにより第2の粉砕工程を行う。上記粉砕工程における材料の粉砕程度は特に限定されることはないが、粉砕された粉体の平均粒径が355μm以下となるように粉砕するのが好ましい。
【0059】
次に、第2の粉砕工程を終えた混合粉体を1軸成形することにより、円盤状の圧縮成形体を形成する圧縮成形工程を行う。上記圧縮成形工程は、たとえば、直径20mmの円筒型を用いて、10MPaの圧縮力を軸方向に作用させ、円盤状の成形体を形成できる。
【0060】
上記圧縮成形体を、約1300℃で約10時間熱処理することにより、各成分粉体を固溶させて上記各成分を均一に分散固溶させる第2の熱処理工程が行われる。本願発明に係る固体電解質2aにおいては、低温作動を可能とするため、上記各成分が均一に分散固溶された均一な組織を形成する必要がある。このため、上記第2の熱処理工程を終えた成形体を粉砕する第3の粉砕工程が行われる。さらに、必要に応じて、上記圧縮成形工程−上記第2の熱処理工程−上記第3の粉砕工程を繰り返し行うことにより、各成分がより均一に分散固溶した材料を形成することができる。上記各成分粉体が均一に分散固溶されたかどうかは、X線回折装置(XRD)によって得られるグラフの成分ピーク位置が、BZYのみであるかどうかによって確認することができる。
【0061】
上記第3の粉砕工程を終え、各成分が均一に分散固溶された粉砕材料を圧縮成形する第2の圧縮成形工程が行われる。第2の圧縮成形工程は、上記粉砕材料を上記固体電解質層2の形態に成形するものであり、たとえば、プレス成形によって100μm〜500μmの厚みの円盤状の成形体を形成することができる。
【0062】
図5に示すように、上記成形体を、酸素雰囲気下、1400℃〜1600℃の温度で、少なくとも20時間(T1)熱処理する焼結工程を行うことにより焼結させ、燃料電池の固体電解質層2を構成する円盤状の焼結体が得られる。
【0063】
図3はイットリウムを20mol%添加して形成された固体電解質の温度変化に対する格子定数の変化を示すグラフである。図3に示すように、上記固体電解質は、×印でプロットされたように、200℃〜400℃の温度領域において、格子定数が特異な変化を示す。また、上記格子定数の特異な変化に起因して、熱膨張率も変化する。このため、上述した工程において製造された固体電解質に電極層3,4を積層形成して焼結すると、上記熱膨張率の変化によって、固体電解質層2と電極層3,4との間で大きな剪断応力が発生し、固体電解質層2にクラックが発生したり、電極層3,4と固体電解質層2とが剥離するといった問題が発生する。
【0064】
本実施形態では、上記問題を解消するため、第3の熱処理工程を行う。上記第3の熱処理工程は、図5に示すように、焼結成形された上記円盤状の固体電解質を、400℃〜1000℃の温度で、T2=5〜30時間保持することにより行うことができる。
【0065】
図3の○印でプロットされたように、上記第3の熱処理工程を行うことにより、400℃近傍の温度領域において、格子定数が特異的に変化することがなくなり、100℃〜1000℃における格子定数の温度変化に対する増加率をほぼ一定にすることができる。
【0066】
また、電子顕微鏡観察によって、上記第3の熱処理工程を行った固体電解質における結晶粒の平均径は、1μmであった。上記大きさの結晶粒が得られることから、粒界面密度が大きくなることもなく、高いプロトン伝導度を確保できる。本実施形態では、400℃〜800℃における、プロトン伝導度が1mS/cm〜60mS/cmであった。
【0067】
また、上記固体電解質2aの室温での格子定数は4.223Åであった。上記格子定数を備えていることにより、適切なイットリウム添加量と400℃近傍の格子定数及び熱膨張率に特異な変化が生じないことを確認できる
【0068】
なお、図3に示す実施形態においては、上記固体電解質の100℃〜1000℃における格子定数の温度変化に対する増加率が、約3.8×10−5Å/℃となっているが、3.3×10−5Å/℃〜4.3×10−5Å/℃の範囲に設定することができる。これにより、100℃〜1000℃における平均熱膨張率を、5×10−6(1/K)〜9.8×10−6(1/K)に設定することが可能となる。
【0069】
なお、上記第3の熱処理工程は、図5に示すように、上記焼結工程と別途に行うことができる。また、図6に示すように、上記焼結工程と上記第3の熱処理工程とを連続して行うこともできる。
【0070】
第3の熱処理工程を終えた円盤状の固体電解質の一方の側面にアノード電極層3が形成され、他方の側面にカソード電極層4が形成される。
【0071】
本実施形態では、アノード電極層3を構成するアノード電極材料として、Ni−BZY(ニッケルを添加したイットリウム添加ジルコン酸バリウム)が採用される。上記Niの配合量は、アノード電極層(ニッケルを添加したイットリウム添加ジルコン酸バリウム)に対して、30wt%〜70wt%に設定することができる。なお、上記BZYは、第3の熱処理を施した本実施形態に係る上記固体電解質の粉体を採用するのが好ましい。アノード電極材料積層工程は、NiOとBZYとからなる粉末を、ボールミルで粉砕混合した後に溶剤に溶かしてペースト化し、スクリーン印刷等によって上記固体電解質焼結体の他側に塗布することにより行うことができる
【0072】
一方、第2の電極材料としてPt(プラチナ)又はLSM(ランタンストロンチウムマンガナイト:La0.6Sr0.4MnO)からなる電極材料を採用することができる。
【0073】
上記電極材料を、上述した製造方法によって形成された円盤状の固体電解質焼結体の表裏に所定の厚みでそれぞれ積層し、所要の温度に加熱して焼結させることにより、固体電解質積層体を形成することができる。たとえば、アノード電極層3を構成する上記材料を50μmで積層形成し、カソード電極層4を構成する上記材料を50μmで積層形成することができる。その後、上記電極層を構成する材料の焼結温度に加熱して所定時間保持することにより、上記固体電解質層2の両側にアノード電極層3とカソード電極層4とが形成された、固体電解質積層体1を形成することができる。なお、上記アノード電極層3を焼結する電極材料焼結工程とカソード電極層4を焼結する電極材料焼結工程とを、一度に行うこともできるし、それぞれ別途に行うこともできる。
【0074】
上記電極層3,4を焼結するのに必要な温度は、約1000℃である。本実施形態では、上記固体電解質に第3の熱処理が施されているため、100℃〜1000℃の温度範囲において、格子定数の温度変化に対する増加率が一定である。また、格子定数に対応して熱膨張率も一定となっている。このため、電極層3,4を焼結形成する際に、固体電解質層2と電極層3,4との境界面に、上記熱膨張率の相異から剪断応力や歪が大きくなることはない。このため、固体電解質層にクラックが生じたり、電極層が剥離することなく、固体電解質積層体を形成することができる。また、内部応力等の発生も抑制されるため、耐久性の高い固体電解質積層体を形成することができる。
【0075】
上述した実施形態では、まず固体電解質層2を構成する円盤状の焼結体を形成し、この円盤状の焼結体を支持部材として電極層3,4を積層形成したが、製造方法は上記方法に限定されることはない。
【0076】
たとえば、まず、図7に示すアノード電極層23を形成し、このアノード電極層23を支持部材として、上記固体電解質層22及びカソード電極層24を順次積層形成する手法を採用することができる。
【0077】
上記アノード電極成形体23は、たとえば、BaCO3と、ZrO2と、Y23を合成したBZYとNiとを混合するアノード電極材料調整工程と、上記アノード電極材料を圧縮成形してアノード電極層となるアノード電極成形体を形成するアノード電極成形工程とにより形成することができる。この製造方法においては、アノード電極成形体23が、固体電解質層22及びカソード電極層24の支持部材となるため、アノード電極成形体の厚みが、大きく設定される。たとえば、500μm〜1mm程度に設定するのが好ましい。
【0078】
上記アノード電極成形体に固体電解質層を積層形成する手法は以下のように行うことができる。すなわち、上述した製造方法と同様に、上記第1の粉砕工程と、上記第1の熱処理工程と、上記第2の粉砕工程と、上記第1の圧縮成形工程と、上記第2の熱処理工程と、上記第3の粉砕工程とを行い、BZYの粉砕物を形成する。
【0079】
次に、上記粉砕物をペースト化するペースト化工程と、上記ペースト化された粉砕物を、上記アノード電極成形体の一側に積層する固体電解質積層工程とを行う。この実施形態では、上記固体電解質層22は支持部材とはならないため、厚みを、10μm〜100μmと小さく設定できる。また、上記固体電解質積層工程はスクリーン印刷法等により行うことができる。
【0080】
そして、上記固体電解質積層工程において成形された積層体を、酸素雰囲気下、1400℃〜1600℃の温度で、少なくとも20時間熱処理するアノード電極−固体電解質焼結工程と、上記アノード電極−固体電解質焼結工程を終えた積層体を、上記アノード電極−固体電解質焼結工程より低い温度で所定時間保持する第3の熱処理工程とが行われる。上記アノード電極−固体電解質焼結工程は、第1の実施形態と同様に、酸素雰囲気下、1400℃〜1600℃の温度で、少なくとも20時間熱処理することにより行うことができる。また、上記第3の熱処理工程も、第1の実施形態と同様に、400℃〜1000℃の温度で、5〜30時間(T2)保持することにより行うことができる。
【0081】
上記第3の熱処理工程を終えた薄膜状の固体電解質の一側に、たとえば、上述したカソード電極材料を積層するカソード電極材料積層工程と、上記カソード電極材料の焼結温度以上に加熱するカソード電極焼結工程とを行う。上記カソード電極焼結工程は、上述した実施形態と同様に行うことができる。これら工程によっても上述した固体電解質積層体21を形成することができる。
【0082】
上述したように、本実施形態に係る上記固体電解質2は、400℃〜800℃における、プロトン伝導度が1mS/cm〜60mS/cmである。このため、上記固体電解質積層体を備える燃料電池を600℃以下の温度で使用しても、充分な発電能力を確保することができる。また、固体電解質層と電極層との間に、大きな内部応力や内部歪が生じることもないため、固体電解質積層体の耐久性も高く、充分な性能を備える燃料電池を構成することが可能となる。
【0083】
本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
焼結性が良く、また、プロトン伝導性が高いため600℃以下の温度で作動する燃料電池に適用できるイットリウム添加ジルコン酸バリウムからなる固体電解質を提供できる。
【符号の説明】
【0085】
1 固体電解質積層体
2 固体電解質層
3 第1の電極層
4 第2の電極層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7