特許第5936912号(P5936912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936912
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20160609BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20160609BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   E03C1/22 C
   E03C1/23 Z
   A47K1/14 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-114437(P2012-114437)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-241748(P2013-241748A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】相原 雅俊
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−317118(JP,A)
【文献】 特開2001−020340(JP,A)
【文献】 特開2008−063840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12 − 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的な機構によって管口または孔を開閉する栓装置であって、
前記管口または孔をふさぐための蓋体と、
前記蓋体に開閉動作を行わせるための開閉機構と、
前記蓋体に取り付けられた第1の磁石または磁性体と、
前記開閉機構に取り付けられ、前記第1の磁石または磁性体との間で作用する磁力によって前記蓋体を該開閉機構に磁力吸着させる第2の磁石または磁性体とを備え
前記第1の磁石または磁性体は、前記蓋体の中央裏側に取り付けられ、
前記第2の磁石または磁性体は、前記開閉機構の前記蓋体を支持する先端部分に取り付けられている栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の栓装置であって、
さらに、前記開閉機構への前記蓋体の取付位置を規制する規制機構を備える栓装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の栓装置であって、
前記第1または第2の磁石または磁性体の少なくとも一方は、露出しない状態で取り付けられている栓装置。
【請求項4】
請求項1〜3記載の栓装置であって、
前記第2の磁石は、前記開閉機構の前記蓋体を支持する先端部分に対して自在に動く形ではなく固定されている栓装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の栓装置であって、
前記蓋体の中央裏側には、前記第1の磁石または磁性体の外形と同程度となる内径を有する突部が形成されており、
前記第1の磁石または磁性体は、前記突部の内側に保持されている栓装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の栓装置であって、
前記第1の磁石および前記第2の磁石は、それぞれ径方向に着磁された円形磁石である栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口などの管口や孔に取り付けられ、機械的に開閉可能な機構を備える栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水口などを機械的に開閉可能な排水口装置として、特許文献1記載の装置などが存在した。
図7は従来技術としての排水口装置の断面図である。浴槽の底面に設けられた排水口付近を拡大して示した。この排水口装置では、支柱Lの先端部L1を、蓋体Vに設けられたツメV1にはめ込むことによって、支柱Lに蓋体Vが一体的に取り付けられている。支柱Lには、上下動させるためのレリースワイヤWが接続されている。レリースワイヤWを操作することによって、支柱Lおよび蓋体Vを上下動させることができ、排水口を開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−246903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水口装置においては、蓋体Vの開閉を着実に行う必要がある。このため、従来技術においては、蓋体VのツメV1の弾性力は強く、蓋体Vが支柱Lに固く保持されるよう構成されていた。蓋体Vは、洗浄やメンテナンスのため、着脱することがあるが、蓋体Vが支柱Lに固く保持される結果、蓋体Vを支柱Lから脱着するのは容易ではなかった。
従って、蓋体Vを支柱Lから取り外す際に、無理な力がかかり、蓋体Vまたは支柱Lを破損するおそれがあった。また、蓋体Vの支柱Lへの取付不良が生じ、排水口からの漏水が生じるおそれがあった。一般消費者が排水口装置を使用する場合には、これらの不具合が生じるおそれは、一層高かった。
かかる課題は、排水口装置に限るものではなく、管口または孔を機械的に開閉する種々の栓装置に共通の課題であった。本発明は、かかる課題に鑑み、栓装置において、蓋体の脱着を容易かつ確実に行い得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
機械的な機構によって管口または孔を開閉する栓装置であって、
前記管口または孔をふさぐための蓋体と、
前記蓋体に開閉動作を行わせるための開閉機構と、
前記蓋体に取り付けられた第1の磁石または磁性体と、
前記開閉機構に取り付けられ、前記第1の磁石または磁性体との間で作用する磁力によって前記蓋体を該開閉機構に磁力吸着させる第2の磁石または磁性体とを備えるものである。
【0006】
本発明の栓装置においては、蓋体と開閉機構とを磁力吸着することができる。従って、蓋体を取り外す際に破損が生じる可能性を抑制できる。また、磁力が作用する範囲に蓋体を近づけるだけで、容易かつ確実に蓋体を開閉機構に取り付けることができる。
本発明において栓装置は、種々の管口または孔に取り付けることができる。例えば、浴槽や洗面台などの槽体から排水するための排水口、または油、粉体、気体を排出するための各種排出口などが挙げられる。
磁石または磁性体(以下、「磁石等」と総称することもある)も種々の組合せで設けることができる。蓋体および開閉機構の双方に磁石を設けても良いし、いずれか一方を鉄その他の磁性体としてもよい。蓋体および開閉機構の双方に磁石を設ける場合、その極性は、吸着方向に磁力が作用する向きとする。
【0007】
本発明においては、さらに、前記開閉機構への前記蓋体の取付位置を規制する規制機構を備えるものとしてもよい。
管口または孔を閉じるためには、蓋体の位置が重要となる。上記態様によれば、規制機構によって蓋体の取付位置が規制されるため、蓋体を適切な位置に取り付けることができる。
規制機構は、種々の構造が可能である。例えば、開閉機構に軸状の部分があり、ここに蓋体を取り付ける場合、規制機構は、当該軸状の部分と蓋体の中心を一致させるための機構とすることができる。軸状の部分に挿入する部材、または軸状の部分を挿入する部材を蓋体に設けた構造などが該当する。
また、蓋体および開閉機構に、厚み方向に着磁した磁石を用いる場合、これらの磁石を同一の平面形状とすることを規制機構として適用してもよい。相互の磁石が同一形状の場合は、相互の平面形状の図心が略一致する状態が安定的な吸着位置となるため、規制機構としての機能を奏することになるのである。
【0008】
本発明においては、
前記第1または第2の磁石または磁性体の少なくとも一方は、露出しない状態で取り付けられているものとしてもよい。
こうすることにより、磁石または磁性体の汚損を抑制することができ、磁力の低下を抑制することができる。
上記態様における構造としては、磁石または磁性体を取り付けた部分を覆う蓋部材、被覆部材を設けるものとしてもよいし、蓋体または開閉機構に中空部分を設け、ここに磁石等を封入する構造としてもよい。
【0009】
本発明において、第1および第2の磁石または磁性体の取り付けは種々の構造を採ることができる。
第1の構造として、
前記第1の磁石または磁性体は、前記蓋体の中央裏側に取り付けられ、
前記第2の磁石または磁性体は、前記開閉機構の前記蓋体を支持する先端部分に取り付けられているものとしてもよい。
かかる構造によれば、蓋体と開閉機構との取り付け部分に、直接磁力を効率的に作用させることができ、蓋体を確実に取り付けることができる。
【0010】
第2の構造として、
前記第2の磁石または磁性体は、前記開閉機構内に設けられた中空部分に、可動に設けられているものとしてもよい。
かかる構造によれば、中空部分に設けた磁石等を動かすことによって、蓋体を動作させることができる。また、開閉機構の磁石等は中空部分に設けられているため、排出される水等による汚損を防ぐこともできる。
【0011】
第3の構造として、
前記第2の磁石または磁性体は、前記開閉機構内から前記蓋体に作用する磁力を吸着方向/反発方向に変え得るよう極性が可変な状態で設けられているものとしてもよい。
かかる構造によれば、開閉機構内の磁石等の極性を変えることによって磁力の作用する方向を変化させ、蓋体を動作させることができる。この結果、蓋体を動作させるための開閉機構のストロークを、抑えることができ、装置の小型化を図ることができる。
磁石等の極性を変化させる構造としては、例えば、磁石等を180度回転させる構造とすることができる。また、開閉機構内の磁石等を電磁石で構成し、その電流の向きを反転させる構造としてもよい。
【0012】
本発明において、上述の種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はない。その一部を省略等したり、適宜、組合せたりして構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】排水口装置の全体構成を示す説明図である。
図2】排水口部分の拡大図である。
図3】蓋体および作動部の拡大断面図である。
図4】実施例2としての蓋体および作動部の拡大断面図である。
図5】実施例3としての蓋体および作動部の拡大断面図である。
図6】実施例3の変形例としての蓋体および作動部の拡大断面図である。
図7】従来技術としての排水口装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
本発明の栓装置につき、浴槽の排水口に取り付ける排水口装置として構成した場合の実施例を以下に示す。
図1は、排水口装置1の全体構成を示す説明図である。排水口装置1は、浴槽100の底板101の排水口104を開閉するための装置である。開閉機構4を構成する操作ボタン2は、槽体102の上部のリム103に設けられている。操作ボタン2を押し下げると、その動作がレリースワイヤ3で伝達され、排水口装置1を機械的に開閉することができる。
【0015】
図2は、排水口部分の拡大図である。
図2(a)は、全体構造を示している。図示する通り、排水口104の下部には、保持部材8およびシール10を介して、配管に接続するための配管継手106が取り付けられている。保持部材8は、排水口装置1を組み付けるためのホルダー7を配管継手106の内側に固定する役割も奏している。ホルダー7の内部には、排水口104を閉じるための蓋体6を開閉する機構を支持する支持部材9がとりつけられる。
支持部材9の内側には、レリースワイヤ3の動作によって上下動する作動部5が挿入されており、その先端には、排水口104を塞ぐための蓋体6が取り付けられている。
【0016】
図2(b)はホルダー7の斜視図である。図示する通り、ホルダー7は環状の部材であり、その内側には、突起73が4箇所に設けられている。
図2(c)は支持部材9の斜視図である。図示する通り、支持部材9は、中心に作動部5が挿入されるシリンダ91を有している。シリンダ91には、可撓性を持たせ、作動部5を挿入しやすくするためのスリット91Cが設けられている。また、シリンダ91の内側上方には、作動部5が突出することを規制するためのストッパ91Aが設けられている。
シリンダ91の外側には、4方向に突出したアーム部92が設けられている。各アーム部92が、ホルダー7の突起73(図2(b)参照)の上に乗るように、支持部材9はホルダー7に組み付けられる。
【0017】
図3は、蓋体6および作動部5の拡大断面図である。図の上方に蓋体6、下方に作動部5を分離した状態で示した。作動部5については、断面ではなく外観側面図を示してある。蓋体6は、図中に破線の矢印で示した通り、指示部5の頂部に取り付け可能となっており、後述する通り、両者は磁力によって吸着される。本実施例では、蓋体6および作動部5ともに平面形状は円形であるが、その他の形状としてもよい。
作動部5は、樹脂で成形されており、円筒状の筒状部材52と、支柱51を有している。筒状部材52は、支持部材9に挿入されており、支持部材9がホルダー7に取り付けられることにより強固に固定されている。
支柱51は、筒状部材52の内側をレリースワイヤ3の動作に従って上下動する。支柱51の頂部には、磁石53が接着されている。
磁石53の取り付けは、接着以外の方法をとってもよい。支柱51に磁石53の外形と同程度の凹部を形成し、ここに磁石53をはめ込む方法をとってもよい。さらに、凹部に磁石53をはめ込んだ後、蓋をし、磁石53が露出しないようにしてもよい。また、別の方法として、磁石53を支柱51の頂部に接着した後、その外周を樹脂で被覆してもよい。いずれの方法をとることも可能であるが、支柱5に対して蓋体6を規定された位置に固定可能とするためには、磁石53が支柱5に対して自在に動く形で取り付けるのではなく、磁石53を支柱5に対して固定できる方法をとることが好ましい。
【0018】
蓋体6は、樹脂または金属で形成することができる。蓋体6の本体61は上方に凸に湾曲した円盤状の部材である。以下では、凸側になっている上面を表、逆側の下面を裏面と呼ぶこともある。
蓋体6の裏面には、ゴム製の円環状のパッキン62が取り付けられている。また、最も凸になっている頂部の裏面には、円盤形状の磁石63が接着されている。
【0019】
裏面にはさらに2つの円筒状の突部64、65が設けられている。
突部65は、その内側に磁石63を保持するために設けられている。本実施例では、磁石63は円盤状のものを用いているから、突部65は、その内径が、磁石63の外形と同程度となる筒状とすることが好ましい。こうすることによって磁石63を、その位置が径方向にずれないよう保持することができ、蓋体6を支柱51の適切な位置に固定可能となる。突部65にはめ込むことによって磁石63を十分に保持できる場合には、磁石63の接着を省略してもよい。
実施例では、磁石63は露出しているが、突部65に蓋をして磁石63を覆うようにしてもよいし、磁石63を取り付けた後、磁石の外周を樹脂で被覆してもよい。
突部65は、蓋体6に必須の構成ではなく、蓋体6の裏面に磁石63が十分堅固に保持できる場合は、突部65を省略した形状としてもよい。
【0020】
突部64は、図示する通り、蓋体6を支柱51に取り付けた際に、図中に破線で示した突部64aの部位に位置し、保持部材9の外周にはまる円筒状の部位である。突部64の内径は、蓋体6の上下動を妨げないよう、保持部材9の外径よりもわずかに大きい程度となっている。また、突部64の突出長は、排水口を閉じる方向に蓋体6を引き込んだ状態でも保持部材9に干渉しない程度とされている。
このように、突部64が保持部材9にはまることによって、蓋体6の径方向の位置が規制され、ひいては支柱51と蓋体6との位置関係も規制される。この結果、蓋体6が排水口を偏りなく塞ぐことができる。
実施例では、突部64を円筒状の形状としたが、上述の規制作用を奏し得るものであればよく、突部64に代えて、平面または湾曲面の壁を周方向に複数箇所設ける構造としてもよい。また、蓋体6の径方向の位置を規制する構造としては、突部64に代えて、保持部材9の内側に挿入される部材を設けてもよいし、突部65の突出長を支柱51の磁石53の外周にはまる程度に長くしてもよい。これらの規制機構としての種々の構造は、蓋体6に必須のものではなく、省略してもよい。
【0021】
実施例では、蓋体6と支柱51とを、磁石53、63の磁力によって吸着する。従って、磁石53、63の極性は、吸着方向に磁力Fが作用するようにしておくことが好ましい。例えば、磁石53、63がそれぞれ厚み方向に着磁している場合は、N極とS極とが対向するよう磁石53、63を取り付ければよい。
磁石53、63は、径方向に着磁しているものを用いてもよい。この場合、蓋体6を平面内で回転させれば、いずれかの位置で蓋体6と支柱51とが吸着する。従って、蓋体6および支柱51を製造する際に磁石53、63の極性を意識する必要がなくなる利点がある。また、径方向に着磁させてある場合には、蓋体6を支柱51から取り外す際には、ネジを緩めるかのように蓋体6を回転させることによって、磁力が反発し容易に取り外し可能となる。かかる動作は、はずすための操作として一般消費者の感覚にも合う利点もある。
磁石53、63の素材は、種々選択可能であるが、蓋体6を堅固に保持可能とするため、ネオジム系を用いることが好ましい。
蓋体6を支柱51に磁力で吸着させるためには、磁石53、63の一方を、鉄などの磁性体に置き換えても良い。
【0022】
以上で説明した実施例1の排水口装置によれば、蓋体6を磁力で支柱51に吸着させることができる。従って、蓋体6の脱着が容易となり、取り外し時の破損や、取り付け不良に伴う漏れなどの不具合を抑制することができる。
また、排水口装置に、蓋体6と支柱51との取り付け位置を規制する規制機構を設けることにより、蓋体6と支柱51の中心が一致する位置などの適正な位置に蓋体6を取り付けることができる。こうすることで、蓋体6が排水口を偏りなく塞ぐことが可能となる。
【実施例2】
【0023】
図4は、実施例2としての蓋体6aおよび作動部5aの拡大断面図である。実施例1と同様、蓋体6aを磁力で作動部5aに吸着させる構造であるが、磁石の取り付け構造が相違する。
作動部5aは、樹脂で成形されており、支持部材9に挿入され固定された円筒状の筒状部材52aと、レリースワイヤ3の動作によって上下動する支持部材51aを有している。
実施例1と異なり、筒状部材52aの頂部は、完全に閉じた状態となっている。
支持部材51aの頂部には、磁石53aが接着されている。磁石53aについては、実施例1と同様、種々の取り付け方法をとることができる。
【0024】
蓋体6aは、樹脂または金属で形成され、実施例1と同様、裏面には、ゴム製の円環状のパッキン62が取り付けられている。
ただし、実施例1と異なり、裏面の突部65aには、磁石はとりつけられていない。実施例2では、蓋体6aの強度を保つために突部65aを設けてあるが、省略することもできる。
蓋体6aの裏面には、実施例1と同様、保持部材9の外周にはまる円筒状の突部64aが設けられている。突部64aの先端には、突部64aと同形の環状の磁石63aが接着されている。突部64aおよび磁石63aの内径は、蓋体6aの上下動を妨げないよう、保持部材9の外径よりもわずかに大きい程度となっている。また、突部64aと磁石63aを合わせた突出長は、排水口を閉じる方向に蓋体6aを引き込んだ状態でも保持部材9に干渉しない程度とされている。
磁石63aは、環状の磁石を接着する方法の他、磁石粉末を樹脂に混ぜた樹脂磁石で構成してもよい。樹脂磁石を用いることにより、突部64aおよび磁石63aを比較的容易に成形することができる利点がある。
【0025】
実施例2では、蓋体6aと支持部材51aとを、磁石53a、63aの磁力F2によって吸着する。実施例1では軸方向に磁力を作用させたのに対し、実施例2では径方向に磁力を作用させる点で相違する。磁石53a、63aの極性は、吸着方向に磁力F2が作用するようになっており、例えば、磁石53a、63aともに径方向に着磁したものを用いる方法が可能である。また、磁石53a、磁石63aともに厚み方向(図の上下方向)に着磁したものを用いてもよい。例えば、磁石53aが上側N極、下側S極に着磁している場合には、磁石63aは、下側S極、上側N極となるよう着磁させておけばよい。こうすれば、取り付け過程で一時的に蓋体6aと支持部材51aとの間に斥力が発生するものの、適正な位置まで蓋体6aを押し込めば、両者を磁力吸着させることができる。
なお、実施例1と同様、磁石53a、63aの一方を、鉄などの磁性体に置き換えても良い。
【0026】
実施例2の排水口装置においても、実施例1と同様、蓋体6aを磁力で支持部材51aに磁力吸着させることができる。実施例2では、磁石53aは完全に筒状部材52aの内部に封入された状態であるため、排水などによる汚損を防止することができる利点もある。
【実施例3】
【0027】
図5は、実施例3としての蓋体6および作動部5bの拡大断面図である。蓋体6の構造は実施例と同一であるが、作動部5bの構造が相違する。
図5(a)に示す通り、作動部5bは、樹脂で成形されており、支持部材9に挿入され固定された円筒状の筒状部材52bと、レリースワイヤ3の動作によって上下動する支持部材51bを有している。
実施例2と同様、筒状部材52bの頂部は、完全に閉じた状態となっている。筒状部材52bの内部には、段部52cが設けられている。段部52cの作用については後述する。
支持部材51bの頂部には、突出部51cが設けられており、支持部材51bの中心軸と直交する軸周り(即ち、図5(a)の平面内)に磁石53bを回転可能に軸支している。
【0028】
実施例3では、磁石53bからの斥力によって排水口を開口する方向に動作させる。以下、この動作について説明する。
図5(a)は、排水口を開口する状態を示している。支持部材51cが上方にある場合には、磁石53bと磁石63との間に斥力F3が作用するようにしておく。例えば、磁石63の下面がS極であれば、図5(a)の状態では、磁石53bの上面がS極となるようにしておく。磁石63は面方向に着磁しており、磁石53bは径方向(図中の長手方向)に着磁したものを用いる。
こうすることにより蓋体6は、支持部材51bから反発を受け、開口部を開くことができる。
【0029】
次に、図5(b)に示すように、支持部材51bを矢印Dに示すように下側に引き込む。磁石53bには、斥力F3が作用しており不安定な姿勢にあるため回転しようとする。しかし、段部52cによって図中の時計回りの回転は規制されている。従って、磁石53bは、矢印R方向に回転する。この結果、蓋体6への斥力F3は作用しなくなり、蓋体6で排水口を塞ぐことができる。また、段部52cは、水平状態よりも斜めに傾いた状態、即ちこの例ではN極がS極よりも上になる状態で磁石53bの回転を規制する寸法で構成されている。従って、磁石53bは回転した結果、斜めに保持され、図のF4に示すように中心よりもやや偏った状態で吸着力を作用させることができる。この磁力は、斥力に比して弱いが、蓋体6は水圧で排水口に押しつけられるため、蓋体6を十分保持することが可能である。
再度、排水口を開く場合には、支持部材51bを図5(a)の状態にスライドすればよい。この過程で、磁石53bは、段部52cにより回転し、蓋体6との間に斥力F3が作用し、排水口を開けることができる。
実施例3では、支持部材51bが上側にあるとき(図5(a)の状態)に斥力が作用するよう、磁石53b、63の極性を定めた。これは、浴槽などの排水口への取り付けを考えた場合、排水口を開ける際には、水圧に抵抗するだけの強い斥力が必要となるからである。
【0030】
図6は、実施例3の変形例としての蓋体6および作動部5bの拡大断面図である。
実施例2と同様、筒状部材52bの頂部は、完全に閉じた状態となっている。筒状部材52bの内部には、突起52dが設けられている。
【0031】
図6(a)は、排水口を開口する状態を示している。支持部材51cが上方にある場合には、磁石53bと磁石63との間に斥力F3が作用するようにしておく。例えば、磁石63の下面がS極であれば、図6(a)の状態では、磁石53bの上面がS極となるようにしておく。
【0032】
次に、図6(b)に示すように、支持部材51bを矢印Dに示すように下側に引き込む。実施例3の筒状部材52bの内側には突起52dが設けられているから、引き込みの過程で、磁石53bは、矢印R方向に回転し、極性が反転する。つまり、引き込み前は上側がN極であったものが、引き込み後は、上側がS極となる。この結果、蓋体6を吸着する方向に磁力F4を作用させることができ、蓋体6で排水口を塞ぐことができる。
再度、排水口を開く場合には、支持部材51bを図6(a)の状態にスライドすればよい。この過程で、磁石53bは、突起52dにより回転し、極性が反転する。この結果、蓋体6との間に斥力F3が作用し、排水口を開けることができる。
【0033】
実施例3の排水口装置においても、実施例1と同様、蓋体6を磁力で支持部材51bに磁力吸着させることができる。また、実施例3では、磁石53bの極性を反転させることによって蓋体6を開閉することができるため、支持部材51bの上下動のストロークを、蓋体6の上下動のストロークよりも小さくすることが可能となり、装置の小型化を図ることができる利点がある。
実施例3では、永久磁石を用いた例を示したが、磁石53bとして電磁石を用いても良い。こうすれば、電流の向きを反転させるだけで磁石53bの極性を反転させられるため、構造を簡略化することができる。電磁石53bを用いる場合、水圧で蓋体6が十分に排水口に抑えられる程度に浴槽に水がたまった後は、蓋体6を吸着させておく必要はなくなるから、電磁石53bへの通電を停止してもよい。こうすれば、省電力化を図ることもできる。
【0034】
以上、本発明の種々の実施例について説明した。以上の実施例で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、一部を省略したり、適宜、組み合わせて用いたりしてもよい。
また、本発明は、上述の実施例に限らず、種々の変形例をとることができる。
例えば、実施例では、円形の排水口に適用する例を示したが、本発明の排水口装置は、非円形の排水口に適用することもできる。また、排水口以外にも、油、気体など種々の管口や孔の開閉に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、排水口などの管口や孔に取り付けられ、機械的に開閉可能な機構を備える栓装置の着脱構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…排水口装置
2…操作ボタン
3…レリースワイヤ
4…開閉機構
5、5a、5b…作動部
6、6a…蓋体
7…ホルダー
8…保持部材
9…支持部材
51、51a…支柱
51b…支持部材
51c…突出部
52、52a、52b…筒状部材
52c…段部
52d…突起
53、53a、53b…磁石
61…本体
62…パッキン
63、63a…磁石
64、64a、65、65a…突部
73…突起
91…シリンダ
91A…ストッパ
91C…スリット
92…アーム部
10…シール
100…浴槽
101…底板
102…槽体
103…リム
104…排水口
106…配管継手

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7