(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の溝は、前記第1の溝と前記第2の溝との交点または接点のうち前記研磨面の中心からの距離が同じである少なくとも2つの交点または接点間を結ぶことを特徴とする請求項2に記載の研磨パッド。
前記研磨面は円形状に形成されており、前記第1の基礎円の半径aおよび前記第2の基礎円の半径bは、前記研磨面の半径をrとしたときに、a≦r/4.6、b≦r/2の関係をそれぞれ満たすことを特徴とする請求項8に記載の研磨パッド。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明を適用した研磨パッドの第1の実施の形態について説明する。
【0017】
(構成)
図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、ポリウレタン樹脂製のウレタンシート2(樹脂製シート材)を備えている。ウレタンシート2は、被研磨物を研磨加工するための研磨面Spを有している。ウレタンシート2は、イソシアネート基含有化合物と、予めポリオール化合物に水を分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物と、イソシアネート基含有化合物、分散液およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体と、を混合した混合液を型枠に注型し発泡、硬化させたポリウレタン発泡体をスライスすることで形成されている。すなわち、研磨パッド10を構成するウレタンシート2は、乾式成型法で形成されている。
【0018】
ウレタンシート2の内部には、乾式成型時に、分散液中の水と非反応性の気体とにより、断面が円形状ないし楕円形状の複数の発泡(セル)3が略均等に分散した状態で形成されている。すなわち、ウレタンシート2は発泡構造を有している。ウレタンシート2の厚み方向では、複数の発泡3が重畳するように形成されている。ウレタンシート2の厚み方向と交差する2方向では、発泡3が略均等に形成されている。発泡3は平均孔径が30〜200μmの範囲に形成されている。ウレタンシート2がポリウレタン発泡体をスライスすることで形成されているため、研磨面Spでは発泡3の一部が開口しており、開孔4が形成されている。開孔4が発泡3の開口で形成されるため、開孔4の平均孔径が30〜200μmの範囲となる。ウレタンシート2の厚さは0.5〜2.0mmの範囲に設定されている。
【0019】
ウレタンシート2の研磨面Sp側には、研磨加工時に供給される研磨液(スラリ)を排出、流入させ、研磨面Sp内に保持しつつ分散させるために、形状の異なる3種類の溝8が形成されている。
図2に示すように、溝8は、研磨加工時の研磨パッド10の回転方向(
図1の矢印Rd、以下、回転方向Rdと略記する。)に対し、前方側に凸状の複数の排出溝8A(第1の溝)、後方側に凸状の複数の流入溝8B(第2の溝)、および、排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Pi間を結び研磨面Spの中心Poを中心とする円形状の1つの分散溝8C(第3の溝)で構成されている。本例では、排出溝8Aが
図2の符号8A1、8A2、・・・、8A8で示される8本で構成され、流入溝8Bが符号8B1、8B2、・・・、8B8で示される8本で構成されている。なお、
図2において、わかりやすくするために、分散溝8Cを排出溝8A、流入溝8Bより太線で示しているが、線の太さが溝幅を表すものではなく、溝幅は各溝について任意に設定することができる。
【0020】
排出溝8Aは、研磨面Spの中心部から外周縁にわたるインボリュート曲線状に形成されている。また、流入溝8Bは、中心Poを通る任意の直線を対称軸としたときに排出溝8Aと線対象形に形成されている。すなわち、流入溝8Bは、排出溝8Aを反転させた形状であり、突出する方向が排出溝8Aと反対のインボリュート曲線状に形成されている。排出溝8A、流入溝8Bの中心側の始点は、いずれも、中心Poを中心とする基礎円Bcの円周上に位置している。
【0021】
ここで、インボリュート曲線状に形成するときの形成位置について説明する。
図3に示すように、中心Poを原点とするXY直交座標系において、中心Poを中心とする基礎円Bcは、半径aを有している。8本の排出溝8Aのうちの1本目の排出溝8A1は、中心側始点が基礎円Bcの円周上に位置している。この始点と中心Poとを結ぶ線分を基準線とする。排出溝8Aのうちの2本目の排出溝8A2は、始点が排出溝8A1の始点から基礎円Bcの円周上を回転した位置に位置しており、基準線からの回転分が位相角φで表される。この位相角φは、排出溝8Aの形成本数をM本とした場合のN番目の溝において、φ=2Nπ/Mで表される。また、8本の排出溝8A上の任意の点は、媒介変数θ、位相角φ、半径aにより下記式(1)で表される。式(1)において、媒介変数θは負の数値をとらない(θ≧0)。また、半径aは、研磨面Spの半径をrとしたときに、a≦r/4.6の関係を満たしている。これはスラリの好適な排出効果を得るためのものであり、半径aを半径rの1/4.6倍以下とすることで、排出溝8Aを研磨面Sp内で半周以上にわたり形成することができる。換言すれば、半径aが半径rの1/4.6倍を超えると、十分な曲率が得られず、スラリの排出効果を低下させることとなる。
【0023】
一方、流入溝8Bは、排出溝8Aと同様に、基礎円の半径b、媒介変数θ、位相角φにより下記式(2)で表される。式(2)において、媒介変数θは負の数値をとらない(θ≧0)。また、半径bは、研磨面Spの半径をrとしたときに、b≦r/2の関係を満たしている。これはスラリの好適な流入効果を得るためのものであり、半径bを半径rの1/2倍以下とすることで、研磨面Spの半径rを基準として半分以上の領域に流入溝8Bを形成することができる。換言すれば、半径bが半径rの1/2倍を超えると、研磨面Spの中央部に流入溝8Bが形成されず、スラリの流入、拡散性を低下させることとなる。本例では、排出溝8Aと流入溝8Bとが対称形のため、半径aと半径bとを等しく(a=b)したものである。このように形成した排出溝8Aと流入溝8Bとでは、研磨パッド10の大きさにもよるが、通常、少なくとも2箇所の交点Piを有することとなる。本例では、1本の排出溝8A1が8本の流入溝8Bのすべてと交差しており、8箇所の交点Piを有している。
【0025】
分散溝8Cは、上述したように、交点Pi間を結ぶ円形状に形成されている。このため、中心Poからの距離が同じである少なくとも2つの交点Piを通ることとなる。本例では、8箇所の交点Piを結ぶ分散溝8Cが形成されている。
【0026】
また、
図1に示すように、研磨パッド10は、ウレタンシート2の研磨面Spと反対側の面に、研磨機に研磨パッド10を装着するための両面テープ7が貼り合わされている。両面テープ7は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の基材7aの両面にそれぞれ粘着剤が塗着されており粘着剤層(不図示)が形成されている。両面テープ7は、一面側の粘着剤層でウレタンシート2と貼り合わされており、他面側(
図1の最下面側)の粘着剤層が剥離紙7bで覆われている。
【0027】
(製造)
研磨パッド10は、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、予めポリオール化合物に水を分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する準備工程、予めポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物を反応させてイソシアネート基含有化合物を生成し、得られたイソシアネート基含有化合物、分散液、ポリアミン化合物、および、各成分に対して非反応性の気体を混合して混合液を調製する混合工程、混合液を型枠に注型し、型枠内で発泡、硬化させてポリウレタン発泡体を形成する硬化成型工程、ポリウレタン発泡体を複数枚のシート状にスライスした後、一方の表面側(研磨面Spとなる側)に溝8を形成してウレタンシート2を形成する溝形成工程、ウレタンシート2と両面テープとを貼り合わせ研磨パッド10を形成するラミネート工程を経て製造される。以下、工程順に説明する。
【0028】
準備工程では、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する。準備するポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物、分子内に3つのイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物等を用いることができ、これらの2種以上を併用してもよい。一方、ポリオール化合物としては、低分子量ポリオール化合物と高分子量ポリオール化合物とを準備する。低分子量ポリオール化合物としてはジオール化合物、トリオール化合物等であればよく、高分子量ポリオール化合物としてはポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。また、ポリアミン化合物としては、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物を使用することができる。ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、これらの化合物の2種以上を併用してもよい。
【0029】
また、分散液の調製に用いられるポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等の化合物であればよく、低分子量、高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。イソシアネート基含有化合物やポリアミン化合物の溶液の粘度と同程度にすることで混合工程において水の分散を均一化しやすくなるため、数平均分子量500〜3000のポリオール化合物を用いることが好ましい。分散液の調製時には、ポリオール化合物に水を0.01〜6重量%の割合で分散希釈させ、一般的な攪拌装置を使用して水が略均等に分散希釈されるように混合する。使用する水としては、特に制限はないが、不純物等の混入を回避するため、蒸留水を使用することが好ましい。また、分散液の量は、次工程の混合工程で混合するイソシアネート基含有化合物の重量1kgに対して水の量が0.01〜6gの割合となるように準備することが好ましい。水の量が少なすぎると得られるポリウレタン発泡体に形成される発泡の大きさが小さすぎ、反対に多すぎると極端に大きな発泡が形成される。
【0030】
混合工程では、準備工程で準備したポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させることでイソシアネート基含有化合物、すなわち、イソシアネート末端ウレタンプレポリマ(以下、単に、プレポリマと略記する。)を生成させる。プレポリマの生成では、イソシアネート基のモル量を水酸基のモル量より大きくすることで、プレポリマを得ることができる。生成するプレポリマは、粘度が高すぎると、流動性が悪くなり混合時に略均一に混合することが難しくなる。温度を上昇させて粘度を低くするとポットライフが短くなり、却って混合斑が生じて得られるポリウレタン発泡体に形成される発泡3の大きさにバラツキが生じる。反対に、粘度が低すぎると混合液中で気泡が移動してしまい、ポリウレタン発泡体に略均等に分散した発泡3を形成することが難しくなる。このため、プレポリマは、温度50〜80℃における粘度を2000〜20000mPa・sの範囲に調整することが好ましい。例えば、プレポリマの分子量(重合度)を変えることで粘度を調整することができる。プレポリマは、50〜80℃程度に加熱され流動可能な状態とされる。
【0031】
混合工程では、攪拌翼が内蔵された混合槽を備えた混合機を使用し、プレポリマと、分散液およびポリアミン化合物とを混合するときに、プレポリマ、分散液およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体を吹き込み混合液を調製する。この混合機では、攪拌翼が混合槽内の略中央部で上流側から下流側までにわたる回転軸に固定されており、回転軸の回転に伴い攪拌翼が回転し、各成分および非反応性気体を剪断するようにして混合することができる。
【0032】
プレポリマ、ポリアミン化合物の多くがいずれも常温で固体または流動しにくい状態のため、各成分を流動可能となるように加温して供給する。また、非反応性気体中に含まれる水分が混合槽内の反応に関与することを防止するため、非反応性気体は予め水分を除去しておく。供給された非反応性気体が混合槽内で攪拌翼の回転により微細な気泡となり、この気泡が水を分散希釈させた分散液を混合液中で略均等に分散させるバブリング効果を発揮する。また、供給された非反応性気体の一部により発泡3が形成される。非反応性気体の供給量が少なすぎるとバブリング効果が不十分となり水や発泡3の分散状態に偏りが生じやすくなり、反対に多すぎると極端に大きな気泡が生じてしまう。このため、非反応性気体の供給量は、プレポリマ、分散液、ポリアミン化合物の合計重量1kgに対して0.5〜3.4Lの割合となるように調整することが好ましい。非反応性気体としては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等を挙げることができる。
【0033】
各成分を混合槽に供給し、攪拌翼によりある程度混合した段階で非反応性気体を供給する。各成分の粘度が同程度となるように調製されているため、非反応性気体を供給する際には、各成分を混合した溶液の温度50〜80℃における粘度が2000〜20000mPa・sの範囲となる。攪拌翼の剪断速度、剪断回数を調整することで、各成分および非反応性気体を略均等に混合し混合液を調製する。攪拌翼の剪断速度が小さすぎると、得られるポリウレタン発泡体に形成される発泡3の大きさが大きくなりすぎる。反対に剪断速度が大きすぎると、攪拌翼および混合液間の摩擦による発熱で温度が上昇し粘度が低下するため、混合液中の気泡が(成型中に)移動してしまい、得られるポリウレタン発泡体に形成される発泡3の分散状態にバラツキが生じやすくなる。一方、剪断回数が少なすぎると生じる気泡の大きさにムラ(バラツキ)が生じやすく、反対に多すぎると温度上昇で粘度が低下し、発泡3が略均等に形成されなくなる。
【0034】
硬化成型工程では、混合工程で調製された混合液を混合機から連続して型枠に注型する。型枠の大きさは、本例では、1050mm(長さ)×1050mm(幅)×50mm(厚さ)に設定されている。注液された混合液を型枠内で反応硬化させ、発泡させることによりブロック状のポリウレタン発泡体を形成する。このとき、プレポリマと、分散液中のポリオール化合物、ポリアミン化合物との反応によりプレポリマが架橋硬化する。この架橋硬化の進行と同時に、プレポリマのイソシアネート基と分散液に分散希釈された水とが反応することで、二酸化炭素が発生する。架橋硬化が進行しているため、発生した二酸化炭素が外部に抜け出すことなく、発泡3が形成される。
【0035】
溝形成工程では、硬化成型工程で得られたポリウレタン発泡体を複数枚のシート状にスライスする。スライスには、一般的なスライス機を使用することができる。スライス時にはポリウレタン発泡体の下層部分を保持し、上層部から順に所定厚さにスライスする。スライスする厚さは、本例では、0.5〜2.0mmの範囲に設定されている。硬化成型工程で内部に発泡3が略均等に形成されたポリウレタン発泡体が得られるため、スライス後の樹脂シート表面には、発泡3が開口した開孔4が形成される。スライス後の樹脂シートに溝8を形成するときは、例えば、三次元ルータを使用することができる。三次元ルータは、溝形成用のドリルを備えており、ドリルが水平な台上に静置された樹脂シートに対して上方から直交するように軸支されている。この三次元ルータでは、予め設定された溝形成パターンに従い、ドリルが水平方向に(二次元的に)移動可能であり、ドリル自体が垂直方向にも移動可能に構成されている。ドリルを回転させながら樹脂シートに接触させ、水平方向に移動させることで溝が形成される。また、水平方向の移動に合わせて垂直方向に上下させることで溝の深さを変えることができる。溝の幅は、ドリルの径により調整することができる。三次元ルータを用いることでスライス後の樹脂シートに溝8が形成され、ウレタンシート2が得られる。
【0036】
ラミネート工程では、溝形成工程で形成されたウレタンシート2と両面テープ7とが貼り合わされる。所望のサイズの円形状に裁断した後、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い研磨パッド10を完成させる。
【0037】
被研磨物の研磨加工を行うときは、研磨機の研磨定盤に研磨パッド10を装着する。研磨定盤に研磨パッド10を装着するときは、剥離紙7bを取り除き、露出した粘着剤層で研磨定盤に固定する。研磨定盤と対向するように配置された保持定盤に保持させた被研磨物を研磨面Sp側へ押圧すると共に、外部から研磨パッド10の中心側にスラリを供給しながら研磨定盤ないし保持定盤を相対的に回転させることで、被研磨物の加工面が研磨加工される。なお、通常、研磨液の媒体としては水が使用されるが、アルコール等の有機溶剤を混合することも可能である。
【0038】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した研磨パッドの第2の実施の形態について説明する。本実施形態の研磨パッドは、排出溝8A、流入溝8Bの形成パターンが第1実施形態と異なるものである。本実施形態において、第1実施形態と同じ部材、部分、位置には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる箇所のみ説明する(本実施形態以下の実施形態においても同じ。)。
【0039】
図4に示すように、本実施形態では、ウレタンシート2の研磨面Sp側に、回転方向Rdに対し、前方側に凸状の複数の排出溝8A、後方側に凸状の複数の流入溝8B、および、中心Poを中心とする円形状の1つの分散溝8Cで構成される溝8が形成されている。本例では、排出溝8Aが7本で構成され、流入溝8Bが7本で構成されている。また、分散溝8Cは、排出溝8Aと流入溝8Bとの接点Pjを通る1本で構成されている。
【0040】
排出溝8Aは、研磨面Spの中心部から外周縁にわたるインボリュート曲線状に形成されており、中心Poを通る直線Lcに対して一側(
図4の下側)に形成されている。また、流入溝8Bは、直線Lcを対称軸としたときに排出溝8Aと線対象形で、直線Lcに対して他側(
図4の上側)に形成されている。すなわち、流入溝8Bは、突出する方向が排出溝8Aと反対のインボリュート曲線状に形成されている。このため、排出溝8Aと流入溝8Bとが、直線Lc上の接点Pjで接することとなる。
【0041】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した研磨パッドの第3の実施の形態について説明する。本実施形態の研磨パッドは、排出溝8A、流入溝8B、分散溝8Cの形成パターンが第1実施形態と異なるものである。
【0042】
図5に示すように、本実施形態では、ウレタンシート2の研磨面Sp側に、回転方向Rdに対し、前方側に凸状の複数の排出溝8A、後方側に凸状の複数の流入溝8B、および、排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Piを通り中心Poを中心とする同心円状の2つの分散溝8Cで構成される溝8が形成されている。すなわち、分散溝8Cは、
図5の符号8C1、8C2で示される2本で構成されている。本例では、排出溝8Aが8本で構成され、流入溝8Bが4本で構成されている。また、2本の分散溝8C1、8C2は、いずれも排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Piを通り、互いに異なる半径を有している。
【0043】
排出溝8A、流入溝8Bは、突出する方向が互いに反対側のインボリュート曲線状に形成されている。排出溝8Aの中心側始点は基礎円BcAの円周上に位置しており、流入溝8Bの中心側始点は基礎円BcBの円周上に位置している。基礎円BcAと基礎円BcBとでは、異なる半径を有している。すなわち、基礎円BcAの半径aと基礎円BcBの半径bとが、上述したa≦r/4.6、b≦r/2の関係をそれぞれ満たすように設定されている。このため、排出溝8Aと流入溝8Bとでは、曲率が異なるように形成されている。
【0044】
<第4実施形態>
次に、本発明を適用した研磨パッドの第4の実施の形態について説明する。本実施形態の研磨パッドは、流入溝8Bの形成パターンが第1実施形態と異なるものである。
【0045】
図6に示すように、本実施形態では、ウレタンシート2の研磨面Sp側に、回転方向Rdに対し、前方側に凸状の複数の排出溝8A、後方側に凸状の複数の流入溝8B、および、排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Piを通り中心Poを中心とする円形状の1つの分散溝8Cで構成される溝8が形成されている。本例では、排出溝8Aが8本で構成され、流入溝8Bが4本で構成されている。
【0046】
排出溝8Aは、中心側始点が基礎円Bcの円周上に位置するインボリュート曲線状に形成されている。流入溝8Bは、アルキメデスの螺旋状に形成されている。すなわち、XY直交座標系において、4本の流入溝8Bのうちの1本目の流入溝は、中心Poを始点とし、中心Poを通る任意の直線を開始線とする。この開始線が始点におけるアルキメデスの螺旋で形成される曲線に対する接線となる。流入溝8Bのうちの2本目の流入溝は、始点が中心Poであるものの、開始線が1本目の流入溝の開始線から回転した位置に位置しており、その回転分が位相角φで表される。4本の流入溝8B上の任意の点は、媒介変数θ、位相角φ、任意の定数kにより下記式(3)で表される。式(3)において、媒介変数θは負の数値をとらない(θ≧0)。
【0048】
<第5実施形態>
次に、本発明を適用した研磨パッドの第5の実施の形態について説明する。本実施形態の研磨パッドは、流入溝8Bの形成パターンが第1実施形態と異なるものである。
【0049】
図7に示すように、本実施形態では、ウレタンシート2の研磨面Sp側に、回転方向Rdに対し、前方側に凸状の複数の排出溝8A、後方側に凸状の複数の流入溝8B、および、排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Piを通り中心Poを中心とする円形状の1つの分散溝8Cで構成される溝8が形成されている。本例では、排出溝8Aが8本で構成され、流入溝8Bが4本で構成されている。排出溝8Aは、中心側始点が基礎円Bcの円周上に位置するインボリュート曲線状に形成されている。流入溝8Bは、二次曲線状に形成されている。すなわち、XY直交座標系において、4本の流入溝8Bは、中心Poを始点とする二次曲線で表される。
【0050】
<第6実施形態>
次に、本発明を適用した研磨パッドの第6の実施の形態について説明する。本実施形態の研磨パッドは、分散溝8Cの形成パターンが第1実施形態と異なるものである。
【0051】
図8に示すように、本実施形態では、ウレタンシート2の研磨面Sp側に、回転方向Rdに対し、前方側に凸状の複数の排出溝8A、後方側に凸状の複数の流入溝8B、および、排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Piを通り中心Poを中心とする多角形状の1つの分散溝8Cで構成される溝8が形成されている。
【0052】
排出溝8A、流入溝8Bは、突出する方向が互いに反対側のインボリュート曲線状に形成されている。排出溝8Aの中心側始点および流入溝8Bの中心側始点は、いずれも、基礎円Bcの円周上に位置している。分散溝8Cは、排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Piのうち、中心Poから等しい距離に位置する8箇所の交点Pi間を直線で結ぶように形成されている。すなわち、分散溝8Cは、正八角形状に形成されている。
【0053】
<第7実施形態>
次に、本発明を適用した研磨パッドの第7の実施の形態について説明する。本実施形態の研磨パッドは、上述した第5実施形態の排出溝8Aおよび流入溝8Bの回転方向Rdに対する向きを反対に形成した溝形成パターンを有するものである。
【0054】
図9に示すように、本実施形態では、ウレタンシート2の研磨面Sp側に、回転方向Rdに対し、後方側に凸状の複数の流入溝18A(第1の溝)、前方側に凸状の複数の排出溝18B(第2の溝)、および、流入溝18Aと排出溝18Bとの交点Piを通り中心Poを中心とする円形状の1つの分散溝8C(第3の溝)で構成される溝8が形成されている。本例では、流入溝18Aが8本で構成され、排出溝18Bが4本で構成されている。流入溝18Aは、中心側始点が基礎円Bcの円周上に位置するインボリュート曲線状に形成されており、第1実施形態で説明した式(2)で表される。一方、排出溝18Bは、XY直交座標系において、中心Poを始点とする二次曲線状に形成されている。換言すると、本実施形態の溝8では、スラリを排出しやすくする前方側に凸状の排出溝18Bが二次曲線状であり、流入しやすくする後方側に凸状の流入溝18Aがインボリュート曲線状である。
【0055】
<作用等>
次に、上記各実施形態の研磨パッド10の作用等について説明する。
【0056】
研磨パッド10では、研磨面Sp側に形成された溝8が、研磨加工時の回転方向Rdに対して、前方側に凸状の複数の排出溝8A、後方側に凸状の複数の流入溝8B、および、排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Pi(
図4では接点Pj)間を結び中心Poに対して閉鎖状の少なくとも1本の分散溝8Cで構成されている。研磨加工時に中心部に供給されるスラリには、研磨パッド10の回転に伴う遠心力や慣性力により、外周側へ向かう力が作用する。排出溝8Aでは、回転方向Rdに対して前方側に凸状のため、スラリが遠心力や慣性力に逆らうことなく外周側へ移動することができる。これに対して、流入溝8Bでは、回転方向Rdに対して後方側に凸状のため、スラリの中心側への移動を促進することとなる。この結果、排出溝8Aによる排出性、流入溝8Bによる流入性がともに作用することで、供給されたスラリを研磨面Sp内に保持しやすくすることができる。
【0057】
また、分散溝8Cが交点Piや接点Pj間を結び、中心Poに対して閉鎖状に形成されている。このため、排出溝8Aを通じて外部へ排出されるスラリ、流入溝8Bを通じて中心側に流入するスラリが交点Pi、接点Pjから分散溝8Cに入り込みやすくなる。これにより、スラリを研磨面Sp内で分散させやすくすることができる。従って、スラリの排出、流入が効率よく行われるとともに、研磨面Sp内にスラリを効率よく分散させることができる。換言すれば、排出溝8A、流入溝8B、分散溝8Cの3種類で構成される溝8により、スラリの保持性および分散性を向上させることができる。
【0058】
更に、研磨パッド10では、中心側から外周縁まで形成した排出溝8A、流入溝8Bで囲まれた部分が被研磨物に(スラリを介して)接触可能な部分となり、研磨加工に寄与するランド面積部分が外周側ほど大きくなる。分散溝8Cが形成されたことで、ランド面積部分におけるスラリの拡散性も向上させることができる。また、スラリが中心部に供給されることから、分散溝8Cが中心Poに対して閉鎖状のため、いわゆるフレッシュなスラリが排出溝8Aにより短時間で排出されることを分散溝8Cで抑制することができる。換言すれば、被研磨物に対して万遍なくフレッシュなスラリを作用させることができる。
【0059】
このような研磨パッド10では、研磨加工時のスラリが排出、流入を繰り返し循環されるので、スラリの過剰消費を抑制することができるとともに、研磨面Sp内にスラリが均等に分散されるので、研磨レート等の研磨特性の向上を図ることができる。従って、研磨パッド10を使用した研磨加工により、被研磨物の平坦化効率の向上に寄与することが期待できる。
【0060】
なお、上記実施形態では、特に言及していないが、流入溝8Bの形状を対数螺旋状とすることも可能である。この場合、XY直交座標系において、複数本の流入溝8Bのうちの1本目の流入溝が、中心Poを始点とし、中心Poを通る任意の直線を開始線とする。この開始線が始点における対数螺旋で形成される曲線に対する接線となる。流入溝8Bのうちの2本目の流入溝は、始点が中心Poであるものの、開始線が1本目の流入溝の開始線から回転した位置に位置しており、その回転分が位相角φで表される。複数本の流入溝8B上の任意の点は、媒介変数θ、位相角φ、任意の定数m、定数nにより下記式(4)で表すことができる。式(4)において、媒介変数θは負の数値をとらない(θ≧0)。換言すれば、流入溝8Bは、上記実施形態で示したインボリュート曲線状、アルキメデスの螺旋状、二次曲線状、および、対数螺旋状のいずれかであればよく、これらの曲線を組み合わせて形成することも可能である。さらに、回転方向Rdに対して前方側に凸状の溝によりスラリを排出しやすくし、後方側に凸状の溝によりスラリが流入しやすくなることから、凸状の向きの異なる溝が組み合わされていればよい。本発明者の知見によれば、溝形状をインボリュート曲線状とすることでスラリの排出/流入の役割を高めることができることが明らかとなっている。上述した第1実施形態のように排出溝、流入溝をともにインボリュート曲線状とすることもできるが、被研磨物の材質や要求品質にあわせて、排出溝、流出溝のいずれか一方をインボリュート曲線状とすることも可能である(第5実施形態、第7実施形態も参照)。さらに付言すれば、上記実施形態では、インボリュート曲線、アルキメデスの螺旋、対数螺旋を表す各式における媒介変数θが負の数値をとらないことを示したが、この媒介変数θを正の数値をとらないように(θ≦0)することで回転方向Rdに対する凸状の向きを反対にする、つまり、溝の捲き形状を反転させることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、排出溝8A、流入溝8B、分散溝8Cの断面形状や幅について特に言及していないが、本発明は溝の断面形状や幅に制限されるものではない。断面形状としては、例えば、V字状、U字状、矩形状等のいずれとすることも可能であり、通常研磨パッドに形成される溝幅と同程度の幅に形成すればよい。更に、排出溝8A、流入溝8B、分散溝8Cの本数についても、特に制限されるものではなく、上記実施形態で示した以外の本数で形成するようにしてもよい。溝の本数が多くなるほど、研磨加工に寄与するランド面積部分が小さくなることを考慮して本数を定めることが望ましい。また、上記実施形態では、基礎円の半径a、半径bについて、それぞれ上限のみを示し下限を示していないが、研磨加工に有効なランド面積部分を確保する観点から、溝の幅および本数により一定の下限を有している。基礎円が小さすぎると溝の形成密度が大きくなるため、十分な研磨性能を得ることが難しくなる。すなわち、排出溝8Aについて、溝の幅の平均値をWa、本数をLaとしたときに、基礎円の半径aは、Wa・La≦2πa×2の関係を満たすことが好ましい。同様に、流入溝8Bについては、溝の幅の平均値をWb、本数をLbとしたときに、基礎円の半径bは、Wb・Lb≦2πb×2の関係を満たすことが好ましい。
【0063】
更に、上記実施形態では、分散溝8Cを中心Poを中心とする1本の円形状、1本の八角形状、2本の同心円状に形成する例を示したが、本発明はこれらに制限されるものではない。分散溝8としては、排出溝8Aと流入溝8Bとの交点Piまたは接点Pj間を結ぶように形成されていればよく、中心部に対して閉鎖状としなくてもよい。例えば、円形状に形成することに代えて、円弧状に形成することも可能である。
【0064】
また更に、上記実施形態では、ウレタンシート2におけるA硬度やかさ密度等の性質について特に言及していないが、研磨加工の対象とする被研磨物にあわせて調整することができる。この場合、用いるイソシアネート化合物やポリアミン化合物等の種類や重合度、混合液に配合する水や非反応性気体の量を調整することで得られるウレタンシート2の性質を被研磨物に対して適正化することができる。また、上記実施形態では、樹脂製シート材としてウレタンシート2を例示したが、本発明はこれに制限されることなく、通常研磨加工に用いることができる樹脂を使用してもよい。このような樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート等を挙げることができる。
【0065】
更にまた、上記実施形態では、発泡3の形成に水および非反応性の気体を用いる例を示したが、発泡形成材としては、これら以外に、例えば、化学発泡剤、中空微粒子、水溶性微粒子を用いてもよく、複数の発泡形成材を組み合わせて用いてもよい。化学発泡剤としては、常温で固体の物質であり、加熱により熱分解して分解ガスを発生するものであればよく、例えば、アゾジカルボン酸等を挙げることができる。中空微粒子としては、例えば、アクリル系の樹脂製外殻を有し内部にブタンやヘキサン等の揮発性化合物が内包された球状の微粒子等を挙げることができる。水溶性微粒子としては、例えば、セルロース誘導体やポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等のフィラー、顔料、界面活性剤、触媒等の添加剤を適宜加えてもよいことはもちろんである。
【0066】
また、上記実施形態では、ウレタンシート2を形成するプレポリマとして、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させたイソシアネート末端ウレタンプレポリマを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリオール化合物に代えて水酸基やアミノ基等を有する活性水素化合物を用い、ジイソシアネート化合物に代えてポリイソシアネート化合物やその誘導体を用い、これらを反応させることで生成するようにしてもよい。更に、多種のイソシアネート末端ウレタンプレポリマが市販されていることから、市販のものを使用することも可能である。
【0067】
更に、上記実施形態では、ウレタンシート2と両面テープ7と貼り合わせる例を示したが、両面テープ7に代えて、例えば、基材を有することなく粘着剤のみが2枚の剥離紙に挟まれたノンサポートテープを用いることも可能である。
【0068】
そして、上記実施形態では、研磨面Spの形状、つまり、研磨パッド10の形状を円形状とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、矩形状、多角形状等としてもよく、中央部を切り抜いたドーナツ形状とすることも可能である。研磨加工時に供給されるスラリの拡散性を確保することを考慮すれば、円形状またはドーナツ形状とすることが好ましい。